JP7321784B2 - 春巻の皮用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は春巻の皮用組成物、並びにこれを用いて調製される春巻用皮、未油ちょう春巻、および油ちょう済み春巻に関する。さらに本発明は春巻皮について、油ちょう処理後の食感を改善または向上する方法、また食感の経時的低下を抑制する方法に関する。
揚げ春巻は、揚げたて時に皮が適度な硬さを有し、またパリパリと歯切れの良い食感であることが求められる。また、一般に、油ちょう後に時間が経過すると、具材から水分が移行し、揚げ春巻の皮がふやけて軟らかくなり、またヒキが出て歯切れが悪くなるなど、食感が低下しやすいため、経時後もパリパリとした食感や歯切れの良さを維持していることが求められる。特に、昨今、外食や中食化が進み、市販の弁当や総菜を購入して食する人口が増えているため、油ちょう後、時間が経過した後でも、揚げたてのパリパリとした食感が維持された揚げ春巻に対するニーズは高い。
揚げ春巻の皮では低膨潤の加工澱粉を配合する等の方法が有効であることが知られている(例えば、特許文献1~2等参照)。
一方、米を製粉せずに米粒のままでゲル状にした米ゲルが、食品に対して、増粘性や弾力性の付与向上、モチモチ感の付与、とろみ付与、しっとり感付与、保湿性付与、離水防止、保形性向上、乾燥や老化の防止、冷凍耐性等といった種々の特性が付与できるとして、菓子類、パン類、水練り製品、ドレッシング、総菜等に広く適用されている(例えば、特許文献3~6等参照)。しかし、米ゲルを揚げ春巻の皮の調製に用いることで、揚げ春巻の食感が改良できること、具体的には揚げたてのパリパリ感が向上し、または油ちょう後、時間が経過しても、その低下が有意に抑制されて美味しい食感が持続することは知られていない。
特開2003-199518号公報 特開2004-121016号公報 特開2013-70663号公報 特開2015-65934号公報 国際公開第2014/199961号 特開2017-225379号公報
本発明は、油ちょう直後に、適度な硬さのあるパリパリとした歯切れの良さを有し、また油ちょう後も、その食感の低下が有意に抑制されて、できるだけ長く持続することができる春巻の皮用組成物を提供することを目的とする。また本発明は、春巻の皮に上記の特性、つまり油ちょう直後に、適度な硬さのあるパリパリとした歯切れの良さを付与し、また油ちょう後は、その食感の低下が有意に抑制されて、できるだけ長く持続する特性を付与する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意検討したところ、春巻の皮用組成物の調製に際して、糊化米加工素材を配合することで、上記課題が解決できることを見出した。具体的には、春巻の皮用組成物にゲルに相転移した糊化米加工素材を配合することで、配合しない場合と比べて、油ちょう直後の食感(歯切れがよくてパリパリとした食感)が顕著に向上すること、さらに、油ちょう後も、当該食感の低下が有意に抑制されて、比較的長く持続することを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を包含する。
(I)春巻の皮用組成物、およびその調製方法
(I-1)穀物粉、および糊化米加工素材を含むことを特徴とする春巻の皮用組成物。
(I-2)さらに糖質を含有する、(I-1)に記載する春巻の皮用組成物。
(I-3)粉状または顆粒状組成物である、(I-1)または(I-2)に記載する春巻の皮用組成物。
(I-4)水を含有する液状組成物である、(I-1)または(I-2)に記載する春巻の皮用組成物。
(I-5)前記糊化米加工素材が、高アミロース米および/または中アミロース米を含む米を水存在下で加熱処理して得られる糊化米を機械的撹拌処理して得られるゲル状物、その乾燥物、またはそれらを液状化した液状物である、(I-1)~(I-4)のいずれかに記載する春巻の皮用組成物。
(I-6)前記穀物粉が、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉、デュラム小麦粉等)、ライ麦粉、大麦粉、米粉、玄米粉、大豆粉、オーツ粉、そば粉、ヒエ粉、アワ粉、ホワイトソルガム粉、およびトウモロコシ粉からなる群より選択される少なくとも一種である、(I-1)~(I-5)のいずれかに記載する春巻の皮用組成物。
(I-7)前記糖質が、糖類(単糖類、二糖類等)、三糖以上の多糖類(澱粉、澱粉分解物、オリゴ糖)、および糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種である、(I-2)~(I-6)のいずれかに記載する春巻の皮用組成物。
(I-8)下記の工程を有する、(I-4)に記載する春巻の皮用組成物の製造方法:
糊化米加工素材、穀物粉および水を混合して液状組成物を調製するか、または糊化米加工素材、穀物粉、糖質および水を混合して液状組成物を調製する工程。
(I-9)前記糊化米加工素材が、液状糊化米加工素材であり、ゲル状糊化米加工素材または乾燥糊化米加工素材に水を加え、加熱処理し、撹拌処理して調製されるものである(I-8)に記載する製造方法。
(II)春巻用皮、およびその製造方法
(II-1)前記(I-1)、(I-2)、および(I-4)~(I-7)のいずれかに記載する春巻の皮用組成物がシート状に焼成されてなる春巻用皮。
(II-2)前記(I-1)、(I-2)、(I-4)~(I-7)のいずれかに記載する春巻の皮用組成物をシート状に焼成する工程を有する、春巻用皮の製造方法。
(III)未油ちょうの春巻、およびその製造方法
(III-1)前記(II-1)に記載する春巻用皮に具材が包まれてなる、未油ちょうの春巻。
(III-2)冷蔵または冷凍状態にある(III-1)に記載する未油ちょう春巻。
(III-3)前記(II-1)に記載する春巻用皮に、春巻の具材を配置し、巻き上げて成形する工程を有する、未油ちょうの春巻の製造方法。
(IV)油ちょう済の春巻
(IV-1)前記(III-1)または(III-2)に記載する未油ちょうの春巻が油ちょう処理されてなる、油ちょう済春巻。
(IV-2)冷蔵または冷凍状態にある(IV-1)に記載する油ちょう済春巻。
(IV-3)(III-1)または(III-2)に記載する未油ちょうの春巻を、油ちょう処理する工程を有する春巻の製造方法。
(IV-4)さらに冷蔵または/および冷凍処理する工程を有する、(IV-3)に記載する製造方法。
(V)食感の改善または向上、または/および食感の経時的低下の抑制方法
(V-1)春巻の皮用組成物の調製に穀物粉および糊化米加工素材、または穀物粉、糊化米加工素材および糖質を用いることを特徴とする、油ちょう処理後の春巻皮の食感を改善または向上するか、または/および食感の経時的低下を抑制する方法。
本発明によれば、春巻の皮用組成物に糊化米加工素材を配合することで、配合しない場合と比べて、油ちょう直後の食感(歯切れがよくてパリパリした食感)が顕著に向上すること、さらに、油ちょう後も、当該食感を比較的長く持続させることができる。
(I)春巻の皮用組成物、およびその調製方法
本発明が対象とする春巻の皮用組成物は、穀物粉に加えて、糊化米加工素材を含むことを特徴とする。また本発明が対象とする春巻の皮用組成物には、穀物粉および糊化米加工素材に加えて、糖質を配合することができる。
まず各成分について説明する。
(1)糊化米加工素材
本発明の春巻の皮用組成物の調製に使用する糊化米加工素材は、米を水の存在下で加熱して調製される糊化米(α化米)を機械的撹拌処理して得られるものであり、撹拌処理後はゾル(ペースト)からゲルに相転移をした半固形物の性状(ゲル状)を有している。ここで加熱処理する対象の米は、米粒や破砕米粒のような粒状のものでもよいし、また米粉のような米や破砕米の製粉処理物でもよく、両者の混合物であってもよい。
本発明で使用する糊化米加工素材は、当該半固形状(ゲル状)の糊化米加工素材であってもよい。また、これをさらに乾燥固化し、さらに必要に応じて粉砕若しくは顆粒化したものであってもよく、あるいは、半固形状(ゲル状)の糊化米加工素材またはその乾燥固化物に水を加えて緩くし、液状(溶液または分散液)にしたものであってもよい。本明細書において、「糊化米加工素材」という用語にはこれらのものが区別されることなく包含される。これらを区別して指し示す場合、ゲル状を有しているものは「ゲル状糊化米加工素材」または単に「米ゲル」と称し、乾燥したものは「乾燥糊化米加工素材」または単に「米ゲル乾燥物」と称し、液状を有しているものは「液状糊化米加工素材」または単に「米ゲル溶液」と称する。
使用される米は、特に限定されず、各種のうるち米を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。うるち米としては、ジャポニカ種、インディカ種およびジャパニカ種のいずれも使用することができ、高アミロース米、中アミロース米、および低アミロース米のいずれでもよいが、好ましくは高アミロース米および/または中アミロース米を含む米である。より好ましくは高アミロース米および/または中アミロース米であり、さらに好ましくは高アミロース米を含むか、または高アミロース米である。
低アミロース米とはアミロース含量が通常12質量%未満の米を指し、例えばミルキークイーン、ミルキーサマー、ミルキーパール、ゆめぴりか、スノーパール、ねばり勝ちなどの品種が知られている。また中アミロース米とはアミロース含量が通常12~20質量%の米を指し、例えばコシヒカリ、あきたこまち、日本晴、きらら397、ひとめぼれ、ササニシキなどの品種が知られている。高アミロース米とはアミロース含量が通常20質量%以上、特に25%質量以上の米を指し、例えばモミロマン、夢十色、ホシユタカ、ホシニシキ、ミレニシキ、中国134号、越のかおり、ミズホチカラなどの品種が知られている。これらの米は、精米の程度、品種などの異なる2種以上の混合物であってもよい。なお、米の精米の程度には特に制限はなく、玄米、分搗き米、白米の何れであってもよい。
糊化米加工素材の調製に使用される糊化米は、前述する米を水の存在下で加熱処理して糊化(α化)されてなるものである。加熱処理の際に用いる水の量は、米のアミロース含量に応じて設定することができる。通常、米の質量に対して0.8倍量を超える量、好ましくは1倍量以上の水を用いることができる。具体的には一例としてモミロマン(アミロース含量28%)等の高アミロース米の場合、米の質量に対して1.5倍量を超える量、好ましくは2倍量以上、より好ましくは2.8倍量以上の水の配合量を挙げることができる。水の配合量が少なすぎる場合、得られる糊化物の粘度が上昇しすぎて、その後の機械的撹拌処理において撹拌が困難となる。水の配合量の上限値は特に制限されないが、4倍程度を例示することができる。
なお、米として米粒や破砕米粒などの粒状物を使用する場合、水存在下で加熱する前に、予め水に浸漬しておいてもよい。浸漬時間は、通常10~120分程度を例示することができるが、これに制限されず、水温や米の吸水性に応じて適宜120分以上とすることもできる。また、本発明の効果を損なわないことを限度として、浸漬または加熱処理に使用する水に、酵素(例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ)製剤、該酵素を含有する物質(例えば、モルト、米麹)、糖類、酸、油脂等の成分を配合してよい。
加熱処理には、蒸す、茹でる、煮る、焼く、炒める、揚げる、電子レンジ加熱等の方法が挙げられる。また、加熱器具・装置としては、炊飯器、鍋、圧力鍋、電磁調理器(例:電子レンジ)等を用いることができる。加熱温度、加熱時間は、いずれの加熱手段を用いるかにより異なり、一義的に特定することはできないが、米が焦げ付かず、糊化が十分に進む時間であればよく、その限りで適宜調整することができる。また、加熱器具・装置内に内蔵された条件モード(例えば、お粥モード)に従って加熱してもよい。
かかる加熱処理によって糊化(α化)された米(糊化米)は、次いで機械的撹拌処理に供され、ゾル(ペースト)からゲルへと相転移されて糊化米加工素材として調製される。なお、当該機械的撹拌処理の前に冷却処理を行ってもよい。冷却処理することにより、冷却処理を行わない場合よりも粘度の低い糊化米加工素材を得ることができる。冷却処理の際の温度は、通常は常温(例えば15~30℃程度)である。
次いで行われる機械的撹拌処理は、物理運動により組織を破壊し得る処理を意味し、単なる混合処理とは異なる。機械的撹拌処理は、例えばフードプロセッサー、ホモジナイザー、ミキサー、ニーダー、混練機、押出機等の撹拌機器を用いて行えばよい。撹拌機器は、制限されないものの、トルクが大きい機器であるほうが、機械的撹拌処理中に糊化米の粘度が上昇しても撹拌が妨げられることがないため、好ましい。トルクの大きい撹拌機器としては、例えば、フードプロセッサー等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
機械的撹拌処理の条件は、糊化米の状態、撹拌機器の種類等によって適宜定めることができる。例えば、機械的撹拌処理時の撹拌条件としては、制限はされないが、無負荷時の回転数で1000~3000rpmであることが好ましく、1200~2000ppmであることがより好ましく、1500~1800rpmであることが更に好ましい。また、機械的撹拌処理時の温度条件としては、制限はされないが、品温が60℃以下、好ましくは室温以下の温度になるように調整することが好ましい。
前述するように、かかる機械的撹拌処理により、糊化米はゾルからゲルへと相転移し、ゲル状の糊化米加工素材(米ゲル)を得ることができる。なお、前記機械的撹拌処理に続き、再加熱処理を行ってもよい。再加熱処理は機械的撹拌処理後に行えばよく、機械的撹拌処理後直ちに行ってもよいし、期間が経過してから行ってもよい。再加熱処理を機械的撹拌処理後、期間が経過してから行うことにより、ゲル状糊化米加工素材の硬さや質感を、調製直後の状態に戻すことができる。再加熱処理として、例えば、湯(例えば沸騰している湯)への浸漬(例えば2~5分程度)、マイクロウェーブ加熱(電子レンジ処理)、蒸気による加熱を挙げることができる。
斯くして調製されるゲル状糊化米加工素材は、ペースト状ではなく一定のゲル形状を維持している。なお、制限はされないが、ゲル状糊化米加工素材は、ゲル形状を有するとともに、適度な硬さと質感を備えることができる。
当該ゲル状糊化米加工素材の硬さは、複素弾性率により総合的に評価することができる。複素弾性率G*は弾性成分と粘性成分の和であり、総合的な硬さを意味する。複素弾性率G*は具体的には、貯蔵弾性率G’をX軸、損失弾性率G”をY軸に取ったときのベクトルの長さにより示される。貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の測定は、動的粘弾性測定装置(AR-G2、TA Instruments)を用いて、温度25℃、回転数1Hz、応力1Paの条件で実施することができる。貯蔵弾性率G’は、ばねに相当する弾性情報である。損失弾性率G”は、ピストンの摩擦に相当する粘性情報である。またゲル状糊化米加工素材の質感は、粘性/弾性の比率により総合的に評価することができる。粘性/弾性の比率tanδは、いわゆるぷるぷる感(tanδが小さいほどぷるぷる感がある)、ぐにゃ感(tanδが大きいほどぐにゃ感がある)の指標である。具体的には、式tanδ=G”/G’で算出される。δは複素弾性率G*のベクトルと貯蔵弾性率G’(X軸)との間の角度を意味する。こうしたゲル状糊化米加工素材の物性およびその測定方法は、ゲル状糊化米加工素材の製造方法について記載する特開2013-70663号公報に記載されている通りであり、その記載は本明細書に援用することができる。
こうしたゲル状糊化米加工素材は、前述する方法で調製することもできるが、簡便には商業的に入手することができる。商業的に入手できるものとして、ライスジュレ(Rice gele’e)(白米ソフトタイプ(白米:水分=1:4)、白米ハードタイプ(白米:水分=1:2)、玄米ソフトタイプ(白米:水分=1:4)、玄米ハードタイプ(白米:水分=1:2)(ライステクノロジーかわち(株)製)を挙げることができる。
本発明で使用する糊化米加工素材は、前記の方法で調製されるゲル状糊化米加工素材(米ゲル)であってもよいし、これを乾燥して水分を除去してなる乾燥物(乾燥糊化米加工素材(米ゲル乾燥物))であってもよい。さらに乾燥物を粉砕した粉砕物(粉末)または顆粒化してなるものであってもよい。乾燥は、当業界で慣用される方法で行うことができ、自然乾燥(例えば陰干し、天日干し)であっても、また人工乾燥(熱風乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、凍結乾燥、加圧乾燥、真空乾燥)であってもよい。また、ゲル状糊化米加工素材またはその乾燥糊化米加工素材に水を加えて緩くし、液状(溶液または分散液)にしたもの(液状糊化米加工素材(米ゲル溶液))であってもよい。
(2)穀物粉
本発明の春巻の皮用組成物の調製に使用する穀物粉としては、小麦粉、米粉、玄米粉、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、オーツ粉、ヒエ粉、アワ粉、ホワイトソルガム粉、およびトウモロコシ粉、コーングリッツ粉砕物等を挙げることができる。ここで小麦粉には、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉が含まれる。また、これら穀物粉に熱処理を施した熱処理穀物粉等が含まれる。これらの穀物粉は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは小麦粉であり、より好ましくは薄力粉である。
(3)糖質
本発明の春巻の皮用組成物の調製に使用する糖質としては、糖類(単糖類、二糖類等)、三糖以上の多糖類(澱粉、澱粉分解物、オリゴ糖)、および糖アルコールを挙げることができる。ここで糖類には、ブドウ糖および果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等の二糖類が含まれ、複数の糖類の混合物(例えば異性化糖)の形態であってもよい。
澱粉には、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の澱粉;並びにこれらの澱粉に物理的、化学的な加工を単独または複数組み合わせて施した加工澱粉等の澱粉が含まれる。
澱粉分解物には、上記の澱粉を酵素または酸等の処理により加水分解等して得られるものであり、例えばα-グルコースの重合物であるデキストリンが含まれる。ここでデキストリンは、デキストロース当量(dextrose equivalent、以下、DEと略す)が、5~40程度のものをいう。DEは、還元糖をグルコースとして測定し、その全固形分に対する割合を示す値であり、下記式(1)から求められる澱粉の加水分解の程度(分解度)を示す指標である。
[式(1)]
DE=[直接還元糖(グルコースとして表示)/全固形分]×100 (1)
本発明において、デキストリンの種類には特に制限はなく、従来公知の一般的なデキストリン、分岐デキストリン等のいずれでも良い。デキストリンのDEは5~35が好ましく、5~33がさらに好ましく、特に8~30が好ましい。
オリゴ糖には、グルコースを構成糖とするイソマルトオリゴ糖、ショ糖にフルクトースが結合したフラクトオリゴ糖、ガラクトースを主成分とするガラクトオリゴ糖、キシロビオースを主要成分とするキシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、ゲンチオオリゴ糖、およびニゲロオリゴ糖などが含まれる。
糖アルコールには、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、オリゴ糖アルコールなどが含まれる。
これらの糖質は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、異性化糖、水飴等の混合物の形態で用いることができる。好ましくは単糖類、二糖類、澱粉分解物、および糖アルコールであり、より好ましくはブドウ糖、トレハロース、デキストリン(DE8~30)、および糖アルコールである。
(4)春巻の皮用組成物
本発明が対象とする春巻の皮用組成物は、春巻用皮を調製する際に使用される皮材組成物であり、春巻の皮用ミックス粉、および春巻の皮用バッターが含まれる。なお、「春巻」は、肉、魚介類、または野菜などの具材を、穀物粉を主成分とする原料粉で作った皮で包んだ食品である。本発明では、具材を包んだ皮がパリパリとしたクリスピーな食感を備えていることを特徴とすることから、生春巻や蒸春巻ではなく、揚げ春巻を対象とする。「春巻の皮用ミックス粉」は、春巻の皮材を構成する成分の粉粒体混合物であり、「春巻の皮用バッター」は、春巻の皮材を構成する成分に水を加えて均一にした流体であり、例えば、前記春巻の皮用ミックス粉を水に分散させて調製することもできる。
本発明の春巻の皮用組成物が春巻の皮用バッターである場合、当該春巻の皮用バッターは、前述する糊化米加工素材および穀物粉(または糊化米加工素材、穀物粉および糖質)を水と混合して調製することができる。ここで、糊化米加工素材は、ゲル状糊化米加工素材、乾燥糊化米加工素材、または液状糊化米加工素材のいずれであってもよく、適宜選択して使用することができる。乾燥糊化米加工素材を使用する場合は、あらかじめ水で膨潤または分散させてゲル状または液状に調整したうえで用いることもできる。即座に使用できる点で、好ましくはゲル状糊化米加工素材または液状糊化米加工素材である。なお、混合は、糊化米加工素材と穀物粉、または糊化米加工素材と穀物粉と糖質とが水に均一に分散すればよく、その限りにおいて特に制限されず、箸やホイッパーなどを用いて撹拌するほか、ミキサーや混練機等の撹拌機器を用いて行うこともできる。ここで春巻の皮用バッターをより均質な分散液として調製するためには、制限されないものの、糊化米加工素材に必要に応じて水または湯を加え、また必要に応じて加熱し、そのうえで糊化米加工素材がより均質な状態になるように撹拌した後、これに穀物粉および必要に応じて水(または穀物粉、糖質および必要に応じて水)を配合して混合撹拌する方法を例示することができる。限定されないものの、この方法により、春巻皮の食感(歯切れがよくてパリパリした食感)が向上し、さらに、当該食感を比較的長く持続させることができる。
かかる春巻の皮用バッター中に含まれる糊化米加工素材の割合は、制限されないものの、固形物換算で、春巻の皮用バッター中に含まれる固形物の総量を100質量%とした場合、通常0.5~20質量%(糊化米加工素材の固形物)の範囲から選択することができる。好ましくは0.8~10質量%であり、より好ましくは1.3~5質量%であり、特に好ましくは1.5~5質量%である。ここで「春巻の皮用バッター中に含まれる固形物の総量」は、春巻の皮用バッターの調製に使用される原材料が固形物であればその質量を、また原材料が糖液等のように液状または半固形状である場合はそれから水分含量を除いた固形物の質量を求め、それらを総計した質量を意味する。以下、「固形物換算」という場合も同様である。
春巻の皮用バッターに含まれる穀物粉の割合は、制限されないものの、固形物換算で、通常80~99.5質量%の範囲から選択することができる。好ましくは85~99質量%であり、より好ましくは90~98質量%である。春巻の皮用バッター中に、前述する糊化米加工素材および穀物粉に加えて糖質を含有する場合、糖質の割合は、制限されないものの、固形物換算で、通常10質量%以下の範囲から選択することができる。好ましくは8質量%以下の範囲である。下限値は特に制限されず、例えば0.1質量%、好ましくは0.5質量%を例示することができる。好ましくは0.5~8質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。
春巻の皮用バッター中には、本発明の効果を損なわない限り、その用途に合わせて、その他の副成分を適宜含有させることができる。副成分としては、例えば、卵白粉、卵黄粉、全卵粉、小麦たん白、乳たん白、大豆たん白等のたん白素材;重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等のガス発生剤、および酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤を含むベーキングパウダー等の膨張剤;グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘剤;食用油脂;食塩、グルタミン酸ナトリウム、粉末醤油等の調味料;酵母エキス、畜肉または魚介由来エキス等のエキス類;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;その他、かぼちゃ粉、色素、香料、香辛料、種々の品質改良剤等が挙げられる。ここで食用油脂としては、食用の植物性、動物性の油脂、またはそれらを加工した食用加工油脂を使用することができる。植物性油脂としては、大豆油、ひまわり油、なたね油、キャノーラ油、綿実油、ごま油、コーン油、米油、オリーブ油、ぶどう種油、落花生油、パーム油、カカオ脂等が挙げられ、動物性油脂としては、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等が挙げられる。食用加工油脂としては、植物性油脂、動物性油脂またはこれらを混合した油脂を、水素添加、分別またはエステル交換等の処理を行うことにより得た硬化油、分別油、エステル交換油、ショートニング、マーガリン、ファットスプレッド、および粉末油脂等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上の混合物で使用することができる。
春巻の皮用バッターは、上記各種成分を水と混合して、適度な粘度になるように調製される。粘度としては、通常春巻の皮用バッターに適した粘度であればよく、制限されないものの、例えばB型粘度計を用いて、ローターNo.3、温度20℃、ローター回転数12rpm、ローター回転時間1分の条件で測定した粘度(V12rpm)が5000~10000mPa・sとなるような粘度を挙げることができる。このような粘度に調整するための水分量は、上記粘度に調整できる量であればよく、制限されないものの、例えば春巻の皮用バッターに含まれる固形物の総量を100質量部とした場合、それに対する水分量として、80~130質量部を挙げることができる。好ましくは80~120質量部であり、より好ましくは85~110質量部である。
春巻の皮用組成物が春巻の皮用ミックス粉である場合、糊化米加工素材は乾燥物であることが好ましい。春巻の皮用ミックス粉に含まれる乾燥糊化米加工素材の割合は、制限されないものの、通常0.5~20質量%の範囲から選択することができる。好ましくは0.8~10質量%であり、より好ましくは1.3~5質量%であり、特に好ましくは1.5~5質量%である。春巻の皮用ミックス粉に含まれる穀物粉の割合は、制限されないものの、通常80~99.5質量%の範囲から選択することができる。好ましくは85~99質量%であり、より好ましくは90~98質量%である。春巻の皮用ミックス粉が、前述する乾燥糊化米加工素材および穀物粉に加えて糖質を含有する場合の糖質の割合は、制限されないものの、通常10質量%以下の範囲から選択することができる。好ましくは8質量%以下の範囲である。下限値は特に制限されず、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上を例示することができる。好ましくは0.5~8質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。春巻の皮用ミックス粉は、水または湯を添加混合して、前述する適度な粘度の春巻の皮用バッターになるように調製される。春巻の皮用バッターの粘度としては、前述した通りであり、そのような粘度に調整するための加水量としては、制限されないものの、前述の春巻の皮用バッターに含まれる固形物(総量)100質量部に対する水分量を参考として、80~130質量部の範囲を例示することができる。
(II)春巻用皮、未油ちょうの春巻、油ちょう春巻、およびそれらの製造方法
本発明の春巻用皮は、前述する本発明の春巻用皮バッターをシート状に焼成することで調製することができる。当該焼成は、通常、春巻の皮を焼成する際に用いる鉄製または銅製の板型焼成機若しくはドラム型焼成機を用いて行うことができる。かかる焼成機の板表面上またはドラム表面上で春巻用皮バッターをシート状に焼成(加熱固化)した後に、必要に応じて、所望の大きさに裁断することで、春巻用の皮とすることができる。焼成条件は、公知の条件から適宜選択することができる。
本発明が対象とする未油ちょうの春巻は、上記本発明の春巻用皮に、所望の春巻用具材を載置し、公知の方法により巻き上げて成形した油ちょう処理前の春巻である。未油ちょうの春巻は、そのまま油ちょう処理に供してもよいし、また未油ちょうの状態で冷蔵または冷凍保存されてもよい。
斯くして調製される未油ちょうの春巻は、そのままの状態で、または冷蔵または冷凍処理後、油ちょう処理することで春巻を製造することができる。油ちょう処理は、常法に従って実施することができる。例えば、前述する未油ちょうの春巻を、150℃以上の適当な温度(通常160~200℃)の食用油脂の中に投入し、具材に応じて適当な時間(通常1~3分)加熱処理する方法を挙げることもできる。食用油脂の中に投入する以外の油ちょう処理方法として、前述する未油ちょうの春巻の皮表面に、食用油脂を噴霧または塗布して焼成(グリル)などの加熱処理をする方法を用いることもできる。なお、春巻の具材が比較的多くの油分を含み、具材から皮に染み出る油分が利用できる場合は食用油脂の噴霧または塗布を省略することもできる。本発明および本明細書では、これらをいずれも「油ちょう」または「油ちょう処理」と称する。好ましくは適当な温度に加熱した食用油脂の中に投入して加熱処理する調理方法(揚げる)である。なお、こうした「食用油脂中に投入する」以外の加熱調理手段としては、例えば、電子レンジ、オーブン、スチームオーブン、コンベクションオーブン、オーブントースター、ホットプレート、鉄板、フライパンなどの調理器具を用いた調理方法を挙げることができる。また、食材に含まれる油分を使って調理する調理器具(例えば、フィリップス社製ノンフライヤー)を用いることもできる。
斯くして調製される春巻は、油ちょう直後は、皮が適度な硬さを有し、パリパリとした歯切れのよい良好な食感(クリスピーな食感)を有し、また時間が経過した場合でも食感の低下が抑えられて、比較的長くパリパリとした歯切れのよい食感を維持している。こうした食感の向上効果は、春巻の皮用組成物に、穀物粉および糊化米加工素材に加えて、糖質を配合することで、より高めることができる。なお、春巻は、油ちょう後、冷蔵または/および冷凍処理されてよく、再加熱して食することができる。
(III)春巻の食感向上または食感の経時的低下の抑制方法
前述するように、春巻の皮用組成物に穀物粉および糊化米加工素材、または穀物粉、糊化米加工素材および糖質を用いることで、当該春巻の皮用組成物を使用して製造した春巻について、油ちょう処理した後の春巻皮の食感を改善または向上することができる。ここで、「油ちょう処理した後の春巻皮の食感」とは、油ちょう直後の春巻特有の、適度な硬さを有し、ヒキがなくてパリパリとした歯切れのよい食感(クリスピー感)を意味する。また、「改善または向上」とは、春巻の皮用組成物の調製に「穀物粉および糊化米加工素材」、または「穀物粉、糊化米加工素材および糖質」を用いない場合と比較して、「穀物粉および糊化米加工素材」、または「穀物粉、糊化米加工素材および糖質」を用いることで、前記春巻皮の食感が良好になっていることを意味する。当該春巻皮の食感の改善または向上効果は、油ちょう処理直後よりも、時間が経過した後のほうがより大きい。つまり、本発明の春巻の皮用組成物を使用して製造した春巻によれば、油ちょう処理から時間が経過することによる上記食感の低下を抑制することで、揚げたてに近い春巻皮の食感を長く維持することが可能になる。
当該方法は、春巻の皮用組成物に穀物粉および糊化米加工素材、または穀物粉、糊化米加工素材および糖質を用いることで実施することができる。使用する穀物粉、糊化米加工素材、および糖質の種類、その配合割合、春巻の皮用組成物の調製方法、春巻の製造方法は、前述した通りであり、ここに援用することができる。
なお、本明細書において、「を含む」および「を含有する」という用語には、「から実質的になる」および「からなる」という意味も包含される。
以下に本発明を実験例に基づいて説明する。但し、本発明はかかる実験例に何ら制限されるものではない。なお、以下の実験例において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。また特に言及しない限り、実験は室温(25±2℃)および大気圧条件下で実施した。
実験例1 春巻の作製
小麦粉に糊化米加工素材、または糊化米加工素材と糖質を配合して調製した春巻用の皮を用いて、春巻を作製し、その食感から、春巻の皮の食感に与える糊化米加工素材、および糊化米加工素材と糖質の効果を評価した。
(1)春巻の皮用組成物の材料
・小麦粉:薄力粉(昭和産業(株)製)
・澱粉分解物A:SPD(昭和産業(株)製)、DE値:約30
・澱粉分解物B:L-SPD(昭和産業(株)製)、DE値:約17
・ぶどう糖:昭和含水結晶ぶどう糖AZ(昭和産業(株)製)
・糖アルコール:ソルビトール(物産フードサイエンス(株)製)
・トレハロース:トレハ((株)林原製)
・糊化米加工素材:ゲル状糊化米加工素材である市販米ゲル〔ライスジュレ(Rice gelee)(仕様:白米ソフトタイプ(固形分18.5%、水分81.5%)(ライステクノロジーかわち(株)製)〕
なお、糊化米加工素材は、これに同量の湯(90℃)を加えて、電子レンジ(500W)で1分間加熱した後、撹拌機(1000rpm、東京理化器械製)で5分間撹拌して、液状糊化米加工素材である米ゲル溶液(糊化米加工素材由来の固形分9.3%、水分90.7%)を調製し、以下の実験に使用した。
(2)春巻の皮用組成物、春巻用皮、および春巻の調製方法
容器に、表1および表2に記載する割合に従って、水、前記で調製した米ゲル溶液、糖質(実施例6~12のみ)および小麦粉、食塩を加え、撹拌機(1000rpm)で5分間撹拌して、春巻の皮用組成物(バッター)を調製した。
加熱した銅板の上に、上記で調製した春巻の皮用組成物(バッター)40gを流して薄くのばし、約150℃で40秒間焼成し、12cm×12cmのサイズに切断し、これを春巻皮とした。
予め調理した具材15gを、上記で作製した春巻用皮で包んで巻き、春巻を調製した。調製した春巻を-40℃の環境下で凍結し、-20℃で冷凍保存した。これを、175℃に加温した大豆油の中に投入し、5分間油ちょうし、次いでキッチンペーパーに載せて油を切り、揚げ春巻を作製した。
(3)食感の評価方法
上記で作製した揚げ春巻をキッチンペーパーに載せた状態で、恒温恒湿(25±5℃、40±5%)条件下で30分間および4時間放置した後、それぞれ良く訓練されたパネラー10名が食し、食感を評価した。食感の評価は、糊化米加工素材(液状糊化米加工素材である米ゲル溶液)を配合せずに調製した春巻の皮用組成物(バッター)を用いて、上記方法で作製した春巻(対照例)について、油ちょうから30分間経過後の揚げ皮の食感(対照食感)を「評価3」とし、これとの比較で、下記の5段階の判断基準に従って実施した。
[食感評価の判断基準]
評価5:対照食感と比較して、揚げ皮に硬さがあり、パリパリとして歯切れが非常によい
評価4:対照食感と比較して、揚げ皮にやや硬さがあり、パリパリとして歯切れがよい
評価3:揚げ皮がややパリパリとしている(対照食感:対照例の揚げ皮の油ちょうから30分後の食感)
評価2:対照食感と比較して、揚げ皮がやや軟らかく、歯切れが悪い
評価1:対照食感と比較して、揚げ皮が軟らかく、歯切れが非常に悪い
(4)食感評価の結果
春巻の皮用組成物の調製に、穀類粉に加えて糊化米加工素材を用いた場合の結果を表1に、穀類粉に加えて糊化米加工素材および糖質を用いた場合の結果を表2に示す。
Figure 0007321784000001
Figure 0007321784000002
表1に示す「30分後評価」の「揚げ皮の食感」の結果から、春巻の皮用組成物の調製に糊化米加工素材である米ゲル溶液を使用することで、春巻の皮に求められる食感(パリパリとした歯切れのよさ)が向上することが確認された(実施例1~5)。春巻の皮用組成物(バッター)中の糊化米加工素材の割合を、固形物換算で1.3質量%以上にすることでその効果は高くなり(実施例2)、1.8質量%以上にすることで顕著に高くなることが認められた(実施例3~5)。しかし、春巻の皮用組成物中の糊化米加工素材の固形分含量が1.8質量%を超えて配合しても、配合量に見合う大きな向上は認められなかった(実施例4~5)。また、表2に示す通り、糊化米加工素材である米ゲル溶液に加えて糖質を配合することで、より一層揚げ皮に求められる食感(パリパリとした歯切れのよさ)が向上することが確認された(実施例6~12)。
表1に示す「4時間後評価」の「揚げ皮の食感」結果から、春巻の皮用組成物(バッター)の調製に糊化米加工素材である米ゲル溶液を使用し、特に春巻の皮用組成物中の糊化米加工素材の固形分を1.8質量%以上にすることで、油ちょうから4時間経過した後でも、油ちょう後30分後の食感(パリパリ感)をほぼ維持することができた(実施例3~4)。一方、前述するように、糊化米加工素材である米ゲル溶液を4.6質量%以上配合すると、油ちょうから4時間経過すると食感が低下する傾向が認められた(揚げ皮がややしんなりした感じになる)(実施例5)。しかし、表2に示す通り、糊化米加工素材である米ゲル溶液に加えて糖質を配合することで、油ちょうから4時間経過した場合でも、対照例の油ちょう後30分後の食感(対照食感)と同等であることが確認された(実施例6~12)。
これらのことから、春巻の皮用組成物(バッター)中に、糊化米加工素材を配合することで、春巻皮の食感を顕著に向上することができ、油ちょうから時間が経過した後でも、食感の低下が有意に抑制されて、揚げ皮に求められる食感(パリパリとした歯切れのよさ)を維持できることが判明した。また糊化米加工素材に糖質を併用することで、春巻皮の食感がより一層向上し、持続効果も高くなることが判明した。なお、澱粉分解物Aと澱粉分解物Bとの間で春巻皮の食感に差は認められなかったことから、糖質として、分解度(DE値)に関係なく広く澱粉分解物が使用できるものと考えられる。

Claims (6)

  1. 穀物粉、糊化米加工素材、および糖質を含むことを特徴とし、
    前記糖質が、単糖類、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールからなる群より選択される少なくとも1種である
    春巻の皮用組成物。
  2. 水を含有する液状組成物である、請求項1に記載する春巻の皮用組成物。
  3. 請求項に記載する春巻の皮用組成物がシート状に焼成されてなる春巻用皮。
  4. 請求項に記載する春巻用皮に具材が包まれてなる、未油ちょうの春巻。
  5. 請求項に記載する未油ちょうの春巻が油ちょう処理されてなる春巻。
  6. 春巻の皮用組成物の調製に穀物粉、糊化米加工素材および糖質を用いることを特徴とする、油ちょう処理後の春巻皮の食感を改善または向上するか、または/および油ちょう処理後の春巻皮の食感の劣化を抑制する方法であって、
    前記糖質が、単糖類、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールからなる群より選択される少なくとも1種である、
    前記方法
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