JP7279936B2 - 電界放出素子 - Google Patents

電界放出素子 Download PDF

Info

Publication number
JP7279936B2
JP7279936B2 JP2019132010A JP2019132010A JP7279936B2 JP 7279936 B2 JP7279936 B2 JP 7279936B2 JP 2019132010 A JP2019132010 A JP 2019132010A JP 2019132010 A JP2019132010 A JP 2019132010A JP 7279936 B2 JP7279936 B2 JP 7279936B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
emitter
opening
gate electrode
field emission
emission device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019132010A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021018846A (ja
Inventor
昌善 長尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2019132010A priority Critical patent/JP7279936B2/ja
Publication of JP2021018846A publication Critical patent/JP2021018846A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7279936B2 publication Critical patent/JP7279936B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、高電界が印加されるエミッタ先端から電子を放出する電界放出素子に関する。
従来、電子を原子から外部に放出させる電子放出素子(「電子源」とも呼ぶ。)として、冷陰極型電子源と熱陰極型電子源が知られている。冷陰極型電子源は、陰極と陽極間に高電圧を印加することにより、電子に陰極から飛び出すエネルギーを与えるものである。冷陰極型電子源の1つが電界放出素子である。冷陰極型電子源に関する技術は、例えば、平面型ディスプレイ装置、超高周波管(進行波管ともいう。)等の分野で開発が進められている。例えば、複数の電界放出素子をマトリクス状に配置したアレイ状の素子として利用される。
従来、電界放出素子は、鋭利な先端を有する突起体とも呼ばれる(電子を放出する)エミッタと、該エミッタを取り囲む、該エミッタから電子を放出させるために引き出し電圧を印加する引き出しゲート電極(ゲート電極とも呼ぶ。)とから主に構成される。電界放出素子は、さらに、電子を捕獲あるいは加速させるための陽極(コレクタ又はアノードとも呼ぶ。)とを備える装置として利用される。電界放出素子において、ゲート電極に10から60ボルト程度の電圧を印加すると、エミッタ先端に非常に高い電界が発生し、電子がエミッタから放出される。
電界放出素子の例としては、スピント型と呼ばれる、円錐状のエミッタ構造を採用したものがあげられる(特許文献1等参照)。通常のスピント型エミッタは、平坦な基板上に平坦な絶縁膜と平坦な引き出し電極となる金属を成膜しておき、フォトリソグラフィーとエッチングにより1μm程度の穴をあけ、穴の底には膜がつかないような角度から剥離層となるアルミを真空蒸着し、その後エミッタとなるモリブデンを真空蒸着で成膜することで、穴の底に円錐形状を形成する方法により形成される(非特許文献2の従来技術の記載等参照)。
さらに、近年では、ディスプレイ等や、より画素の小さな撮像素子において、エミッタから放出される電子ビームの集束が重要であり、集束電極を一体化する電界放出素子も提案されている(非特許文献2等参照)。
スピント型エミッタの場合、平坦なゲート電極が形成されるが、その平坦なゲート電極上に多段の集束電極を集積することが提案されている(特許文献1等参照)。多段の集束電極の構造を、実際に作製して、電子ビームを集束させようとすると、非集束時に比べて2桁から3桁程度、放出される電子電流が減少するという問題がある。
本発明者を含むグループは、電界放出素子について多くの提案を行ってきた(特許文献2、3、4、非特許文献1、2参照)。例えば、引き出しゲート電極を火山の噴火口のような構造とし、尚且つ集束電極を引き出しゲート電極の開口部よりも低い位置に配置する構造を提案した(非特許文献1参照)。この構造は、集束時の電流減少を大幅に抑えることが可能である。非特許文献1では、円錐形状のエミッタは、シリコンを削り出して作製する方法を開示した。また、エミッタから放出された電子を集束させる目的で、火山型のゲート電極や集束電極を積層し、その電極の高さを制御することにより、良好な集束特性を得る構造を開示した(非特許文献1参照)。更に、多層の集束電極を積層した構造を開示した(特許文献2参照)。
通常のスピント型エミッタを製造する方法を、火山の噴火口構造の引き出し電極の場合に適用しようとしても、円錐形状の金属製のエミッタは形成することができなかった。そこで、本発明者は、最初に作る微細穴形状を、有機物の塗布膜で形成した後、微細穴内に円錐形状のエミッタを形成し、その後に微細穴形状をすべて除去する方法を報告した(非特許文献2参照)。
特開2003-123625号公報 特開2010-055907号公報 特開2014-044885号公報 特開2017-183180号公報
Y. Neo, T. Soda, M. Tkeda, M. Nagao, T. Yoshida, C. Yasumuro,S. Kanemaru, T. Sakai, K. Hagiwara, N. Sito, T. Aoki, H. Mimura: Applied Physics Express, 1 (2008) 053001. 長尾昌善、J. Vac. Soc. Jpn, Vol. 59, No. 4 (2016) pp.36-39.
従来、上述のとおり、平坦な引き出しゲート電極を用いる構造では、円錐形状のエミッタはMoにより形成可能であることが、知られている(非特許文献2の従来技術の記載等参照)。また、平坦な引き出しゲート電極に設けた開口部を作製後、開口部内に、MoとNiの合金又はMoとWの合金を用いて、スパッタリングにより円錐形状のエミッタを形成することが示されている(特許文献1参照)。
また、火山の噴火口構造の引き出しゲート電極の場合、非特許文献2に記載された有機物の塗布膜に設けた微細穴内にエミッタを形成する方法を用いることにより、円錐形状のエミッタを形成できる。この方法によりエミッタを形成したところ、高さが1μm以上のエミッタが形成できた金属は、Si、Ni、Ti金属のみであった。エミッタのアスペクト比(高さ/底面の直径)は、Siが1.3、Niが1.8~2.2、Tiが0.8であり、Ni金属による最もアスペクト比の優れたエミッタが得られた。一方、Cr(融点1903℃)、Nb(融点2468℃)、Mo(融点2623℃)、Ta(融点2996℃)の金属では形成できなかった。このように、形成可能な金属材料は、Si(融点1410℃)、Ni(融点1453℃)、Ti(融点1683℃)等の比較的融点の低い材料に限られている(非特許文献2参照)。しかしながら、エミッタの融点が低いと、大電流放出時に、ジュール熱によってエミッタが溶けてしまうという問題がある。
非特許文献2では、エミッタの下部をNiの蒸着により作製し、先端部分のみ蒸着材料をMoに切り替えることにより、エミッタ先端を高融点金属で形成した構造を、本発明者は報告した。しかしながら、高融点金属であるMoの部分の、エミッタ先端部分の頂角が大きくなってしまい、エミッタ全体の形状が正確な円錐形状にならず砲弾型のエミッタになり、アスペクト比が低くなるという問題がある。その結果、電界集中が起きにくくなり動作電圧が上がってしまうという問題がある。動作電圧が上がってしまうと、エミッタ先端から出た電子はその高い電圧で加速されてから、集束電極の影響を受ける。しかし、一旦加速されてしまった電子は集束させることがより難しくなるので、結果として集束特性も悪くなるという2重の意味で問題となる。
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、本発明は、鋭い円錐形状のエミッタ形状を維持しつつ、大電流を放出しても破壊が起きにくい電界放出素子を提供することを目的とする。また、本発明は、鋭いエミッタ形状を維持しつつ、大電流を放出しても破壊が起きにくい集束電極一体型の電界放出素子を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
(1) 基板上に設けられ、先端部分が先鋭な電子放出端である円錐形状のエミッタと、前記エミッタの先端部分を取り囲む開口部を有し、エミッタ側壁を取り囲むようにして設けられたゲート電極とを、少なくとも備え、前記エミッタが、ニッケルを主成分とし、モリブデンとタンタルを少なくとも含む合金からなることを特徴とする電界放出素子。
(2) 前記エミッタが、ニッケルを主成分とし、モリブデン1原子%以上40原子%以下とタンタル1原子%以上20原子%以下を含むNi-Mo-Ta合金からなることを特徴とする前記(1)記載の電界放出素子。
(3) 前記エミッタのアスペクト比(高さ/底面の直径)は1.8以上2.2以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の電界放出素子。
(4) 前記ゲート電極の開口部の外側に、開口部を備える電子ビームを集束させるための集束電極を、絶縁膜を介して一体的に備え、該集束電極の開口部の開口端の位置が、エミッタ先端およびゲート電極の開口部の開口端よりも、基板側に位置し、ゲート電極の開口部の開口端の位置が、エミッタ先端と同じか基板からより離れた高さに位置することを特徴とする前記(1)乃至(3)のうちのいずれか1項記載の電界放出素子。
本発明の電界放出素子は、エミッタが、Niを主成分とし、MoとTaを少なくとも含む合金からなることにより、剥離やクラックがなく、優れたアスペクト比のエミッタが得られる。また、本発明の電界放出素子は、エミッタの組成が、Niを主成分とし、MoとTaを少なくとも含む合金からなるものであることにより、従来のNi製等のもの等に比べて、大電流放出時にエミッタが溶けて破壊されることがないという効果を奏する。
また、引き出しゲート電極が火山型の場合、従来高融点のエミッタが得られなかったが、本発明の組成により、初めて実現できた。本発明の集束電極と一体型の電界放出素子は、優れたアスペクト比のエミッタを有し、大電流放出時にエミッタが破壊されることがない効果を有する。
第1の実施の形態における電界放出素子の一例を示す模式図である。 第1の実施の形態における電界放出素子の製造方法を説明する図である。 第1の実施の形態における集束電極一体型の電界放出素子を説明する図である。
本発明の実施の形態について以下説明する。
本発明者は、電界放出素子において、そのエミッタの材料に着目して研究開発を進め、鋭い円錐形状のエミッタ形状を維持しつつ、大電流を放出しても破壊が起きにくい電界放出素子を得るに到ったものである。
本実施の形態の電界放出素子は、優れたエミッタと引き出しゲート電極とを少なくとも備える。本実施の形態では、エミッタは、先鋭な先端を有する突起状であり、円錐形状である。エミッタは、電子を放出するための構造を有し、そのエミッタに電流を供給するための配線部分をエミッタ電極を有する。基板は、エミッタに電流を供給する役目も果たしている場合は、エミッタ電極でもある。
本実施の形態では、エミッタの組成は、Niを主成分とし、MoとTaを少なくとも含む合金からなる。主要成分元素が、Ni、Mo、Taであるので、3元合金と呼ぶことができる。Ni-Mo-Ta合金の材料の混合比は、いずれも原子%で示す。なお、主成分とは、3成分のうち最大の成分である意味で使用している。モリブデンに関しては1原子%以上40原子%以下の範囲がよい。40原子%を超えると成膜中に薄膜(後述するエミッタ材料103)が剥離したり亀裂が発生したりするなどの問題が起きやすくなる。下限については、エミッタを作製する観点から言うと下限はないが、大電流動作時の耐熱効果を優れたものにするには、1原子%以上がよく、さらに望むべくは、5原子%以上であることが望ましい。アスペクト比など形状の効果も考慮すると、5原子%以上30原子%以下の範囲が最も望ましい。また、タンタルに関しては、混合することにより、成膜中の輻射熱を軽減する効果がある。1原子%以上20原子%以下程度が望ましい。さらに望ましくは、10原子%以上20原子%以下の範囲であった。輻射熱により基板温度が上昇すると、二層レジストが温度により変形するため、良好なエミッタが形成できない。また、温度上昇を防ぐために基板を水冷すると、逆にアスペクト比が1.5以下の低いエミッタしかできないことがわかっている。よって、整理すると、望ましい混合比は、モリブデンが1原子%以上40原子%以下、タンタルが1原子%以上20原子%以下であり、ニッケルが50原子%以上の比率が望ましい。さらに望ましくは、モリブデンが5原子%以上30原子%以下、タンタルが10原子%以上20原子%以下、それ以外がニッケルとなるのが望ましい。エミッタの組成は、エミッタ全体が均一な組成でなくとも、Ni-Mo-Ta合金の組成であればよい。
本発明の実施の形態の電界放出素子は、エミッタの側壁を絶縁膜で覆い、エミッタの先端のみを露出する構造を有する。本発明の実施の形態の電界放出素子では、引き出しゲート電極の、エミッタやエミッタ電極に対抗する面を、絶縁膜で覆う構造とすることが好ましい。
絶縁膜の材質に関しては特に制約はなく、絶縁膜の材料として知られる材料を用いることができる。例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等、半導体技術分野等で知られる膜を用いることができる。絶縁膜は、いずれも、1層又は2層以上の絶縁層から構成することができ、それぞれの材料を適宜選択することができる。
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、ゲート電極の形状が火山型である電界放出素子について、図1乃至3を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の電界放出素子の一例の模式図である。図1の電界放出素子は、基板100上に先鋭な電子放出端を有するエミッタ104と、そのエミッタ先端周辺部に開口を有しエミッタの側壁を取り囲むように形成された、火山の火口のような構造を持つ引き出しゲート電極106とを少なくとも備える。さらに、図1のように、電界放出素子は、エミッタ104先端のみを露出させてエミッタ104の側壁及び基板のエミッタ電極を被覆し、引き出しゲート電極106の内壁面に設けられる絶縁膜105を備える。
エミッタ104の材料は、Niを主成分とし、MoとTaを含む三元合金からなる。エミッタ104のアスペクト比(高さ/底面の直径)は1.8以上2.2以下であることが望ましく、前記三元合金を用いることにより、本実施の形態の作製方法を用いれば、この範囲のアスペクト比のエミッタを形成できる。
図2は、電界放出素子の製造方法を説明する図である。図中の(a)から(h)までの工程について、以下説明する。図2は、集束電極がエミッタや引き出しゲート電極と一体である、集束電極一体型の電界放出素子の製造方法である。集束電極一体型でない場合は、絶縁膜109、集束電極110の形成に関連する工程を省略するとよい。
(工程a) 工程aは、基板に2層のレジスト膜を形成した後に、2層のレジスト膜に微細穴形状を形成する工程である。より具体的には、まず、基板100上にリフトオフレジスト102(LOR:マイクロケム社製LOR-7A等)を回転塗布する。LORには感光性はないが現像液で等方的にエッチングされるという特徴がある。その上からさらに通常のフォトレジスト101を塗布する。これら2層のレジストにフォトリソグラフィーで微細穴形状を露光する。本実施の形態では水銀のi線を用いた露光機により、0.5~0.7μm程度の径とした。露光後、現像すると、上層のフォトレジストに微細穴形状が形成された後、LORが等方的にエッチングされるので、現像時間を制御することにより、図2(a)のようにオーバーハング構造を持つ穴形状が1回のリソグラフィー工程で形成できる。現像液は、通常のフォトレジストの現像に用いられるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38%溶液を用いた。
(工程b) 工程bは、蒸着により、微細穴内に円錐形状のエミッタを形成する工程である。より具体的には、工程aの次に、基板に対して垂直な方向から電子ビーム蒸着によりエミッタ材料103を成膜する。この工程では、フォトレジスト101上の蒸着膜(エミッタ材料103)は少しずつ穴径が狭まるように膜が成長するため、穴の中には円錐形状のエミッタ104が形成できる。このエミッタの形成工程はスピント型エミッタの形成方法と類似しているので、形成されたエミッタもスピント型エミッタと呼ぶこともできる。スピント型エミッタの形成方法と異なる点はオーバーハングの微細穴が有機物で形成されているという点である。蒸着する膜厚は、当然エミッタの高さに相当する以上の膜を成膜する必要がある。例えば、エミッタの高さが1.5μm程度であれば、2μm程度の膜を成膜しなければ先鋭なエミッタは形成できない。つまり、エミッタの高さの概ね二割から三割程度厚く薄膜を成膜する必要がある。さらに、蒸着する材料により、エミッタ104の形状は異なる。また、エミッタ材料103の薄膜の応力によってエミッタ104が形成される前に薄膜が剥がれてしまい、結果としてエミッタ形成に至らない場合もある。エミッタ材料103の下地が有機物であるために、構造的には強くないので、高融点金属では特に剥離が起こってしまい、エミッタ形成ができない。本願発明者らが非特許文献2で報告したように、単体の金属ではNi、Si、Tiで1μm以上の高さのエミッタができることがわかっている。一方、高融点のCr、Nb、Mo、Taの単体の金属ではエミッタを形成できなかった。ここでエミッタ材料の融点そのものがエミッタの形成の出来不出来を決めているわけではないと考えられるが、融点が指標になると考えられる。概ね融点1700℃以上の材料ではエミッタが形成できない。エミッタが形成できる材料の中では、ニッケルが最もアスペクト比が高い、即ち先鋭なエミッタが形成できる。一方、既に述べたように、低融点の金属では、エミッタから大電流を取り出したときにエミッタが溶けてしまうという問題がある。例えば、エミッタを、ニッケル70原子%、モリブデン12原子%、タンタル原子18%の混合比で作製した場合、剥離やクラックが全くなく、アスペクト比が2.0程度の良好な形状の円錐が形成できた。
(工程c) 工程cは、エミッタ形成のために用いたレジスト膜等の除去する工程である。より具体的には、エミッタを形成した後、二層のフォトレジストを有機溶剤で溶かすことにより、基板上にはエミッタのみが残る。有機溶剤にはnメチル2ピロリジノンを主成分とする薬液が使える。70℃程度の温度で良好にリフトオフが可能である。
(工程d) 工程dは、エミッタ上に絶縁膜と引き出しゲート電極106を形成する工程である。より具体的には、エミッタ及び基板上に、絶縁膜を化学気相成長法(CVD)で成膜した後、絶縁膜の上に引き出しゲート電極となる金属膜をスパッタリングにより成膜する。この時、成膜方法は任意に選ぶことができるが、エミッタの形状に沿った形でコンフォーマルに成膜できる方法を選ぶことが好ましい。絶縁膜の種類はSiO、Al等シリコン基板上に500℃以下で成膜できるものであれば、どのような材料でも使うことができる。成膜温度が500℃を超えると、エミッタの形状が変形するので注意を要する。引き出しゲート電極や集束電極となる金属膜は、最後の工程で、絶縁膜のみを選択的にウエットエッチングする工程があるので、その薬液でエッチングされない材料、また、ドライエッチングで簡単にエッチングされる材料が好ましい。例えば、絶縁膜として、テトラエトキシオルトシリケート(TEOS)ガスを用いたプラズマCVDにより成膜したSiO膜、また、金属膜としてフッ化水素酸に溶けない、NbやMo、さらにはポリシリコンなどが使えることを確認している。
(工程e) 工程eは、引き出しゲート電極の形状を調整する工程である。より具体的には、まず、工程dで形成された引き出しゲート電極106の上から、全体が埋まる程度の膜厚のフォトレジスト107を回転塗布する。次に、酸素プラズマによりフォトレジスト107をエッチバックして引き出しゲート電極106の開口部を形成する高さにまでレジストの厚さを制御する。その後、ゲート電極をエッチングして引き出しゲート電極の開口部を形成する。上述のNb、Mo、ポリシリコンは、いずれもSF等のフッ素系のドライエッチングにより簡単に開口が可能である。
(工程f) 工程fは、集束電極を形成する工程である。より具体的には、工程dと工程eの、電極形成から電極開口までの工程を、二回繰り返すことにより、引き出しゲート電極106と集束電極110の二層の電極を形成することができる。
(工程g) 工程gは、集束電極110の形状を整え、集束電極の開口部112を形成する工程である。より具体的には、フォトレジスト111を所望の形状に形成し、集束電極110をオーバーエッチングして集束電極110の立ち上がり部分をすべてエッチングして集束電極の開口部112を作製する。集束電極110は、ゲート電極の開口部108よりできる限り下側にある方が望ましい。集束電極110の材料として、ポリシリコンやアモルファスシリコン、Nbなど、SFでのエッチングレートが早い材料を用いると、電極の立ち上がり部分をエッチングしやすい。引き出しゲート電極106と集束電極110は同じ材料であっても良いし、異なる材料であっても良い。引き出し電極にNbやMoなどの金属を用い、集束電極にアモルファスシリコンを用いると、異常放電などで破壊される確率が減少するという結果も得られている。
(工程h) 工程hは、エミッタ上の絶縁膜を除去する工程である。より具体的には、絶縁膜(105、109)のみを選択的にエッチングできる薬液により、エミッタ上の絶縁膜を除去することにより、エミッタを露出させる。絶縁膜としてSiOを利用した際には、フッ化水素酸を用いることができる。エミッタ材料であるNi-Mo-Taの合金は、フッ化水素酸で腐食しないことを確認した。
図3は、集束電極一体型の電界放出素子の電極構造を詳しく説明する図である。エミッタ104の頂点と、ゲート電極106の開口部108(厳密にはゲート電極の開口端)の高さ、集束電極110の開口部112(厳密には集束電極の開口端)の高さは、放出される電子ビームの集束特性に特に影響を与えるので、図3を用いて詳しく説明する。エミッタの基板からの高さをhとし、エミッタ頂点からゲート電極の開口端までの高さをΔhegとし、ゲート電極の開口端から集束電極の開口端までの高さをΔhgfとする。基板から見て最も高い位置にあるのがゲートの開口端であることが望ましく、ついで、エミッタ先端、そして、集束電極の開口端が最も基板側に近いのが望ましい。例えば、Δhegは100nm程度が好ましく、Δhgfは400nm以上であることが好ましい。集束電極の開口端の位置が、エミッタ先端およびゲート電極開口部の開口端よりも、基板側に位置し、エミッタ先端から見て、集束電極が見通せない位置に存在することが好ましい。Δhegは0(ゼロ)から0.1hの範囲にあることが望ましい。Δhgfは0.25hより大きいことが望ましい。エミッタの先端から電子を放出させるために、基板とゲート電極の間に電圧を印加し、さらに電子ビームを集束させるために、ゲート電極に印加した電圧より低い電圧を集束電極に印加したときに、ゲート電極端が遮蔽電極となりエミッタ先端の電界集中を維持することが可能となり、放出された電子ビームの電流量を維持したまま、電子ビームの集束が可能となる。
なお、上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
本発明の電界放出素子は、基板上に設けられたエミッタの先鋭な先端に高電界を印加し、該エミッタ先端から冷電子を放出させる構造であるので、薄型ディスプレイ、超高感度のイメージセンサー、超高周波管等の装置に広く利用でき、産業上有用である。
100 基板
101、107、111 フォトレジスト
102 リフトオフレジスト
103 エミッタ材料
104 エミッタ
105、109 絶縁膜
106 引き出しゲート電極
108 引き出しゲート電極の開口部
110 集束電極
112 集束電極の開口部

Claims (4)

  1. 基板上に設けられ、先端部分が先鋭な電子放出端である円錐形状のエミッタと、
    前記エミッタの先端部分を取り囲む開口部を有し、エミッタ側壁を取り囲むようにして設けられたゲート電極とを、
    少なくとも備え、
    前記エミッタが、ニッケルを主成分とし、モリブデンとタンタルを少なくとも含む合金からなることを特徴とする電界放出素子。
  2. 前記エミッタが、ニッケルを主成分とし、モリブデン1原子%以上40原子%以下とタンタル1原子%以上20原子%以下を含むNi-Mo-Ta合金からなることを特徴とする請求項1記載の電界放出素子。
  3. 前記エミッタのアスペクト比(高さ/底面の直径)は1.8以上2.2以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の電界放出素子。
  4. 前記ゲート電極の開口部の外側に、開口部を備える電子ビームを集束させるための集束電極を、絶縁膜を介して一体的に備え、
    該集束電極の開口部の開口端の位置が、エミッタ先端およびゲート電極の開口部の開口端よりも、基板側に位置し、ゲート電極の開口部の開口端の位置が、エミッタ先端と同じか基板からより離れた高さに位置することを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1項記載の電界放出素子。
JP2019132010A 2019-07-17 2019-07-17 電界放出素子 Active JP7279936B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019132010A JP7279936B2 (ja) 2019-07-17 2019-07-17 電界放出素子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019132010A JP7279936B2 (ja) 2019-07-17 2019-07-17 電界放出素子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021018846A JP2021018846A (ja) 2021-02-15
JP7279936B2 true JP7279936B2 (ja) 2023-05-23

Family

ID=74566074

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019132010A Active JP7279936B2 (ja) 2019-07-17 2019-07-17 電界放出素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7279936B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000067740A (ja) 1998-08-26 2000-03-03 Asahi Chem Ind Co Ltd 金属酸化物の構造体
JP2003249161A (ja) 2002-02-22 2003-09-05 Hitachi Ltd 電子源用ペースト、電子源およびこの電子源を用いた自発光パネル型表示装置
JP2005063694A (ja) 2003-08-15 2005-03-10 Tetsuya Nishio 電界電子放出素子用のエミッタおよびそれを有する電界電子放出素子
US20140285084A1 (en) 2012-12-04 2014-09-25 Arash Akhavan Fomani Self-aligned gated emitter tip arrays
JP2017183180A (ja) 2016-03-31 2017-10-05 国立研究開発法人産業技術総合研究所 電界放出素子及び電界放出素子を備える装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000067740A (ja) 1998-08-26 2000-03-03 Asahi Chem Ind Co Ltd 金属酸化物の構造体
JP2003249161A (ja) 2002-02-22 2003-09-05 Hitachi Ltd 電子源用ペースト、電子源およびこの電子源を用いた自発光パネル型表示装置
JP2005063694A (ja) 2003-08-15 2005-03-10 Tetsuya Nishio 電界電子放出素子用のエミッタおよびそれを有する電界電子放出素子
US20140285084A1 (en) 2012-12-04 2014-09-25 Arash Akhavan Fomani Self-aligned gated emitter tip arrays
JP2017183180A (ja) 2016-03-31 2017-10-05 国立研究開発法人産業技術総合研究所 電界放出素子及び電界放出素子を備える装置

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
長尾昌善,収束電極一体型フィールドエミッタの作製プロセス,J.Vac.Soc.Japn.,vol.59, no.4(2016),2016年,p.36-39

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021018846A (ja) 2021-02-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4095133A (en) Field emission device
US5702281A (en) Fabrication of two-part emitter for gated field emission device
JP2001101977A (ja) 真空マイクロ素子
JP2809125B2 (ja) 集束電極付電界放出型冷陰極
JPH09219144A (ja) 電界放出カソードとその製造方法
JPH05190080A (ja) 電界放出アレイの製造方法および電界放出装置
JPWO2002061789A1 (ja) 電子放出装置及びフィールドエミッションディスプレイ
KR100314830B1 (ko) 전계방출표시장치의제조방법
JP3246137B2 (ja) 電界放出カソード及び電界放出カソードの製造方法
JP2812356B2 (ja) 電界放出型電子銃
JP7279936B2 (ja) 電界放出素子
JP2010055907A (ja) 集束電極一体型電界放出素子及びその作製方法
JP6635510B2 (ja) 電界放出素子及び電界放出素子を備える装置
JP2001143608A (ja) 炭素薄膜の加工方法、冷陰極電界電子放出素子の製造方法、及び冷陰極電界電子放出表示装置の製造方法
JPH0689651A (ja) 微小真空デバイスとその製造方法
US8148888B2 (en) Electron emitting device, and electron beam device and image display apparatus including the same
JP2000331596A (ja) 冷陰極電界電子放出素子及び冷陰極電界電子放出表示装置
JP2743794B2 (ja) 電界放出カソード及び電界放出カソードの製造方法
JP2010146914A (ja) 電子放出素子の製造方法および画像表示装置の製造方法
WO2023105899A1 (ja) 電界放出素子およびその製造方法
KR100447129B1 (ko) 전계 방출 소자의 제조방법
KR100452693B1 (ko) 전계 방출 소자의 제조방법
KR100278502B1 (ko) 더블 게이트를 갖는 화산형 금속 fea 제조방법
JPH1167057A (ja) 微小冷陰極
JP2009302003A (ja) 電子放出素子及び画像表示装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220513

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230131

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230207

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230425

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230501

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7279936

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150