JP7267099B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
また、特許文献3に開示の技術では、ホルムアルデヒド発生量への影響や、製品の光沢度等の外観への影響等について検討はなされていない。
また、特許文献4では、成形体の熱安定性とホルムアルデヒド発生の抑制とを目的とした技術が提案されているが、メタリック顔料としては、アルミニウム粉末をポリエチレンに分散させたものが示されているのみであり、得られた成形体の光沢度、輝度など外観への影響についての検討はなされておらず、また、これらについて十分な効果が得られていない。
そして、特許文献5では、他の添加物による光沢度等への影響については、何ら言及されていない。
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子0.1~10質量部と、
(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%であるポリアルキレングリコール化合物0.01~5質量部と、
を含み、
前記(B)金属粒子が、アルミニウムを含むことを特徴とする樹脂組成物。
[2]
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子、及び、(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%であるポリアルキレングリコール化合物を含む(D)金属顔料0.1~15質量部と、
を含み、
前記(B)金属粒子が、アルミニウムを含むことを特徴とする樹脂組成物。
[3]
前記(D)金属顔料中に含まれる前記(B)金属粒子の割合が、70~95質量%である、[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記(C)ポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量が、500~10000である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記(C)ポリアルキレングリコール化合物が、炭素数4以上のオキシアルキレンに由来する繰り返し単位を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
さらに(E)滑剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
本実施形態における第1の態様の樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子0.1~10質量部と、(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%であるポリアルキレングリコール化合物0.01~5質量部と、を含む。
本実施形態における第2の態様の樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子、及び、(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%であるポリアルキレングリコール化合物を含む(D)金属顔料0.1~15質量部と、を含む。
なお、以下、「(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子」を「(B)金属粒子」と、「(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が1~36%であるポリアルキレングリコール化合物」を「(C)ポリアルキレングリコール化合物」と、「(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子、及び、(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%であるポリアルキレングリコール化合物を含む(D)金属顔料」を「(D)金属顔料」と、も称する。
本実施形態における(A)ポリアセタール樹脂としては、特に限定されず、従来公知のポリアセタールを使用することができる。(A)ポリアセタール樹脂は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
末端の安定化処理を行ったポリアセタール樹脂は、例えば、ホルムアルデヒド及び/又はトリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとの共重合によって得られるポリオキシメチレンコポリマーを、重合直後に分子末端の安定化処理する工程、その後に溶融状態で水若しくはアルコール又はそれらの混合物を注入、混練する工程、並びに注入された上記水等の水酸基含有化合物の蒸気及び遊離のホルムアルデヒドを解放する脱揮工程、を施すことのできる異方向回転非かみ合型2軸スクリュー押出機に連続的に供給して処理すること等により得られる。また、上記の水若しくはアルコール、又はそれらの混合物を注入、混練する際に、pH調製剤としてトリエチルアミン等の塩基性物質を添加することが好ましい。
(B)金属粒子は、コイン状、フレーク状等の扁平な形状を有し、体積平均粒子径(D50)が3~40μm、平均粒子厚さが0.03~0.4μmであることが好ましい。
(B)金属粒子は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
(B)金属粒子としてアルミニウム粒子を使用する場合は、その表面に適度な酸化皮膜を有することが好ましい。適度な酸化皮膜を有することで、アルミニウム特有の高反射率を維持し、金属粒子の耐食性及び経時的安定性を保持することができる。
また、(B)金属粒子としてアルミニウム粒子を使用する場合、純度については特に限定されないが、本発明の効果を妨げない限り、他の金属を不純物又は合金成分として含まれていてもよい。不純物又は合金成分としては、例えば、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Zn等が挙げられる。
ここで用いられる粉砕媒体は、過剰に添加すると粒子中の含有酸素量が多くなるため、できるだけ少なくすることが好ましい。
金属粒子の含有量を上記範囲に調整することで、本実施形態の樹脂組成物の成形体において、ポリアセタール樹脂が本来有する機械的特性である剛性や耐衝撃性がより良好に保持され、ホルムアルデヒド発生を抑制するとともに良好な金属光沢を発現することが可能となる。
なお、体積平均粒子径(D50)は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、(B)金属粒子の平均粒子厚さ(t)は、以下の方法により算出することができる。
まず、(B)金属粒子の構成成分(例えば、アルミニウム)に対して5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液で予備処理を行った後、JIS K5906-1991に従って、(B)金属粒子の構成成分の水面拡散面積(WCA)を測定する。次いで、測定により得られた構成成分1gあたりの水面拡散面積(WCA)(m2/g)を用いて、下式により算出することができる。
t=0.4/WCA((B)金属粒子の構成成分がアルミニウムである場合)
上記した平均粒子厚さの算出方法は、例えば、Aluminium Paint and Powder, J. D. Edwards & R.I.Wray著、第3版、Reinhold Publishing Corp. New York(1955)の第16~22頁に記載されている。また、上記式中の「0.4」は、アルミニウムの密度2.7g/cm3の逆数(1/2.7=約0.4)である。
なお、JISに記載されている水面拡散面積の測定方法は、リーフィングタイプの場合のものであるのに対し、アルミニウム(アルミニウム顔料)は、ノンリーフィングタイプである。しかし、アルミニウムの水面拡散面積(WCA)の測定方法は、測定用の試料を、5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液で予備処理を行う以外は、全てJIS K5906-1991に記載のリーフィングタイプの場合と同様に行うことができる。試料の予備処理については、塗料原料時報、第156号、第2~16頁(1980.9.1旭化成工業(株)発行)に記載されている。
上記1)の方法で算出することができない場合(例えば、WCAの測定ができない場合)、(B)金属粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した複数の結果、例えば100か所で観察した(B)金属粒子の厚さから平均値を算出すること等の方法によっても求めることができる。
(C)ポリアルキレングリコール化合物は、化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%の範囲である。
本実施形態の第1の態様において、(C)ポリアルキレングリコール化合物の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部であり、好ましくは0.05~4質量部であり、より好ましくは0.1~2質量部であり、特に好ましくは0.2~1質量部である。
また、本実施形態の第1の態様において、(B)金属粒子100質量部に対する(C)ポリアルキレングリコール化合物の質量割合としては、1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは2~40質量部であり、さらに好ましくは3~30質量部であり、特に好ましくは5~15質量部である。
ポリアルキレングリコール化合物の含有量を上記範囲に調整することで、本実施形態の樹脂組成物の成形体において、光沢度の向上効果を十分発揮させることが可能となると共にホルムアルデヒド発生を抑制することが可能となる。
本実施形態において、(C)ポリアルキレングリコール化合物は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
樹脂組成物を粉砕した後、(C)ポリアルキレングリコール化合物を溶解可能な溶媒(ポリアルキレングリコール化合物の種類によって異なる)中で抽出を行い、その後、抽出液を濃縮し、溶媒を除去して試料を得、得られた試料について、NMRを用いてポリアルキレングリコールの構造を特定し、GPCを用いて分子量を特定し、酸素原子の質量割合を算出する。
なお、数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)などにより測定することができる。
(D)金属顔料は、上記の(B)金属粒子及び(C)ポリアルキレングリコール化合物を含む。
本実施形態の第2の態様において、(D)金属顔料中に含まれる(B)金属粒子の割合は、70~95質量%であることが好ましい。上記割合が70質量%以上であることにより、金属顔料の量を抑制するとともに押出時及び射出成形時の運転安定性をより向上させることができ、また、95質量%以下であることにより、原料調合時に金属顔料の分散性を向上させるとともに金属粉末の飛散を抑制することができる。同様の観点から、上記割合は、80質量%以上であることがより好ましく、また、92質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の第2の態様において、(C)ポリアルキレングリコール化合物は、(D)金属顔料中において顔料バインダとして用いられる。
そのため、(D)金属顔料は、調製に用いた溶剤等の、(B)金属粒子及び(C)ポリアルキレングリコール化合物以外のその他の成分を含んでもよい。但し、所期の効果をより確実に得る観点から、(D)金属顔料中に含まれるその他の成分の割合は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、さらに1種以上の(E)滑剤を含有してもよい。滑剤とは、一般的には、樹脂溶融物の粘度を低下させ、成形時の金属面からの離型性の向上に寄与するものであるが、本実施形態では、(E)滑剤の添加により、これらに加えより高い光沢度及びFI値が得られる。
(E)滑剤は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、下記のホルムアルデヒド抑制剤を含むことが好ましい。ホルムアルデヒド抑制剤としては、例えば、アミノトリアジン系化合物、グアナミン系化合物、尿素系化合物、及びカルボン酸ヒドラジド系化合物が挙げられる。これらのホルムアルデヒド抑制剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ジオキサン環含有グアナミン類としては、例えば、[2-(4’-6’-ジアミノ-s-トリアジン-2’-イル)エチル]-1,3-ジオキサン、[2-(4’-6’-ジアミノ-s-トリアジン-2’-イル)エチル]-4-エチル-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、慣用的に用いられる(G)添加剤を加えることができる。(G)添加剤としては、特に限定されないが、従来の(A)ポリアセタール樹脂に使用されている安定剤等が好ましい。
上記安定剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤等が挙げられる。さらに、ギ酸又はホルムアルデヒドの捕捉剤を用いることができる。上記添加剤は単独で用いてもよいが、二種以上を組み合わせても良い。また、意匠性を高めるために、必要に応じて各種の着色剤を補色顔料として含有することができる。着色剤としては、有機顔料、無機顔料が挙げられるが、特に限定されるものではなく、1種又は2種以上の着色剤の組合せであってもよい
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、例えば、n-オクタデシル-3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)、1,4-ブタンジオ-ル-ビス-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)、トリエチレングリコール-ビス-(3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)等が挙げられる。
上記耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
ヒンダードアミン系安定剤としては、立体障害性基を有するピペリジン誘導体が挙げられ、例えば、エステル基含有ピペリジン誘導体、エーテル基含有ピペリジン誘導体、アミド基含有ピペリジン誘導体、及び高分子量のピペリジン誘導体重縮合物等が挙げられる。
エーテル基含有ピペリジン誘導体としては、例えば、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタン等が挙げられる。
高分子量のピペリジン誘導体重縮合物としては、例えば、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
中でも、好ましいヒンダードアミン系安定剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β',β',-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。
ヒンダードアミン系安定剤の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.01~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~2質量部、さらに好ましくは0.1~1.5質量部である。
上記ヒドロキシフェニル-1,3,5-トリアジン系化合物としては、例えば、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤の添加量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.1~2質量部であり、さらに好ましくは0.1~1.5質量部である。
本実施形態の樹脂組成物は、さらに上記ギ酸又はホルムアルデヒドの捕捉剤を用いることが好ましい。上記ホルムアルデヒド又はギ酸の捕捉剤としては、例えば、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、脂肪酸カルシウム塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシド等が挙げられる。
中でも、ジシアンジアミド、メラミン及びメラミン-ホルムアルデヒド重縮合物が好ましい。
上記ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン4-6、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン6-12、ナイロン12及びこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6-6、ナイロン6/6-6/6-10、ナイロン6/6-12等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、一般的に使用されている溶融混練機を用いて、上記各原料のうち一部を溶融しつつ混合することにより得られる。溶融混練機としては、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物を成形して成形体を作製することができる。
上記成形体の製造方法としては、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の方法が挙げられる。特に、品位や生産安定性、経済性等の観点から、射出成形、射出圧縮成形、及びこれらと金型内複合成形とを組み合わせた成形方法が好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、成形時及び押出時の滞留安定性が良好で、外観不良が少なく、さらに該樹脂組成物からの有機溶剤の揮発が少なく、且つ優れた金属調外観を有し、高い光沢度とFI値とを達成し美観に優れた金属調外観を有する成形品が得られる。
なお、ホルムアルデヒド発生量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
ここで、観る角度の変化に伴って明度が変化する現象をフリップフロップ(F/F)現象と呼び、これを表す定量値をFI(フロップインデックス)値と呼ぶ。FI値は、デュポン(DuPont)により最初に提案された式を使用して、15度、45度及び110度における明度(L*15°、L*45°及びL*110°)の値から求めることができる(A.B.J.ロドリゲス(A.B.J.Rodriguez)、JOCCA、(1992(4))、p.150~153)。具体的に、FI値は、下記数式により求められ、FI値が高い、すなわち、ハイライト方向(光の入射角度に対して正反射方向)とシェード方向(非正反射方向)の明度(L*)の差が大きい程、一般的に金属感が高いと感じられる。
なお、光沢度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
ここで、光沢度は、金属調外観の指標の一つである。また、光沢度は、成形品表面の平滑性に依存しており、金属顔料等の光輝材を練り込んで成形を行うメタリック材料においては、一般的に光沢度が低くなる傾向を示す。光沢度が低くなると、成形体表面で反射光が散乱する影響により明度、FI値等が低下するため、金属調外観の品位が低下する傾向がある。
なお、従来の光沢度を改良する手法としては、金型温度の高温化、又は近年使用されることが増えたヒートアンドクール法等、ハードウエア側で対応するケースが多くなっていた。そこで、本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑みて、特定の(C)ポリアルキレングリコールを添加することにより、成形時、押出時の滞留安定性が良好で、成形品とした場合の外観不良が少なく、さらに該樹脂組成物からの有機溶剤の揮発が少なく、且つ優れた金属調外観を有する、金属様外観を持つ樹脂組成物及び成形品が得られることを見出した。
本実施形態の樹脂組成物の成形品は、特に、機構部分又は摺動部分を備えた内装・外装部品に用いることができる。例えば、OA機器、音楽・映像若しくは情報機器、又は通信機器に備えられる部品、オフィス家具若しくは住設機器に備えられる工業部品、及び、自動車内外装用部品からなる群より選ばれるいずれかの部品として用いられる。特に、優れた外観を求められるハンドル、スイッチ及びボタンからなる群より選ばれるいずれかの部品として用いられる。さらに、本実施形態の樹脂組成物から得られる成形品を外観部品として用いるために、成形時にシボ金型を使用したり、成形品にシボ加工を施すことにより意匠面を付与すると、外観の改良効果が発現されるため好ましい。
<(A)ポリアセタール樹脂>
使用した(A)ポリアセタール樹脂は、以下の通りである。
(a-1)旭化成株式会社製、「テナックC 4513」、ポリアセタールコポリマー(融点165℃)
内径30cm、長さ35cmのボールミル内に、アトマイズドアルミニウム粉(体積平均粒子径3.2μm)250g、ミネラルスピリット1.2kg、及びステアリン酸25gからなる配合物を充填し、直径3mmのガラスビーズ(比重2.6)15kgを用い、60rpmで10時間摩砕した。
摩砕終了後、ミル内のスラリーをミネラルスピリットで洗い流し出し、400メッシュの振動篩にかけ、通過したスラリーをフィルターでろ過した後、減圧による揮発除去を行って、濃縮スラリーとして、(b1-1)金属粒子(アルミニウム粒子)を得た(固形分:90質量%相当)。
また、アトマイズドアルミニウム粉の粒子径と粉砕時間を変えて操作を行ったこと以外は、上述した(b1-1)アルミニウム粒子の作製と同様の操作で、濃縮スラリーとして、体積平均粒子径及び平均粒子厚さの異なる(b1-2)~(b1-5)の金属粒子(アルミニウム粒子)を得た(固形分:90質量%相当)。
また、得られた各アルミニウム粒子1gに、5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液を1~2ml加えて予備分散した後、石油ベンジン50mlを加えて混合し、40~45℃で2時間加温後、フィルターで吸引濾過し、パウダー化した粉末の水面拡散面積(WCA)を測定した。WCAの測定値から、下記の式:
t(μm)=0.4/WCA(m2/g)
に従って平均粒子厚さ(t)を算出した。結果は以下の通りであった。
(b1-1):D50=10μm、t=0.22μm
(b1-2):D50=6μm、t=0.15μm
(b1-3):D50=25μm、t=0.38μm
(b1-4):D50=10μm、t=0.60μm
(b1-5):D50=45μm、t=0.39μm
本実施例及び比較例において使用した(C)ポリアルキレングリコール化合物は、以下の通りである。
(c-1)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:650、酸素原子の質量の割合:24.0%)
(c-2)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1000、酸素原子の質量の割合:23.4%)
(c-3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1400、酸素原子の質量の割合:23.1%)
(c-4)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000、酸素原子の質量の割合:22.8%)
(c-5)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量3000、酸素原子の質量の割合:22.6%)
(c-6)THF-ネオペンチルグリコール共重合体(数平均分子量1800、酸素原子の質量の割合:21.0%)
(c-7)ポリエチレングリコール(数平均分子量400、酸素原子の質量の割合:38.7%)
(c-8)ポリエチレングリコール(数平均分子量1000、酸素原子の質量の割合:37.3%)
(c-9)ポリエチレングリコール(数平均分子量2000、酸素原子の質量の割合:36.8%)
(c-10)ポリエチレングリコール(数平均分子量6000、酸素原子の質量の割合:36.5%)
(c-11)ポリプロピレングリコール(ジオール型、数平均分子量400、酸素原子の質量の割合:30.2%)
(c-12)ポリプロピレングリコール(ジオール型、数平均分子量1000、酸素原子の質量の割合:28.6%)
(c-13)ポリプロピレングリコール(ジオール型、数平均分子量2000、酸素原子の質量の割合:28.1%)
(c-14)ポリプロピレングリコール(トリオール型、数平均分子量3000、酸素原子の質量の割合:28.4%)
加温した状態で内容物の撹拌及び減圧を行うことが可能な容器中に、表1に記載の組み合わせで、上述の金属粒子の濃縮スラリー(固形分:90質量%相当)200g及びポリアルキレングリコール化合物等の顔料バインダ20gを投入し、撹拌しつつ内温を70℃に上昇させた。内温が安定した状態で減圧し、濃縮して、(d-1)~(d-25)の金属顔料(金属粒子:90質量%相当、顔料バインダ:10質量%相当)を得た。なお、(d-13)金属顔料の作製においては、顔料バインダを用いないこととし、最終的にミネラルスピリットが10質量%残存した金属粒子を、(d-13)金属顔料として得た。
同様に、表1に記載の組み合わせで、上述の金属粒子の濃縮スラリー(固形分:90質量%相当)178g及び顔料バインダ40gを投入し、撹拌しつつ内温を70℃に上昇させた。内温が安定した状態で減圧し、濃縮して、(d-26)の金属顔料(金属粒子:80質量%相当、顔料バインダ:20質量%相当)を得た。
使用した(E)滑剤は、以下の通りである。
(e-1)流動パラフィン(松村石油研究所製、商品名:スモイルPS-260)
使用した(F)ホルムアルデヒド抑制剤は、以下の通りである。
(f-1)日本ファインケム株式会社製、セバシン酸ジヒドラジド
(f-2)日本ファインケム株式会社製、アジピン酸ジヒドラジド
(f-3)日本ファインケム株式会社製、ドデカン二酸ジヒドラジド
(f-4)ベンゾグアナミン(試薬一級)
<FI値>
後述する実施例及び比較例において作製した樹脂組成物のペレットを、射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名「IS-100GN」)を用いて、シリンダー温度220℃、射出時間15秒、冷却時間20秒、金型温度77℃の条件で射出成形して試験片を作製した。この試験片は、長さ90mm、幅50mm、厚さ2.5mmの金型を用いて作製した。
上記試験片に対して、ビッグガードナー社製のBYK-macを用いて外観の確認を行った。
FI値の測定方法について図1を用いて説明する。図1はFI値の評価方法を示す図である。FI値は、まず図1に示すように、成形品の表面に、ある一定の方向から光を照射し、正反射光に対して受光角を15°、45°、110°ずらした際のL*値(L*15°、L*45°及びL*110°)(明度)を測定する。次に、測定したそれぞれのL*値を上記数式に代入することにより、FI値を求めた。一般に、FI値が高い程、金属的質感が高いことを示す。
光沢度は、FI値の測定で用いた上記試験片を用い、光沢計(株式会社堀場製作所製、「IG-320」)を用い、JIS Z8741に準拠し、成形体の表面60°の角度で測定した。一般に光沢度が高い程、成形体表面が平滑であり、金型表面への追従度が高いと想定される。
また、射出成形で試験片を得た直後、及び、ESPEC CORP.製高温恒湿機「PL-2KT」内において温度80℃、湿度90%の環境下で同試験片を48時間静置した後において、成形品の光沢度を測定し、静置前後における光沢度の変化を確認した。
後述する実施例及び比較例において作製したペレットを、射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名「IS-100GN」)を用いて、シリンダー温度220℃、射出時間15秒、冷却時間20秒、金型温度77℃の条件で射出成形して試験片(縦100mm×横40mm×厚さ3mmのシート)を作製した。
次に、下記方法(VDA275法)により、試験片から放出されるホルムアルデヒド量を求めた。まず、500mLのポリエチレン容器に蒸留水50mLと上記試験片とを入れて密閉し、60℃で3時間加熱した。その後、蒸留水中のホルムアルデヒドをアンモニウムイオン存在下においてアセチルアセトンと反応させた。その反応物について、UV分光計にて波長412nmの吸収ピークを測定し、ホルムアルデヒド放出量(mg/kg)を求めた。
各実施例及び比較例に対応する配合処方で材料を混合した押出原料を、30mmベント付き単軸押出機を用いて、設定温度200℃、回転数80rpm、吐出量10kg/時間の条件でベントから脱気しながら溶融混練(溶融混合)を行うことによりペレットを得た。この溶融混練時の押出機の運転状況に関して、運転中にベントアップ及びサージングが発生することなく安定している場合は「○」、運転中にベントアップが発生することは無いが時折サージング等が発生する場合は「△」、運転中にベントアップが頻繁に発生する場合は「×」であると判定した。
[実施例1]
(a-1)ポリアセタールコポリマー100質量部と、(c-1)ポリテトラメチレンエーテルグリコール0.35質量部、(f-1)セバチン酸ジヒドラジド0.08質量部、をミキサーでブレンドした後、(b-1)アルミニウム顔料3.5質量部を加えブレンドを行った。
その混合物を、30mmベント付き単軸押出機を用いて、設定温度200℃、回転数80rpm、吐出量10kg/時間の条件でベントから脱気しながら溶融混練(溶融混合)してペレットを得た。
得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。
評価結果を下記表2に示す。
成分(A)(B)(C)(F)について、表2に示す組成とした以外は、実施例1と同様に実施した。
(a-1)ポリアセタールコポリマー100質量部と、(c-4)ポリテトラメチレンエーテルグリコール0.35質量部、(e-1)流動パラフィン0.35質量部、(f-1)セバチン酸ジヒドラジド0.08質量部、をミキサーでブレンドした後、(b-1)アルミニウム顔料3.5質量部を加えブレンドを行った。
その混合物を、30mmベント付き単軸押出機を用いて、設定温度200℃、回転数80rpm、吐出量10kg/時間の条件でベントから脱気しながら溶融混練(溶融混合)してペレットを得た。
得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。
評価結果を下記表2に示す。
成分(A)~(E)について、表2に示す組成とした以外は、実施例30と同様に実施した。
また(C)ポリアルキレングリコールとして化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が所定の範囲から外れているポリエチレングリコールを使用している比較例9~19、比較例24~27では、実施例と比較してVDA275値が高騰していた。
比較例20~23では、化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が所定の範囲である(C)ポリアルキレングリコールを使用しているが、(B)金属粒子の形状が所定の範囲から外れているためFI値が低くなる結果を示した。
(A)ポリアセタール樹脂としての(a-1)成分100質量部と、(F)ホルムアルデヒド抑制剤としての(f-1)成分0.08質量部とをミキサーでブレンドした後、(D)金属顔料としての(d-1)成分6.0質量部を加え、混合物を得た。得られた混合物を、30mmベント付き単軸押出機を用いて、設定温度200℃、回転数80rpm、吐出量10kg/時間の条件で、ベントから脱気しながら溶融混練(溶融混合)して、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットに対して、80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
(A)ポリアセタール樹脂、(D)金属顔料、及び(F)ホルムアルデヒド抑制剤について、表3に示す組成とした以外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を下記表3に示す。
(A)ポリアセタール樹脂としての(a-1)成分100質量部と、(E)滑剤としての(e-1)成分0.30質量部と、(F)ホルムアルデヒド抑制剤としての(f-1)成分0.08質量部とをミキサーでブレンドした後、(D)金属顔料としての(d-3)成分6.0質量部を加え、混合物を得た。得られた混合物を、30mmベント付き単軸押出機を用いて、設定温度200℃、回転数80rpm、吐出量10kg/時間の条件で、ベントから脱気しながら溶融混練(溶融混合)して、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットに対して、80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。評価結果を表3に示す。
(A)ポリアセタール樹脂、(D)金属顔料、(E)滑剤、及び(F)ホルムアルデヒド抑制剤について、表3に示す組成とした以外は、実施例24と同様に実施した。評価結果を下記表3に示す。
(A)ポリアセタール樹脂としての(a-1)成分100質量部と、ポリアルキレングリコール化合物(上記の(c-4)成分に相当)0.60質量部と、(F)ホルムアルデヒド抑制剤としての(f-1)成分0.08質量部とをミキサーでブレンドした後、(D)金属顔料としての(d-13)成分6.0質量部を加え、混合物を得た。得られた混合物を、30mmベント付き単軸押出機を用いて、設定温度200℃、回転数80rpm、吐出量10kg/時間の条件で、ベントから脱気しながら溶融混練(溶融混合)して、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
さらに、比較例49、比較例50では、(D)金属顔料に含まれる金属粒子の形状が所定の範囲から外れているため、FI値が低くなる結果を示した。
Claims (6)
- (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子0.1~10質量部と、
(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%であるポリアルキレングリコール化合物0.01~5質量部と、
を含み、
前記(B)金属粒子が、アルミニウムを含むことを特徴とする樹脂組成物。 - (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)体積平均粒子径が3~40μmで、平均粒子厚さが0.03~0.4μmである金属粒子、及び、(C)化合物全体の質量に占める酸素原子の質量の割合が、1~36%であるポリアルキレングリコール化合物を含む(D)金属顔料0.1~15質量部と、
を含み、
前記(B)金属粒子が、アルミニウムを含むことを特徴とする樹脂組成物。 - 前記(D)金属顔料中に含まれる前記(B)金属粒子の割合が、70~95質量%である、請求項2に記載の樹脂組成物。
- 前記(C)ポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量が、500~10000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記(C)ポリアルキレングリコール化合物が、炭素数4以上のオキシアルキレンに由来する繰り返し単位を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- さらに(E)滑剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
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