JP7287328B2 - リニアソレノイドバルブの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、リニアソレノイドバルブの制御装置に関する。
特許文献1に記載されているように、リニアソレノイドバルブの励磁電流を制御するPWM制御と、その励磁電流を周期的に増減させてリニアソレノイドバルブのスプールを振動させることにより、スリーブとスプールとの間の静摩擦を低減させるディザ制御とを実行する制御装置が知られている。
特開2014-197655号公報
ところで、上記文献に記載の制御装置では、PWM周期の1周期における励磁電流の平均値(同文献に記載のPWM平均電流値Iave1)を算出するとともに、その算出した平均電流値に基づいてディザ制御を行うようにしている。
ここで、励磁電流には一時的にノイズ成分が重畳することがあり、そうしたノイズ成分が重畳すると、PWM周期の1周期における励磁電流の平均値についてその算出精度が低下するため、ディザ制御による励磁電流の制御性が悪化するおそれがある。
上記課題を解決するリニアソレノイドバルブの制御装置は、リニアソレノイドバルブの励磁電流を制御するPWM制御と、ディザ補正量による補正を通じて前記励磁電流を周期的に増減させることにより前記リニアソレノイドバルブのスプールを振動させるディザ制御とを実行する。前記PWM制御で生成されるPWM信号のパルス周期をPWM周期とし、前記ディザ制御による前記スプールの振動周期をディザ周期としたときに、連続した複数の前記PWM周期が前記ディザ周期の1周期となっており、この制御装置は、前記ディザ周期の自然数倍の期間における前記励磁電流の平均値を平均電流値として算出する平均化処理と、前記励磁電流の目標値である目標電流値を算出する目標電流算出処理と、前記目標電流値と前記平均電流値とが一致するように前記PWM信号の制御値をフィードバック制御するフィードバック処理と、PWM周期毎に異なる前記ディザ補正量を算出するディザ補正量算出処理と、を実行する。そして、前記ディザ補正量算出処理は、前記フィードバック制御によって得られた前記PWM信号の制御値と前記平均電流値との比率に前記ディザ補正量相当の電流値であるディザ電流値を乗算して前記ディザ補正量を算出するとともに、前記ディザ周期の1周期内において前記ディザ補正量による前記励磁電流の増加分が前記ディザ補正量による前記励磁電流の減少分にて相殺されるように当該ディザ補正量を算出する。
同構成によれば、ディザ周期の1周期内においてディザ補正量による励磁電流の増加分が、ディザ補正量による励磁電流の減少分にて相殺されるように当該ディザ補正量は算出されるため、ディザ周期の1周期内における平均電流値は、ディザ制御を実行しない場合の平均電流値と同じになる。従って、ディザ制御の影響が抑えられた状態で上記フィードバック制御が行われるようになり、これにより励磁電流の制御性が向上する。
ここで、同構成では、上記平均電流値に基づいてディザ制御を行うようにしているが、上記平均電流値はディザ周期の自然数倍の期間、つまり複数のPWM周期で構成されるサンプリング期間内における平均値となっている。そのため、励磁電流に一時的にノイズ成分が重畳したとしても、そうしたノイズ成分が平均電流値の算出精度に及ぼす影響は、PWM周期の1周期における励磁電流の平均値を算出する場合と比較して小さくなる。従って、ディザ制御による励磁電流の制御性が向上するようになる。
また、リニアソレノイドバルブを駆動する電源電圧が変化したり、温度変化によってリニアソレノイドバルブの抵抗値が変化したりすると、PWM信号の制御値(例えば現状の平均電流値が得られているPWM信号のデューティ比や、そのデューティ比によって変化するPWM信号のON時間など)に対応する励磁電流の大きさが異なるようになるため、ディザ制御を通じた励磁電流の制御についてロバスト性が低くなるおそれがある。この点、同構成では、フィードバック制御によって得られたPWM信号の制御値と上記平均電流値との比率に対して、ディザ補正量相当の電流値であるディザ電流値を乗算することにより、ディザ補正量を算出するようにしている。
そうしたフィードバック制御によって得られたPWM信号の制御値と上記平均電流値との比率は、現状の電源電圧やリニアソレノイドバルブの抵抗値における単位電流値当たりのPWM信号の制御値を示す値になる。従って、そうした比率にディザ電流値を乗算して得られる値は、現状の電源電圧やリニアソレノイドバルブの抵抗値においてディザ制御用のディザ電流値を得るために必要なPWM信号の制御値を示す値になり、こうした値に基づいて同構成ではディザ補正量を算出するため、ディザ制御におけるロバスト性が向上するようになる。
また、上記制御装置において、前記フィードバック処理に用いる前記平均電流値を算出する際の前記自然数倍の値及び前記ディザ補正量算出処理に用いる前記平均電流値を算出する際の前記自然数倍の値を同一にしてもよい。
同構成によれば、フィードバック処理に用いる平均電流値のサンプリング期間とディザ補正量算出処理に用いる平均電流値のサンプリング期間とが同じになるため、ディザ制御及びフィードバック制御を実行するに当たってサンプリング期間が異なる複数の平均電流値を算出する必要がなくなる。従って、そうしたサンプリング期間が異なる平均電流値を複数算出する場合と比較して、制御装置の演算負荷を低減することができる。
また、各PWM周期における前記励磁電流の平均値と前記平均電流値との差分を前記ディザ電流値とすることができる。
この他、各PWM周期における励磁電流のピーク値と前記平均電流値との差分を前記ディザ電流値とすることもできる。この場合には、各PWM周期における励磁電流のピーク値自体が制御されるため、ディザ制御の実行中において、リニアソレノイドバルブに過剰な電流が流れることを抑えることができる。
一実施形態にかかるリニアソレノイドバルブの制御装置を示す模式図。 同実施形態の制御装置が実行する処理を示すブロック図。 同実施形態においてディザ制御を実行するときの(A)PWM信号の変化、(B)励磁電流の変化をそれぞれ示すタイムチャート。 同実施形態の変更例においてディザ制御を実行するときの(A)PWM信号の変化、(B)励磁電流の変化をそれぞれ示すタイムチャート。
以下、リニアソレノイドバルブの制御装置を車両用の自動変速機に適用した一実施形態について、図1~図3を参照して説明する。
図1に示すように、車両用の自動変速機10は、クラッチやブレーキなどの係合機構12を備えた変速機構11や、係合機構12に供給される作動油の圧力、つまり油圧を調整するリニアソレノイドバルブ30を有する油圧回路20などを備えている。
リニアソレノイドバルブ30は、複数のポートを有するスリーブ31、スリーブ31内を軸方向に移動することにより各ポートの開閉状態を切り替えるスプール32、スプール32を軸方向の一方に付勢するスプリング34、スプリング34の付勢力に抗してスプール32を軸方向に移動させる電磁石33などを備えている。
電磁石33には、駆動回路40が接続されており、この駆動回路40に入力される信号に応じて電磁石33の励磁電流Iが変化する。電磁石33の励磁電流Iが変化すると、スリーブ31内におけるスプール32の位置が変化して各ポートの開閉状態が変化するため、リニアソレノイドバルブ30から係合機構12に供給される油圧が変化する。また、電磁石33には、当該電磁石33の励磁電流Iを検出する電流検出回路42が接続されている。
制御装置100は、中央処理装置(以下、CPUという)200や、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリ210などを備えている。制御装置100は、メモリ210に記憶されたプログラムをCPU200が実行することにより各種制御に関する処理を実行する。
制御装置100には、車両に搭載された内燃機関のクランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ50、内燃機関の吸入空気量GAを検出するエアフロメータ51、係合機構12に供給される作動油の温度である油温Toilを検出する油温センサ52、車両の車速を検出する車速センサなどの各種センサが接続されている。また、制御装置100には、上記電流検出回路42も接続されている。そして、制御装置100は、上記各種センサや検出回路などから出力される信号に基づいて各種制御を実施する。
そうした各種制御の1つとして、制御装置100は、パルス幅変調制御(以下、PWM制御という)により生成されるパルス信号であるPWM信号Spwmを駆動回路40に入力してリニアソレノイドバルブ30の励磁電流を調整することにより、同リニアソレノイドバルブ30の駆動制御を行う。
また、制御装置100は、そうした励磁電流の制御に際して、PWM信号Spwmのデューティ比DRを周期的に増減させて電磁石33の励磁電流Iを変動させることによりスプール32を微振動させ、これによりスリーブ31とスプール32との間の静摩擦を低減させるディザ制御を実行する。
なお、こうしたディザ制御を実行するとスプール32は微振動するが、そうしたスプール32の振動はリニアソレノイドバルブ30に接続された油圧系でなまされるため、係合機構12に供給される作動油の圧力がディザ制御の実行によって大きく変動することは抑制される。
また、以下では、PWM制御によって生成されるPWM信号Spwmのパルス周期をPWM周期といい、ディザ制御によるスプール32の振動周期のことをディザ周期という。また、本実施形態では、連続したPWM周期の5周期分がディザ周期の1周期となっている。
図2に、制御装置100が実行するリニアソレノイドバルブ30の駆動制御にかかる各処理を示す。
目標電流算出処理M10は、電磁石33の励磁電流Iの目標値である目標電流値Itを目標油圧Ptに基づいて算出する処理である。目標油圧Ptは、各種センサが検出する車両の運転状態に基づいて制御装置100が算出する値であってリニアソレノイドバルブ30から係合機構12に供給する油圧の目標値である。
フィードフォワード処理(FF処理)M12は、目標電流値Itに基づいてフィードフォワード値DRFFを算出する処理である。フィードフォワード値DRFFは、PWM信号Spwmのデューティ比であり、目標電流値Itが大きいほどフィードフォワード値DRFFの値は大きくなるように算出される。
平均化処理M21は、電流検出回路42が検出した励磁電流Iについてその平均値である平均電流値Iavを算出する処理である。この平均電流値Iavは、上記ディザ周期の自然数倍(本実施形態では1倍)の期間における励磁電流Iの平均値となっている。
減算処理M11は、目標電流値Itと平均電流値Iavとの偏差ΔIを算出する処理である。
フィードバック処理(FB処理)M13は、偏差ΔIに基づくフィードバック制御を実行することによりフィードバック値DRFBを算出する処理である。フィードバック値DRFBも、PWM信号Spwmのデューティ比であり、偏差ΔIが「0」に近づくように、つまり目標電流値Itと平均電流値Iavとが一致するようにPWM信号Spwmのデューティ比を補正する値である。このフィードバック処理M13では、例えばPI制御、あるいはPID制御といった周知のフィードバック制御を通じてフィードバック値DRFBが算出される。
第1加算処理M15は、基本デューティ比DRbを算出する。この基本デューティ比DRbは、フィードフォワード値DRFFとフィードバック値DRFBとの和であり、目標電流値Itと平均電流値Iavとが一致するようにフィードバック制御を通じて算出されたデューティ比である。なお、この基本デューティ比DRbや、この基本デューティ比DRbとPWM信号Spwmのパルス周波数とで決まるPWM信号のON時間(後述の基本ON時間τb)は、フィードバック制御によって得られたPWM信号の制御値に相当する。
ディザ補正量算出処理M14は、油温Toilに基づいてディザ補正量DRDITHを算出する。ディザ補正量DRDITHは、上述したディザ制御を実行するために基本デューティ比DRbを補正するためのデューティ比であり、ディザ周期の1周期内においてPWM周期毎に異なる値が算出される。また、油温Toilが低いときほどディザ補正量DRDITHは多くなるように、つまりディザ補正量DRDITHによる励磁電流Iの補正量が多くなるように当該ディザ補正量DRDITHは算出される。これは油温Toilが低いときほどスプール32は動きにくくなるため、そうした油温の低下に伴うスプール32の動作速度の低下を抑えるためである。また、ディザ補正量DRDITHの詳細な算出態様については後述する。
第2加算処理M16は、目標デューティ比DRtを算出する。この目標デューティ比DRtは、基本デューティ比DRbとディザ補正量DRDITHとの和である。
PWM信号生成処理M17は、目標デューティ比DRtと適宜設定されるパルス周波数(例えば1kHzなど)とに基づいてON時間が設定されたPWM信号Spwmを生成して駆動回路40に出力する。駆動回路40は、入力されたPWM信号Spwmに応じて電磁石33のオンオフを行うことにより、電磁石33の励磁電流Iを目標デューティ比DRtに応じた値に調整する。
図3(A)及び図3(B)に、上記ディザ補正量算出処理M14によるディザ補正量DRDITHの算出態様を示す。なお、本実施形態では、上述したように、連続したPWM周期の5周期分がディザ周期の1周期となっており、以下では、それら各PWM周期を時間経過順にそれぞれ第1PWM周期、第2PWM周期、第3PWM周期、第4PWM周期、第5PWM周期という。
本実施形態では、ディザ補正量DRDITHが以下のようにして算出される。すなわち、ディザ周期の1周期内においてディザ補正量DRDITHによる励磁電流Iの増加分が、ディザ補正量DRDITHによる励磁電流Iの減少分にて相殺されるように当該ディザ補正量DRDITHは算出される。また、次式(1)等に示すように、フィードバック制御によって得られたPWM信号Spwmの上記制御値と上記平均電流値Iavとの比率に対して、ディザ補正量DRDITH相当の電流値であるディザ電流値を乗算することにより、各PWM周期におけるディザ補正量DRDITHが算出される。
また、本実施形態では、各PWM周期における励磁電流Iの平均値と上記平均電流値Iavとの差分が、ディザ補正量DRDITH相当の電流値であるディザ電流値DIとなっている。
より詳細には、第1PWM周期における励磁電流Iの平均電流値を「AVE1」、第2PWM周期における励磁電流Iの平均電流値を「AVE2」、第3PWM周期における励磁電流Iの平均電流値を「AVE3」、第4PWM周期における励磁電流Iの平均電流値を「AVE4」、第5PWM周期における励磁電流Iの平均電流値を「AVE5」としたときに、「AVE1」及び「AVE2」及び「AVE3」及び「AVE4」及び「AVE5」のそれぞれから平均電流値Iavを減じた値の総和が「0」となるようにしている。また、本実施形態では、「AVE3」が平均電流値Iavと一致するとともに、各PWM周期における励磁電流Iの平均電流値の大小関係は、「AVE2」>「AVE1」>「AVE3」>「AVE5」>「AVE4」の順になっている。こうしてディザ周期の1周期内においてPWM周期毎の平均電流値は、「AVE3」を振幅の中心値としてサイン波のように波打って増減するようになっている。
ここで、各PWM周期におけるPWM信号のON時間τtは、上記態様にて算出される基本デューティ比DRbに応じた基本ON時間τbがディザ補正量DRDITHに応じた補正時間τdで補正されることにより設定される。例えば、第1PWM周期におけるPWM信号のON時間τt1は、上記態様にて算出される基本デューティ比DRbに応じた基本ON時間τbが、ディザ補正量DRDITHに応じた第1補正時間τd1で補正されることにより設定される。
基本ON時間τbは目標電流値Itと平均電流値Iavとを一致させるために必要なON時間であり、補正時間τdは、各PWM周期における平均電流値を相違させることによりディザ制御を実行するための時間である。
そして、各PWM周期における補正時間τdに対応するディザ補正量DRDITHは、次式(1)及び次式(7)に基づいて算出される。
Figure 0007287328000001
式(1)における基本ディザ電流値DIbは、ディザ電流値DIの基本値である。また、この基本ディザ電流値DIbは、油温Toilが低いときほど大きい値となるように可変設定される。このように油温Toilに応じて基本ディザ電流値DIbが可変設定されることにより、上述したようにディザ補正量DRDITHは油温Toilに応じて可変設定される。
基本ON時間τbは、上述したようにフィードバック制御によって得られたPWM信号Spwmの制御値である。
定数kは、予めの試験等を通じて適宜設定される値であり、この値が大きいほどディザ制御によるスプール32の振幅は大きくなる。また、定数cも、予めの試験等を通じて適宜設定される値であり、例えば本実施形態では「2」に設定されている。
上記式(1)に基づき、第1PWM周期における第1補正時間τd1は、次式(2)から算出される。
Figure 0007287328000002
なお、式(2)における「DIb×(k/c)」の値は、第1PWM周期におけるディザ電流値DI1を示しており、上記「AVE1」から平均電流値Iavを減じた値(正の値)に相当する。
また、上記式(1)に基づき、第2PWM周期における第2補正時間τd2は、次式(3)から算出される。
Figure 0007287328000003
なお、式(3)における「DIb×(k)」の値は、第2PWM周期におけるディザ電流値DI2を示しており、上記「AVE2」から平均電流値Iavを減じた値(正の値)に相当する。
また、上記式(1)に基づき、第3PWM周期における第3補正時間τd3は、次式(4)から算出される。
なお、式(4)における「DIb×(0)」の値は、第3PWM周期におけるディザ電流値DI3を示しており、上記「AVE3」から平均電流値Iavを減じた値、つまり「0」になる。
Figure 0007287328000004
また、上記式(1)に基づき、第4PWM周期における第4補正時間τd4は、次式(5)から算出される。
なお、式(5)における「DIb×(ーk)」の値は、第4PWM周期におけるディザ電流値DI4を示しており、上記「AVE4」から平均電流値Iavを減じた値(負の値)に相当する。
Figure 0007287328000005
また、上記式(1)に基づき、第5PWM周期における第5補正時間τd5は、次式(6)から算出される。
なお、式(6)における「DIb×(ーk/c)」の値は、第5PWM周期におけるディザ電流値DI5を示しており、上記「AVE5」から平均電流値Iavを減じた値(負の値)に相当する。
Figure 0007287328000006
こうして算出される各補正時間τd1~τd5を次式(7)に代入することにより、各PWM周期におけるディザ補正量DRDITHが算出される。
DRDITH=τd・H/10…(7)
DRDIRH:ディザ補正量DRDITH(%)
τd:補正時間(ms)
H:PWM信号のパルス周波数(Hz)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)ディザ周期の1周期内においてディザ補正量DRDITHによる励磁電流Iの増加分が、ディザ補正量DRDITHによる励磁電流Iの減少分にて相殺されるように当該ディザ補正量DRDITHは算出される。そのため、ディザ周期の1周期内における平均電流値Iavは、ディザ制御を実施しない場合の励磁電流Iの平均値と同じになる。従って、ディザ制御を実行しても、上記フィードバック制御を通じて上記平均電流値Iavは目標電流値Itに収束するようになる。このようにディザ制御の影響が抑えられた状態で上記フィードバック制御が実施されるため、励磁電流Iの制御性が向上するようになる。
ここで、本実施形態では、上記平均電流値Iavに基づいてディザ制御を行うようにしているが、上記平均電流値Iavはディザ周期の自然数倍の期間、つまり複数のPWM周期で構成されるサンプリング期間内における励磁電流Iの平均値となっている。そのため、励磁電流Iに一時的にノイズ成分が重畳したとしても、そうしたノイズ成分が平均電流値Iavの算出精度に及ぼす影響は、PWM周期の1周期における励磁電流Iの平均値を算出する場合と比較して小さくなる。従って、ディザ制御による励磁電流Iの制御性が向上するようになる。
(2)また、リニアソレノイドバルブ30を駆動する電源電圧が変化したり、温度変化によってリニアソレノイドバルブ30の抵抗値が変化したりすると、PWM信号Spwmの制御値(例えば現状の平均電流値Iavが得られているPWM信号Spwmのデューティ比や、そのデューティ比によって変化するPWM信号SpwmのON時間など)に対応する励磁電流Iの大きさが異なるようになる。そのため、ディザ制御を通じた励磁電流Iの制御についてロバスト性が低くなるおそれがある。
この点、本実施形態では、上記式(1)に示したように、フィードバック制御によって得られたPWM信号Spwmの制御値である上記基本ON時間τbと上記平均電流値Iavとの比率、つまり式(1)における「τb/Iav」の値に対して、ディザ補正量相当の電流値であるディザ電流値DI、つまり式(1)における「DIb・(k/c、k、0、ーk、ーk/c)」の各値を乗算することにより、各PWM周期におけるディザ補正量DRDITHを算出している。
そうしたフィードバック制御によって得られたPWM信号Spwmの制御値と上記平均電流値Iavとの比率は、現状の電源電圧やリニアソレノイドバルブ30の抵抗値における単位電流値当たりのPWM信号Spwmの制御値を示す値になる。従って、そうした比率にディザ電流値DIを乗算して得られる値は、現状の電源電圧やリニアソレノイドバルブ30の抵抗値においてディザ制御用のディザ電流値DIを得るために必要なPWM信号Spwmの制御値を示す値になり、この値に基づいてディザ補正量DRDITHが算出されるため、ディザ制御におけるロバスト性が向上するようになる。
(3)上述した特許文献1では、フィードバック制御を利用したディザ制御を実行するために、PWM周期の1周期における励磁電流Iの平均値と、ディザ周期の1周期における励磁電流Iの平均値とを算出しており、サンプリング期間が異なる2つの平均値を求めるようにしている。
これに対して本実施形態では、フィードバック処理M13に用いる平均電流値Iavと、ディザ補正量算出処理M14において上記式(1)で用いる平均電流値Iavとが同一の値になっている。つまり、フィードバック処理に用いる平均電流値を算出する際のディザ周期の自然数倍の値と、ディザ補正量算出処理に用いる平均電流値を算出する際のディザ周期の自然数倍の値は同一になっている。このように、フィードバック処理M13に用いる平均電流値のサンプリング期間とディザ補正量算出処理M14に用いる平均電流値のサンプリング期間とは同じになっているため、フィードバック制御を利用したディザ制御を実行するに当たってサンプリング期間が異なる複数の平均電流値を算出する必要がない。従って、そうした平均電流値を複数算出する従来文献の技術と比較して、本実施形態では制御装置100の演算負荷を低減することができる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、図3に示したように、各PWM周期における励磁電流Iの平均値と平均電流値Iavとの差分をディザ補正量DRDITHを算出する際のディザ電流値DIとした。この他、図4に示すように、各PWM周期における励磁電流Iのピーク値であるピーク電流値PKと平均電流値Iavとの差分を、ディザ補正量DRDITHを算出する際のディザ電流値DIとしてもよい。
図4(A)及び図4(B)に示すように、この変更例においては、例えば第1PWM周期における励磁電流Iのピーク電流値を「PK1」とし、この「PK1」から平均電流値Iavを減じた値を第1ディザ電流値DI1とする。また、第2PWM周期における励磁電流Iのピーク電流値を「PK2」とし、この「PK2」から平均電流値Iavを減じた値を第2ディザ電流値DI2とする。また、第3PWM周期における励磁電流Iのピーク電流値を「PK3」とし、この「PK3」から平均電流値Iavを減じた値を第3ディザ電流値DI3とする。また、第4PWM周期における励磁電流Iのピーク電流値を「PK4」とし、この「PK4」から平均電流値Iavを減じた値を第4ディザ電流値DI4とする。また、第5PWM周期における励磁電流Iのピーク電流値を「PK5」とし、この「PK5」から平均電流値Iavを減じた値を第5ディザ電流値DI5とする。
そして、第3PWM周期における励磁電流Iの平均値AVE3が平均電流値Iavと一致するように第3ディザ電流値DI3を設定する。そして、第1ディザ電流値DI1及び第2ディザ電流値DI2及び第4ディザ電流値DI4及び第5ディザ電流値DI5の平均値が第3ディザ電流値DI3に一致するとともに、各PWM周期におけるピーク電流値PKの大小関係が、「PK2」>「PK1」>「PK3」>「PK5」>「PK4」の順となるように設定することにより、ディザ周期の1周期内において各ピーク電流値PKをサイン波のように波打って増減させるとともに、ディザ周期の1周期内においてディザ補正量DRDITHによる励磁電流Iの増加分が、ディザ補正量DRDITHによる励磁電流Iの減少分にて相殺されるようにディザ補正量DRDITHを算出する。
この変更例におけるディザ補正量DRDITHは、次式(8)及び上記式(7)に基づいて算出可能である。
Figure 0007287328000007
式(8)における基本ディザ電流値DIbは、この変更例における上記ディザ電流値DIの基本値である。また、この基本ディザ電流値DIbも、油温Toilが低いときほど大きい値となるように可変設定することが好ましい。また、式(8)における基本ON時間τb、平均電流値Iav、定数k、及び定数cは、上記実施形態で説明した値と同一である。
そして、この式(8)から算出される各補正時間τd1~τd5を上記式(7)に代入することにより、各PWM周期におけるディザ補正量DRDITHを算出する。
こうした変更例によれば、各PWM周期における励磁電流Iのピーク値自体が制御されるため、ディザ制御の実行中において、リニアソレノイドバルブ30に過剰な電流が流れることを抑えることができる。
・上記式(1)や上記式(8)の基本ON時間τbを上記基本デューティ比DRbに置き代えてもよい。この場合には、式(1)や式(8)から算出される値がPWM信号SpwmのON時間ではなく、PWM信号Spwmのデューティ比になるため、PWM信号SpwmのON時間をデューティ比に変換するための上記式(7)に基づく変換処理は不要になる。
・油温Toilに応じて基本ディザ電流値DIbを可変設定したが、基本ディザ電流値DIbを固定値としてもよい。
・上記平均電流値Iavを算出するためのディザ周期の自然数倍の値は「1倍」であったが、そうした自然数倍の値は適宜変更することができる。
・フィードバック処理M13に用いる平均電流値を算出する際のディザ周期の自然数倍の値及びディザ補正量算出処理M14に用いる平均電流値を算出する際のディザ周期の自然数倍の値は同一であったが異ならせてもよい。この場合でも、上記(3)以外の作用効果を得ることができる。
・ディザ周期の1周期を構成するPWM周期の数は5周期であったが、そうしたPWM周期の数は適宜減光することができる。
・上記リニアソレノイドバルブ30は、自動変速機10の係合機構12に油圧を供給する油圧回路20に設けられたバルブであったが、他の機構に油圧を供給する油圧回路に設けられるリニアソレノイドバルブでもよい。
・制御装置100は、CPU200とメモリ210とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行されるソフトウェア処理の少なくとも一部を処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、制御装置100は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てをプログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するメモリ等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路によって実行されればよい。
10…自動変速機
11…変速機構
12…係合機構
20…油圧回路
30…リニアソレノイドバルブ
31…スリーブ
32…スプール
33…電磁石
34…スプリング
40…駆動回路
42…電流検出回路
50…クランク角センサ
51…エアフロメータ
52…油温センサ
53…車速センサ
100…制御装置
200…中央処理装置(CPU)
210…メモリ

Claims (4)

  1. リニアソレノイドバルブの励磁電流を制御するPWM制御と、ディザ補正量による補正を通じて前記励磁電流を周期的に増減させることにより前記リニアソレノイドバルブのスプールを振動させるディザ制御とを実行する制御装置であって、
    前記PWM制御で生成されるPWM信号のパルス周期をPWM周期とし、前記ディザ制御による前記スプールの振動周期をディザ周期としたときに、連続した複数の前記PWM周期が前記ディザ周期の1周期となっており、
    前記ディザ周期の自然数倍の期間における前記励磁電流の平均値を平均電流値として算出する平均化処理と、
    前記励磁電流の目標値である目標電流値を算出する目標電流算出処理と、
    前記目標電流値と前記平均電流値とが一致するように前記PWM信号の制御値をフィードバック制御するフィードバック処理と、
    PWM周期毎に異なる前記ディザ補正量を算出するディザ補正量算出処理と、を実行し、
    前記ディザ補正量算出処理は、前記フィードバック制御によって得られた前記PWM信号の制御値と前記平均電流値との比率に前記ディザ補正量相当の電流値であるディザ電流値を乗算して前記ディザ補正量を算出するとともに、前記ディザ周期の1周期内において前記ディザ補正量による前記励磁電流の増加分が、前記ディザ補正量による前記励磁電流の減少分にて相殺されるように当該ディザ補正量を算出する
    リニアソレノイドバルブの制御装置。
  2. 前記フィードバック処理に用いる前記平均電流値を算出する際の前記自然数倍の値及び前記ディザ補正量算出処理に用いる前記平均電流値を算出する際の前記自然数倍の値が同一である
    請求項1に記載のリニアソレノイドバルブの制御装置。
  3. 前記ディザ電流値は、各PWM周期における前記励磁電流の平均値と前記平均電流値との差分である
    請求項1または2に記載のリニアソレノイドバルブの制御装置。
  4. 前記ディザ電流値は、各PWM周期における励磁電流のピーク値と前記平均電流値との差分である
    請求項1または2に記載のリニアソレノイドバルブの制御装置。
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