JP7265895B2 - 成形用アルミニウム合金箔 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、成分範囲を規定することによって、深絞り耳を改善することが提案されている。
また、特許文献1では、成分範囲を規定するとともに、化合物粒子の分布を規定することで、連続成形に優れ、耳率が小さく、成形後の肌荒れや筋状欠陥のない良好な外観を得ることができるアルミニウム合金箔が提案されている。
さらに、特許文献3では、合成樹脂フィルムと積層されたアルミニウム箔積層体において、成分範囲を規定することによって、アルミニウム箔自体が伸びやすく、合成樹脂製フィルムの種類によらず、比較的良好な成型を行うことができるものが提案されている。
Siはアルミニウム箔の強度を若干向上させ、Al-Fe合金箔の集合組織発達を抑制し、耳率の低減にも有効な元素である。Si含有量が0.5%未満ではその効果に乏しく、0.7%を超えると材料強度が高くなり、またAl-Fe-Si系の粗大な金属間化合物が生成し成形性や箔圧延性の低下を招く。
なお、同様の理由により、Si含有量の下限は0.6%、上限は0.7%とするのが望ましい。
Feはアルミニウム箔の強度を向上させることの出来る元素である。またAl-Fe系の第二相粒子が高密度に分布する事で、結晶粒が微細化し、成形性向上と深絞り時の肌荒れを抑制に効果がある。Fe含有量が0.7%未満ではそれらの効果に乏しく、0.9%を超えるとAl-Fe系の粗大な金属間化合物が生成し成形性の低下を招くだけでなく、集合組織の発達により機械的性質の異方性や耳率が大きくなる。
なお、同様の理由により、Fe含有量の下限は0.7%、上限は0.85%とするのが望ましい。
Cuはアルミニウム箔の強度を大きく向上させ、また集合組織にも寄与し機械的性質の異方性と耳率に影響を及ぼす元素である。Cu含有量が0.05%未満ではCube方位密度が増加し機械的性質の異方性と耳率が大きくなる。Cu含有量が0.20%を超えると材料強度が高くなりすぎ成形性や箔圧延性が大きく低下する。
なお、同様の理由により、Cu含有量の下限は0.10%、上限は0.15%とするのが望ましい。
Mnはアルミニウム箔の強度を向上させ、且つアルミニウム箔の再結晶を強く阻害する元素であるので所望により含有させる。Mn含有量が0.0020%未満では冷間圧延中に回復・再結晶を起こしやすいAl-Fe合金において強度低下のリスクが高まり、また高純度のアルミニウム地金を使用する必要がある為製造コストが増加する。一方、Mn含有量が0.010%を超えると、材料強度が高くなり成形性や圧延性が低下する。
なお、同様の理由により、Mn含有量の下限は0.0025%、上限は0.005%とするのが望ましい。
なお、Mnを積極的に含有しない場合に、0.0020%未満でMnを不可避不純物として含有するものであってもよい。
集合組織の発達は機械的性質の異方性を増加させ、深絞り成形時の耳率の増加やシワの発生の要因となる。深絞り加工時に箔の圧延方向に対する0度と90度方向に生成する耳に寄与するCube方位密度、そして主に45度方向に生成する耳に寄与するCu方位とR方位密度を規定以下に制御する事でほぼ耳が発生せず、機械的性質の異方性も小さいアルミニウム合金箔を得る事が出来る。
平均結晶粒径が30μmを超えると深絞り成形性の低下を招き、また表面の肌荒れを生じるリスクが高まる。
平均結晶粒径は主に化学成分と製造工程の選択により変量することができる。Feは結晶粒を微細化する作用が強く、また中間焼鈍から最終厚みに至る冷間圧延率が高い程結晶粒は微細化される為、これらの最適化により平均結晶粒径30μm以下を達成する事が出来る。ただし結晶粒径はFeの存在状態や、中間焼鈍条件の影響も受ける為、同じFe添加量且つ同じ冷間圧延率であっても変化する事がある。
各方向の引張強さのバラツキが大きい場合、深絞り成形時のシワ発生や容器の真円性低下につながる。3%以下に制御することでこれらの問題発生を抑制出来る。
上記条件は、前記で記載したように、集合組織制御により達成することができる。
Feが析出しやすい温度で均質化処理を行う事で、Feの固溶量を低下させその後の製造工程におけるCube方位の発達を促す事が出来る。また1μm以上のAl-Fe系の第二相粒子の密度を増加させることで、結晶粒の微細化に繋がる。
均質化処理後の鋳塊を熱間圧延する場合、その仕上がり温度が重要となる。300℃を超えると熱間圧延後に板の一部で再結晶を生じ、最終製品における理想的な集合組織が得にくくなる。またファイバー粒と再結晶粒が混在する不均一な組織は、最終製品における結晶粒組織の不均一さにも寄与し、成形性の低下を招く恐れがある。圧延仕上がり温度が230℃未満で仕上げるには熱間圧延中の温度も極めて低温となる為、板のサイドにクラックが発生し生産性が大幅に低下する懸念がある。
一般には冷間圧延を行う事で圧延集合組織と呼ばれるCu方位やS方位が発達し、中間焼鈍で再結晶を生じる事で再結晶集合組織であるCube方位が発達する事が知られている。冷間圧延率と中間焼鈍条件の制御は理想的な集合組織を得る上で極めて重要である。熱間圧延から中間焼鈍までの冷間圧延率は、中間焼鈍後の集合組織の発達を抑制する為、30~70%とする事が望ましい。前記冷間圧延率が70%を超えると、中間焼鈍後もCube方位が発達せず圧延集合組織が維持されてしまい、また前記冷間圧延率が30%未満では冷間圧延で導入されるひずみ量が低くなり、Cube方位の過度な発達や中間焼鈍時の再結晶粒の粗大化やサイズの不均一化を招く。
本発明では、中間焼鈍方法は特に限定しないが、Cube方位粒の成長を抑制する目的でCAL焼鈍が望ましい。バッチ焼鈍の場合は、好適には、温度300~400℃、CAL焼鈍の場合は420~470℃が選択できる。バッチ焼鈍において、焼鈍温度が300℃未満では再結晶が完了せず、400℃を超えると再結晶粒の粗大化やFe析出が不十分となる恐れがある。CAL焼鈍においても焼鈍温度が420℃未満では再結晶が完了せず、470℃を超えると固溶Fe量が多くなり、最終製品においてCu方位やR方位の発達が促進する恐れがある。
最終焼鈍は箔を軟化させ、成形性を向上させると共に再結晶により各結晶方位密度のバランスを取る目的で行われる。最終焼鈍の条件は完全に再結晶を完了させる為に、温度200~400℃で3時間以上が好ましい。200℃未満では再結晶が不完全となる恐れがあり、400℃を超えると再結晶粒の粗大化や箔同士が密着しコイルが巻き出せなく可能性がある。好ましくは240~300℃、時間は5~10時間である。
以下、本発明の一実施形態の成形用アルミニウム合金箔およびその製造方法について説明する。
本実施形態の成形用アルミニウム合金箔は、Si:0.5~0.7質量%、Fe:0.7~0.9質量%、Cu:0.05~0.20質量%を含有し、所望によりMn:0.0020~0.010質量%を含有し、残部がAl及びその他の不可避不純物からなる組成を有している。
本実施形態の成形用アルミニウム合金箔は、集合組織としてCube方位密度10以下、Cu方位密度5以下、R方位密度5以下であり、優れた加工性を有している。
さらには、成形加工前において、結晶粒径が30μm以下であり、圧延方向に対する0°、45°、90°方向の引張強さにおいて、{(最大引張強さ)-(最小引張強さ)}/(最大引張強さ)×100<3%を満たすのが望ましい。
なお、ここにいう耳率は、深絞り試験において、絞り比1.75のときの山高さの平均と谷高さの平均との差を、谷高さの平均で割って求めた比率(%)として測定された値である。
耳率に影響する因子は様々あるが、特には材料の集合組織により制御される。特定の結晶方位の密度が高くなり、集合組織が発達する事で高い耳が発生する。例えばCube方位が発達すれば圧延方向に対して0°と90°の4箇所に耳が立ち、Cu方位やR方位が発達すれば圧延方向に対し45°方向の4箇所に耳が立ちやすくなる。Cube方位、Cu方位、そしてR方位のすべてが発達する状況では0°、45°、90°の8か所に耳が見られるようになる。そこでCube方位密度10以下、Cu方位密度5位下、R方位密度5位下をすべて満たす事で、絞り比1.75で成形したカップの耳率が2.0%以下により達成することができる。
なお、上記絞り比は、特性を評価するために示されるものであり、本発明における加工時の絞り比が上記に限定されるものではない。
成形用アルミニウム合金箔の材料となるアルミニウム合金の鋳塊は、常法により鋳造することができ、例えば前記成分範囲となるように成分調整し、鋳造することにより得ることができる。
熱間圧延の条件は、例えば熱間仕上り温度として230~300℃の間に制御して行う。
上記熱間圧延では、アルミニウム合金板の仕上がり板厚を3~7mmにすることが好ましい。また、上記熱間圧延後、最初の中間焼鈍までの冷間圧延率が、30~70%となるように仕上がり板厚を設定するのが望ましい。
また、冷間圧延の途中には、少なくとも1回の中間焼鈍を実施する。
中間焼鈍の焼鈍炉として連続焼鈍炉やバッチ炉を使用し、焼鈍条件としては、例えば400℃以上の到達温度で行うのが望ましい。
上記冷間圧延により、例えば、80~200μm板厚の成形用アルミニウム合金箔を得る。なお、本発明としては、成形用アルミニウム合金箔の板厚が特定のものに限定されるものではない。
以上では、成形用アルミニウム合金箔の製造方法について説明したが、上記工程は一つの形態を示すものであり、本発明としては、上記工程に限定されるものではない。
例えば食品等の包装に用いることができる。この場合はアルミニウム箔の表面に樹脂を貼り合せ複合材でも使用される事がある。
表1に示す組成(残部がAlと不可避不純物)の合金を溶製し、表1に示す条件で、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、最終焼鈍を行い、供試材を得た。
得られた供試材について、以下の項目についてそれぞれ評価を行い、評価結果を表2に示した。
Cube方位は{001}<100>、Cu方位は{112}<111>、R方位は{123}<634>を代表方位とした。それぞれの方位密度はX線回折法において、{111}、{200}、{220}の不完全極点図を測定し、その結果を用いて3次元方位分布関数(ODF;Orientation Distribution Function)を計算し、各結晶方位密度の評価を行った。
最終焼鈍後のアルミニウム箔の供試材表面を20容量%過塩素酸+80容量%エタノール混合溶液を用い、電圧20Vで電解研磨を行った後、バーカー氏液中にて電圧30Vの条件で陽極酸化処理した。処理後の供試材について、光学顕微鏡にて結晶粒を観察した。撮影した写真から切断法により平均結晶粒径を算出した。
引張強さは引張試験にて測定した。圧延方向に対し0、45、90°の各方向のJIS5号試験片を採取し、万能引張試験機(島津製作所社製 AGS-X 10kN)で引張り速度5mm/min.にて試験を行った。
絞り比1.75にて深絞りを行い、成形カップ全周の凹凸形状測定を行った後下記の式にて耳率を算出した。
耳率={山の平均高さ-谷の平均高さ}/{(山の平均高さ+谷の平均高さ)/2}×100(%)
一方、比較例では、結晶組織および強度のバランスが崩れた結果、絞り加工における耳率の悪化や割れを招き、成形用アルミニウム合金箔として不十分な性能となっている。
Claims (5)
- Si:0.5~0.7質量%、Fe:0.7~0.9質量%、Cu:0.05~0.20質量%を含有し、残部がAl及びその他の不可避不純物からなる組成を有し、集合組織としてCube方位密度10以下、Cu方位密度5以下、R方位密度5以下であることを特徴とする成形用アルミニウム合金箔。
- さらに、前記組成に、Mn:0.0020~0.010質量%を含有することを特徴とする請求項1記載の成形用アルミニウム合金箔。
- 平均結晶粒径が30μm以下、且つ圧延方向に対する0°、45°、90°方向の引張強さにおいて、{(最大引張強さ)-(最小引張強さ)}/(最大引張強さ)×100<3%を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の成形用アルミニウム合金箔。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金箔の製造方法であって、
請求項1または2に記載の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に480~540℃で4時間以上保持する均質化処理を行い、均質化処理後に圧延仕上がり温度が230~300℃となるように熱間圧延を行い、冷間圧延の途中で400℃以上の中間焼鈍を行い、熱間圧延後から中間焼鈍までの冷間圧延率を30~70%とし、さらに中間焼鈍後から最終製品までの冷間圧延率を91~97%とし、冷間圧延後に最終焼鈍を行うことを特徴とする成形用アルミニウム合金箔の製造方法。 - 前記最終焼鈍が、温度200~400℃で、3時間以上で行われることを特徴とする請求項4記載の成形用アルミニウム合金箔の製造方法。
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