JP2017179212A - 複合樹脂発泡粒子、および複合樹脂発泡粒子成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
ところが、近年のパネルサイズの拡大に伴う梱包重量の増大によって、プロピレン系樹脂からなる発泡粒子成形体を梱包容器として用いた場合には、梱包容器が撓み易くなるという問題が生じていた。搬送機などで梱包容器の両端を支持して持ち上げた際に、発泡粒子成形体が撓んでしまうと、パネルが脱落する虞や、撓みによってパネルが破損してしまう虞がある。
即ち、昨今の市場の要求から、発泡粒子成形体に対し、従来に比べてより厳しい使用条件が求められるようになってきている。たとえば、発泡粒子成形体は液晶パネルの梱包材として使用されているが、昨今のパネルサイズの拡大に伴い、被梱包物であるパネルの重量が増大するとともに、梱包材としての発泡粒子成形体の重量がさらに増大してきている。このような重量の大きい発泡粒子成形体を成形する際には、例えば型開きにより発泡粒子成形体が型から落下する時などの離型時に発泡粒子成形体が周囲のものと接触して、発泡粒子成形体表面に押し傷が発生し易くなることがわかった。特に、発泡粒子成形体に形成される押し傷は、表面にかかる押圧力が大きくなるほど回復し難くなる傾向にあるため、発泡粒子成形体が重いほど押し傷現象は顕著に発生する。なお、梱包材の表面に押し傷が生じると外観が悪化してしまうため、改善が求められている。
本発明は、押し傷回復性に優れる複合樹脂発泡粒子成形体を提供可能な複合樹脂発泡粒子、および該複合樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体に関するものである。
尚、以下の説明において、適宜、本発明の好ましい数値範囲を示す場合がある。この場合に、数値範囲の上限および下限に関する好ましい範囲、より好ましい範囲、特に好ましい範囲は、上限および下限のすべての組み合わせから決定することができる。
本発明の複合樹脂発泡粒子は、スチレン系単量体がエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子である。本明細書において、上記複合樹脂は、エチレン系樹脂にスチレン系単量体などが含浸、重合されている樹脂であり、エチレン系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを含有する樹脂である。かかる構成から、エチレン系樹脂およびスチレン系樹脂それぞれの長所をバランスよく備え、剛性および靭性のいずれにも優れる発泡粒子成形体を提供可能である。
また本発明の複合樹脂発泡粒子は、嵩密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、表層の気泡の平均気泡径(Ls)が100μm以上250μm以下であるとともに、複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)と上記表層の気泡の平均気泡径(Ls)との比率(Ls/La)が0.7以上1以下である。これにより、押し傷回復性および融着性が良好な発泡粒子成形体を提供可能である。
図1に本発明の一実施形態である複合樹脂発泡粒子10の断面模式図を示す。当該断面模式図は、複合樹脂発泡粒子10の中心部16を通って2つに切断されてなる切断面を示している。図1に示すとおり、複合樹脂発泡粒子10は、最表層に存在する表層気泡12の平均気泡径(Ls)が100μm以上250μm以下であるとともに、複合樹脂発泡粒子10全体の平均気泡径(La)と最表層に存在する表層気泡12の平均気泡径(Ls)との比率(Ls/La)が0.7以上1以下である。
尚、以下において、表層気泡12の平均気泡径(Ls)を表層平均気泡径(Ls)と呼び、複合樹脂発泡粒子10全体の気泡の平均気泡径(La)を全体平均気泡径(La)と呼ぶ場合がある。
複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(全体平均気泡径(La))は、上記拡大断面写真に存在する全気泡の最長径をそれぞれ測定し、この操作を5個の複合樹脂発泡粒子10について同様に行ない、その算術平均を複合樹脂発泡粒子10の全体平均気泡径La(μm)とする。
複合樹脂発泡粒子10を構成するエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のエチレン系樹脂を用いることができる。更に、これらの2種以上の混合物を利用することもできる。
また、直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、通常、880kg/m3以上945kg/m3以下であることが好ましく、好ましくは密度940kg/m3以下、より好ましくは密度930kg/m3以下の直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがよい。この場合には、型内成形における成形圧を更に引き下げることが可能になる。また、直鎖状低密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR:190℃、荷重2.16kg)は、エチレン系樹脂種粒子の製造時における押出適性の観点から、1.5g/10分以上4.0g/10分以下が好ましく、1.5g/10分以上3.0g/10分以下がより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンのビカット軟化温度(JIS K7206:1999 A50法、尚、本明細書におけるビカット軟化温度は全て上記方法により測定される値を指す。)は、好ましくは80℃以上120℃以下、より好ましくは90℃以上100℃以下がよい。ビカット軟化温度が上記範囲の場合には、エチレン系樹脂種粒子の製造時にその造粒がより容易になる。
本明細書において、複合樹脂は、上述のようにエチレン系樹脂にスチレン系単量体等が含浸、重合された樹脂であり、エチレン系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを含有する樹脂である。また、スチレン系単量体等の重合時には、スチレン系単量体同士の重合だけでなく、エチレン系樹脂を構成するポリマー鎖にスチレン系単量体のグラフト重合が起こる場合がある。この場合、複合樹脂は、エチレン系樹脂からなるエチレン系樹脂成分と、スチレン系単量体が重合してなるスチレン系樹脂成分とを含有するだけでなく、さらにスチレン系単量体がグラフト重合したエチレン系樹脂成分(すなわち、PE−g−PS成分)を含有する。したがって、複合樹脂は重合済みのエチレン系樹脂と重合済みのスチレン系樹脂とを混合してなる混合樹脂とは異なる概念である。また、複合樹脂中のエチレン系樹脂成分が架橋される場合もある。複合樹脂が架橋構造を有することにより、後述の特定のキシレン不溶分を有するものとなる。
尚、本明細書では、スチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体成分は、スチレン、および必要に応じて添加されるスチレンと共重合可能なモノマーを、併せてスチレン系単量体と称することがある。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば下記のスチレン誘導体、その他のビニルモノマー等がある。
また、その他のビニルモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチルなどの水酸基を含有するビニル化合物、アクリロニトリルなどのニトリル基を含有するビニル化合物、ブタジエンなどのジエン化合物、ハロゲン化ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、マレイミド化合物などが挙げられる。これらのビニルモノマーは、単独でも2種類以上を混合したものを用いても良い。
上記アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等がある。上記メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等がある。
尚、スチレン系単量体として、スチレンと共に、スチレンと共重合可能なモノマーとを用いる場合には、複合樹脂発泡粒子10中の、スチレンと共重合可能なモノマーに由来する構造単位の含有量を10質量%以下にすることが、良好な発泡性、発泡後の粒子の収縮防止の観点から好ましい。良好な発泡性という観点から、複合樹脂発泡粒子10中のスチレンに対し共重合可能なモノマー成分の含有量は、複合樹脂発泡粒子を100質量%として1質量%以上9質量%以下がより好ましく、2質量%以上8質量%以下がさらに好ましい。
エチレン系樹脂に含浸、重合させるスチレン系単量体の量は、所望の物性に応じて適宜調整することができ、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、エチレン系樹脂100質量部に対するスチレン系単量体由来の構造単位の配合割合は限定されないが、スチレン系単量体由来の構造単位をエチレン系樹脂100質量部に対して100質量部以上1900質量部以下の範囲で含有することが好ましい。具体的には、複合樹脂中のエチレン系樹脂の割合を高めると、靱性、復元性が向上するが、剛性が低下して撓み耐性が低下する傾向にある。一方、スチレン系単量体由来の構造単位の割合を高めた場合には、剛性が向上するが、靭性、復元性が低下し、発泡粒子成形体が割れ易く脆さが顕著になり、押し傷回復性も低下する虞がある。上記観点から、エチレン系樹脂100質量部に対するスチレン系単量体由来の構造単位の含有量は、200質量部以上が好ましく、400質量部超がより好ましく、450質量部以上であることがさらに好ましく、500質量部以上であることが特に好ましい。また、成形体の靱性、復元性をより向上させるとともにより優れた押し傷回復性を実現するという観点からは、エチレン系樹脂100質量部に対するスチレン系単量体由来の構造単位の含有量は、1500質量部以下であることが好ましく、1000質量部以下であることがより好ましく、900質量部以下であることがさらに好ましく、880質量部以下であることが特に好ましい。
また本実施形態の複合樹脂発泡粒子10は、上述するとおり、特定の気泡構造を有することにより、エチレン系樹脂に対しスチレン系単量体由来の構造単位を同等またはそれ以上多く含む場合(即ち、上述する含有範囲)であっても、スチレン系単量体由来の構造単位の配合割合の増大による剛性を維持したまま、良好な融着性と押し傷回復性を実現することが可能である。
本実施形態における複合樹脂発泡粒子10を構成する複合樹脂100質量%に対しソックスレー抽出によるキシレン不溶分の割合が1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。なお、複合樹脂における架橋が進んだエチレン系樹脂成分の量と発泡粒子成形体の押し傷回復性とは相関性があり、キシレン不溶分を20質量%以下に調整することで、エチレン系樹脂の架橋密度が大きくなりすぎず、表層気泡径の微細化が抑制され、良好な押し傷回復性が示されるものと推測される。
一方、複合樹脂100質量%に対しキシレン不溶分が1質量%以上であることが好ましく、かかる下限は、基材樹脂にエチレン系樹脂を含む複合樹脂発泡粒子10において、一定の割合で架橋が進んだエチレン系樹脂成分を含み、網目構造の架橋を含むことを示すものである。キシレン不溶分の測定方法は、後述する実施例において実施する方法を参照することができる。実施例では、複合樹脂発泡粒子を用いてキシレン不溶分を測定する。なお、同様の方法で複合樹脂粒子を用いてキシレン不溶分を測定しても、発泡前後で架橋状態に変化はないので、同様のキシレン不溶分となる。
本実施形態において、複合樹脂発泡粒子10に、フッ素樹脂粉末が含有されている。ここで、「含有」とは、フッ素樹脂粉末は、複合樹脂発泡粒子10の樹脂骨格に含まれず、発泡時に発泡核剤として作用して、複合樹脂発泡粒子10に分散している状態で含有されていると考えられる。かかるフッ素樹脂粉末は、複合樹脂発泡粒子10の組成分析によりフッ素樹脂が含まれることを確認することができる。また、複合樹脂発泡粒子10の切断面を走査型電子顕微鏡にて、発泡粒子の気泡膜内部や気泡膜の表面に露出しているような状態でフッ素樹脂粉末が、エチレン系樹脂成分やスチレン系樹脂成分とは異なる核の存在として観察できる。
フッ素樹脂粉末の含有量が上記範囲内であれば、上述の気泡分布の形成がより容易となる。かかる観点からは、フッ素樹脂粉末の上記含有量の上限0.12質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることが特に好ましく、0.05質量部以下であることがさらに好ましい。
尚、上述するフッ素樹脂粉末の粒子径は、以下の測定方法による50%粒子径として求めることができる。即ち、フッ素樹脂粉末を水中に分散させ、レーザー回折散乱法(日機装株式会社製マイクロトラックMT-3300EX)により粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒子径を50%粒子径として求めることができる。
次に本実施形態の嵩密度について説明する。複合樹脂発泡粒子10の嵩密度は、10kg/m3以上100kg/m3以下である。嵩密度が100kg/m3を超えると、良好な押し傷回復性が得られない虞がある。良好な押し傷回復性を得るという観点からは、嵩密度は、90kg/m3以下であることが好ましく、60kg/m3以下であることがより好ましい。また、嵩密度が10kg/m3を下回ると、剛性が足りず、強度に優れる発泡粒子成形体を得られにくくなる傾向にある。この観点からは、嵩密度は、15kg/m3以上であることが好ましく、20kg/m3以上であることがより好ましい。
まず、1Lのメスシリンダーを用意し、空のメスシリンダー中に発泡粒子を1Lの標線まで充填する。次いで、メスシリンダーに充填した発泡粒子の質量(g)を測定し、単位換算することにより嵩密度(kg/m3)を算出することができる。
複合樹脂発泡粒子中の炭素数3以上6以下の炭化水素化合物の濃度が0.1質量%以下であることにより、複合樹脂発泡粒子が可塑化されて、該複合樹脂発泡粒子の型内成形により得られる複合樹脂発泡粒子成形体の剛性が成形直後から成形後初期段階において低くなったり、複合樹脂発泡粒子の二次発泡力が大き過ぎて複合樹脂発泡粒子成形体の密度分布が広くなることが防止されるので、良好な複合樹脂発泡粒子成形体を成形することができる。
ここで、複合樹脂発泡粒子10は、上述のとおりフッ素樹脂粉末が含まれることによって、これが気泡の核剤として働き、無機系物理発泡剤を用い、水性媒体とともに低圧下に放出して発泡させた場合であっても、特定の気泡形状を形成させ、良好な押し傷回復性が得られるものとなると考えられる。なお、無機系物理発泡剤のみを使用して複合樹脂発泡粒子を得た場合には、炭素数3以上6以下の炭化水素化合物を発泡剤として使用していないため、複合樹脂発泡粒子中の炭素数3以上6以下の炭化水素化合物の濃度は0.1質量%以下(ゼロを含む)となる。一方、有機物理発泡剤を用いて製造された場合には、これらの炭化水素化合物が0.1質量%を超えて複合樹脂発泡粒子10に含まれることによって、発泡粒子成形体の成型時の加熱などによって二次発泡する際に、表層でより多くの熱を受けて発泡が進む結果、表層気泡が粗くなる虞がある。
次に上記複合樹脂発泡粒子10の製造方法について説明する。以下に述べる製造方法は、上述する本発明の複合樹脂発泡粒子の製造方法の一例を示すものであって、本発明の複合樹脂発泡粒子の製造方法を限定するものではない。
改質工程は、フッ素樹脂粉末を含むエチレン系樹脂種粒子を分散させた水性媒体中に、所定の割合のスチレン系単量体を添加し、エチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させて、複合樹脂粒子を得る工程である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当該スチレン系単量体の添加の割合は特に限定されず、好ましくは、エチレン系樹脂種粒子中のエチレン系樹脂100質量部に対して100質量部から1900質量部である。
発泡剤含浸工程は、改質工程で得られた複合樹脂粒子を耐圧容器内の水性媒体中にて無機系物理発泡剤を含む物理発泡剤とともに分散させ、物理発泡剤を複合樹脂粒子に含浸させる工程である。
発泡工程は、上述のとおり物理発泡剤が含浸された複合樹脂粒子を加熱軟化状態で、水性媒体と共に耐圧容器から耐圧容器内の圧力よりも低圧域に放出して複合樹脂発泡粒子を得る工程である。
以下に、上記製造方法の実施態様について改質工程、発泡剤含浸工程、および発泡工程の順に説明に詳細に説明する。
改質工程において、スチレン系単量体をエチレン系樹脂に含浸重合させて、エチレン系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂からなる複合樹脂粒子を得る。
改質工程に用いられるエチレン系樹脂種粒子は、エチレン系樹脂、およびフッ素樹脂粉末を含む。
上記エチレン系樹脂は、上述する複合樹脂発泡粒子10に含まれるエチレン系樹脂と同様であり、複合樹脂発泡粒子10に関し説明するエチレン系樹脂の記載を適宜参照することができるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
上述する複合樹脂発泡粒子10に含まれるフッ素樹脂と同様であり、複合樹脂発泡粒子10に関し説明するフッ素樹脂の記載を適宜参照することができるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
上述するエチレン系樹脂に上述するフッ素樹脂粉末を添加し溶融混練してエチレン系樹脂種粒子(以下、単に種粒子ともいう)を製造する。フッ素樹脂粉末の添加方法は特に限定されないが、フッ素樹脂粉末を予めマスターバッチ化することや、エチレン系樹脂とフッ素樹脂粉末を例えばヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー、レディーゲミキサーなどの混合機を用いて混合させてもよい。エチレン系樹脂とフッ素樹脂粉末を予めブレンドさせた後、押出機にて溶融混練し、細粒化することで、均一な混練を行うことができる。
尚、上述は、種粒子を得るための例示であって、適宜、全体または部分的に他の手段を用いて種粒子を製造してもよい。
改質工程においては、水性媒体中において、分散させた種粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させる。なお、スチレン系単量体の重合は、重合開始剤の存在下で行う。
エチレン系樹脂種粒子に含浸させるスチレン系単量体の量は、種粒子を構成するエチレン系樹脂100質量部に対して100質量部以上1900質量部以下であることが好ましい。
上記懸濁剤としては、例えばリン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の無機懸濁剤を用いることができる。また、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機懸濁剤を用いることもできる。好ましくは、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、またはピロリン酸マグネシウムが好ましい。上述する懸濁剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
懸濁剤の添加量は、種粒子を含有する水性媒体100質量部に対して、固形分量で0.05質量部以上10質量部以下の範囲が好ましく、0.3質量部以上5質量部以下の範囲がより好ましい。
なお、アニオン系界面活性剤としては、例えばアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等を用いることができる。
また、好ましくは、アニオン系界面活性剤を用いることがよい。より好ましくは、炭素数8〜20のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(その中でも特に好ましくはナトリウム塩)がよい。これにより、懸濁系を充分に安定化させることができる。
上記水溶性重合禁止剤は種粒子内に含浸し難く、水性媒体中に溶解する。したがって、種粒子に含浸したスチレン系単量体の重合は行われるが、種粒子に含浸されていない水性媒体中のスチレン系単量体の微小液滴、及び種粒子に吸収されつつある種粒子表面付近のスチレン系単量体の重合を抑制することができる。そのため、複合樹脂粒子の表面部分は中心部にくらべてスチレン系樹脂量が少なくなる。
水溶性重合禁止剤の添加量は、水性媒体(種粒子を含有する水性媒体)100質量部に対して0.001質量部以上0.1質量部以下が好ましく、0.002質量部以上0.02質量部以下であることがより好ましい。
なお、改質工程におけるスチレン系単量体の重合過程においては、種粒子中に含まれるエチレン系樹脂成分の架橋が生じる場合がある。スチレン系単量体の重合において重合開始剤を用いるが、必要に応じて架橋剤を併用することができる。重合開始剤、架橋剤を使用する際には、これらを予めスチレン系単量体に溶解しておくことが好ましい。
なお、上記製造方法は、製造される複合樹脂発泡粒子のキシレン不溶分の割合を所望の範囲に調整することができ、例えば、エチレン系樹脂種粒子に対するスチレン系単量体との配合比率を相対的に大きくすること、エチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を含浸させる温度を相対的に高くすること、またはキシレン不溶分の含有量を勘案して重合開始剤を適宜選択することなどの観点で重合条件を調整することによって、キシレン不溶分の含有量を少なくするよう調整可能である。
一方、エチレン系樹脂種粒子に対するスチレン系単量体との配合比率を相対的に小さくすること、エチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を含浸させる温度を相対的に低くすること、またはキシレン不溶分の含有量を勘案して重合開始剤を適宜選択することなどの観点で重合条件を調整することによって、複合樹脂発泡粒子のキシレン不溶分の含有量を多くするよう調整可能である。
また、キシレン不溶分の含有量を調整するという観点からは、下記のとおり重合開始剤を選択してもよい。即ち、重合開始剤として、t−ブトキシ基を有し、かつ10時間半減期温度が80℃以上120℃以下の有機過酸化物A、またはt−ヘキシルオキシ基を有し、かつ10時間半減期温度が80℃以上120℃以下の有機過酸化物Bのいずれかまたは、組み合わせを選択するとよい。有機過酸化物Aは、水素引き抜き能が強く、残留スチレン系単量体の低減効果を有する。一方、有機過酸化物Bは、水素引き抜き能が弱く、エチレン系樹脂の架橋を起こし難い。有機過酸化物Aとしては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等を用いることができる。残留スチレン系単量体をより低減しやすいという観点から、有機過酸化物Aとしては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートが好ましい。有機過酸化物Bとしては、例えば、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等を用いることができる。残留スチレン系単量体をより低減しやすく、エチレン系樹脂の架橋をより抑制するという観点からは、有機過酸化物Bとしては、t−ヘキシルパーオキシベンゾエートが好ましい。上記2種の有機化酸化物を併用することにより、キシレン不溶分を必要以上に増加させず、エチレン系樹脂の架橋密度を適正範囲にすることで、融着性、剛性、靭性に優れる成形品を得ることができる。
また、重合開始剤は、スチレン系単量体に溶解させた状態で、懸濁液に添加することができる。スチレン系単量体を分割して添加する場合には、少なくとも最初に添加されるスチレン系単量体(以下、「第1モノマー」という)には重合開始剤を溶解させておくこと好ましい。第1モノマーには、配合予定の重合開始剤の全量のうちの75%以上を溶解させることが好ましく、80%以上を溶解させておくことがより好ましい。この場合には、複合樹脂粒子の製造時に、エチレン系樹脂にスチレン系単量体を充分に含浸させることができ、重合時に懸濁系が不安定化することを防止することができる。その結果、本発明の製造方法により得られた複合樹脂発泡粒子を用い、スチレン系樹脂の優れた剛性とエチレン系樹脂の優れた粘り強さ(靱性)とをより高いレベルで兼ね備えた発泡粒子成形体を提供することが可能になる。また、上述のように、配合予定のスチレン系単量体の一部を第1モノマーとして添加する場合には、配合予定のスチレン系単量体の全量のうちの残部を第2モノマーとして、第1モノマーの添加後に第1モノマーとは異なるタイミングで添加することができる。第2モノマーをさらに分割して添加することもできる。
尚、スチレン系単量体(第1モノマー)のシード比(種粒子に対する第1モノマーの重量比)は、0.5以上であることが好ましい。この場合には、複合樹脂粒子の形状をより球状に近づけることが容易になる。同様の観点から、シード比は0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。また、シード比は、1.5以下であることが好ましい。この場合には、スチレン系単量体が種粒子に充分に含浸される前に重合することをより防止することができ、樹脂の塊状物の発生をより防止することができる。同様の観点から、第1モノマーのシード比は、1.3以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましい。
上述するスチレン系単量体には、必要に応じて可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、染料等を添加することができる。可塑剤としては、例えばグリセリントリステアレート、グリセリントリオクトエート、グリセリントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ブチルステアレート等の脂肪酸エステルを用いることができる。また、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化モノグリセライド、硬化牛脂及び硬化ひまし油等の油脂類、シクロヘキサン及び流動パラフィン等の有機化合物等を用いることもできる。油溶性重合禁止剤としては、例えばパラ−t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン等を用いることができる。尚、上記可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、染料等は、スチレン系単量体に添加せずに、別途溶剤に添加して懸濁液中に投入することもできる。
発泡剤含浸工程は、上述のとおり得られた複合樹脂粒子へ物理発泡剤を含浸させる工程である。より具体的には、複合樹脂粒子を容器内の水性分散媒体中にて、物理発泡剤と共に分散させ、該物理発泡剤を複合樹脂粒子に含浸させる液相含浸工程である。
たとえば発泡剤含浸工程の一例として、複合樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させるために、複合樹脂粒子を、耐圧容器内で水等の分散媒体に分散させ、撹拌下に加熱して軟化させるとともに該耐圧容器内に物理発泡剤を圧入し複合樹脂粒子に含浸させる。その後、後述する発泡工程において、物理発泡剤を含浸している複合樹脂発泡粒子(以下、発泡性複合樹脂粒子とともいう)を軟化状態で耐圧容器内より低圧下(通常大気圧下)に分散媒体と共に放出して発泡させる。これにより複合樹脂発泡粒子を製造することができる。より具体的には、例えば特公昭49−2183号公報、特公昭56−1344号公報、及び特公昭62−61227号公報等に記載の公知の発泡方法を採用することができる。
複合樹脂発泡粒子の製造にあたっては、上述のとおり、発泡剤含浸工程および発泡工程を同じ耐圧容器内にて連続する工程として行うことが好ましい。ただし本発明の製造方法はこれに限らず、発泡剤含浸工程にて得られた発泡性複合樹脂粒子を一度取り出し、その後、耐圧容器内に仕込み別途行う発泡工程にて該発泡性複合樹脂粒子を発泡させることもできる。
発泡剤含浸工程において、発泡剤として、無機系物理発泡剤を含む物理発泡剤が用いられる。上記物理発泡剤は、無機系物理発泡剤を50質量%以上100質量%以下の範囲で含むことが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。
上記の製造方法は、無機系物理発泡剤を主成分(即ち、50質量%以上の割合)とする物理発泡剤を用いた場合であっても、高い発泡倍率を有し、且つ、押し傷回復性に優れる発泡粒子が得られる。特に、無機系物理発泡剤を用いて発泡させた発泡粒子は、型内成形直後の気泡内の圧力が低くなるため、従来の気泡構造では押し傷が発生し易いものであるが、本発明の発泡粒子においては、特定の気泡構造を有することによって、上記の問題が解決される。また、上記の製造方法で得られた複合樹脂発泡粒子には有機系物理発泡剤が多量に残存することが回避される。また、無機系物理発泡剤を使用した場合には、過剰な二次発泡が抑制されることから、型内成形時の冷却時間の短縮による成形サイクルの短縮が可能となる。
発泡剤含浸工程において、容器内にて複合樹脂粒子を分散させる分散媒体としては、水性媒体が用いられる。なお、水性媒体には、水の他に、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等を混合して用いることができる。
分散媒体には、必要に応じて、複合樹脂粒子が分散媒体に均一に分散するように、分散剤、または分散助剤を添加してもよい。分散剤としては、たとえば酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリンなどの難水溶性無機物質等を挙げることができる。また分散助剤としては、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等を挙げることができる。ここで分散媒体に添加される分散剤および/または分散助剤の量は、発泡剤含侵工程に供される複合樹脂粒子の質量を基準として決定することができる。複合樹脂粒子の質量と分散剤の質量との比率(複合樹脂粒子の質量/分散剤の質量)を20〜2000とすることが好ましく、30〜1000とすることがより好ましい。また、分散助剤を用いる場合には、分散剤の質量と分散助剤の質量との比率(分散剤の質量/分散助剤の質量)は0.1〜500とすることが好ましく、1〜50とすることがより好ましい。
上述のとおり、容器(耐圧容器)に、複合樹脂粒子、および必要により分散剤などの添加剤を分散媒体に添加して分散させるとともに、物理発泡剤を圧入する。物理発泡剤は、容器(耐圧容器)内の圧力が概ね1.0MPa以上5.0MPa以下(ゲージ圧)となるように圧入する。ここで該容器(耐圧容器)内の温度は、複合樹脂粒子が軟化する温度に調整する。当該温度は、複合樹脂粒子の組成等により適宜決定することができるが、概ね105℃以上200℃以下、より好ましくは145℃以上170℃以下である。以上のとおり、ゲージ圧と温度を調整し、複合樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる。
発泡工程は、発泡剤含浸工程で得られた、耐圧容器内で物理発泡剤が含浸された軟化状態の発泡性複合樹脂粒子を水性媒体と共に該耐圧容器から該容器内よりも低圧域(通常は大気圧下)に放出することにより発泡させて、複合樹脂発泡粒子を得る工程である。
上記発泡性複合樹脂粒子の放出時の耐圧容器内の圧力は、たとえば含浸工程において用いた物理発泡剤と同様のガス、または窒素若しくは空気等の無機ガスで背圧をかけて耐圧容器内の圧力の急激な低下を防止するよう調整するとよい。
上記発泡性複合樹脂粒子の放出時の耐圧容器内の温度(発泡温度)は、たとえば目的とする複合樹脂発泡粒子の嵩密度、気泡径、基材樹脂の組成、または物理発泡剤の種類や配合量等を考慮して適宜調整するとよい。上記温度は、概ね、上記発泡性複合樹脂粒子の構成成分の1つであるスチレン系樹脂成分のガラス転移温度(Tg)以上、発泡性複合樹脂粒子を構成する樹脂成分の分解開始温度以下の範囲内で調整するとよい。
発泡工程は、上述のとおり耐圧容器から水性媒体と共に上記発泡性複合樹脂粒子を放出し、これを発泡させて複合樹脂発泡粒子を得ることで終了することができる。
次に本発明の複合樹脂発泡粒子成形体(以下、本発明の発泡粒子成形体ともいう)について、図2を用い、一実施形態である複合樹脂発泡粒子成形体20(以下、発泡粒子成形体20と記載する)を例に説明する。図2(a)は、発泡粒子成形体20の斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のII−II断面図である。
発泡粒子成形体20は、スチレン系単量体がエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子成形体である。また、前記複合樹脂は、スチレン系単量体由来の構造単位をエチレン系樹脂100質量部に対して100質量部以上1900質量部以下含有していることが好ましい。また、上記複合樹脂発泡粒子成形体はフッ素樹脂粉末を含有する。
即ち、発泡粒子成形体20は、見かけ密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、発泡粒子成形体20の最表面から内部に向かって20mm以内の範囲において、平均気泡径(Lav)が100μm以上200μm以下で、かつ気泡径の標準偏差(Lsd)が70μm以下である。
なお、気泡径をL1、L2、L3、L4、L5、L6、・・・・L50(μm)、平均気泡径をLav(μm)とすると、気泡径の標準偏差(Lsd)は下記式1により求めることができる。
(数1)
Lsd={Σ(Li−Lav)2/(n−1)}1/2 (式1)
また、上記平均気泡径の変動係数は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下が更に好ましい。変動係数(Cv)は、式1により求められた標準偏差を用いて、下記式2によって求められる。
(数2)
Cv(%)=(Lsd/Lav)×100 (式2)
上述する発泡粒子成形体20の変動係数(Cv)は特に限定されるものではないが、値が小さいほど押し傷回復性が良好である傾向にある。かかる観点から、変動係数(Cv)は40以下であることが好ましく、35以下であることがより好ましい。
(1)エチレン系樹脂種粒子の製造
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(メタロセン触媒、mLL)(東ソー(株)製、商品名:ニポロンZ HF210K、融点103℃)10kg、およびフッ素樹脂粉末としてポリテトラフルオロエチレン(セイシン企業(株)製、TFW1000、平均粒子径:10μm、融点327℃、以下PTFEと略すことがある)14gをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製;型式:FM−75E)に投入し、5分間混合した。
次いで、この樹脂混合物を2軸押出機(東芝機械(株)製、型式:TEM−26SS;26mmφ2軸押出機)にて230〜250℃で溶融混練後、押出し、水中カット方式により0.4〜0.6mg/個(平均0.5mg/個)のエチレン系樹脂粒子(種粒子)を得た。
撹拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6.0gを加えた。その後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物12.9gを加え、室温で30分間撹拌した。これにより、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)2.0g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.2g、及び種粒子75gを投入した。
次いで、重合開始剤として、2種類の有機過酸化物を準備した。具体的には、有機過酸化物Aとして、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチルE」)を準備し、有機過酸化物Bとして、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(日油株式会社製「パーヘキシルZ」)を準備した。また、連鎖移動剤として、αメチルスチレンダイマー(日油株式会社製「ノフマーMSD」)を準備した。そして、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート2.08gと、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート0.86gと、αメチルスチレンダイマー0.63gとを、第1モノマー(スチレン系単量体)に溶解させた(表中、パーブチルEとパーヘキシルZの添加量の合計量を重合開始剤の量として示した)。そして、溶解物を回転速度500rpmで撹拌しながら、種粒子等が分散された上述のオートクレーブ内に投入した。尚、第1モノマーとしては、スチレン39gとアクリル酸ブチル(BA)36gとの混合モノマーを用いた。
次いで、オートクレーブ内の空気を窒素にて置換した後、昇温を開始し、1時間30分かけてオートクレーブ内を温度100℃まで昇温させた。昇温後、この温度100℃で1時間保持した。その後、撹拌速度を450rpmに下げ、温度100℃で7.5時間保持した。尚、温度100℃に到達してから1時間経過時に、第2モノマー(スチレン系単量体)としてのスチレン350gを5時間かけてオートクレーブ内に添加した。
次いで、オートクレーブ内を温度125℃まで2時間かけて昇温させ、そのまま温度125℃で5時間保持した。その後、オートクレーブ内を冷却させ、内容物(複合樹脂粒子)を取り出した。次いで、硝酸を添加して複合樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機により脱水及び洗浄を行い、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去することにより、スチレン系樹脂成分とエチレン系樹脂成分の比率(質量比)が85:15の複合樹脂粒子を得た。このスチレン系樹脂成分とエチレン系樹脂成分との比率は、製造時に用いたエチレン系樹脂100質量部に対して、エチレン系樹脂にスチレン系単量体を567質量部含浸させたことから配合比(質量比)として換算して求められる。
複合樹脂粒子1kgを分散媒としての水3500gと共に撹拌機を備えた5Lの耐圧密閉容器内に仕込んだ。続いて、耐圧密閉容器内の分散媒中に分散剤としてのカオリン5gと、界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gと可塑剤としての流動パラフィン5gをさらに添加した。次いで、回転速度300rpmで耐圧密閉容器内を撹拌しながら、容器内を発泡温度165℃まで昇温させた。その後、無機系物理発泡剤である二酸化炭素を耐圧密閉容器内の圧力が4MPa(G:ゲージ圧)になるように耐圧密閉容器内に圧入し、同温度(すなわち、165℃)で20分間保持した。これにより複合樹脂粒子中に二酸化炭素を含浸させて、発泡性複合樹脂粒子を得た。次いで、発泡性複合樹脂粒子を分散媒と共に密閉容器から大気圧下に放出することにより、複合樹脂発泡粒子を得た。
上記のようにして得られた複合樹脂泡粒子を、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状のキャビティを有する金型内に充填した。次いで、金型内に水蒸気を導入することにより、複合樹脂発泡粒子を加熱して相互に融着させた。その後、金型内を水冷によって冷却した後、金型より発泡粒子成形体を取り出した。さらに発泡粒子成形体を温度60℃に調整されたオーブン内に12時間載置することにより、乾燥及び養生を行った。このようにして複合樹脂発泡粒子成形体を得た。
まず、約1gの複合樹脂粒子を採取して、その重量W0を小数点第4位まで計量し、150メッシュの金網袋中に入れた。次いで、容量200mlの丸型フラスコに約200mlのキシレンを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットした。その後、マントルヒーターで8時間加熱することにより、ソックスレー抽出を行った。そして、抽出したキシレン溶液をアセトン600mlへ投下し、デカンテーションの後、減圧蒸発乾固を行った。その結果、アセトン可溶分としてスチレン系樹脂を得た。そして、スチレン系樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(すなわち、GPC)法により測定した。測定には、高分子測定用ミックスゲルカラムを用いた。具体的には、東ソー(株)製の測定装置(具体的には、HLC−8320GPC EcoSEC)を用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(すなわち、THF)、流量:0.6ml/分、試料濃度:0.1wt%、カラム:TSKguardcolumn SuperH−H×1本、TSK−GEL SuperHM−H×2本を直列に接続するという測定条件で行った。即ち、重量平均分子量は、テトラヒドロフランに溶解させたスチレン系樹脂の分子量をGPC法で測定し、標準ポリスチレンで校正することによって求めた。
150メッシュの金網袋中に複合樹脂粒子1.0gを入れた。次に、丸型フラスコ200mlにキシレン約200mlを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットした。マントルヒーターで8時間加熱し、ソックスレー抽出を行った。抽出したキシレン溶液をアセトン600mlへ投下し、デカンテーションし、上澄み液を減圧蒸発乾固し、アセトン可溶分としてスチレン系樹脂を得る。得られたスチレン系樹脂2〜4mgについて、ティ・エイ・インスツルメント社製のDSC測定器(Q1000)を用い、JIS K7121(1987年)に準拠して熱流束示差走査熱量測定を行う。そして、加熱速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度としてガラス転移温度Tgを求めた。
複合樹脂粒子1kgを水3.5Lと共に攪拌機を備えた5Lの耐圧容器内に仕込み、更に、水に分散剤としてのカオリン5g、界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6g、及び可塑剤としての流動パラフィン5gを添加した。次いで、耐圧容器内を撹拌速度300rpmで攪拌しながら、耐圧容器内を発泡温度165℃まで昇温させた後、耐圧容器内に無機系物理発泡剤としての二酸化炭素を4.0MPa圧入し、攪拌下で20分間保持した。その後、内容物を大気圧下に放出することにより、複合樹脂粒子を発泡させて複合樹脂発泡粒子を得た。得られた複合樹脂発泡粒子の嵩密度を測定し、嵩密度が低いほど発泡性に優れるとして発泡性を評価した。
尚、嵩密度(単位:kg/m3)は、次のようにして測定した。まず、1Lのメスシリンダーを用意し、空のメスシリンダー中に発泡粒子を1Lの標線まで充填した。次いで、1Lあたりの複合樹脂発泡粒子の質量(単位:g)を測定した。そして、複合樹脂発泡粒子1Lの質量(単位:g)を単位換算することにより嵩密度(単位:kg/m3)を算出した。
上述で得られた複合樹脂発泡粒子に関し、前述の表層平均気泡径(Ls)および複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)の測定方法に準じて測定した。また、測定した値から表層平均気泡径(Ls)と複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)との比率Ls/Laを算出した。なお、上記気泡径は、写真から実測する他、発泡粒子の切断面の拡大写真(倍率50倍)を取得した後、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて、写真上における個々の気泡の気泡径を計測することができる。
まず、約1gの複合樹脂発泡粒子を採取して、その重量W0を小数点第4位まで計量し、150メッシュの金網袋中に入れた。次いで、容量200mlの丸型フラスコに約200mlのキシレンを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットした。その後、マントルヒーターで8時間加熱することにより、ソックスレー抽出を行い、抽出終了後、空冷により冷却しキシレン溶液を得た。冷却後、抽出管から金網を取り出し、約600mlのアセトンにより金網ごとサンプルを洗浄し、次いで、アセトンを揮発させてから温度120℃で乾燥した。この乾燥後に金網内から回収されたサンプルが「キシレン不溶分」である。これらの操作にて得られた「キシレン不溶分」の重量W1を小数点第4位まで計量した。
キシレン不溶分の含有割合WXYは、上記にて計量した複合樹脂粒子の重量W0に対するキシレン不溶分の重量W1の割合(すなわち(W1/W0)×100、単位:%)である。なお、キシレン不溶分の含有割合は、複合樹脂発泡粒子のサンプルの代わりに、複合樹脂粒子または複合樹脂発泡粒子成形体のサンプルについて測定を行っても、同様の測定結果を得ることができる。
見掛け密度は、複合樹脂発泡粒子成形体の質量をその体積で除することにより算出することができる。
複合樹脂発泡粒子成形体の破断面を観察し、目視により内部で破断した複合樹脂発泡粒子と、隣り合う複合樹脂発泡粒子同士の界面で剥離した剥離箇所をそれぞれ計測した。次いで、内部で破断した複合樹脂発泡粒子と界面で剥離した剥離箇所の合計数に対する内部で破断した複合樹脂発泡粒子の割合を算出し、これを百分率で表した値を融着率(%)とした。
前述の方法に従い、複合樹脂発泡粒子成形体の平均気泡径(Lav)および気泡径の標準偏差(Lsd)を求めた。
成形直後の複合樹脂発泡粒子成形体に対し高さ60cmから1050gの鉄球を落下した。次いで当該複合樹脂発泡粒子成形体を温度60℃に調整されたオーブン内に12時間載置することにより、乾燥及び養生を行い、養生後の複合樹脂発泡粒子成形体表面の凹みを計測する。この操作を複合樹脂発泡粒子成形体5箇所にて同様に行ない、得られる個々の凹みの算術平均値を本発明における押し傷(mm)とした。押し傷の凹み深さ(単位:mm)が小さいほど、押し傷回復性に優れたものとなる。
複合樹脂発泡粒子成形体の曲げ弾性率を、JIS K7221−1(2006年)に記載の3点曲げ試験方法に準拠して測定した。具体的には、まず、厚み20mm×幅25mm×長さ120mmの試験片を発泡粒子成形体から全面が切削面となるように切り出した。室温23℃、湿度50%の恒室内で試験片を24時間以上放置した後、支点間距離100mm、圧子の半径R15.0mm、支持台の半径R15.0mm、試験速度20mm/min、室温23℃、湿度50%の条件で、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−10kNG試験機により曲げ弾性率(MPa)を測定した。5点以上の測定値の平均値を曲げ弾性率の測定結果として採用した。
上述の曲げ弾性率の測定と同様に複合樹脂発泡粒子成形体の3点曲げ試験を行い、歪(m/m)と応力(MPa)との関係から破断点までのエネルギー(MJ/m3)を求めた。曲げ破断エネルギーは、破断点までの歪−応力曲線と、横軸(歪)とによって囲まれる面積から算出される。
複合樹脂発泡粒子成形体の中央部分から縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を切出した。次に、この試験片に対してJIS K6767(1999年)に準拠して50%ひずみ時の圧縮荷重を求めた。この圧縮荷重を試験片の受圧面積で除することより、圧縮強度(すなわち、50%圧縮応力)を算出した。
上述で得られた実施例1の複合樹脂発泡粒子と後述する比較例2の複合樹脂発泡粒子について、中心部を通って切断した切断面を走査型電子顕微鏡(倍率30倍)にて観察し撮影した。実施例1の断面写真を図4として示し、比較例2の断面写真を図5として示す。
実施例1におけるエチレン系樹脂種粒子(種粒子)を作製する際に使用したPTFE(セイシン企業(株)製、TFW1000、平均粒子径:10μm)を7gとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。PTFE量を少なくすると発泡性がやや低下したものの、表層の平均気泡径(Ls)や複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)が大きくなる傾向があることが分かる。また、得られた発泡粒子成形体は押し傷回復性と融着性を満足するものであった。
[実施例3]
実施例1におけるエチレン系樹脂種粒子(種粒子)を作製する際に使用したPTFE(セイシン企業(株)製、TFW1000、平均粒子径:10μm)を70gとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。PTFE量を増加させると、実施例1と比較して表層の平均気泡径(Ls)や複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)が小さくなる傾向があることが分かる。また、発泡粒子成形体の押し傷回復性は、平均気泡径が小さくなることに起因して、実施例1よりも若干低下していた。
[実施例4]
実施例1における第一モノマーをスチレン48g、アクリル酸ブチル(BA)27gとし、第二モノマーをスチレン341gとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1におけるエチレン系樹脂種粒子(種粒子)を作製する際に使用したPTFEをセイシン企業(株)製、TFW3000、平均粒子径:3μmとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。PTFEの粒径が小さいものを用いると、表層の平均気泡径(Ls)や複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)が、実施例1よりも小さくなる傾向があることが分かる。
[実施例6]
実施例1におけるエチレン系樹脂種粒子(種粒子)を作製する際に使用したPTFEをセイシン企業(株)製、TFW2000、平均粒子径:6μmとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1におけるエチレン系樹脂種粒子(種粒子)を作製する際に使用したPTFEをセイシン企業(株)製、TFW500、平均粒子径:25μmとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。PTFEの粒子径が大きくなることに起因して、表層の平均気泡径(Ls)や複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)が大きくなる傾向があることが分かる。また、Ls/La比が1に近くなり、より均一な気泡径を有する発泡粒子が得られることが分かる。
[実施例8]
実施例1におけるエチレン系樹脂種粒子(種粒子)の量を100g、第一モノマーをスチレン64gとアクリル酸ブチル36g、第二モノマーを300gとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。
[実施例9]
実施例1におけるエチレン系樹脂種粒子(種粒子)の量を50g、第一モノマーをスチレン14gとアクリル酸ブチル36g、第二モノマーを400gとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例10]
実施例1における種粒子作製の際に用いているエチレン系樹脂を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(東ソー(株)製、ニポロンZ HF210K)9.5kg、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA(東ソー(株)製、ウルトラセン626)0.5kgとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表3に示す。実施例10は、実施例1と同様に押し傷回復性および融着性などの評価が良好で、かつ実施例1よりもさらに発泡性が良好であった。このことから、EVAを添加することで発泡性を向上させ得ることが示された。
[実施例11]
実施例1における種粒子作製の際に用いているエチレン系樹脂を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(東ソー(株)製、ニポロンZ HF210K)7.5kg、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA(東ソー(株)製、ウルトラセン626)2.5kgとし、複合樹脂粒子を作製する際の第一モノマーをスチレン52.5gとアクリル酸ブチル22.5g、第二モノマーを400g、有機過酸化物Aとして、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチルE」)1.67gとした以外は、表1に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表3に示す。実施例11は、EVAの添加量が実施例10よりも多く、発泡性の向上がさらに顕著であった。また実施例1と比較して表層平均気泡径Lsおよび複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径Laが大きくなっており、優れた押し傷回復性が示された。
[比較例1]
実施例1におけるPTFEを添加していない種粒子を用いた以外は、表2に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。PTFEを添加しない場合には、特に、複合樹脂粒子を耐圧容器内の分散媒体中にて無機系物理発泡剤とともに分散、含浸させ、複合樹脂粒子を加熱軟化状態で耐圧容器から放出して発泡させる方法で、発泡粒子を得た場合には、発泡性が不足して、目的の嵩密度を有する発泡粒子が得られないことが分かる。
[比較例2]
実施例1におけるPTFEの代りに、ホウ酸亜鉛を表2に示す量で添加した以外は、表2に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。発泡核剤としてホウ酸亜鉛を用いた場合には、得られる発泡粒子は、表層の気泡径が小さくなりすぎて、成形体とした場合に押し傷回復性が得られないことが分かる。
[比較例3]
実施例1におけるPTFEの代わりに、シリカ(水澤化学工業(株)製、ミズカシルP−709、平均粒子径:8μm)を表2に示す量添加した以外は、表2に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。発泡核剤としてシリカを用いた場合においても、得られる発泡粒子は、表層の気泡径が小さくなりすぎて、成形体とした場合に押し傷回復性が得られないことが分かる。
[比較例4]
実施例1における種粒子作製の際に用いているエチレン系樹脂を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(東ソー(株)製、ニポロンZ HF210K)7.5kg、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、ウルトラセン626)2.5kgとした以外は、表3に示すように実施例1と同様に複合樹脂発泡粒子と複合樹脂発泡粒子成形体を得た。得られた発泡粒子と発泡粒子成形体について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表3に示す。実施例11と対比して、比較例5は、キシレン不溶分が多く所定の範囲を超えており、エチレン系樹脂の架橋密度が高くなり発泡時に気泡核剤として作用することで、気泡径が満足せず、押し傷回復性が低下してしまうことが分かる。
(1)スチレン系単量体がエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子であって、
前記複合樹脂発泡粒子はフッ素樹脂粉末を含有し、
前記複合樹脂発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子の表層の気泡の平均気泡径(Ls)が100μm以上250μm以下であるとともに、前記複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)と前記表層の気泡の平均気泡径(Ls)との比率(Ls/La)が0.7以上1以下である
ことを特徴とする複合樹脂発泡粒子。
(2)前記複合樹脂発泡粒子のフッ素樹脂粉末含有量が、前記複合樹脂100質量部に対して0.005質量部以上0.15質量部以下である上記(1)に記載の複合樹脂発泡粒子。
(3)前記フッ素樹脂粉末が、ポリテトラフルオロエチレン粉末である上記(1)または(2)に記載の複合樹脂発泡粒子。
(4)前記複合樹脂のソックスレー抽出によるキシレン不溶分の割合が1質量%以上20質量%以下である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の複合樹脂発泡粒子。
(5)前記複合樹脂発泡粒子中の炭素数3以上6以下の炭化水素化合物の濃度が0.1質量%以下(ゼロを含む)である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の複合樹脂発泡粒子。
(6)前記エチレン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含み、
前記複合樹脂の酢酸ビニル成分の含有量が、前記複合樹脂100質量%に対して1質量%以下である上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の複合樹脂発泡粒子。
(7)スチレン系単量体がエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子成形体であって、
前記複合樹脂発泡粒子成形体はフッ素樹脂粉末を含有し、
前記発泡粒子成形体の見かけ密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、
前記発泡粒子成形体の最表面から内部に向かって20mm以内の範囲において、平均気泡径(Lav)が100μm以上200μm以下で、かつ気泡径の標準偏差(Lsd)が70μm以下であることを特徴とする複合樹脂発泡粒子成形体。
12・・・表層気泡
16・・・中心部
20・・・複合樹脂発泡粒子成形体
140・・・領域
700・・・第一従来粒子
712、812・・・表層気泡
800・・・第二従来粒子
S、S1・・・最表面
Claims (7)
- スチレン系単量体がエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子であって、
前記複合樹脂発泡粒子はフッ素樹脂粉末を含有し、
前記複合樹脂発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子の表層の気泡の平均気泡径(Ls)が100μm以上250μm以下であるとともに、前記複合樹脂発泡粒子全体の平均気泡径(La)と前記表層の気泡の平均気泡径(Ls)との比率(Ls/La)が0.7以上1以下である
ことを特徴とする複合樹脂発泡粒子。 - 前記複合樹脂発泡粒子のフッ素樹脂粉末含有量が、前記複合樹脂100質量部に対して0.005質量部以上0.15質量部以下である請求項1に記載の複合樹脂発泡粒子。
- 前記フッ素樹脂粉末が、ポリテトラフルオロエチレン粉末である請求項1または2に記載の複合樹脂発泡粒子。
- 前記複合樹脂のソックスレー抽出によるキシレン不溶分の割合が1質量%以上20質量%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の複合樹脂発泡粒子。
- 前記複合樹脂発泡粒子中の炭素数3以上6以下の炭化水素化合物の濃度が0.1質量%以下(ゼロを含む)である請求項1から4のいずれか一項に記載の複合樹脂発泡粒子。
- 前記エチレン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含み、
前記複合樹脂の酢酸ビニル成分の含有量が、前記複合樹脂100質量%に対して1質量%以下である請求項1から5のいずれか一項に記載の複合樹脂発泡粒子。 - スチレン系単量体がエチレン系樹脂に含浸重合された複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子成形体であって、
前記複合樹脂発泡粒子成形体はフッ素樹脂粉末を含有し、
前記発泡粒子成形体の見かけ密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、
前記発泡粒子成形体の最表面から内部に向かって20mm以内の範囲において、平均気泡径(Lav)が100μm以上200μm以下で、かつ気泡径の標準偏差(Lsd)が70μm以下であることを特徴とする複合樹脂発泡粒子成形体。
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