JP7294280B2 - 乗降用手すり - Google Patents

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Description

本発明は、乗降用手すりに関する。
つり革の持ち手の上部に遮光性のカバーを設けるとともに、そのカバーの内部に紫外線を照射可能な発光素子を設け、カバーで覆われている持ち手の上部に紫外線を照射することで、周方向に回転可能な持ち手を除菌するようにしたつり革の除菌装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2020-063050号公報
つり革の場合、乗客は下から手を伸ばして、そのつり革を把持するので、上記のようなカバーを常時備えた除菌装置でも成立する。しかしながら、バス等の乗降口の周辺に設けられている乗降用手すりの場合、乗降客は色々な方向から、その乗降用手すりを把持するので、上記のようなカバーを常時備えた除菌装置であると、乗降用手すりを把持するのが困難になり、乗降用手すりとしての本来の機能が損なわれてしまう。
そこで、本発明は、乗降用手すりとしての機能を損なうことなく除菌できる乗降用手すりを得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の乗降用手すりは、車両の乗降口の周辺に設けられた支持部材に支持されるとともに、一部の区間が除去されることで非環状とされた外パイプと、軸方向から見た断面で外径が前記外パイプの内径よりも小径の略「C」字状に形成され、前記外パイプの一端部及び他端部に架設されることで前記一部の区間に配置された内パイプと、前記内パイプの外周面及び内周面を連続して被覆するとともに、前記内パイプの内部に設けられた駆動装置により前記内パイプの周方向に移動可能とされたシート部材と、前記内パイプの内部に設けられ、紫外線を照射することで前記シート部材を除菌する除菌装置と、を備えている。
請求項1に記載の発明によれば、車両に対して乗降客が乗降する際には、乗降用手すりのシート部材を乗降客が把持する。ここで、シート部材は、駆動装置により周方向に移動可能とされ、かつ除菌装置により紫外線が照射されて除菌可能とされている。したがって、乗降客が乗降用手すりのシート部材を把持しないときに、そのシート部材を周方向に移動させつつ除菌することができる。このように、乗降用手すりは、その機能を損なうことなく除菌可能となる。
また、請求項2に記載の乗降用手すりは、請求項1に記載の乗降用手すりであって、前記駆動装置は、前記乗降口がドアによって閉鎖される度に駆動して前記シート部材を前記周方向へ所定量移動させる。
請求項2に記載の発明によれば、乗降口がドアによって閉鎖される度にシート部材が周方向へ所定量移動する。つまり、乗降口がドアによって閉鎖される度にシート部材が除菌される。したがって、乗降客が乗降時に把持するシート部材は常に除菌された状態となっており、乗降客は安心してシート部材を把持することが可能となる。
また、請求項3に記載の乗降用手すりは、請求項1又は請求項2に記載の乗降用手すりであって、前記駆動装置は、前記シート部材に対して摺動抵抗を有する一対の回転部材で構成されており、前記シート部材を前記内パイプの内周面側へ引き込む一方の前記回転部材の回転速度が、前記シート部材を前記内パイプの外周面側へ送り出す他方の前記回転部材の回転速度よりも速い。
請求項3に記載の発明によれば、駆動装置が、シート部材に対して摺動抵抗を有する一対の回転部材で構成されており、シート部材を内パイプの内周面側へ引き込む一方の回転部材の回転速度が、シート部材を内パイプの外周面側へ送り出す他方の回転部材の回転速度よりも速くされている。したがって、内パイプの外周面側に配置されているシート部材に対して周方向にテンションが掛けられ、内パイプの外周面に対するシート部材の位置ずれが抑制される。
また、請求項4に記載の乗降用手すりは、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の乗降用手すりであって、前記支持部材は、車体上下方向を軸方向として前記外パイプを回動可能に支持しており、前記外パイプは、ドアが前記乗降口を開放させる動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車外へ向けて突出され、ドアが前記乗降口を閉鎖する動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車内へ収容されるように構成されている。
請求項4に記載の発明によれば、外パイプは、ドアが乗降口を開放させる動作に伴って車外へ向けて突出され、ドアが乗降口を閉鎖する動作に伴って車内へ収容される。つまり、この乗降用手すりは、格納姿勢を取ったときに、車内(車室側)へ向けて突出することがない。したがって、乗降用手すりにより乗車スペースが制限されるのが抑制される。
以上のように、本発明によれば、乗降用手すりとしての機能を損なうことなく、その乗降用手すりを除菌することができる。
本実施形態に係る乗降用手すりを備えたバスを示す斜視図である。 本実施形態に係る乗降用手すりを示す斜視図である。 本実施形態に係る乗降用手すりのレール部がスライド可能に保持するスライド部材を示す斜視図である。 スライド部材がレール部に保持されたときの状態を示す図2のX-X線矢視断面図である。 本実施形態に係る乗降用手すりに設けられた発光素子及び駆動モーターへの給電用のケーブルを示す斜視図である。 本実施形態に係る乗降用手すりの内パイプを軸方向から見た断面図である。 本実施形態に係る乗降用手すりの内パイプを軸方向と直交する方向から見た断面図である。 本実施形態に係る乗降用手すりの外パイプと内パイプとの嵌合部分を一部断面で示す分解斜視図である。 本実施形態に係る乗降用手すりの格納姿勢を示す背面図である。 本実施形態に係る乗降用手すりの格納姿勢を示す平面図である。 本実施形態に係る乗降用手すりの展開姿勢を示す背面図である。 本実施形態に係る乗降用手すりの展開姿勢を示す平面図である。
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、本実施形態に係る乗降用手すり30は、車両としての乗合自動車の一例である小型のバス(自動運転バスに代表されるMaaS(Mobility as a Service)車も含む)10に対して好適に設けられる(図1参照)。
したがって、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPをバス10の車体上方向、矢印FRをバス10の車体前方向、矢印LHをバス10の車体左方向、矢印RHをバス10の車体右方向とする。そして、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車体上下方向の上下、車体前後方向の前後、車体左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
図1に示されるように、バス10における車体12の左側壁(一方の側壁)で、かつ前後方向略中央部には、側面視で矩形状を成す乗降口16が形成されている。そして、このバス10には、その乗降口16を開閉するドアとしてのスライドドア20が設けられている。
スライドドア20は、側面視で上下方向の長さが前後方向の長さよりも長い矩形状の前側の半扉20Fと後側の半扉20Rとで構成されている。そして、前側の半扉20Fと後側の半扉20Rとが互いに離間する方向及び接近する方向へ、バス10の外壁面12Aに沿って同期してスライド(移動)することにより、乗降口16を開放及び閉鎖可能に構成されている。
なお、乗降口16の閉鎖時に互いに接触する半扉20F、20Rの前後方向内側端面(換言すれば、半扉20Fの後端面と半扉20Rの前端面)には、それぞれ上下方向全体に亘ってゴム等の弾性体22(図10参照)が取り付けられている。つまり、半扉20F、20Rは、互いの弾性体22を弾性変形させつつ接触させることにより、乗降口16を閉鎖するようになっている。
また、図1に示されるように、乗降口16の下方側における車体12(例えばフロアパネルの下方側)には、車外へ突出可能なスロープ18が収納されている。スロープ18は、平板状に形成されており、電動によって引き出され、かつ収納されるように構成されている。そして、図11に示されるように、引き出されたスロープ18は、その引出方向先端部が路面Gに支持されることにより、所定の傾斜角度θ1で配置されるようになっている。
また、図1に示されるように、スライドドア20(半扉20F及び半扉20R)がスライド(移動)して乗降口16が開放されたときには、乗降口16の上下方向(高さ方向)における所定位置から、金属製(例えばアルミニウム製)の乗降用手すり30が車幅方向外側へ向けて突出されるようになっている。
具体的に説明すると、図2に示されるように、乗降用手すり30は、一部の区間が除去されることで非環状(軸方向と直交する方向から見て略「C」字状)とされた円筒状の外パイプ32と、図6に示される軸方向から見た断面で、外径が外パイプ32の内径よりも小径の略「C」字状に形成され、外パイプ32の開口側一端部32C及び開口側他端部32Dに軸方向両端部がそれぞれ挿入されることで、その一部の区間に架設された(配置された)内パイプ34と、を備えている。
なお、図7、図8に示されるように、外パイプ32の開口側一端部32C及び開口側他端部32Dの内側には、それぞれ有底円筒状のキャップ36が嵌合されており、内パイプ34の軸方向両端部は、各キャップ36の内側に嵌合されている。つまり、外パイプ32の内径は、キャップ36の外径と同一とされ、内パイプ34の外径は、キャップ36の内径と同一とされている。
また、キャップ36の円板状とされた本体部36Aの周縁部に一体に立設されている円筒部36Bの高さは、20mm程度とされている。そして、円筒部36Bの先端面と外パイプ32の開口端面とは面一になっている(図7参照)。つまり、内パイプ34の軸方向両端部は、外パイプ32の開口側一端部32C及び開口側他端部32Dに対して、20mm程度入った位置で固定されている。なお、内パイプ34の内部構造については、後で詳述する。
図2に示されるように、内パイプ34は、外パイプ32の上部から斜め下方側へ延在している。つまり、内パイプ34は、水平方向に対して傾斜して配置されるようになっており、外パイプ32とで直角三角形状を成すようになっている。そして、図11に示されるように、水平方向に対する内パイプ34の傾斜角度θ2は、スロープ18の傾斜角度θ1とほぼ同じ傾斜角度になっている。
図5に示されるように、外パイプ32の上下方向に延在する基部32Aは、バス10における乗降口16の周辺(例えば図2に示されるピラー14の内壁面)に設けられた支持部材としての上下一対の金属製の蝶番24に上下方向を軸方向として回動可能に支持されている。
すなわち、各蝶番24の一端部24Aが、基部32Aの外壁面に溶接等によって強固に取り付けられており、各蝶番24の他端部24Bが、ピラー14の内壁面に複数のボルト等によって強固に取り付けられている。これにより、乗降用手すり30は、各蝶番24の回転軸24Cを中心に平面視で90度以上回動可能になっている。
また、基部32Aの上下方向中央部(上側の蝶番24と下側の蝶番24との間)には、給電用のケーブル26の挿入口(図示省略)が形成されている。ケーブル26は、バス10に搭載されているバッテリ(図示省略)から、ピラー14の内部を通るようにして配線されている。そして、ケーブル26は、ピラー14の内壁面に形成された供給口(図示省略)から基部32Aの挿入口へ挿入されて、外パイプ32(基部32A)の内部で、かつ上方側へ配線されている。
なお、基部32Aの挿入口は、ケーブル26に嵌められたゴム製で蛇腹状のブーツ28で覆われるようになっている。また、蝶番24、供給口と挿入口との間で露出するケーブル26の一部及びブーツ28は、ピラー14に取り付けられる矩形箱状のカバー体48(図2参照)によってカバーされる構成になっている。
図2に示されるように、外パイプ32の下部は、水平方向に延在するレール部32Bとされている。そして、そのレール部32Bは、スライドドア20の例えば半扉20Fの前後方向内側端部に取り付けられたスライド部材40(図3参照)をスライド可能に保持するようになっている。
図4に示されるように、レール部32Bは、上下方向が長辺となる四角筒状(断面長方形状)に形成されており、図2に示されるように、その一方の側壁(後述する展開姿勢のときに前方側を向き、後述する格納姿勢のときに車幅方向外側を向く側壁)の上下方向略中央部には、その内部と連通するスリット部38が延在方向(長手方向)に沿って所定の長さで形成されている。
一方、図3に示されるように、スライド部材40は、側面視で略「T」字状に形成されている。すなわち、スライド部材40は、平面視で湾曲板状とされた本体部42と、本体部42の先端から上下方向に突出した(上下方向を軸方向とした)略円柱状の嵌入部44と、本体部42の嵌入部44とは反対側の基端に形成された平板状の固定部46と、を有している。
そして、このスライド部材40は、固定部46が半扉20Fに取り付けられる前に、レール部32Bに取り付けられるようになっている。具体的には、レール部32Bのスリット部38に、スライド部材40の嵌入部44を横にして(軸方向を水平方向にして)通し、90度回動させる。これにより、図4に示されるように、スライド部材40の嵌入部44が、レール部32Bから外れることなく、そのレール部32Bの長手方向にスライド可能に嵌められるようになっている。
したがって、スリット部38の幅(上下方向の間隙)は、嵌入部44の外径よりも大きくなっており、スライド部材40の本体部42の幅(側面視で嵌入部44の軸方向に沿った方向の長さ)と同じか、それよりも若干大きく形成されている。そして、スライド部材40は、その嵌入部44をレール部32Bに嵌めた後、その固定部46が半扉20Fの前後方向内側端部にネジ止め等によって取り付けられるようになっている。これにより、レール部32Bがスライド部材40でも支持される構成になっている。
図2、図6~図8に示されるように、内パイプ34には、その外周面及び内周面を周方向に連続して被覆するシート部材50が設けられている。シート部材50は、乗降客が把持する部位であり、撥水性及び抗菌性を有する繊維材又は医療用手袋に使われるゴム材など、比較的伸縮性の低い材料で成形されている。
また、シート部材50は、外パイプ32から露出している内パイプ34全体を被覆可能な長さに形成されており、その厚みは、キャップ36の円筒部36Bの板厚と同一か、それよりも若干薄く形成されている(図7参照)。そして、シート部材50は、内パイプ34の内部に設けられた駆動装置52により、内パイプ34の周方向に移動可能とされている。
具体的に説明すると、内パイプ34の軸方向に延在するスリット部35を構成する一端部及び他端部には、径方向内側へ断面略半円弧状に膨出する膨出部34Aが形成されている(図6参照)。そして、駆動装置52は、その膨出部34Aに支持されたシート部材50に対して摺動抵抗(摩擦)を有する(膨出部34Aとでシート部材50を挟んで移動させる)一対の回転部材としての回転ギア54と、その一対の回転ギア54をそれぞれ一方向に回転させる一対の駆動モーター56と、で構成されている。
各回転ギア54は、内パイプ34の軸方向を回転軸方向として、外パイプ32の開口側一端部32C及び開口側他端部32Dにそれぞれ嵌合されたキャップ36の本体部36Aに回転可能に軸支されている。つまり、各回転ギア54は、内パイプ34の軸方向に延在しており、内パイプ34とほぼ同じ長さに形成されている。
各駆動モーター56は、外パイプ32の例えば開口側一端部32Cの内部に設けられており、キャップ36の本体部36Aの軸方向外側にブラケット(図示省略)を介して支持されている。そして、各駆動モーター56の各回転軸56Aが、キャップ36の本体部36Aに形成された貫通孔(図示省略)を通って各回転ギア54の軸心部に同軸的に固定されている。これにより、各回転ギア54が各駆動モーター56の回転駆動力によって一方向へ回転する構成になっている。
なお、シート部材50を内パイプ34の内周面側へ引き込む一方の回転ギア54Aの回転速度は、シート部材50を内パイプ34の外周面側へ送り出す他方の回転ギア54Bの回転速度よりも速くなるように設定されている。これにより、内パイプ34の外周面側に配置されているシート部材50に対して周方向にテンションが掛けられて、そのシート部材50が内パイプ34の外周面に対してずれ難くなるようになっている。
また、内パイプ34の内部には、周方向に移動するシート部材50の外周面に紫外線を照射することで、そのシート部材50を除菌する除菌装置60が設けられている。除菌装置60は、軸方向の断面で略半円形状とされた透明な樹脂製のケース58と、そのケース58内に設けられた複数の紫外線発光素子(以下、単に「発光素子」という)62と、で構成されている。
ケース58は、内パイプ34の軸方向を長手方向として延在しており、その長手方向両端部が、キャップ36の本体部36Aの軸方向内側に接合されて支持されている。そして、各発光素子62は、ケース58内における平面部58A上に軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。これにより、内パイプ34の内部に配置されているシート部材50の外周面に対して、軸方向及び周方向に万遍なく紫外線を照射できる構成になっている。
なお、各駆動モーター56及び各発光素子62へは、外パイプ32の内部へ配線されたケーブル26によって給電されるようになっている(図7参照)。したがって、キャップ36の本体部36Aには、各発光素子62へ給電するケーブル26を通す(又は各発光素子62に接続されている配線を引き出す)貫通孔(図示省略)が形成されている。
また、各発光素子62の点灯及び消灯と各駆動モーター56の回転及び停止は、バス10に設けられた制御装置(図示省略)によって制御されるようになっている。具体的に説明すると、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖されたことを制御装置が認識すると、その制御装置が、各発光素子62へ給電する信号を出して各発光素子62を点灯させるとともに、各駆動モーター56へ給電する信号を出してシート部材50を内パイプ34の周方向へ所定量だけ移動させるようになっている。
ここで言う所定量とは、周方向に移動させる前に内パイプ34の外周面に配置されていたシート部材50を、内パイプ34の内周面に配置するまで移動させる量のことを指す。つまり、ここで言う所定量とは、内パイプ34において、シート部材50が表裏入れ替わるまでの量のことを指し、内パイプ34の外周面に配置されているシート部材50の周方向における長さ(内パイプ34の内周面に配置されているシート部材50の周方向における長さ)とほぼ等しい。
また、その所定量の移動(移動後の停止も含む)は、制御装置が、一方の回転ギア54Aが1回転することによって引き込むシート部材50の量と、他方の回転ギア54Bが1回転することによって送り出すシート部材50の量とを踏まえ、各駆動モーター56の回転数を制御することによって行われる。そして、次に乗降口16がスライドドア20によって開放されることを制御装置が認識すると、その制御装置が、各発光素子62への給電を停止する信号を出して各発光素子62を消灯させるようになっている。
以上のこと(シート部材50を内パイプ34の周方向へ所定量だけ移動させるための駆動モーター56の駆動及び発光素子62の点灯)を乗降口16がスライドドア20によって閉鎖される度に繰り返すことにより、乗降客が乗降時に把持していたシート部材50の一部が常に紫外線によって殺菌(除菌)される構成になっている。なお、各発光素子62の消灯は、次に乗降口16がスライドドア20によって開放されるときではなく、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖された状態で、かつ所定の時間が経過した後であってもよい。
以上のような構成とされた本実施形態に係る乗降用手すり30において、次にその作用について説明する。
図9、図10に示されるように、乗降口16が、スライドドア20(半扉20F、20R)によって閉鎖されているときには、乗降用手すり30は、平面視で、そのスライドドア20(図示の場合は半扉20F)にほぼ沿って配置される。具体的には、スライドドア20が乗降口16を閉鎖した状態では、スライド部材40がレール部32Bに沿って基部32A側とは反対側(他端部側)へスライドしており、シート部材50(内パイプ34)及びレール部32Bをスライドドア20に沿って配置させる格納姿勢を取る。
つまり、この乗降用手すり30は、格納姿勢を取ったときには、そのシート部材50(内パイプ34)及びレール部32Bが車内(車室側)へ向けて突出することがない。したがって、特に小型のバス10において、乗降用手すり30が設けられていても、その乗車スペースが制限されるのを抑制することができる(乗車スペースを極力確保することができる)。
一方、図11、図12に示されるように、乗降口16が、スライドドア20(半扉20F、20R)によって開放されているときには、乗降用手すり30は、平面視で、車外へ向けて突出される。具体的には、スライドドア20が乗降口16を開放した状態では、スライド部材40がレール部32Bに沿って基部32A側へスライドしており、シート部材50(内パイプ34)及びレール部32Bを車外(車幅方向外側)へ向けて突出させる展開姿勢を取る。
したがって、乗降客は、バス10に対して乗降する際に、そのシート部材50(内パイプ34)を把持することができ、それによって、バス10に対する乗降がし易くなる(姿勢を安定させて乗降することができる)。特に、降車時は、一方の片足を下ろす瞬間に他方の片足立ちになるため、進行方向前側にシート部材50(内パイプ34)があると、力を入れ易くなって、より姿勢を安定させ易くなる。
また、そのシート部材50(内パイプ34)は、基部32Aの上部から斜め下方側へ延在している。したがって、例えば乗降口16の下部にスロープ18が設けられているバス10の場合、そのスロープ18の傾斜角度θ1とシート部材50(内パイプ34)の傾斜角度θ2とをほぼ揃えられる(背面視で略平行にすることができる)。よって、乗降客がスロープ18を利用して乗降する際に、身体の高さの変化に合わせて手指の高さも変化させることができるため、シート部材50(内パイプ34)を把持しつつ乗降し易くなる(姿勢をより一層安定させて乗降することができる)。
なお、乗降用手すり30が展開姿勢を取ったとき、半扉20Fの前後方向内側端面に取り付けられている弾性体22とシート部材50(内パイプ34)との間には、手指が挿入可能な隙間が充分に確保されるようになっている。そのため、シート部材50(内パイプ34)を把持しつつ乗降する際に、その弾性体22との間に手指が挿入されても(手指が弾性体22に接触したとしても)、その手指が傷付くおそれがない。つまり、乗降客の安全性は確保される。
また、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖されたことが制御装置に認識されたときには、その制御装置の制御により、各駆動モーター56が回転駆動され、シート部材50が内パイプ34の周方向に所定量だけ移動するとともに、各発光素子62が点灯される。ここで、ケース58は透明である。そのため、シート部材50を周方向に移動させつつ各発光素子62が点灯されると、内パイプ34の内部に収容されたシート部材50の一部へ紫外線が軸方向及び周方向に万遍なく照射される。
これにより、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖される以前に乗降客が把持していたシート部材50の外周面が、乗降客がシート部材50を把持しないときにおいて、殺菌(除菌)される。しかも、このようなシート部材50に対する殺菌が、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖される度に実行される。したがって、バス10に対して次に乗降する乗降客は、常に除菌されて清潔に保たれた状態の(清潔な面に入れ替えられた状態の)シート部材50(内パイプ34)を把持することができる。
そして特に、バス10に乗車している乗客は、シート部材50の周方向への移動を見知することができるため、そのシート部材50が殺菌(除菌)されていることを認識することができる。したがって、バス10に乗車している乗客は、シート部材50(内パイプ34)を把持することに対する安心感を得ることができ、気兼ねなく(安心して)シート部材50(内パイプ34)を把持することができる。よって、バス10に対する降車時の安全性をより一層高めることができる。
また、駆動装置52が、膨出部34Aに支持されたシート部材50に対して摺動抵抗(摩擦)を有する(膨出部34Aとでシート部材50を挟んで送り出す)一対の回転ギア54で構成されている。そして、シート部材50を内パイプ34の内周面側へ引き込む一方の回転ギア54Aの回転速度が、シート部材50を内パイプ34の外周面側へ送り出す他方の回転ギア54Bの回転速度よりも速くされている。
したがって、内パイプ34の外周面側に配置されているシート部材50に対して、周方向にテンションを掛けることができ、乗降客がシート部材50(内パイプ34)を把持するときにおいて、内パイプ34の外周面に対するシート部材50の位置ずれを抑制することができる。
また、除菌装置60は、内パイプ34の内部に設けられている。そのため、除菌装置が内パイプ34の外部に設けられている場合に比べて、シート部材50(内パイプ34)を色々な方向から把持することができる。このように、シート部材50に紫外線を照射可能な除菌装置60が設けられる構成であっても、乗降用手すり30としての機能が損なわれることがない。
各発光素子62の点灯後、次に乗降口16がスライドドア20によって開放されることが制御装置に認識されると、その制御装置の制御により、各発光素子62が消灯される。したがって、乗降口16がスライドドア20によって開放されているときにも、各発光素子62が点灯した状態を維持する構成に比べて、バッテリの消耗を抑制することができる。
また、乗降用手すり30は、スライドドア20の一方の半扉(例えば半扉20F)側のみに設けられる構成に限定されるものではない。乗降用手すり30は、スライドドア20の一方の半扉(例えば半扉20F)側と他方の半扉(例えば半扉20R)側の両方に設けられる構成とされていてもよい。
但し、この場合には、半扉20F側に設けられる乗降用手すり30に対して、半扉20R側に設けられる乗降用手すり30は、上下方向にずれて配置される。乗降用手すり30は、その構造上、半扉20F側に設けられているレール部32Bの他端部が、半扉20R側へ突出し、半扉20R側に設けられているレール部32Bの他端部が、半扉20F側へ突出するからである。
このように、半扉20R側に設けられる乗降用手すり30が、半扉20F側に設けられる乗降用手すり30に対して上下方向にずれていると、身長の異なる乗降客が、自分の身長に合ったシート部材50(内パイプ34)を選択して把持することができるメリットがある。なお、当然ながら、各乗降用手すり30の位置に合わせて、半扉20F、20Rにそれぞれ取り付けられるスライド部材40の位置も上下方向にずれて配置される。
以上、本実施形態に係る乗降用手すり30について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る乗降用手すり30は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、乗降用手すり30を回動可能に支持する支持部材は、図示の各蝶番24による構成に限定されるものではなく、ケーブル26の配線を阻害しなければ、任意の構成を採用して構わない。
また、シート部材50を内パイプ34の周方向に移動させる回転部材も、回転ギア54に限定されるものではない。回転部材は、膨出部34Aに支持されたシート部材50に対して摺動抵抗(摩擦)を有する構成であれば、例えば外周面に凹凸形状のないゴム製のロール(図示省略)等で構成されていてもよい。また、除菌装置60は、複数の発光素子62で構成されるものに限定されるものではなく、紫外線を照射可能に構成されていれば、どのような構成のものでもよい。
また、各駆動モーター56の駆動及び各発光素子62の点灯は、制御装置がスライドドア20の閉鎖を認識したことをトリガーとする構成に限定されるものではなく、例えばバス10の運転手による、スライドドア20を閉鎖するスイッチ操作をトリガーとする構成にしてもよい。但し、制御装置がスライドドア20の閉鎖を認識したことをトリガーとする構成であると、運転手が乗車していない自動運転バスに適用することが可能となる。
10 バス(車両)
16 乗降口
20 スライドドア(ドア)
24 蝶番(支持部材)
30 乗降用手すり
32 外パイプ
34 内パイプ
50 シート部材
52 駆動装置
54 回転ギア(回転部材)
60 除菌装置

Claims (4)

  1. 車両の乗降口の周辺に設けられた支持部材に支持されるとともに、一部の区間が除去されることで非環状とされた外パイプと、
    軸方向から見た断面で外径が前記外パイプの内径よりも小径の略「C」字状に形成され、前記外パイプの一端部及び他端部に架設されることで前記一部の区間に配置された内パイプと、
    前記内パイプの外周面及び内周面を連続して被覆するとともに、前記内パイプの内部に設けられた駆動装置により前記内パイプの周方向に移動可能とされたシート部材と、
    前記内パイプの内部に設けられ、紫外線を照射することで前記シート部材を除菌する除菌装置と、
    を備えた乗降用手すり。
  2. 前記駆動装置は、前記乗降口がドアによって閉鎖される度に駆動して前記シート部材を前記周方向へ所定量移動させる請求項1に記載の乗降用手すり。
  3. 前記駆動装置は、前記シート部材に対して摺動抵抗を有する一対の回転部材で構成されており、
    前記シート部材を前記内パイプの内周面側へ引き込む一方の前記回転部材の回転速度が、前記シート部材を前記内パイプの外周面側へ送り出す他方の前記回転部材の回転速度よりも速い請求項1又は請求項2に記載の乗降用手すり。
  4. 前記支持部材は、車体上下方向を軸方向として前記外パイプを回動可能に支持しており、
    前記外パイプは、ドアが前記乗降口を開放させる動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車外へ向けて突出され、ドアが前記乗降口を閉鎖する動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車内へ収容されるように構成されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の乗降用手すり。
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