JP7285675B2 - 回転杭、回転杭の施工治具、および回転杭の施工方法 - Google Patents
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Description
ここで、地盤補強に用いる杭としては、コンクリート製の杭と、鋼管製の杭を用いる場合がある。
コンクリート製の杭を用いた技術としては、たとえば特許文献1および特許文献2に記載の技術が知られている。
また、鋼管を用いた回転杭では、オーガーモーター等の回転せん断力を鋼管杭自体で先端の掘削羽根に伝達しなければならない。このため、回転杭に通常必要とされる設計上の支持耐力に応じた鋼管よりも、肉厚寸法の大きな鋼管を用いて回転杭を製造しなければならず、回転杭の部材コストが向上してしまうという課題がある。
具体的には、回転せん断力伝達部は、前記内挿部の筒状内部に突出して設けられる係合突出部を備えるのが好ましい。
また、鋼管本体が回転体と結合されることにより、回転体の掘削羽根が硬質地盤を掘削した後、掘削羽根のアンカー効果を鋼管本体に伝達することができ、回転杭の地盤支持強度を向上させることができる。
本発明では、鋼管本体を蓋部で塞ぐことにより、鋼管本体内部に掘削した土砂が流れ込むことを防止できる。したがって、掘削した土砂を鋼管本体の外周面に排出することが可能となるため、鋼管本体の周面摩擦力が向上し回転杭の地盤支持強度が一層向上する。
本発明によっても前述した作用および効果と同様の作用および効果を享受できる。
回転杭1は、砂質地盤、粘土質地盤等の軟弱地盤に埋設され、地盤の長期許容鉛直支持力を補強する地盤補強材として機能したり、軟弱地盤上に建設される軽量建築物の長期許容支持力を保持する杭として機能する。
回転杭1は、図1に示すように、鋼管本体2と、回転体3とを備える。
鋼管本体2の掘削方向先端には、回転体3が設けられている。回転体3は、自己が回転することにより地盤を掘削して鋼管本体2を土中に埋設する。
鋼管本体2の上端には継手部材4が設けられ、回転杭1の掘削深度に応じて継手部材4の上部に図示しない鋼管杭が接続される。継手部材4は、図1では図示を略したが、内継手管、外継手管、および連結ピンを備える。鋼管本体2の上部に外継手管を取り付け、鋼管杭の下端に内継手管を取り付け、外継手管に内継手管を挿入した後、連結ピンを外継手管および内継手管の間に挿通して固定し、鋼管本体2と鋼管杭とを連結する。
内挿部31は、鋼管本体2の下端開口から内部に挿入され、鋼管本体2の肉厚寸法よりも大きな肉厚寸法を有する円筒状の鋼管から構成される。たとえば、鋼管本体2の肉厚寸法が3.2mmの場合に、内挿部31の肉厚寸法が5mmのSTK400、STK490等の一般構造用円形鋼管を採用できる。内挿部31の挿入方向の奥行き寸法は、たとえば130mmに設定される。
内挿部31の外周面と鋼管本体2の内周面との間は、軸方向に4箇所、円周方向に4箇所でスポット溶接34により接合される。なお、内挿部31および鋼管本体2の結合は、スポット溶接34に限定されず、螺合構造等の機械式結合であってもよい。
それぞれの係合突出部35は、たとえば断面矩形状の棒状鋼から構成される。なお、係合突出部35は、断面矩形状の棒状鋼だけでなく、鉄筋等に用いられる棒状鋼を採用してもよい。
係合突出部35は、内挿部31の円筒の軸方向に沿って設けられ、内挿部31の上端から内挿部31の円筒軸方向の途中までの長さ寸法とされる。つまり、係合突出部35の下端と内挿部31の下端との間には、隙間が形成される。
蓋部32は、内挿部31の鋼管径よりも大きな円形鋼板から構成され、たとえば厚さ寸法6mmのSM490A、SS400等の一般構造用圧延鋼板から構成される。蓋部32の外周縁は、鋼管本体2の下端面から外側にはみ出ている。つまり、回転杭1を回転させて掘削した際の土砂は、蓋部32によって塞がれるため、鋼管本体2の内部には流れ込まずに鋼管本体2の外周側に排出され、鋼管本体2の外周面に作用する周面摩擦力を大きくして回転杭1の支持強度を向上させる。
掘削部33は、外周形状が鋼管本体2と同径の円筒鋼管から構成され、たとえば肉厚寸法が6mmのSTK400、STK490等の一般構造用円形鋼管を採用できる。掘削部33の外周面には、掘削羽根38が溶接により接合される。
掘削羽根38は、回転杭1の軸と同軸のらせん羽根として構成され、本実施の形態では1巻きのらせん羽根として構成される。なお、掘削羽根38は、1巻きでなく2巻き以上のらせん羽根として構成してもよく、さらには二重らせん羽根として構成してもよく、要するに掘削羽根の本数、形状は、要求される掘削能力に応じて適宜決定すればよい。
施工治具5は、鋼管本体2の上部に設けられたオーガーモーターの回転トルクを回転体3に伝達し、回転体3を回転させることにより地盤を掘削するための治具であり、六角接合部51、回転軸部52、および結合部53を備える。
回転軸部52は、六角接合部51に作用する回転せん断力を、掘削方向先端に設けられた結合部53に伝達する。回転軸部52は厚肉の鋼管であり、少なくとも回転杭1の鋼管本体2の上端から回転体3までに達する長さ寸法を有し、鋼管本体2の上部で作用させた回転せん断力を回転体3まで伝達して、回転体3により地盤を掘削する。
回転軸部52の鋼管径、肉厚寸法は、回転杭1の回転体3に作用する回転トルク、および掘削中に鋼管本体2の外周面に作用する周面摩擦力に耐えられる寸法に設定される。
内側部材55は、回転軸部52と同様の厚肉円筒鋼管から構成され、基端が回転軸部52と軸を合わせて隅肉溶接57により接合される。
外側部材56は、内側部材55の外周を囲むように配置される円筒鋼管から構成され、円筒鋼管の下端および上端は、隅肉溶接58によって内側部材55の外周面に接合される。
窓部56Aの長手方向(回転杭1の軸方向)の寸法は、前述した係合突出部35の長さ寸法よりもわずかに長くなっている。
切欠部56Bには、図2(B)に示すように、回転体3の係合突出部35が挿入される。係合突出部35は、切欠部56Bに挿入された後、窓部56Aの上端縁に当接し、外側部材56が回転すると、窓部56Aの端部に収容され、結合部53と結合する。
まず、図4(A)に示す状態で、回転杭1の内部に施工治具5を挿入し、回転杭1および施工治具5を連結する。回転杭1と施工治具5の連結は、回転体3の係合突出部35を、施工治具5の結合部53の切欠部56Bから窓部56Aに挿入し、所定角度回転させて行う(図3参照)。
次に、杭打ち機6のオーガーモーター61の回転軸の先端に設けられたキャップと、施工治具5の六角接合部51とをボルトナットにより連結する。
この状態で杭打ち機6のオーガーモーター61を駆動して、回転杭1を回転させるとともに圧入機62を駆動させて回転杭1の地盤掘削を行い、図4(C)に示すように、回転杭1を地盤中に埋設する。
回転杭1の地盤への打込長さが足りない場合、図4(C)において、回転杭1の杭頭を地表から露出させた状態で、回転杭1の杭頭に継手部材4を装着する。
続けて、施工治具5の回転軸部52を延長し、回転杭1の上部に施工する鋼管杭(図示略)に挿入し、回転杭1の内部に施工治具5を挿入して結合部53に係合突出部35を係合させる。そして、オーガーモーター61および圧入機62による地盤掘削を行って、鋼管杭を地盤中に埋設する。
地盤の強度は地盤の土質によって異なり、地盤強度は、標準貫入試験から求められるN値によって評価することができる。
一方、回転杭の掘削に必要な回転せん断力(以下回転トルクともいう)は、N値に応じて変化する。たとえば図5(A)、(B)に示すように、N値の大きな土質の地盤では掘削に要する回転トルクは大きくなり、N値の小さな土質の地盤では掘削に要する回転トルクは小さくなる傾向にある。
たとえば、支持層の地盤強度のN値を15、杭径をφ114.3mm、掘削羽根径を杭径の2.5倍とした場合、長期鉛直許容支持力は37kN、必要回転トルクは4.55kN・mと算出される。
一方、求められた必要回転トルクに基づいて、回転杭の鋼管本体に必要な肉厚寸法を算出すると、肉厚寸法は2.0mmとなる。
さらに、支持地盤の途中にN値=20の中間層が存在した場合、回転杭は中間層を貫通する必要があるため、必要回転トルクは6.06kN・mとなり、鋼管本体に必要な肉厚寸法は2.6mmとなる。
ところで、回転杭の掘削施工時の回転トルクが作用する割合は、80%が掘削羽根の掘削トルクであり、残り20%が回転杭の鋼管本体の周面摩擦力であることが知られている。
したがって、回転杭1の掘削施工時に必要な回転トルクのほとんどが施工治具5を介して回転体3に伝達されるので、鋼管本体2の肉厚寸法は、掘削時の回転トルクを考慮することなく、回転杭1の長期鉛直許容支持力に基づいて定めることができる。
よって、従来の回転杭と比較して回転杭1の鋼管本体2の肉厚寸法を、前述の場合であれば2.6mmから1.8mmに薄くすることができ、回転杭1の部材コストを低減できる。
さらに、鋼管本体2が回転体3と結合されることにより、回転体3の掘削羽根38が硬質の支持地盤を掘削した後、掘削羽根38のアンカー効果を鋼管本体2に伝達することができ、回転杭1の地盤支持強度を向上させることができる。
前述の実施の形態では、回転体3の内挿部31の内面に2箇所係合突出部35を設けていたが、本発明はこれに限られない。たとえば、内挿部31の内面に2箇所以上の係合突出部35を設けてもよい。ただし、すべての係合突出部35を結合部53に係合させるためには、回転杭1の回転軸回りに均等に設けるのが好ましい。
前述の実施の形態では、内挿部31に係合突出部35を設け、係合突出部35を施工治具5の窓部56Aに結合させていたが、本発明はこれに限られない。たとえば、内挿部31の上端面に係合構造を形成し、これに施工治具の結合部が結合するようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成出来る範囲で他の構造等としてもよい。
Claims (4)
- 鋼管本体と、前記鋼管本体の掘削方向先端に設けられ、回転することにより地盤を掘削する回転体とを備えた回転杭であって、
前記回転体は、
前記鋼管本体よりも肉厚の鋼管から構成され、前記鋼管本体の内部に挿入される筒状の内挿部と、
前記内挿部の掘削方向先端に設けられ、外周に掘削羽根が設けられた掘削部と、
前記内挿部に設けられ、前記掘削部を回転させるトルクを前記掘削部に伝達する回転せん断力伝達部と、を備え、
前記鋼管本体および前記回転体が結合され、
前記回転せん断力伝達部は、前記内挿部の筒状内部に突出して設けられ、前記内挿部の円筒の軸方向に沿って延びる係合突出部を備える回転杭。 - 請求項1に記載の回転杭において、
前記回転体は、前記内挿部および前記掘削部の間に設けられ、前記鋼管本体の端面を塞ぐ蓋部を備える回転杭。 - 請求項1または請求項2に記載の回転杭を施工するための回転杭の施工治具であって、
前記鋼管本体の内部に挿入され、掘削方向基端側に生じたトルクを掘削方向先端に伝達する回転軸部と、
前記回転軸部の掘削方向先端に設けられ、前記回転せん断力伝達部と結合する結合部とを備える回転杭の施工治具。 - 鋼管本体と、前記鋼管本体の掘削方向先端に設けられ、回転することにより地盤を掘削する回転体とを備えた回転杭の施工方法であって、
請求項1または請求項2に記載の回転杭の鋼管本体に、請求項3に記載の回転杭の施工治具の回転軸部を挿入する工程と、
前記回転杭の前記回転せん断力伝達部に、前記施工治具の前記結合部を結合する工程と、
前記回転杭および前記施工治具を結合させた状態で、前記回転軸部に回転せん断力を作用させる工程とを実施する回転杭の施工方法。
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