JP2021000060A - 改質小麦粉 - Google Patents

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【課題】食感や加工性が改良された小麦粉であって、食品添加物表示が不要な湿熱処理によって改質された小麦粉の提供。【解決手段】下記の特性を有する改質小麦粉。(1)未糊化澱粉を含む、(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下、(3)RVAにおける最高粘度が2500cP以下である。更に、(4)アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の110%以上である特性を有することが好ましい。改質小麦粉、又は改質小麦粉を含む穀粉組成物若しくは食感改良剤を原料として、ベーカリー食品、油ちょう食品、麺類、麺皮類、及びフラワーペーストに使用することが可能である。【選択図】なし

Description

本発明は改質小麦粉に関する。
従来、食感改良や加工性改良を目的として、種々の澱粉や穀粉が開発、提案されている。澱粉の改質に関しては、減圧と加圧湿熱処理とを必要に応じて繰り返した後に冷却処理することで、澱粉粒の膨潤は認められるものの実質的に粘度を示さず、α−アミラーゼ吸着能の高い澱粉を製造する方法が提案されている(特許文献1)。またその改良法として、沸点以上に熱せられた蒸気(過熱蒸気)を用いて澱粉を加熱処理することで、膨潤抑制効果、耐熱性及び耐酸性に優れた澱粉を製造する方法も提案されている(特許文献2)。
穀粉の改質に関しては、穀粉に対して上記特許文献1記載の湿熱処理を行うことで、電子レンジで調理した場合でも、従来の食感の悪さ(ガミーで、硬く、引きが強い)が改善されて、ソフトでしっとりし、引きの無い食感を有するケーキ類の製造に適した、電子レンジ調理用ケーキ組成物が調製できることが知られている(特許文献3)。また、特許文献4には、粗蛋白質含量9〜12質量%の薄力系小麦粉を80〜100℃の常圧条件で湿熱処理することで、グルテンバイタリティが45〜55%で、実質的にα化されていない熱処理薄力小麦粉が得られ、当該小麦粉は、衣付けの際には、粘らずスムースな衣付けが可能なバッター液となり、調理後はボリュームのある外観と、表面はなめらかで歯もろくサクサクとし、内相は口溶けのよい食感の衣を有するアメリカンドッグに適した、アメリカンドッグ用ミックスとして好適に使用できることが記載されている。特許文献5には、飽和水蒸気が導入された加圧状態での密閉系撹拌機中に小麦粉を導入し、密閉系撹拌機中での滞留時間が2〜20秒間の条件下に、密閉系撹拌機からの排出時の小麦粉の品温が80℃超92℃以下になるようにして湿熱処理することで、含有澱粉が実質的にα化しておらず、グルテンバイタリティが未処理小麦粉のそれを100としたときに80〜92で、且つグルテン膨潤度が未処理小麦粉のそれを100としたときに105〜155である熱処理小麦粉が得られ、当該小麦粉は、電子レンジで再加熱した場合でも揚げ物特有のサクサクとした食感が劣化せず、電子レンジ再加熱に適した揚げ物用熱処理小麦粉として好適であることが記載されている。特許文献6には、粗蛋白質含量が8.5〜9.5%の小麦粉を上記特許文献5に記載された方法で湿熱処理して得られる、含有澱粉が実質的にα化しておらず、グルテンバイタリティが未処理小麦粉のそれを100としたときに70〜95で、かつグルテン膨潤度が未処理小麦粉のそれを100としたときに105〜160である熱処理小麦粉が、口溶けが良くて軽く、ふっくらとボリューム感を有し、かつしっとりとした食感のお好み焼きの製造に適したお好み焼き粉として有用であることが記載されている。特許文献7〜10にはいずれも飽和水蒸気を用いて130℃の常圧条件で湿熱処理することで得られるα化度が12.5〜30%、対粉300質量%に加水した場合の粘度が1〜10Pa・sである湿熱処理小麦粉が記載されている。具体的には、当該湿熱処理小麦粉が、揚げ物を調理する際の作業性および衣の火通りを改善し、衣の歯もろくサクサクした食感の向上と衣のボリューム感、花咲等衣の外観の向上を両立し、かつ常温、チルドまたは冷凍保存後の電子レンジ調理等の再加熱した場合でも製造直後の食感を保持し、経時変化耐性に優れた揚げ物類用のミックスとして有用であること(特許文献7);ボリューム、生地のしっとり感及び口溶け感を有し、さらに上記と同様に経時変化耐性に優れたお好み焼き類用の小麦粉として有用であること(特許文献8);製品ボリュームを向上させ、内層のキメが細かく、柔らかく、しっとり感および口溶け感に優れ、さらに上記と同様に経時変化耐性に優れたベーカリー類用の小麦粉として有用であること(特許文献9);ソース類およびフラワーペースト類を調理する際の作業性及び食感を改善し、常温、チルドまたは冷凍保存後の電子レンジ調理等の再加熱調理においても穀物臭や粉っぽさがなく、製造直後の口溶けを保持する等、経時変化耐性も優れたソース類またはフラワーペースト類の製造に適していること(特許文献10)が記載されている。特許文献11には、上記特許文献5に記載された熱処理小麦粉と上記特許文献7〜10に記載された湿熱処理小麦粉との混合粉が、製品ボリュームを向上させ、内層のキメが細かく、柔らかく、しっとり感および口溶け感に優れたベーカリー類の製造に適したベーカリー類用ミックスとして有用であることが記載されている。
澱粉や穀粉の食感改良や加工性改良には、そのほか、澱粉を化学処理した加工澱粉を併用する方法も広く使用されているものの、上記の湿熱処理澱粉や湿熱処理穀粉とは異なり、食品添加物表示が必要であるという問題がある。
特開平4−130102号公報 特開2010−163582号公報 特開平8−159号公報 特開2014−68550号公報 特開平9−191847号公報 特開2002−291448号公報 特開2008−67675号公報 特開2008−67676号公報 特開2008−92941号公報 特開2008−99665号公報 特開2008−278786号公報
本発明は、小麦粉の食感や加工性を改良すること、具体的には食品添加物表示が不要な湿熱処理によって改質された小麦粉を提供することを目的とする。
湿熱処理によって改質された小麦粉については、実質的に糊化していると、生地がべたつきやすくなるため、ベーカリー製品や麺類製品については二次加工性が悪くなるという問題がある。また、ケーキ等のベーカリー製品においては粉合わせ時に吸水しやすく気泡が壊れやすいため、ボリューム感、口溶け感、及び弾力性が得られにくいという問題がある。またグルテンの変性度が低い小麦粉については、バッター調製時等、水と混合した際にグルテンを形成するため、天ぷら等の衣において、ひきが出て歯切れが悪くなる等の問題がある。このため、特に本発明は、こうした従来の湿熱処理小麦粉が有する幾つかの問題のうち少なくとも一つを解決することを目的とした改質小麦粉を提供するものでもある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、小麦粉に所定の湿熱処理を施すことにより、食感又は加工性が改良された小麦粉が得られることを見出した。より詳細には、含有澱粉を実質的に糊化させることなく含有蛋白質を変性させることで、糊化時に未処理小麦粉と同様に澱粉粒が膨潤するものの、崩壊はせず、ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)による測定において最高粘度及びブレークダウン値が低いという特徴的な糊化挙動を示す改質小麦粉が得られることを見出し、当該改質小麦粉が前述する従来の湿熱処理小麦粉の問題の少なくとも一つを解消し得る、良好な特性を備えていることを確認した。
本発明はかかる知見に基づいてさらに検討を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである:
(I)改質小麦粉
(I−1)下記の特性を有する改質小麦粉:
(1)未糊化澱粉を含む、
(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下、
(3)RVAにおける最高粘度が2500cP以下である。
(I−2)さらに下記の特性を有する(I−1)に記載する改質小麦粉:
(4)アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の110%以上、より好ましくは115%以上、さらに好ましくは130%以上、特に好ましくは140%以上である。
(I−3)小麦粉全蛋白質含量が6〜15質量%である(I−1)又は(I−2)に記載する改質小麦粉。
(II)穀粉組成物
(II−1)(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する改質小麦粉を含有する穀粉組成物。
(III)改質小麦粉の用途
(III−1)(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する改質小麦粉を含有する食感改良剤。
(III−2)飲食品の製造に際して、(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する改質小麦粉を食品の製造原料のひとつとして用いる、飲食品の食感改良方法。
(IV)改質小麦粉を用いた飲食品とその製造方法
(IV−1)(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する改質小麦粉、(II−1)に記載する穀粉組成物、又は(III−1)に記載する食感改良剤が添加されてなる飲食品。
(IV−2)(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する改質小麦粉、又は(II−1)に記載する穀粉組成物を、製造原料の全部又は一部として配合する工程を有する、穀粉含有飲食品の製造方法。
(IV−3)前記穀粉含有飲食品が、ベーカリー食品、油ちょう食品、麺類、麺皮類、及びフラワーペーストよりなる群から選択されるいずれかである(IV−1)に記載する飲食品、又は(IV−2)に記載する製造方法。
(IV−4)前記穀粉含有飲食品が、パン、ケーキ、菓子、パンケーキ、デニッシュ、ピザ、ドーナツ、アメリカンドック、中華まん、たこ焼、お好み焼等のベーカリー製品;天ぷら、から揚げ、コロッケ、とんかつ等の油ちょう食品;うどん、中華麺、そば、パスタ等の麺類;餃子、焼売、ワンタン、春巻き等の麺皮類;フラワーペースト等からなる群より選択される少なくとも1種である、(IV−1)に記載する飲食品、又は(IV−2)に記載する製造方法。
本発明によれば、例えばベーカリー食品、油ちょう食品、麺類、麺皮類、またはフラワーペースト等の小麦粉含有飲食品の食感または加工性を改良することができる。具体的には、ベーカリー製品の二次加工性;ベーカリー製品のしっとり感、ふんわり感、弾力性若しくは口溶け等の食感;天ぷら、から揚げ、若しくはパン粉フライ食品等の油ちょう食品の二次加工性;油ちょう食品のサクミ、歯切れ、口溶け若しくは軽さ等の食感;麺類若しくは麺皮類の二次加工性;または麺類若しくは麺皮類のソフトさ、もち感若しくは弾力性等の食感を改良することができる。
参考例(未処理小麦粉)、比較例2、及び実施例5(改質小麦粉)のRVAプロファイルを示す(実験例1)。 (A)参考例(未処理小麦粉)、(B)実施例5(改質小麦粉)、及び(C)比較例3の小麦粉を偏光顕微鏡で観察した画像を示す(実験例1)。
(I)改質小麦粉
本発明の改質小麦粉は、下記(1)〜(3)の特性を有することを特徴とする。また本発明の改質小麦粉は、これらに加えて(4)の特性を有するものであってもよい。
(1)未糊化澱粉を含む。
(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下である。
(3)RVAにおける最高粘度が2500cP以下である。
(4)アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合に110%以上である。
以下、これらの特性について説明する。
(1)未糊化澱粉を含む
澱粉は、直鎖成分のアミロースと分岐成分のアミロペクチンから構成され、これらの成分が部分的に微結晶を発達させた多結晶の粒状構造をもつ。澱粉粒を水中で加熱すると、まず結晶性を消失して膨潤し、さらに加熱すると、澱粉粒が崩壊し、その断片と一部溶解した澱粉分子が混合した糊液となる。つまり「澱粉の糊化」は、一般に水の存在下で加熱することで澱粉粒が不可逆的に膨潤し、さらに崩壊ないし溶解して、結晶性及び複屈折性を失い、粘度が上昇した状態をいう。こうした糊化過程は、一般には、澱粉粒の結晶構造の変化を、澱粉粒の複屈折性から観察する偏光顕微鏡法等によって評価することができる(中村道徳ら編:生物化学実験法19「澱粉・関連糖質実験法」(学会出版センター)p.166(1999))。偏光顕微鏡法による観察において、澱粉の糊化は、結晶性及び複屈折性の喪失により、未糊化澱粉で見られた形成核で交差した偏光十字が見られなくなることで判定することができる。
本発明の改質小麦粉は未糊化澱粉を含むことを特徴とする。改質小麦粉が未糊化澱粉を含んでいることは、前述するように、偏光顕微鏡法による観察において澱粉粒形と偏光十字が鮮明に確認できることで判断することができる。改質小麦粉中に含まれる未糊化澱粉の割合は、制限されないが、改質前の小麦粉(以下、「未改質小麦粉」又は「未処理小麦粉」と称する)に含まれる未糊化澱粉の量(100%)と比較して100%未満70%以上であることが好ましい。好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。なお、この割合は偏光顕微鏡法による観察において観察した全ての澱粉粒数と偏光十字が観察された澱粉粒の個数を計測し、その比を算出することで評価することができる。なお、偏光顕微鏡観察は、スライドグラスに被験試料として粉体状の小麦粉を少量のせ、上からスポイトで蒸留水を1〜2滴たらし、次いでカバーガラスで覆い、200倍率にて観察した。本発明の改質小麦粉は、湿熱処理しながらも未糊化澱粉を含むことで、従来の湿熱処理小麦粉が有する問題を少なくとも一つ改善する効果を有している。
(2)小麦粉に含まれる全蛋白質量中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下
本発明において「酢酸可溶蛋白質」は、改質小麦粉又は未改質小麦粉(これらを総称して「小麦粉」という)に含まれる全蛋白質のうち、0.05Nの酢酸水溶液に可溶な蛋白質を意味する。上記酢酸可溶蛋白質の割合(質量%)は、0.05Nの酢酸水溶液を用いて小麦粉から抽出した可溶性画分(抽出液)に含まれる窒素含量と、小麦粉に含まれる全窒素量から換算して求めることができる。
小麦粉から酢酸可溶性画分(抽出液)を抽出して、ケルダール法に供する検体(酢酸可溶蛋白質を含む抽出液)を調製する方法を簡単に説明すると以下の通りである。なお、当該抽出操作は25℃、大気圧条件下で実施することができる。
(1)小麦粉2gを100mL容量の三角フラスコに入れる。
(2)これに0.05N酢酸を40mL加えて振盪する(25℃、130rpm、60分間)。
(3)三角フラスコの内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相(抽出液)と下層の固相(残渣)とに分離する。
(4)上記で分離した抽出液をろ紙を用いて吸引濾過して回収する。
(5)上記(2)の三角フラスコ中に残った残渣に、再び0.05N酢酸40mLを入れてフラスコ壁面についた残渣を洗い流すように軽く撹拌し、内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相(抽出液)と下層の固相(残渣)とに分離する。
(6)上記で分離した抽出液をろ紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して回収し、前記(4)で回収した抽出液と混合する。
(7)斯くして調製した抽出液をイオン交換水にて100mLにメスアップし、これを下記に説明するケルダール法に供する検体(酢酸可溶蛋白質を含む抽出液)として用いた。
小麦粉に含まれる全蛋白質量中の酢酸可溶蛋白質含量(質量%)は、上記方法で調製される検体の窒素含量、及び小麦粉に含まれる全窒素含量を各々ケルダール法によって求めて、その値から算出することができる。当該測定も、特に言及されない限り25℃、大気圧条件下で実施することができる。
(a)上記の操作で回収した抽出液のうち25mLを分解に供する。分解は、上記検体25mLにケルダール分析用分解促進剤(KJELTABS:フォス社製)1錠、及び濃硫酸15mLを加えてこれを分解用試料として、ケルダール分解器にセットして行う。また小麦粉の総窒素含量を測定するため検体として0.5gの小麦粉を用い、同様にケルダール分解器にセットして分解に供する。
なお、抽出液(25mL)及び小麦粉の分解は、両者とも同じ条件を採用すればよく、その限りにおいて制限されないものの、通常400〜420℃で90〜150分間程度加熱することで実施することができる。
(b)分解後、冷却した後に、ケルダール分解器から取り出した試料にイオン交換水を30mL加えて、これをケルダール自動蒸留・滴定・計算装置(製品名「スーパーケル1500/1550」、株式会社アクタック製)にセットして、蒸留及び滴定を行い、窒素量を算出する。
(c)検体及び小麦粉について、上記で得られる窒素量から下式に基づいて、小麦粉に含まれる全蛋白質量(100質量%)中の酢酸可溶性蛋白質含量(%)を算出する。
本発明の改質小麦粉は、上記方法で求められる小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量(質量%)が25質量%以下であることを特徴とする。未改質の小麦粉の当該酢酸可溶蛋白質の割合は、50〜70質量%であることからわかるように、本発明の改質小麦粉の上記値はかなり小さい。このことは、未改質小麦粉に本来含まれている酢酸可溶蛋白質の一部が変質して不溶化していることを意味するものと考えられる。小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質の割合(質量%)として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下である。その下限値は、特に制限されないものの、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上である。本発明の改質小麦粉は、小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質の割合(質量%)が25質量%以下と、蛋白質がより変性していることで、特に、グルテン形成がされにくくなり、良好な食感(例えば、サクミや歯切れ等)を発現することができるという効果を有している。
(3)RVAにおける最高粘度が2500cP以下である
本発明の改質小麦粉は、その懸濁液の粘度変化を連続的に測定するラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)を用いて求められる最高粘度が2500cP以下であることを特徴とする。
当該最高粘度の求め方を簡単に説明すると以下の通りである。なお、当該測定は特に言及しない限り、大気圧条件下で実施することができる。
(i)測定する対象の小麦粉3.5gを25mLの0.5mM硝酸銀水溶液に入れてよくかき混ぜて懸濁し、14質量%濃度の懸濁液を調製する。
(ii)この懸濁液(25℃)を、RVA装置(RVA4500、Parten社製)(バトル回転数:160rpm)に供する。RVA装置の設定温度条件に従って懸濁液を加温及び冷却し、その間連続的に懸濁液の粘度(cP)を読み取り、時間(秒)を横軸、粘度(cP)を縦軸としたRVAプロファイルを作製する。
なお、RVA装置の設定温度条件は次の通りである。
50℃に60秒間保持→50℃より1℃/5秒の速度で昇温→95℃になった時点(加熱開始から282秒後)で同温度にて150秒間保持→その後(加熱開始から432秒後)約1℃/5秒の速度で降温→50℃になった時点(加熱開始から660秒後)で同温度で120秒間保持。
最高粘度は斯くして得られるRVAプロファイルから求めることができる。具体的には、50℃から95℃に温度を上昇させると粘度が上がってピークに達した後、下降する挙動を示すが、そのピーク時の粘度を最高粘度とする。本発明の改質小麦粉のRVAにおける最高粘度は、前述するように2500cP以下である。好ましくは2300cP以下、より好ましくは2100cP以下、さらに好ましくは1800cP以下、よりさらに好ましくは1500cP以下、特に好ましくは1000cP以下である。その下限値は、制限されないものの、100cP以上であり、好ましくは200cP以上である。
本発明の改質小麦粉の一例として、後記実験例1で製造した改質小麦粉(実施例5:加圧湿熱処理時間5時間)のRVAプロファイルを図1に示す。図1には、未処理小麦粉(参考例)、及び比較例2(製造時の加圧湿熱処理時間が0.5時間;「非改質小麦粉」とも称する)の小麦粉のRVAプロファイルも合わせて示す。なお、澱粉に関して、澱粉の物性とRVAプロファイルとの関係は次のことがいえる。澱粉の懸濁液の粘度は極めて低いが、RVAを用いた測定を開始後、徐々に加温していくと、澱粉粒が吸水・膨潤し、澱粉粒同士の摩擦が増加するため澱粉懸濁液の粘度が上昇する。さらに加熱を続けると、一般的な澱粉懸濁液は最高粘度(ピーク粘度)に達し、その後、澱粉粒の崩壊に伴い、粘度は減少に転じる。最高粘度に達した後に減少に転ずる粘度の低下現象をブレークダウンという。架橋処理等によって澱粉粒の膨潤が十分に抑制された膨潤抑制澱粉は、糊液を加熱しても澱粉粒が崩壊しないためにブレークダウンは起こらない。澱粉粒は崩壊後、徐々に冷却していくと、澱粉の粒子が冷え固まり、再構成される結果(澱粉の老化現象)、澱粉粒同士の摩擦が増加して糊液の粘度が上昇する挙動が見られる。この粘度の再上昇をセットバックという。老化が抑制された澱粉粒ではセットバックが生じにくい。このことを踏まえると、本発明の改質小麦粉は、未処理小麦粉(参考例)及び非改質小麦粉(比較例2)と比較して、最高粘度が低いという特徴がある。また、本発明の改質小麦粉は、未処理小麦粉(参考例)及び非改質小麦粉(比較例2)と比較して、ブレークダウン幅が小さいことを特徴とする。このことは本発明の改質小麦粉は、水存在下で加熱すると、含有澱粉粒は膨潤するものの、架橋澱粉等と同様に崩壊しにくいことを示す(崩壊耐性)。さらに、本発明の改質小麦粉は、未処理小麦粉(参考例)及び非改質小麦粉(比較例2)と比較して、セットバック値が小さいことを特徴とする。このことから本発明の改質小麦粉は、老化耐性を備えているといえる。老化耐性を備えた本発明の改質小麦粉によれば、経時変化耐性(時間が経っても硬くなりにくい)を有するベーカリー製品や麺類を製造することが可能である。
(4)アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合に110%以上である
当該特性は、前述の(1)〜(3)の特性に加えて、本発明の改質小麦粉が有する任意の特性である。なお、本発明でいうアミラーゼはカビ由来のアミラーゼを意味する。
アミラーゼ消化性の求め方を簡単に説明すると以下の通りである。なお、当該測定は特に言及しない限り、室温(25℃)及び大気圧条件下で実施することができる。
(小麦粉のアミラーゼ消化性の求め方)
小麦粉試料100mgに、予め40℃で10分間プレインキュベートしたα−アミラーゼ溶液(Aspergillus oryae由来,50unit/ml)を1ml添加して、撹拌した後、40℃で10分間処理する。次いで、クエン酸−燐酸水溶液(pH2.5)を5ml添加して反応を停止させ、遠心分離(1,000g、5分)して上清を得る。この上清0.1mlにアミログルコシダーゼ溶液(Aspergillus niger由来,2unit/0.1ml)を添加して40℃で20分間処理した後、510nmで吸光度を測定する。得られた吸光度から、標準溶液を用いて作成したD−グルコースの検量線を利用して、生成したグルコース量を算出する。
未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合における改質小麦粉のアミラーゼ消化性は、下式から求めることができる。
本発明の改質小麦粉は、前述するようにアミラーゼ消化性が未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合に110%以上であることが好ましい。より好ましくは115%以上であり、さらに好ましくは130%以上、特に好ましくは140%以上である。なお、上限は、本発明の効果を妨げないことを限度として、特に制限されないものの、2500%以下、好ましくは2000%以下、より好ましくは1800%以下を例示することができる。本発明の改質小麦粉はアミラーゼに消化されやすいことから、例えばパン等の発酵性のベーカリー製品を製造したときに発酵性がよくなり、香りや甘味等の風味が良くなるといった効果を得ることが可能である。
上記の特性を有する本発明の改質小麦粉は、小麦粉を、飽和水蒸気の下、加圧した状態のままで100℃以上に加熱処理することで調製することができる。
加圧条件としては、大気圧(0MPaG)以上、好ましくは0.05MPaG以上、より好ましくは0.1MPaG以上を挙げることができる。上限値は、制限されないものの、通常0.5MPaG以下を挙げることができる。また、加熱温度は、100℃以上の高温であればよく、制限されないものの、105℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上を挙げることができる。上限値は、制限されないものの、通常160℃以下を挙げることができる。
加圧条件下での湿熱処理に要する時間は、前述する特性を有する本発明の改質小麦粉が調製できる時間であればよく、処理する小麦粉の量、並びに採用する加圧条件及び温度条件等に応じて適宜設定調整することができる。制限されないものの、上限としては5時間を超えない範囲で設定することができる。
湿熱処理する原料として用いる小麦粉は、薄力粉、中力粉、強力粉、及びデュラム小麦粉等、その種類に制限されるものではないが、蛋白質含量が6〜15質量%の範囲にあるものが好ましい。より好ましくは蛋白質含量が6.5〜14質量%、特に好ましくは蛋白質含量が7〜13.5質量%の範囲にあるものである。なお、この蛋白質含量も前述するケルダール法に従って求めることができる。
(II)穀粉組成物
前述する本発明の改質小麦粉は、そのもの自体を穀粉組成物とすることができるほか、必要に応じて、製造する食品の種類に従って、小麦粉以外の穀粉及び/又は澱粉と組み合わせて、例えばミックス粉(ベーカリー製品用ミックス、ホットケーキ用ミックス、お好み焼用ミックス、たこ焼用ミックス、天ぷら用ミックス等)のような穀粉組成物として調製することができる。
小麦粉以外の穀粉としては、例えば米(うるち米、もち米等)、大麦、ライ麦、とうもろこし、あわ、ひえ、又ははと麦等から調製される穀粉を挙げることができる。具体的には、米粉(上新粉、上用粉、餅粉、白玉粉、玄米粉等)、大麦粉、ライ麦粉、とうもろこし粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉等が挙げられる。また穀粉のほか、例えば大豆又はそばの種子から調製される大豆粉又はそば粉等;馬鈴薯や甘藷等の芋類やワラビ等の野菜から調製される粉末ポテトやワラビ粉を配合することもできる。
澱粉としては、穀物、穀物以外の植物種子、又は植物体から抽出される澱粉を挙げることができ、例えばコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉等が例示される。また澱粉として、加工澱粉を配合することもできる。加工澱粉は、天然澱粉に物理的及び/又は化学的処理等を施した澱粉であり、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉等を原料澱粉として加工処理された酵素処理澱粉、アルファー化澱粉、湿熱処理澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉、漂白澱粉、アセチル化澱粉等のエステル化澱粉、リン酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等のエーテル化澱粉、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等の複数の加工を組み合わせた加工澱粉等が挙げられる。
調製する食品(二次加工品)の種類によっても相違するが、穀粉組成物には、その他、必要により、各種の副資材を含むことができる。例えば、食塩やその他の塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等);イーストフード(例えば、無機フード、有機フード、酵素系フード等);油脂類(例えば、ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油(オリーブオイル、菜種油、大豆油、紅花油等)、粉末油脂、折り込み油脂等);糖類(例えば、トレハロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、砂糖、マルトース、イソマルトース等の糖類;ソルビト−ル、マルチトール、パラチニット、還元水飴等の糖アルコール;デキストリン;オリゴ糖等);乳製品(例えば、牛乳、粉乳類(脱脂粉乳を含む)、クリーム類、チーズ類、ヨーグルト等);卵製品;増粘剤(例えば、キサンタンガム、グアガム、アルギン酸エステル、ペクチン、タマリンドシードガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガラクトマンナン、ジェランガム等の増粘多糖類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール等);膨張剤(例えば、重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等);乳化剤(例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等);酵素類;製パン改良剤;調味料(例えば、アミノ酸、核酸等);保存料;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸等);着色料、又は香料等を用いることもできる。
(III)食感改良剤
前述する本発明の改質小麦粉は、前述する特性を有することから、従来の小麦粉(未処理小麦粉)に代えて又はそれと一緒に用いることで、飲食品の食感を改良することが可能になる。このため、本発明では、前記本発明の改質小麦粉についてその食感改良剤としての用途、並びにそれを用いた食感改良方法を提供する。
食感改良の対象となる飲食品に特に制限はなく、例えばベーカリー食品、油ちょう食品、麺類、麺皮類、フラワーペースト等が挙げられる。また、飲食品に添加する方法やそのタイミングに特に制限はなく、従来配合している未処理小麦粉に代えて又はそれと一緒に、本発明の改質小麦粉を飲食品の製造原料の一つとして配合し、その飲食品中に所定量含有するようにすればよい。なお、調理された飲食品中には、配合した未処理小麦粉がそのままの状態で含まれているわけではない。加熱を含む各種の調理工程を経ることで、配合した改質小麦粉の状態は変化していることは常識的に理解されることである。
上記においてベーカリー食品とは、製造原料として小麦粉を含み、これを焼成、蒸す、蒸し焼き、油ちょう、及び電子レンジ調理等の加熱処理をして製造される加工食品であり、制限されないものの、例えばパン類、ケーキ、洋菓子類、和菓子類及びお好み焼、たこ焼等を挙げることができる。パン類としては、食事パン(例えば食パン、ライ麦パン、フランスパン、乾パン、バラエティブレッド、ロールパン等)、調理パン(例えばホットドッグ、ハンバーガー、ピザパイ等)、菓子パン(例えばジャムパン、アンパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュ、コロネ等)、蒸しパン(例えば肉まん、中華まん、あんまん等)、特殊パン(例えばグリッシーニ、イングリッシュマフィン、ナン等)等が例として挙げられる。ケーキとしては、蒸しケーキ、スポンジケーキ、バターケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、ブッセ、バームクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ等が例として挙げられる。なお、洋菓子には、ワッフル、ドーナツ、クレープ、パイ、ビスケット、カステラ、マドレーヌ、クッキー、及びサブレ等が含まれる。また和菓子には、どら焼き、饅頭、たい焼き、及び回転焼き等が含まれる。
これらのベーカリー食品の製造に際して、通常使用される未処理小麦粉に代えて又はその一部に、本発明の改質小麦粉を用いることで、ベーカリー食品製造における二次加工性が良好になり、しっとり感、弾力、歯切れ等の食感、及び/又は老化耐性が向上したベーカリー食品を得ることが可能になる。
油ちょう食品とは、製造原料として小麦粉を含み、油ちょうすることで得られる食品である。具体的には、打粉、バッター、ブレッダー等の衣材を具材に付着させた後に油ちょうして得られる天ぷら、フリッター、唐揚げ、コロッケ、カツ、各種フライ等の揚げ物が挙げられる。これらの油ちょう食品の製造に際して、通常使用される未処理小麦粉に代えて又はその一部に、本発明の改質小麦粉を用いることで、例えば天ぷら等の衣の場合、硬さ、サクミ、ぬめり、油っぽさ等のいずれか1つ以上の食感が向上する等の効果を得ることが可能になる。
麺類とは、小麦粉又はその他穀粉及びその他の製造原料に加水混練して製麺したものを指し、うどん、中華麺、和そば、素麺、冷や麦、冷麺、ビーフン、きしめん、マカロニ、スパゲティ等が挙げられる。麺の形態は、生麺、茹で麺、蒸し麺、生タイプ即席麺(LLタイプ)、即席麺、乾麺、冷凍麺のいずれであってもよい。麺皮類とは、小麦粉又はその他穀粉及びその他の製造原料に加水混練して製麺(成形)したもの、ならびに小麦粉又はその他穀粉及びその他の原材料に加水し焼成して製麺(成形)したものを指し、餃子皮、焼売皮、春巻き皮等の皮類が挙げられる。これらの麺類又は麺皮類の製造に際して、通常使用される未処理小麦粉に代えて又はその一部に、本発明の改質小麦粉を用いることで、製造における二次加工性が良好になり、硬さ、粘り、弾力、歯切れ、みみのやわらかさ等のいずれか1つ以上の食感を改良することができる。
(IV)本発明の飲食品とその製造方法
本発明が対象とする飲食品(本飲食品)は、前述する本発明の改質小麦粉又は本発明の穀粉組成物を含有するものである。具体的には、前述する本発明の改質小麦粉又は本発明の穀粉組成物を製造原料の全部又は一部として用いて調理することで得られる飲食品である。本飲食品としては、前述するように、本発明が食感改良の対象とした飲食品であれば特に制限はなく、具体的にはベーカリー食品、油ちょう食品、麺類、麺皮類、フラワーペースト等を挙げることができる。その詳細は前述した通りである。なお、調理とは、各飲食品の種類に応じて慣用的に採用される調理方法を例示することができ、特に制限されるものではなく、一例として、焼成、蒸す、蒸し焼き、油ちょう、及び電子レンジ調理等の加熱処理を挙げることができる。また、その製造方法において、前述する本発明の改質小麦粉又は本発明の穀粉組成物の添加量、添加方法、及び添加するタイミング等に特に制限はない。例えば、各飲食品の種類に応じて慣用的に採用される調理方法に基づいて、従来配合している未処理小麦粉に代えて又はその一部と一緒に、前述する本発明の改質小麦粉を飲食品の製造原料の一つとして配合し、その飲食品中に所定量含有するようにすればよい。なお、前述の通り、調理された飲食品(本飲食品)中には、配合した未処理小麦粉がそのままの状態で含まれているわけではないと理解されることと同様に、加熱を含む各種の調理工程を経ることで、配合した改質小麦粉の状態は変化している。
以下、実施例に基づいて本発明の構成及びその効果を説明する。但し、これらの実施例はいずれも本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、下記において、特に言及しない限り、実験は室温(25±5℃)、又は大気圧条件下で行った。また、特に言及しない限り、「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
実験例1 改質小麦粉の製造、及びその特性
下記8種類の小麦粉を原料小麦粉として用いて改質を行い、その特性を評価した。なお、いずれの小麦粉も25℃、50%の恒温恒湿条件下に24時間置いたのちに試験に供した。
小麦粉A:「月桂冠」昭和産業株式会社製(蛋白質含量8.3質量%)
小麦粉B:「赤ネオン」昭和産業株式会社製(蛋白質含量13.1質量%)
小麦粉C:「クオリテ」昭和産業株式会社製(蛋白質含量12.9質量%)
小麦粉D:「シルクロード」昭和産業株式会社製(蛋白質含量14.2質量%)
小麦粉E:「麺剣」昭和産業株式会社製(蛋白質含量9.1質量%)
小麦粉F:「北海道」昭和産業株式会社製(蛋白質含量10.6質量%)
小麦粉G:「つくしの家」昭和産業株式会社製(蛋白質含量7.4質量%)
(1)改質小麦粉の製造方法
上記小麦粉A〜Gをそれぞれトレイ(170×130mm)に150±1gとなる量を入れ、均一に加熱されるよう平らに広げた。高温多湿状態を安定に維持するために、このトレイをアルミホイルで包み、内部に20Lの水を張った圧力鍋(株式会社ワンダーシェフ製、内部容積30L:作動圧力98kPa[2気圧])の中に、トレイに水が入らないように設置した台の上に置き、加圧状態の飽和水蒸気下で加熱処理(121℃、0.25〜5時間)をした。なお、圧力鍋の中には水が突沸しないように沸騰石を入れておいた。また圧力鍋内の圧力は、蒸気噴出口の錘の重さを変えることで調整した。表2に、小麦粉A〜Gの各々に対して行った加圧条件(錘による加重条件)と処理時間を記載する。
湿熱処理後、圧力鍋内の圧力を大気圧に戻した後、圧力鍋内からトレイを取り出し、トレイ中の小麦粉を棚乾燥にて水分含量が10%程度になるまで乾燥処理し、粉砕機にて粉砕処理を行い、粒径が0.5mm以下の湿熱処理小麦粉(実施例1〜11、比較例1〜3)を得た。
(2)改質小麦粉の物性評価方法
(a)RVA粘度特性の評価
上記で調製した湿熱処理小麦粉(実施例1〜11、比較例1〜3)、及び改質前の原料小麦粉A(参考例)について、それらの各3.5gを25mLの0.5mM硝酸銀水溶液に入れてよくかき混ぜて懸濁し、14質量%濃度の懸濁液を調製した。この懸濁液(25℃)を、ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA装置)(RVA4500、Parten社製)(バトル回転数:160rpm)に供して、米国穀物化学会の公定法(AACC Method 76-21)に基づいて下記表1の条件にて粘度を測定し、粘度特性(最高粘度)を評価した。
(b)酢酸可溶蛋白質含量(質量%)の測定
小麦粉含まれる全蛋白質量中の酢酸可溶蛋白質含量(%)の測定は、下記の操作工程により実施した。
(1)上記で調製した湿熱処理小麦粉(実施例1〜11、比較例1〜3)又は処理前の原料小麦粉A(参考例)2gを、100mL容量の三角フラスコに入れる。
(2)これに0.05N酢酸を40mL加えて、振盪する(25℃、130rpm、60分間)。
(3)三角フラスコの内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相と下層の残渣とに分離する。
(4)上記で分離した上層をろ紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して濾液を回収する。
(5)上記(2)の三角フラスコに、0.05N酢酸40mLを入れてフラスコ壁面についた残渣を洗い流すように軽く撹拌し、内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相と下層の残渣とに分離する。
(6)分離した上層の液相をろ紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して回収した濾液を前記(4)で回収した濾液と混合する。
(7)濾液をイオン交換水にて100mLにメスアップする。
(8)上記の操作で回収した濾液(小麦粉酢酸抽出液)は25mLを、小麦粉は0.5gを、それぞれ分解に供した。分解は、ケルダール分析用分解促進剤(KJELTABS:フォス社製)1錠及び濃硫酸15mLを加えてケルダール分解器(ダイジェスター)にセットして行った。具体的には、小麦粉の酢酸抽出液の分解は250℃から加温し、30分毎に50℃ずつ420℃になるまで加温し、420℃になってから90分間加温して分解する。また、小麦粉の分解は420℃で150分加温し分解する。
(9)分解により得られた試料それぞれに、イオン交換水を30mL加え、ケルダール蒸留滴定装置(スーパーケル1500/1550、アクタック社製)にセットして蒸留及び滴定を行う。
(10)下式に基づき、小麦粉酢酸抽出液と小麦粉の窒素量をそれぞれ求めた後、酢酸可溶蛋白質含量(%)を算出する。
(c)偏光顕微鏡による偏光十字の観察
上記で調製した湿熱処理小麦粉(実施例1〜11、比較例1〜3)、及び処理前の原料小麦粉A(参考例)(以上、被験試料)を、偏光顕微鏡にて観察して、偏光十字の有無を確認した。具体的には、スライドグラスに粉末状の被験試料を少量のせ、上からスポイトで蒸留水を1〜2滴たらし、次いでカバーガラスで覆い、偏光顕微鏡(200倍率)にて観察した。
(3)改質小麦粉の物性評価結果
結果を表2に示す。
代表例として、参考例(未処理小麦粉)、比較例2、及び実施例5(改質小麦粉)のRVAプロファイルを図1に示す。表2に示すように、最高粘度が2500cP以下、かつ小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下であった実施例1〜11の改質小麦粉は、最高粘度が3056cP、小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が59.5質量%である未処理小麦粉、及び最高粘度が2500cPより高いか、又は/及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%より高い比較例1及び2の小麦粉と比較して、大きく相違するものであった。また比較例3の小麦粉は、最高粘度2500cP以下、小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量も25%質量以下であったが、偏光十字が認められず、未糊化澱粉を含んでいないことが確認された。
また参考例(未処理小麦粉)、実施例5(改質小麦粉)、及び比較例3の小麦粉を偏光顕微鏡(200倍率)で観察した結果の画像を、それぞれ図2(A)、(B)及び(C)に示す。図2に示すように本発明の改質小麦粉に含まれる澱粉粒には偏光十字が鮮明に確認することでき、完全には糊化していないことが確認された。他の実施例1〜4及び6〜11の改質小麦粉も同様であり(表2参照)、改質小麦粉に含まれる澱粉のうち70%以上もの多くの澱粉は未糊化澱粉の状態であると考えられる。一方、比較例3の小麦粉中に含まれる澱粉は完全に糊化していたことから、糊化を抑制し未糊化澱粉の状態を維持するために、湿熱処理時に高温多湿状態を安定に維持することが重要であると考えられる。
実験例2 改質小麦粉の応用とその評価(その1:うどん)
(1)うどんの製造方法
表3に記載する材料を竪型ミキサーに投入し、低速で5分間、及び中速で5分間、ミキシングを行い、そぼろ状生地を調製した。この生地を製麺ロールにて、複合及び圧延して麺帯厚を2.2mmとし、切刃角No.10で切り出し、生うどんを製造した。製造した生うどんを沸騰した湯で12.5分間茹で、茹で上がりの麺を流水に1分間さらしながら冷却し、冷やしうどんを調製した。
(2)評価方法
(2−1)製麺性
生うどんの製麺性をそぼろ状生地の状態や麺帯の生地感から評価し、下記の基準により評価した。なお、評価は製麺従事者5名をパネルとして、5名で相談確認しながら、評価結果を決定した。
[評価基準]
◎:非常に良好
○:良好(対照例のうどんの製麺性と同等)
△:やや悪い
×:悪い
(2−2)麺の食感(硬さ、粘り、弾力)
冷やしうどんを調製後、速やかに、食感(硬さ、粘り、弾力)を下記の基準により評価した。なお、評価は麺の食感についてよく訓練し、パネル間で判断基準を統一した10名をパネルとし、結果は各パネルの評価の平均値を示した。
[硬さの判断基準]
5:適度な硬さがあり、非常に良好
4:やや硬さがあり、良好
3:普通(対照例のうどんの硬さと同等)
2:やや軟らかい
1:軟らかい
[粘りの判断基準]
5:適度な粘りが感じられ、非常に良好
4:やや粘りがあり、良好
3:普通(対照例のうどんの粘りと同等)
2:粘りが弱く、やや悪い
1:粘りが感じられず、悪い
[弾力の判断基準]
5:弾力があり、非常に良好
4:やや弾力があり、良好
3:普通(対照例のうどんの弾力と同等)
2:弾力が弱く、やや悪い
1:弾力がなく、悪い
(3)評価結果
結果を表4に示す。
表4に示すように、RVAにおける最高粘度が2500cP以下(特性(3))、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下(特性(2))になるよう調製した改質小麦粉(実施例1〜11)を用いることで、未処理小麦粉(対照例)を用いた場合と比較して、麺の食感(硬さ、粘り、弾力)が向上したうどんが製造できることが確認された。さらに、RVAにおける最高粘度が1800cP以下、特に1500cP以下、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が18質量%以下、特に13質量%以下になるよう調製した改質小麦粉(実施例4〜11)を用いることで、未処理小麦粉を用いた場合(対照例)と比較して、麺の食感(硬さ、粘り、弾力)の向上に加えて、製麺性が向上したうどんが得られることが確認された。また、比較例3の結果から、製麺性と麺の食感(硬さ、粘り、弾力)には、前記RVAにおける最高粘度と小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量だけでなく、改質小麦粉に未糊化澱粉が含まれていることが重要であることも確認された。
実験例3 改質小麦粉の応用とその評価(その2:乾麺)
(1)乾麺の製造方法
小麦粉100質量部(対照例:小麦粉100質量部、試験例:小麦粉90質量部、試験粉10質量部)と、食塩4%を溶解した水35質量部との混合物を、横型ピンミキサーを用いて15分間ミキシングし、麺生地を調製した。調製した各麺生地を、ロール式製麺法にて複合及び圧延し、切り刃角♯12番を用いて、麺線の厚みが1.50mmになるように製麺した。その後、常法にて乾燥し、乾麺を製造した。製造した乾麺を沸騰した湯で12.5分間茹で、茹で上がりの麺を流水に1分間さらしながら冷却し、冷やしうどんを製造した。
(2)評価方法
(2−1)製麺性
乾麺の製麺性を、実験例2と同じ方法及び基準にて評価した。
(2−2)麺の食感(硬さ、粘り、弾力)
茹でうどん(冷やし)の食感(硬さ、粘り、弾力)を実験例2と同じ方法及び基準にて評価した。
(3)評価結果
結果を表6に示す。
表6に示すように、RVAにおける最高粘度が2500cP以下(特性(3))、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下(特性(2))になるよう調製した改質小麦粉(実施例1〜5)を用いることで、未処理小麦粉(対照例)を用いた場合と比較して、麺の食感(硬さ、粘り、弾力)が向上したうどん(乾麺)が製造できることが確認された。さらに、RVAにおける最高粘度が1800cP以下、特に1500cP以下、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が18質量%以下、特に13質量%以下になるよう調製した改質小麦粉(実施例4〜5)を用いることで、未処理小麦粉を用いた場合(対照例)と比較して、麺の食感(硬さ、粘り、弾力)の向上に加えて、製麺性が向上したうどん(乾麺)が得られることが確認された。また、比較例3の結果から、製麺性と麺の食感(硬さ、粘り、弾力)には、前記RVAにおける最高粘度と小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量だけでなく、改質小麦粉に未糊化澱粉が含まれていることが重要であることも確認された。
実験例4 改質小麦粉の応用とその評価(その3:餃子)
(1)餃子の製造方法
小麦粉100質量部(対照例:小麦粉100質量部、試験例:小麦粉90質量部、試験粉10質量部)と、食塩1%を溶解した水32質量部との混合物を、横型ピンミキサーを用いて15分間ミキシングし、生地を調製した。調製した各生地を、ロール式製麺法にて複合及び圧延し、麺線の厚みが0.9mmになるように薄くのばした後、直径90mmになるように、生地をくりぬき、餃子の皮を得た。その後、各試験区の餃子の皮で餃子の具15gを包んで成形した餃子を、油をひいたフライパンで1分間焼成し、更に水を150mL入れて5分間蒸し焼きにして焼き餃子を製造した。
(2)評価方法
(2−1)製麺性
生地の製麺性を、実験例2と同じ方法及び基準にて評価した。
(2−2)餃子の皮の食感(みみの硬さ、歯切れ)
焼き餃子を製造後、速やかに、焼き餃子の皮の食感(みみの硬さ、歯切れ)を下記の基準により評価した。なお、評価は焼き餃子の皮の食感についてよく訓練し、パネル間で判断基準を統一した10名をパネルとし、結果は各パネルの評価の平均値で示した。
[みみの硬さの判断基準]
5:軟らかさがあり、非常に良好
4:やや柔らかさが感じられ、良好
3:やや硬さはあるが、許容範囲(対照例の焼き餃子の耳の硬さと同等)
2:硬く、悪い
1:非常に硬く、悪い
[歯切れの判断基準]
5:歯切れがよく、非常に良好
4:歯切れがややよく、良好
3:普通(対照例の焼き餃子の皮の歯切れと同等)
2:やや歯切れが悪い
1:歯切れが悪い
(3)評価結果
結果を表8に示す。
表8に示すように、RVAにおける最高粘度が2500cP以下(特性(3))、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下(特性(2))になるよう調製した改質小麦粉(実施例1〜11)を用いることで、未処理小麦粉を用いた場合(対照例)と比較して、食感(みみの硬さ、歯切れ)が向上した餃子の皮が得られることが確認された。さらに、RVAにおける最高粘度が1800cP以下、特に1500cP以下、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が18質量%以下、特に13質量%以下になるよう調製した改質小麦粉(実施例4〜11)を用いることで、未処理小麦粉(対照例)を用いた場合と比較して、食感(みみの硬さ、歯切れ)の向上に加えて、製麺性が向上した餃子の皮が得られることが確認された。また、比較例3の結果から、製麺性と食感(みみの硬さ、歯切れ)には、前記RVAにおける最高粘度と小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量だけでなく、改質小麦粉に未糊化澱粉が含まれていることが重要であることも確認された。
実験例5 改質小麦粉の応用とその評価(その4:食パン[中種法])
(1)食パンの製造方法
A:ボールに表9に記載する中種材料を加え、ミキサーの低速で2分間、高速で0.5分間ミキシングした。生地の捏上温度は、24±0.5℃とした。
B:Aで調製した生地を28℃、湿度85%で4時間発酵させた。
C:Bで調製した生地に、表9に記載する本捏材料(ショートニング以外)及び水を加え、ミキサーの低速で2分間、中速で2分間ミキシングした後、ショートニングを加え、更に中速で2分間ミキシングした。生地の捏上温度は、28±0.5℃とした。
D:Cで調製した生地を28℃、湿度85%の条件下で20分間発酵させた。
E:Dで調製した生地を、一玉500gに分割し、丸めを行った後、28℃、湿度85%の条件下でベンチタイムを20分間とった。
F:Eで調製した生地をロール状に成形して一斤型に詰め、38℃、湿度90%の条件下でホイロを40分間行った後、205℃で30分間焼成した。
(2)評価方法
得られた食パン(中種法)について、製パン性、及び製造から1日後(D+1)、及び4日後(D+4)の食パンの食感(しっとり感、弾力、及び歯切れ)を評価した。
(2−1)製パン性
食パンの製パン性を生地のべたつきや伸展性の観点から作業性を評価し、下記の基準により評価した。なお、評価は製パン従事者5名のパネル間で相談し、評価結果を決定した。
[評価基準]
◎:非常に良好
○:良好(対照例の食パンの製パン性と同等)
△:やや悪い
×:悪い
(2−2)食パンの食感(しっとり感、弾力、歯切れ)
食パンを製造後、1日後(D+1)及び4日後(D+4)に、食パンの食感(しっとり感、弾力、歯切れ)を下記の基準により評価した。なお、評価は食パンの食感についてよく訓練し、パネル間で判断基準を統一した10名をパネルとし、結果は各パネルの評価の平均値で示した。
[しっとり感の判断基準]
5:しっとりとし、非常に良好
4:ややしっとりとし、良好
3:普通(対照例の食パンのしっとり感と同等)
2:ややパサつきがあり、悪い
1:パサついているため、非常に悪い
[弾力の判断基準]
5:弾力があり、非常に良好
4:やや弾力があり、良好
3:普通(対照例の食パンの弾力と同等)
2:弾力が弱く、やや悪い
1:弾力がなく、悪い
[歯切れの判断基準]
5:歯切れがよく、非常に良好
4:歯切れがややよく、良好
3:普通(対照例の食パンの歯切れと同等)
2:やや歯切れが悪い
1:歯切れが悪い
(3)評価結果
結果を表10に示す。
表10に示すように、RVAにおける最高粘度が2500cP以下(特性(3))、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下(特性(2))になるよう調製した改質小麦粉(実施例1〜8)を用いることで、未処理小麦粉(対照例)を用いた場合と比較して、食感(しっとり感、弾力、歯切れ)が向上した食パンが得られることが確認された。さらに、RVAにおける最高粘度が1800cP以下、特に1500cP以下、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が18質量%以下、特に13質量%以下になるよう調製した改質小麦粉(実施例4〜8)を用いることで、未処理小麦粉を用いた場合(対照例)と比較して、食感(しっとり感、弾力、歯切れ)の向上に加えて、製パン性が向上した食パンが得られることが確認された。また、比較例3の結果から、製パン性と食感(しっとり感、弾力、歯切れ)には、前記RVAにおける最高粘度と小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量だけでなく、改質小麦粉に未糊化澱粉が含まれていることが重要であることも確認された。
実験例6 改質小麦粉の応用とその評価(その5:衣揚げ食品)
(1)衣揚げ食品の製造方法
衣揚げ食品として天ぷらを選択して評価を行なった。具体的には、表11に記載するように、小麦粉99質量部(対照例:小麦粉100質量部、試験例:小麦粉89質量部、試験粉10質量部)、及びベーキングパウダー製剤(アイコクベーキングパウダー赤印(株式会社アイコク製))1質量部を混合し、加水率160質量%で各バッターを調製した。次に、2Lサイズのエビに、打ち粉として小麦粉を付着させ、各バッターに浸漬したものを170℃のフライ油中に投入した後、上記バッター15mlを用いて追い種を行い、2分30秒間油ちょうして、天ぷらを製造した。
(2)評価方法
製造後、室温で4時間放置した各天ぷらについて、下記の基準により、衣の食感(硬さ、サクミ、ぬめり、油っぽさ)を評価した。なお、評価は天ぷらの食感についてよく訓練し、パネル間で判断基準を統一した10名をパネルとし、結果は各パネルの評価の平均値で示した。
[硬さの判断基準]
5:適度な硬さがあり、非常に良好
4:やや硬さがあり、良好
3:普通(対照例の天ぷらの衣の硬さと同等)
2:やや軟らかい
1:軟らかい
[サクミの判断基準]
5:歯もろさがあり、非常に良好
4:歯切れがよく、良好
3:普通(対照例の天ぷらの衣のサクミと同等)
2:やや歯切れが悪く、サクミが感じられない
1:歯切れが悪く、サクミがない
[ぬめりの判断基準]
5:衣の内側にぬめりがなく、非常に良好
4:衣の内側にぬめりがほぼなく、良好
3:衣の内側にぬめりがやや感じられるが、許容範囲(対照例の天ぷらの衣と同等)
2:衣の内側にぬめりがあり、やや悪い
1:衣の内側にぬめりがあり、悪い
[油っぽさの判断基準]
5:油っぽさがなく、ドライ感が強い
4:油っぽさが少なく、ややドライ感がある
3:普通(対照例の天ぷらの油っぽさと同等)
2:やや油っぽい
1:油っぽい
(3)評価結果
結果を表12に示す。
表12に示すように、RVAにおける最高粘度が2500cP以下(特性(3))、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下(特性(2))になるよう調製した改質小麦粉(実施例1〜11)を用いることで、未処理小麦粉(対照例)を用いた場合と比較して、食感(硬さ、サクミ、ぬめり、油っぽさ)が向上した衣が得られることが確認された。さらに、RVAにおける最高粘度が1800cP以下、特に1500cP以下、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が18質量%以下、特に13質量%以下になるよう調製した改質小麦粉(実施例4〜11)を用いることで、未処理小麦粉を用いた場合(対照例)と比較して、食感(硬さ、サクミ、ぬめり、油っぽさ)がより一層向上した衣が得られることが確認された。また、比較例3の結果から、天ぷら衣の食感の向上には、前記RVAにおける最高粘度と小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量だけでなく、改質小麦粉に未糊化澱粉が含まれていることが重要であることも確認された。
実験例7 改質小麦粉の応用とその評価(その6:唐揚げ)
(1)唐揚げの製造方法
表13に示す原料を混合してから揚げ粉を調製した。これを、鶏もも肉10切れ(約250g)に付着させた後、170℃の大豆油で4分間油ちょうし、唐揚げを製造した。
(2)評価方法
製造後、室温で4時間放置した各唐揚げについて、下記の基準により、衣の歯切れと、肉のジューシー感を評価した。なお、評価は唐揚げの食感についてよく訓練し、パネル間で判断基準を統一した10名をパネルとし、結果は各パネルの評価の平均値で示した。
[衣の歯切れの判断基準]
5:非常に良好
4:良好
3:許容範囲(対照例の唐揚げの衣の歯切れと同等)
2:やや悪い
1:悪い
[肉のジューシー感の判断基準]
5:非常にジューシーで、非常に良好
4:ジューシーで、良好
3:ジューシー感が感じられる(対照例の唐揚げのジューシー感と同等)
2:ジューシー感がやや足りない
1:ジューシー感がない
(3)評価結果
結果を表14に示す。
表14に示すように、RVAにおける最高粘度が2500cP以下(特性(3))、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下(特性(2))になるよう調製した改質小麦粉(実施例1〜11)を用いることで、未処理小麦粉(対照例)を用いた場合と比較して、唐揚げの衣の歯切れと肉のジューシー感が向上した唐揚げが得られることを確認した。さらに、RVAにおける最高粘度が1800cP以下、特に1500cP以下、及び小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が18質量%以下、特に13質量%以下になるよう調製した改質小麦粉(実施例4〜11)を用いることで、未処理小麦粉を用いた場合(対照例)と比較して、唐揚げの衣の歯切れと肉のジューシー感がより一層向上することが確認された。また、比較例3の結果から、唐揚げの食感の改善には、前記RVAにおける最高粘度と小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量だけでなく、改質小麦粉に未糊化澱粉が含まれていることが重要であることも確認された。

Claims (8)

  1. 下記の特性を有する改質小麦粉:
    (1)未糊化澱粉を含む、
    (2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が25質量%以下、
    (3)RVAにおける最高粘度が2500cP以下である。
  2. さらに下記の特性を有する請求項1に記載する改質小麦粉:
    (4)アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の110%以上である。
  3. 請求項1又は2に記載する改質小麦粉を含有する、穀粉組成物。
  4. 請求項1又は2に記載する改質小麦粉を含有する食感改良剤。
  5. 飲食品の製造に際して、請求項1又は2に記載する改質小麦粉を食品の製造原料のひとつとして用いる、飲食品の食感改良方法。
  6. 請求項1若しくは2に記載する改質小麦粉、請求項3に記載する穀粉組成物、又は請求項4に記載する食感改良剤が添加されてなる飲食品。
  7. 請求項1若しくは2に記載する改質小麦粉、請求項3に記載する穀粉組成物、又は請求項4に記載する食感改良剤を製造原料の全部又は一部として用いて調理する工程を有する、飲食品の製造方法。
  8. 前記飲食品が、ベーカリー食品、油ちょう食品、麺類、麺皮類、及びフラワーペーストからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7に記載する飲食品の製造方法。
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