以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。ただし、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタールコポリマーと、ヒンダードアミン系安定剤と、アルミニウム顔料とを含有する。以下、各成分について説明する。
[(A)ポリアセタールコポリマー]
本実施形態に係るポリアセタールコポリマーは、オキシメチレン基を主鎖に有し、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する重合体である。その重合形態は、本実施形態で説明する部分を除いて、公知の重合法(例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許第3803094号明細書、独国特許第1161421号明細書、独国特許第1495228号明細書、独国特許第1720358号明細書、独国特許第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、特開平7-70267号公報に記載の重合方法)を用いたものであればよい。まず、下記の工程により、ポリアセタールコポリマーの粗ポリマーが得られる。
(1)重合工程
本実施形態に係る重合工程では、主モノマーとコモノマーとを重合触媒の存在下、必要に応じて連鎖移動剤を用いて共重合する。主モノマーとしては、ホルムアルデヒド又はその3量体であるトリオキサン若しくは4量体であるテトラオキサン等の環状オリゴマーを用いることが好ましい。
コモノマーとしては、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する環状エーテル化合物が挙げられる。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−プロパンジオールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカン、及び分子に分岐又は架橋構造を形成し得るモノマー又はジ−グリシジル化合物、からなる群より選ばれる1種又は2種以上のモノマーを用いることが好ましい。本実施形態において、コモノマーの共重合量は、主モノマーをトリオキサン(ホルムアルデヒド三量体)に換算した場合、そのトリオキサン100モル%に対して1.0〜10.0モル%のであると好ましい。すなわち、ポリアセタールコポリマーが、オキシメチレン基とコモノマーの構造単位とを有し、コモノマーの構造単位を、「トリオキサン換算でのオキシメチレン基(−CH2O)3−)」100モル部に対して、1.0〜10.0モル部有すると好ましい。上記コモノマーの共重合量は、より好ましくは1.0〜6.0モル%であり、更に好ましくは1.2〜4.5モル%である。コモノマーの共重合量を上記好ましい範囲に調整することにより、機械物性、滞留成形における熱安定性及びホルムアルデヒドの発生量のバランスが一層良好になる。
ポリアセタールコポリマーの主モノマー及びコモノマーとしては、水、メタノール、蟻酸などの重合反応中の重合停止及び連鎖移動作用を有する不純物を極力含まないものを用いることが好ましい。これらの不純物が過大に存在すると、予期せぬ連鎖移動反応により所望する分子量物が得られ難くなる傾向にある。特にポリマー末端基に水酸基を誘導する不純物の含有量は、全モノマー量に対して30質量ppm以下であると好ましく、10質量ppm以下であるとより好ましく、3質量ppm以下であると更に好ましい。所望する低不純物の主原料を得るための方法としては、公知の方法(例えば、主モノマーについては特開平3−123777号公報や特開平7−33761号公報、コモノマーについては特開昭49−62469号公報や特開平5−271217号公報に記載の方法)を用いることができる。
連鎖移動剤としては、公知のもの、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4の低級脂肪族アルキル基を有するホルムアルデヒドのジアルキルアセタール及びそのオリゴマー、並びに、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4の低級脂肪族アルコールを用いることが好ましい。また、長鎖分岐ポリアセタールを得るために、連鎖移動剤として、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオール・アルキレンオキサイドを用いてもよい。連鎖移動剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、ブロックポリアセタールコポリマーを得るために、常法により、1個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、アルコキシ基のいずれかを有する、数平均分子量400以上の重合体を連鎖移動させてもよい。連鎖移動剤は、できるだけ不安定末端の形成が少ないものが好ましい。
ポリアセタールコポリマーの重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。それらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、より具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好ましい。これら重合触媒の使用量は、主モノマー(例えばトリオキサンと環状エーテル及び/又は環状ホルマールとの合計量)1モルに対し1×10-6モル〜1×10-3モルであると好ましく、5×10-6モル〜1×10-4モルであるとより好ましい。この重合触媒の使用量を上記範囲に調整することで、重合時の反応安定性や得られる成形体の熱安定性がより向上する。本実施形態においては、必要に応じて共触媒を用いてもよい。
(2)末端安定化処理
末端安定化処理工程では、上記重合工程を経て得られた粗ポリマーに含まれる不安定末端部分を分解除去して末端安定化することにより、本実施形態のポリアセタールコポリマーを得る。この不安定末端部分の分解除去方法としては、例えばベント付き単軸スクリュー式押出機やベント付き2軸スクリュー式押出機等を用いて、公知の塩基性物質である分解除去剤の存在下に、粗ポリマーを溶融して不安定末端部分を分解除去する方法が挙げられる。末端安定化の際に溶融混練を行うときには、品質や作業環境の保持のために不活性ガスにより系内の雰囲気を置換したり、一段及び多段ベントで脱気をしたりすることが好ましい。溶融混練の温度は、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下で行うことが好ましい。さらに、末端安定化処理工程において、通常のポリアセタール樹脂に添加することの可能な公知の安定剤を粗ポリマーに加えながら溶融混合し、造粒を行うことでペレットを得ることが好ましい。
分解除去剤としては、例えば、アンモニアやトリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン、水酸化カルシウムに代表されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機弱酸塩、有機弱酸塩等の公知の塩基性物質が挙げられる。分解除去剤の中で好ましいものは、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物である。この分解除去剤を用いて、熱的に不安定な末端を処理して安定化させたポリアセタールコポリマー中には、不安定な末端基がほとんど残存しない。
[R1R2R3R4N+]nXn- (1)
ここで、式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基:又は、炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、上記非置換アルキル基又は置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲン原子又は水酸基で置換されてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は、炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
上記第4級アンモニウム塩の化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物が挙げられる。
また、上記水酸化物に代えて、アジ化水素などのハロゲン化以外の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩であってもよい。これらの中でも、上記第4級アンモニウム化合物としては、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4 -、SO4 2-)、炭酸(HCO3 -、CO3 2-)、ホウ酸(B(OH)4 -)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸のなかでは、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
第4級アンモニウム化合物の添加量は、粗ポリマーに対して、第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、0.05〜50質量ppmが好ましい。第4級アンモニウム化合物は、粗ポリマーを溶融する前に予め添加してもよく、また、溶融させた粗ポリマーに添加してもよい。
本実施形態において、公知の分解除去剤であるアンモニア、トリエチルアミン、ホウ酸化合物等と第4級アンモニウム化合物とを併用してもよい。
得られるポリアセタール共重合体のMFR(メルトマスフローレート;ASTM D57Eに準拠、温度条件:190℃)は、2.5〜40g/10分であると好ましく、3〜30g/10分であるとより好ましい。このMFRを上記範囲に調整することで、機械物性、滞留成形における熱安定性及びホルムアルデヒドの発生量のバランスが良好となる。
[(B)ヒンダードアミン系安定剤]
ヒンダードアミン系安定剤としては、立体障害性基を有するピペリジン誘導体が挙げられる。、例えば、エステル基含有ピペリジン誘導体、エーテル基含有ピペリジン誘導体及びアミド基含有ピペリジン誘導体が挙げられる。ヒンダードアミン系安定剤を含むことにより、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、特に、流動性、成形体の耐衝撃性などの機械的特性、及び耐候性(光安定性)に優れたものとなる。
エステル基含有ピペリジン誘導体としては、例えば、脂肪族アシルオキシピペリジン、芳香族アシルオキシピペリジン、脂肪族ジ又はトリカルボン酸−ビス又はトリスピペリジルエステル、及び芳香族ジ、トリ又はテトラカルボン酸−ビス、トリス又はテトラキスピペリジルエステルが挙げられる。脂肪族アシルオキシピペリジンの具体例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC2-20脂肪族アシルオキシ−テトラメチルピペリジンが挙げられる。芳香族アシルオキシピペリジンの具体例としては、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC7-11芳香族アシルオキシテトラメチルピペリジンが挙げられる。脂肪族ジ又はトリカルボン酸−ビス又はトリスピペリジルエステルの具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセパケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルなどのC2-20脂肪族ジカルボン酸−ビスピペリジルエステルが挙げられる。芳香族ジ、トリ又はテトラカルボン酸−ビス、トリス又はテトラキスピペリジルエステルの具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートなどの芳香族ジ又はトリカルボン酸−ビス又はトリスピペリジルエステルが挙げられる。この他、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートもエステル基含有ビペリジン誘導体として例示される。なお、本明細書において「Ca-b」は炭素数がa〜b(a、bは整数を示す。)であることを意味し、例えば「C2-20」は炭素数が2〜20であることを意味する。
エーテル基含有ピペリジン誘導体としては、例えば、C1-10アルコキシピペリジン、C5-8シクロアルキルオキシピペリジン、C6-10アリールオキシピペリジン、C6-10アリール−C1-4アルキルオキシピペリジン、及びアルキレンジオキシビスピペリジンが挙げられる。C1-10アルコキシピペリジンの具体例としては、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのC1-6アルコキシ−テトラメチルピペリジンが挙げられ、C5-8シクロアルキルオキシピペリジンの具体例としては、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。C6-10アリールオキシピペリジンの具体例としては、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられ、C6-10アリール−C1-4アルキルオキシピペリジンの具体例としては、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられ、アルキレンジオキシビスピペリジンの具体例としては、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタンなどのC1-10アルキレンジオキシビスピペリジンが挙げられる。
アミド基含有ピペリジン誘導体としては、例えば、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのカルバモイルオキシピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメートなどのカルバモイルオキシ置換アルキレンジオキシ−ビスピペリジンが挙げられる。
また、ヒンダードアミン系安定剤として、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、並びに、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物などの高分子量のピペリジン誘導体重縮合物を用いることもできる。
その他、ヒンダードアミン系安定剤として、例えば、N,N’,N’’,N’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒロドキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び、過酸化処理した4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの反応生成物とシクロヘキサンとの反応生成物と、N,N’−エタン−1,2−ジイルビス(1,3−プロパンジアミン)と、の反応生成物が挙げられる。
ヒンダードアミン系安定剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、ヒンダードアミン系安定剤の含有量は、ポリアセタール共重合体100質量部に対し、0.01〜5質量部であり、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.1〜1.5質量部である。ヒンダードアミン系安定剤の含有量をこの範囲に調整することで、ポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体は、更に優れた外観を保持することが可能となる。
[(C)アルミニウム顔料]
本実施形態のアルミニウム顔料は、アルミニウムが粒子状になっているもので、適度にその表面に酸化皮膜を有するものが好ましい。アルミニウム顔料が適度な酸化皮膜を有することで、アルミニウム特有の高反射率を維持し、より粒子の耐食性及び経時的安定性を保持することができる。また、本実施形態のアルミニウム顔料は、その純度を特に限定していないが、本発明の効果を妨げない限り、他の金属を不純物又は合金成分として含まれていてもよい。不純物又は合金成分としては、例えば、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Znが挙げられる。
本実施形態のアルミニウム顔料は、公知の方法により作製することができる。例えば、アトマイズ粉、切削粉、箔粉、蒸着粉、その他の方法により得られたアルミニウム粉末を予め一次分級等により選別し、粉砕助剤及び溶剤等を含む粉砕媒体の共存下で、ボールミル、アトライター、遊星ミル、振動ミル等により湿式粉砕処理し、湿式状態下で篩分級した後、フィルタープレスなどにより固液分離して得られる。これにより、フレーク端部に存在する凹凸状の破断面が極めて少ないアルミニウム顔料を製造することができる。ここで用いられる粉砕媒体は、過剰に添加すると粒子の含有酸素量が多くなるため、できるだけ少なくすることが好ましい。
本実施形態のアルミニウム顔料の形状は、球状、柱状、鱗片状など、表面が滑らかなものであれば特に限定されない。その形状は、ポリアセタールコポリマーと溶融混合する際に分散が良好であり、粒子の破損や折損も生じ難いことから、鱗片状であると好ましい。鱗片状のアルミニウム顔料はポリアセタール樹脂組成物中に容易に均一に分散するため、より少量の添加量で効率よく成形体の明度を高めることができる。
本実施形態のアルミニウム顔料の含有量は、ポリアセタールコポリマー100質量部に対し、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.2〜5質量部であり、より好ましくは0.3〜4質量部である。アルミニウム顔料の含有量をこの範囲に調整することで、ポリアセタール樹脂が本来有する機械的特性である靭性がより良好に保持され、また濃淡のない外観により安定した明度を発現することが可能となる。
本実施形態で用いられるアルミニウム顔料は、その体積平均粒子径は15〜50μmであり、かつ10μm以下の粒子径を有する粒子を4〜25体積%含有する。好ましくは、アルミニウム顔料は、その体積平均粒径が15〜40μmであり、かつ10μm以下の粒子径を有する粒子を6〜20体積%含有する。アルミニウム顔料の粒子径及び粒子径分布を上記範囲に調整することにより、ポリアセタールコポリマーが本来有する機械物性を保持しつつ、優れたアルミ光沢を有し、しかも目視角度による色目変化が小さく、ウエルド性能に優れた成形品が得られる。また、ポリアセタール樹脂組成物の流動性及び得られる成形体の耐候性が一層優れたものとなる傾向にある。ここで、本明細書で規定している体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される体積粒径分布の50%の値(D50)を示し、10μm以下の粒子径を有する粒子の割合は、その積分値から求められるものである。
また、本実施形態のアルミニウム顔料は、炭素数10〜30の脂肪酸により、その表面を改質されていると好ましい。アルミニウム顔料の表面を改質する際の脂肪酸の使用量は、アルミニウム顔料100質量部に対し、0.3〜10質量部であると好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部である。脂肪酸の使用量をこの範囲に調整することにより、アルミニウム顔料の表面を良好に改質することができ、ポリアセタールコポリマーとの混合時の安定性を高め、成形体の外観を向上することが可能となる。
炭素数10〜30の脂肪酸としては、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、及びステアリン酸が好ましく、オレイン酸、ベヘニン酸、及びステアリン酸がより好ましい。
また、アルミニウム顔料の表面の改質を補助するために、少量の熱硬化性樹脂を併用してもよい。そのような熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられる。
脂肪酸によるアルミニウム顔料表面の改質は、好ましくは、それらを混合して行われる。この際、アルミニウム顔料及び脂肪酸、並びに必要に応じて熱硬化性樹脂の混合には、一般的に使用されている混合機を用いることができる。混合機としては、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサーが挙げられる。また、アルミニウム顔料の表面を効率的に改質するため、使用する脂肪酸の融点によっては、これらの混合機は加熱できる装置であることが好ましい。また、この混合は粉状アルミニウムの粒径や形状を壊さないように緩やかな条件で実施することが好ましい。
[(D)ホルムアルデヒド抑制剤]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、好ましくはホルムアルデヒド抑制剤を含有する。ホルムアルデヒド抑制剤としては、例えば、アミノトリアジン系化合物、グアナミン系化合物、尿素系化合物、及びヒドラジン系化合物が挙げられる。これらのホルムアルデヒド抑制剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
アミノトリアジン系化合物としては、例えば、メラミン;メラム、メレム、メロンなどのメラミン縮合体;メラミンホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂;N,N’,N’’−モノ、ビス、トリス、テトラキス、ペンタキス、又はヘキサキス(o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルメチル)メラミンなどのN−ヒドロキシアリールアルキルメラミン系化合物が挙げられる。
グアナミン系化合物としては、バレログアナミン、カプログアナミン、ヘプタノグアナミン、カプリログアナミン、ステアログアナミンなどの脂肪族グアナミン系化合物;サクシノグアナミン、グルタログアナミン、アジポグアナミン、ピメログアナミン、スベログアナミン、アゼログアナミン、セバコグアナミンなどのアルキレンビスグアナミン類;シクロヘキサンカルボグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、ノルボルナンカルボグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体などの脂環族グアナミン系化合物;ベンゾグアナミン、α−又はβ−ナフトグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体などの芳香族グアナミン系化合物;フタログアナミン、イソフタログアナミン、テレフタログアナミン、ナフタレンジグアナミン、ビフェニレンジグアナミンなどのポリグアナミン類;フェニルアセトグアナミン、β−フェニルプロピオグアナミン、o−、m−又はp−キシリレンビスグアナミンなどのアラルキル又はアラルキレングアナミン類;アセタール基含有グアナミン類、ジオキサン環含有グアナミン類、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類、イソシアヌル環含有グアナミン類などのヘテロ原子含有グアナミン系化合物が挙げられる。
脂環族グアナミン系化合物における官能基置換誘導体としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基などの官能基がシクロアルカン残基に1〜3個置換した誘導体が挙げられる。また、芳香族グアナミン系化合物における官能基置換誘導体としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基などの官能基がベンゾグアナミンのフェニル残基又はナフトグアナミンのナフチル残基に1〜5個置換した誘導体が挙げられ、例えば、o−、m−又はp−トルグアナミン、o−、m−又はp−キシログアナミン、o−、m−又はp−フェニルベンゾグアナミン、o−、m−又はp−ヒドロキシベンゾグアナミン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゾグアナミン、o−、m−又はp−ニトリルベンゾグアナミン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンゾグアナミン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾグアナミンが例示される。
アセタール基含有グアナミン類としては、例えば、2,4−ジアミノ−6−(3,3−ジメトキシプロピル−s−トリアジンが挙げられ、ジオキサン環含有グアナミン類としては、例えば、[2−(4’−6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]−1,3−ジオキサン、[2−(4’−6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]−4−エチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサンが挙げられ、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類としては、例えば、CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンが挙げられ、イソシアヌル環含有グアナミン類としては、例えば、1,3,5−トリス[2−(4’,6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]イソシアヌレート、1,3,5−トリス[3−(4’,6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)プロピル]イソシアヌレートが挙げられる。
尿素系化合物としては、例えば、鎖状尿素系化合物及び環状尿素系化合物が挙げられる。鎖状尿素系化合物の具体例は、ビウレア、ビウレット、ホルム窒素などの尿素とホルムアルデヒドとの縮合体、及びポリノナメチレン尿素などのポリアルキレン又はアリーレン尿素が挙げられる。環状尿素系化合物の具体例としては、ヒダントイン類、クロチリデンジウレア、アセチレン尿素、モノ、ジ、トリ又はテトラメトキシメチルグリコールウリルなどのモノ、ジ、トリ又はテトラアルコキシメチルグリコールウリル、シアヌル酸、イソシアヌル酸、尿酸、及びウラゾールが挙げられる。ヒダントイン類としては、例えば、ヒダントイン、5−メチルヒダントイン、5−エチルヒダントイン、5−イソプロピルヒダントイン、5−フェニルヒダントイン、5−ベンジルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ペンタメチレンヒダントイン、5−メチル−5−フェニルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン、5−(o−、m−又はp−ヒドロキシフェニル)ヒダントイン、5−(o−、m−又はp−アミノフェニル)ヒダントイン、アラントイン、5−メチルアラントイン、及びアラントインジヒドロキシアルミニウム塩などのアラントインのAl塩などの金属塩が挙げられる。
カルボン酸ヒドラジド系化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物、脂環族カルボン酸ヒドラジド系化合物、及び芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物が挙げられる。脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物の具体例としては、ラウリン酸ヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ヒドラジドなどのモノカルボン酸ヒドラジド類;コハク酸モノ又はジヒドラジド、グルタル酸モノ又はジヒドラジド、アジピン酸モノ又はジヒドラジド、ピメリン酸モノ又はジヒドラジド、スベリン酸モノ又はジヒドラジド、アゼライン酸モノ又はジヒドラジド、セバシン酸モノ又はジヒドラジド、ドデカン二酸モノ又はジヒドラジド、ヘキサデカン二酸モノ又はジヒドラジド、エイコサン二酸モノ又はジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジドなどのポリカルボン酸ヒドラジド類が挙げられる。脂環族カルボン酸ヒドラジド系化合物の具体例としては、シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジドなどのモノカルボン酸ヒドラジド類;ダイマー酸モノ又はジヒドラジド、トリマー酸モノ、ジ又はトリヒドラジド、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸モノ、ジ又はトリヒドラジドなどのポリカルボン酸ヒドラジド類が挙げられる。芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物の具体例としては、安息香酸ヒドラジド及びその官能基置換誘導体、α−又はβ−ナフトエ酸ヒドラジド及びそれらの官能基置換誘導体などのモノカルボン酸ヒドラジド類;イソフタル酸モノ又はジヒドラジド、テレフタル酸モノ又はジヒドラジド、1,4−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、3,3’−、3,4’−又は4,4’−ジフェニルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルエーテルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルメタンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルエタンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェノキシエタンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルスルホンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、ジフェニルケトンジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、4,4’’−ターフェニルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、4,4’’’−クォーターフェニルジカルボン酸モノ又はジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸モノ、ジ又はトリヒドラジド、ピロメリット酸モノ、ジ、トリ又はテトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸モノ、ジ、トリ又はテトラヒドラジドなどのポリカルボン酸ヒドラジド類が挙げられる。安息香酸ヒドラジド及びその官能基置換誘導体としては、例えば、o−、m−又はp−メチル安息香酸ヒドラジド、2,4−、3,4−、3,5−又は2,5−ジメチル安息香酸ヒドラジド、o−、m−又はp−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、o−、m−又はp−アセトキシ安息香酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ−3−フェニル安息香酸ヒドラジド、4−アセトキシ−3−フェニル安息香酸ヒドラジド、4−フェニル安息香酸ヒドラジド、4−(4’−フェニル)安息香酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル安息香酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル安息香酸ヒドラジドなどの、アルキル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基などの官能基がベンゾグアナミンのフェニル残基に1〜5個置換した誘導体が挙げられる。α−又はβ−ナフトエ酸ヒドラジド及びそれらの官能基置換誘導体としては、例えば、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジドが挙げられる。
なお、上記のホルムアルデヒド抑制剤は、層状物質、多孔性物質(ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セピオライト、スメクタイト、パリゴルスカイト、イモゴライト、ゼオライト、活性炭など)に担持された形での使用も可能である。
上記ホルムアルデヒド抑制剤の中でも、アミノトリアジン系化合物、グアナミン系化合物、特に芳香族グアナミン系化合物;尿素系化合物、特に環状尿素系化合物;カルボン酸ヒドラジド化合物、特に脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物及び芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物が好ましく用いられる。これらの中でも、特に脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物及び芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物が好ましい。脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物及び芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物の中では、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカ二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド及びテレフタル酸ジヒドラジドなどのジヒドラジドがホルムアルデヒドの抑制効果の点で好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、ホルムアルデヒド抑制剤の含有量は、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、0.005〜5質量部であると好ましく、より好ましくは0.01〜3質量部、更に好ましくは0.02〜2質量部である。
[(E)紫外線吸収剤]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、紫外線吸収剤を更に含むと好ましい。これにより、そのポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体は、耐候性(光安定性)が向上する。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、及びヒドロキシフェニル−1,3,5−トリアジン系化合物が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジイソアミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基とアルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類;2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基とアラルキル基又はアリール基置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類;2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基とアルコキシ基(好ましくはC1-12アルコキシ基)置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類が挙げられる。好ましいベンゾトリアゾール系化合物は、ヒドロキシル基とC3-6アルキル基置換C6-10アリール基(特にフェニル基)とを有するベンゾトリアゾール類、並びに、ヒドロキシル基とC6-10アリール−C1-6アルキル基(特にフェニルC1-4アルキル基)置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類である。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、複数のヒドロキシル基を有するベンゾフェノン類;ヒドロキシル基とアルコキシ基(好ましくはC1-16アルコキシ基)とを有するベンゾフェノン類が挙げられる。複数のヒドロキシル基を有するベンゾフェノン類の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジ、トリ又はテトラヒドロキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノンなどのヒドロキシル基とヒドロキシル置換アリール又はアラルキル基とを有するベンゾフェノン類が挙げられる。また、ヒドロキシル基とアルコキシ基とを有するベンゾフェノン類の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンが挙げられる。好ましいベンゾフェノン系化合物は、ヒドロキシル基とヒドロキシル基置換C6-10アリール基又はC6-10アリール−C1-4アルキル基とを有するベンゾフェノン類、特に、ヒドロキシル基とヒドロキシル基置換フェニルC1-2アルキル基とを有するベンゾフェノン類である。
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミドが挙げられる。
ヒドロキシフェニル−1,3,5−トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
これらの中で、ヒンダードアミン系安定剤としてはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサビス[5,5’]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物が特に好ましく、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましく、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールが最も好ましい。
ポリアセタール樹脂組成物が紫外線吸収剤とヒンダードアミン系安定剤とを含有する場合、ヒンダードアミン系化合物と紫外線吸収剤との割合は、前者/後者(質量比)で10/90〜80/20が好ましく、より好ましくは10/90〜70/30、更に好ましくは20/80〜60/40の範囲である。紫外線吸収剤の添加量は、ポリアセタールコポリマー100質量部に対し、好ましくは0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜2質量部であり、更に好ましくは0.1〜1.5質量部である。
[その他の添加剤]
本実勢形態のポリアセタール樹脂組成物には、従来のポリアセタール樹脂に使用されている熱安定剤を含有することが好ましい。熱安定剤としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒド又はぎ酸の捕捉剤、並びにこれらの組合せがより効果を発揮するため好ましい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、例えば、n−オクタデシル−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオ−ル−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。また、別のヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドが挙げられる。
これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤のなかでも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)及びテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタンが好ましい。
ホルムアルデヒド又はぎ酸の捕捉剤としては、例えば、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、脂肪酸カルシウム塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、アミノ置換トリアジン、アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物が挙げられる。アミノ置換トリアジンとしては、例えば、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)が挙げられる。また、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン(アメライト)、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン(アメリン)、N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミンが挙げられる。アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物としては、例えば、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物が挙げられる。これらの中で、ジシアンジアミド、メラミン及びメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物が好ましい。ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリルアミド及びその誘導体を又はアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られる重合体、アクリルアミド及びその誘導体又はアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとをラジカル重合の存在下で重合して得られる重合体、アミン、アミド、尿素及びウレタン等の、窒素原子を有する重合体が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12及びこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12が挙げられる。アクリルアミド及びその誘導体を又はアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られる重合体としては、例えば、ポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。これらの重合体や共重合体は、特公平6−12259号公報(米国特許5015707号明細書)、特公平5−87096号公報、特公平5−47568号公報及び特開平3−234729号公報の各文献に記載の方法で製造することができる。
脂肪酸カルシウム塩としては、例えば、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸のカルシウム塩が挙げられ、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。飽和脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸が挙げられる。不飽和脂肪酸としては、例えば、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プリピオール酸、ステアロール酸が挙げられる。これら脂肪酸の中でも特にパルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸が好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、脂肪酸カルシウム塩の添加量は、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、0.01〜0.5質量部の範囲であると好ましく、より好ましくは0.02〜0.3質量部である。
脂肪酸カルシウム塩の添加量が0.01〜0.5質量部の場合、上記成形加工時の熱安定性と成形体からのホルムアルデヒド発生量とに加え、耐熱エージング性がより良好な範囲となる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム又はバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。ただし、上述の脂肪酸カルシウム塩は除かれる。上記カルボン酸塩に対応するカルボン酸としては、例えば、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらのカルボン酸はヒドロキシル基で置換されていてもよい。飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸が挙げられる。アルコキシドとしては、例えば、上記金属のメトキシド、エトキシドが挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、更に意匠性を高めるために各種の着色剤を含有することができる。着色剤としては、有機顔料、無機顔料が挙げられるが、特に限定されるものではなく、1種でもよく2種以上の着色剤の組合せであってもよい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、縮合多環系顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、亜鉛華、二酸化チタン、弁柄、酸化クロム、鉄黒等の単純酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド等の硫化物、黄鉛、亜鉛黄、クロムバーミリオン等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、群青等の珪酸塩、カーボンブラック、金属粉等の無機系色剤が挙げられる。
着色剤の添加量は、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、0.001〜5質量部であると好ましく、より好ましくは0.001〜3質量部の範囲である。この範囲にすることで、更に成形体の意匠性を向上することができる。
さらに本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、所望に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、従来のポリアセタール樹脂組成物で用いられる潤滑剤、各種無機充填剤、他の熱可塑性樹脂、柔軟剤、結晶核剤、離型剤などを含有してもよい。
[ポリアセタール樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、一般的に使用されている溶融混練機を用いて、上記各原料のうち一部を溶融しつつ混合することにより得られる。溶融混練機としては、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機が挙げられる。このときの温度は180〜230℃であることが好ましく、品質や作業環境の保持のためには不活性ガスにより系内を置換したり、一段及び多段ベントで脱気したりすることが好ましい。また、アルミニウム顔料のポリアセタールコポリマーへの均一な分散性を高めるために、ポリアセタールコポリマーがペレット状の場合は一部又は全部のペレットを粉砕しパウダー状にし、パウダー状のポリアセタールコポリマーと粉状のアルミニウム顔料とを予め混合した後、溶融混合してもよい。また、ポリアセタールコポリマーのペレットを用いる場合、添着剤を用いてアルミニウム顔料の分散性を高めてもよい。添着剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及びこれらの変性物、これらの混合物(流動パラフィン、ミネラルオイルなど)、ポリオールの脂肪酸エステルが挙げられる。
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する際、予めポリアセタールコポリマーとヒンダードアミン系物質と、必要に応じて紫外線吸収剤とを、予め溶融混練しておくことが好ましい。この予備的な混練により、さらに成形体の外観及び成形体の明度を向上することが可能となる。この予備的な混練には、一般的に使用されている溶融混練機を用いることができる。溶融混練機としては、例えば、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機が挙げられる。このときの温度は180〜230℃であることが好ましく、品質や作業環境の保持のためには不活性ガスにより系内を置換したり、一段及び多段ベントで脱気したりすることが好ましい。
[成形体の製造方法]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を用いた成形体の製造方法としては、公知の成形方法、例えば押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の方法を用いることができる。特に、品位や生産安定性、経済性などの観点から、射出成形、射出圧縮成形、及びこれらと金型内複合成形とを組み合わせた成形方法が好ましい。
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物とゴム及び/又はエラストマーを含む各種樹脂との接着(超音波接着、高周波接着、熱板接着、熱プレス成形、多層射出成形、多層ブロー成形など方法は問わない)により、2層以上の成形品を製造することもできる。これによって、各種樹脂の優れた性能(耐衝撃性、摺動性、耐薬品性など)をそれぞれ付与し、優れた意匠性を有する外観をもった成形体を得ることができる。
[用途]
本実施形態の上記製造方法により得られた成形体は、特に機構部分や摺動部分を備えた内装・外装部品に用いることができる。例えば、その成形体は、OA機器、音楽・映像若しくは情報機器、又は通信機器に備えられる部品、オフィス家具若しくは住設機器に備えられる工業部品、及び、自動車内外装用部品からなる群より選ばれるいずれかの部品として用いられる。特に、優れた外観を求められるハンドル、スイッチ及びボタンからなる群より選ばれるいずれかの部品として用いられると好適である。さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体を外観部品として用いるために、成形時にシボ金型を使用したり、成形後の成形体にシボ加工を施したりして、その成形体に意匠面を付与すると、優れた外観を有するという効果が発現されるため好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物によれば、表面にメッキや塗装等の加工を施さなくても金属光沢を有する成形体あって、熱安定性や耐候性に優れ、良好な機械的特性(例えば、引張特性、衝撃強度、ウエルド性能)を保持し、かつ、ホルムアルデヒドの発生量を抑制した、優れた外観を有する成形体を得ることができる。さらに、本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体は塗装を要しないので、溶剤を使用せずに効率よく意匠性に優れた外観が得られる。この成形体は、特に、優れたアルミニウム光沢を有し、見る角度で色目変化の生じ難い、ウエルド性能に優れたものとなる。また、かかる成形体は安定して生産することができると共に、製造時の作業環境も良好である。
次に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)主要原材料
[(A)ポリアセタールコポリマー]
ポリアセタールコポリマーと各種添加剤とを含有したもの(以下、「調整ポリアセタールコポリマー」ともいう。)を、下記のようにして得た。
熱媒を通すことのできるジャケット付セルフ・クリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応機(スクリュー径3インチ、L/D=10)の反応容器内を80℃に調整し、主モノマーとしてトリオキサンを2625g/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを27〜90g/時間の間の所定量、連鎖移動剤としてメチラールをスタティックミキサー(ノリタケ・カンパニー・リミテッド社製、T型・エレメント数21)を通して上記反応機の反応容器内に連続的にフィード(供給)した。重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を用い、その触媒がトリオキサン1モルに対して2.0×10-5モルになるように、上記反応容器内に添加して重合を行い、重合フレークを得た。なお、連鎖移動剤の供給量は2〜5g/時間とした。
得られた重合フレークを細かく粉砕後、トリエチルアミン1%水溶液中に投入して撹拌を行い、重合触媒の失活を行った。その後、濾過、洗浄、乾燥を行い、粗ポリマーを得た。得られた粗ポリマー1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物としてトリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を、窒素の量に換算して20ppmになるように添加し、均一に混合した後、それらを120℃で3時間乾燥して乾燥ポリマーを得た。
この乾燥ポリマーをベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業社製;商品名「BT−30」、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)の前段部分にトップフィーダーより投入し、乾燥ポリマー100質量部に対し水を0.5質量部添加して、平均滞留時間1分間でポリマー末端を安定化して減圧脱気を行った。次に二軸押出機の後段部分で、サイドフィーダーより、乾燥ポリマー100質量部に対して熱安定剤としてナイロン6−6(ポリアミド66)を0.05質量部及びステアリン酸カルシウムを0.05質量部加えて、平均滞留時間1分間で溶融混合した後、造粒を行った。これを80℃で3時間乾燥し、調整ポリアセタールコポリマー(a−1)〜(a−4)を得た。原料投入から中間ペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。なお、下記(a−1)〜(a−4)中、「コモノマー含有量」とは、ポリアセタールコポリマーにおいて、トリオキサン100モル%に対するコモノマーの含有量を示す。
(a−1)コモノマー含有量:4.0モル%、MFR:9g/10分(ASTM D1238−57Eに準拠。以下同様。)
(a−2)コモノマー含有量6.0モル%、MFR:9g/10分
(a−3)コモノマー含有量1.4モル%、MFR:9g/10分
(a−4)コモノマー含有量1.0モル%、MFR:9g/10分
[(B)ヒンダードアミン系安定剤]
(b−1)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
(b−2)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサビス[5,5’]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物
[(C)アルミニウム顔料]
市販されている燐片状のアルミニウム粉をタイラー標準篩にて目的の粒径に分級して、アルミニウム顔料を得た。詳細な粒子径分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、商品名「SALD−1100」)により測定し、得られた粒子径分布の50%値によりアルミニウム顔料の平均粒径D50を求めた。また、10μm以下の粒子径を有する粒子の割合(以下、「10μm以下の割合」という。)は、上記粒子径分布に基づいて積分値から求めた。
上記分級後のアルミニウム顔料とベヘン酸(アルミニウム粉100質量部に対し、ベヘン酸2質量部の割合)とをジャケット付きのリボンブレンダー(80℃・80rpm)で3分間混合して、表面を改質したアルミニウム顔料(c−1)、(c−2)、(c−10)〜(c−12)を作製した。また、アルミニウム顔料(c−1)及び(c−2)を所定の割合で混合して、アルミニウム顔料(c−3)〜(c−9)を得た。
(c−1)体積平均粒子径D50=23μm、10μm以下の割合=0.4体積%のアルミニウム顔料
(c−2)体積平均粒子径D50=12μm、10μm以下の割合=40体積%のアルミニウム顔料
(c−3)体積平均粒子径D50=22μm、10μm以下の割合=4体積%のアルミニウム顔料
(c−4)体積平均粒子径D50=22μm、10μm以下の割合=6体積%のアルミニウム顔料
(c−5)体積平均粒子径D50=21μm、10μm以下の割合=8体積%のアルミニウム顔料
(c−6)体積平均粒子径D50=20μm、10μm以下の割合=12体積%のアルミニウム顔料
(c−7)体積平均粒子径D50=19μm、10μm以下の割合=16体積%のアルミニウム顔料
(c−8)体積平均粒子径D50=18μm、10μm以下の割合=20体積%のアルミニウム顔料
(c−9)体積平均粒子径D50=16μm、10μm以下の割合=25体積%のアルミニウム顔料
(c−10)体積平均粒子径D50=30μm、10μm以下の割合=10体積%のアルミニウム顔料
(c−11)体積平均粒子径D50=25μm、10μm以下の割合=13体積%のアルミニウム顔料
(c−12)体積平均粒子径D50=34μm、10μm以下の割合<0.1体積%のアルミニウム顔料
[(D)ホルムアルデヒド抑制剤]
(d−1)セバチン酸ジヒドラジド
(d−2)アジピン酸ジヒドラジド
(d−3)ベンゾグアナミン
(d−4)アラントイン
[(E)紫外線吸収剤]
(e−1)2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール
(2)評価方法
[機械的特性、流動性]
実施例及び比較例で得られたペレットを80℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度200℃に設定された5オンス成形機(東芝機械(株)製、商品名「IS−100GN」)を用いて、金型温度70℃、冷却時間30秒の条件で物性評価用試験片を作製した。この試験片を用いて下記の試験を行った。機械的特性については引張強度、引張伸度及びアイゾット衝撃強度を測定し、流動性はメルトフローレイトで評価した。
<1>引張強度(TS)、引張伸度(TE);ASTM D638に準拠して測定した。
<2>アイゾット衝撃強度;ASTM D256に準拠して測定した。
<3>メルトフローレイト(MFR);ASTM D−1238−57Tに準拠して測定した。
[ホルムアルデヒド発生量(VDA275)]
下記実施例、比較例で得られたペレットを、射出成形機(東芝機械社製、商品名「IS−100GN」)を用いて、シリンダー温度220℃、射出時間15秒、冷却時間20秒、金型温度77℃の条件で成形して試験片を作製し、下記方法(VDA275法)により、試験片から放出されるホルムアルデヒド量を求めた。
まず、500mLのポリエチレン容器に蒸留水50mLと試験片(縦100mm×横40mm×厚み3mmのシート)とを入れて密閉し、60℃で3時間加熱した。その後、蒸留水中のホルムアルデヒドをアンモニウムイオン存在下においてアセチルアセトンと反応させた。その反応物について、UV分光計にて波長412nmの吸収ピークを測定し、ホルムアルデヒド放出量(mg/kg)を求めた。
[アルミ光沢、色目変化評価]
下記実施例、比較例で得られたペレットを、1オンス成形機(東洋機械金属社製、商品名「TI−30G」)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、冷却時間15秒の条件で成形して試験片を作製した。この試験片は、長さ90mm、幅50mm、厚さ2mmの金型を用いて得られた。
<1>アルミ光沢
上記試験片の主面に対して、室外で直射日光が観察者の背後から直角に入射する条件で、その試験片に直射日光を照射し、反射光の光沢を観察者の目視で判定した。判定の基準は下記のとおりとした。
○;アルミニウム顔料での反射によるキラキラ感がある。
△;アルミニウム顔料での反射によるキラキラ感が上記の半分程度。
×;アルミニウム顔料での反射によるキラキラ感が少ない。
<2>斜め45℃の角度での色目変化
上記試験片の主面に対して、室外で直射日光が観察者の背後から直角に入射する条件で、その試験片に直射日光を照射した場合と、その状態から試験片の上部を観察者側に倒して、直射日光の入射角度を試験片の主面に対して45度とした場合との間で、色目の変化を観察した。
○;色目の変化が認められない。
△;色目の変化が僅かに認められる。
×;色目の変化が明らかに認められる。
[ウエルド外観(ウエルド性能)]
下記実施例及び比較例で得られたペレットを、シリンダー温度200℃に設定された1オンス成形機(東洋機械金属社製、商品名「TI−30G」)を用いて、金型温度80℃の条件で成形して、成形体である直径60mmで厚さ5mmの歯車(3点ピンゲート)を得た。この成形体のウエルドを目視及び光学顕微鏡で観察した。
○;ウエルドラインが細く目立たない。
△;ウエルドラインが中程度で確認できる。
×;ウエルドラインが太く明確に確認できる。
[耐候性]
上記「アルミ光沢、色目変化評価」と同様にして試験片を得た。次いで、スーパーキセノンウエザーメーター(商品名「XAL−2WL」、スガ試験機(株)製)を用いて、立ち上がり波長320nm、試料面光強度162w/m2(光強度制御300〜400nm)、ブラックパネル温度89℃、明暗サイクルなしの条件で、試験片に光照射した。試験片表面にクラックが生じるまでの時間を測定した。
(実施例1)
(a−1)ポリアセタールコポリマー100質量部と、(b−1)ヒンダードアミン0.5質量部と、(c−3)アルミニウム顔料2質量部とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、その混合物を30mmベント付き短軸押出機を用いて、設定温度200℃、回転数80rpm、吐出量10kg/時間の条件で真空脱気しながら溶融混練(溶融混合)してペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2〜11、比較例1、2)
(c−3)成分を表1に示す(c−1)〜(c−11)成分に代えた以外は実施例1と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
(b−1)成分を用いなかった以外は実施例4と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例12〜22、比較例4〜6)
ヘンシェルミキサーを用いて混合する際に、更に(d−1)ホルムアルデヒド抑制剤0.2質量部を混合した以外は実施例1〜11及び比較例1〜3と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例23〜25)
(a−1)成分を(a−2)〜(a−4)成分に代えた以外は実施例4と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例26〜28)
(a−1)成分を(a−2)〜(a−4)成分に代えた以外は実施例15と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例29〜31)
(d−1)成分を(d−2)〜(d−4)成分に代えた以外は実施例15と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例32)
ヘンシェルミキサーを用いて混合する際に、更に(e−1)紫外線吸収剤0.5質量部を混合した以外は実施例15と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例33〜35)
(a−1)成分を(a−2)〜(a−4)成分に代えた以外は実施例32と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットに対して80℃で3時間乾燥した後、上記各評価を行った。結果を表3に示す。