JP7309448B2 - アイシング材 - Google Patents

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Description

本発明は、菓子類やパン類等の食品に上掛けして使用されるアイシング材に関し、特に卵白を使用しないアイシング材に関する。
アイシング材は、高濃度の糖液に糖の結晶が過飽和して存在するペースト状の食材(菓子素材)であり、糖が高濃度で存在しながら流動性を持つ特徴を有する。そこで、古くからドーナツやクッキー等の菓子類、パンやバームクーヘン等のパン類等の食品に対し、甘味等の風味付け、外観の装飾(デコレーション)、糖衣による日持ち向上等のために、上掛けされて使用されてきた。
アイシング材は、砂糖に少量の水を添加して混和することで得られるペースト状の食材であるが、流動性が低く、調整や仕様に高度な技術を要するものであった。そのため、一般的には、卵白を添加して流動性を高め、作業性を向上させることが行われている。しかしながら、近年では生活様式の変化に伴ってアレルギー疾患の増加が問題となっており、特に卵アレルギーの事例がよく知られている。
アレルギー症状は、重篤である場合は少量の摂取でも体調が急変して生命に危険が及ぶ場合もある。特に、食物アレルギーでは、食品の外観からアレルゲンの有無を判別することができない場合が多く、食品の使用食材等に注意を払わなければならない。そのため、アレルゲンを除去した(使用していない)食品が提案され、近年では、様々なバリエーションのアレルギー除去食が流通している。
食品のうち菓子類等は、生存維持のための栄養摂取というよりも、嗜好品としての性質が強く、スーパーマーケット等においてアレルギー除去の菓子のコーナーが設置されていることも珍しくない。しかしながら、アレルギー除去の菓子類は装飾性に乏しく、素朴な商品が大多数である。それは、例えばアイシング材では、代表的なアレルギー食材である卵(卵白)の使用が制限されると、加工性が乏しくなって装飾の操作が困難になるためだと考えられる。
そこで、卵白に替えてゲル化剤を添加したアイシング材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種のアイシング材において、ゲル化材を添加する場合には、過飽和した糖の結晶を保持するために、ゲル化剤を十分に溶解させる必要がある。しかし、ゲル化剤は冷水溶解が困難であるため、高度な加熱が必要となって、卵白を使用した場合と比較して作業性が低下することが問題であった。また、アイシング材にゲル化剤を使用すると、固化のために塩類が添加されて意図しない風味が付与されたり、卵白とは別のアレルギーの懸念が生じたりする等の問題もあった。
特開2005-168330号公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、卵白を使用した場合と同等の作業性を保持するとともに、意図しない風味が付与されることがないアイシング材を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、80.0~90.9重量%の単糖類、二糖類、オリゴ糖のいずれかまたはその混合物から選択される糖類と、8.2~18.0重量%の水分と、0.9~2.0重量%の25℃における10%(W/V)溶液の粘度が10~60mPa・sである水溶性デンプンよりなることを特徴とするアイシング材に係る。
請求項の発明は、前記水溶性デンプンは、25℃における10%(W/V)溶液の粘度(A)と30%(W/V)溶液の粘度(B)とが、2≦(B/A)≦200を満たす請求項に記載のアイシング材に係る。
請求項1の発明に係るアイシング材によると、80.0~90.9重量%の単糖類、二糖類、オリゴ糖のいずれかまたはその混合物から選択される糖類と、8.2~18.0重量%の水分と、0.9~2.0重量%の25℃における10%(W/V)溶液の粘度が10~60mPa・sである水溶性デンプンよりなるため、卵白を使用しないアレルギー除去食品として有効であり、卵白を使用した場合と同等の適切な作業性を保持することができるとともに、意図しない風味が付与されることもなくて、本来のアイシング材と遜色ない装飾性や風味付けが可能となり、水溶液としての性状を保つことができるとともに、適切な流動性によって常温で使用されるアイシング材の卵白の代替品として好適に使用することができる。
請求項の発明に係るアイシング材によると、請求項の発明において、前記水溶性デンプンは、25℃における10%(W/V)溶液の粘度(A)と30%(W/V)溶液の粘度(B)とが、2≦(B/A)≦200を満たすため、アイシング材としての適切な流動性が得られる。
本発明は、卵白を使用しないアイシング材であって、80.0~90.9重量%の糖類と、8.2~18.0重量%の水分と、0.9~2.0重量%の水溶性デンプンよりなり、各材料が混和されて得られる。このアイシング材は、従来のアイシング材と同様に、ドーナツやクッキー等の菓子類、パンやバームクーヘン等のパン類等の食品に上掛けして使用することが可能である。
糖類は、アイシング材を構成する主原料であり、アイシング材中で過飽和して結晶が分散して残存している状態となる。糖類としては、一般に食品として流通している材料がそのまま使用可能である。具体的には、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、エリトロース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、プシコース等の単糖類、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、トレハロース等の二糖類、ラフィノース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖(小糖類)等のいずれかまたは混合物である。糖類の好ましい配合割合は80.0~90.9重量%であり、少なすぎるとアイシング材の粘性が低下して軟らかくなりすぎ、加工時に形状が保持しにくくなるおそれがある。また、過剰であるとアイシング材の粘性が高まって硬くなりすぎ、加工困難または加工不能となるおそれがある。
水溶性デンプンは、水に溶けた後に安定した水溶液となるデンプンであって、従来のアイシング材に使用される卵白の代替材である。また、水溶性デンプンは、アイシング材の主要成分である砂糖(糖類)と同じ炭水化物であり、アレルギーを引き起こす懸念が少ないことで知られている。そのため、卵白と同様に糖類と水分とともに混和した際にその流動性を向上させることができ、アレルギー除去食としても好適である。水溶性デンプンの好ましい配合割合は0.9~2.0重量%であり、少なすぎるとアイシング材の粘性が高まって硬くなりすぎ、加工困難または加工不能となるおそれがある。また、過剰であるとアイシング材の粘性が低下して柔らかくなりすぎ、加工時に形状が保持しにくくなるおそれがある。
一般なデンプンは、常温の水に溶解せずに60℃以上の温水ないし熱水のみに溶解して糊化し、冷却により粘性が上昇して固化することが知られ、アイシング材に使用する場合、喫食時は室温以下で供されることから、常温で固化すると加工性が低下するだけでなく、食感も悪くなるおそれがある。そこで、水溶性デンプンは、60℃以上の温水ないし熱水にて溶解して糊化した場合でも、冷却により粘性が上昇して固化することなく常温(15~25℃)にて水溶液としての性状を保つことができる高い水溶性を備え、かつ適切な流動性を有するデンプンが好ましい。具体的には、25℃における10%(W/V)溶液の粘度が10~60mPa・sである。これにより、常温で使用されるアイシング材の卵白の代替品として好適に使用することができる。
この種の水溶性デンプンとしては、溶解時に加熱して溶解後に常温にて安定する水溶液であることから、例えば、JIS K 8659:2007に規定される「でんぷん(溶性)」等が挙げられる。また、デンプンに対してα化(糊化)、酸化、誘導体化、酵素処理、酸処理、超音波照射等の処理を施して水溶性を付与した水溶性デンプンは、常温での溶解が可能であるため、作業性が向上して好ましい。なお、使用される原料のデンプンとしては、入手が容易なコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯デンプン、タピオカスターチ等の天然デンプンが好ましい。
また、水溶性デンプンは、分子鎖長が長すぎると粘度増加によって取り扱いが困難となると考えられる。そこで、上記水溶性デンプンでは、25℃における10%(W/V)溶液の粘度(A)と30%(W/V)溶液の粘度(B)とが、2≦(B/A)≦200を満たすことが好ましい。これは、水溶性デンプンが一定以上の分子鎖長である場合、濃度増加によって相互作用が増すことを表し、(B/A)が2未満ではアイシング材に使用される卵白と同等の性能が得られないおそれがあり、(B/A)が200を超えるとアイシング材の流動性が低下して固化しやすくなるおそれがある。従って、(B/A)が前記の数値範囲であることにより、アイシング材としての適切な流動性が得られる。
[アイシング材の作製(1)]
まず、試作例1~8のアイシング材について、糖類として市販の上白糖、水分として水、水溶性デンプンとして(関東化学株式会社製:商品名『でんぷん(溶性)』)を使用し、後述の各材料の配合量において、金属製ボウルに水溶性デンプンと水を加えて泡立器でよく攪拌溶解させた後、攪拌を続けながら上白糖を加えて作製した。
[試作例1]
試作例1は、糖類70g、水分27g、水溶性デンプン3gで配合した。試作例1の各材料の配合割合は、糖類70.0重量%、水分27.0重量%、水溶性デンプン3.0重量%である。
[試作例2]
試作例2は、試作例1の糖類を90gとし、それ以外は同一の分量で配合した。試作例2の各材料の配合割合は、糖類75.0重量%、水分22.5重量%、水溶性デンプン2.5重量%である。
[試作例3]
試作例3は、試作例1の糖類を120gとし、それ以外は同一の分量で配合した。試作例3の各材料の配合割合は、糖類80.0重量%、水分18.0重量%、水溶性デンプン2.0重量%である。
[試作例4]
試作例4は、試作例1の糖類を200gとし、それ以外は同一の分量で配合した。試作例4の各材料の配合割合は、糖類87.0重量%、水分11.7重量%、水溶性デンプン1.3重量%である。
[試作例5]
試作例5は、試作例1の糖類を220gとし、それ以外は同一の分量で配合した。試作例5の各材料の配合割合は、糖類88.0重量%、水分10.8重量%、水溶性デンプン1.2重量%である。
[試作例6]
試作例6は、試作例1の糖類を280gとし、それ以外は同一の分量で配合した。試作例6の各材料の配合割合は、糖類90.3重量%、水分8.7重量%、水溶性デンプン1.0重量%である。
[試作例7]
試作例7は、試作例1の糖類を300gとし、それ以外は同一の分量で配合した。試作例1の各材料の配合割合は、糖類90.9重量%、水分8.2重量%、水溶性デンプン0.9重量%である。
[試作例8]
試作例8は、試作例1の糖類を330gとし、それ以外は同一の分量で配合した。試作例1の各材料の配合割合は、糖類91.7重量%、水分7.5重量%、水溶性デンプン0.8重量%である。
[配合割合の特定]
作製した試作例1~8のアイシング材について、外観と流動性の性状の評価を行った。アイシング材の性状の評価では、まず試作例1~8のアイシング材を市販クッキーの表面に塗布し、乾燥後の外観を確認した。また、試作例1~8のアイシング材を5ml容のシリンジに3mlを入れ、手で押し出して流動性を評価した。流動性の評価に際して、押し出し後に円筒状の形状を保てない程度のものを「軟らかい」、指の力だけの適切な力で押し出すことができて押し出し後に円筒状の形状を保つものを「良好」、押し出すために両手の力が必要なものを「硬い」とした。総合評価では、外観に異常がなく流動性が良好の場合は「良(○)」、それ以外の場合は「不可(×)」とした。その結果を表1,2に示した。
Figure 0007309448000001
Figure 0007309448000002
表1,2から理解されるように、試作例1~8のいずれにおいても外観に異常は見られなかったが、流動性に関しては試作例1,2が軟らかい評価、試作例8が硬い評価であり、試作例~7が良好な評価であった。従って、アイシング材における糖類と水分と水溶性デンプンとの好ましい配合割合は、糖類が80.0~90.9重量%、水分が8.2~18.0重量%、水溶性デンプンが0.9~2.0重量%であると考えられる。
[アイシング材の作製(2)]
試作例9~18のアイシング材について、糖類として市販の上白糖90g、水分として水9gを使用するとともに、1gの水溶性デンプンを後述のように変更して使用し、金属製ボウルに水溶性デンプンと水を加えて泡立器でよく攪拌溶解させた後、攪拌を続けながら上白糖を加えて作製した。
[試作例9]
試作例9のアイシング材は、水溶性デンプンを粉末卵白(株式会社冨澤商店製)に替えて作製した。
[試作例10]
試作例10のアイシング材は、水溶性デンプンを加えずに作製した。
[試作例11]
試作例11のアイシング材は、水溶性デンプンをコーンスターチ(株式会社扇カネ安食品本舗製)に替えて作製した。
[試作例12]
試作例12のアイシング材は、水溶性デンプンとして可溶性でんぷんA(関東化学株式会社製:商品名『でんぷん(溶性)』)を用いて作製した。
[試作例13]
試作例13のアイシング材は、水溶性デンプンとして可溶性デンプンB(ナカライテスク株式会社製:商品名『可溶性でんぷん』)を用いて作製した。
[試作例14]
試作例14のアイシング材は、水溶性デンプンとして可溶性デンプンC(キシダ化学株式会社製:商品名『でんぷん(溶性)』)を用いて作製した。
[試作例15]
試作例15のアイシング材は、水溶性デンプンとして可溶性デンプンD(富士フィルム和光純薬株式会社製:商品名『でんぷん(溶性)』)を用いて作製した。
[試作例16]
試作例16のアイシング材は、水溶性デンプンとして、下記の方法で調整した可溶性デンプン(物理加工デンプン)を用いて作製した。物理加工デンプンは、まず天然デンプンであるワキシーコーンスターチ(日本食品化工株式会社製:ワキシスターチ)に水を加え、糊化装置(ノリタケエンジニアリング株式会社製:ミニクッカー)により10%濃度のデンプン糊化液を作製した。このデンプン糊化液に対し、約50℃の液温を維持しながら、超音波分散機(株式会社ギンセン製:GSD1200CVP)を用いて周波数20kHz、出力1200Wで超音波を照射して、粘度が約0.3Pa・sになるまで微分散化して微分散デンプンを作製した。この微分散デンプンを乾燥機内で100℃の熱風にさらして乾燥させて、乾燥粉末状の物理加工デンプンを得た。なお、粘度の測定は、日本薬局方の一般試験法における粘度測定法に準拠し、50℃における粘度を粘度分析装置で測定した。
[試作例17]
試作例17のアイシング材は、水溶性デンプンとして、下記の方法で調整した可溶性デンプン(DE2.8可溶性デンプン)を用いて作製した。DE2.8可溶性デンプンは、まず天然デンプンである馬鈴薯デンプンに対し、耐熱性α-アミラーゼ(アマノエンザイム株式会社製:クライスターゼT-5)を添加し、糊化装置(ノリタケエンジニアリング株式会社製:ミニクッカー)を用いて酵素処理によりデキストロース当量(DE)を2.8に調製した液化物を作製した。この液化物をスプレードライヤにより噴霧乾燥してDE2.8可溶性デンプンを得た。なお、デキストロース当量は、還元糖の定量法として一般的なウイルシュテッターシューデル法に基づいて測定した。
[試作例18]
試作例18のアイシング材は、水溶性デンプンとして、下記の方法で調整した可溶性デンプン(DE10.8可溶性デンプン)を用いて作製した。DE10.8可溶性デンプンは、まず天然デンプンであるタピオカスターチに対し、耐熱性α-アミラーゼ(アマノエンザイム株式会社製:クライスターゼT-5)を添加し、糊化装置(ノリタケエンジニアリング株式会社製:ミニクッカー)を用いて酵素処理によりデキストロース当量をDE10.8に調製した液化物を作製した。この液化物をスプレードライヤにより噴霧乾燥してDE10.8可溶性デンプンを得た。
[水溶性デンプンの特定]
作製した試作例9~18のアイシング材について、外観と流動性の性状の評価、離水と外観と流動性の経時変化の評価、水溶性デンプンの粘度(mPa・s)の測定を行った。アイシング材の性状の評価は、試作例1~8で行った手順と同様である。経時変化の評価では、試作例9~18のアイシング材を透明プラスチック袋に入れて密封し、1日後および3日後の離水、外観、流動性の状態を確認した。離水は目視による水分の確認であり、外観及び流動性は性状の評価と同様である。さらに、25℃における水溶性デンプンの10%溶液の粘度(A)及び30%溶液の粘度(B)をB型粘度計(アタゴ株式会社製:VISCOスピンドルA2 125rpm)にて測定し、(B/A)を求めた。全体の性状、物性が、粉末卵白を使用した試作例9と同程度であれば良好(◎)、水溶性デンプンを使用していない試作例10と同様であれば使用可能(〇)、いずれにも該当しなければ使用不可(×)とした。その結果を表3,4に示した。
Figure 0007309448000003
Figure 0007309448000004
表3,4から理解されるように、卵白を使用した従来のアイシング材である試作例9は、外観に異常がなく、優れた流動性を備えていて高い作業性が得られ、経時変化も概ね良好であった。水溶性デンプンを使用していない試作例10は、試作例9と比較して流動性が低く(硬い)、作業がやや困難であった。コーンスターチを使用した試作例11は、固化したため評価することができなかった。
一方、試作例12~17は、総合的に試作例9に相当する良好(◎)な性質を有しており、試作例18は、流動性がやや低く試作例10と同等の性質を有していたが、製品としては使用可能(○)であった。従って、試作例12~18に使用した可溶性デンプンが、いずれも卵白に替わるアイシング材の原料として使用可能であることがわかった。特に、試作例12~18の外観が半透明であることから、外観が白色となる卵白使用の試作例9と比較して、クリアな塗膜を形成することが可能となり、装飾の幅が広がって利便性が向上する。
また、使用可能な試作例12~18に使用した水溶性デンプンの粘度(mPa・s)は、最低値が試作例15の12.8(mPa・s)であり、最高値が試作例16の50.2(mPa・s)であった。従って、水溶性デンプンの好ましい粘度は、25℃における水溶性デンプンの10%溶液で10~60(mPa・s)と考えられる。
さらに、良好な試作例12~17では、水溶性デンプンの10%溶液の粘度(A)及び30%溶液の粘度(B)の関係において、(B/A)の最低値が試作例17の2.62であり、最高値が試作例16の189.63であった。卵白を使用した試作例8の(B/A)が2.37であることから、卵白を使用したアイシング材と同等の性能が必要であることを考慮した水溶性デンプンのより好ましい条件は、2≦(B/A)≦200であると考えられる。
[アイシング材の作製(3)]
試作例19~25のアイシング材について、試作例12の使用材料及び配合割合から糖類を後述のように変更し、それ以外は同一の条件として作製した。
[試作例19]
試作例19は、糖類としてブドウ糖(兼松塩商株式会社製)を用いて作製した。
[試作例20]
試作例20は、糖類として果糖(株式会社冨澤商店製)を用いて作製した。
[試作例21]
試作例21は、糖類としてきび糖(株式会社冨澤商店製)を用いて作製した。
[試作例22]
試作例22は、糖類としてトレハロース(株式会社冨澤商店製)を用いて作製した。
[試作例23]
試作例23は、糖類として麦芽糖(ドルクスオーナーズショップ製)を用いて作製した。
[試作例24]
試作例24は、糖類としてラフィノース(大東物産株式会社製)を用いて作製した。
[試作例25]
試作例25は、糖類として粉飴(株式会社HプラスBライフサイエンス製)を用いて作製した。
[糖類の特定]
作製した試作例19~25のアイシング材について、外観と流動性の性状の評価を行った。性状の評価は、試作例1~8で行った手順と同様であり、試作例12と同等の性状であれば良(○)、試作例12より劣った性状であれば不可(×)とした。その結果を表5に示した。
Figure 0007309448000005
表3から理解されるように、試作例19~24のアイシング材について、試作例12のアイシング材と同等の性状の評価が得られた。一方、粉飴を使用した試作例25は、加水時に濃い水飴状となり、強力な粘着力で流動性が極めて低く撹拌困難な状態となって加工不能であった。良好な評価が得られたブドウ糖(試作例19)と果糖(試作例20)は単糖類、きび糖(試作例21)とトレハロース(試作例22)と麦芽糖(試作例23)は二糖類、ラフィノース(試作例24)はオリゴ糖(小糖類)である。
また、粉飴(試作例25)は、デンプンを酸や酵素により軽度(DE20~40程度)に加水分解して得られた水飴を真空ドライヤーまたは噴霧乾燥等の方法によって粉末化したものである。その構成糖は、10糖類以上の多糖類が大半を占める。一般の水飴は前述の方法によっても粉末化困難であるが、粉飴を製造するためには、10糖類以上の多糖類が大半を占めるよう加水分解程度が軽度に調整される。試作例25においては、この多糖類が加水時に粘性を上昇させたため、加工不能になったと考えられる。以上のことから、好ましい糖類は、単糖類、二糖類、オリゴ糖のいずれか、またはその混合物から選択できると考えられる。
以上説明したように、本発明のアイシング材は、80.0~90.9重量%の糖類と、8.2~18.0重量%の水分と、0.9~2.0重量%の水溶性デンプンよりなるため、アレルゲンである卵(卵白)が使用されず、アレルギー除去食品として有効である。特に、卵白不使用でも卵白を使用した場合と同等の流動性が得られて適切な作業性を保持することができる。また、ゲル化剤を使用した従来のアイシング材のように固化のために塩類等を添加する必要がないため、意図しない風味が付与されることもない。従って、アレルギー除去食品でありながら卵白を使用した本来のアイシング材と遜色ない装飾性や風味付けが可能なアイシング材を提供することができる。
本発明のアイシング材は、アレルゲンである卵白が不使用でありながら、卵白を使用した場合と同等の作業性が保持され、意図しない風味が付与されることもないアレルギー除去食品である。従って、卵白不使用の従来のアイシング材の代替品として有望である。

Claims (2)

  1. 80.0~90.9重量%の単糖類、二糖類、オリゴ糖のいずれかまたはその混合物から選択される糖類と、8.2~18.0重量%の水分と、0.9~2.0重量%の25℃における10%(W/V)溶液の粘度が10~60mPa・sである水溶性デンプンよりなることを特徴とするアイシング材。
  2. 前記水溶性デンプンは、25℃における10%(W/V)溶液の粘度(A)と30%(W/V)溶液の粘度(B)とが、2≦(B/A)≦200を満たす請求項に記載のアイシング材。
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