JP7291263B2 - 耐火性シート - Google Patents

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Description

本発明は耐火性シートに関し、特には熱膨張性耐火材料層を備えた耐火性樹脂シートに関する。
樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する熱膨張性材料からなる耐火材を窓又はドア等の建具に適用した場合、耐火材と耐火材の間に繋ぎ目が生じ、この繋ぎ目が火災発生時には耐火材シートの長手方向に収縮した熱膨張性材料間の隙間となって、火が通過する可能性がある。また、経時劣化等により、この繋ぎ目が大きくなると、火災発生時に延焼が拡大する可能性がある。また、実際に火災が起きた際、高温で火災が起きた際に、取り付けられた熱膨張性材料の熱収縮起因の脱落、波打ち等の変形が起こり、延焼防止の為の閉塞がうまくいかず、本来の耐火性が発揮できず、問題が生じることがある。
このような現象を防止するために、熱膨張性耐火材層の上に基材層を積層させることが考えられる。
特許文献1には、金属薄板又は無機繊維不織布からなる基材層と、基材層に積層した熱膨張性耐火材層及び緩衝性材料層とを備え、熱膨張性耐火材層は加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうる材料で形成されることを特徴とする耐火性部材が開示されている。
特許文献2には、エポキシ樹脂100重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛15~150重量部及び無機充填剤30~500重量部からなる厚み0.3~6mmのシート中に、1m2当たりの重量が25~2000gの不燃性繊維状材料からなるネット又はマットが含浸されてなることを特徴とする耐火性シートが開示されている。
特開2004-324370 特開2002-012678
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されているような無機系基材を熱膨張性耐火材層と積層させて使用すると、熱膨張性耐火材層の熱膨張性黒鉛の膨張が無機系基材の存在により阻害され、耐火性が損なわれるという問題がある。
本発明の目的は、熱膨張性材料間の加熱時の隙間の拡大が抑制された耐火性シートを提供することにある。
本願発明者らは、基材として特定の基材を用いることにより、耐火性シートの加熱時に、熱膨張性耐火材料層の膨張が妨げられず、かつ熱膨張性耐火材料層間の隙間を無くすかまたは縮小できることを見出し、基材層を構成する材料の収縮率を熱膨張性耐火材料層の収縮率よりも小さく設定することで、本発明を完成するに到った。
[1]熱膨張性耐火材料層と、該熱膨張性耐火材料層の少なくとも片面側に積層された基材層とを備えた耐火性シートであって、150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの基材層の収縮率が、150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの熱膨張性耐火材料層の収縮率よりも小さいことを特徴とする耐火性シート。
[2]膨張性耐火材料層は、マトリックス樹脂、熱膨張性層状無機物、及び無機充填剤を含有する[1]に記載の耐火性シート。
[3]前記マトリックス樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、及びブチルゴムからなる群から選択される一種以上である[2]に記載の耐火性シート。
[4]熱膨張性耐火材料層の樹脂成分の割合が30%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の耐火性シート。
[5]前記基材層は合成樹脂繊維から形成されている[1]~[4]のいずれかに記載の耐火性シート。
[6]熱膨張性耐火材料層と基材層の間、又は2つの基材層の間に配置されたラミネート層が積層されている[1]~[5]のいずれかに記載の耐火性シート。
[7]前記熱膨張性耐火材料層の両面側に、前記基材層が積層されている[1]~[6]のいずれかに記載の耐火性シート。
[8]耐火性シートに対する基材層の占める厚みの割合が2.5~40%である[1]~[7]のいずれかに記載の耐火性シート。
[9]150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの耐火性シートの収縮率が1%以下である[1]~[8]のいずれかに記載の耐火性シート。
本発明によれば、熱膨張性材料層の膨張が基材層によって阻害されず、熱膨張性耐火材料層間の隙間の拡大が抑制され、従来よりも高い耐火性を発揮することができる。
本発明の第1実施形態の耐火性シート。 本発明の第2実施形態の耐火性シート。 本発明の第3実施形態の耐火性シート。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示されるように、本発明の第1実施形態の耐火性シート1は、熱膨張性耐火材料層2と、熱膨張性耐火材料層2の少なくとも片面側に積層された基材層3と、熱膨張性耐火材料層2と基材層3の間に配置されたラミネート層4とを備え、基材層3の150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの収縮率が、熱膨張性耐火材料層2の150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの収縮率よりも小さい。具体的には、基材層3を構成する材料を150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの収縮率が、熱膨張性耐火材料層2を構成する材料を150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの収縮率よりも小さい。なお、「熱膨張性耐火材料層2の少なくとも片面側に積層された有機基材層3」という場合、有機基材層3は、熱膨張性耐火材料層2の少なくとも片面側に直接積層されることもできるし、熱膨張性耐火材料層2と有機基材層3の間に別の層を介して熱膨張性耐火材料層2に間接的に積層されることもできる。
熱膨張性耐火材料層2と基材層3の厚みは特に限定されないが、熱膨張性耐火材料層2は例えば0.1~6mm、基材層3は例えば5μm~500mmであり、好ましくは10μm~1mmである。
基材層3が厚すぎると基材層3の燃焼による炎が他の部分の引火を引きおこす可能性があるため、耐火性シート1に対する基材層3の占める厚みの割合が2.5~40%であることが好ましい。
火災等により耐火性シート1が加熱されると、熱膨張性材料層2が膨張するが、基材層3を構成する材料の収縮率が熱膨張性耐火材料層2を構成する材料の収縮率よりも小さいため、基材層3が2つの熱膨張性耐火材料層2の層間の隙間が拡大するのを防止する。
熱膨張性材料層2は、マトリックス樹脂、熱膨張性層状無機物、及び無機充填剤を含有する耐火性樹脂組成物から形成されている。
マトリックス樹脂としては、公知の樹脂を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質の中でも、取り扱い易さ及び耐火性能の点では塩化ビニル系樹脂が好ましく、より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムおよびポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、及びブチルゴムからなる群から選択される一種以上のマトリックス樹脂が、取り扱い易さ及び/又は防火性能の点で好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
熱膨張性耐火材料層の樹脂成分の割合は特に限定されないが、30%以下であることが樹脂成分が本範囲であることで、燃焼成分の量が少ない為、耐火性の観点で好ましい。また、収縮は樹脂成分の残留歪みに起因する為、低収縮の観点からも好ましい。
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものである。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP-EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;難燃剤としての無機リン酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤の粒径としては、0.5~100μmが好ましく、より好ましくは1~50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
さらに、熱膨張性耐火材料層を構成する耐火性樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含むことができる。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
Figure 0007291263000001
化学式(1)中、R1およびR3は、同一又は異なって、水素、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6~16のアリール基を示す。R2は、水 酸基、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1~16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6~16のアリール基、または、炭素数6~16のアリールオキシ基を示す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n-プロピルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチル-ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t-ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
前記樹脂組成物は、前記マトリックス樹脂100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10~350重量部の範囲で含むものが好ましい。また、前記樹脂組成物は、前記マトリックス樹脂100重量部に対し、前記無機充填剤を30~400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填剤の合計は、マトリックス樹脂100重量部に対し、50~600重量部の範囲が好ましい。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填剤の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、可塑剤、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
熱膨張性耐火材料層2は市販品の熱膨張性耐火材を入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトとを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
基材層3を構成する材料は特に限定されず、例えば紙、布、合成樹脂等の有機材料が挙げられる。合成樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
また、基材層3はフィルム、シート、又は繊維の形で構成することができる。繊維は天然繊維であっても合成繊維であってもよく、織布又は不織布であってもよい。天然繊維としてはパルプ、コットン等の天然繊維が挙げられる。合成繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の合成繊維等が挙げられる。基材層3を特に合成樹脂から形成された不織布から形成すると、熱膨張性材料層2との接着性が良く、収縮率及び基材層の寸法の設定が容易であるため好ましい。
熱膨張性耐火材料層2を構成する材料の収縮率及び基材層3を構成する材料の収縮率は、熱膨張性耐火材料層2を構成する成分及び基材層3を構成する合成樹脂を適宜選択することで当業者には設定可能である。
熱膨張性耐火材料層2の150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの耐火性シート1の収縮率は、通常1%~3%程度であるが、熱膨張性耐火材料層2の構成成分の配合量を適宜選択することで当業者には設定可能である。
基材層3を150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの耐火性シート1の収縮率は、通常0%~1%程度であるが、基材層3の構成要素を適宜選択することで当業者には設定可能である。
熱膨張性耐火材料層2と基材層3を積層することで、耐火シート全体の収縮率は低減される。
好ましくは、150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの耐火性シートの収縮率は、加熱前と比較して1%以下である。
ラミネート層4は、層間の接着を支援する層であり、第1実施形態では基材層3及び熱膨張性耐火材料層2の接着を支援する。ラミネート層4としては、接着剤、接着シート、充填パテ等が挙げられる。好ましくは、ラミネート層4は、加熱により溶融してラミネート層4の両側の層(第1実施形態では熱膨張性耐火材料層2と基材層3)を接着する材料から構成されており、そのような例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。ラミネート層4は、フィルム、シート、又は繊維の形で構成することができる。このような構成によれば、基材層3と熱膨張性耐火材料層2との間の接着性が弱くても、より強く一体化された積層耐火性シート1を得ることができる。また、熱膨張性耐火材料層2の収縮を基材層3によりより効果的に防止又は低減することができる。
ここまで、本発明を第1実施形態を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
図2の第2実施形態の耐火性シート1に示すように、熱膨張性耐火材料層2の両面側に、ラミネート層4と、基材層3とが積層されてもよい。
図3の第3実施形態の耐火性シート1に示すように、ラミネート層4は基材層3と基材層3の間に配置されてもよい。図3の耐火性シート1は、ラミネート層4と、ラミネート層4の両面側の基材層3と、基材層3の各々にさらに積層された熱膨張性耐火材料層2とを備えている。このような構成によっても、加熱時の耐火性シート間の隙間の拡大が抑制される。また、第3実施形態の耐火性シート1では熱膨張性耐火材料層2が耐火性シート1の外側にあるため、加熱されたときの熱膨張性耐火材料層2の膨張が妨げられず好適である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
試験例1
1.耐火性シートの製造
エポキシ樹脂をマトリックス樹脂として含む厚さ1mmの熱膨張性耐火層(積水化学工業社製フィブロックの上に、厚さ20μmのポリエチレン製のフィルムからなるラミネート層を積層し、ラミネート層の上に厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の不織布からなる基材層を積層、接着し、図1の構成の実施例1の耐火性シートとした。
実施例1の厚さ1mmの熱膨張性耐火材料層の両側に厚さ20μmのポリエチレン製のフィルムからなるラミネート層を積層し、各々のラミネート層の上に厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の不織布からなる基材層を積層し、図2の構成の実施例2の耐火性シートとした。
ポリエチレンテレフタレート製の不織布からなる基材層を積層しない、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂として含む厚さ1mmの熱膨張性耐火層を、比較例1の耐火シートとした。
2.加熱試験
実施例1、実施例2及び比較例1の耐火シートを、長さ100mm×幅100mmの寸法に切断して2枚の試験片を作製し、それぞれの一つの辺が接するように横に並べて150℃の電気炉へ入れ、24時間放置して、2つの試験片間の隙間の寸法を測定した。隙間が1mm以下である場合を○(良)とし、1mmを超える場合を×(不良)とした。
3.収縮率の測定
実施例1、実施例2及び比較例1の耐火シートを長さ100mm、幅100mmの寸法に切断した試験片を作製し、150℃の加熱条件下で24時間加熱した後の収縮率を{(加熱前の試験片の長手方向に平行な方向の長さ)-(加熱後の試験片の長手方向に平行な方向の長さ)}/(加熱前の試験片の長手方向に平行な方向の長さ)として算出した。
4.試験結果
表1に示すように、実施例1の耐火シートは比較例1の耐火シートと比較して隙間が小さく、実施例2の耐火シートでは実施例1よりも加熱による収縮がさらに小さく、隙間は見られなかった。基材層がない比較例1では隙間が大きく開いた。
Figure 0007291263000002
試験例2
1.耐火性シートの製造
表2に記載の組成を有する熱膨張性耐火材料層の両側に、ラミネート層を積層し、各々のラミネート層の上に基材層を積層し、図2の構成の実施例3~8及び12の耐火性シートとした。
また、表2に記載の組成を有する熱膨張性耐火材料層の両側に、ラミネート層を積層せずに、基材層を積層して、実施例9~11の耐火性シートとした。
<熱膨張性耐火材料層配合>
jER806:三菱ケミカル製 エポキシ樹脂
jER871: 三菱ケミカル製 エポキシ樹脂
jER811: 三菱ケミカル製 エポキシ樹脂
FL052: 三菱ケミカル製 エポキシ樹脂硬化剤
CPVC HA53F: 徳山積水工業製 塩素化塩化ビニル樹脂
PVC TS-1000R: 徳山積水工業製 塩化ビニル樹脂
BUTYL065:JSR製 ブチルゴム
DIDP:ジェイプラス製 可塑剤 ジイソデシルフタレート
CA60N:エア・ウォーター製 熱膨張黒鉛
AP422:クラリアント製 難燃剤 ポリリン酸アンモニウム
ホワイトンBF300:備北粉化製 炭酸カルシウム
Figure 0007291263000003
2.加熱試験及び収縮率の測定
上述した試験例1と同様の方法により、加熱試験及び収縮率の測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007291263000004
以上、本発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、本発明は以下の構成を採用することもできる。
[1]熱膨張性耐火材料層と、該熱膨張性耐火材料層の少なくとも片面側に積層された基材層とを備えた耐火性シートであって、150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの基材層の収縮率が、150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの熱膨張性耐火材料層の収縮率よりも小さいことを特徴とする耐火性シート。
[2]膨張性耐火材料層は、マトリックス樹脂、熱膨張性層状無機物、及び無機充填剤を含有する[1]に記載の耐火性シート。
[3]前記マトリックス樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、及びブチルゴムからなる群から選択される一種以上である[2]に記載の耐火性シート。
[4]熱膨張性耐火材料層の樹脂成分の割合が30%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の耐火性シート。
[5]前記基材層は合成樹脂繊維から形成されている[1]~[4]のいずれかに記載の耐火性シート。
[6]熱膨張性耐火材料層と基材層の間、又は2つの基材層の間に配置されたラミネート層が積層されている[1]~[5]のいずれかに記載の耐火性シート。
[7]前記熱膨張性耐火材料層の両面側に、前記基材層が積層されている[1]~[6]のいずれかに記載の耐火性シート。
[8]耐火性シートに対する基材層の占める厚みの割合が2.5~40%である[1]~[7]のいずれかに記載の耐火性シート。
[9]150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの耐火性シートの収縮率が1%以下である[1]~[8]のいずれかに記載の耐火性シート。
1・・・耐火性シート、2・・・熱膨張性耐火材料層、3・・・基材層、4・・・ラミネート層。

Claims (8)

  1. 熱膨張性耐火材料層と、熱膨張性耐火材料層の少なくとも片面側に積層された有機基材層とを備えた窓又はドア用耐火性シートであって、
    前記熱膨張性耐火材料層は、マトリックス樹脂、熱膨張性層状無機物及び無機充填剤を含有し、
    前記マトリックス樹脂はゴム物質を含有し、
    150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの有機基材層の収縮率が、150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの熱膨張性耐火材料層の収縮率よりも小さいことを特徴とする窓又はドア用耐火性シート。
  2. 熱膨張性耐火材料層の樹脂成分の割合が30%以下である請求項1に記載の窓又はドア用耐火性シート。
  3. 前記有機基材層は合成樹脂繊維から形成されている請求項1又は2に記載の窓又はドア用耐火性シート。
  4. 熱膨張性耐火材料層と有機基材層の間、又は2つの有機基材層の間にラミネート層が積層されている請求項1~3のいずれかに記載の窓又はドア用耐火性シート。
  5. 前記熱膨張性耐火材料層の両面側に、前記有機基材層が積層されている請求項1~4のいずれかに記載の窓又はドア用耐火性シート。
  6. 耐火性シートに対する有機基材層の占める厚みの割合が2.5~40%である請求項1~5のいずれかに記載の窓又はドア用耐火性シート。
  7. 150℃の加熱条件下で24時間加熱したときの耐火性シートの収縮率が1%以下である請求項1~6のいずれかに記載の窓又はドア用耐火性シート。
  8. 前記マトリクス樹脂100重量部に対して、
    前記熱膨張性層状無機物を10~350重量部含み、
    前記無機充填剤30~400重量部含む、請求項1~7のいずれかに記載の窓又はドア用耐火性シート。
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