JP2004052538A - 螺旋羽根付き既製杭を用いた基礎杭構造、螺旋羽根付き既製杭の施工方法、螺旋羽根付き既製杭、推進用ケーシング - Google Patents

螺旋羽根付き既製杭を用いた基礎杭構造、螺旋羽根付き既製杭の施工方法、螺旋羽根付き既製杭、推進用ケーシング Download PDF

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Abstract

【課題】下端部の螺旋羽根で既製杭を地盤に埋設する基礎杭構造で、既製杭にねじれを発生させず、地盤を締め固め、安定かつ確実な支持力を確保する。
【解決手段】既製杭12は、コンクリート製の杭基体1の下端部に、螺旋羽根7付きの短鋼管6を有する。既製杭12に、螺旋羽根16付きの推進用ケーシング18を装着する。掘削機のオーガー20で推進用ケーシング18を正回転し、回転力を既製杭12の下端部に伝えて掘進する(a)(b)。既製杭12の杭基体1の軸部には捻りはほとんど生じない。所定深さまで既製杭12を沈設した後(c)、オーガ20の逆回転により、既製杭12から分離した推進用ケーシング18を引き上げる(d)。推進用ケーシング18の螺旋羽根16で、既製杭12の外側の地盤を締め固めながら地上に引き上げる(e)。既製杭12の中空部2にコンクリート22を注入して、基礎杭構造23を構築する(f)。
【選択図】図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、建造物の下方に構築される基礎に関するものであり、特に螺旋羽根付きの既製杭を用いた基礎杭構造、この基礎杭構造を生産する方法である螺旋羽根付き既製杭の施工方法、基礎杭構造を築造する物でありかつこの施工方法に使用する螺旋羽根付きの既製杭、推進用ケーシングに関する。
【0002】
【従来の技術】
既製杭の中空部に駆動軸を挿入し、該駆動軸を、既製杭の下端に固着された掘削用の先端金具に伝達して静荷重を加えながら既製杭を回転圧入する方法が提案されている(第一の従来例。特許文献1)。
【0003】
また、他の従来例では、軟弱地盤の基礎として、鋼管の外面にスパイラルウイングを複数、不連続に取付け、先端に先端金具や掘削補助金具を取り付けた小口径鋼管杭も提案されている(第二の従来例。特許文献2)。
【0004】
また、他の従来例では、鋼管に内角の総和が360°になるように形成された扇状平板を形成した翼付きねじ込み鋼管杭が提案されている(第三の従来例。特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平2−132215
【0006】
【特許文献2】特開平1−142122
【0007】
【特許文献3】特開平10−102489
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記第一の従来例では、杭自身の回転により押し込みするので、掘削地盤の土質変動に対する杭の回転貫入時の押し圧、回転負荷などを調節・制御することが必要であり、先端からの注水等で掘削速度も工夫されているが、固有の制御装置が必要である上に、掘削土の排土処理及び抗基礎の各種耐力など課題も多く使用範囲が狭かった。また、得られる周面摩擦力、鉛直支持力は、既製杭の径に応じた値しか得られない問題点があった。
【0009】
また、第二の従来例では、鋼管杭を直接に杭打ち機のオーガで回転して埋設するので、掘削時に鋼管杭の上端で与えられた回転力が、先端金具に伝えられて掘削する方法である。従って、鋼管軸部が一体で該肉厚が一定であり鋼管が回転駆動の捻りに破壊されないようにするために使用範囲が限定されている。また、構造的に鋼材自身の肉厚を調節して、曲げモーメントはある程度満足しても、鉛直方向耐力の点に関しては杭材の圧縮力が不足するため、通常、杭径はせいぜい50〜60cm程度しか使用されていなかった。従って、高強度地盤あるいは大径杭が必要な重量建造物等の施工では使用範囲が限られていた。
【0010】
また、第三の従来例も、ねじ込み時の反力に対しては工夫されているとは言え、鋼管杭を直接に杭打ち機のオーガで回転して埋設するので、前記第二の従来例と同様の問題点があった。
【0011】
従って、この発明では、先端部に螺旋羽根を有する既製杭を地盤中に回転しながらねじ込むことにより、掘削土の排出を軽減すると共に、以下の課題を目的とする。
【0012】
(1) 既製杭の先端部に形成された螺旋羽根を使用して捻じ込む際に、杭打ち機の能力を増強することなく、既製杭を押し込む圧力を増強し、高強度地盤あるいは外径1m程度の大径杭等であっても、高回転駆動力でも既製杭を破損することなく施工できるようにすること。
逆をいえば、既製杭自体の捻りの負荷を減らして、捻りに対向する為の材料選定ではなく、鉛直支持力及び水平耐力の側からの合理的な材料選定をできるようにすること。
(2) 既製杭の先端部に形成した大径の螺旋羽根による高支持力に見合った杭軸部の水平耐力、圧縮耐力を容易に提供できること。即ち、同材質の既製杭を使用して、既製杭の下端部の口径と、既製杭の上部及び中間部(軸部)の口径とを同等に形成できるようにすること。
また、少なくとも従来の鋼管杭より圧縮力を増強してコンクリート杭並とし、高先端支持力とバランスの取れた杭軸部の耐力を確保すること。
(3) 先端部に螺旋羽根が形成された既製杭において、既製杭周辺の地盤に関して、従来の螺旋羽根の捻じ込み後の地盤強度を更に強化し、杭基礎の鉛直支持力などの耐力を総合的に増強すること。
【0013】
【課題を解決するための手段】
然るにこの発明では、螺旋羽根等の推進手段を有する推進用ケーシングを螺旋羽根を有する既製杭の外側に装着して、下端部で互いを係止して掘削するので、前記各問題点を解決した。
【0014】
即ち、この発明は、下端部に螺旋羽根を形成し、下端を塞いだ中空部を有する既製杭を所定位置に埋設し、前記螺旋羽根の上方で、前記既製杭の外側面に沿って埋設された掘削土を締め固め、前記中空部内に水硬性セメント材料を充填したことを特徴とする螺旋羽根付き既製杭を用いた基礎杭構造である。
【0015】
また、施工方法の発明は、以下の工程をとることを特徴とした螺旋羽根付き既製杭の施工方法である。
(1) 先端に螺旋羽根を有する中空の既製杭の外周に、推進手段を有する推進用ケーシングを装着する。
(2) 前記推進用ケーシングを正回転し、その正回転を既製杭の下端部に伝達して既製杭の螺旋羽根により地盤を掘進すると共に、螺旋羽根の直上で掘削土を保持して、推進用ケーシングの外側周辺に緩い掘削土層を形成する。
(3) 所定の深さに既製杭の先端が至った状態で、前記推進用ケーシングを逆回転しながら、前記推進手段で、既製杭の外周の緩い掘削土層を締め固めながら地上まで引き抜く。
(4) 続いて、前記既製杭の中空部内に水硬性セメント材料を充填して、該水硬性セメント材料が固化した状態で、基礎杭構造を形成する。
【0016】
また、他の施工方法の発明は、以下の工程をとることを特徴とした螺旋羽根付き既製杭の施工方法である。
(1) 先端に大径螺旋羽根を有する中空の既製杭の外側に、先端に小径螺旋羽根を有する推進用ケーシングを装着する。
(2) 前記小径螺旋羽根を前記大径螺旋羽根の直上に位置させて、前記推進用ケーシング及び既製杭を正回転して地盤を掘進する。
(3) 所定の深さに既製杭の先端が至った状態で、前記推進用ケーシングを逆回転しながら、既製杭の外周の緩い掘削土層を締め固めつつ、地上まで引き抜く。  (4) 続いて、前記既製杭の中空部内に水硬性セメント材料を充填して、該水硬性セメント材料が固化した状態で、基礎杭構造を形成する。
【0017】
また、前記において、推進用ケーシングを正回転した際に、該推進用ケーシング下端の係脱手段と既製杭の螺旋羽根の上方の係脱手段とを係止して、前記推進用ケーシングと既製杭とを共に正回転させ、前記推進用ケーシングを逆回転した際に、前記既製杭との係脱手段を解除して、前記推進用ケーシングを前記既製杭から分離することを特徴とした螺旋羽根付き既製杭の施工方法である。
【0018】
また、既製杭の発明は、下端を閉塞した中空部を有する杭基体の下端部外側面に螺旋羽根を形成し、該螺旋羽根の直上部に、前記杭基体に装着される推進用ケーシングとの係脱手段を形成し、前記螺旋羽根は、杭基体の正回転で掘進する方向に形成されたことを特徴とする既製杭である。
【0019】
また、他の既製杭の発明は、下端を閉塞した中空部を有する杭基体の下端部外側面に螺旋羽根を形成し、該杭基体に、鋼管からなる推進用ケーシングを回動及び上下摺動可能に装着し、前記推進用ケーシングの下端と、前記杭基体の外側面であって、前記螺旋羽根の直上部とに、互いに係脱する係脱手段を夫々形成し、前記推進用ケーシングの下端部外側面に、螺旋羽根を形成し、前記両螺旋羽根は、杭基体及び推進用ケーシングの正回転で掘進する方向に形成されたことを特徴とする既製杭である。
【0020】
また、前記において、推進用ケーシングを正回転すると、該推進用ケーシングと杭基体とは係止して一方向に回転し、前記推進用ケーシングを逆回転すると、推進用ケーシングと杭基体との係止を解除して、前記推進用ケーシングが前記杭基体から分離可能となるように、係脱手段が作用することを特徴とする既製杭である。また、コンクリート製の杭基体の下端部に、外周に螺旋羽根を形成した有底の短鋼管を嵌装固着し、該短鋼管の上縁部に係脱手段を形成したことを特徴とする既製杭である。また、推進用ケーシングの螺旋羽根は、杭基体の螺旋羽根の直上部に位置すると共に、該杭基体の螺旋羽根より小径に形成したことを特徴とする既製杭である。
【0021】
更に、推進用ケーシングの発明は、既製杭の上方から嵌装して、回動及び上下に摺動可能な内径を有する鋼管の下端に、形成杭との係脱手段を形成し、該鋼管の下端部外周に螺旋羽根を形成したことを特徴とする推進用ケーシングである。
【0022】
前記における水硬性セメント類とは、各種セメント材料に、必要ならば求める強度に応じた各種骨材を混ぜて、セメントミルク、セメントモルタル、コンクリート等を生成したものをいう。
【0023】
【発明の実施の形態】
(1) 既製杭12は、中空部2を有する既存のコンクリート製又は鋼管製等の杭基体1の下端部に、螺旋羽根7を形成した短鋼管6を嵌装固着して、構成する(図1)。螺旋羽根7は、通常は、1周分が形成されていれば、充分である。螺旋羽根7の直上部分、通常は短鋼管6の上縁に、推進用ケーシングとの係脱手段(凸ねじ)10を設ける。
【0024】
杭基体1として鋼管杭や、外側に鋼管を被覆したコンクリート杭を使用した場合には、直接に外側面に螺旋羽根7を形成することもできるが、短鋼管6を使用すれば、既製杭の下端部を短鋼管で補強でき、既存の杭基体に容易に大径の螺旋羽根7を構成でき、更に短鋼管6を使用して係脱手段10の形成が容易である。
【0025】
(2) 推進用ケーシング18は、鋼管14の下端部に、推進手段(地盤の締め固め手段及び補助掘削手段)としての螺旋羽根(推進手段)16を形成して構成する(図2)。鋼管14の下端に既製杭との係脱手段(凹ねじ)15を形成する。また、螺旋羽根16(外径D11)は、既製杭12の螺旋羽根7(外径D)より小径に形成する(D11<D)ことが望ましい(図3)。
【0026】
鋼管14は、既製杭12の杭基体1の外側に装着して、既製杭12と分離して回動及び上下移動できることが必要であり、かつ、既製杭12の外径をできるだけ大きくとれるようにする必要がある。従って、鋼管14の内径は、既製杭12の杭基体1の外径と同等で、若干大きく形成する。
【0027】
(3) 推進用ケーシング18の下端側から既製杭12の上端側を挿入して、既製杭12に推進用ケーシング18を装着する。推進用ケーシング18を相対的に正回転することにより、両係脱手段10、15を係止状態とする(図3(a))。通常は互いに螺合するねじで係脱手段を形成するが、フックと突起の組合せなどとすることもできる。要は、推進用ケーシング18を正回転することにより、容易に係止状態とすることができ、かつ地盤内で逆回転して、容易に係止状態を解除できる構成であればよい。
【0028】
(4) 掘削機のオーガー20に推進用ケーシング18と既製杭12を支持して、推進用ケーシング18の上端部を正回転することにより、回転力を推進用ケーシング18の下端部から係脱手段10、15を介して、既製杭12の下端部に伝えて掘進する(図4(a)(b))。従って、既製杭12の杭基体1の軸部には捻りはほとんど生じない。
【0029】
地盤中では、既製杭12の螺旋羽根7のねじ込みにより地盤を掘削して掘進できるが、推進用ケーシング18の螺旋羽根16も補助的に掘削に作用する。即ち、既製杭12の螺旋羽根7により掘削土は上方に上げられ、直上に位置する推進用ケーシング18の螺旋羽根16によりさらに上方に上げられるので、既製杭12の螺旋羽根7による掘削効率を確保できる。従って、既製杭12の螺旋羽根7により掘削除去された掘削土は、螺旋羽根7の直上に送られ、更に、推進用ケーシング18の螺旋羽根16に取らえられ、破砕されて上方に送られるが、螺旋羽根16が1周しか設けられていないので、各深さで螺旋羽根16の直上部に留まることになる。
【0030】
(5) このようにして、所定深さまで既製杭12を沈設したならば(図4(c))、オーガ20の回転を逆回転に切換える。逆回転により、係脱手段10、15の係止が解除され、既製杭12から分離された推進用ケーシング18を引き上げる(図3(b)、図4(d))。この際、逆転しながら引き上げれば、推進用ケーシング18の引き上げにより既製杭12の外側に推進用ケーシング18の跡が空隙として生じ、この既製杭12の外側の空隙である緩く残置された掘削土を、螺旋羽根16の下面で締め固めることができる。また、螺旋羽根16の径D11を既製杭12の螺旋羽根7の径Dより小さく形成することにより、掘削土の締め固めに併せて、引き抜き駆動用のオーガの負荷を螺旋羽根16の面積比より以上に軽減できる。尚、この時、推進用ケーシング18を引き上げるオーガ20の回転数w(r.p.m.)、引き上げ速度v(cm/min.)、螺旋羽根16の上下のずれd(cm)(図2(a))、とを適宜調節すれば、より効率的かつ確実な締め固めができる。
【0031】
即ち、引き上げ速度vを(w×d)より遅くすれば、全地層が確実に締め固めされると共に、v/(w×d)を、例えば、
v/(w×d)=1/2
等の一定の値に固定することにより、地盤の締め固め度を一定とすることができ、安定した周辺摩擦力が得られる。従って、全敷地に亘って、各基礎杭構造で、均一な支持力を得られる。
【0032】
(6) 推進用ケーシング18を地上に引き上げた後(図4(e))、既製杭12の中空部2にコンクリート22を注入して、コンクリート22が固化発現後、基礎杭構造23を構築する(図4(f))。また、引き上げた推進用ケーシング18は、他の既製杭12の埋設に使用できる。
【0033】
また、既製杭12に捻れ応力はほとんど生じないので、杭基体1の材質・形状・大きさ・肉厚等は、捻れに対する耐力を考慮することなく、基礎杭構造23として求める所望の鉛直支持力、水平耐力等に応じて設定できる。
【0034】
(7) 前記において、推進用ケーシング18の螺旋羽根16を既製杭12の螺旋羽根7(外径D)より小径に形成した(D11<D)とした理由は以下の内容である。推進用ケーシング18の螺旋羽根16は、既製杭12をねじ込む際に、掘削を補助する効果も多少あるが、主目的は、推進用ケーシング18を引き抜く際の土の埋め戻し等にあるからである。即ち、螺旋羽根16付きの推進用ケーシング18と共に螺旋羽根7付きの既製杭12を所定深度までねじ込みした後に、推進用ケーシング18を地上へ引き抜く際に、推進用ケーシング18を逆回転させて、螺旋羽根16により、推進用ケーシング18を抜いた跡の空隙(緩く残置された掘削土)に土を戻し込み、かつ締め固めして、結果として既製杭12の周辺地盤を補強することを主目的とする。
【0035】
従って、推進用ケーシング18の螺旋羽根16は、支持力を高める為に使用する既製杭12の螺旋羽根7と異なって、推進用ケーシング18を上昇させて抜いた跡の空隙部分に土を戻し込み、地盤を締め固めるために使用するので、螺旋羽根16は螺旋羽根7ほどに大径にする必要はなく、より小径で充分に機能を果たすことができる。また、螺旋羽根16は螺旋羽根7より小径であるので、既製杭12と共にねじ込む時及び引き抜く時に、地盤との抵抗が少なく回転の駆動負荷が少なく好都合である。つまり、締め固めの効果は、既製杭12から離れた部分を締め固めるより、既製杭12の外周に近い部分を締め固めることにより、既製杭12と地盤との一体性が高まり、効率的な締め固めの効果が発揮できる。
【0036】
また、ねじ込み時の既製杭12への負担を更に軽減して、既製杭12からより遠い部分の地盤をも締め固めて、引き抜き時の地盤の締め固めを更に強化する場合には、螺旋羽根16を螺旋羽根7と同程度の外径(D11≒D)に形成することもできる(図示していない)。また、推進用ケーシング18を推進させ、また地盤を締め固める機能を補強するために、推進用ケーシング18に複数の螺旋羽根16、16を形成することもできる(図5)。
【0037】
【実施例1】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0038】
[1]既製杭12の構成
【0039】
中空部2を有する杭基体1は、外径D、厚さt、長さHのコンクリート製とする。図中4は杭基体1の端板である。
【0040】
高さH、外径Dの短鋼管6の外側面に、外径Dの鋼製の螺旋羽根7を固着す。螺旋羽根7は、厚さtの1周分のドーナツ状の基体を一半径8で、切断したものを捻って形成する。短鋼管6は、底板9で塞がれ、埋設時に杭基体1の中空部2に土砂が入らないようになっている。また、短鋼管6の上端部外周に凸ねじ部10を形成する。
【0041】
螺旋羽根7を設けた短鋼管6を杭基体1の下端3側から嵌装固着して、既製杭12を構成する。また、既製杭12の捻り込み性(掘削効率)を良くするために、螺旋羽根7の最下端の位置を、短鋼管6の底板9の下面より下方に突出させることも容易にできる(図示していない)。
【0042】
既製杭12の寸法は、求める捻り強度等により寸法は適宜設定されるが、例えば、以下の値を採用する。
【0043】
Figure 2004052538
【0044】
[2]推進用ケーシング18
【0045】
既製杭12の杭基体1の外側に嵌装できる外径D22の鋼管14の下端内側面に、既製杭18の凸ねじ部10に螺合できる凹ねじ部15が形成されている。鋼管14の外側面に、鋼製で外径D11の螺旋羽根16を固着して、推進用ケーシング18を構成する。凹ねじ部15、凸ねじ部10は、推進用ケーシング18を正回転することにより締まり、逆回転により緩むように形成されている。また、螺旋羽根16は、厚さtの1周分のドーナツ状の基体を一半径17で、切断したものを捻って形成する。切断位置(一半径17)での螺旋羽根16は、上下端が距離dだけ離れて形成される。
【0046】
推進用ケーシングは、求める捻り強度等により寸法は適宜設定されるが、例えば、以下の値を採用する。また、引き抜きを主とする推進抵抗を調整するために、螺旋羽根の形成数も適宜変更することができる。
【0047】
Figure 2004052538
【0048】
ここで、鋼管14の内径D00のαは、既製杭12の杭基体1(外径D)に装着した状態で、鋼管14が回転及び上下移動(螺旋状移動)が可能となる隙間αが形成されれば良い。
【0049】
また、螺旋羽根16の上下端での位置のずれ寸法dは、
d=0.1×D22〜0.3×D22
で、形成される(図2(a)(b))。但し、D22は、鋼管14の外径である(D22=D00+2×t)。
【0050】
[3]施工方法
【0051】
(1) 先ず、既製杭12の上から推進用ケーシング18を嵌装して、既製杭12を覆い、推進用ケーシング18の下端の凹ねじ部15を、既製杭12の凸ねじ部10に螺合する。推進用ケーシング18の上端部を杭打ち機のオーガー20に装着し吊上げ、施工する地面21の設置地点に設置する(図4(a)、図3(a))。
【0052】
(2) オーガー20を正回転して、推進用ケーシング18を正回転させると、凹凸ねじ10、15で連結されて既製杭12も同時に、正回転する。既製杭12の螺旋羽根7と推進用ケーシング18の螺旋羽根16により、地盤を崩しながら、地盤に既製杭12及び推進用ケーシング18を押し込め貫入させていく(図4(b))。
【0053】
この際、螺旋羽根7により崩された掘削土は、上方へ上げられ、螺旋羽根16で更に破砕され、上方に移動される。螺旋羽根7により既製杭12の先端部から除去された掘削土は、螺旋羽根16により更に上方に上げられるので、螺旋羽根7による掘削効率は維持される。従って、螺旋羽根16は、螺旋羽根7の掘進補助として機能し、既製杭12及び推進用ケーシング18の貫入が容易となる。
【0054】
螺旋羽根16で破壊された掘削土は、更に上方には螺旋羽根が無いので、螺旋羽根16の直上に留まり、揚上されない。従って、推進用ケーシング18の周囲に崩された掘削土が溜まり、地上への排土がなされないあるいは排土が極めて少量となる。
【0055】
(3) 既製杭12及び推進用ケーシング18を所定深度まで掘進し、貫入したならばオーガー20の回転を止める(図4(c))。
【0056】
(4) 次に、オーガー20を逆回転させると、既製杭18は螺旋羽根7と地盤との抵抗により回転せずにあるいは若干の回転に留まり、推進用ケーシング18のみ逆回転して、凹ねじ部15と凸ねじ部10の螺合が解かれ、既製杭12から推進用ケーシング18を切り離す。引き続き、オーガー20を逆回転(回転数w(r.p.m.))させながら推進用ケーシング18を引き上げる(図4(d)、図3(b))。この逆回転により、推進用ケーシング18の螺旋羽根16により掘進時に緩んだ土砂を下方に押圧し、推進用ケーシング18の抜き跡である既製杭12の外周周辺の地盤を締め固めると共に排土を抑えることができる。
【0057】
ここで、既製杭12を埋設する周辺の地盤の所要強度等により、掘進ケーシング用18の引き上げ速度v(cm/min.)を、
v<w×d
として、引き上げ効率を考慮しつつ、引き上げ速度vをより遅くして、全地層を締め固める。この際、例えば、
v/(w×d)≦1/2
として、確実かつ一定に締め固めた地盤とする。
【0058】
(5) 推進用ケーシング18を抜き去ると、杭穴に螺旋羽根7付きの既製杭12が埋設されており、この状態で、既製杭12の中空杭2の上端(杭口)3aを地上に少し出た位置に保持される(図4(e))。従って、短鋼管6の底板9で、既製杭12の中空部2内に土砂が入ることが防止される。また、上端(杭口)3aも汚さず、中空部2内に土泥等が入らないようにようにして、後で充填する生コンクリート等の強度を低下させないようにする。
【0059】
(6) 埋設されている既製杭12の中空部2に、所定固化強度の生コンクリート(固化強度24N/mm程度)を注入し充填する。この際、トレミー管などの吐出口を中空部2の底(短鋼管6の底板9)付近まで入れて注入すれば容易に充填できる。この生コンクリート22が固化すれば本発明の基礎杭構造23が完成する(図4(f))。
【0060】
[4]他の実施例
【0061】
(1) 前記実施例において、推進用ケーシング18は、螺旋羽根16を1つ形成したが、直上に、同一形状の螺旋羽根16aを嵌装固着することもできる(図5(a))。この場合、上下の螺旋羽根16、16aは、正回転時に掘削土を連続して、上方に排土しないように、間隙25(高さH12)を設けてある。また、間隙25により、逆回転時に、掘削土を締め固める効率も高められる。
【0062】
また、螺旋羽根16と同一形状の螺旋羽根16b、16bを、鋼管14の中間部に、所定間隙26(高さH13)を設けて、嵌装固着することもできる(図5(b))。
【0063】
(2) また、前記実施例において、推進用ケーシング18と既製杭12とは、凸ねじ10、凹ねじ15とで、係脱したが、推進用ケーシング18の正回転で係止して、逆回転で係止が解除できる手段であれば、他の係止手段を使用することもできる(図示していない)。
【0064】
(3) また、前記実施例において、既製杭は、コンクリート杭としたが、外側を鋼管で被覆したコンクリート杭や鋼管杭を適用することもできる(図示していない)。この場合には、推進用ケーシング18との係脱手段を別途設ければ、短鋼管6を省略して、外側面に直接、螺旋羽根7を嵌装固着することもできる。
【0065】
(4) また、前記実施例において、推進用ケーシング18の推進手段として、螺旋羽根16を使用したが、推進用ケーシング18の押し込み時、引き上げ時等に同様の作用を発揮できれば、他の構造を採用することもできる(図示していない)。
【0066】
【発明の効果】
(1) この発明は、先端に螺旋羽根を有する中空の既製杭の外周に、推進手段を有する推進用ケーシングを装着して、推進用ケーシングの正回転を既製杭の下端部に伝達して、既製杭の螺旋羽根で地盤を掘進するので、既製杭の軸部にねじり応力をほとんど発生させないので、掘進効率が良いと共に、既製杭の設計にあたり、捻り応力を考慮することなく、水平耐力、鉛直支持力等埋設状態で既製杭に求められる性能のみで、肉厚の小さい既製杭の選定ができるので、より経済的な基礎杭構造の設計ができる効果がある。また、既製杭に捻り応力をほとんど発生させないので、埋設状態で、捻りによる残留応力の悪影響を除去できる。
【0067】
また、推進用ケーシングの推進手段と併用して掘進するので、螺旋羽根の厚さ等にもよるが、既製杭として従来の外径の2倍程度(外径1000mm程度)の既製杭を使用でき、既製杭の下端部の螺旋羽根を、杭基体の外径の1.5〜2倍程度の外径を有する螺旋羽根を使用することがきる。よって、構築される基礎杭構造は、従来の汎用される大径の鋼管杭(外径500〜600mm)に比して、2倍以上の支持力が確保できる。
【0068】
また、推進用ケーシングは、ねじり強度の大きい肉厚の鋼管を繰り返し使用するので、鋼管材料の有効利用を図ることができる効果がある。
【0069】
(2) また、下端部に螺旋羽根を形成した推進用ケーシングを使用すれば、既製杭の螺旋羽根の直上に、推進用ケーシングの螺旋羽根(推進手段)を位置させることができ、推進手段として掘削効率を高めることがき、既製杭の埋設時間を短縮できると共に、推進用ケーシングを逆回転させて引き上げれば、引き上げた推進用ケーシングの引き抜き跡に生じる緩んだ掘削土(埋設した既製杭の外側の緩んだ掘削土)を締め固めることができ、形成される基礎杭構造の周面摩擦力を高めることができる効果がある。
【0070】
また、推進用ケーシングの引き上げ速度と回転速度を適宜に組み合わせることにより、地盤強度を制御でき、安定かつ確実に所望の支持力とすることが可能である。
【0071】
更に、掘進時には、掘削土を推進用ケーシングの外側に存置し、引き上げ時には、存置した掘削土を締め固めるので、産業廃棄物として処理する掘削土を大幅に削減して、環境に優しい工法を実現できる。
【0072】
(3) また、推進用ケーシングの下端の係脱手段と短鋼管の上縁の係脱手段とを使って、推進用ケーシングから既製杭への正回転を伝達し、逆回転により係止を解除させてば、回転力の伝達が確実となり、地盤中での係止の解除も容易となる効果がある。
【0073】
(4) また、鋼板製の螺旋羽根を形成した短鋼管を、外殻鋼管コンクリート製の既製杭等の杭基体に嵌装固定(例えば、溶接による固定)すれば、コンクリート製の既製杭に容易に鋼板製の螺旋羽根を形成でき、螺旋羽根による垂直支持力を発揮する性能に、軸部に有効な圧縮力を付加できる効果がある。また、杭基体として既存の杭を使用できるので、求める基礎杭構造の性能に応じて杭基体としての既存の杭を適宜選定して容易に耐力を増強できる効果がある。
【0074】
(5) また、推進用ケーシングに小径螺旋羽根を、既製杭に大径螺旋羽根を夫々形成した場合には、押し込み時に既製杭に生じるねじれを軽減して、引き上げ時に、埋設した既製杭の少なくとも外周近辺の緩んだ掘削土を締め固めることができ、更に、推進用ケーシングの押し込み時及び引き上げ時に、駆動用のオーガの負荷をできるだけ少なくできる。従って、所望の支持力を発揮できる基礎杭構造を効率が良く構築できる効果がある。
【0075】
(6) また、総じて、杭基体としての既存の既製杭を使用して、この発明の既製杭を構成できるので、軸部を下端部より小径にすることなく、杭の軸部を下端部と同等の性能を有する構成にでき、軸部を小径にする必要が無いので、他の増強手段を使用することなくなく杭の軸部の圧縮強度、水平耐力を確保して増強できる効果がある。従って、基礎杭構造の下端で大径の螺旋羽根により発揮されるせん断力の伝搬等により発揮される鉛直支持力及び引抜力、中空部に充填されるセメント類と相まって基礎杭構造の全体により発揮される圧縮耐力、水平耐力、既製杭の外側での周面摩擦力等、全体としてバランスの良い基礎杭構造とすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施に使用する既製杭で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A線における断面図である。
【図2】この発明の実施に使用する推進用ケーシングで、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】この発明の実施に使用する既製杭に推進用ケーシングを装着した状態の一部正面図で、(a)は掘進中、(b)は既製杭の設置完了後を夫々表す。
【図4】(a)〜(f)は、この発明の施工方法を説明する概略した正面図である。
【図5】(a)(b)は、この発明の他の推進用ケーシングの正面図である。
【符号の説明】
1  杭基体
2  中空部
3  杭基体の下端
3a  杭基体の上端(杭口)
4  杭基体の下端板
6  短鋼管
7  螺旋羽根
9  底板
10 凹ねじ部
12 既製杭
14 鋼管
15 凹ねじ部
16 螺旋羽根(推進手段)
18 推進用ケーシング
20 オーガー
21 地面
22 コンクリート
23 基礎杭構造

Claims (10)

  1. 下端部に螺旋羽根を形成し、下端を塞いだ中空部を有する既製杭を所定位置に埋設し、前記螺旋羽根の上方で、前記既製杭の外側面に沿って埋設された掘削土を締め固め、前記中空部内に水硬性セメント材料を充填したことを特徴とする螺旋羽根付き既製杭を用いた基礎杭構造。
  2. 以下の工程をとることを特徴とした螺旋羽根付き既製杭の施工方法。
    (1) 先端に螺旋羽根を有する中空の既製杭の外周に、推進手段を有する推進用ケーシングを装着する。
    (2) 前記推進用ケーシングを正回転し、その正回転を既製杭の下端部に伝達して既製杭の螺旋羽根により地盤を掘進すると共に、螺旋羽根の直上で掘削土を保持して、推進用ケーシングの外側周辺に緩い掘削土層を形成する。
    (3) 所定の深さに既製杭の先端が至った状態で、前記推進用ケーシングを逆回転しながら、前記推進手段で、既製杭の外周の緩い掘削土層を締め固めながら地上まで引き抜く。
    (4) 続いて、前記既製杭の中空部内に水硬性セメント材料を充填して、該水硬性セメント材料が固化した状態で、基礎杭構造を形成する。
  3. 以下の工程をとることを特徴とした螺旋羽根付き既製杭の施工方法。
    (1) 先端に大径螺旋羽根を有する中空の既製杭の外側に、先端に小径螺旋羽根を有する推進用ケーシングを装着する。
    (2) 前記小径螺旋羽根を前記大径螺旋羽根の直上に位置させて、前記推進用ケーシング及び既製杭を正回転して地盤を掘進する。
    (3) 所定の深さに既製杭の先端が至った状態で、前記推進用ケーシングを逆回転しながら、既製杭の外周の緩い掘削土層を締め固めつつ、地上まで引き抜く。
    (4) 続いて、前記既製杭の中空部内に水硬性セメント材料を充填して、該水硬性セメント材料が固化した状態で、基礎杭構造を形成する。
  4. 推進用ケーシングを正回転した際に、該推進用ケーシング下端の係脱手段と既製杭の螺旋羽根の上方の係脱手段とを係止して、前記推進用ケーシングと既製杭とを共に正回転させ、前記推進用ケーシングを逆回転した際に、前記既製杭との係脱手段を解除して、前記推進用ケーシングを前記既製杭から分離することを特徴とした請求項2又は3記載の螺旋羽根付き既製杭の施工方法。
  5. 下端を閉塞した中空部を有する杭基体の下端部外側面に螺旋羽根を形成し、該螺旋羽根の直上部に、前記杭基体に装着される推進用ケーシングとの係脱手段を形成し、前記螺旋羽根は、杭基体の正回転で掘進する方向に形成されたことを特徴とする既製杭。
  6. 下端を閉塞した中空部を有する杭基体の下端部外側面に螺旋羽根を形成し、該杭基体に、鋼管からなる推進用ケーシングを回動及び上下摺動可能に装着し、前記推進用ケーシングの下端と、前記杭基体の外側面であって、前記螺旋羽根の直上部とに、互いに係脱する係脱手段を夫々形成し、前記推進用ケーシングの下端部外側面に、螺旋羽根を形成し、前記両螺旋羽根は、杭基体及び推進用ケーシングの正回転で掘進する方向に形成されたことを特徴とする既製杭。
  7. 推進用ケーシングを正回転すると、該推進用ケーシングと杭基体とは係止して一方向に回転し、前記推進用ケーシングを逆回転すると、推進用ケーシングと杭基体との係止を解除して、前記推進用ケーシングが前記杭基体から分離可能となるように、係脱手段が作用することを特徴とする請求項6記載の既製杭。
  8. コンクリート製の杭基体の下端部に、外周に螺旋羽根を形成した有底の短鋼管を嵌装固着し、該短鋼管の上縁部に係脱手段を形成したことを特徴とする請求項5又は6記載の既製杭。
  9. 推進用ケーシングの螺旋羽根は、杭基体の螺旋羽根の直上部に位置すると共に、該杭基体の螺旋羽根より小径に形成したことを特徴とする請求項6、7、8のいずれか1項に記載の既製杭。
  10. 既製杭の上方から嵌装して、回動及び上下に摺動可能な内径を有する鋼管の下端に、既製杭との係脱手段を形成し、該鋼管の下端部外周に螺旋羽根を形成したことを特徴とする推進用ケーシング。
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