JP2010146914A - 電子放出素子の製造方法および画像表示装置の製造方法 - Google Patents

電子放出素子の製造方法および画像表示装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 電子放出効率が高く、リーク電流の発生を抑えた信頼性の高い電子放出素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 上面と該上面と角部を介して接続する側面とを備える絶縁層の上に、前記側面から前記上面にかけて延在する導電性膜を絶縁層の側面の上と上面の上において同等の膜質で形成した後に、導電性膜をその膜厚方向にエッチング処理する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、電子放出素子の製造方法及びこれを用いた画像表示装置の製造方法に関する。
電界放出型の電子放出素子は、カソード電極とゲート電極との間に電圧を印加することでカソード電極側から電子を電界放出させる素子である。特許文献1には、カソードが基板上に設けられた絶縁層の側面に沿って設けられており、絶縁層の一部に窪んだ部分(以下リセス部と呼ぶ)を備える電子放出素子が開示されている。
特開2001−167693号公報
特許文献1に記載された電子放出素子では、その製造方法によっては、上記リセス部でゲート側の高電位電極とカソード側の低電位電極が、微小な領域で、接触又は接続するなどして無効な電流が発生する場合があった。また、製造方法によっては、多数の電子放出素子を一つの基板の上に形成する際には、幾つかの電子放出素子ではカソード側とゲート側が短絡する場合もあった。そこで、信頼性に関して更なる改善が求められている。また、電子放出効率に関しても、更なる高効率化が要求されている。ここで、電子放出効率(η)とは、電子放出素子に駆動電圧を印加したときにカソード電極とゲート電極間に流れる電流(If)と、真空中に取り出される電流(Ie)を用いて、効率η=Ie/(If+Ie)で与えられる。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、無効な電流の発生や短絡の発生を抑えた、信頼性と電子放出効率が高い電子放出素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた本発明は、電子放出素子の製造方法であって、上面と該上面と角部を介して接続する側面とを備える絶縁層の上に、前記側面から前記上面にかけて延在し、前記角部の少なくとも一部を覆う、導電性膜を形成する第1工程と、前記導電性膜をその膜厚方向にエッチング処理する第2工程と、を含み、前記第1工程は、前記導電性膜の一部であって前記側面の上に位置する部分の膜密度と、前記導電性膜の一部であって前記絶縁層の前記上面の上に位置する部分の膜密度とが同等となるように、前記導電性膜を形成する工程であることを特徴とする。
無効な電流(リーク電流)の発生を抑え、短絡のない、信頼性の高い電子放出素子を提供することができる。また、高い電子放出効率を備える電子放出素子を安定に形成することができる。
以下に図面を参照して、本実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
初めに本実施の形態で説明する製造方法によって形成する電子放出素子の一例の概要について述べる。電子放出素子の構成の詳細については本実施形態の製造方法について説明した後に詳述する。
図1(a)は電子放出素子の平面的模式図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A線(図1(c)のA−A線)での断面図である。図1(c)は図1(b)における矢印の方向から電子放出素子を眺めたときの側面図である。図3(a)は図1(b)の拡大図であり、図3(b)は図3(a)の円状の点線で囲まれた領域(導電性膜6Aの突起部)の拡大図である。
基板1上には、第1絶縁層3と第2絶縁層4とが積層されることで構成された絶縁性の段差形成部材10と、カソード電極2とが、並設されている。そして、導電性膜6Aが、第1絶縁層3のカソード電極2側の側面である斜面上に、該斜面に沿って、配置されている。導電性膜6Aは、第1絶縁層3の斜面(側面)、上面、角部32を覆っている。また、導電性膜6Aは、カソード電極2から、段差形成部材10の凹部(リセス部)7内まで延在している。そして、導電性膜6Aの一方の端部は、カソード電極2に接続しており、導電性膜6Aの他方の端部は、凹部7内(凹部7内に位置する絶縁層3の上面)から第1絶縁層3の側面(または角部32)に跨っている突起部を形成している。従って、突起部は、第1絶縁層3の角部(第1絶縁層3の上面と側面とが接続する部分)32上に設けられていると言える。突起部の先端は、第1絶縁層3の上面よりも基板1の表面から離れており、且つ、尖っている。ゲート電極5は、ここで示す例では、第1絶縁層3との間に設けられた第2絶縁層4によって、第1絶縁層から所定距離(第2絶縁層の厚み)だけ離れている。ゲート電極5上には導電性膜6Bが設けられている。そのため部材5と部材6Bとを一纏めにしてゲート電極と呼ぶこともできる。
尚、ゲート電極5の配置位置は、図1に示す形態に限られるものではない。即ち、電子放出体6Aである導電性膜に電界放出可能な電界を印加することができるように、導電性膜6Aと所定の間隔を置いて、配置されればよい。その場合には、第2絶縁層4は必要としない形態も有り得る。尚、ここではゲート電極5上に導電性膜6Bを設けているが、導電性膜6Bは省略することもできる。
カソード電極2よりもゲート電極5の電位が高くなるようにして、駆動電圧をカソード電極2とゲート電極5の間に印加することで電子が導電性膜6Aの突起部から電界放出される。このため、導電性膜6Aは、カソードに相当する。尚、図1では不図示であるが、基板1の上方(ゲート電極5よりも離れた位置)には、ゲート電極よりも高電位に規定されたアノード電極20が配置される(図2参照)。
尚、第1絶縁層3の角部32は、第1絶縁層3の上面と側面とが接続している部分(あるいは繋がっている部分)である。また、角部32は、第1絶縁層3の上面(側面)から側面(上面)に繋がる部分と言うこともできる。尚、角部32は、曲率を持たない形態(即ち上面の縁と側面の縁を突き当てた形態)とすることもできるし、曲率を持つ形態とすることもできる。すなわち、第1絶縁層3の上面と側面とが、所定の曲率半径を有する部分(角部32)を介して繋がっている形態とすることができる。角部32が曲率を持つ形態であれば、導電性膜6Aを安定に形成することができ、電子放出素子の電子放出特性の観点から有利である。
以下に、本実施形態に係る電子放出素子の製造方法を、上記した構成の電子放出素子を例に、図6を参照しながら説明する。
まず、本実施形態の製造方法における一連の工程を簡単に説明し、その後、各工程について詳述する。
(工程1)
第1絶縁層3となる絶縁層30を基板1の表面に形成し、続いて、第2絶縁層4となる絶縁層40を絶縁層30の上面に積層する。そして、絶縁層40の上面にゲート電極5となる導電層50を積層する(図6(a))。絶縁層40の材料は、絶縁層30の材料よりも、後述する工程3で用いるエッチング液(エッチャント)に対してエッチング量が多くなるように、絶縁層30の材料とは異なる材料が選択される。
(工程2)
次に、導電層50、絶縁層40、絶縁層30に対するエッチング処理(第1エッチング処理)を行う。
第1エッチング処理は、具体的には、フォトリソグラフィー技術等により導電層50上にレジストパターンを形成したのち、導電層50、絶縁層40、絶縁層30をエッチングする処理である。工程2により、基本的には、図1などに示した電子放出素子を構成する第1絶縁層3とゲート電極5が形成される(図6(b))。尚、図6(b)などに示す様に、この工程で形成される第1絶縁層3の側面(斜面)22と基板1の表面とが成す角度(α)が90°よりも小さい角度となるようにすることが好ましい。また、ゲート電極5の側面(斜面)52と第1絶縁層3の上面(基板1の表面)とが成す角度(Φ)が、第1絶縁層3の側面(斜面)と基板1の表面とが成す角度(α)よりも小さくすることが好ましい。
(工程3)
続いて、絶縁層40に対するエッチング処理(第2エッチング処理)を行う(図6(c))。
工程3により、基本的には、図1等に示した電子放出素子を構成する第2絶縁層4が形成される。この結果、第1絶縁層3の上面21の一部と第2絶縁層4の側面とからなる凹部7が形成される(図6(c))。より詳細には、ゲート電極5の下面の一部と第1絶縁層3の上面の一部と第2絶縁層4の側面とで凹部7が形成される。また、工程3において、絶縁層40の側面がエッチングされるので第1絶縁層3の上面21の一部が露出する。第1絶縁層3の露出している上面21と第1絶縁層3の側面である斜面22とが接続している部分が角部32である。
(工程4)
導電性膜(6A)を構成する材料からなる膜60Aを、基板1の表面から、第1絶縁層3のカソード電極2側の側面となる斜面22を経て、第1絶縁層3の上面21に至るように、堆積する。
即ち、導電性膜60Aは、第1絶縁層3の角部32の少なくとも一部を覆い、第1絶縁層3の斜面(側面)22から第1絶縁層3の上面にかけて延在することになる。
導電性膜60Aの膜密度が、第1絶縁層3の上面21の上に位置する部分と、第1絶縁層3の斜面22上に位置する部分とで、同等になる様に成膜する。好ましくは、導電性膜60Aの、第1絶縁層3の斜面22上に位置する部分が、導電性膜60Aの、第1絶縁層3の上面21の上に位置する部分と、同等以上の膜密度になる様に成膜する。また、同時に、導電性膜(6B)を構成する材料からなる膜60Bを、ゲート電極5の上に堆積することができる。このようにして、導電性膜60A(および60B)を形成する(図6(d))。
図6(d)で示した例では、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触するように成膜している。工程4では、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触しないように、即ち、間隙を形成するように、導電性膜60Aと導電性膜60Bを成膜することもできる。
しかしながら、詳しくは後述するが、間隙の大きさ(距離d)をより高精度に制御するためには、図6(d)に示すように、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触するように成膜することが望ましい。
(工程5)
続いて、導電性膜(60A、60B)に対してエッチング処理(第3エッチング処理)を行う(図6(e))。
第3エッチング処理は導電性膜(60A、60B)の膜厚方向におけるエッチング処理を主眼とした処理である。
工程5により、工程4で導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触していた場合にはその間に間隙8が形成される。また、凹部内に付着している余計な導電性材料(導電性膜(60A、60B)を構成する材料)を除去することができる。これらの結果、導電性膜6Aと導電性膜6Bとが形成される。
尚、工程5では、上記第3エッチング処理の前に導電性膜(60A、60B)の表面を酸化させる酸化処理を加える場合もある。また、工程5を、上記酸化処理と上記エッチング処理とを繰り返す工程とする場合もある。
このように酸化処理とエッチング処理とを行うことによって、単にエッチング処理する場合に比べて、導電性膜6Aのエッチングの制御性を向上することが出来る。また、導電性膜6Aと導電性膜6Bとの間隙8を制御性よく形成できる。
また、工程5では、導電性膜6Aの導電性膜6Bに対向する端部である突起部の先端の曲率半径を小さくできる。その結果、安定して、より高い電子放出効率の電子放出素子を形成することができる。
このように、工程5は導電性膜(60A、60B)をその膜厚方向にエッチングするための処理である。尚、工程5では、導電性膜(60A、60B)の露出している表面が全てエッチャントに曝されることになる。
(工程6)
導電性膜6Aに電子を供給するためのカソード電極2を形成する(図6(f))。この工程は、他の工程の前や後に変更することもできる。尚、カソード電極2を用いずに、カソード電極2の機能を導電性膜(カソード)6Aが兼ねることもできる。その場合には、工程6は省略できる。
基本的には、以上の(工程1)〜(工程6)により、図1、図3に示した電子放出素子を形成することができる。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
(工程1について)
基板1は電子放出素子を支持するための基板である。石英ガラス,Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラスなどを用いることができる。基板1に必要な機能としては、機械的強度が高いだけでなく、ドライエッチング、ウェットエッチング、現像液等のアルカリや酸に対して耐性があることが挙げられる。また、画像表示装置に用いる場合は、加熱工程などを経るので、積層する部材と熱膨張率差が小さいものが望ましい。また熱処理を考慮すると、ガラス内部からのアルカリ元素等が電子放出素子に拡散しづらい材料が望ましい。
絶縁層30(第1絶縁層3)を構成する材料は、加工性に優れる材料からなり、たとえば窒化シリコン(典型的にはSi)や酸化シリコン(典型的にはSiO)である。絶縁層30は、スパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法で形成することができる。また絶縁層30の厚さは、数nmから数十μmの範囲で設定され、好ましくは数十nmから数百nmの範囲に選択される。
絶縁層40(第2絶縁層4)を構成する材料は、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、たとえば窒化シリコン(典型的にはSi)や酸化シリコン(典型的にはSiO)である。絶縁層40は、スパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法で形成することができる。また絶縁層40の厚さは、絶縁層30よりも薄く、数nmから数百nmの範囲で設定され、好ましくは数nmから数十nmの範囲で選択される。
尚、絶縁層30と絶縁層40を基板1上に積層した後に工程3にて凹部7を形成する必要がある。そのため、上記第2エッチング処理に対して、絶縁層30よりも絶縁層40の方がよりエッチング量が多い関係に設定する。望ましくは絶縁層30と絶縁層40との間のエッチング量の比は、10以上であることが好ましく、50以上であることが更に好ましい。
このようなエッチング量の比を得るためには、例えば、絶縁層30を窒化シリコン膜で形成し、絶縁層40を酸化シリコン膜やリン濃度の高いPSGやホウ素濃度の高いBSG膜等で構成すれば良い。尚、PSGはリンシリケートガラスであり、BSGはボロンシリケートガラスである。
導電層50(ゲート電極5)は導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術により形成されるものである。
ゲート電極5となる導電層50の材料は、導電性に加えて高い熱伝導率があり、融点が高い材料が望ましい。例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料が使用できる。また、炭化物や硼化物や窒化物も使用でき、Si,Ge等の半導体も使用できる。
また、導電層50(ゲート電極5)の厚さは、数nmから数百nmの範囲で設定され、好ましくは数十nmから数百nmの範囲で選択される。
ゲート電極5となる導電層50は、カソード電極2に比べてその膜厚が薄い範囲で設定される場合があるので、カソード電極2の材料よりも低抵抗な材料であることが望ましい。
(工程2について)
上記第1エッチング処理では、エッチングガスをプラズマ化して材料に照射することで材料の精密なエッチング加工が可能な、RIE(Reactive Ion Etching)を用いることが好ましい。
RIEに用いるガスとしては、加工する対象部材がフッ化物を作る材料である場合には、CF、CHF、SFなどのフッ素系ガスが選ばれる。また加工する対象部材がSiやAlのような塩化物を形成する材料である場合には、Cl、BClなどの塩素系ガスが選ばれる。またレジストとの選択比を取るため、またエッチング面の平滑性の確保あるいはエッチングスピードを上げるため、水素、酸素、アルゴンガスの少なくともいずれかをエッチングガスに添加する。
工程2により、基本的に、図1などに示した電子放出素子を構成する第1絶縁層3とゲート電極5と同一または略同一の形状が形成される。しかしながら、工程2以降に行われるエッチング処理で、第1絶縁層3とゲート電極5が全くエッチングされないことを意味する訳ではない。
また、第1絶縁層3の側面(斜面)22と基板1の表面とが成す角度(図6(b)にαで表示)は、ガス種、圧力、等の条件を制御することに所望の値に制御可能である。αは、90°よりも小さい角度とすることが好ましい。これは、工程4で第1絶縁層3の斜面22に形成される導電性膜60A(導電性膜6A)の膜質(膜密度)を制御するためである。
αを90°よりも小さい角度に設定することで、結果としてゲート電極5のカソード電極側の側面52は、第1絶縁層3のカソード電極側の側面22よりも後退する。また、ゲート電極5の側面(斜面)52と第1絶縁層3の上面(又は基板1の表面)とが成す角度が、第1絶縁層3の側面(斜面)22と基板1の表面とが成す角度よりも小さくすることが好ましい。尚、第1絶縁層3の上面と第1絶縁層3の側面22との成す角度は、180°−αとみなせる。
尚、αは、第1絶縁層3の側面22において、角部32(図6(c)参照)から基板1方向へ接線を引いたときに、この接線と基板1とのなす角度で表すことができる。
(工程3について)
工程3では、エッチング液によって絶縁層40がエッチングされる量に対して、エッチング液によって絶縁層3がエッチングされる量が十分に低くなるようにエッチング液が選択される。
上記第2エッチング処理は、例えば絶縁層40が酸化シリコンで形成され第1絶縁層3(絶縁層30)が窒化シリコンで形成されている場合、エッチング液は通称バッファードフッ酸(BHF)を用いればよい。バッファードフッ酸(BHF)はフッ化アンモニウムとフッ酸との混合溶液である。また、絶縁層40が窒化シリコンで形成され第1絶縁層3(絶縁層30)が酸化シリコンで形成されている場合は、エッチャントは熱リン酸系エッチング液を使用すればよい。
工程3により、図1などに示した電子放出素子を構成する第2絶縁層4と同一または略同一のパターンが形成される。しかしながら、工程3以降に行われるエッチング処理で、第2絶縁層4が全くエッチングされないことを意味する訳ではない。
凹部7の深さ(奥行き方向の距離)は、電子放出素子のリーク電流に深く関わる。凹部7を深く形成するほどリーク電流の値が小さくなる。しかし、あまり凹部7を深くするとゲート電極5が変形する等の課題が発生する。このため、実用的には30nm以上200nm以下に設定される。尚、凹部7の深さは、第1絶縁層3の側面22(または角部32)から絶縁層4の側面までの距離と言い換えることもできる。
(工程4について)
工程4において、導電性膜(60A、60B)は、蒸着法、スパッタ法等の真空成膜技術により形成される。
但し、導電性膜60Aの膜質(膜密度)が、第1絶縁層3の上面21の上に位置する部分と、第1絶縁層3の側面(斜面)22上に位置する部分と、で同等になる様に成膜する。
これは、工程5における第3エッチング処理時に、導電性膜60Aの、第1絶縁層の側面に堆積された部分が、第1絶縁層3の上面21に堆積された部分よりも速くエッチングされてしまうことを抑制するためである。
本願発明者らの検討の結果、導電性膜60Aの第1絶縁層の側面22に堆積された部分と導電性膜60Aの第1絶縁層3の上面21に堆積された部分とで、その膜密度に差が生じることに起因することがわかった。これにより、第3エッチングによって第1絶縁層の側面(斜面)に堆積された部分がより早くエッチングされてしまうと、電子放出部である導電性膜6Aの突起部(図1参照)への電位の供給が不安定になったり不十分になってしまう。
そこで、工程4では、導電性膜60Aの成膜を、指向性を有する成膜法によって行うことが好ましい。例えば、いわゆる指向性スパッタリング法や蒸着法を用いることができる。指向性を有する成膜方法を用いることで、導電性膜(60A,60B)の材料(原料)が、第1絶縁層3の上面および側面(並びにゲート電極5の上面および側面)に入射する角度を制御できる。
図5(b)では、工程5の第3エッチング処理時におけるエッチングレートが、成膜面に対するスパッタ粒子の入射方向に依存することを示している。図5(b)では、成膜が成される面(成膜面)の法線方向と成膜材料の入射方向とのなす角度を横軸にとり、エッチングレートを縦軸にとっている。成膜が成される面(成膜面)の法線方向と成膜材料の入射方向とのなす角度が減少するにつれ(スパッタ粒子の入射が成膜面に対して90°に近くなるにつれて)、エッチングレートは減少する。一方、成膜面の法線方向とスパッタ粒子の入射方向のなす角度が90°に近くなるにつれ(成膜面に対するスパッタ粒子の入射角度が0°に近くなるにつれて)、エッチングレートは増大する。
指向性スパッタでは、具体的には、基板1とターゲットとの角度を設定した上で、基板1とターゲットの間に遮蔽板を設けたり、基板1とターゲット間の距離をスパッタ粒子の平均自由行程近傍にする等行う。スパッタ粒子に指向性を与えるコリメータを用いる、いわゆるコリメーションスパッタ法も上記指向性スパッタリング法の範疇である。このようにして、限られた角度のスパッタ粒子(スパッタターゲットからスパッタされた原子またはスパッタされた粒子)のみが被成膜面(絶縁層30の斜面など)に入射される様にすることができる。
即ち、第1絶縁層3の側面22に対するスパッタ粒子の入射角度が、第1絶縁層3の上面21に対するスパッタ粒子の入射角度と同等の角度になる様にする。このようにすることで、スパッタ粒子(成膜材料)を、第1絶縁層3の側面22と第1絶縁層3の上面21の双方に対して、同等の角度で入射させることができる。また、このような成膜を行うことで、導電性膜60Aの、第1絶縁層3の上面21(角部32)上に位置する端部が、突起形状(突起部)を有する形態とすることができる。その結果、工程5の第3エッチング処理により、突起部を先鋭化することができる。
蒸着法では、真空度が10−2〜10−4Pa程度の高真空下で成膜を行うと、蒸発源から気化した蒸発物質(成膜材料)は、衝突する可能性が低い。更に、蒸発物質(成膜材料)の平均自由行程は概ね数百mm〜数m程度である為、蒸発源から気化した時の方向性が維持されて基板に届くことになる。このため、蒸着法は指向性を有する成膜方法となる。蒸発源を蒸発させる手法は、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱などが有るが、対応可能な物質の種類及び加熱面積の関係から電子ビームを利用する方法が有効である。
上記の様に指向性を有する成膜法を用いることで、導電性膜60Aの、第1絶縁層3の側面22の上の膜質と第1絶縁層3の上面21の上(または角部32の上)の膜質を同等とする条件が存在する。その結果、導電性膜60Aの、第1絶縁層3の側面22の上の部分と、第1絶縁層3の上面21の上(または角部32の上)の部分とで、エッチングレートを同等にできる条件が存在する。
ここで、第1絶縁層3の側面22の上と上面21の上とで、堆積させた導電性膜のエッチングレートが同等になる、成膜材料の入射方向Aの条件について説明する。
第1絶縁層3の側面22と基板1の水平方向11とのなす角度をαとし、成膜材料の入射方向Aと基板1の法線方向12とのなす角度をθとした時に、θ=α/2の関係を満たせばよい。この場合、第1絶縁層3の側面22の上に堆積させた導電性膜の膜質と、絶縁層3の上面21の上に堆積させた導電性膜の膜質とを同等とすることができる。尚、αは0°よりも大きく90°よりも小さい値である。但し、電子放出部を基板1の表面から離し、突起部により電界を集中させるためにも、αは、実用的には45°よりも大きい値とすることが望ましい。
尚、絶縁層3は基板1の表面に一般的に用いられる成膜方法によって形成されているので、絶縁層3の上面21は基板1の表面(水平方向12)と平行(または実質的に平行)であると言える。即ち、絶縁層3の上面21は基板1の表面と完全に平行である場合もあるが、成膜環境や条件などにより、通常、僅かに傾きを有することが考えられるが、このような場合も含めて、平行または実質的に平行の範疇である。しかし、絶縁層3の上面21を基板1の表面(水平方向12)に対して意図的に非平行とした場合にも、本発明は適用できる。即ち、上述したように、第1絶縁層3の側面22に対する導電性膜の原料(スパッタ粒子)の入射角度が、第1絶縁層3の上面21に対する導電性膜の原料の入射角度と同等の角度にすればよい。
このように、絶縁層3の上面21と絶縁層3の側面22とのなす角を二等分する方向から、導電性膜の成膜材料を入射させることにより、導電性膜60Aの、絶縁層3の上面21の上に位置する部分の膜質と絶縁層3の側面22の上に位置する部分の膜質を同等にできる。
指向性スパッタ法で言えば、ターゲットからのスパッタ粒子が飛来する方向(スパッタ粒子の入射方向)を、絶縁層3の上面21と絶縁層3の側面22とのなす角の二等分線上に設定すればよい。
また、導電性膜60Aの、絶縁層3の側面22の上に位置する部分の膜質を、導電性膜60Aの、絶縁層3の上面21の上に位置する部分の膜質と同等以上にすることができる。このためには、入射角度θを、α/2以上90°以下(α/2≦θ≦90°)とする。即ち、導電性膜の原料(スパッタ粒子)が絶縁層3の側面22に対して入射する角度が、導電性膜の原料が絶縁層3の上面21に対して入射する角度以上となるように設定すればよい。但し、θが90°を超えてしまうと、凹部7内(絶縁層3の上面21の上)に導電性膜6Aを実質的に堆積することができなくなってしまうので、90°が上限となる。このようにすることで、第3エッチング処理で、絶縁層3の側面22の上に位置する部分が優先的に除去されることを一層抑制することができる。
尚、工程2においてαを90°よりも小さい角度に設定することで、ゲート電極5のカソード電極2側の側面は、第1絶縁層3のカソード電極2側の側面よりも後退することは前述した通りである。その結果、工程4で上記したような指向性を有する成膜を行うことで、角部32の上には、側面22の上および上面21の上に位置する部分の膜質と同等以上の良質な膜が形成される。尚、「良質な膜」とは、ここでは「高密度な膜」または「膜密度の高い膜」と言い換えることができる。
工程4では、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触しないように、即ち、間隙を形成するように、導電性膜60Aと導電性膜60Bを成膜することもできる。
電子放出素子では、図3で示した様に、導電性膜6Aと導電性膜6Bとの間に距離dの間隙を高精度に形成する必要がある。特に、複数の電子放出素子を均一性高く形成する場合には、各電子放出素子の間隙の大きさのバラツキを少なくすることが重要である。間隙の大きさ(距離d)をより高精度に制御するために、工程4において、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触するように成膜することが望ましい。言い換えると、工程4において、導電性膜60Aとゲート電極5とが導電性膜60Bを介して接続するように成膜することが望ましい。そして、その後に、下記工程5における第3エッチング処理を行って導電性膜60Aと導電性膜60Bとの間に間隙を形成することが望ましい。
尚、間隙8の形成を、上記工程4の成膜時間や成膜条件の制御等で行う場合も、凹部7内のどこかに、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが微小な領域で接触した箇所(リーク源)が形成される可能性もある。そのため、工程4の後に、下記工程5における第3エッチング処理を行う必要がある。
導電性膜60Aと導電性膜60Bは、同一材料でも良いし、異なる材料でも構わない。しかしながら、製造の容易性、エッチングの制御性から、導電性膜60Aと導電性膜60Bは同一材料で同時に成膜することが好ましい。
導電性膜(60A、60B)の材料は、導電性があり、電界放出する材料であればよく、好ましくは、2000℃以上の高融点の材料から選択される。また、導電性膜60Aの材料は、5eV以下の仕事関数材料であり、その酸化物が簡易にエッチング可能な材料で形成されることが好ましい。このような材料として例えば、Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料、或いは炭化物、硼化物、窒化物も使用可能である。工程5において、金属と金属酸化物のエッチング特性の差を利用した、表面酸化膜のエッチング処理を行う場合があるので、導電性膜(60A、60B)の材料は、MoまたはWを用いることが好ましい。
(工程5について)
第3エッチング処理としてはドライエッチング、ウェットエッチングの何れでも構わないが、他材料とのエッチング選択比の容易さを考慮して、ウェットエッチングを行うことが好ましい。
エッチング量(間隙の大きさd)が数nm程度と微量である為、安定性を考慮するとエッチングレートは1分間に1nm以下であることが望ましい。上記エッチングレートとは、単位時間当たりの膜厚変化量を意味している。エッチング処理で除去される単位時間当たりの原子数は、導電性膜(60A、60B)の材料とエッチング液で一意に決まるので、膜密度とエッチングレートは反比例の関係にある。即ち、膜密度が高いほど、エッチングレートは低くなる。
図7(a)、図7(b)、図7(c)を用いて、第3エッチング処理による、間隙の形成について説明する。
図7(a)は、工程4で指向性を有する成膜方法により、導電性膜(60A、60B)が成膜された状態における膜質の差を模式的にを表している。図7(b)および図7(c)は、第3エッチング処理を行った状態を表している。
図中、T2は高密度膜の部分における、第3エッチング処理による膜厚の減少量を示しており、T3は低密度膜の部分における、第3エッチング処理による膜厚の減少量を示している。本実施形態では、T2<T3の関係が成り立つ。第3エッチング処理による膜厚の減少量はエッチング時間あるいはエッチング回数で調整が可能である。
工程4で形成した導電性膜60Aでは、既に説明したように、導電性膜60Aの膜質(膜密度)が、第1絶縁層3の上面21の上に位置する部分と、第1絶縁層3の側面22上に位置する部分と、で同等になる様に成膜されている。そのため、いずれの部分(6A1、6A2、6A3)でも同等の膜質を有することになる。これにより、工程5の第3エッチングにおいて、6A1、6A2、6A3の各部分のエッチングレートを同等にすることができる。また、導電性膜60Aの、絶縁層3の側面22の上に位置する部分の膜質を、導電性膜60Aの、絶縁層3の上面21の上に位置する部分の膜質と同等以上にする場合もある。この場合には、6A2の部分のエッチングレートが、6A1および6A3の部分のエッチングレート以下とすることができる。そのため、第3エッチング工程で、導電性膜60Aの第1絶縁層3の側面22上に位置する部分が優先的に除去されることを一層抑制できる。
尚、工程5では、導電性膜の露出している表面が全てエッチャントに曝される(エッチングされる)ことになる。
さらにこの時、ゲート電極5の側面52の上に位置する部分(6B2)の膜質に比べて、6A1、6A2、6A3、6B1で示される部分の膜質が良質とする(6B2のエッチングレートを速くする)ことが好ましい。この様にする事で、第3エッチング時における、導電性膜6Bの、ゲート電極5の側面52の上に位置する部分の後退量(エッチング量)を大きくすることができ、結果、電子放出の高効率化が可能である。この様にするためにには、第1絶縁層3の側面21と基板1の法線12とが成す角度αに比べて、ゲート電極5の側面52と基板1の法線とが成す角度(90°−Φ)を大きくすればよい。この様にすることで、導電性膜60Aの材料(例えばスパッタ粒子)がゲート電極5の側面52により浅い角度で入射する為、ゲート電極5の側面52の上には低密度な膜(または「膜密度の低い膜」)が形成される。具体的には、絶縁層3の側面22の上に位置する部分の膜質を、絶縁層3の上面21の上に位置する部分の膜質と同等以上にすることのできる前述した入射角度θの範囲(α/2≦θ≦90°)を満たした上で、下記関係式1または関係式2を満たせば良い。
(関係式1) (α+Φ)/2≦θ≦90°
(関係式2) α/2≦θ<(α+Φ)/2
但し、上記関係式1では、0<Φ<αの関係を満たす必要がある。また、上記関係式2では、α<Φ≦90°の関係を満たす必要がある。
以上により、工程5の第3エッチング時に、導電性膜6Bのゲート電極5の側面52の上に位置する部分(6B2)のエッチングレートが、導電性膜6Aのエッチングレートよりも大きくなる。
尚、Φ=αの場合には、θがいかなる角度でも、常に絶縁層3の側面22の上の膜質とゲート電極5の側面52の上の膜質が同等になるため、好ましくない。
ゲート電極5の側面52の上に位置する部分(6B2)が、より多く後退するので、電子放出部である導電性膜6Aの突起部の先端から放出した電子がゲート電極5に衝突・散乱する確立を低減できる。その結果、より多くの電子がアノード電極へ到達でき、電子放出の高効率化が可能である。
膜密度の測定は、一般にはXRR(X線反射率法)が用いられるが、実際の電子放出素子では測定が困難な場合がある。そのような場合には、膜密度の測定手法として、例えば、以下の方法を採用することができる。即ち、TEM(透過電子顕微鏡)とEELS(電子エネルギー損失分光)を組み合わせた高分解能電子エネルギー損失分光電子顕微鏡で、元素の定量分析を行い、膜密度が既知の膜と比較することで、検量線を作成して、密度を算出することができる。
本発明における導電性膜(60A、60B)の材料と第3エッチング処理に用いるエッチャントの組み合わせは、特に限定されるものではない。例えば、導電性膜(60A、60B)の材料がモリブデンであれば、エッチャントはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やアンモニア水などのアルカリ溶液を用いることができる。或は、エッチャントとして、2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノールとアルカノールアミンの混合物やDMSO(ジメチルスルホキシド)等も用いることができる。
また、導電性膜(60A、60B)の材料がタングステンの場合は、硝酸やフッ酸や水酸化ナトリウム溶液等をエッチャントとして用いることができる。
また、前述したように、工程5を、導電性膜(60A、60B)の表面を酸化させる酸化工程と酸化した導電性膜(60A、60B)の表面をエッチングするエッチング処理とで構成する形態もある。
これは、酸化工程で導電性膜(60A、60B)の表面に所望量の酸化膜を形成した後、該酸化膜をエッチング除去することにより、エッチング量の均一性(再現性)を高める効果が期待できる。
そして、酸化量(酸化膜厚)は膜密度に反比例する。即ち、膜密度が高い部分の表面の酸化量(酸化膜厚)は、膜密度が低い部分の表面の酸化量(酸化膜厚)に比べて小さくなる。そのため、導電性膜(60A、60B)を酸化処理した場合、膜密度の小さい部分(図7(a)の6B2に相当する部分)の表面層が優先的に(選択的に)酸化される。一方、導電性膜60Aの、絶縁層3の側面22の上に位置する部分の膜質は、導電性膜60Aの、絶縁層3の上面21の上に位置する部分の膜質と同等以上である。そのため、導電性膜60Aの、絶縁層3の側面22の上に位置する部分の酸化量を、その他の部分と同等かそれよりも少なくすることができる。その結果、導電性膜60Aの、絶縁層3の側面22の上に位置する部分が優先的に除去されることを抑制しつつ、導電性膜のエッチング量と前述した間隙の間隔の制御精度を高めることが可能になる。
酸化方法は、導電性膜60Aの表面を数〜数十nm酸化させることが可能な方法ならば特に制限されるものではない。具体的にはオゾン酸化(エキシマUV露光、低圧水銀露光、コロナ放電処理、等)や熱酸化等が挙げられるが、好ましくは、酸化の定量性が優れているエキシマUV露光を用いる。また、導電性膜60Aの材料がモリブデンの場合にはエキシマUV露光により、酸化膜が容易に除去できるMoOを主として生成することができる利点もある。
酸化膜の除去工程は、ドライ、ウェットの何れでも構わないが、好ましくはウェットエッチング処理を用いる。酸化膜の除去工程(エッチング工程)は、表面層である酸化膜のみを除去(エッチング)することが目的となる。そのため、用いるエッチャントしては、酸化膜のみを除去して、下層である金属層(酸化していない層)には実質的な影響のないものが望まれる。或いは、酸化膜のエッチングレートが金属層(酸化していない層)に比較して十分に大きい(桁で異なる)ものが望まれる。具体的には、導電性膜60Aの材料がモリブデンであれば、エッチャントは、希釈TMAH(濃度が0.238%以下が望ましい)、温水(40℃以上が望ましい)等が挙げられる。導電性膜60Aの材料がタングステンの場合は、バッファードフッ酸、希塩酸、温水等が挙げられる。
工程5によって、導電性膜6Aと導電性膜6Bとが形成される(図7(c))。尚、導電性膜6Bは、ゲート電極5の上(詳細にはゲート電極の側面(斜面)の上と上面の上)に設けられている。このため、導電性膜6B(ゲート電極5の側面に位置する部分)を、導電性膜6Aの突起部(電子放出部)の先端から放出された電子が最初に衝突する部分とすることができる。そのためゲート電極5を構成する材料の融点が多少低くても、導電性膜6Bを高融点の材料で形成すれば、電子放出素子の電子放出特性の劣化を抑制することができる。
(工程6について)
カソード電極2は、前記ゲート電極5と同様に導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術、フォトリソグラフィー技術により形成することができる。カソード電極2の材料は、ゲート電極5と同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
カソード電極2の厚さとしては、数十nmから数μmの範囲で設定され、好ましくは数百nmから数μmの範囲で選択される。
上記した製造方法により形成される電子放出素子の構成の詳細について図1および図3を用いて以下に述べる。
ここでは、段差形成部材10を、第1絶縁層3と第2絶縁層4とを積層することで構成する例を示した。しかしながら、段差形成部材10は、3つ以上の複数の層で構成することもできる。
段差形成部材10を構成する第2絶縁層4の上面にゲート電極5が載置されており、段差形成部材10の側面であって、ゲート電極5の端部の直下に位置する部分に、凹部7が設けられている。ここでは、ゲート電極5の下面(基板1側の面)の一部が露出するように、段差形成部材10の側面に凹部7を設けた例を示した。即ち、ゲート電極5の下面の一部(露出している部分)が凹部7を形作っている。
しかしながら、凹部7は、ゲート電極5の下面と段差形成部材10の上面との界面よりも、基板1側に設ける形態であってもよい。即ち、ゲート電極5の下面から凹部7を離れて設けた形態(ゲート電極5の下面が露出しない形態)であってもよい。いずれにしても、本実施形態の電子放出素子では、凹部7の上にゲート電極5が配置されている。
また、ここでは、段差形成部材10を構成する第1絶縁層3の側面が傾斜した斜面で構成されているが、基板1の表面に対して、90°未満の角度とすることが上記した製造方法との兼ね合いから好ましい。尚、第2絶縁層4の側面(図6(c)参照)の基板1の法線12と成す角度は、カソードである導電性膜6Aの突起部からの電子放出の妨げにならない限り、特に限定されるものではない。
次に、導電性膜(カソード)6Aの突起部について、その特徴とその望ましい形態を図3(a)および図3(b)を用いて以下に述べる。
図3(a)は図1(b)を拡大した図であり、図3(b)は図3(a)の円状の点線で囲まれた領域(導電性膜6Aの突起部)の拡大図である。
導電性膜6Aの突起部の先端を拡大すると、その先端には曲率半径rで代表される部分が存在する(図3(b)の点線で囲まれた円を参照)。この曲率半径rの値により導電性膜6Aの先端の電界強度が異なる。rが小さいほど電気力線の集中が生じるため突起先端に高い電界を形成することが可能となる。従って突起部分先端の電界を一定とした場合、すなわち駆動電界(電子放出時の電界)を一定とした時に、曲率半径rが相対的に小さければ導電性膜6Aの突起部の先端とゲート電極5との最短距離dが大きく、rが相対的に大きければ最短距離dが小さな値となる。最短距離dの違いは散乱回数の違いに影響するため、rが小さく、dが大きいほど電子放出効率が高い電子放出素子とすることが可能となる。
導電性膜6Aの突起部は、図3(b)で示されるように、凹部7内に、段差形成部材10の側面と凹部7との境界(第1絶縁層3の角部32)から距離xだけ、入り込んでいる。
距離xをもって凹部7内に、導電性膜6Aが入り込むことで、以下の三つのメリットが生じる。
(1)電子放出部となる導電性膜6Aの突起部が第1絶縁層3と広い面積を持って接触し、機械的な密着力があがる(密着強度の上昇)。
(2)電子放出部となる導電性膜6Aの突起部と第1絶縁層3との熱的な接触面積が広がり、電子放出部で発生する熱を効率よく第1絶縁層3に逃がすことが可能となる(熱抵抗の低減)。
(3)第1絶縁層3の上面に対して傾斜を備えることで、絶縁層―真空−金属界面で生じる三重点での電界強度を弱め、異常な電界発生による放電現象を防止することが可能となる。
尚、距離xは、導電性膜6Aの、凹部7の表面と接する部分の端部から凹部7の縁までの距離と言う事が出来る。換言すると、第1絶縁層3の上面と導電性膜6Aとが凹部7の深さ方向に接する長さと言う事ができる。
次に、上記した電子放出素子に、図2のように駆動電圧を印加することによって放出された電子の軌道について説明する。
図2は、本発明の電子放出素子であり、電子放出特性を測定するときの電源及び電位の関係を示す図である。ここでVfはカソードとゲートとの間に印加される電圧、Ifはこの時流れる素子電流、Vaはカソードとアノード電極20の間に印加される電圧、Ieは電子放出電流である。ここで、電子放出効率(η)は、素子に電圧(Vf)を印加したときに検出される電流(If)と真空中に取り出される電流(Ie)を用いて、効率η=Ie/(If+Ie)で与えられる。
(電子放出における散乱の説明)
図4において、導電性膜6Aの突起部の先端からゲート電極5に向かって電界放出された電子は、その一部もしくは全てが、ゲート電極5或いはゲート電極5上の導電性膜6Bに衝突する可能性が高い。
放出された電子のゲート電極5もしくは導電性膜6Bへの衝突箇所は、ゲート電極5の、凹部7を形作っている部分51(ゲート電極5の下面)と、導電性膜6Bの斜面61とに大別されるが、多くの場合は、導電性膜6Bの斜面61に衝突する。
この際、導電性膜6Bの抵抗率が大きいと、電子衝突により導電性膜6Bが発熱して蒸発、変形する可能性があり、その場合には前記のIfが劣化する等、信頼性に関わる問題が生じてしまう。この為、導電性膜6Bの抵抗率は、小さい方が良好である。
図5(a)にはモリブデン膜の膜密度と抵抗率の関係を示した。図からも判る様に、一般に金属の膜密度と抵抗率は反比例の関係にある。そのため、抵抗率を小さくする為には膜密度を大きくする必要がある。
以下、上記電子放出素子を複数配して得られる電子源を備えた画像表示装置について、図9〜図11を用いて説明する。
図9において、61は基板、62はX方向配線、63はY方向配線であり、また、64は上記した電子放出素子、65は結線である。尚、X方向配線62は、上述のカソード電極2を共通に接続する配線であり、Y方向配線63は上述のゲート電極5を共通に接続する配線である。
m本のX方向配線62は、DX1,DX2,…DXmからなり、真空蒸着法,印刷法,スパッタ法等を用いて形成された金属等の導電性材料で構成することができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。
Y方向配線63は、DY1,DY2,…DYnのn本の配線よりなり、X方向配線62と同様に形成される。これらm本のX方向配線62とn本のY方向配線63との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m,nは、共に正の整数)。
不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法,印刷法,スパッタ法等を用いて形成される。例えば、X方向配線62を形成した基板61の全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線62とY方向配線63の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配線62とY方向配線63は、それぞれ外部端子として引き出されている。
配線62と配線63を構成する材料、結線65を構成する材料及びカソード、ゲートを構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。
X方向配線62には、X方向に配列した電子放出素子64の行を選択するための走査信号を印加するための不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線63には、Y方向に配列した電子放出素子64の各列を入力信号に応じて変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。
各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択して、独立に駆動可能とすることができる。
このような単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像表示装置について、図10を用いて説明する。図10は画像表示装置の画像表示パネル77の一例を示す模式図である。
図10において、61は電子放出素子を複数配した基板、71は基板61を固定したリアプレートである。また、76は、ガラス基板73の内面に、アノードであるメタルバック75と、発光体の膜74としての蛍光体膜等が形成されたフェースプレートである。
また、72は支持枠であり、この支持枠72には、リアプレート71、フェースプレート76がフリットガラス等の接合材を用いて封着(接合)されている。77は外囲器であり、例えば大気中あるいは、窒素中で、400〜500度の温度範囲で10分以上焼成することで、封着して構成される。
また、64は、図1における電子放出素子に相当するものであり、62,63は、電子放出素子のカソード電極2、ゲート電極5とそれぞれ接続されたX方向配線及びY方向配線である。図10では電子放出素子64と配線62、63との位置関係は模式的に示されている。実際には、配線62と配線63との交差部の脇の基板上に電子放出素子64が配置されている。
画像表示パネル77は、上述の如く、フェースプレート76、支持枠72、リアプレート71で構成される。ここで、リアプレート71は主に基板61の強度を補強する目的で設けられるため、基板61自体で十分な強度を持つ場合には、別体のリアプレート71は不要とすることができる。
即ち、基板61に直接支持枠72を封着するとともに、支持枠とフェースプレート76とを封着して外囲器77を構成しても良い。一方、フェースプレート76とリアプレート71との間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ画像表示パネル77を構成することもできる。
次に、上記画像表示パネル77に、テレビ信号に基づいたテレビジョン表示を行うための駆動回路の構成例について、図11を用いて説明する。
図11において、77は画像表示パネル、92は走査回路、93は制御回路、94はシフトレジスタである。95はラインメモリ、96は同期信号分離回路、97は変調信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
表示パネル77は、端子Dox1乃至Doxm、端子Doy1乃至Doyn、及び高圧端子Hvを介して外部の電気回路と接続している。
端子Dox1乃至Doxmには、表示パネル77内に設けられている電子源、即ち、M行N列の行列状にマトリクス配線された電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為の走査信号が印加される。
一方、端子Doy1乃至Doynには、走査信号により選択された一行の電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加される。
高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば10[kV]の直流電圧が供給される。
上述のように走査信号、変調信号、及びアノードへの高電圧印加により、放出された電子を加速して蛍光体へと照射することによって、画像表示を実現することができる。
以下、上記実施の形態に基づいた、より具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
図6を参照して、本実施例の電子放出素子の製造方法を説明する。
基板1は高歪点低ナトリウムガラス(旭硝子(株)製PD200)を用いた。
まず最初に、図6(a)に示すように基板1上に絶縁層30、40と、導電層50を積層する。
絶縁層30は、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、窒化シリコン(Si)膜をスパッタ法にて形成し、その厚さとしては、500nmとした。
絶縁層40は、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜である酸化シリコン(SiO)であり、スパッタ法にて形成し、その厚さとしては、30nmとした。
導電層50は窒化タンタル(TaN)膜で構成し、スパッタ法にて形成し、その厚さとしては、30nmとした。
次に、図6(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術により導電層50上にレジストパターンを形成したのち、ドライエッチング手法を用いて導電層50、絶縁層40、絶縁層30を順に加工する。この第1エッチング処理により、導電層50はパターニングされてゲート電極5となり、絶縁層30はパターニングされて第1絶縁層3となる。
この時の加工ガスとしては、絶縁層30、40及び導電層50にはCF系のガスを用いた。このガスを用いたRIEにより、絶縁層30,絶縁層40,及びゲート電極5のエッチング後の側面の角度を、基板の表面(水平面)に対しておよそ80°に形成した。さらに、絶縁層30の側面22と基板1の表面(基板水平方向11)とがなす角度(α)は80°であった(図6(c)参照)。
レジストを剥離した後、BHF(ステラケミファ(株)製 高純度バッファードフッ酸LAL100)を用いて凹部7の深さが約100nmになるように、絶縁層40をエッチングした。この第2エッチング処理により、絶縁層3,4からなる絶縁形成部材10に凹部7を形成した(図6(c))。
次に、図6(d)に示すようにモリブデン(Mo)を、第1絶縁層3の斜面22上と上面(凹部の内表面)21上、及びゲート電極5上に付着させ、導電性膜6Aと導電性膜6Bを同時に形成した。この時、図6(d)に示す様に、導電性膜60Aと導電性膜60Bとが接触するように成膜した。
本実施例では成膜方法としてスパッタ法を用いた。ここではスパッタタ−ゲットに対して基板1の角度を水平状態から40°に傾けた。このため、角度θ(図6(c)参照)は40°となる。
このように行った理由は、絶縁層3の上面21の上と絶縁層3の側面22の上に蒸着するMoの膜質を同等にするためである。より詳細には、スパッタ粒子の入射方向Aと、基板1の表面の法線方向12とのなす角度θを、θ=α/2の関係とすることで、側面21上のMo膜と上面22上のMo膜の膜質が同等になるためである(図6(c))。そこで、本実施例では、角度αは80°であるため、角度θをは40°とした。
また、本実施例のスパッタ成膜では、スパッタ粒子の入射方向とターゲット表面に対する法線方向とのなす角度が0°±10°となるよう、基板とターゲットの間に遮蔽板を設けた。
このように、絶縁層3の上面21と絶縁層3の側面22とのなす角度を二等分する方向(本実施例では、図6(c)に示すように、α=80°のため、θ=40°とした方向)から、ターゲットからのスパッタ粒子(Mo)を入射させた。更にアルゴンプラズマをパワー3kW、真空度0.1Paで生成し、基板1とMoターゲットとの距離を60mm以下(0.1Paでの平均自由行程)になるように基板1を設置した。そして、絶縁層3の側面22の上のMoの厚さが60nmになるように10nm/minの蒸着速度で形成した。
このとき、凹部7内への導電性膜60Aの入り込み量(図3(b)における距離x)が35nmとなるように導電性膜60Aを形成した。
TEM(透過電子顕微鏡)観察とEELS(電子エネルギー損失分光)分析を行った。その結果をもとに、Moの膜密度を算出したところ導電性膜60Aはいずれの箇所においても同等の膜密度であった。
次に、図8(a)〜図8(c)に示す様に、Moからなる導電性膜60Aと導電性膜60Bを、複数に分割するパターニング処理を行った。このような形態とすることで、例えば1つの導電性膜とゲート電極5とが放電などによって短絡して電子が放出されなくなっても、他の導電性膜からの電子放出は維持することができる。
ここでは、導電性膜60A1〜60A4の幅T1(図8(a))が3μmのライン&スペースになるようにフォトリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成した。その後、ドライエッチング手法を用いてパターニングし、短冊化された導電性膜60A1〜60A4及び導電性膜60B1〜60B4を形成した。この時の加工ガスとしては、モリブデンはフッ化物を作る材料であるためCF系のガスを用いた。
但し、この段階では、図6(d)に示す様に導電性膜60A1〜60A4と導電性膜60B1〜60B4は接触している。
次に、電子放出部となる間隙8を形成する為に、図6(e)に示す様に、短冊化した導電性膜60A1〜60A4と導電性膜60B1〜60B4に対してエッチング処理(第3エッチング処理)を行った。
第3エッチング処理は、Moからなる導電性膜60A1〜60A4と導電性膜60B1〜60B4の表面を酸化する工程と、酸化した表面を除去する工程が含まれている。
具体的には、Moを酸化する方法としてはエキシマUV(波長:172nm、照度:18mw/cm)露光装置を使用して、大気下で350mJ/cm照射した。この条件で、導電性膜60A1〜60A4と導電性膜60B1〜60B4の表面には1〜2nm程度の膜厚で酸化層が形成された。即ち、第1絶縁層3の上面21の上のMoと、第1絶縁層3の側面22の上のMoの表面には1〜2nm程度の膜厚で酸化層が形成された。続いて温水(45℃)に5分間浸漬させて酸化モリブデン層を除去した。この工程で、導電性膜60A1〜60A4と導電性膜60B1〜60B4との間に間隙8を形成した(図6(e))。また、この工程により、導電性膜60A1〜60A4の突起部の先鋭化も行った。
断面TEMによる解析の結果、図6(e)における電子放出部となる導電性膜60A1〜60A4の各突起部とゲート電極5との間の最短距離8が平均的に15nmとなっていた。
次に図6(f)に示すように、カソード電極2を形成し電子放出素子を形成した。電極2には銅(Cu)を用いた。その作成方法はスパッタ法にて形成され、その厚さとしては、500nmであった。
本実施例で作成した電子放出素子は、絶縁層3の上面21の上のMoと第1絶縁層3の側面22の上のMoのエッチングレートは同等である。そのため、上記第3エッチング処理を行っても、側面22の上のMoが優先的にエッチングされることを抑制することができた。その結果、約11%の高い電子放出効率が得られ、カソード電極から導電性膜6Aの突起部に安定に電位を供給することができ、安定な電子放出を得ることのできる電子放出素子を実現できた。
また、本実施例で作成した電子放出素子を多数用いた画像表示装置では、電子ビームの成形性に優れ、放電が生じても画素欠陥が生じずに良好な画像を長期に渡って維持することができる。また、電子放出効率の向上に伴う、低消費電力な画像表示装置が提供できる。
(実施例2)
本実施例では、実施例1よりも絶縁層3の側面の上のMoのエッチングレートを低減させた。
本実施例で作成した電子放出素子の基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。
絶縁層40をエッチングし、絶縁層3,4からなる段差形成部材10に凹部7を形成する工程までは、実施例1と同様である。
本実施例では、スパッタタ−ゲットに対して基板1の角度を水平状態から50°に傾けた。このため、角度θ(図6(c)参照)は50°となる。
このように行った理由は、絶縁層3の側面22に堆積するMoの膜質をより良質なものとするためである。前述したように、スパッタ粒子の入射方向Aと基板1の表面の法線方向12とのなす角度θを、α/2≦θ≦90°とすることで、側面のMoの膜質をより良質なものとすることができる。そこで、本実施例では絶縁層の側面22と基板1の表面とのなす角度αは80°であるから、角度θを50°とした。
上記以外の工程については、実施例1と同様である。
本実施例のように、θ=50°で導電性膜6Aを成膜した場合と、比較のために、θ=0°で導電性膜6Aを成膜した場合とでは、θ=50°で成膜した方が40%程度、エッチングレートが低減されていた。また、実施例1の場合よりも絶縁層3の側面22の上のMoのエッチングレートは低減されていた。
これにより、α/2≦θ≦90°で成膜することにより、絶縁層3の側面22の上のMoが絶縁層3の上面21の上のMoに比べて過剰なレートでエッチングされることを抑制することができる。
断面TEMによる解析の結果、図6(e)における電子放出部となる導電性膜60A1〜60A4の各突起部とゲート電極5との間の最短距離8が平均的に16nmとなっていた。
本実施例で作成した電子放出素子は実施例1と同様に良好な特性を備えており、また、本実施例の電子放出素子を用いた画像表示装置では、実施例1と同様に良好な表示装置を提供できる。
(実施例3)
本実施例ではゲート電極5の側面上のMoを実施例1および2よりも後退させた。
本実施例で作成した電子放出素子の基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。
本実施例では、ゲート電極5の側面52と基板1の水平方向11との成す角度Φが50°となるように、導電層50、絶縁層40、絶縁層30をエッチングした。尚、αは実施例1と同じ80°である。
そして、本実施例では、スパッタ粒子の入射方向Aと基板1の法線方向12とのなす角度θを70°としてMoの成膜を行った。これは、ゲート電極5の側面52上のMoのエッチングレートが、絶縁層3の側面22上のMoのエッチングレートよりも大きくするためである。ゲート電極5の側面52の角度Φが50°でありαは80°であるので、(80°+50°)/2≦θ≦90°となり前述した関係式1を満たす。この結果、ゲート電極5の側面52上のMoのエッチングレートが絶縁層3の側面22上のMoのエッチングレートより速くなる。
上記以外の工程については、実施例1と同様として本実施例の電子放出素子を作成した。
続いて、図2に示した構成で電子放出素子の特性を評価した。
ここで、特性の評価では、ゲート電極5(及び導電性膜60B1〜60B4)の電位を30Vとし、導電性膜60A1〜60A4の電位を電極2を介して0Vに規定した。これによって、ゲート電極5と導電性膜60A1〜60A4との間に30Vの駆動電圧を印加した。その結果、平均の電子放出電流Ieは15μAであり、平均12%の高い電子放出効率が得られる電子放出素子が得られた。また、導電性膜60A1〜60A4とゲート電極5(導電性膜60B1〜60B4)との微小な領域での接触に起因するリーク電流も観測されなかった。
本実施例では、ゲート電極5の側面上のMoを実施例1および2の電子放出素子に比べて後退させたので、導電成膜60A1〜60A4の各先端から電界放出された電子のゲート電極5の側面上のMo膜への衝突・散乱を低減できる。その結果、より多くの電子がアノード電極へ到達でき、電子放出効率を向上することが可能となる。
(実施例4)
本実施例では、絶縁層30および絶縁層40のエッチング工程で角度αを低減させることにより、絶縁層3の側面22上の導電性膜の膜質を向上した電子放出素子を作製した。
本実施例で作成した電子放出素子の基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。
本実施例では、絶縁層3の側面22と基板1の表面(水平方向11)とのなす角度αを70°とした。
導電性膜6Aの材料であるMoの成膜では、基板の法線方向12とスパッタ粒子の入射方向Aとのなす角度θが90°(基板面にたいして平行)になるようにMoを形成した。
上記以外の工程については、実施例1と同様として本実施例の電子放出素子を作成した。
その結果、本実施例においてαが70°である絶縁層3の側面へ成膜したMoと、比較のために同じ成膜条件でαが80°である絶縁層3の側面へ成膜したMoでは、前者の方が好ましい結果となった。即ち、αが70°である絶縁層3の側面へ成膜したMoの方がαが80°である絶縁層3の側面へ成膜したMoよりも10%程度、エッチングレートが低減されていた。これにより、斜面αが低減することにより、絶縁層3の側面22上のMoの膜質を向上することが可能であることがわかる。
但し、本実施例で作成した電子放出素子は、実施例1の電子放出素子に比べて高い駆動電圧が必要であった。
本実施例で作成した電子放出素子を用いた画像表示装置では、電子放出素子がリーク電流が少なく電子放出効率が高いため、良好な画像表示装置を提供できる。
電子放出素子の構成の一例を表す図 電子放出特性を測定するための構成を説明する図 電子放出素子の電子放出部近傍の拡大側面図 電子放出素子から放出された電子の説明図 金属膜密度と抵抗率の関係を表す図と成膜角度とエッチングレートの関係を表す図 電子放出素子の製造方法の工程を説明した図 第3エッチング処理についての説明図 電子放出素子の他の構成の一例を表す図 電子放出素子を用いた電子源の説明図 電子放出素子を用いた画像表示装置の説明図 画像表示装置を駆動する駆動回路の一例を示す回路図
符号の説明
3、4 絶縁層(絶縁部材)
6A、6B 導電層
7 凹部(リセス)

Claims (10)

  1. 電子放出素子の製造方法であって、
    上面と該上面と角部を介して接続する側面とを備える絶縁層の上に、前記側面から前記上面にかけて延在し、前記角部の少なくとも一部を覆う、導電性膜を形成する第1工程と、
    前記導電性膜をその膜厚方向にエッチング処理する第2工程と、を含み、
    前記第1工程は、前記導電性膜の一部であって前記側面の上に位置する部分の膜密度と、前記導電性膜の一部であって前記絶縁層の前記上面の上に位置する部分の膜密度とが同等となるように、前記導電性膜を形成する工程であることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  2. 前記第2工程は、前記導電性膜をエッチング処理する前に、前記導電性膜の表面を酸化する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子の製造方法。
  3. 前記導電性膜の表面を酸化する処理と、前記導電性膜をエッチング処理とを、繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の電子放出素子の製造方法。
  4. 前記絶縁層の上に前記絶縁層とは別の絶縁層を間に挟んでゲート電極を設ける工程を更に含み、
    前記第1工程により、前記絶縁層の上の前記導電性膜に加えて、前記ゲート電極の上に、前記絶縁層の上の前記導電性膜と接続する、別の導電性膜が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子放出素子の製造方法。
  5. 前記ゲート電極は、その側面と前記絶縁層の上面との成す角度が、前記絶縁層の前記側面と前記上面との成す角度よりも小さく、
    前記第1工程により、前記絶縁層の上の前記導電性膜と前記ゲート電極の上の前記導電性膜とが、同時に、形成されることを特徴とする請求項4に記載の電子放出素子の製造方法。
  6. 電子放出素子の製造方法であって、
    上面と該上面と接続する側面とを備える絶縁層の上に、前記側面から前記上面にかけて延在する導電性膜を形成する第1工程と、
    前記導電性膜をその膜厚方向にエッチング処理する第2工程と、を含み、
    前記第1工程は、前記導電性膜の原料が前記絶縁層の前記側面に対して入射する角度が、前記導電性膜の原料が前記絶縁層の前記上面に対して入射する角度以上となるように、指向性を有する成膜方法を用いて行うことで、前記導電性膜を形成する工程である、
    ことを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  7. 前記絶縁層は、基板の表面に、前記絶縁層の前記側面と前記基板の前記表面とのなす角度がαとなるように、設けられており、
    前記導電性膜の前記原料の入射方向と前記基板の表面に対する法線とのなす角度θは、α/2以上90°以下であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出素子の製造方法。
  8. 電子放出素子の製造方法であって、
    上面と接続する側面とを備える絶縁層の上に、前記側面から前記上面にかけて延在する導電性膜を形成する第1工程と、
    前記導電性膜をその膜厚方向にエッチング処理する第2工程と、を含み、
    前記第1工程は、前記導電性膜の一部であって前記側面の上に位置する部分の膜密度が、前記導電性膜の一部であって前記絶縁層の前記上面の上に位置する部分の膜密度と同等以上となるように、前記導電性膜を形成する工程であることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  9. 前記第1工程は、前記導電性膜の原料が前記絶縁層の前記側面に対して入射する角度が、前記導電性膜の原料が前記絶縁層の前記上面に対して入射する角度以上となるように、指向性を有する成膜方法を用いて行うことで、前記導電性膜を形成する工程であり、
    前記絶縁層は、基板の表面に、前記絶縁層の前記側面と前記基板の前記表面とのなす角度がαとなるように、設けられており、
    前記導電性膜の前記原料の入射方向と前記基板の表面に対する法線とのなす角度θは、α/2以上90°以下であることを特徴とする請求項8に記載の電子放出素子の製造方法。
  10. 複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子から放出された電子が照射される発光体と、を備える画像表示装置の製造方法であって、前記複数の電子放出素子の各々が、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の製造方法で製造されることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
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