JP4378594B2 - クラッカー粉類似物およびこれを用いた食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッカー粉の代替物として、よりクリスピーな食感を付与し得るクラッカー粉類似物およびそれを用いた食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、小麦粉を捏ねて焼成したクラッカーを粉砕して製造されるクラッカー粉は、従来からフライ食品に使用されている。しかし、従来のクラッカー粉の製造工程は、複雑多岐にわたり製造時間が長いという欠点がある。そのため、近年そのようなクラッカー粉の代わりにポテトフレークを用いた衣付け食品やパン粉類似物の製造法(特公昭49−32939号公報、特開昭64−63348号公報)が提案されている。
【0003】
しかしながら、ポテトフレークを用いた衣付け食品は、クラッカー粉を用いた場合に比べ食感が非常に硬くなるという難点があり、価格も高価であったため、安価でクリスピー感のある素材が求められていた。
【0004】
一方、クラッカー粉類似物にはパン粉があるが、パン粉は吸油量が多く健康上の問題から吸油量を低減させたパン粉が求められている。さらにパン粉には、時間経過により吸湿しサクミや剣立ちが損なわれ食感を維持できないという致命的な欠点がある。
【0005】
また、上記の公報に記載された方法で作られたパン粉類似物では、1)エクストルーダーで膨化後圧延して組織を揃えているため、クリスピー感が損なわれる、2)コーン黄色部を使用するため、見た目がクラッカー粉やパン粉に見えない、3)穀物臭がするため風味が損なわれるなどの問題がある。そのため、クリスピー感があり、無臭かつ黄色でない素材の開発が切望されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クラッカー粉類似物やパン粉類似物を食品に適用する際の上記問題を克服し、クラッカー粉に近く、クラッカー粉の利点であるクリスピー感をより向上させた新規なクラッカー粉類似物を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の問題を解決するため種々研究を進めた結果、穀物をエクストルーダーで処理させてなる膨化物において、比重と粒度が所定の範囲に入るものがクリスピー感を向上させ、さらに穀物にホワイトコーンや米を用いて着色することにより風味や見た目もクラッカー粉に似ているということを見出し本発明を完成させた。
すなわち本発明は、穀物を主原料とし、比重が0.07〜0.7g/mlかつ粒度が8.6メッシュパス〜200メッシュオーバーの粉粒物を50%以上含有することを特徴とするクラッカー粉類似物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
比重の測定:本発明において、比重は以下の方法で測定する。
即ち、粉砕されたクラッカー粉類似物を100mlカップに入れ重量を測定し比重を決定する。
【0009】
粒度の測定:本発明において、粒度は以下の方法で測定する。
即ち、粉砕されたクラッカー粉類似物を50g採取し、8.6メッシュ、16メッシュ、60メッシュ、200メッシュを用いRetsch社の電磁式ふるい振とう機AS200型で15分間ふるって測定する。
【0010】
本発明のクラッカー粉類似物の製造法は特に限定されないが、通常、主原料である穀物をエクストルーダーを用い、温度100〜200℃、水分15〜40%、ダイ圧力5〜150kg/cm2、スクリュー回転100〜300rpmの条件で膨化物を作成した後、粗粉砕することにより、比重が0.07〜0.7g/mlおよび粒度が8.6メッシュパス〜200メッシュオーバーの範囲に入る粉粒物が少なくとも50%含まれるように調整する。
【0011】
本発明のクラッカー粉類似物を得るには、該クラッカー粉類似物の比重が0.07〜0.7g/ml、粒度が8.6メッシュパス〜200メッシュオーバーの範囲に入る粉粒物が50%以上になるように、主原料である穀物をα化、膨化処理させることが必須条件である。比重が0.7g/mlより大きい場合は硬くて食するには適さない。逆に比重が0.07g/mlより小さい場合はクリスピー感が損なわれ口の中で溶けるような食感になる。特公昭49−32939号公報にあるように押出し後圧延処理を行なうと、薄く潰されるために膨化させた効果が著しく低下し食感が非常に硬くなる。
【0012】
一方、本発明のクラッカー粉類似物において、粒度が8.6メッシュオーバーの場合は硬くなり繊維感が残る食感を有し、外見もクラッカー粉には見えない。逆に200メッシュパスの場合は、気泡による組織構造が粉砕によって壊されてしまいクリスピー感が損なわれる。
【0013】
クラッカー粉として用いるには、風味や色合いがクラッカー粉からかけ離れていては実用的でない。特開昭64−63348号公報にあるようなトウモロコシの黄色部を用いたのでは黄色の製品ができてしまい、見た目にクラッカー粉には見えない。またトウモロコシの黄色部は穀物臭が強く、フライ食品に用いるのは適当でない。本発明においては、主原料にホワイトコーンおよび/又は米を用いることにより穀物臭の問題を解決した。ホワイトコーンおよび/又は米を主原料とした場合は、色合いも白色であることから、1)糖や蛋白を一緒にエクストルーダー処理することによりメイラード反応させて焦げ色を付ける方法、2)着色料により色を付ける方法などにより色合いを自由に調整することができ、フライ食品で求められるような外観や風味を発現させることができる。さらに主原料に加えて油脂、糖、蛋白質、乳化剤等を副原料として使用することにより、一層食感を向上させクリスピー感のあるクラッカー粉類似物を得ることができる。なお、各種の食品用途において、本発明のクラッカー粉類似品を純品で使用する以外に、本発明の効果を損なわない程度に他のクラッカー粉ないしはその類似物を配合しても差支えない。
【0014】
本発明のクラッカー粉類似物を得るには、主原料である穀物を適切に膨化させる条件が必要である。特にエクストルーダーを使用する際には加水条件と圧力条件が重要である。、加水が多い場合や圧力が低い場合は膨化が不十分になり、逆に加水が少ない場合や圧力が高い場合は膨化しすぎてしまい、外観、食感を満足するクラッカー粉類似物を得ることができない。エクストルーダー使用時の適性条件は加水が20〜30%、ダイ圧力が30〜60kg/cm2、温度が120〜180℃、スクリュー回転が150〜300rpmである。
【0015】
本発明において主原料として使用できる穀物は、餅種米、米、小麦、とうもろこし、ホワイトコーン、豆類であり、これらを単独または併用して使用できる。特に好ましいのはホワイトコーン、米である。
【0016】
本発明において副原料として使用できる油脂は食用に供されるものであれば特に制限はなく、大豆油、ナタネ油、ひまわり油、オリーブ油、ハイオレイックナタネ油、パーム油、パーム核油、コーン油、ハイリノールサフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、綿実油等の植物油や牛脂、豚脂、魚油、乳脂等の動物油、さらにこれらの油脂に水素添加(硬化)、エステル交換、分別等の物理的または化学的処理をしたものが挙げられる。さらにはモノグリセリド、ジグリセリド等の油脂類似物質、油脂の構成成分である脂肪酸およびその誘導体も本発明の油脂に代えて使用できる。又、これらの油脂はバター、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等の形態で使用しても良い。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。これらの油脂の添加量は主原料である穀物100重量部に対して1〜10重量部であり、そのうち1〜5重量部が望ましい。
【0017】
本発明において副原料として使用できる糖は、食品に供するのであれば特に限定されるものではなく、デキストリン、澱粉、糖類、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン等である。澱粉としてはコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、エンドウ豆澱粉等があり、更には、これらの澱粉にエステル化処理、エーテル化処理、架橋処理、酸処理、酸化処理、湿熱処理等の物理的又は化学的処理を単独であるいは2種以上を組み合わせて施した食品加工澱粉がある。糖類としてはグルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、アラビノース、キシロース、リボース、ガラクトース、ガラクツロン酸、ウロン酸、ラムノース、フコース、マンノース、又はこれらを構成成分とする還元糖を有する物質等がある。これらはいずれも単独で又は2種以上を混合して使用できる。これら糖の添加量は主原料である穀物100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。
【0018】
本発明において副原料として使用できる蛋白質としては、食品に供するのであれば特に限定されるものではなく、卵白、卵黄、鶏卵(全卵)、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム、全脂肪乳、脱脂粉乳、コラーゲン、ゼラチン、血漿蛋白、小麦蛋白、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白等である。これらはいずれも単独で又は2種以上を混合して使用できる。これら蛋白質の添加量は主原料である穀物100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0019】
本発明において副原料として使用できる乳化剤としては、食品に供するのであれば特に限定されるものではなく、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチンが挙げられ、このうちで最も好ましいのはモノグリセリン脂肪酸エステルである。これらはいずれも単独で又は2種以上を混合して使用できる。これら乳化剤の添加量は主原料である穀物100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。このうち特に1重量部が最適である。
【0020】
本発明のクラッカー粉類似物はフライ食品、バッター生地、衣、パン、菓子、ハンバーグ、シュウマイ、ぎょうざ等練り込み用等の幅広い分野で使用することができる。そのなかでも、フライ食品、バッター生地、衣は本発明のクラッカー粉類似物の特徴を最も効果的に発揮し得る用途である。
【0021】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0022】
【実施例1】
ホワイトコーン粉砕物97部、パーム油1部、ぶどう糖1部、グリセリン脂肪酸エステル1部を、温度150℃、水分25%、ダイ圧力40kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物を水分10%未満まで乾燥し、その後、整粒機で粒度が16〜60メッシュの間になるように粒度をそろえて本発明のクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物の比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0023】
【実施例2】
米粉砕物97部、パーム油1部、ぶどう糖1部、グリセリン脂肪酸エステル1部を、温度150℃、水分25%、ダイ圧力40kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物を水分10%未満まで乾燥し、その後、整粒機で粒度が16〜60メッシュの間になるように粒度をそろえて本発明のクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物の比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0024】
【実施例3】
ホワイトコーン粉砕物100部を、温度150℃、水分25%、ダイ圧力40kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物を水分10%未満まで乾燥し、その後、整粒機で粒度が16〜60メッシュの間になるように粒度をそろえて本発明のクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物の比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0025】
【比較例1】
ホワイトコーン粉砕物100部を、温度170℃、水分15%、ダイ圧力75kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物を水分10%未満まで乾燥し、その後、粉砕してクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物に比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0026】
【比較例2】
ホワイトコーン粉砕物100部を、温度110℃、水分45%、ダイ圧力8kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物を乾燥、その後整粒機で粒度が16〜60メッシュの間になるように粒度をそろえてクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物の比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0027】
【比較例3】
ホワイトコーン粉砕物100部を、温度120℃、水分30%、ダイ圧力18kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物をカッターでペレット化した。水分10%未満まで乾燥してクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物の比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0028】
【比較例4】
ホワイトコーン粉砕物100部を、温度110℃、水分35%、ダイ圧力10kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物を1mmの厚さに圧延し乾燥、その後整粒機で粒度が16〜60メッシュの間になるように粒度をそろえてクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物の比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0029】
【比較例5】
とうもろこし黄色部粉砕物100部を、温度100℃、水分45%、ダイ圧力6kg/cm2、スクリュー回転250rpmの条件でエクストルーダー処理した膨化物をカッターでペレット化した。処理した膨化物を乾燥してクラッカー粉類似物を得た。このクラッカー粉類似物の比重、及び粒度を測定し、その結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
【試験例】
食感の評価法
小麦粉1000gに水2000gを添加・混合してなるバッター液を鶏もも肉に均一に薄く着けたものを9組調製した。各々、クラッカー粉、実施例1〜3、比較例1〜5のクラッカー粉類似物を均一に付着させ、160℃、5分間、油で揚げて鶏の唐揚げを作成した。得られた鶏の唐揚げの食感評価を10人のパネラーにより行なった。その結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
比重の関係:実施例1ではクラッカー粉よりも食感が良く、クリスピー感が非常にある結果が得られた。比較例1では軽い食感になり過ぎクリスピー感が損なわれている。またα化の度合いが高いため口に入れた時に溶けてしまい、のりっぽくねちゃつく食感になる。さらにダマになり作業性が非常に悪い。比較例2では密な組織構造をとり非常に硬い。口に入れた時に硬いためクリスピー感はなく、口溶けが悪く、歯に付くため食感が非常に悪い。以上の結果から良好な食感を得るには最適な比重があり、0.07〜0.7g/ml比重の範囲で好ましくは0.1〜0.5g/mlが適している。
【0034】
圧延の効果:クリスピー感を得るには膨化によって均一に細かい気泡がはいった組織構造を形成することが重要である。比較例4の場合は一度膨化させたものを圧延するために組織構造がつぶされてしまい、気泡のない密な組織になっている。このため食感が硬く、クリスピー感が減少した。また歯に付着するなどの欠点が見られた。以上の結果から圧延をしない方がクリスピー感のある食感を得られる。
【0035】
副原料の効果:乳化剤と油脂がない実施例3では、両者を含む実施例1及び2と比較して、クリスピー感、硬さ、口溶けの点でやや劣り、ひき、歯への付着も若干見られる。乳化剤は食感に大きく作用し、食感を向上させる効果が認められた。また、乳化剤の添加によりエクストルーダーの機械的負荷が軽減され、機械操作性・作業性を向上させることも確認された。油脂もまた食感を向上させる効果が認められた。
【0036】
黄色とうもろこしの問題点:比較例5では黄色で穀物臭があるため見た目にフライ食品には見えない。穀物臭が素材の風味を損なわせる。実施例1ではホワイトコーンを使用し、実施例2では米を使用しているために穀物臭がない。またエクストルーダー処理において、糖と一緒に処理を行なうことでメイラード反応による好ましいきつね色を呈し、見た目にも好ましく素材の風味も損なわない鶏の唐揚げが得られる。
【0037】
粒度の関係:粒度の違いにより食感が大きく異なる。8.6メッシュオーバーになると粒度が大きすぎるために食感が硬く、繊維感が残り歯に付くため非常に悪い。衣が厚くなり過ぎるために見た目も一般的な唐揚げには見えない。また、逆に200メッシュパスだとクリスピー感が減少する。最適粒度は8.6メッシュパス〜200メッシュオーバー、好ましくは16〜60メッシュの範囲である。
【0038】
吸油の低減:本発明のクラッカー粉類似物は構造上の違いにより油切れが良く、パン粉と比べると衣への油の吸収量が低減する。時間経過後の食感も本発明のクラッカー類似物は吸湿が少ないためへたりがなくクリスピー感を維持できる。
【0039】
【発明の効果】
以上の結果から明らかなように、穀物をエクストルーダーで膨化させ所定の比重と粒度の範囲に入るクラッカー粉類似物は、非常にクリスピー感があり、口溶けが良く、歯付きのない良好な食感が得られ、外観や風味も優れた特徴を持つ。またこのクラッカー類似物を食品に使用することにより優れた食感が得られる。
Claims (3)
- 主原料としてのホワイトコーンおよび/または米を、若しくは該主原料と副原料の混合物を、エクストルーダーを用いて、温度150℃、水分25%、ダイ圧力40kg/cm 2 、スクリュー回転250rpmの条件で膨化処理し、得られた膨化処理物を水分10%未満にまで乾燥し、該処理物を圧延することなく租粉砕してなる比重が0.28〜0.37g/mlかつ粒度が16メッシュパス〜60メッシュオーバーの粉粒物を50%以上含有することを特徴とするクラッカー粉類似物。
- 主原料に対して油脂、糖、蛋白質、乳化剤のうち少なくとも1種を副原料として添加してなる請求項1に記載のクラッカー粉類似物。
- 請求項1または2に記載のクラッカー粉類似物を使用することを特徴とする食品。
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