JP7269449B2 - 卵様乾燥組成物及び卵様乾燥組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
畜産物は、植物性飼料からの転換率が10~25%と低いため、環境負荷が高いことが問題視されている。このような社会的観点から、動物性原料から植物性原料にシフトしようという全世界的流れがある。そこで、植物性原料だけを使用した製品が求められている。
また、アレルギーの観点からも鶏卵を用いず、卵様加工品を提供するための研究開発が行われている(例えば、特許文献1~6参照。)。
特許文献2に記載の技術は動物性原料を含有しない。しかし、加熱後に凍結組織化して乾燥するものであって、食味、製造コストの点で満足できるものではなかった。
特許文献3に記載の技術は動物性原料を含有しない。しかし、フライパン等で調理するものであり、乾燥食品としての態様は示されておらず大量生産には向いていないものであった。
特許文献4に記載の技術は鶏卵を用いたスクランブルエッグを蒸した後に熱風乾燥するものであり、乾燥品の復元性、生産性が満足できるものではなかった。
特許文献5に記載の技術は鶏卵を含有し高マイクロ波密度で処理する方法であり、エネルギー、コスト的に現実的ではなかった。
特許文献6に記載の技術は用時の調理工程を必要とし大量生産に向くものではなかった。また、乾燥品ではなく、メチルセルロースを使用するため、原材料の溶解工程にかかる時間や温度管理が煩雑であり、乾燥品を製造する場合には加水を多く必要とする課題があった。
動物性原料非含有の卵様乾燥組成物は、より好ましくはカサ比重が0.1~0.3kg/Lで注湯3分復元後の吸水率が2~7倍であり、注湯3分復元後面積倍率が1.1~1.8であり、注湯3分復元後の最大荷重が350~950gであることを特徴とする。
動物性原料非含有の卵様乾燥組成物の製造方法は、(1)大豆蛋白、不溶性食物繊維、ガラクトマンナン及び/又はアルギン酸ナトリウム、植物由来糖質、及び植物油脂を含有する原料に対して水を加え混合造粒し、混練して生地を調製する生地製造工程、(2)前記生地を小分けして小分け生地とする小分け工程、(3)前記小分け生地を膨化乾燥させる膨化乾燥工程を有し、前記膨化乾燥工程でマイクロ波加熱乾燥を用いることを特徴とする。
上記製造方法において、(1)前記生地製造工程において、生地中にトランスグルタミナーゼ及び/又はグルコースオキシダーゼを含有しておき、(2)前記小分け工程の前または後に、生地を酵素処理する酵素処理工程を有することが好ましい。
また、別の発明に係る食品は、上記卵様乾燥組成物または上記製造方法によって製造された卵様乾燥組成物を含有することを特徴とする。
本発明における大豆蛋白とは、特に限定するものではないが、例えば、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、豆乳粉末等が挙げられ、好ましくは分離大豆蛋白であり、分離大豆蛋白と濃縮大豆蛋白、豆乳粉末、粒状大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、緑豆蛋白、ナタ豆蛋白などの植物性の蛋白を含有する原料を意味する。
本発明の卵様乾燥組成物中の大豆蛋白の含有量は、20~50質量%、好ましくは20~40質量%である。
本発明における不溶性食物繊維の形状は、棒状繊維でも球状繊維でもよく、これらの併用も可能である。
本発明における不溶性食物繊維の粒度とは、粒子の大きさの度合いを示した値を意味する。本発明における不溶性食物繊維の粒度は、好ましくは粒度が目開き400μmパスであり、目開き300μmパスより細かいほうがより好ましい。
本発明の卵様乾燥組成物中の不溶性食物繊維の含有量は、好ましくは5~15質量%であり、より好ましくは7~13質量%である。含有量が16質量%以上になると注湯3分復元後の食感が紙様になり、復元後のボリュームが十分でない。含有量が4質量%以下では注湯3分復元後の吸水率が低くなる。
本発明の卵様乾燥組成物中のガラクトマンナン及び/又はアルギン酸ナトリウムの含有量は、注湯3分復元後に食感のつるみ感(表面の「つるっ」とした感じ、なめらかさ)を付与できれば良い。生地のまとまりを良くし、小分け工程適正を向上できる観点から、ガラクトマンナン及び/又はアルギン酸ナトリウムの含有量は、好ましくは0.05~8質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%である。
本発明の卵様乾燥組成物中の植物由来糖質の含有量は、好ましくは30~50質量%であり、より好ましくは35~45質量%である。
本発明の卵様乾燥組成物中の植物油脂の含有量は、好ましくは5~15質量%であり、より好ましくは7~12質量%である。
本発明におけるグルコースオキシダーゼとは、グルコース、酸素、水を基質としてグルコン酸と過酸化水素を生成する反応を触媒する活性を有する酵素である。当該反応により生成された過酸化水素は、タンパク質中のSH基(チオール基)を酸化することでS-S結合(ジスルフィド結合)生成を促進し、タンパク質中に架橋構造を形成する。グルコースオキシダーゼは、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のもの等、種々の起源のものがある。本発明において用いられるグルコースオキシダーゼは、動物性原料非由来で微生物由来のものを用いることが好ましい。
(注湯3分復元後の吸水率(倍))=(注湯3分復元後の卵様乾燥組成物の質量)/(注湯前の乾燥組成物の質量)………(式1)
本発明の卵様乾燥組成物における注湯3分復元後の吸水率は、卵様乾燥組成物が即席食品用の加工食品であり、注湯復元後の見栄えの観点から、好ましくは2~7倍である。
(復元面積倍率(倍))=(復元後面積)/(卵様乾燥組成物面積)……(式2)
具体的には、卵様乾燥組成物10gを組成物どうしが重ならないように広げ画像化する。この画像を画像処理用ソフトウエア(例えば、DIPP-IMAGEソフト(株式会社ディテクト社製))を用いて面積を算出し、卵様乾燥組成物面積とする。この卵様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、98℃の湯300mLを注ぎ3分復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切りをし、組成物どうしが重ならないように広げ画像化する。この画像を前述の画像処理用ソフトウエアで面積を算出し、復元後面積とする。そして、復元後面積を卵様乾燥組成物面積で除して復元面積倍率を算出する。
本発明の卵様乾燥組成物における復元面積倍率は、卵様乾燥組成物が即席食品用の加工食品であり、注湯復元後の見栄えの観点から、好ましくは1.1~1.8である。
本発明の卵様乾燥組成物における最大荷重は、卵様乾燥組成物が即席食品用の加工食品であり、食感の観点から、好ましくは350~950gである。
また、マイクロ波による膨化乾燥後の卵様乾燥組成物の粒の大きさとして、好ましくは4~16mmになればよく、これらの粒の大きさを満たす卵様乾燥組成物が粒度分布として50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
表1に記載の配合比率にて、実施例1~6の卵様乾燥組成物を調製した。具体的には、粉体原料をフードプロセッサーで混合し、粉体混合物を調製し、この粉体混合物と液体原料、水をフードプロセッサーに投入し、造粒した後、縦型ケーキミキサーで混練し、生地を得た。この生地を小分け工程としてパワーミル(昭和化学機械工作所)にてφ16mmのパンチングスクリーン、周波数8Hzの条件で粉砕し、φ4mmのパンチングスクリーンで篩別し、4~16mmの小分け生地を調製した。この小分け生地100gに対しマイクロ波出力3kw、80秒間加熱の条件で膨化乾燥した後、パワーミル(昭和化学機械工作所)にてφ16mmのパンチングスクリーン、周波数20Hzの条件で解砕し整粒した。その後、80℃で、30分間熱風乾燥し水分含量を5質量%以下とした。最後に、φ4mmのパンチングスクリーンで篩別し、粒度分布が50質量%以上である実施例を得た。
表1に記載の大豆蛋白は分離大豆蛋白を、不溶性食物繊維は粒度が目開き300μmパス品を、澱粉は馬鈴薯澱粉を、植物由来糖質はとうもろこし、馬鈴薯、さつまいも、キャッサバ等が起源のブドウ糖を水素添加によって還元された糖アルコールであるD-ソルビトール液(固形分70質量%)を、植物油脂は米油を用いた。表1中の「*」は液体原料を示す。これ以外の原料については、全て粉体を示す(他の表においても同じ)。
表2に記載の配合比率にて、動物性原料を用いた比較品1の卵様乾燥組成物を調製した。製造方法は、実施例1~6の製造方法と同様とした。
実際の殻付きの生卵を使用して得た本物のスクランブルエッグとして参考品1のスクランブルエッグを調製した。具体的には、殻付きの鶏卵より得た全卵100gと牛乳60gをボール内で混合し、フライパンに米油10gをひき弱火~中火にて菜箸で時々かき混ぜながら1分間火を通した。
実施例1~6、比較例1の卵様乾燥組成物の製造方法の小分け工程において、(式3)で示す通り、パワーミルで粉砕された生地の全質量に対して、φ16mmのパンチングスクリーンをパスし、φ4mmのパンチングスクリーンにオンした生地の割合を小分け生地粒度分布(質量%)として算出した。結果を表3に示した。
(小分け生地粒度分布(質量%))=(φ16mmのパンチングスクリーンをパスし、φ4mmのパンチングスクリーンにオンした生地の質量)/(パワーミルで粉砕された生地の全質量)×100………(式3)
実施例1~6、比較例1の卵様乾燥組成物の製造方法の製造適正を試験例1で算出された小分け生地粒度分布に基づいて、以下の評価基準にて5段階で評価した。結果を表3に示した。
5:小分け生地粒度分布が90質量%以上
4:小分け生地粒度分布が80質量%以上~90%未満
3:小分け生地粒度分布が70質量%以上~80質量%未満
2:小分け生地粒度分布が60質量%以上~70質量%未満
1:小分け生地粒度分布が60質量%未満
(式4)に示す通り、熱風乾燥後に得られた実施例1~6、比較品1の卵様乾燥組成物の全質量に対して、φ16mmのパンチングスクリーンをパスし、φ4mmのパンチングスクリーンにオンしたものの割合を粒度分布(質量%)として、粒度分布を算出した。結果を表3に示した。
(粒度分布(質量%))=(φ16mmのパンチングスクリーンをパスし、φ4mmのパンチングスクリーンにオンしたものの質量)/(熱風乾燥後に得られた実施例1~6の卵様乾燥組成物の全質量)×100………(式4)
1L容器(直径10cm)に実施例1~6、比較品1の卵様乾燥組成物を10cmの高さからあふれるまで投入し、上面をすり切った時の卵様乾燥組成物重量(kg)を測定し、カサ比重(kg/L)を算出した。結果を表3に示した。
実施例1~6、比較品1の卵様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、98℃の湯300gを注ぎ、3分間復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切りをし、注湯3分復元後の卵様乾燥組成物の質量を測定し、注湯前の卵様乾燥組成物の質量で除して、注湯3分復元後の吸水率(倍)を算出した。結果を表3に示した。
実施例1~6、比較品1の卵様乾燥組成物10gを組成物どうしが重ならないように広げ、デジタル写真撮影した。このデジタル画像をDIPP-IMAGEソフト(株式会社ディテクト社製)で面積を算出し、卵様乾燥組成物面積とした。この卵様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、98℃の湯300gを注ぎ3分間復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切りをし、復元後の卵様乾燥組成物同士が重ならないように広げ、デジタル写真撮影した。このデジタル画像をDIPP-IMAGEソフト(株式会社ディテクト社製)で面積を算出し、復元後面積とした。そして、復元後面積を卵様乾燥組成物面積で除して復元面積倍率(倍)を算出した。結果を表3に示した。
実施例1~6、比較品1の卵様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、98℃の湯300mLを注ぎ3分間復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切の卵様乾燥組成物をJISカサ比重測定容器の内径φ33mm、100ml容器に満量入れ、レオメーターでヨーグルトナイフφ30プランジャーを用い、2cm/min.の条件で最大荷重を測定した。参考品1のスクランブルエッグも上記と同様の条件で最大荷重(g)を測定した。結果を表3に示した。
実施例1~6、比較品1の卵様乾燥組成物10gを500mlビーカーに入れ、98℃の湯を注ぎ、3分間復元した後、18メッシュの篩で30秒間静置湯切りした復元物について官能評価した。パネラー10名で、参考品1のスクランブルエッグの食感を評価基準の5点として、以下の評価基準にて5段階の官能評価を実施した。平均点3点以上を卵様食感として認識できると判断した。結果を表3に示した。
5点:スクランブルエッグの食感と同じである
4点:スクランブルエッグの食感に近似である
3点:スクランブルエッグの食感と少し似ている
2点:スクランブルエッグの食感とは少し異なる
1点:スクランブルエッグの食感とは全く異なる
実施例1~6の卵様乾燥組成物は、比較品1の動物性原料を使用した卵様乾燥組成物と同様の物性を示したことから、動物性原料を使用することなく従来技術と同等の物性を有した卵様乾燥組成物を得ることができた。
表24に記載の配合比率で、実施例60~62を調製した。製造方法は実施例1~6の製造方法と同様とし、生地を常温で30分間処理する工程を加えた。
Claims (6)
- 大豆蛋白、不溶性食物繊維及び多糖類を含有し、組成物の粒度分布が4~16mmのものを50質量%以上含有し、多糖類がガラクトマンナンであり、大豆蛋白を20~50質量%、不溶性食物繊維を5~15質量%、ガラクトマンナンを0.01~8質量%、植物由来糖質を30~50質量%、及び植物油脂を5~15質量%含有し、カサ比重が0.1~0.3kg/Lであり、注湯3分復元後の吸水率が2~7倍であり、注湯3分復元後面積倍率が1.1~1.8であり、注湯3分復元後の最大荷重が350~950gである、動物性原料非含有の卵様乾燥組成物。
- 請求項1に記載の卵様乾燥組成物の製造方法であって、(1)大豆蛋白を20~40質量%、ガラクトマンナンを0.1~3質量%、不溶性食物繊維を5~15質量%、植物由来糖質を30~50質量%、及び植物油脂を5~15質量%含有する原料100質量部に対して40~150質量部の水を加え混合造粒し、混練して生地を調製する生地製造工程、(2)前記生地を小分けして小分け生地とする小分け工程、(3)前記小分け生地を膨化乾燥させる膨化乾燥工程を有し、前記膨化乾燥工程でマイクロ波加熱乾燥を用いることを特徴とする卵様乾燥組成物の製造方法。
- 大豆蛋白、不溶性食物繊維及び多糖類を含有し、組成物の粒度分布が4~16mmのものを50質量%以上含有し、多糖類がアルギン酸ナトリウムであり、大豆蛋白を20~50質量%、不溶性食物繊維を5~15質量%、アルギン酸ナトリウムを0.05~8質量%、植物由来糖質を30~50質量%、及び植物油脂を5~15質量%含有し、カサ比重が0.1~0.3kg/Lであり、注湯3分復元後の吸水率が2~7倍であり、注湯3分復元後面積倍率が1.1~1.8であり、注湯3分復元後の最大荷重が350~950gである、動物性原料非含有の卵様乾燥組成物。
- 請求項3に記載の卵様乾燥組成物の製造方法であって、(1)大豆蛋白を20~40質量%、アルギン酸ナトリウムを0.1~3質量%、不溶性食物繊維を5~15質量%、植物由来糖質を30~50質量%、及び植物油脂を5~15質量%含有する原料100質量部に対して40~150質量部の水を加え混合造粒し、混練して生地を調製する生地製造工程、(2)前記生地を小分けして小分け生地とする小分け工程、(3)前記小分け生地を膨化乾燥させる膨化乾燥工程を有し、前記膨化乾燥工程でマイクロ波加熱乾燥を用いることを特徴とする卵様乾燥組成物の製造方法。
- 請求項2または4に記載の卵様乾燥組成物の製造方法であって、(1)前記生地製造工程において、生地中にトランスグルタミナーゼ及び/又はグルコースオキシダーゼを含有しておき、(2)前記小分け工程の前または後に、生地を酵素処理する酵素処理工程を有する卵様乾燥組成物の製造方法。
- 請求項1または3に記載の卵様乾燥組成物または請求項2または4に記載の製造方法によって製造された卵様乾燥組成物を含有する食品。
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