JP7303578B2 - 光硬化性人工爪組成物 - Google Patents
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Description
このような爪の装飾や補強のためには、いわゆるマニキュア、ペディキュア、スカルプチュアと呼ばれる樹脂含有の材料が爪に塗布されている。
特許文献1には、(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物、および(c)ラジカル重合開始材を含む人工爪化合物が記載されている。
具体的には以下の通りである。
項1:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物、(c)光重合開始剤、を含む光硬化性人工爪組成物。
項2:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物が、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸エステル化合物である、項1に記載の光硬化性人工爪組成物。
項3:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物が、リン酸2-アクリロイルオキシエチル及び/又はリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)である、項1又は2に記載の光硬化性人工爪組成物。
項4:(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物が、(メタ)アクリレート基を有するラジカル重合性オリゴマーである、項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性人工爪組成物。
項5:(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量が、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超4.4質量%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の光硬化性人工爪組成物。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物及び光重合開始剤を含むものである。
本発明の光硬化性組成物において、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物を含有することで、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性が向上する機構等は不明であるが、本発明者らは、次のように推察している。
一般的に、アクリレート基は、メタクリレート基より立体障害が小さく硬化性が高いことから、爪表面への浸透後に確実に硬化し、爪全体と強力に密着することで、硬化塗膜の硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)及び密着持続性が向上すると考えられる。なお、本発明は、この推察に限定されるものではない。
また、本発明の光硬化性人工爪組成物において、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、特定の範囲(0質量%超、好ましくは0.1質量%以上であり、4.4質量%以下、好ましくは4.3質量%以下)とすることで、爪上に形成した光硬化性人工爪組成物塗膜が、時間の経過により白濁すること(経時白濁)が防止できる機構等は不明であるが、本発明者らは、次のように推察している。
一般的に、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物は、リン原子に水酸基が1つ結合した化合物と、リン原子に水酸基が2つ結合した化合物の混合物として提供される場合が多い。アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物と爪が結合(水素結合)する際には、リン原子に結合した1つの水酸基が寄与することとなるため、リン原子に結合した水酸基が過剰となっている。この過剰となった水酸基が、爪から蒸散する水分と反応することで、硬化塗膜の経時白濁が起こるものと考えられる。これは、塗布直後には硬化塗膜の白濁が起こらないこと、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物を含まない系では経時白濁が起こらないこと等から、硬化塗膜の経時白濁が、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物からの過剰な水酸基と爪から蒸散する水分との反応によるものであることが示唆されていると考えられる。これより、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、特定の範囲とすることで、爪上に形成した光硬化性人工爪組成物塗膜の経時白濁が防止できると考えられる。なお、本発明は、この推察に限定されるものではない。
本明細書においては、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両者を意味する。
アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物は、分子内にアクリレート基と、リン酸基(-P(=O)(OH)2基又は-P(=O)(OH)-基)を有するラジカル重合性リン酸化合物であれば、特に限定されない。
例えば、下記式;
CH2=CH-COO-R1-P(=O)(OH)2
CH2=CH-COO-R2-P(=O)(OH)-R3-OCO-CH=CH2
(式中R1、R2及びR3は、2価の有機基を表す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
本発明の光硬化性人工爪組成物において、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超、好ましくは0.1質量%以上であり、4.4質量%以下、好ましくは4.3質量%以下とすることで、爪上に形成した光硬化性人工爪組成物塗膜が、時間の経過により白濁すること(経時白濁)を防止することができる。
(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物は、分子内に(メタ)アクリレート基を1個以上有するとともに、分子内にリン原子を有しないラジカル重合性化合物であれば、特に限定されず、1種類単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
一分子中に含まれる(メタ)アクリレート基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、硬化塗膜の硬度等の観点から、1~10個、好ましくは1~8個である。また、(メタ)アクリレート基の数は、赤外吸収分光法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)等を用いて分析することによって確認できる。
本発明においては、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物として、1種類以上の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーと、1種類以上のラジカル重合性モノマーとを混合して用いることが好ましい。
(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物として用いられる(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリレート基を1個以上有するオリゴマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリレート基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、硬化塗膜の硬度等の観点から、1~10個、好ましくは2~8個である。
(メタ)アクリレート基の数は、赤外吸収分光法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)等を用いて分析することによって確認できる。
すなわち、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーについて、その重合度を大きくする、重合度が高い(分子量が大きい)オリゴマーの含有量を増やすことにより、硬化熱を低くすることができる。一方、(メタ)アクリレート基を多数有するオリゴマーを用いる、オリゴマーの重合度を小さくする、重合度が低い(分子量が小さい)オリゴマーの含有量を増やすことにより、硬化熱を高くすることができる。
また、アクリレート基は分子構造が嵩高くないことから反応性がメタクリロイル基よりも高くなる。その反面、硬化熱が高くなる傾向がある。
本発明の光硬化性人工爪組成物において、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーとしては、例えば、メタクリレート基を有するオリゴマーを用いることができる。
主骨格(主鎖)にウレタン結合、エポキシ基の開環反応によって生じる結合、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、カーボネート結合、アミド結合からなる群より選ばれる1種類以上を有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、
主骨格(主鎖)がスチレン系、(メタ)アクリル系、オレフィン系、ジエン系モノマーからなる群より選ばれる1種類以上のモノマーの重合により分子鎖を有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、
等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
(a)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ウレタン結合を主骨格に有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー)、
(b)エポキシ基の開環反応によって生じた分子鎖を有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、
(c)エステル(メタ)アクリレートオリゴマー(エステル結合を主骨格に有する(メタアクリレート基を有するオリゴマー)、
(d)エーテル(メタ)アクリレートオリゴマー(エーテル結合を主骨格に有する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー)、
等からなる群より選ばれる1種類以上を用いると、密着性等の点で有利である。
(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、市販品または合成品のいずれを使用してもよい。また、本発明においては、光硬化性樹脂組成物及び/又はその硬化塗膜の爪密着性や耐久性等の観点から、1種類以上のウレタン(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーを含んでいてもよい。
(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー以外のオリゴマーと混合して用いることもできる。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成し、さらに、分子内に活性水素含有基と(メタ)アクリレート基を有する化合物(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等)を反応させる方法等で合成できるが、この方法のみに限定されない。
市販品としては、例えば、AH-600、AT-600、UA-306H、UF-8001G(共栄社化学社製)や、RUA-071、RUA-003VE、RUA-075、RUA-048(亜細亜化学工業社製)、UA-4200、UA200PA、UA-33H、UA-1100H、SUA TH1、SUA TH2(新中村化学社製)、UV-3310B(三菱ケミカル社製)、UN-9000PEP、UN-9200A、AU-2040(トクシキ社製)、KUA-PC2I(ケーエスエム社製)、アートレジン UN-6303、UN-9200A、UN-900PEP(根上工業社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において使用することができる1種類以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、非芳香族系ポリエーテル骨格、芳香族系ポリエーテル骨格、非芳香族系ポリカーボネート骨格、芳香族系ポリカーボネート骨格、非芳香族系ポリエステル骨格、及び芳香族系ポリエステル骨格からなる群より選ばれる1種類以上を有するものから選択して使用することができる。中でも非芳香族系ポリエーテル骨格や(非)芳香族系ポリカーボネート骨格の1種類以上を有するものが好ましい。
ここで、イソシアネート基含有ポリエーテルウレタンプレポリマーは、炭素数3以上のアルキレン基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネートとを反応させたもので、重量平均分子量が、例えば400以上30,000以下のものである。ポリオール化合物としては、ポリプロピレンポリオールが好ましい。ポリイソシアネートとしては、非芳香族系ポリイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらのイソシアヌレート化物、ビューレット化物等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
エポキシ基の開環反応によって生じた分子鎖を有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、多官能エポキシ樹脂に対して、エポキシ基と反応する官能基を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品としては、例えば、EBECRYL 1259、605、1606(ダイセル・サイテック社製)、EPOXY ESTER 3000A、3000MK、3002A(N)、3002M(N)、40EM(共栄社化学社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
エステル結合を有するエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールと多価カルボン酸との反応により得られたエステル系オリゴマーが有するカルボキシル基及び/又は水酸基に対し、分子内に水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物及び/又は(メタ)アクリル酸やカルボキシル基を有するアクリル化合物を付加することにより合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M-6100、M-6200、M-6250、M-6500、M-7100、M-7300K、M-8030、M-8060、M-8100、M-8530、M-8560、M-9050(東亞合成社製)や、UV-3500BA、UV3520TL、UV-3200B、UV-3000B(三菱ケミカル社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
エーテル結合を有するエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、脂肪族系のポリエーテルポリオールの水酸基や、ビスフェノール等を原料とする芳香族系のポリエーテルポリオールの水酸基に対し、分子内に水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物、(メタ)アクリル酸、及び、分子内にカルボキシル基と(メタ)アクリレート基を有する化合物等からなる群より選ばれる1種類以上を付加させることにより合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品としては、例えば、UV-6640B、UV-6100B、UV-3700B(三菱ケミカル社製)、ライトアクリレート(登録商標)3EG-A、4EG-A、9EG-A、14EG-A、PTMGA-250、BP-4EA、BP-4PA、BP-10EA、ライトエステル4EG、9EG、14EG(共栄社化学社製)、EBECRYL(登録商標)3700(ダイセル・サイテック社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーの重量平均分子量は、特に限定されない。例えば1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上であり、例えば100,000以下、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下である。重量平均分子量の範囲をこのような範囲とすることで、低粘度を保持しつつ、硬化塗膜の耐久性を向上することができる。
また、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物全量に対する(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーの含有量についても特に限定されない。例えば0質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、例えば100質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることができる。
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート基を有するラジカル重合性モノマー(以下、「(メタ)アクリレートモノマー」という場合がある。)や(メタ)アクリレート基以外のラジカル重合性不飽和基を有する化合物があげられる。
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリレート基を1個以上有し、分子内にリン原子を有しないモノマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリレート基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、硬化塗膜の硬度等の観点から、1個以上であり、例えば10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは6個以下である。
本発明では、(メタ)アクリレートモノマーとして、(メタ)アクリレート基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。また、(メタ)アクリレート基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上と、(メタ)アクリレート基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上との混合物を用いることが好ましい。
(ii)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、
からなる群より選ばれる1種類以上が好ましい。
(メタ)アクリレート基以外のラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基等のラジカル重合し得る不飽和基(重合性の炭素-炭素間二重結合を持つ官能基)を持つ化合物があげられる。
このような化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン、酢酸ビニル等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
また、光硬化性人工爪組成物に含有させるラジカル重合性モノマーの種類や量を調製することで、光硬化性人工爪組成物の反応性や硬化熱を調整することができる。
本発明においては、ラジカル重合性モノマーとして、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー等の官能基を有するラジカル重合性モノマーや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等の分子内に環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物を用いることが、光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)、密着持続性、硬化性、硬化塗膜の美感等の点で好ましい。
光重合開始剤は、光硬化用の光源から発せられる波長の光が照射されると、ラジカルを発生するものである。例えば、アシルフォスフィンオキシド系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシッドエステル系、α-アミノアルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、チタノセン系、キノン系等からなる群より選ばれる1種類以上の光重合開始剤があげられる。
光重合開始剤は、光硬化性人工爪組成物に対して、UV-LED光源を含む各種の光源を用いて光を照射した場合であっても、良好な硬化性を付与することができる。
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
特に、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドは、皮膚コンディショニング剤としても機能することから、本発明において好ましく用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物には、粘度、塗布性、取扱性、硬化塗膜耐久性などに悪影響を与えない範囲で、アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物及び光重合開始剤に加えて、各種の成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、着色剤、多官能チオール化合物、ポリオール化合物、香料、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、第3級アミン等の光重合促進剤、連鎖移動剤、充填剤、表面張力調整剤、重合禁止剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン吸着体、低応力化剤、防腐剤、抗菌剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等の各種の添加剤からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
硬化前の光硬化性人工爪組成物には、顔料等のみではなく樹脂粒子や、公知の光硬化性人工爪組成物に配合できる装飾用材料等を配合しておくことも可能である。
多官能チオール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール化合物の水酸基に、チオール基又は反応してチオール基になる基を有する化合物が反応して得られたもの等があげられる。例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
多官能チオール化合物を光硬化性人工爪組成物に含有させる場合には、好ましくは1.0~10.0質量%となるように含有させることができる。
アルキルポリオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの開館重合により得られるポリエーテルポリオールがあげられる。
重合禁止剤を光硬化性人工爪組成物に含有させる場合には、光硬化性人工爪組成物全体に対して、例えば500ppm以上、好ましくは1,000ppm以上であり、例えば5,000ppm以下、好ましくは4,500ppm以下となるように配合することができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜は、基材に対する密着性に優れ、基材への密着性が長期間持続し、適度な硬さを有している。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、いわゆる一般のマニキュアやペディキュアのように、爪の表面に被覆を行うための組成物であり、使用者自身の爪の表面を、必要に応じてサンディングする等して凹凸を設けた表面に被覆してもよい。特にジェルネイルとして好適に使用でき、例えば、使用者の爪に直接塗布されるベースコート層、該ベースコート層の上に塗布されるカラーコート、さらにその上に塗布されるトップコート層のいずれにも使用できる。
なお、カラーコートとして用いる場合は、着色剤を用いて、ソリッドカラーやラメ調、金属光沢調、暗色や明色等多彩に調色して用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜を形成する際には、従来の紫外線等により硬化されるラジカル重合性のマニキュア等と同様の設備、又は一般の紫外線硬化用の設備を用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、いずれの層に用いても、長期間(例えば、硬化後少なくとも2週間)硬化塗膜が欠けることなく、剥がれず、また下層や使用者の爪に対して浮きが発生することを抑制できる。
光硬化性人工爪組成物は、硬化塗膜の引張試験による破断時の応力(最大応力)が15.0MPa以上であることが好ましく、18.0MPa以上がより好ましく、20.0MPa以上であることがさらに好ましい。15.0MPa未満であると、擦りにより剥離し易くなるおそれがある。
また、硬化塗膜の破断時の歪率が95.0%以上であることが好ましく、97.0%以上がより好ましく、100.0%以上がさらに好ましい。
本発明の光硬化性組成物を用いて被覆される爪は、人の手の爪と足の爪のいずれでもよく、犬や猫などの動物の爪でもよい。
本発明の光硬化性人工爪組成物を、爪又は爪に設けられた(未)硬化塗膜の上に塗布して被覆する際、塗布面にサンディングを施してもよく、施さなくてもよい。光硬化性人工爪組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、筆等の塗布具や、インクジェット等の塗布方法を用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、ジェルネイルにおける、ベースコート層(ジェルベース;下地層)、中間層(カラー層)又はトップコート層のいずれとしても用いることができる。特に、基材に対する密着性が優れていることから、ベースコート層(ジェルベース;下地層)として用いることが好適である。
本発明の光硬化性人工爪組成物を塗布後、硬化前に小さな飾りや粉体等を、光硬化性人工爪組成物の塗膜表面に付着させ、意匠性を高めることも可能である。
シート表面に予め光硬化性人工爪組成物を用いて層を設け、これを転写する方法によれば、筆等の塗布具を使用することなく、爪の表面に均一かつ正確な模様を被覆することが可能であり、使用後においても該塗布具を洗浄等する必要がない。
光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等の公知の紫外線の光源を用いることができる。
その中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザーダイオード(UV-LD)が好ましい。
表1に示す成分を、表1に示す量比(質量部)となるように容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ50℃に加温し撹拌した。撹拌後80℃で2時間静置し脱泡し、光硬化性人工爪組成物を得た。これらの工程は、全て遮光下にて行った。
PA:リン酸2-アクリロイルオキシエチル及びリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)を含む混合物
PU:ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート及びポリカーボネートジオールから得られるポリカーボネートポリウレタンメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
HPK:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
PM1:リン酸ビスメタクリロイルオキシエチル
PM2:リン酸カプロン酸メタクリロイルオキシエチル
得られた光硬化性人工爪組成物の密着性の評価を、ピールオフ荷重に基づいて行った。
ピールオフ荷重の測定は、90°ピールオフ試験により以下のように行った。結果を表1に併せて示す。
(90°ピールオフ試験)
ナイロン板の表面をエタノールで拭き汚れを除去した後に、硬化後膜厚が100μmの膜厚となるように光硬化性人工爪組成物を塗布した。30W-LEDライトで30秒硬化させて、縦10mm、幅50mmの硬化塗膜を形成した。
硬化塗膜の幅方向端部を、デジタルフォースゲージ(イマダ社製、ZTA-100N)に設けたクリップで挟み、ナイロン板から硬化塗膜を100mm/secで幅方向に剥離角90°で剥離し、ピールオフ荷重(硬化塗膜を剥離させる際に要した荷重(kg)の最大値)を測定した。
ピールオフ荷重増減率は、実施例1のピールオフ荷重を基準として、以下の式により求めた。結果を表1に併せて示す。
ピールオフ荷重増減率(%)=(ピールオフ荷重)/(実施例1のピールオフ荷重)×100
実施例1~9、比較例1の光硬化性人工爪組成物を被験者の爪に塗布・硬化してジェル
ネイルにおけるベースコート層(ジェルベース)を形成した。その後、透明カラージェルを塗布・硬化して透明カラー層を形成し、さらに、透明トップコートジェルを塗布・乾燥して透明トップコート層を形成しジェルネイルを作製した。硬化条件は、30W-LEDライトの30秒照射とした。
ジェルネイル形成後4週間、ジェルネイルの状態を目視にて確認し、白濁発生の有無を確認した。評価は、4週間経過後も白濁していない場合をA評価、4週間後に白濁していた場合をB評価とした。結果を表2に示す。
さらに、硬化性、硬化塗膜の美感等の点でも問題がなく、ジェルネイルとして好適に使用し得るものであった。さらに、表2より、「アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物」の含有量を、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超(好ましくは0.01質量%以上)4.4質量%以下(好ましくは4.3質量%以下)とすることで、爪に対する高い接着性を維持しつつ、経時的に白濁することが防止されたベースコート層を形成し得ることがわかる。これにより、特にカラー層を透明調のものとした際に、ジェルネイルが経時的に白濁により美感を損なう恐れがなくなり、極めて有用である。
Claims (3)
- (a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物、
(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物、
(c)光重合開始剤、
を含み、
前記(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物が、リン酸2-アクリロイルオキシエチル及び/又はリン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)を含み、
前記(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物が、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの1種類以上を含み、
(a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量が、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超7.0質量%以下である、
光硬化性人工爪組成物。 - 前記(b)(メタ)アクリレート基を有しリン原子を有しないラジカル重合性化合物が、
(i)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、
(ii)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる水酸基含有(メタ)アクリレート、
からなる群より選ばれる1種類以上を含む、請求項1に記載の光硬化性人工爪組成物。 - (a)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸化合物の含有量が、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して、0質量%超4.4質量%以下である、請求項1又は2に記載の光硬化性人工爪組成物。
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