JP2014197655A - 電流制御装置および電流制御プログラム - Google Patents

電流制御装置および電流制御プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 ソレノイド内の可動鉄心の作動応答性を向上させることができる電流制御装置を提供する。【解決手段】 電流制御装置は、ソレノイドの目標電流値Itを設定し、ソレノイドの駆動回路に出力されるPWM信号Spwmのデューティ比Rdを目標電流値Itに基づき設定する。目標電流値Itは、PWM信号Spwmのパルス周期であるPWM周期Tpwmよりも長いディザ周期Tdで周期的に変化する値である。目標電流値Itの設定周期T1およびデューティ比Rdの設定周期T2は、ディザ周期Tdよりも短く、PWM周期Tpwmと等しい。したがって、ディザ周期毎にデューティ比を設定するものと比べると、基本電流値Ibの変更時点からPWM信号Spwmのデューティ比Rdが更新されるまでの時間が短くなる。そのため、ソレノイド内の可動鉄心の作動応答性が向上し、リニアソレノイドバルブの出力油圧の応答性が向上する。【選択図】図6

Description

本発明は、電流制御装置および電流制御プログラムに関する。
ソレノイドは、例えば電磁弁およびシリンダなどのアクチュエータに広く利用されている。例えば特許文献1には、電磁弁を構成するソレノイドの励磁電流をパルス幅変調信号(PWM信号)により制御する電流制御装置が開示されている。特許文献1では、PWM信号のパルス周期の複数倍の長さに設定されたディザ周期で励磁電流を周期的に変化させることにより、電磁弁のスプールを微振動させ、スプールの静摩擦に起因するヒステリシス特性の発現を抑制している。
特開平10−19156号公報
特許文献1では、目標とする励磁電流を得るためのPWM信号のデューティ比はディザ周期毎に設定している。そのため、ディザ周期間に目標が変更された場合、その変更がPWM信号のデューティ比に反映されるのは次にディザ周期が経過したときである。したがって、目標の変更時点に対してPWM信号のデューティ比の更新が遅れるので、ソレノイドが駆動する可動鉄心の作動応答性が低いという問題があった。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ソレノイドが駆動する可動鉄心の作動応答性を向上させることができる電流制御装置を提供することである。
本発明は、ソレノイドの励磁電流を制御する電流制御装置であって、励磁電流の目標値である目標電流値を設定する目標設定手段と、ソレノイドの駆動回路に出力されるPWM信号のデューティ比を目標電流値に基づき設定するデューティ比設定手段と、PWM信号を生成するPWM信号出力手段と、を備える。目標電流値は、PWM信号のパルス周期よりも長いディザ周期で周期的に変化する値である。目標設定手段が目標電流値を設定する周期を第1設定周期とし、デューティ比設定手段がデューティ比を設定する周期を第2設定周期とすると、第1設定周期および第2設定周期はディザ周期よりも短い。
したがって本発明によれば、ディザ周期毎にデューティ比を設定する従来のものと比べ、目標電流値の変更時点からPWM信号のデューティ比が更新されるまでの時間が短くなる。そのため、ソレノイド内の可動鉄心の作動応答性を向上させることができる。特に、第1設定周期および第2設定周期がPWM周期以下である場合、ソレノイド内の可動鉄心の作動応答性を一層向上させることができる。
本発明の第1実施形態による電流制御装置が適用された電子制御ユニットおよび自動変速機の概略構成を示す図である。 図1の電子制御ユニットを説明するブロック線図である。 図2のデューティ比設定手段を説明するブロック線図である。 図2の目標設定手段を説明するブロック線図である。 図2の電流制御装置の制御作動を説明するフローチャートである。 図1のリニアソレノイドバルブの励磁電流の時系列変化の一例を示すタイムチャートである。 図1のリニアソレノイドバルブの出力油圧の時系列変化の一例を示すタイムチャートである。 第1実施形態の特性と比較形態の特性とを比較する特性図である。 本発明の第2実施形態による電流制御装置が適用された電子制御ユニットおよび自動変速機の概略構成を示す図である。 図9の電流制御装置の目標設定手段を説明するブロック線図である。 図9の電流制御装置の制御作動を説明するフローチャートの前半部分である。 図9の電流制御装置の制御作動を説明するフローチャートの後半部分である。 第2実施形態において、運転状態が所定状態であるときのディザ周波数と出力油圧の周波数との関係、および、ディザ周波数と出力油圧の脈動幅との関係を示す図である。 図13にてディザ周波数が90[Hz]であるときの励磁電流および出力油圧の時系列変化を示すタイムチャートである。 図13にてディザ周波数が100[Hz]であるときの励磁電流および出力油圧の時系列変化を示すタイムチャートである。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による電流制御装置が適用された電子制御ユニットを図1に示す。電子制御ユニット80は、車両用自動変速機90の変速比を制御する制御装置である。自動変速機90は、クラッチ91を含む複数の油圧アクチュエータを有する変速機構92と、各油圧アクチュエータに供給される作動油の圧力を調節する油圧回路93とを備えている。
電流制御装置10は、リニアソレノイドバルブ94を構成するソレノイド95の励磁電流を制御することにより、クラッチ91に供給される作動油の圧力を制御する。リニアソレノイドバルブ94は、複数のポートを有するスリーブ941と、スリーブ941内で各ポートの連通および遮断を切り替える段付シャフト状のスプール942とを有するスプール式のソレノイドバルブである。スプール942は、ソレノイド95の内側にある可動鉄心と一体に軸方向へ移動可能である。
先ず、電子制御ユニット80の構成を図2に基づき説明する。電子制御ユニット80は、電流制御装置10および駆動回路50を備えている。
電流制御装置10は、CPU、RAMおよびROMなどを備えたマイクロコンピュータから構成され、各種センサの検出信号に基づきプログラム処理を実行することにより駆動回路50を作動させる。電流制御装置10には、図示しない入力回路を介して、入力回転数センサ81、エンジン回転数センサ82、エンジントルクセンサ83および油温センサ84などから検出信号が入力される。
電流制御装置10は、目標設定手段20、デューティ比設定手段30およびPWM信号生成手段40を含む。目標設定手段20は、ソレノイド95の励磁電流の目標値である目標電流値Itを設定する。デューティ比設定手段30は、駆動回路50に出力されるPWM信号Spwmのデューティ比Rdを目標電流値Itに基づき設定する。PWM信号生成手段40は、PWM信号Spwmを生成し駆動回路50に出力する。目標電流値Itは、PWM信号Spwmのパルス周期であるPWM周期よりも長いディザ周期で周期的に変化する値である。本実施形態では、ディザ周期の長さはPWM周期の長さの10倍に設定される。
駆動回路50は、ソレノイド95に直列に接続された「スイッチング素子」としてのトランジスタ51と、トランジスタ51に直列に接続されるとともにソレノイド95に並列に接続された「還流素子」としてのダイオード52と、ソレノイド95に直列に接続された電流検出手段54とを備えている。トランジスタ51は、電流制御装置10から入力されるPWM信号Spwmに応じてオンとオフとを繰り返し、ソレノイド95と電源53とを接続および遮断する。このとき、ソレノイド95に流れる励磁電流はディザ周期で周期的に変化し、ソレノイド95内の可動鉄心と一体のスプールは、励磁電流の周期的変化に呼応して微振動する。トランジスタ51がオフであるとき、ソレノイド95のフライホイール電流はダイオード52を通じてGNDに流れる。
電流検出手段54は、ソレノイド95の実際の励磁電流を検出し、検出した励磁電流に対応する励磁電流信号Siを電流制御装置10に出力する。本実施形態では、例えば、ソレノイド95に直列に接続された抵抗と、この抵抗の両端に発生し励磁電流に比例する電圧を増幅する増幅器と、増幅された電圧のノイズを除去するフィルタと、このフィルタの出力をデジタル値に変換する変換器と、から構成されている。励磁電流信号Siは、後述するフィードバック制御に用いられる。
次に、デューティ比設定手段30の詳細構成を図3に基づき説明する。デューティ比設定手段30は、PWM平均算出部31、減算部32、フィードバック制御部33、フィードフォワード制御部34および加算部35を含む。PWM平均算出部31は、ソレノイド95の励磁電流の1PWM周期の平均値であるPWM平均電流値Iave1を算出する。減算部32は、目標電流値ItとPWM平均電流値Iave1との偏差ΔI1を算出する。フィードバック制御部33は、偏差ΔI1に基づきフィードバック項Rd_fbを算出する。フィードフォワード制御部34は、目標電流値Itに基づきフィードフォワード項Rd_ffを算出する。加算部35は、フィードフォワード項Rd_ffとフィードバック項Rd_fbとを加算してデューティ比Rdを算出する。デューティ比設定手段30は、目標電流値ItがPWM平均電流値Iave1に一致するようにデューティ比Rdを調節する制御系の調節部である。
次に、目標設定手段20の詳細構成を図4に基づき説明する。目標設定手段20は、基本設定部21、ディザ平均算出部22、減算部23、補正部24、ディザ設定部25および加算部26を含む。基本設定部21は、各種センサが検出する車両の運転状態に基づき、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧の必要値である必要油圧値を算出し、当該必要油圧値に対応する基本電流値Ibを設定する。リニアソレノイドバルブ94の出力油圧が必要油圧値である状態は、特許請求の範囲に記載の「ソレノイドの所望の作動状態」に相当する。ディザ平均算出部22は、ソレノイド95の励磁電流の1ディザ周期の平均値であるディザ平均電流値Iave2を算出する。減算部23は、基本電流値Ibとディザ平均電流値Iave2との偏差ΔI2を算出する。補正部24は、偏差ΔI2に基づき当該基本電流値Ibを補正する。本実施形態ではPI制御による補正が行われる。
ディザ設定部25は、ディザ周期で周期的に変化するディザ電流値Idを設定する。ディザ電流値Idは、目標電流値Itのうち、リニアソレノイドバルブ94のスプールを微振動させる振動成分である。本実施形態では、ディザ電流値Idの振幅であるディザ振幅Adは、油圧回路93の油温Toilに応じて設定される。油温Toilは、特許請求の範囲に記載の「ソレノイドの環境温度の関連値」に相当する。加算部26は、特許請求の範囲に記載の「目標算出部」に相当し、基本電流値Ibとディザ電流値Idとを加算して目標電流値Itを算出する。
本実施形態では、目標設定手段20が目標電流値Itを設定する周期を第1設定周期とし、デューティ比設定手段30がデューティ比Rdを設定する周期を第2設定周期とすると、第1設定周期の長さおよび第2設定周期の長さはPWM周期の長さと等しい。つまり、目標電流値Itおよびデューティ比Rdは、PWM周期が経過する度に設定され、1ディザ周期が経過する間に10回更新される。
次に、電流制御装置10の制御処理を図5に基づき説明する。図5に示す一連のルーチンは、車両のメインスイッチが入ってから切れるまで所定時間毎に繰り返し実行される。本実施形態では、上記「所定時間」はPWM周期と一致する。また、本ルーチンを初めて実行する際には、カウンタはリセットされているものとする。また、以下の処理で用いられる各種パラメータは、例えばRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。
図5のルーチンが開始すると、先ずステップS101では、カウンタがインクリメントされる。つまり、カウント値Cが1増加させられる。ステップS101の後、処理はステップS102に移行する。
ステップS102では、各種センサが検出する車両の運転状態に基づきリニアソレノイドバルブ94の必要油圧値が算出され、当該必要油圧値に対応する基本電流値Ibが設定される。ステップS102の後、処理はステップS103に移行する。
ステップS103では、カウント値Cが10であるか否かが判断される。ステップS103の判断が肯定された場合(S103:Yes)、処理はステップS104に移行する。一方、ステップS103の判定が否定された場合(S103:No)、処理はステップS108に移行する。
ステップS104では、ソレノイド95の励磁電流の1ディザ周期の平均値であるディザ平均電流値Iave2が算出される。ステップS104の後、処理はステップS105に移行する。
ステップS105では、基本電流値Ibとディザ平均電流値Iave2との偏差ΔI2が算出される。ステップS105の後、処理はステップS106に移行する。
ステップS106では、偏差ΔI2に基づきPI制御により基本電流値Ibが補正される。ステップS106の後、処理はステップS107に移行する。
ステップS107では、カウンタがリセットされる。つまり、カウント値Cが0とされる。ステップS107の後、処理はステップS108に移行する。
ステップS108では、ディザ周期で周期的に変化するディザ電流値Idが設定される。ディザ振幅Adは、油圧回路93の油温Toilに応じて設定される。ステップS108の後、処理はステップS109に移行する。
ステップS109では、基本電流値Ibとディザ電流値Idとを加算することにより目標電流値Itが算出される。ステップS109の後、処理はステップS110に移行する。
ステップS110では、ソレノイド95の励磁電流の1PWM周期の平均値であるPWM平均電流値Iave1が算出される。ステップS110の後、処理はステップS111に移行する。
ステップS111では、目標電流値ItとPWM平均電流値Iave1との偏差ΔI1が算出される。ステップS111の後、処理はステップS112に移行する。
ステップS112では、偏差ΔI1に基づきフィードバック項Rd_fbが算出される。ステップS112の後、処理はステップS113に移行する。
ステップS113では、目標電流値Itに基づきフィードフォワード項Rd_ffが算出される。ステップS113の後、処理はステップS114に移行する。
ステップS114では、フィードフォワード項Rd_ffとフィードバック項Rd_fbとを加算することによりデューティ比Rdが算出される。ステップS114の後、処理はステップS115に移行する。
ステップS115では、デューティ比Rdに対応するPWM信号Spwmが生成され、駆動回路50に出力される。ステップS115の後、処理は図5に示す一連のルーチンを抜ける。
図6には、基本電流値Ibが所定電流値Ib(1)から所定電流値Ib(2)に変更されたときの励磁電流Iの変化を時系列で示す。基本電流値Ibが比較的小さい所定電流値Ib(1)であるとき、PWM周期Tpwm内の励磁電流Iの変動は、非常に小さく、リニアソレノイドバルブ94のスプールの微振動に寄与しない。一方、ディザ周期Td内の励磁電流Iの変動は、リニアソレノイドバルブ94のスプールを微振動させ、スプールの静摩擦に起因するヒステリシス特性の発現を抑制させる。本実施形態では、ディザ電流値Idは、半ディザ周期ごとに大小を繰り返すように変化する。
第1設定周期T1の長さおよび第2設定周期T2の長さは、PWM周期の長さと等しい。つまり、目標電流値Itおよびデューティ比Rdは、PWM周期Tpwmが経過する度に設定される。そのため、基本電流値Ibが時間t1にて所定電流値Ib(1)から所定電流値Ib(2)に変更されると、目標電流値Itおよびデューティ比RdがPWM周期Tpwm以内に更新され、励磁電流Iが速やかに変化する。基本電流値Ibが所定電流値Ib(2)であるときも所定電流値Ib(1)のときと同様に、ディザ周期Td内の励磁電流Iの変動は、リニアソレノイドバルブ94のスプールを微振動させ、スプールの静摩擦に起因するヒステリシス特性の発現を抑制させる。
図7には、ある運転状態においてリニアソレノイドバルブ94の出力油圧が103[kPa]から120[kPa]に増加するときの時系列変化を示す。図7中の実線は本実施形態での変化を示す。また、図7中の一点鎖線は、励磁電流をディザ周期で周期的に変化させない比較形態での変化を示す。本実施形態は、比較形態と比べて、無駄時間が32.3[ms]短くなり、また63.2%応答時間が420[ms]短くなる。
図8には、本実施形態と前記比較形態とのヒステリシス[kPa]およびリニアソレノイドバルブ94の出力油圧の脈動幅[kPa]を示す。図8中の実線は、本実施形態におけるディザ振幅とヒステリシスとの関係を示し、図8中の破線は、本実施形態におけるディザ振幅と脈動幅との関係を示す。また、図8中の一点鎖線は比較形態のヒステリシスを示し、図8中の二点鎖線は比較形態の脈動幅を示す。本実施形態は、比較形態と比べて、脈動幅が同等となる条件下でヒステリシスが30%低減する。
以上説明したように、第1実施形態による電流制御装置10は、目標電流値Itおよびデューティ比RdをPWM周期毎に設定する。したがって第1実施形態によれば、ディザ周期毎にデューティ比を設定する従来のものと比べ、基本電流値Ibの変更時点からPWM信号Spwmのデューティ比Rdが更新されるまでの時間(更新時間)が短くなる。第1実施形態のようにPWM周期が1[ms]でありディザ周期が10[ms]である場合、上記更新時間は最大9[ms]短縮される。そのため、ソレノイド95内の可動鉄心の作動応答性、すなわちリニアソレノイドバルブ94の出力油圧の応答性を向上させることができる。
また、第1実施形態では、目標設定手段20のディザ設定部25は、油圧回路93の油温Toilに応じてディザ振幅Adを設定する。そのため、ディザ振幅Adを油温Toilに応じて最適に設定可能である。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による電流制御装置を図9〜図15に基づき説明する。
自動変速機90のクラッチ91に接続されているリニアソレノイドバルブ94のソレノイド95の励磁電流を制御することによってリニアソレノイドバルブ94の出力油圧を調節するシステムでは、例えば油圧回路93の油温Toilや自動変速機90の回転数などの運転状態によってはリニアソレノイドバルブ94の出力油圧が脈動する懸念がある。そのため、従来では、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧の脈動を抑制するためにリニアソレノイドバルブ94とクラッチ91との間にダンパーを設けていた。このような構成によると、自動変速機90の体格が大きくなり、またコストが高くなることが問題であった。
これに対して、図9に示す第2実施形態による電流制御装置60は、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧の脈動を抑制するための機能を有している。
具体的には、図10に示すように、電流制御装置60の目標設定手段61は、脈動判定部62および設定変更部63を含む。脈動判定部62は、励磁電流信号Siに基づきソレノイド95の実際の励磁電流の振幅Aiが所定値A1以下であるとき、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧が脈動していると判定する。本実施形態では、「励磁電流の振幅Ai」は、直近の1ディザ周期における実際の励磁電流の最大値と最小値との差である。また、所定値A1は、基本電流値Ibおよび運転状態に応じて定まる値であって、予め実験的に求められてマップ化されている。
設定変更部63は、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧が脈動していると脈動判定部62により判定された場合、ディザ設定部25が設定したディザ電流値Idのディザ周期を変更する。本実施形態では、設定変更部63は、出力油圧が脈動している場合、ディザ周期を所定時間だけ短くする。ディザ周期を短くすると、ディザ電流値Idの周波数であるディザ周波数は高くなる。つまり、ディザ周期を短くすることは、ディザ周波数を高くすることに等しい。本実施形態では、「所定時間」は、運転状態に応じて定まる値であって、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧の脈動が低減するような値として予め実験的に求められてマップ化されている。
次に、電流制御装置60の制御処理を図11および図12に基づき説明する。
図11のS101から図12のステップS108まで実行されると、次に図12のステップS201が実行される。
ステップS201では、ソレノイド95の実際の励磁電流の振幅Ai、つまり直近の1ディザ周期における実際の励磁電流の最大値と最小値との差が算出される。ステップS201の後、処理はステップS202に移行する。
ステップS202では、励磁電流の振幅Aiが所定値A1以下であるか否かが判定される。ステップS202の判定が肯定された場合(S202:Yes)、処理はステップS203に移行する。一方、ステップS202の判定が否定された場合(S202:No)、処理はステップS109に移行する。
ステップS203では、ステップS108で設定されたディザ電流値Idのディザ周期が所定時間だけ短くなるように変更される。ステップS203の後、処理はステップS109に移行する。
図13には、ある運転状態のときのディザ周波数と出力油圧の周波数との関係を実線で示し、またディザ周波数と出力油圧の脈動幅との関係を一点鎖線で示す。出力油圧の周波数は、ディザ周波数が150[Hz]以下の場合にはディザ周波数が高くなるとそれに追従して高くなるが、ディザ周波数が160[Hz]より大きい場合には所定値に落ち着く。そして、出力油圧の脈動幅は、ディザ周波数が90[Hz]以下の領域(以下、「発振領域」と記載する。)にある場合には比較的大きくなるが、ディザ周波数が100[Hz]以上の領域(以下、「脈動低減領域」と記載する。)にある場合には大幅に低減する。設定変更部63が用いる「所定時間」は、ディザ周波数が発振領域から脈動低減領域に変わるような値として運転状態ごとに予め実験的に求められている。
図13においてディザ周波数が90[Hz]であるときの励磁電流および出力油圧の時系列変化を図14に示し、またディザ周波数が100[Hz]であるときの励磁電流および出力油圧の時系列変化を図15に示す。図14に示すように出力油圧の脈動幅が比較的大きい場合、励磁電流の振幅Ai(1)は比較的小さくなる。これに対して、図15に示すように出力油圧の脈動幅が比較的小さい場合、励磁電流の振幅Ai(2)は比較的大きくなる。脈動判定部62が用いる「所定値A1」は、振幅Ai(1)よりも大きく且つ振幅Ai(2)よりも小さい値として、基本電流値Ibおよび運転状態ごとに予め実験的に求められている。
以上説明したように、第2実施形態による電流制御装置60の目標設定手段61は、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧が脈動しているか否かを脈動判定部62が判定し、脈動していると判定された場合、設定変更部63がディザ電流値Idのディザ周期を所定時間だけ短くなるように変更する。これにより、ディザ周波数が発振領域から脈動低減領域に変わり、リニアソレノイドバルブ94の出力油圧の脈動を低減することができる。
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、ディザ周期はPWM周期の複数倍に設定されてもよい。要するに、ディザ周期はPWM周期よりも長ければよい。
本発明の他の実施形態では、ディザ設定部は、油圧回路の油温に応じてディザ周期を設定するか、あるいは油圧回路の油温に応じてディザ振幅およびディザ周期を設定してもよい。
本発明の他の実施形態では、第1設定周期および第2設定周期はPWM周期より長くてもよい。要するに、第1設定周期および第2設定周期はディザ周期よりも短ければよい。例えば、ディザ周期がPWM周期の10倍に設定される場合、第1設定周期および第2設定周期はPWM周期の2倍に設定される等、種々の形態が考えられる。
本発明の他の実施形態では、第2設定周期は第1設定周期と異なっていてもよい。
前述の実施形態では、ディザ電流値は、半ディザ周期ごとに大小を繰り返すように変化していた。これに対し、本発明の他の実施形態では、ディザ電流値は、3つ以上の値を順に繰り返すように変化してもよい。例えば、ディザ電流値は、1/4周期ごとに中間値、最大値、中間値、最小値、中間値と繰り返すように変化してもよい。
本発明の他の実施形態では、ソレノイドの環境温度の関連値は、油圧回路の油温に限らず、例えば外気温などの他のパラメータであってもよい。
第2実施形態では、「励磁電流の振幅Ai」は、直近の1ディザ周期における実際の励磁電流の最大値と最小値との差であった。これに対して、本発明の他の実施形態では、「励磁電流の振幅Ai」は、直近の1ディザ周期における実際の励磁電流の平均値の最大値と最小値との差であってもよい。また、励磁電流のうち、目標電流値の最小値に対応する電流を第1励磁電流とし、目標電流値の最大値に対応する電流を第2励磁電流とすると、本発明の他の実施形態では、「励磁電流の振幅Ai」は、直近の1ディザ周期における第2励磁電流の平均値と第1励磁電流の平均値との差であってもよい。
第2実施形態では、設定変更部63は、出力油圧の脈動が判定された場合、ディザ周期を所定時間だけ短くしていた。これに対して、本発明の他の実施形態では、設定変更部は、出力油圧の脈動が判定された場合、例えばディザ周期を長くしてもよいし、ディザ電流値の振幅を変更してもよい。また、設定変更部がディザ周期を短くするか長くするかを運転状態によって変えてもよい。
本発明の他の実施形態による電流制御装置は、リニアソレノイドバルブ以外の機能品のソレノイドにも適用可能である。上記機能品には、油圧制御弁だけでなく、例えば圧力または流量などを制御する電磁弁が含まれる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
10,60・・・電流制御装置
20・・・目標設定手段
30・・・デューティ比設定手段
40・・・PWM信号生成手段
50・・・駆動回路
95・・・ソレノイド
It・・・目標電流値
Rd・・・デューティ比
Spwm・・・PWM信号

Claims (12)

  1. ソレノイド(95)の励磁電流を制御する電流制御装置(10、60)であって、
    前記励磁電流の目標値である目標電流値(It)を設定する目標設定手段(20、61)と、
    前記ソレノイドの駆動回路(50)に出力されるPWM信号(Spwm)のデューティ比(Rd)を前記目標電流値に基づき設定するデューティ比設定手段(30)と、
    前記PWM信号を生成するPWM信号生成手段(40)と、
    を備え、
    前記目標電流値は、前記PWM信号のパルス周期であるPWM周期(Tpwm)よりも長いディザ周期(Td)で周期的に変化する値であり、
    前記目標設定手段が前記目標電流値を設定する周期を第1設定周期(T1)とし、前記デューティ比設定手段が前記デューティ比を設定する周期を第2設定周期(T2)とすると、前記第1設定周期および前記第2設定周期は前記ディザ周期よりも短いことを特徴とする電流制御装置。
  2. 前記第1設定周期および前記第2設定周期は前記PWM周期以下であることを特徴とする請求項1に記載の電流制御装置。
  3. 前記第2設定周期は前記第1設定周期と等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の電流制御装置。
  4. 前記目標設定手段は、
    前記ソレノイドの所望の作動状態に対応する基本電流値(Ib)を設定する基本設定部(21)と、
    前記ソレノイド内の可動鉄心を微振動させる振動成分であり、前記ディザ周期で周期的に変化するディザ電流値(Id)を設定するディザ設定部(25)と、
    前記基本電流値と前記ディザ電流値とを加算して前記目標電流値を算出する目標算出部(26)と、
    を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電流制御装置。
  5. 前記ディザ設定部は、前記ソレノイドの環境温度の関連値(Toil)に応じて前記ディザ電流値の振幅(Ad)または前記ディザ周期を設定することを特徴とする請求項4に記載の電流制御装置。
  6. 前記目標設定手段(61)は、
    前記励磁電流の振幅(Ai)が所定値(A1)以下であるか否かを判定する脈動判定部(62)と、
    前記励磁電流の振幅が所定値以下であると前記脈動判定部により判定された場合、前記ディザ設定部が設定した前記ディザ電流値の振幅または前記ディザ周期を変更する設定変更部(63)と、
    を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の電流制御装置(60)。
  7. 前記デューティ比設定手段は、
    前記励磁電流の1PWM周期の平均値であるPWM平均電流値(Iave1)を算出するPWM平均算出部(31)と、
    前記目標電流値と前記PWM平均電流値との偏差(ΔI1)に基づき前記デューティ比を設定するフィードバック制御部(34)と、
    を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電流制御装置。
  8. 前記目標設定手段は、
    前記励磁電流の1ディザ周期の平均値であるディザ平均電流値(Iave2)を算出するディザ平均算出部(22)と、
    前記基本電流値と前記ディザ平均電流値との偏差(ΔI2)に基づき当該基本電流値を補正する補正部(24)と、
    を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電流制御装置。
  9. 前記ソレノイドは、圧力を制御するリニアソレノイドバルブ(94)を構成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電流制御装置。
  10. 前記リニアソレノイドバルブはスプール式であることを特徴とする請求項9に記載の電流制御装置。
  11. 前記リニアソレノイドバルブは、変速機(90)の油圧アクチュエータ(91)に供給される作動油の圧力制御に用いられる油圧制御弁であることを特徴とする請求項9または10に記載の電流制御装置。
  12. コンピュータを、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電流制御装置を構成する各手段として機能させるための電流制御プログラム。
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