JP7307078B2 - 止血器具 - Google Patents

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Description

本発明は、止血器具に関する。
カテーテル手技の1つとして、患者の腕の血管(例えば、橈骨動脈)を穿刺し、患者の腕の血管に形成した穿刺部位を介して各種の医療用長尺体を血管内に導入し、病変部位に対する処置や治療を行う手技が知られている(下記特許文献1を参照)。橈骨動脈を利用するカテーテル手技は、経橈骨動脈アプローチと呼ばれており、例えば、冠動脈アクセスや下肢動脈アクセスのための有用な技術として考えられている。
人体の腕に位置する橈骨動脈は、手側を迂回する手掌動脈とつながっている。そのため、現在、経橈骨動脈アプローチの新しい手法として、手の甲側に位置する解剖学上のスナッフボックス、又は、スナッフボックス周辺の位置から手掌動脈(遠位橈骨動脈を含む)にアクセスし、その血管アクセス部位を介して治療を行うdTRA(distal transradial approach)によるカテーテル手技が試みられている。
特開2008-119517号公報
手に位置する手掌動脈等の血管は、指等の可動部位が多い箇所に位置する。そのため、術者が手掌動脈等の血管を穿刺し、手の表面に穿刺部位を形成した際、手の穿刺部位の周囲の形状は、手の動きにより変化する。したがって、穿刺部位を止血する際、手に配置される押圧部材は、手の動きに追従し、穿刺部位への圧迫力の調整が簡単な拡張部材であることが好ましい。
しかしながら、押圧部材が拡張部材である場合、拡張部材は、拡張した状態において、拡張部材の内側から外側に向けて拡張する力が働く。そのため、拡張部材を有する止血器具は、手の動きにより止血部位の周囲の形状が変化し、拡張部材が穿刺部位からずれてしまい、穿刺部位に対する拡張部材による圧迫力を適切に維持できない場合がある。したがって、手の穿刺部位を止血する場合、拡張部材を有する止血器具は、穿刺部位から離れる方向に働く力による拡張部材の位置ずれを抑制することにより、穿刺部位に対して適切に拡張部材を固定する必要がある。これにより、拡張部材を有する止血器具は、手の動きにより穿刺部位の周囲の形状が変化した場合でも、穿刺部位に対する拡張部材による圧迫力を適切に維持できると考えられる。
また、押圧部材が拡張部材である場合、拡張部材の拡張量を大きくすることにより、手に対する圧迫力を高めることができる。そのため、拡張部材の拡張量を調整することにより、拡張部材の手の穿刺部位からの位置ずれを抑制し得るとも考えられる。しかしながら、拡張部材が拡張した際、拡張部材のエッジ部(外周縁)が手に対して強く押し付けられると、患者が痛みを感じる場合がある。
本発明は、上記課題を鑑み、拡張部材が拡張した状態で患者が手を動かした場合であっても、手の止血すべき部位に対する拡張部材の位置ずれを抑制することができ、かつ、拡張した状態の拡張部材のエッジ部が手に対して押し付けられた際に患者が感じる痛みを軽減することができる止血器具を提供することを目的とする。
本発明に係る止血器具は、患者の手の止血すべき部位を覆うように配置される被覆部材と、前記被覆部材が前記止血すべき部位を覆った状態で前記被覆部材を固定する固定部材と、前記被覆部材に接続され、流体の注入により拡張する拡張部材と、前記拡張部材よりも外形が小さく、変形可能な補助部材と、を備え、前記被覆部材は、前記拡張部材が接続された本体部と、前記本体部から突出する第1アーム部と、前記本体部を挟んで前記第1アーム部と対向する位置から突出する第2アーム部と、を有し、前記本体部は、前記第1アーム部と前記第2アーム部との間に位置し、かつ当該止血器具を前記手に装着した状態において前記手の指先側に位置する前記本体部の先端側に位置する第1端部と、前記第1端部と対向し、前記本体部の基端側に位置する第2端部と、を有し、前記拡張部材は、前記第2端部と接続しており、前記補助部材は、前記本体部と前記拡張部材との間に挟まれた状態で、前記第1端部に接続している。
本発明の止血器具は、拡張部材の先端側に位置する本体部の第1端部に補助部材が接続されているため、拡張部材を拡張させた状態で患者が手を動かした際、補助部材の基端部よりも基端側に位置する拡張部材の基端部が手の表面に接触しやすい。ただし、上記の止血器具は、拡張部材の基端側に位置する本体部の第2端部に拡張部材が接続されているため、拡張部材の基端部(外周縁)に患者の手の表面に喰い込む十分なエッジ部が形成されない。それにより、上記の止血器具は、拡張部材を拡張した状態で患者が手を動かした場合であっても、拡張部材の基端部(外周縁)が手に食い込むのを防止できるため、止血の際、患者の痛みを軽減することができる。
また、本発明に係る止血器具は、拡張部材の先端側で拡張部材を圧迫する補助部材を有するため、拡張部材の先端側で拡張部材が患者の手を圧迫する面積を大きく確保することができる。そのため、拡張部材は、患者の指の動き等により止血器具が手首側に移動した場合でも、拡張部材が手に対して圧迫力を付与する範囲内から穿刺部位(止血すべき部位)がずれてしまうことを防止できる。また、上記の止血器具は、補助部材が拡張部材の先端側で拡張部材を圧迫するため、拡張部材の先端部側の浮き上がりを防止するとともに、拡張部材の先端部側が手の表面に対して広い面積で接触するように圧迫する。そのため、上記の止血器具は、補助部材が拡張部材を押し付けることで、拡張部材の浮き上がりを防止しつつ、拡張部材の先端側が手の表面を圧迫する面積を大きく確保することにより拡張部材が穿刺部位からずれることを防止できる。加えて、補助部材は、拡張部材の一部を手に対して押し付けることで、拡張部材の手に対する位置ずれを防止する。なお、手の穿刺部位を止血する際、手に装着された止血器具は、手の形状上(手を広げると、手の形状は指先側に行くほど広くなる)、手の先端側にずれることはないが、手の基端側にずれることがある。上記の止血器具は、拡張部材が穿刺部位よりも指先側に位置する手の広い面積を圧迫する。そのため、上記の止血器具は、止血器具が手首側にずれた場合であっても、拡張部材が手に対して圧迫力を付与する範囲内から穿刺部位がずれてしまうことを防止できる。
また、本発明に係る止血器具は、拡張部材が患者の手の外周に沿って巻き付けられる第1アーム部及び第2アーム部と異なる位置で本体部と接続されており、第1アーム部及び第2アーム部は本体部を挟んで互いに対向する位置に接続されている。そのため、上記の止血器具は、止血器具を手に装着した状態で手を動かした際、拡張部材の内部に位置する流体が第1アーム部及び第2アーム部の長手方向に沿う左右方向へ移動しやすい。それにより、拡張部材は、被覆部材の本体部により、拡張部材の第1アーム部側の端部及び第2アーム側の端部が患者の手の表面に押さえ付けられるため、穿刺部位に対する拡張部材の圧迫面積を広げることができる。
また、本発明に係る止血器具は、拡張部材が本体部の第1端部に接続されており、補助部材が拡張部材との間で本体部を挟んで対向するように本体部の第2端部に接続されている。そのため、拡張部材と補助部材は、互いに本体部に対する接続位置が異なるため、手の動き等に追従しやすい。加えて、拡張部材は、止血器具を装着して拡張部材を拡張させた状態において、拡張部材と補助部材との接触位置を基点として変形するため、手の動きに追従して変形し易い。
また、本発明に係る止血器具は、本体部と拡張部材の間に、拡張部材よりも外形が小さい補助部材が配置されるため、補助部材により、拡張部材の所定位置が手に対して付与する圧迫力を調節することができる。そのため、上記の止血器具は、拡張部材の所定位置が手に対して付与する圧迫力を好適にサポートすることができる。
実施形態に係る止血器具を示す図であって、被覆部材の本体部の外面側から見た平面図である。 実施形態に係る止血器具を示す図であって、被覆部材の本体部の内面側から見た平面図である。 被覆部材の一部を拡大して示す平面図である。 被覆部材の第1アーム部の一部を拡大して示す平面図である。 図3に示す矢印5-5に沿う止血器具の断面図である。 図3に示す矢印6-6に沿う第2アーム部の断面図である。 図4に示す矢印7-7に沿う第1アーム部の断面図である。 実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。 実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。 実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。 図10に示す矢印11-11に沿う断面の一部を模式的に示す図である。 患者の手に止血器具を装着した状態で、患者が手を曲げた際の様子を模式的に示す断面図である。 拡張部材の被覆部材の接続位置の変形例を説明するための断面図である。 変形例1に係る止血器具を示す図であって、被覆部材の本体部の外面側から見た平面図である。 変形例1に係る止血器具を患者の手に装着した際の様子を簡略的に示す図である。 変形例2に係る止血器具を示す図であって、第3アーム部が被覆部材の本体部に接続される前の状態を示す平面図である。 変形例2に係る止血器具を示す図であって、第3アーム部が被覆部材の本体部に接続された状態を示す平面図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1~図7は、実施形態に係る止血器具100を説明するための図、図8~図12は、止血器具100の使用例を説明するための図である。
止血器具100は、例えば、図9、図10、図11に示すように、患者の前腕部Aよりも手指側に位置する手(例えば、左手)Hの甲Hb側を走行する手掌動脈(深掌動脈)Bの橈骨動脈側(例えば、解剖学上のスナッフボックス周辺の動脈、又は、スナッフボックスよりも指先側を走行する遠位橈骨動脈)に形成された穿刺部位t(「止血すべき部位」に相当する)に留置していたイントロデューサー200のシースチューブを抜去する際、その穿刺部位tを止血するために使用することができる。なお、解剖学上のスナッフボックスは、患者が手Hの親指f1を広げた際に前腕部Aの橈骨側に位置する手の空洞である。
止血器具100は、概説すると、図1、図2、図10、図11に示すように、患者の手Hの穿刺部位tを覆うように配置される被覆部材110と、被覆部材110が穿刺部位tを覆った状態で被覆部材110を固定する複数の固定部材151、152、153、154、155と、被覆部材110に接続され、流体の注入により拡張する拡張部材170と、拡張部材170よりも外形が小さく、変形可能な補助部材180と、を有する。
図1は、被覆部材110の本体部120の外面側から見た止血器具100の平面図を示しており、図2は、被覆部材110の本体部120の内面側から見た止血器具100の平面図を示している。本体部120の内面は、止血器具100を患者に装着した際、患者の体表面に向い合うように配置される拡張部材170が接続された側の面であり、本体部120の外面は、内面の反対側の面である。また、以下の説明で用いられる「先端側」とは、止血器具100を患者の手Hに装着した状態において、手Hの指先が配置される側(図1の左側、図3の上側、図5の左側)である。なお、以下の説明では、止血器具100を患者の手Hに装着せずに各アーム部130、140を延ばした状態を「未装着状態」とも記載する。
<被覆部材>
図1、図2に示すように、被覆部材110は、拡張部材170が接続された本体部120と、本体部120から突出する第1アーム部130と、本体部120を挟んで第1アーム部130と対向する位置から突出する第2アーム部140と、を有している。
<本体部>
本体部120は、図1、図5に示すように、第1アーム部130と第2アーム部140との間で本体部120の先端側に位置する第1端部121と、第1端部121と対向し、本体部120の基端側に位置する第2端部122と、第1端部121と第2端部122の間に延びる延在部123と、を有している。
本体部120は、可撓性を備える部材で形成している。本体部120の延在部123の内側には、拡張部材170及び補助部材180が配置される空間部124が形成されている。空間部124は、延在部123の延在方向と交差する方向(各アーム部130、140が突出する方向)に沿って本体部120の外部と連通している。
図5に示すように、本体部120の第2端部122側には湾曲領域125が形成されている。湾曲領域125は、延在部123の一部の領域である。湾曲領域125は、第2端部122と隣接し、本体部120の基端側へ凸状に突出する断面形状を有している。
本体部120の第2端部122は、延在部123から連続的に延びており、本体部120の先端側に向けて湾曲する延在部123の終端部分を形成している。延在部123の第1端部121側は、第1端部121に向けて略直線状に延びた断面形状を有する。
本体部120の第2端部122には拡張部材170が接続されている。拡張部材170は、拡張部材170の基端部174b(拡張部材170の基端側の端部に位置する周縁部)が本体部120の第2端部122と接続している。
なお、拡張部材170は、図13に示すように、本体部120の第2端部122から延在部123の湾曲領域125に亘って接続していてもよい。この際、拡張部材170の基端部174bは、湾曲領域125の本体部120の基端側へ突出する凸状部の頂点部125aよりも第1端部121側に位置していることが好ましい。これにより、拡張部材170の基端部174bは、患者の手Hに止血器具100を装着した状態で、本体部120の外面側に位置する。そのため、拡張部材170を拡張した状態で患者が手Hを動かした場合であっても、拡張部材170の基端部174b(拡張部材170の基端側のエッジ部)が手に食い込むことを確実に防止できる。従って、止血器具100は、図13に示すような拡張部材170と被覆部材110の本体部120との接続形態を採用した場合、止血の際、患者の痛みを軽減することができる。
本体部120の第1端部121には補助部材180が接続されている。補助部材180は、本体部120と拡張部材170との間に挟まれた状態で第1端部121と接続されている。補助部材180は、補助部材180の先端部184a(補助部材180の先端側の端部に位置する周縁部)が本体部120の第1端部121と接続されている。
補助部材180は、拡張部材170の一端側(先端部174a側)に偏った位置で、拡張部材170と接続されている。本実施形態では、拡張部材170と補助部材180は、補助部材180の中央部184cで互いに接続されている。なお、中央部184cは、補助部材180の図5に示す左右方向の中心位置である。
上記のように本実施形態では、被覆部材110の本体部120の第1端部121に補助部材180の先端部184aが接続されており、被覆部材110の本体部の第2端部122に補助部材180の基端部174bが接続されている。拡張部材170と補助部材180は、補助部材180の中央部184cで互いに接続されている。したがって、被覆部材110は、本体部120の両端部121、122のみが拡張部材170及び補助部材180と直接接続されている。
本体部120は、当該本体部120において後述するマーカー部105と平面視で重なる部分(図1、図3の平面図上で重なる部分)及びその周囲が透明(有色透明、無色透明、及び半透明を含む)であることが好ましい。上記のように構成することにより、術者等は、マーカー部105を穿刺部位tに重ね合わせた状態においても、本体部120の外面側から穿刺部位tを視認することが可能になる。
<第1アーム部、第2アーム部>
以下の説明において、第1アーム部130の長手方向は、未装着状態において、第1アーム部130が延在する図1、図2の上下方向を意味する。また、第1アーム部130の幅方向は、図1、図2に示す平面図上において第1アーム部130の長手方向と交差する方向である。同様に、第2アーム部140の長手方向は、未装着状態において、第2アーム部140が延在する図1、図2の上下方向であり、第2アーム部140の幅方向は、図1、図2に示す平面図上において第2アーム部140の長手方向と交差する方向である。
図1、図2に示すように、第1アーム部130は、本体部120と接続された第1領域131と、第1領域131が配置された側と反対側の端部に位置する第2領域132と、第1領域131と第2領域132との間に位置する本体領域133と、を有している。
第1アーム部130は、患者の手Hに巻き付けることが可能な可撓性を備える帯状の部材で形成している。
第1アーム部130の本体領域133は、未装着状態において、第2領域132側が本体部120から離間するように湾曲している。
図1に示すように、第1アーム部130の第2領域132の外面には、第1固定部材151が配置されている。第1アーム部130の本体領域133の外面の一部には、第2固定部材152が配置されている。図2に示すように、第1アーム部130の各領域131、132、133の内面には、第3固定部材153が配置されている。
図7には、第1アーム部130の本体領域133の基端側の周縁部130a及び中央部(第1アーム部130の幅方向の中心を通る部分)130bの断面図を示している。
図1、図2、図7に示すように、第1アーム部130の本体領域133の基端側の周縁部130aには、第1アーム部130の本体領域133を形成する部材と、本体領域133の内面に配置された第3固定部材153が重ねて配置されている。一方、第1アーム部130の本体領域133の中央部130bには、第1アーム部130の本体領域133を形成する部材と、本体領域133の外面に配置された第2固定部材152と、本体領域133の内面に配置された第3固定部材153が重ねて配置されている。そのため、第1アーム部130は、本体領域133の基端側の周縁部130aと中央部130bとを比較すると、本体領域133の基端側の周縁部130aの肉厚(図7の上下方向の寸法)が中央部130bの肉厚よりも小さい。
図1、図2に示すように、第2アーム部140は、本体部120と接続された第1領域141と、第1領域141が配置された側と反対側の端部に位置する第2領域142と、第1領域141と第2領域142との間に位置する本体領域143と、を有している。
第2アーム部140は、患者の手Hの外表面の形状に沿って変形可能な可撓性を備える部材で形成している。
第2アーム部140の本体領域143は、未装着状態において、第2領域142側が本体部120から離間するように湾曲している。
図1に示すように、第2アーム部140の第1領域141及び本体領域143の外面の一部には、第4固定部材154が配置されている。図2に示すように、第2アーム部140の各領域141、142、143の内面には、第5固定部材155が配置されている。
図6には、第2アーム部140の本体領域143の基端側の周縁部140a及び中央部(第2アーム部140の幅方向の中心を通る部分)140bの断面図を示している。
図1、図2、図6に示すように、第2アーム部140の本体領域143の基端側の周縁部140aには、第2アーム部140の本体領域143を形成する部材と、本体領域143の内面に配置された第5固定部材155が重ねて配置されている。一方、第2アーム部140の本体領域143の中央部140bには、第2アーム部140の本体領域143を形成する部材と、本体領域143の外面に配置された第4固定部材154と、本体領域143の内面に配置された第5固定部材155が重ねて配置されている。そのため、第2アーム部140は、本体領域143の基端側の周縁部140aと中央部140bとを比較すると、本体領域143の基端側の周縁部140aの肉厚(図6の上下方向の寸法)が中央部140bの肉厚よりも小さい。
図3に示すように、第2アーム部140は、第1アーム部130の長手方向との間で鈍角θをなしつつ、本体部120から突出している。第1アーム部130と第2アーム部140の間で形成される鈍角θは、第1アーム部130の本体領域133の中央部130bに沿って延びる直線d1と、第2アーム部140の本体領域143の中央部140bに沿って延びる直線d2とが、本体部120上で交わる角度である。鈍角θは、例えば、120°~170°に形成することができる。
上記のように止血器具100は、図1、図3に示す平面図上において第1アーム部130と第2アーム部140とが鈍角θを形成する。そのため、第1アーム部130は、本体部120の第1端部121側から離間するように第2端部122側へ向けて傾斜して延びている。同様に、第2アーム部140は、本体部120の第1端部121側から離間する方向ように第2端部122側へ傾斜して延びている。したがって、第1アーム部130と第2アーム部140は、本体部120の第1端部121から第2端部122側へ向けて互いに交差することなく八の字状に広がるように延びている。
止血器具100は、第2アーム部140が第1アーム部130の長手方向との間で鈍角θを形成するため、第1アーム部130及び第2アーム部140を患者の手Hの手首側に延ばした状態で連結することができる(図10を参照)。そのため、第1アーム部130及び第2アーム部140を可動範囲が少ない手首側で固定でき、手Hの指先側の可動範囲を維持することができる。加えて、拡張部材170は、第1アーム部130及び第2アーム部140の固定により、拡張部材170の基端側(手首側)に強い圧迫力を付与することができる。また、拡張部材170は、補助部材180により、拡張部材170の先端側に強い圧迫力を付与することができる。そのため、止血器具100は、患者の手Hに対して拡張部材170による圧迫力を適切に付与することができる。
なお、本体部120の中心位置を通る直線d3と第1アーム部130の長手方向に沿う直線d1が形成する角度と、本体部120の中心位置を通る直線d3と第2アーム部140の長手方向に沿う直線d2が形成する角度は、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。
図1に示すように、第1アーム部130は、第2アーム部140よりも長く形成されている。第1アーム部130の長さL1と、第2アーム部140の長さL2の大小関係は、図1に示すように、未装着状態における各アーム部130、140の直線距離L1、L2により定義することができる。第1アーム部130の長さL1は、例えば、150mm~400mmに形成することができ、第2アーム部140の長さL2は、例えば、40mm~400mmに形成することができる。
第1アーム部130の幅W1は、例えば、第2アーム部140の幅W2よりも小さく形成することができる。第1アーム部130の幅W1は、第1アーム部130の幅が長手方向において変化する場合、第1アーム部130の幅の最大値で定義することができる。また、第2アーム部140の幅W2は、第2アーム部140の幅が長手方向において変化する場合、第2アーム部140の幅の最大値で定義することができる。第1アーム部130の幅W1は、例えば、10mm~30mmに形成することができ、第2アーム部140の幅W2は、例えば、15mm~45mmに形成することができる。
本実施形態では、被覆部材110は、本体部120と各アーム部130、140とを別々の部材で形成している。本体部120と第1アーム部130及び本体部120と第2アーム部140は、例えば、接着や融着等で接続することができる。ただし、止血器具100は、被覆部材110は、本体部120、第1アーム部130、第2アーム部140のうちの任意の部分が一つの部材で一体的に形成されていてもよい。
なお、本体部120は、第1アーム部130及び第2アーム部140よりもよりも伸縮性の高い材料で形成されていることが好ましい。それにより、止血器具100を患者の手Hに装着する際、各アーム部130、140を患者の肢体に巻き付けることにより、本体部120が第1アーム部130側及び第2アーム部140側の各々の側へ引っ張られて伸長する。それにより、本体部120は、第1アーム部130及び第2アーム部140の各々との境界部で物性が変化して変形し易くなるため、患者の手Hに形成した穿刺部位tに本体部120を配置した状態で、患者の手Hに第1アーム部130及び第2アーム部140を簡便に配置することができる。
被覆部材110の本体部120に用いる材料は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、ナイロン、ナイロンエラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
被覆部材110の第1アーム部130及び第2アーム部140に用いる材料は、特に限定されないが、例えば、被覆部材110の本体部120として例示した材料と同一の材料、織布、不織布、フェルト、織物、編物、紙を挙げることができる。
<固定部材>
図1、図2に示すように、止血器具100は、第1固定部材151、第2固定部材152、第3固定部材153、第4固定部材154、及び第5固定部材155の5つの固定部材を有している。
図1に示すように、第1アーム部130の外面には、第1固定部材151及び第2固定部材152が配置されている。第1固定部材151は、第1アーム部130の第2領域132に配置している。第2固定部材152は、第1アーム部130の第1領域131及び本体領域133の基端側の周縁部130aを除いた部分に配置している。
図1に示すように、第2アーム部140の外面には、第4固定部材154が配置されている。第4固定部材154は、第2アーム部140の第1領域141及び本体領域143の中央部140bに配置している。
図2に示すように、第1アーム部130の内面には、第3固定部材153が配置されている。第3固定部材153は、第1アーム部130の内面全体に配置している。
図2に示すように、第2アーム部140の内面には、第5固定部材155が配置されている。第5固定部材155は、第2アーム部140の内面全体に配置している。
第1固定部材151及び第4固定部材154は、面ファスナーの雄側で構成している。第2固定部材152、第3固定部材153、第5固定部材155は、面ファスナーの雌側で構成している。なお、面ファスナーは、面的に着脱可能なファスナーであり、例えば、Magic Tape(登録商標)やVelcro(登録商標)である。
各固定部材151、152、153、154、155は、患者の肢体に巻き付けた第1アーム部130を第2アーム部140に対して固定することが可能な限り、具体的な構成は限定されない。例えば、一部の固定部材の設置の省略や各アーム部130、140上において固定部材が配置される位置の変更等は適宜行い得る。また、各固定部材151、152、153、154、155を面ファスナーで構成する場合、面ファスナーの雄側と雌側を入れ替えた構成としてもよい。また、各固定部材151、152、153、154、155は、スナップ、ボタン、クリップ、孔部が形成された枠部材等であってもよい。
<拡張部材、補助部材>
図3、図5、図11に示すように、補助部材180は、拡張部材170よりも小さな外形(図3の平面図上での外形)を有している。補助部材180は、本体部120の先端側において拡張部材170と重なるように配置されている。なお、図5は、拡張する前の状態の拡張部材170及び補助部材180の断面を示しており、図11は拡張した状態の拡張部材170及び補助部材180の断面を示している。
拡張部材170は、図11に示すように、流体が注入可能な内腔171と、補助部材180に対向する位置に形成された連通孔172と、を有している。
本実施形態において、補助部材180は、流体の注入により拡張する補助拡張部である。
補助部材180は、流体が注入可能な内腔181と、拡張部材170の連通孔172と対向する位置に配置された連通孔182と、を有している。
補助部材180の連通孔182は、補助部材180の中央部184cに配置している。補助部材180の内腔181は、補助部材180の連通孔182及び拡張部材170の連通孔172を介して、拡張部材170の内腔171と連通している。補助部材180は、各連通孔172、182を介して拡張部材170と連通した状態で、拡張部材170に接続されている。
本実施形態では、拡張部材170は、図3に示す平面図上において略正方形の形状を有する。補助部材180は、拡張部材170の一辺と略同一の長さを有する一組の長辺と、拡張部材170の一辺の略半分の長さを有する一組の短辺とを備える長方形の形状を有する。補助部材180の長辺は、本体部120から各アーム部130、140が突出する図3の左右方向に沿って配置している。
前述したように、補助部材180は、拡張部材170の一端側(先端部174a側)に偏った位置で、拡張部材170と接続されている。そのため、図5に示すように、補助部材180の先端部184aは、拡張部材170の先端部174a付近に配置されており、補助部材180の基端部184bは、拡張部材170の中央部174c付近に配置されており、補助部材180の中央部184cは、拡張部材170の先端部174aと中央部174cとの間に配置されている。
拡張部材170は、補助部材180の中央部184cと接続されている。具体的には、拡張部材170は、拡張部材170の連通孔172の周囲の一定の範囲のみが補助部材180の中央部184cに位置する連通孔182の周囲に対して固定されている。
拡張部材170の連通孔172と、補助部材180の連通孔182は、図3に示すように、補助部材180の長手方向(長辺に沿う方向)に沿って延在している。止血器具100は、拡張部材170が拡張した際、拡張部材170が本体部120に対して補助部材180を圧迫しつつ拡張するため、各連通孔172、182が補助部材180の長手方向と交差する方向に広がる。それにより、補助部材180の長手方向の両端部が拡張部材170の先端部174aの両端側を押すように拡張し、拡張部材170の先端側が患者の手Hの皮膚を圧迫する面積を大きく確保することができる。そのため、止血器具100は、患者の指の動き等により止血器具100が手首側に移動した状態でも、拡張部材170の手Hの皮膚に対する圧迫位置が穿刺部位tからずれることを確実に防止できる。
拡張部材170の内腔171は、拡張部材170へ空気等の流体を供給するためのチューブ193の内腔と連通している。チューブ193は、図1、図3に示すように、拡張部材170の先端側で拡張部材170と接続されている。チューブ193は、本体部120の内面側及び第1アーム部130の内面側を通って被覆部材110から引き出されている。なお、チューブ193を拡張部材170から引き出す位置は特に限定されないが、図1、図3に示すように、チューブ193が本体部120の第1端部121側から第1アーム部130側へ引き出されることにより、止血器具100を患者に装着した際、チューブ193が手Hの側方(手Hの指が延在する方向と交差する方向)側に配置される(図9を参照)。そのため、止血器具100を患者に装着した際、チューブ193がイントロデューサー200と干渉することを防止できる。
なお、チューブ193は、補助部材180に接続してもよい。また、チューブ193を本体部120から引き出す位置等は適宜変更することが可能である。
止血器具100は、図3、図5に示すように、拡張部材170を穿刺部位tに対して位置合わせするためのマーカー部105を有している。
マーカー部105は、拡張部材170の略中心位置(図3に示す平面図上における中心位置であり、補助部材180の基端部184b付近)に対応した位置に配置している。
マーカー部105は、図5に示す断面図上において拡張部材170の中心位置と補助部材180の基端部184bとが重なるように配置される場合、補助部材180の基端部184bの外表面に配置することができる。なお、マーカー部105は、拡張部材170の体表面に向い合せて配置される側の面(内面)の内表面、拡張部材170の体表面に向い合せて配置される側の面と反対側の面(外面)の内表面やその外表面、被覆部材110の本体部120の内表面や外表面に配置することも可能である。
マーカー部105は、例えば、マーカー部105全体が有色で形成された矩形形状のマーカーで形成することができる。ただし、マーカー部105は、例えば、透明な中心部と、その中心部を囲む有色の線状の枠部と、から構成されてもよい。このようにマーカー部105を形成することにより、術者等は、マーカー部105の透明な中心部を介して穿刺部位tを確認しつつ、穿刺部位tにマーカー部105を配置することができる。そのため、術者等は、マーカー部105を利用し、穿刺部位tに拡張部材170の中心位置を簡単に配置することができる。なお、マーカー部105の具体的な形状、色、止血器具100の各部への形成方法等は特に限定されない。
本実施形態では、拡張部材170は、二つのシート状の部材で形成している。拡張部材170は、例えば、略矩形形状に形成された二つのシート状の部材の間に内腔171を形成した状態で、二つのシート状の部材の外周縁を接合することにより形成することができる。補助部材180も拡張部材170と同様に、接合された略矩形形状の二つのシート状の部材で形成することができる。
拡張部材170を形成するシート状の部材の接合方法や補助部材180を形成するシート状の部材の接合方法は特に限定されないが、例えば、接着や融着を採用することができる。また、拡張部材170と補助部材180を固定する方法、及び、拡張部材170及び補助部材180を被覆部材110の本体部120に接続する方法も特に限定されないが、例えば、接着や融着を採用することができる。
なお、拡張部材170及び補助部材180は、複数のシート状の部材を接合した構造に限定されることはない。拡張部材170及び補助部材180は、例えば、流体が流入可能な空間が内部に形成された一つの袋状の部材で形成してもよい。
拡張部材170及び補助部材180に用いられる材料は、特に限定されないが、例えば、被覆部材110の材料として例示したものと同様のものを挙げることができる。
<注入部>
図1、図2に示すように、止血器具100は、拡張部材170に流体を注入するための注入部191を有している。
注入部191は、逆止弁(図示せず)を内蔵するコネクタで構成している。注入部191には、シリンジ(図示せず)を接続することができる。
注入部191と拡張部材170との間には、拡張可能な空間を有する緩衝部材192を配置している。緩衝部材192は、内部に空間が形成された可撓性を備える袋状の部材で構成している。なお、緩衝部材192には、注入部191へのシリンジの挿入方向を示す矢印状のマーカーを設けてもよい。
緩衝部材192の一端側には、注入部191が接続されている。注入部191の内腔は、緩衝部材192の空間と連通している。ただし、注入部191に内蔵された逆止弁が閉じている間は、注入部191の内腔と緩衝部材192の空間との連通は遮断されている。
緩衝部材192の他端側には、可撓性を備えるチューブ193が接続されている。チューブ193の内腔は、緩衝部材192の空間と連通している。また、チューブ193は、緩衝部材192と接続された一端部と反対側の他端部が拡張部材170に接続されている。チューブ193の内腔は、拡張部材170の内腔171と連通している。
チューブ193の他端部は、例えば、拡張部材170を形成する二つのシート状の部材の間に挟み込まれた状態で接着材等により拡張部材170に接続することができる。なお、拡張部材170を形成するシート状の部材には、例えば、チューブ193を挟み込む部分に、シート状の部材の外方側へ部分的に突出する凸部が形成されていてもよい。
術者等は、拡張部材170及び補助部材180を拡張させる際、注入部191にシリンジ(図示せず)の先筒部を挿入して逆止弁を開く。術者等は、注入部191の逆止弁を開いた状態で、シリンジの押し子を押すことにより、シリンジ内の空気を拡張部材170の内腔171に注入する。
拡張部材170の内腔171に空気が注入されると、拡張部材170が拡張する。また、拡張部材170の内腔171に注入された空気は、拡張部材170の連通孔172及び補助部材180の連通孔182を介して、補助部材180の内腔181に流入する。補助部材180の内腔181に空気が流入すると、補助部材180が拡張する。拡張部材170及び補助部材180が拡張すると、チューブ193を介して拡張部材170の内腔171と連通している緩衝部材192が膨張する。
緩衝部材192の空間と拡張部材170の内腔171は、チューブ193を介して常時連通する。注入部191は、注入部191にシリンジが挿入されていない状態では、注入部191に内蔵された逆止弁を閉じた状態に維持し、注入部191から空気が漏れることを防止する。そのため、止血器具100は、患者に止血器具100を装着した状態において、患者が手Hを動かすと、手Hの穿刺部位tを圧迫する拡張部材170及び補助部材180が変形する。拡張部材170及び補助部材180が変形する際、拡張部材170の内腔171及び補助部材180の内腔181にある空気の逃げ場がないと、拡張部材170及び補助部材180の変形が妨げられる。そのため、患者は、手Hの可動範囲が制限される。止血器具100が備える緩衝部材192は、患者が手Hを動かした際、拡張部材170の内腔171及び補助部材180の内腔181から緩衝部材192への空気の移動を可能にする。そのため、患者は、手Hを動作させた際、拡張部材170及び補助部材180により可動範囲が制限されることを防止できる。なお、患者が手Hを変形させた状態から元の状態に戻すと、緩衝部材192から拡張部材170へ空気が移動するため、拡張部材170から穿刺部位tに対して効果的に圧迫力を付与することができる。
術者等は、拡張部材170及び補助部材180を収縮させる際、注入部191にシリンジの先筒部を挿入して、シリンジの押し子を引く。術者等は、上記の操作を行うことにより、拡張部材170内の空気及び補助部材180内の空気をシリンジへ排出させることができる。
なお、術者等は、術者等が拡張部材170を拡張させる際、緩衝部材192の膨張を確認することにより、空気が漏れずに、拡張部材170及び補助部材180を加圧できていることを目視で確認することもできる。
次に、図8~図11を参照して、止血器具100の使用例を説明する。以下では、穿刺部位tが形成された患者の手(左手)Hへの止血器具100の装着手順例を説明する。
図8には、患者の手Hの甲Hbに形成した穿刺部位t(図11を参照)を介して手掌動脈Bの遠位橈骨動脈側にイントロデューサー200のシースチューブを挿入して各種の手技を実施し終えた状態を示している。また、図8では、上記の手技を終えた後、穿刺部位tからイントロデューサー200のシースチューブの一部を引き抜いた状態を示している。
術者等は、止血の開始に際し、図8に示すように、患者の手Hの甲Hb側に被覆部材110の本体部120を重ねるように配置する。この際、拡張部材170の略中心位置に配置されたマーカー部105を穿刺部位tに配置する。
次に、術者等は、図9に示すように、第1アーム部130の本体領域133を患者の手Hの外周に沿って巻き付ける。術者等は、第1アーム部130の本体領域133を患者の手Hの外周に沿って巻き付けつつ、第1アーム部130の内面に配置された第3固定部材153を、第2アーム部140の外面に配置された第4固定部材154に接触させることにより、各固定部材153、154を介して、第1アーム部130と第2アーム部140を固定する。
次に、術者等は、図10に示すように、第1アーム部130において第2アーム部140と固定されていない部分を患者の手Hの掌側に折り返す。この際、術者等は、第1アーム部130の外面に配置された第1固定部材151を、第1アーム部130の外面に配置された第2固定部材152に接触させることにより、各固定部材151、152を介して、第1アーム部130の手Hに巻き付けられていない余剰部分を図10に示すように折り返した状態で固定することができる。
術者等は、以上の手順により、図10に示すように、止血器具100を患者の手Hに対して固定することができる。なお、図10では、イントロデューサー200を穿刺部位tから完全に抜去した状態を示している。
次に、術者等は、注入部191にシリンジを接続し、拡張部材170に空気を注入することにより、拡張部材170及び補助部材180を拡張させる。止血器具100は、拡張部材170及び補助部材180が拡張すると、拡張部材170が穿刺部位tに対して圧迫力を付与する。術者等は、拡張部材170及び補助部材180を拡張させた後、図10に示すように、イントロデューサー200のシースチューブを穿刺部位tから抜去する。この際、第1アーム部130及び第2アーム部140は、患者の手Hの外周方向に沿って配置されているため、各アーム部130、140がイントロデューサー200のシースチューブと重ならない。そのため、術者等は、拡張部材170及び補助部材180を拡張させた後、イントロデューサー200のシースチューブを穿刺部位tから容易に抜去することができる。
術者等は、止血器具100を使用して止血を行っている間、穿刺部位tからの出血がないことを確認する。術者等は、穿刺部位tからの出血がある場合、拡張部材170及び補助部材180への空気の注入量を調整する。
図11に示すように、止血器具100は、患者の手Hに装着された状態で、拡張部材170の先端側の部分及び補助部材180が手Hの先端側(指先側)に配置される。また、拡張部材170の基端側の部分は、手Hの基端側(手首側)に配置される。拡張部材170の基端部174bは、被覆部材110の本体部120の第2端部122と接続されているため、拡張部材170の基端部174bに患者の手Hの表面に喰い込む十分なエッジ部が形成されない。そのため、拡張部材170の基端部174bが患者の手Hの皮膚に接触することを防止できる。ここで、図12には、止血器具100を患者の手Hに装着した状態で、患者の手Hが手Hの甲Hb側(図12の上側)に曲げられた際の様子を示している。本体部120は、患者の手Hに止血器具100を装着させた状態で、拡張部材170が拡張した際、患者の手Hが曲げられて手Hの形状が変形すると、手Hの形状の変化に追従して湾曲領域125が折れるように変形する。湾曲領域125が折れるように変形すると、湾曲領域125の一部が拡張部材170の基端部174bよりも基端側(手首側)に配置される。そのため、止血器具100を装着した患者が手Hを動かした場合、本体部120の湾曲領域125が手Hの表面に接触し、拡張部材170の基端部174bが患者の手Hの表面に強く押し付けられることを防止できる。
拡張部材170及び補助部材180が拡張した際、補助部材180は、拡張部材170の先端部174a側を圧迫するように、穿刺部位t側に向かう斜め方向の力を加える。そのため、止血器具100は、拡張部材170が穿刺部位tに付与する圧迫力を効果的に高めることができる。
術者等は、止血を開始して一定時間が経過した後、拡張部材170及び補助部材180を徐々に減圧し、穿刺部位tの止血が適切になされていることを確認する。術者等は、穿刺部位tの止血が終了した後、拡張部材170及び補助部材180を十分に減圧する。そして、術者等は、第1アーム部130及び第2アーム部140による止血器具100の固定を解除し、止血器具100を患者の手Hから取り外す。
止血器具100は、図10に示すように、止血が行われている間、各アーム部130、140が患者の手Hの外周に沿って巻かれた状態で固定されつつ、患者の手指を被覆部材110の本体部120の先端側に突出させることができる。そのため、患者は、止血器具100を手Hに装着した状態で、各指が被覆部材110により覆われないため、止血が行われている間、手指を自由に可動させることができる。
術者等は、図8~図10に示した手順に沿った装着作業を進めることで、第1アーム部130と第2アーム部140を使用し、短時間で、患者に対して簡単に止血器具100を装着させることができる。また、止血器具100は、各アーム部130、140に配置された固定部材151、152、153、154、155を利用して被覆部材110を患者の手Hに固定することができる。そのため、止血器具100は、粘着材が設けられたシール部材などを利用して患者の手Hや前腕部Aに対して固定される止血器具と比較して、装着時に患者の皮膚に掛かる負担を軽減することができる。
また、止血器具100は、穿刺部位tに対して圧迫力を付与する部材として拡張部材170を備えているため、拡張部材170の内圧を調整することにより、圧迫力を容易に調整することができる。また、止血器具100は、患者が手Hを動かした際に手Hの動きに追従して内圧を変化させるように拡張部材170が変形しても、変形可能な補助部材180が拡張部材170の内圧の変化を緩和する。そのため、拡張部材170は、患者の手Hの動きに対する追従性が高く、拡張部材170による穿刺部位tへの圧迫を適切に維持できる。
また、止血器具100は、被覆部材110により患者の手Hの一部のみを覆うように構成されており、手Hの全体を覆うようには構成されていない。そのため、止血器具100を患者の手Hに装着した状態において、患者が手Hを動作させた際、患者の手Hの動作が止血器具100全体に伝達されることを防止できる。したがって、止血器具100は、止血器具100を患者の手Hに装着した状態で患者が手Hを動作させた際に、患者の手Hから位置ずれすることを抑制できる。
以下、本実施形態の作用効果を説明する。
止血器具100は、患者の手Hの穿刺部位tを覆うように配置される被覆部材110と、被覆部材110が穿刺部位tを覆った状態で被覆部材110を固定する複数の固定部材151、152、153、154、155と、被覆部材110に接続され、流体の注入により拡張する拡張部材170と、拡張部材170よりも外形が小さく、変形可能な補助部材180と、を備えている。被覆部材110は、拡張部材170が接続された本体部120と、本体部120から突出する第1アーム部130と、本体部120を挟んで第1アーム部130と対向する位置から突出する第2アーム部140と、を有している。本体部120は、第1アーム部130と第2アーム部140との間で本体部120の先端側に位置する第1端部121と、第1端部121と対向し、本体部120の基端側に位置する第2端部122と、を有している。拡張部材170は、第2端部122と接続しており、補助部材180は、本体部120と拡張部材170との間に挟まれた状態で、第1端部121に接続している。
上記のように構成された止血器具100は、拡張部材170の先端側に位置する本体部120の第1端部121に補助部材180が接続されているため、拡張部材170を拡張させた状態で患者が手Hを動かした際、補助部材180の基端部184bよりも基端側に位置する拡張部材170の基端部174bが手の表面に接触しやすい。ただし、止血器具100は、拡張部材170の基端側に位置する本体部120の第2端部122に拡張部材170が接続されているため、拡張部材170の基端部174b(外周縁)に患者の手Hの表面に喰い込む十分なエッジ部が形成されない。それにより、止血器具100は、拡張部材170を拡張した状態で患者が手を動かした場合であっても、拡張部材10の基端部174b(外周縁)が手に食い込むのを防止できるため、止血の際、患者の痛みを軽減することができる。
また、止血器具100は、拡張部材170の先端側で拡張部材170を圧迫する補助部材180を有するため、拡張部材170の先端側で拡張部材170が患者の手Hを圧迫する面積を大きく確保することができる。そのため、拡張部材170は、患者の指の動き等により止血器具100が手首側に移動した場合でも、拡張部材170が手に対して圧迫力を付与する範囲内から穿刺部位tがずれてしまうことを防止できる。また、止血器具100は、補助部材180が拡張部材170の先端部174a側で拡張部材170を圧迫するため、拡張部材170の先端部174aの浮き上がりを防止するとともに、拡張部材170の先端部174a側が手Hの表面に対して広い面積で接触するように圧迫する。そのため、止血器具100は、補助部材180が拡張部材170を押し付けることで、拡張部材170の浮き上がりを防止しつつ、拡張部材170の先端部174a側が手Hの表面を圧迫する面積を大きく確保し、拡張部材170が穿刺部位tからずれることを防止できる。加えて、補助部材180は、拡張部材170の一部を手Hに対して押し付けることで、拡張部材170の手Hに対する位置ずれを防止する。なお、手Hの穿刺部位tを止血する際、手Hに装着された止血器具100は、手Hの形状上(手Hを広げると、手Hの形状は指先側に行くほど広くなる)、手Hの先端側にずれることはないが、手Hの基端側にずれることがある。止血器具100は、拡張部材170が穿刺部位tよりも指先側に位置する手Hの広い面積を圧迫する。そのため、止血器具100は、止血器具100が手首側にずれた場合であっても、拡張部材170が手Hに対して圧迫力を付与する範囲内から穿刺部位tがずれてしまうことを防止できる。
また、止血器具100は、拡張部材170が患者の手Hの外周に沿って巻き付けられる第1アーム部130及び第2アーム部140と異なる位置で本体部120と接続されており、第1アーム部130及び第2アーム部140は本体部120を挟んで互いに対向する位置に接続されている。そのため、止血器具100は、止血器具100を患者の手Hに装着した状態で手Hを動かした際、拡張部材170の内部に位置する流体が第1アーム部130及び第2アーム部140の長手方向(図3の左右方向)に移動しやすい。これにより、拡張部材170は、被覆部材110の本体部120により、拡張部材170の第1アーム部130側の端部及び第2アーム部140側の端部が患者の手の表面に押さえ付けられるため、穿刺部位tに対する拡張部材170の圧迫面積を広げることができる。
また、止血器具100は、拡張部材170が本体部120の第1端部121に接続されており、補助部材180が拡張部材170との間で本体部120を挟んで対向するように本体部120の第2端部122に接続されている。そのため、拡張部材170と補助部材180は、互いに本体部120に対する接続位置が異なるため、手Hの動き等に追従しやすい。加えて、拡張部材170は、止血器具100を装着して拡張部材170を拡張させた状態において、拡張部材170と補助部材180との接触位置を基点として変形するため、手Hの動きに追従して変形し易い。
また、止血器具100は、本体部120と拡張部材170の間に、拡張部材170よりも外形が小さい補助部材180が配置されるため、補助部材180により、拡張部材170の所定位置が手Hに対して付与する圧迫力を調節することができる。そのため、止血器具100は、拡張部材170の所定位置が手Hに対して付与する圧迫力を好適にサポートすることができる。
また、補助部材180は、拡張部材170の一端側(先端部174a側)に偏った位置で、拡張部材170と接続している。そのため、止血器具100は、拡張部材170が拡張した際、拡張部材170の先端部174a側の浮き上がりを確実に防止し、拡張部材170の拡張時において、拡張部材170と補助部材180との位置ずれを防止することができる。また、補助部材180は、拡張部材170の先端部174a側を圧迫するように斜め方向の力を加えるため、拡張部材170の先端部174a側を覆うようにし、拡張部材170の拡張力が本体部120の外側に逃げることを抑制する。また、拡張部材170の先端部174a側に拡張部材170を圧迫する補助部材180を有するため、拡張部材170の先端部174a側が患者の手Hの皮膚を圧迫する面積を大きく確保することができる。それにより、患者の指の動き等により止血器具100が手首側に移動した状態でも、拡張部材170の手Hの皮膚に対する圧迫位置が穿刺部位tからずれることを防止できる。
また、補助部材180は、流体の注入により拡張する補助拡張部であり、補助拡張部は、拡張部材170と連通した状態で、拡張部材170に接続されている。そのため、止血器具100を装着する際、補助部材(補助拡張部)180を収縮させることができるため、穿刺部位tに対する止血器具100の位置合わせを容易に行うことができる。また、拡張部材170と補助部材180が連通しているため、拡張部材170に流体を注入することにより、拡張部材170及び補助部材180を同時に拡張させることができ、術者等の手間を軽減することができる。
また、拡張部材170は、補助部材(補助拡張部)180の中央部184cと接続している。そのため、止血器具100は、拡張部材170が拡張した状態においても、拡張部材170が補助部材180との接続部を基点として柔軟に変形することができる。それにより、拡張部材170は、患者の手Hが動いた際の手Hの形状の変化に追従することができ、患者の手Hの穿刺部位tに対する圧迫力を適切に維持することができる。
また、本体部120は、拡張部材170の基端部174b(拡張部材170の基端側の端部に位置する周縁部)及び補助部材180の先端部184a(補助部材180の先端側の端部に位置する周縁部)と接続している。そのため、止血器具100は、本体部120と拡張部材170の基端部174bとの接続位置、及び、本体部120と補助部材180の先端部184aとの接続位置で段差が形成されるが、拡張部材170の基端部174b(外周縁)及び補助部材180の先端部184a(外周縁)に患者の手Hの表面に喰い込む十分なエッジ部が形成されない。これにより、止血器具100は、拡張部材170が拡張した状態で、患者が手H等を動かした際、拡張部材170の周縁部のエッジ(外周縁)及び補助部材180の周縁部のエッジ(外周縁)が患者の手Hの皮膚に接触して、食い込み等による痛みが発生することを防止できる。また、止血器具100は、本体部120が拡張部材170の基端部174b及び補助部材180の先端部184aと接続しているため、拡張部材170を拡張した状態で、拡張部材170及び補助部材180が本体部120の内表面側に位置する。そのため、止血器具100は、穿刺部位tに対し、拡張部材170の圧迫力を好適に伝達することができる。
また、本体部120は、第2端部122側に湾曲領域125を有し、拡張部材170は、湾曲領域125と接続している。本体部120は、湾曲領域125が形成されることにより、本体部120と拡張部材170との間に空間部124を形成することができる。本体部120は、空間部124を形成することにより、拡張部材170が拡張した際、湾曲領域125が折れるように変形し、本体部120の第2端部122が本体部120の第1端部121側に向けて湾曲する。そのため、拡張部材170が拡張した際、本体部120の第2端部122が患者の手Hの皮膚に食い込むことをより確実に防止できる。
また、第1アーム部130は、第1アーム部130の基端側の周縁部130aの肉厚が第1アーム部130の中央部130bの肉厚よりも小さい。第2アーム部140は、第2アーム部140の基端側の周縁部140aの肉厚が第2アーム部140の中央部140bよりも小さい。そのため、止血器具100は、止血器具100を患者の手Hに装着した状態で患者が指を動かす際に指の動作の起点となる各アーム部130、140の手首側に位置する周縁部130a、140aの肉厚が薄い。それにより、止血器具100は、患者が手Hを動かした際、各アーム部130、140の周縁部130a、140aが手Hの皮膚に食い込むことを防止できる。
また、第1アーム部130は、第2アーム部140よりも長い。そのため、止血器具100は、止血器具100を患者の手Hに装着した際、第1アーム部130と第2アーム部140の固定位置が手Hの掌側又は手Hの甲Hb側に位置するため、第1アーム部130及び第2アーム部140により患者の手Hに対して、より確実に拡張部材170を固定することができる。
次に、前述した実施形態に係る止血器具の変形例1及び変形例2を説明する。各変形例の説明では、実施形態で既に説明した構成等についての詳細な説明は省略する。また、変形例の説明で特に説明がない内容については、実施形態と同様のものとすることができる。
図14は、変形例1に係る止血器具100Aを示している。変形例1に係る止血器具100Aは、第1アーム部130および第2アーム部140と異なる位置で、被覆部材110の本体部120から突出する第3アーム部300を有している。具体的には、第3アーム部300は、被覆部材110の本体部120の第1端部121側から突出している。
第3アーム部300は、図15に示すように、止血器具100Aを患者の手Hに装着した状態で、患者の手Hの隣り合う指f1、f2同士の間(指間部)に配置可能である。第3アーム部300は、患者の手Hの外表面の形状に沿って変形可能な可撓性を備える部材で形成している。なお、止血器具100Aでは、第3アーム部300は、親指f1と人差し指f2の間の指間部に配置可能に構成しているが、第3アーム部300は他の指の間に位置する指間部に配置するように構成してもよい。
第3アーム部300は、第3アーム部300の内面側に、第1アーム部130と接続可能な固定部材350を有している。第3アーム部300の固定部材350は、第1アーム部130の第2固定部材152と接続可能である。そのため、第3アーム部300は、第1アーム部130の第2固定部材152に、第3アーム部300の内面側に配置された固定部材350を接触させることにより、第1アーム部130に固定できる。従って、術者は、図15に示すように、第1アーム部130を患者の手Hの外周に沿って巻き付けつつ、各固定部材152、154を介して第1アーム部130及び第2アーム部140を固定した後、第3アーム部300を患者の手Hの親指f1と人差し指f2の間に通し、患者の手Hの掌側で第3アーム部300の一部を患者の手Hの外周に沿って巻き付けられた第1アーム部130に重ねる。これにより、術者は、第3アーム部300の内面側に配置された固定部材350を第1アーム部130の第2固定部材152に接触させることにより、固定部材152及び第3アーム部300の固定部材350を介して、第1アーム部130と第3アーム部300を固定できる。このような構成により、止血器具100Aは、第3アーム部300を患者の指f1、f2の間を通して、第1アーム部130に固定することにより、穿刺部位tに対する拡張部材170の位置ずれを効果的に防止しつつ、手Hの先端側で拡張部材170が浮き上がることを効果的に防止できる。そのため、止血器具100Aは、拡張部材170が拡張された状態で手Hを動かした場合であっても、第1アーム部130と第2アーム部140の固定、及び、第3アーム部300と第1アーム部130の固定により、拡張部材170が接続された本体部120の先端側の浮き上がりを効果的に防止し、手Hの穿刺部位tに対する拡張部材170による圧迫力を適切に維持できる。
第3アーム部300の固定部材350は、面ファスナーの雄側で構成している。なお、面ファスナーは、面的に着脱可能なファスナーであり、例えば、Magic Tape(登録商標)やVelcro(登録商標)である。
第3アーム部300の固定部材350は、患者の肢体に巻き付けた第1アーム部130に対して固定することが可能な限り、具体的な構成は限定されない。例えば、第3アーム部300上において固定部材350が配置される位置の変更等は適宜行い得る。また、各固定部材151、152、153、154、155、及び第3アーム部300の固定部材350を面ファスナーで構成する場合、面ファスナーの雄側と雌側を入れ替えた構成としてもよい。また、各固定部材151、152、153、154、155及び第3アーム部300の固定部材は、スナップ、ボタン、クリップ、孔部が形成された枠部材等であってもよい。
変形例1に係る止血器具100Aでは、被覆部材110は、本体部120と各アーム部130、140、300とを別々の部材で形成している。本体部120と第3アーム部300は、例えば、接着や融着等で接続することができる。ただし、止血器具100Aは、被覆部材110の本体部120、第1アーム部130、第2アーム部140、第3アーム部300のうちの任意の部分が一つの部材で一体的に形成されていてもよい。
図16及び図17は、変形例2に係る止血器具100Bを示している。変形例2に係る止血器具100Bでは、第3アーム部300が被覆部材110の本体部120に対して接続可能に構成されている。図16は、被覆部材110の本体部120に第3アーム部300を接続する前の状態を示しており、図17は、被覆部材110の本体部120に第3アーム部300を接続した状態を示している。
第3アーム部300は、本体部310と、本体部310の一端側に配置された接続部320と、を有している。第3アーム部300の本体部310は、第3アーム部300の内面側に、第1アーム部130接続可能な固定部材350を有している。そのため、本体部310の固定部材350は、第1アーム部130の第2固定部材152と接続可能である。また、第3アーム部300の接続部320は、被覆部材110の本体部120の第1端部121側に接続可能である。例えば、第3アーム部300の接続部320は、接続部320の内面側又は外面側に粘着材料や接着材料等を配置することで、被覆部材110の本体部120に取付可能に構成することができる。また、第3アーム部300の接続部320は、接続部320の内面側に面ファスナーの雄側を配置し、被覆部材110の本体部120の第1端部121側の外面側に面ファスナーの雌側を配置することで、接続部320の内面側と本体部120の外面側とを接触させることにより、被覆部材110の本体部120に取付可能に構成してもよい。これにより、止血器具100Bは、術者の判断により被覆部材110の本体部120に第3アーム部300を取り付けることができるため、術者が患者の手Hの状態(例えば、手Hに汗をかきやすい等)に合わせて、止血器具100Bに第3アーム部300を設けることができる。
なお、止血器具100A及び止血器具100Bの被覆部材110の第3アーム部300に用いる材料は、特に限定されないが、例えば、被覆部材110の第1アーム部130及び第2アーム部140として例示した材料と同一の材料を挙げることができる。
以上、実施形態を通じて本発明に係る止血器具を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
実施形態の説明では、左手の甲に形成した穿刺部位を止血するための止血器具を例示したが、止血器具は、右手の甲に形成された穿刺部位、右手の掌に形成された穿刺部位、左手の掌に形成された穿刺部位等を止血するために使用することも可能である。
補助部材は、各実施形態において説明した拡張可能な部材に限定されることはない。補助部材は、例えば、プラスチック等の樹脂材料やゲル等で構成された部材、時間経過に応じて含水率が低下して圧迫力を徐々に減少させるゲルを含む部材、スポンジ状の物質等の弾性材料、綿(わた)のような繊維の集合体、金属、所定の立体形状を備える部材(球状、楕円体、三角錐等)、これらを適宜組み合わせたもの等で構成することも可能である。
また、止血器具の各部の形状や寸法等は、手を含む肢体の少なくとも一部に対して第1アーム部及び第2アーム部を巻き付けつつ、止血すべき部位に拡張部材を配置可能な限り、特に限定されることはなく、適宜変更することが可能である。
本出願は、2018年9月6日に出願された日本国特許出願第2018-166587号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
100、100A、100B 止血器具、
105 マーカー部、
110 被覆部材、
120 本体部、
121 第1端部、
122 第2端部、
123 延在部、
124 空間部、
125 湾曲領域、
130 第1アーム部、
130a 第1アーム部の基端側の周縁部、
130b 第1アーム部の中央部、
140 第2アーム部、
140a 第2アーム部の基端側の周縁部、
140b 第2アーム部の中央部、
151 第1固定部材(固定部材)、
152 第2固定部材(固定部材)、
153 第3固定部材(固定部材)、
154 第4固定部材(固定部材)、
155 第5固定部材(固定部材)、
170 拡張部材、
171 拡張部材の内腔、
172 拡張部材の連通孔、
174a 拡張部材の先端部、
174b 拡張部材の基端部(周縁部)、
174c 拡張部材の中央部、
180 補助部材(補助拡張部)、
181 補助部材の内腔、
182 補助部材の連通孔、
184a 補助部材の先端部(周縁部)、
184b 補助部材の基端部、
184c 補助部材の中央部、
191 注入部、
192 緩衝部材、
193 チューブ、
200 イントロデューサー、
300 第3アーム部、
310 第3アーム部の本体部、
320 第3アーム部の接続部、
350 固定部材、
A 前腕部、
B 手掌動脈、
H 手、
Hb 手の甲、
t 穿刺部位(止血すべき部位)。

Claims (8)

  1. 患者の手の止血すべき部位を覆うように配置される被覆部材と、
    前記被覆部材が前記止血すべき部位を覆った状態で前記被覆部材を固定する固定部材と、
    前記被覆部材に接続され、流体の注入により拡張する拡張部材と、
    前記拡張部材よりも外形が小さく、変形可能な補助部材と、を備え、
    前記被覆部材は、前記拡張部材が接続された本体部と、前記本体部から突出する第1アーム部と、前記本体部を挟んで前記第1アーム部と対向する位置から突出する第2アーム部と、を有し、
    前記本体部は、前記第1アーム部と前記第2アーム部との間に位置し、かつ当該止血器具を前記手に装着した状態において前記手の指先側に位置する前記本体部の先端側に位置する第1端部と、前記第1端部と対向し、前記本体部の基端側に位置する第2端部と、を有し、
    前記拡張部材は、前記第2端部と接続しており、
    前記補助部材は、前記本体部と前記拡張部材との間に挟まれた状態で、前記第1端部に接続している、止血器具。
  2. 前記補助部材は、前記拡張部材の一端側に偏った位置で、前記拡張部材と接続している、請求項1に記載の止血器具。
  3. 前記補助部材は、流体の注入により拡張する補助拡張部であり、前記補助拡張部は、前記拡張部材と連通した状態で、前記拡張部材に接続されている、請求項1又は請求項2に記載の止血器具。
  4. 前記拡張部材は、前記補助拡張部の中央部と接続している、請求項3に記載の止血器具。
  5. 前記本体部は、前記拡張部材の周縁部及び前記補助部材の周縁部と接続している、請求項1~4のいずれか1項に記載の止血器具。
  6. 前記本体部は、前記第2端部側に湾曲領域を有し、前記拡張部材は、前記湾曲領域と接続している、請求項1~5のいずれか1項に記載の止血器具。
  7. 前記第1アーム部は、前記第1アーム部の基端側の周縁部の肉厚が前記第1アーム部の中央部の肉厚よりも小さく、前記第2アーム部は、前記第2アーム部の基端側の周縁部の肉厚が前記第2アーム部の中央部よりも小さい、請求項1~6のいずれか1項に記載の止血器具。
  8. 前記第1アーム部は、前記第2アーム部よりも長い、請求項1~7のいずれか1項に記載の止血器具。
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