JP7287813B2 - 水質浄化材 - Google Patents
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Description
特許文献1には、窒素やリンを含む汚水を浄化する方法として、合成樹脂モノフィラメント又はヤーンをラッシュ編みして、目巾を2~10mm程度とした短形の嚢袋に、粒径15~30mmのゼオライトと軽量気泡コンクリートを混合してなる浄化材を収納してなる浄化嚢を、排水溝の溝底から水面にまで積み上げて浄化堰を構築する汚水浄化方法が記載されている。
また、特許文献2には、クリノプチロライト及びモルデナイトを含むゼオライトと、ケイ酸カルシウムとを含み、前記クリノプチロライトの結晶子径が15~26.5nm、前記モルデナイトの結晶子径が39~48nmであり、前記ゼオライトと前記ケイ酸カルシウムとの質量比が4.0:1~1.1:1であることを特徴とする水処理材が記載されている。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] ケイ酸カルシウム含有材料とゼオライトを含む水質浄化材であって、塩基置換容量が9meq/100g以上であり、リン酸吸収係数が13,000mg/100g以上であることを特徴とする水質浄化材。
[2] 上記水質浄化材中、可溶性ケイ酸の含有率が10質量%以上であり、アルカリ分の含有率が10質量%以上である前記[1]に記載の水質浄化材。
[3] 上記ケイ酸カルシウム含有材料と上記ゼオライトの質量比(ケイ酸カルシウム含有材料/ゼオライト)が、50/50~99/1である前記[1]又は[2]に記載の水質浄化材。
[4] 上記ケイ酸カルシウム含有材料は、粒度が6mm以下のものを70質量%以上の割合で含むものであり、かつ、上記ゼオライトは、粒度が6mm以下のものを70質量%以上の割合で含むものである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水質浄化材。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の水質浄化材を、水棲生物が生息している養殖用水域に供給して、水棲生物を養殖する水棲生物の養殖方法。
また、本発明の水質浄化材は、pH緩衝性(水のpHを緩衝する能力)に優れているため、餌の食べ残し等に起因する有機酸の生成による水のpHの過度の変動を抑制し、pHを一定に維持することができる。
さらに、本発明の水質浄化材は、ケイ酸供給性(水中にケイ酸を供給する能力)に優れているため、水中の珪藻の増殖が促進され、珪藻を餌とする甲殻類、貝類、動物プランクトン等の増殖や成長を良好にすることができる。
本発明で用いられるケイ酸カルシウム含有材料の例としては、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、及び、ウォラストナイト等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
トバモライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca5・(Si6O18H2)・4H2O(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)(板状の形態)、Ca5・(Si6O18H2)・8H2O(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
ゾノトライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca6・(Si6O17)・(OH)2(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
CSHゲルとは、αCaO・βSiO2・γH2O(ただし、α/β=0.7~2.3、γ/β=1.2~2.7である。)の化学組成を有するものである。具体的には、3CaO・2SiO2・3H2Oの化学組成を有するケイ酸カルシウム水和物等が挙げられる。
フォシャジャイトとは、Ca4(SiO3)3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ジャイロライトとは、(NaCa2)Ca14(Si23Al)O60(OH)8・14H2O等の化学組成を有するものである。
ヒレブランダイトとは、Ca2SiO3(OH)2等の化学組成を有するものである。
ウォラストナイトとは、CaO・SiO2(繊維状又は柱状の形態)等の化学組成を有するものである。
ここで、軽量気泡コンクリートとは、トバモライト、および、未反応の珪石からなるものであり、かつ、80体積%程度の空隙率を有するものである。ここで、空隙率とは、コンクリートの全体積中の、空隙の体積の合計の割合をいう。
軽量気泡コンクリート中のトバモライトの割合は、軽量気泡コンクリートの内部の空隙部分を除く固相の全体を100体積%として、通常、65~80体積%程度である。
軽量気泡コンクリートは、例えば、珪石粉末、セメント、生石灰粉末、発泡剤(例えば、アルミニウム粉末)、水等を含む原料(例えば、これらの混合物からなる硬化体)をオートクレーブ養生することによって得ることができる。
なお、リン酸吸収係数は、「土壌標準分析・測定法(土壌標準分析 測定法委員会編) リン酸アンモニウム液法(1:50抽出)」に記載された方法に準拠して測定することができる。
なお、可溶性ケイ酸の含有率は、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が監修した「肥料等試験法(2018)4.4.1.a ふっ化カリウム法」に記載された方法に準拠して測定することができる。
なお、アルカリ分の含有率は、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が監修した「肥料等試験法(2018)4.5.4 アルカリ分」に記載された方法に準拠して測定することができる。
なお、ケイ酸の溶出量が多くなれば、水中の珪藻の成育がより安定し、その増殖がより促進される。
ケイ酸カルシウム含有材料の粒度分布は、ケイ酸の溶出量をより多くする観点から、好ましくは6mm以下(より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下、特に好ましくは1mm以下)の粒度を有する粒体を70質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上)の割合で含むものである。
なお、本明細書中、粒度の値は、篩の目開き寸法に対応する値である。
ゼオライトの塩基置換容量(CEC:Cation Exchange Capacity、陽イオン交換容量ともいう。)は、好ましくは20meq/100g以上、より好ましくは50~200meq/100g、さらに好ましくは100~180meq/100g、特に好ましくは120~160meq/100gである。該量が20meq/100g以上であれば、水質浄化材のアンモニア吸着性をより向上させることができる。該量が200meq/100gを超えるものは入手が困難である。
ゼオライトの粒度分布は、水質浄化材のアンモニア吸着性をより向上させる観点から、好ましくは6mm以下(より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下、特に好ましくは1mm以下)の粒度を有する粒体を70質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上)の割合で含むものである。
水質浄化材において、ケイ酸カルシウム含有材料とゼオライトの質量比(ケイ酸カルシウム含有材料/ゼオライト)は、リン酸吸着性、ケイ酸供給性、及びpH緩衝性をより向上させる観点からは、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上、特に好ましくは80/20以上である。また、アンモニア吸着性をより向上させる観点からは、好ましくは99/1以下、より好ましくは95/5以下である。
水質浄化材は、長期間にわたって水質を良好なものにする観点から、時間的間隔を置いて繰り返し供給してもよい。水質浄化材を繰り返し供給する間隔は、好ましくは1~30日間、より好ましくは2~15日間、特に好ましくは3~10日間である。
また、上記水質浄化材は、徐々に溶けて、最終的には消滅することから、使用後の回収や除去が不要であり、管理が容易である。
[使用材料]
(1)ケイ酸カルシウム含有材料;トバモライトを含む軽量気泡コンクリート(ALC)を破砕した粉粒状物、1mm以下の粒度のものの含有率:90質量%以上
(2)ゼオライト;1mm以下の粒度のものの含有率:90質量%以上、ジークライト社製、商品名「SGW-B4」
上記ケイ酸カルシウム含有材料及び上記ゼオライトの物性値を、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
[塩素置換容量の測定]
「土壌環境分析法(土壌環境分析法編集委員会編)V.6 セミミクロ・ショレンベルガー(Schollenberger)法」に記載された方法に準拠して測定した。
[リン酸吸収係数の測定]
「土壌標準分析・測定法(土壌標準分析 測定法委員会編) リン酸アンモニウム液法(1:50抽出)」に記載された方法に準拠して測定した。
[可溶性ケイ酸の測定]
独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が監修した「肥料等試験法(2018)4.4.1.a ふっ化カリウム法」に記載された方法に準拠して測定した。
[アルカリ分の測定]
独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が監修した「肥料等試験法(2018)4.5.4アルカリ分」に記載された方法に準拠して測定した。
ケイ酸カルシウム含有材料とゼオライトを、水質浄化材中の各含有率が表2に示す含有率となる量で混合して、水質浄化材を調製した。
得られた水質浄化材の、塩基置換容量、リン酸吸収係数、可溶性ケイ酸、及びアルカリ分を上述した方法で測定した。結果を表2に示す。
水道水に、硝酸(関東化学社製、特級試薬)を添加して、硝酸濃度が、0、10、30、100、300ppm(質量基準)となるように調整した硝酸水溶液を得た。得られた硝酸水溶液を模擬水として、各々の模擬水100ミリリットルと水質浄化材1gを、100ミリリットルのポリプロピレン製の容器に入れて、振とう機を用いて、7日間振とうした。次いで、模擬水のpHを、複合型ガラス電極(堀場製作所社製、型番:9625-10D)を用いて測定した。
また、参考例1として、上記硝酸水溶液(水質浄化材を添加しなかったもの)のpHを測定した。
結果を表3に示す。
[アンモニアおよびリン酸吸着性の評価]
リン酸水素二アンモニウム(関東化学社製、特級試薬)0.0944gを蒸留水に加えて、模擬水2リットルを調製した。該模擬水中、アンモニア態窒素の濃度は10mg/リットル、リン酸濃度は33.9mg/リットルであった。
上記模擬水100ミリリットルと水質浄化材1gを、100ミリリットルのポリプロピレン製の容器に入れて、振とう機を用いて、7日間振とうした。次いで、孔径が0.45μmであるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のメンブレンフィルターを用いて、模擬水をろ過して、ろ液を得た。
[アンモニア態窒素濃度(表4中、「NH4-N」と示す。)の測定]
インドフェノール青比色法を用いたデジタルパックテスト(共立理化学研究所社製、商品名「デジタルパックテスト・マルチ、型式:DPM-MT」を用いて測定した。
[リン酸濃度の測定]
モリブデン青比色法を用いたデジタルパックテスト(共立理化学研究所社製、商品名「デジタルパックテスト・マルチ、型式:DPM-MT」を用いて測定した。
[ケイ酸濃度の測定]
ICP発光分析装置(堀場製作所社製、商品名「ULTIMA II」)を用いて測定した。
また、水質浄化材のアンモニア吸着性及びリン酸吸着性の指標として、アンモニア態窒素及びリン酸の吸着率(%)を、以下の式を用いて算出した。
アンモニア態窒素の吸着率(%)=(振とう前の模擬水のアンモニア態窒素の濃度-振とう後のろ液のアンモニア態窒素の濃度)/振とう前の模擬水のアンモニア態窒素の濃度×100
リン酸の吸着率(%)=(振とう前の模擬水のリン酸の濃度-振とう後のろ液のリン酸の濃度)/振とう前の模擬水のリン酸の濃度×100
結果を表4に示す。
なお、アンモニア態窒素及びリン酸の濃度は、小さいほど水質が良好である。また、アンモニア態窒素及びリン酸の吸着率は、水質を良好にする観点から、大きい方が好ましい。
また、ケイ酸濃度は、珪藻の増殖を促進することができる観点から、大きいほうが好ましい。
また、実施例1~4において、リン酸の濃度は0.0~0.3mg/リットルであり、比較例2~4におけるリン酸の濃度(1.1~33.8mg/リットル)よりも小さいことがわかる。このことから、本発明の水質浄化材(実施例1~4)は、リン酸吸収係数が6,000~12,000mg/100gであり、アルカリ分が1~9質量%である水質浄化材(比較例2~4)よりも、リン酸吸着性に優れていることがわかる。
さらに、実施例1~4において、ケイ酸の濃度は89.2~105.3mg/リットルであり、比較例2~4におけるケイ酸の濃度(22.0~78.8mg/リットル)よりも大きいことがわかる。このことから、本発明の水質浄化材(実施例1~4)は、ケイ酸供給性に優れていることがわかる。
Claims (2)
- ケイ酸カルシウム含有材料とゼオライトの混合物である水質浄化材(ただし、上記混合物の焼成物を除く。)であって、
上記水質浄化材について、塩基置換容量が9meq/100g以上であり、かつ、リン酸吸収係数が13,000mg/100g以上であり、
上記水質浄化材中、可溶性ケイ酸の含有率が10質量%以上であり、かつ、アルカリ分の含有率が10質量%以上であり、
上記ケイ酸カルシウム含有材料と上記ゼオライトの質量比(ケイ酸カルシウム含有材料/ゼオライト)が、50/50~99/1であり、
上記ケイ酸カルシウム含有材料は、粒度が6mm以下のものを70質量%以上の割合で含むものであり、かつ、上記ゼオライトは、粒度が6mm以下のものを70質量%以上の割合で含むものであることを特徴とする水質浄化材。 - 請求項1に記載の水質浄化材を、水棲生物が生息している養殖用水域に供給して、水棲生物を養殖する水棲生物の養殖方法。
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