JP2016056444A - アルミニウム合金板 - Google Patents

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Daisuke Kaneda
大輔 金田
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一徳 小林
伸郎 服部
Nobuo Hattori
伸郎 服部
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Tomoko Abe
智子 阿部
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Abstract

【課題】大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができる意匠性に優れたアルミニウム合金板を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るアルミニウム合金板は、Mg:2.0〜6.0質量%、Mn+Cr:0.01〜0.20質量%、Fe:0.20質量%以下、Si:0.10質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、板表面における平均結晶粒径が1〜10mmであり、板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して20以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム合金板に関するものであり、詳細には、意匠性に優れたアルミニウム合金板に関するものである。
多種多様な産業分野において使用されるアルミニウム合金板は、対象となる製品が要求する品質を満たすべく、引張強さ、耐力、伸び、曲げ加工性等の機械的性質について鋭意検討されてきた。
そして、アルミニウム合金板に関する機械的性質は、製品の品質を左右するため極めて重要な事項ではあるが、この機械的性質に劣らず、ユーザの購買意欲を左右する意匠性についても、重要な事項であると認識されている。
したがって、アルミニウム合金板の意匠性を向上させる技術について、次のような技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、Si:0.05〜0.15wt%、Fe:0.13〜0.35wt%、Mg:2.0〜5.0wt%、Mn+Cr:0.15〜0.80wt%、更に、Ti:0.005〜0.15wt%、または、Ti:0.005〜0.15wt%およびB:0.0005〜0.05wt%を含有し、残部Alおよびその他の不純物からなることを特徴とする結晶粒組織模様発現用アルミニウム合金素材が提案されている。
特開2005−325420号公報
特許文献1に係る技術は、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させる技術であるが、結晶粒が微細化してしまうのを防止するために、1〜6%(好ましくは2〜4%)という非常に低い圧下率でしか冷間圧延(詳細には焼鈍後の冷間圧延)を施すことができなかった。
その結果、特許文献1に係る技術は、板表面に発現する結晶粒と結晶粒との間のコントラストが小さく、意匠性に優れているとは言えなかった。
そこで、本発明に係るアルミニウム合金板は、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができる意匠性に優れたアルミニウム合金板を提供することを課題とする。
すなわち、本発明に係るアルミニウム合金板は、Mg:2.0〜6.0質量%、Mn+Cr:0.01〜0.20質量%、Fe:0.20質量%以下、Si:0.10質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、板表面における平均結晶粒径が1〜10mmであり、板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して20以下であることを特徴とする。
このアルミニウム合金板によれば、平均結晶粒径を所定範囲としていることから、1mm以上の大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させることができる。
また、このアルミニウム合金板によれば、Mn+Crの含有量を所定範囲としていることから、冷間圧延(詳細には焼鈍後の冷間圧延)の圧下率を大きく設定することが可能となり、その結果、大きな圧下率の冷間圧延により結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができる。
加えて、このアルミニウム合金板によれば、Cube方位分布密度を20以下としていることから、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にするという効果を確実なものとすることができる。
なお、特許文献1に係る従来技術は、非常に低い圧下率の冷間圧延を施すことが必須の要件とされていたため、当該冷間圧延による歪みが安定せずに、製品間において品質にばらつきが生じてしまうという問題もあった。しかし、このアルミニウム合金板によれば、冷間圧延の圧下率を大きく設定することが可能であることから、製品間における品質のばらつき(特に、板幅方向の結晶粒のばらつき)を抑制することができ、その結果、不良品を減少させ、生産性(スループット)を向上させることもできる。
また、このアルミニウム合金板によれば、Mn+Crの含有量を所定範囲としていることから、冷間圧延工程自体を省略しつつも、熱間圧延工程での最終パスの圧下率を制御等することにより、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明とし、かつ、厚めの板厚(例えば、板厚が2mm以上)のアルミニウム合金板にすることもできる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、前記Mnと前記Crとの合計の含有量が、0.01〜0.14質量%であるのが好ましい。
このアルミニウム合金板によれば、MnとCrの合計の含有量を所定範囲とすることにより、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるという効果と、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にするという効果とを、より確実なものとすることができる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、Zrをさらに含有し、前記Mnと前記Crと前記Zrとの合計の含有量が、0.01〜0.20質量%であってもよい。
このアルミニウム合金板によれば、Zrを含有する場合、Mn+Cr+Zrの含有量を所定範囲としていることから、冷間圧延(詳細には焼鈍後の冷間圧延)の圧下率を大きく設定することが可能となり、その結果、大きな圧下率の冷間圧延により結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができる。
また、このアルミニウム合金板によれば、Mn+Cr+Zrの含有量を所定範囲としていることから、冷間圧延工程自体を省略しつつも、熱間圧延工程での最終パスの圧下率を制御等することにより、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明とし、かつ、厚めの板厚(例えば、板厚が2mm以上)のアルミニウム合金板にすることもできる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、前記Mnと前記Crと前記Zrとの合計の含有量が、0.01〜0.14質量%であるのが好ましい。
このアルミニウム合金板によれば、MnとCrとZrの合計の含有量を所定範囲とすることにより、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるという効果と、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にするという効果とを、より確実なものとすることができる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、Cuをさらに含有し、前記Cuの含有量が、0.60質量%以下であってもよい。
このアルミニウム合金板によれば、Cuの含有量を所定範囲としていることから、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるという効果と、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にするという効果とを、発揮することができる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、引張強さが150MPa以上であるのが好ましい。
このアルミニウム合金板によれば、引張強さを150MPa以上としていることから、合金板に求められる強度を確保することができる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、前記のアルミニウム合金板に表面処理を施したものであってもよい。
本発明に係るアルミニウム合金板は、前記のアルミニウム合金板の表面に樹脂皮膜が形成されたものであってもよい。
本発明に係るアルミニウム合金板は、各成分の含有量を所定範囲とするとともに、平均結晶粒径を所定範囲とし、さらに、Cube方位分布密度を所定範囲とすることから、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることにより意匠性を優れたものとすることができる。
供試材1(平均結晶粒径:4mm、Cube方位分布密度:8)の表面状態を示す写真の画像である。 供試材11(平均結晶粒径:1mm、Cube方位分布密度:23)の表面状態を示す写真の画像である。
以下、本発明に係るアルミニウム合金板を実施するための形態について、詳細に説明する。
[アルミニウム合金板]
本発明に係るアルミニウム合金板は、所定範囲の含有量のMg、Mn+Cr、Fe、Siを含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、板表面における平均結晶粒径が所定範囲であり、Cube方位が所定値以下であることを特徴とする。そして、本発明に係るアルミニウム合金板は、MnとCrとZrとの合計の含有量が所定範囲となるようにZrを含有していてもよく、さらに、所定範囲の含有量のCuを含有していてもよい。加えて、本発明に係るアルミニウム合金板は、引張強さが所定値以上であることが好ましい。
以下、本発明に係るアルミニウム合金板の各合金成分、平均結晶粒径、Cube方位、引張強さについて、数値限定した理由を説明する。
(Mg:2.0〜6.0質量%)
Mgは、アルミニウム合金において固溶強化により強度を向上させる効果があり、さらにSiと共存する場合、Mg−Si系金属間化合物を生成して強度向上に寄与する。Mgの含有量を2.0質量%以上とすることにより、所望の強度を得ることができる。一方、Mgの含有量が6.0質量%を超えると、結晶粒の核の数が多くなり過ぎてしまい、板表面に発現する結晶粒の平均結晶粒径が小さくなってしまう。
したがって、Mgの含有量は、2.0〜6.0質量%であり、好ましくは、3.0質量%以上、5.0質量%以下である。
(Mn+Cr:0.01〜0.20質量%)
MnとCrは、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるために必須となる成分である。MnとCrの合計の含有量を0.01質量%以上とすることにより、結晶粒の成長をピン止めするMnとCrが、仕上焼鈍において固溶することでピン止めが外され、所望の粒径まで結晶粒を成長(粗大化)させることができる。一方、MnとCrの合計の含有量が0.20質量%を超えてしまうと、板表面に発現する結晶粒の平均結晶粒径が小さくなってしまう。
したがって、Mn+Crの含有量(MnとCrの合計の含有量)は、0.01〜0.20質量%であり、好ましくは、0.14質量%以下であり、特に好ましくは、0.05質量%以上、0.11質量%以下である。
なお、MnとCrは、本発明に係るアルミニウム合金板において略同じ役割を奏する成分であるため、MnとCrの合計の含有量が前記の範囲である限り、Mn及びCrのいずれか一方の含有量が0.00質量%であってもよい。
ただし、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるという効果を確実なものとするため、Mnの含有量は0.01〜0.10質量%が好ましく、Crの含有量は0.01〜0.10質量%が好ましい。
(Fe:0.20質量%以下)
Feは、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、また、アルミニウム合金中で、Mn、Siと共にAl−Mn−Fe系金属間化合物やAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を生成する。Feは強度の向上に寄与するものの、Feの含有量が0.20質量%を超えると、これら金属間化合物を核とした結晶粒の数が多くなり過ぎてしまい、板表面に発現する結晶粒の平均結晶粒径が小さくなってしまう。
したがって、Feの含有量は、0.20質量%以下(0質量%も含む)であり、好ましくは、0.01質量%以上、0.15質量%以下である。
(Si:0.10質量%以下)
Siは、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、また、アルミニウム合金において固溶強化により強度を向上させる効果があり、さらにMgと共存する場合、Mg−Si系金属間化合物を生成して強度向上に寄与する。しかし、Siの含有量が0.10質量%を超えると、これら金属間化合物を核とした結晶粒の数が多くなり過ぎてしまい、板表面に発現する結晶粒の平均結晶粒径が小さくなってしまう。
したがって、Siの含有量は、0.10質量%以下(0質量%も含む)であり、好ましくは、0.005質量%以上、0.06質量%以下である。
(Zrをさらに含有する場合、Mn+Cr+Zr:0.01〜0.20質量%)
Zrは、前記のMnやCrと同様、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させる効果を発揮する成分である。Zrをさらに含有する場合、MnとCrとZrの合計の含有量を0.01質量%以上とすることにより、結晶粒の成長をピン止めするMnとCrとZrが、仕上焼鈍において固溶することでピン止めが外され、所望の粒径まで結晶粒を成長(粗大化)させることができる。一方、MnとCrとZrの合計の含有量が0.20質量%を超えてしまうと、板表面に発現する結晶粒の平均結晶粒径が小さくなってしまう。
したがって、Mn+Cr+Zrの含有量(MnとCrとZrの合計の含有量)は、0.01〜0.20質量%であり、好ましくは、0.14質量%以下であり、特に好ましくは、0.05質量%以上、0.11質量%以下である。
なお、MnとCrとZrは、本発明に係るアルミニウム合金板において略同じ役割を奏する成分であるため、MnとCrとZrの合計の含有量が前記の範囲である限り、Mn、Cr及びZrのいずれか1成分または2成分の含有量が0.00質量%であってもよい。
(Cuをさらに含有する場合、Cu:0.60質量%以下)
Cuの含有量が0.60質量%を超えると、結晶粒の核の数が多くなり過ぎてしまい、板表面に発現する結晶粒の平均結晶粒径が小さくなってしまう。
したがって、Cuを含有させる場合、Cuの含有量は、0.60質量%以下であり、好ましくは、0.50質量%以下である。
(不可避的不純物)
不可避的不純物として、Ti、V、Zn、Ni、Bi、Pb等が本発明の効果を妨げない範囲で含有されていてもよい。詳細には、それぞれ0.05質量%以下、合計0.20質量%以下、好ましくは、それぞれ0.01質量%以下、合計0.10質量%以下、の範囲で含有されていてもよい。
そして、Ti、V、Zn、Ni、Bi、Pb等については、前記した所定の含有量を超えなければ、不可避的不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加される場合であっても、本発明の効果を妨げない。
例えば、Tiであれば、鋳造工程における鋳塊組織の微細化を目的に、Ti単体、或いは、Ti−Bで添加でき、その場合のB量は0.01質量%程度であれば、本発明の効果を妨げない。
また、前記した上限値のみ規定しているFe、Si、必須成分ではないZr、Cuについても、不可避的不純物として含まれていてもよい。
なお、不可避的不純物として挙げた各元素の含有量は、当然、0質量%であってもよい。
(平均結晶粒径:1〜10mm)
本発明に係るアルミニウム合金板は、板表面における平均結晶粒径が、1〜10mmとする。
平均結晶粒径が1mm以上の大きなものであると、アルミニウム合金板を後記する各種用途に適用した際に、意匠性に優れたものであると人に認識させることができる。一方、平均結晶粒径が10mmを超えると、成形性を低下させてしまう。
したがって、平均結晶粒径は、1〜10mmであり、好ましくは、3mm以上、8mm以下である。
平均結晶粒径は、次の方法により測定することができる。
後記する製造方法における仕上焼鈍後のアルミニウム合金板の表面をタッカー氏液(塩酸、硝酸、フッ酸)によりエッチングし、水洗・乾燥した後に、目視にて圧延方向に切片法を用いて平均結晶粒径の値を算出する。なお、切片法を用いた測定は、例えば、1測定ライン長さを50mmとし、1視野当たり各3本で合計5視野を観察することにより、全測定ライン長さを50×15mmとすればよい。また、結晶粒径が1mm未満の場合は、バーカー法にてそれぞれ結晶粒を現出させ、光学顕微鏡にて写真撮影後、同様に切片法により平均結晶粒径を算出すればよい。
なお、平均結晶粒径については、前記した各合金成分の含有量で制御するとともに、後記する製造方法の工程の中でも、特に第2冷間圧延工程の圧下率(第1実施形態の場合)や、熱間圧延工程の最終パスの圧下率(第2実施形態の場合)により制御することができる。
(Cube方位分布密度:20以下)
本発明に係るアルミニウム合金板は、板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して、20以下(詳細には、結晶方位分布関数解析による板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して20以下)である。Cube方位分布密度が、20以下であると、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができる。
したがって、Cube方位分布密度は、20以下であり、15以下であることが好ましい。
Cube方位分布密度は、次の方法により測定することができる。
後記する製造方法における仕上焼鈍後(詳細には、仕上焼鈍後、バフ研磨した後、10%フッ酸により約30秒間化学研磨し、水洗・乾燥した状態)のアルミニウム合金板の表面を、例えば、株式会社リガク製のX線回折装置[型式「リガクRAD−rX」(Ru−200B)]を用いて計測することで、ランダム方位に対するCube方位分布密度を求めることができる。そして、当該X線回折装置を用いて不完全極点図による結晶方位分布関数解析(ODF解析)を行えばよい。詳細には、schluzの反射法により、{100}面、{111}面の不完全極点図を作成し、Bungeの反復級数展開法(positivity法)を適用してODF解析を実施し、Cube方位分布密度を求めることができる。
なお、Cube方位分布密度については、前記した各合金成分(特にMn+Cr、Mn+Cr+Zr)の含有量で制御するとともに、後記する製造方法の工程の中でも、特に第2冷間圧延工程の圧下率(第1実施形態の場合)や、熱間圧延工程の最終パスの圧下率(第2実施形態の場合)により制御することができる。
(引張強さ:150MPa以上)
本発明に係るアルミニウム合金板は、引張強さが、150MPa以上であることが好ましい。引張強さが150MPa以上であると、後記する各種用途の合金板としての強度を確保することができる。
したがって、引張強度は、150MPa以上が好ましく、200MPa以上が特に好ましい。
引張強さは、次の方法により測定することができる。
後記する製造方法における仕上焼鈍後のアルミニウム合金板から引張方向が圧延方向と垂直になるようにJIS5号の試験片を切り出し、JISZ2241:2011に準拠して引張試験を実施することにより、引張強さを測定する。
なお、引張強さについては、前記した各合金成分の含有量で制御するとともに、後記する製造方法の工程の中でも、特に各工程の熱履歴及び圧下率によって制御することができる。
(アルミニウム合金板の状態)
本発明に係るアルミニウム合金板とは、基本的には、後記の製造方法における仕上焼鈍を施した後であって表面処理を施す前の合金板のことを指すが、仕上焼鈍後の合金板に対して表面処理を施したものも含む。
ここで、「表面処理を施したもの」とは、仕上焼鈍後の合金板に前処理(サンドブラスト、研磨等の機械的前処理、脱脂、エッチング等の化学的前処理)を施したもの、さらに、陽極酸化処理、着色処理、封孔処理を施したもの等、一般的に行われている表面処理を施したものである。
ただし、アルミニウム合金板に表面処理を施す場合において、酸性の化学溶液を使用してエッチングを施した後に、陽極酸化処理(アルマイト処理)を施すと、アルミニウム合金板の表面に凹凸が形成され、当該凹凸により反射率が低下する。その結果、アルミニウム合金板の表面が暗く見えてしまい、意匠性を低下させる可能性がある。
したがって、表面処理を施すことにより、アルミニウム合金板の耐疵付き性等を向上させたい場合、前記の「表面処理を施したもの」とは、酸性の化学溶液を使用してエッチングを施した後に、陽極酸化処理を施す代わりに、樹脂皮膜を形成する処理を施したものが好ましい。
なお、この樹脂皮膜とは、例えば、フッ素系樹脂皮膜(具体的には、特許第3966520号、特許第3846807号、特許第5255612号等参照)や、ポリエステル系樹脂皮膜(具体的には、特許第4448511号等参照)や、エポキシ系樹脂皮膜(具体的には、特許第413427号等参照)であるのが好ましい。そして、この樹脂皮膜は、膜厚については特に限定されず、例えば、0.1〜10μmであればよい。
(用途)
本発明に係るアルミニウム合金板は、優れた意匠性を奏することから、意匠性が要求されるもの、つまり、人が視認する可能性のあるありとあらゆる有体物に適用することができる。
例えば、屋根、壁、床等の「建築材料用」、機械や電気機器等を収納する「筐体用」、自動車、船舶、鉄道車両等の輸送機器の「外板又は内板パネル用」、または「飲料缶用」として、本発明に係るアルミニウム合金板を適用することができる。
本発明に係るアルミニウム合金板の板厚は、特に限定されず、薄めの板厚(例えば、板厚が2mm未満)であっても、厚めの板厚(例えば、板厚が2mm以上)であってもよく、前記の用途に応じて、適宜選択すればよい。
本発明に係るアルミニウム合金板は、以上説明したとおりであるが、その他の明示していない特性等については、従来公知のものであればよく、前記特性によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。
[アルミニウム合金板の製造方法]
次に、本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法を説明する。
なお、本発明に係るアルミニウム合金板は2つの方法により製造することができるため、以下では、第1実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法と第2実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法とに分けて説明する。
(第1実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法)
本発明に係るアルミニウム合金板は、鋳造工程と、均質化熱処理工程と、熱間圧延工程と、第1冷間圧延工程と、中間焼鈍工程と、第2冷間圧延工程と、仕上焼鈍工程と、を行うことによって製造される。
また、本発明に係るアルミニウム合金板は、仕上焼鈍工程後に表面処理工程を行うことによって製造してもよい。
以下、前記各工程を中心に説明する。
(鋳造工程)
鋳造工程では、前記の成分組成であるアルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の鋳造法により鋳造し、アルミニウム合金の固相線温度未満まで冷却して、所定の厚さ(例えば、400〜600mm程度)の鋳塊とする。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程では、鋳造工程で鋳造した鋳塊を圧延する前に、所定温度で均質化熱処理を施す。鋳塊に均質化熱処理を施すことによって、内部応力が除去され、鋳造時に偏析した溶質元素が均質化され、また、鋳造冷却時やそれ以降に析出した金属間化合物が成長する。
この均質化熱処理工程における熱処理温度は、400〜550℃が好ましい。400℃以上とすることにより、前記した均質化の効果を得ることができる。一方、処理温度が550℃を超えると、結晶粒の核となる金属間化合物が減少してしまうことで、最終的に得られる結晶粒のサイズが大きくなってしまう。
なお、熱処理時間については、特に限定されず、1〜24時間とすればよい。
均質化熱処理工程は、均質化熱処理の後、冷却することなく熱間圧延を行う「1回均熱」であっても、均質化熱処理の後、一旦、熱間圧延開始温度以下(例えば、常温)まで冷却し、面削を行った後に再加熱をして熱間圧延を行う「2回均熱」であっても、均質化熱処理の後、熱間圧延開始温度まで冷却し、熱間圧延を行う「2段均熱」であってもよい。
ここで、「1回均熱」「2段均熱」を行う場合は、均質化熱処理工程の前に面削を行っておけばよい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、均質化された鋳塊に熱間圧延を施す。
この熱間圧延工程における圧延開始温度や圧延終了温度は特に限定されず、例えば、圧延開始温度を400〜550℃とし、圧延終了温度を、250〜380℃とすればよい。
そして、複数のパスからなる熱間圧延を施すことにより、所望の板厚の熱間圧延板(ホットコイル)とすることができる。
(第1冷間圧延工程)
第1冷間圧延工程では、熱間圧延板に再結晶温度以下(例えば、常温)で冷間圧延を施す。
この第1冷間圧延工程における圧下率は特に限定されず、0〜80%とすればよい。
なお、圧下率0%とは、熱間圧延上がりで中間焼鈍を施す場合(第1冷間圧延は行わない場合)を示す。
(中間焼鈍工程)
中間焼鈍工程では、第1冷間圧延工程後の圧延板に焼鈍を施す。
この中間焼鈍工程における焼鈍温度や焼鈍時間は特に限定されず、例えば、300〜450℃、1〜12時間とすればよい。
(第2冷間圧延工程)
第2冷間圧延工程では、中間焼鈍後の圧延板に再結晶温度以下(例えば、常温)で冷間圧延を施す。
この第2冷間圧延工程における圧下率は30%以上が好ましい。アルミニウム合金板のMn+Cr、Mn+Cr+Zrの含有量が本発明の規定する所定範囲である場合、圧下率を30%以上とすることで、最終的に得られる結晶粒の粒径を所望の値まで大きくすることができるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができる。そして、圧下率が大きくなるに従い、最終的に得られる結晶粒の粒径は、徐々に小さくなる。
つまり、本発明に係るアルミニウム合金板によると、特許文献1に係る従来技術と比較して、第2冷間圧延工程の圧下率を大きく設定することができる。
(仕上焼鈍工程)
仕上焼鈍工程では、第2冷間圧延工程後の圧延板に対して焼鈍を施す。
仕上焼鈍工程における焼鈍温度は、450〜550℃が好ましい。焼鈍温度を450℃以上とすることにより、結晶粒の成長をピン止めしていたMn、Cr(さらにZr)が固溶し、一気に結晶粒を成長(粗大化)させることで、結晶粒の粒径を所望の値まで大きくすることができる。一方、焼鈍温度が600℃を超えると、融解してしまう。
なお、焼鈍時間については、特に限定されず、1〜12時間とすればよい。
仕上焼鈍工程における焼鈍は、急速に加熱冷却を行う連続焼鈍(CAL)だと、十分に結晶粒が成長(粗大化)しないため、バッチ焼鈍(箱焼鈍)が好ましい。なお、バッチ焼鈍を行う際の設備等は、従来公知のものを用いればよい。
(表面処理工程)
表面処理工程では、仕上焼鈍工程後の圧延板に対して表面処理を施す。
表面処理工程における表面処理としては、「前処理」(サンドブラスト、研磨等の機械的前処理、脱脂、エッチング等の化学的前処理)、「陽極酸化処理」、「着色処理」、「封孔処理」等、一般的に行われている表面処理が挙げられる。
例えば、表面処理工程では、仕上焼鈍工程後の圧延板を、水酸化ナトリウム水溶液(60℃、10%)で1分間の洗浄を行った後、硝酸水溶液(10%)で1分間のスマット除去を行えばよい。そして、当然、洗浄・スマット除去という前処理の後、陽極酸化処理→着色処理→封孔処理を行ってもよい。
ただし、表面処理工程において、酸性の化学溶液を使用してエッチングを施した後に、陽極酸化処理(アルマイト処理)を施すと、アルミニウム合金板の表面に凹凸が形成され、当該凹凸により反射率が低下する。その結果、アルミニウム合金板の表面が暗く見えてしまい、意匠性を低下させる可能性がある。
したがって、表面処理によりアルミニウム合金板の耐疵付き性等を向上させるケースにおいて、酸性の化学溶液を使用してエッチングを施した場合、当該エッチングの後に陽極酸化処理を施すのではなく、樹脂皮膜を形成する処理を施すのが好ましい。
なお、樹脂皮膜を形成する処理としては、例えば、フッ素系樹脂皮膜の形成(具体的には、特許第3966520号、特許第3846807号、特許第5255612号等参照)や、ポリエステル系樹脂皮膜の形成(具体的には、特許第4448511号等参照)や、エポキシ系樹脂皮膜の形成(具体的には、特許第413427号等参照)という処理を行えばよい。
次に、第2実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法について説明する。
(第2実施形態に係るアルミニウム合金板の製造方法)
本発明に係るアルミニウム合金板は、鋳造工程と、均質化熱処理工程と、熱間圧延工程と、仕上焼鈍工程と、を行うことによって製造される。
また、本発明に係るアルミニウム合金板は、仕上焼鈍工程後に表面処理工程を行うことによって製造してもよい。
以下、前記各工程を中心に説明する。
(鋳造工程)
鋳造工程では、前記の成分組成であるアルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の鋳造法により鋳造し、アルミニウム合金の固相線温度未満まで冷却して、所定の厚さ(例えば、400〜600mm程度)の鋳塊とする。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程では、鋳造工程で鋳造した鋳塊を圧延する前に、所定温度で均質化熱処理を施す。鋳塊に均質化熱処理を施すことによって、内部応力が除去され、鋳造時に偏析した溶質元素が均質化され、また、鋳造冷却時やそれ以降に析出した金属間化合物が成長する。
この均質化熱処理工程における熱処理温度は、400〜550℃が好ましい。400℃以上とすることにより、前記した均質化の効果を得ることができる。一方、処理温度が550℃を超えると、結晶粒の核となる金属間化合物が減少してしまうことで、最終的に得られる結晶粒のサイズが大きくなってしまう。
なお、熱処理時間については、特に限定されず、1〜24時間とすればよい。
均質化熱処理工程は、均質化熱処理の後、冷却することなく熱間圧延を行う「1回均熱」であっても、均質化熱処理の後、一旦、熱間圧延開始温度以下(例えば、常温)まで冷却し、面削を行った後に再加熱をして熱間圧延を行う「2回均熱」であっても、均質化熱処理の後、熱間圧延開始温度まで冷却し、熱間圧延を行う「2段均熱」であってもよい。
ここで、「1回均熱」「2段均熱」を行う場合は、均質化熱処理工程の前に面削を行っておけばよい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、均質化された鋳塊に熱間圧延を施す。
この熱間圧延工程における圧延開始温度や圧延終了温度は特に限定されず、例えば、圧延開始温度を400〜550℃とし、圧延終了温度を、250〜380℃とすればよい。
そして、複数のパスからなる熱間圧延を施すことにより、所望の板厚の熱間圧延板(ホットコイル)とすることができる。
なお、熱間圧延工程における最終パスの圧下率(詳細には、仕上げ熱間圧延の最終パス圧下率)は、10%を超え45%以下が好ましい。アルミニウム合金板のMn+Cr、Mn+Cr+Zrの含有量が本発明の規定する所定範囲である場合、最終パスの圧下率を前記の範囲内とすることにより、最終的に得られる結晶粒の粒径を所望の値まで大きくすることができるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができる。
そして、熱間圧延工程における最終パスの圧下率が45%を超えると、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させ難くなり、一方、10%以下であると、スリップしてしまい熱間圧延板を得られなくなる。
(仕上焼鈍工程)
仕上焼鈍工程では、熱間圧延工程後の圧延板に対して焼鈍を施す。
仕上焼鈍工程における焼鈍温度は、450〜550℃が好ましい。焼鈍温度を450℃以上とすることにより、結晶粒の成長をピン止めしていたMn、Cr(さらにZr)が固溶し、一気に結晶粒を成長(粗大化)させることで、結晶粒の粒径を所望の値まで大きくすることができる。一方、焼鈍温度が600℃を超えると、融解してしまう。
なお、焼鈍時間については、特に限定されず、1〜12時間とすればよい。
仕上焼鈍工程における焼鈍は、急速に加熱冷却を行う連続焼鈍(CAL)だと、十分に結晶粒が成長(粗大化)しないため、バッチ焼鈍(箱焼鈍)が好ましい。なお、バッチ焼鈍を行う際の設備等は、従来公知のものを用いればよい。
(表面処理工程)
表面処理工程では、仕上焼鈍工程後の圧延板に対して表面処理を施す。
表面処理工程における表面処理としては、「前処理」(サンドブラスト、研磨等の機械的前処理、脱脂、エッチング等の化学的前処理)、「陽極酸化処理」、「着色処理」、「封孔処理」等、一般的に行われている表面処理が挙げられる。
例えば、表面処理工程では、仕上焼鈍工程後の圧延板を、水酸化ナトリウム水溶液(60℃、10%)で1分間の洗浄を行った後、硝酸水溶液(10%)で1分間のスマット除去を行えばよい。そして、当然、洗浄・スマット除去という前処理の後、陽極酸化処理→着色処理→封孔処理を行ってもよい。
ただし、表面処理工程において、酸性の化学溶液を使用してエッチングを施した後に、陽極酸化処理(アルマイト処理)を施すと、アルミニウム合金板の表面に凹凸が形成され、当該凹凸により反射率が低下する。その結果、アルミニウム合金板の表面が暗く見えてしまい、意匠性を低下させる可能性がある。
したがって、表面処理によりアルミニウム合金板の耐疵付き性等を向上させるケースにおいて、酸性の化学溶液を使用してエッチングを施した場合、当該エッチングの後に陽極酸化処理を施すのではなく、樹脂皮膜を形成する処理を施すのが好ましい。
なお、樹脂皮膜を形成する処理としては、例えば、フッ素系樹脂皮膜の形成(具体的には、特許第3966520号、特許第3846807号、特許第5255612号等参照)や、ポリエステル系樹脂皮膜の形成(具体的には、特許第4448511号等参照)や、エポキシ系樹脂皮膜の形成(具体的には、特許第413427号等参照)という処理を行えばよい。
ここまで、アルミニウム合金板の製造方法を2つに分けて説明したが、薄めの板厚(例えば、板厚が2mm未満)のアルミニウム合金板を製造する場合は、第1実施形態により製造するのが好ましく、厚めの板厚(例えば、板厚が2mm以上)のアルミニウム合金板を製造する場合は、第2実施形態により製造するのが好ましい。
また、Cube方位分布密度が15以下であり、結晶粒と結晶粒との間のコントラストが非常に鮮明なアルミニウム合金板を製造する場合は、第1実施形態により製造するのが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、仕上焼鈍工程や表面処理工程の後に、アルミニウム合金板を所定の大きさに裁断する裁断工程や、所定の形状に加工(曲げ加工、穴抜き加工等)する加工工程を含めてもよい。
また、前記各工程において、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、前記各工程での処理によって得られる効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できることは言うまでもない。
次に、本発明に係るアルミニウム合金板について、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。
[供試材の作製]
表1の供試材1〜21については、表1に示す組成のアルミニウム合金を、溶解し、半連続鋳造にて鋳塊を作製し、面削処理を行い厚み580mmとした。この鋳塊に、均質化熱処理を行ったのち、熱間圧延(開始温度:480℃、終了温度:320℃、最終板厚:3mm、最終パス圧下率:表1に示す)を施して、熱間圧延板とした。その後、第1冷間圧延(圧下率:58%)、中間焼鈍(温度:350℃、時間:4h)、第2冷間圧延(圧下率:表1に示す)、仕上焼鈍(温度:550℃、時間:4h)を施すことで、供試材を作製した。
表1の供試材22〜26については、表1に示す組成のアルミニウム合金を、溶解し、半連続鋳造にて鋳塊を作製し、面削処理を行い厚み580mmとした。この鋳塊に、均質化熱処理を行ったのち、熱間圧延(開始温度:480℃、終了温度:320℃、最終板厚:表1に示す、最終パス圧下率:表1に示す)を施して、熱間圧延板とし、仕上焼鈍(温度:550℃、時間:4h)を施すことで、供試材を作製した。
そして、供試材1〜26には、仕上焼鈍後、表面処理を行った。この表面処理は、供試材に対して、水酸化ナトリウム水溶液(60℃、10%)で1分間の洗浄を行った後、硝酸水溶液(10%)で1分間のスマット除去を行うというものであった。
[評価]
(平均結晶粒径)
スマット除去後の供試材の表面を、タッカー氏液(塩酸、硝酸、フッ酸)によりエッチングし、水洗・乾燥した後に、目視にて圧延方向に切片法を用いて平均結晶粒径の値を算出した。なお、切片法を用いた測定は、1測定ライン長さを50mmとし、1視野当たり各3本で合計5視野を観察することにより、全測定ライン長さを50×15mmとした。また、結晶粒径が1mm未満の場合は、バーカー法にてそれぞれ結晶粒を現出させ、光学顕微鏡にて写真撮影後、同様に切片法により平均結晶粒径を算出した。
(引張強さ)
供試材から引張方向が圧延方向と垂直になるようにJIS5号の試験片を切り出した。この試験片を用いて、JISZ2241:2011に準拠して引張試験を実施し、引張強さを測定した。
なお、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
(Cube方位)
Cube方位の測定は、仕上焼鈍後、バフ研磨した後、10%フッ酸により約30秒間化学研磨し、水洗・乾燥した供試材の表面を、株式会社リガク製のX線回折装置[型式「リガクRAD−rX」(Ru−200B)]を用いて計測することで、ランダム方位に対するCube方位分布密度を求めた。当該X線回折装置を用いて不完全極点図によるODF解析を行った。詳細には、schluzの反射法により、{100}面、{111}面の不完全極点図を作成し、Bungeの反復級数展開法(positivity法)を適用してODF解析を実施し、Cube方位分布密度を求めた。
詳細なアルミニウム合金の成分、及び、試験結果を表1に示す。なお、表1において、本発明の構成を満たさないものについては、数値に下線を引いて示す。
[結果の検討]
供試材1〜10、22〜24については、本発明の規定する要件を満たしていることから、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができるという結果となった。
また、供試材1〜10、22〜24については、引張強さについても、150MPa以上となり、合金板に要求される一定の強度についても有しているとの結果となった。
なお、供試材1は、図1に示すように、平均結晶粒径が大きくなり、意匠性に優れることが確認できた。
一方、供試材11は、Mgの含有量が、本発明で規定する数値範囲の下限値未満であったため、引張強さが低く、合金板として不適であるとの結果となった。また、供試材11は、Mgの含有量が、本発明で規定する数値範囲の下限値未満であったため、板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して20を超えてしまった。
なお、供試材11は、図2に示すように、平均結晶粒径が小さくなり、意匠性に劣ることが確認できた。
供試材12は、Mgの含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材13は、MnとCrの合計の含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材14、MnとCrの合計の含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材15は、Feの含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材16は、Siの含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材17は、MnとCrとZrの合計の含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材18は、MnとCrとZrの合計の含有量が、本発明で規定する数値範囲の下限値未満であったため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材19は、Cuの含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材20は、第2冷間圧延における圧下率が低く、平均結晶粒径が小さかったため、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材21は、特許文献1に係る技術を想定したものであり、Mn+Crの含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えており、第2冷間圧延における圧下率が低かったため、板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して20を超えてしまった。よって、供試材21は、板表面に発現する結晶粒と結晶粒との間のコントラストが小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材25は、MnとCrとZrの合計の含有量が、本発明で規定する数値範囲の上限値を超えていたため、板表面に発現した結晶粒が小さく、意匠性に劣るとの結果となった。
供試材26は、熱間圧延における最終パスの圧下率が高く、平均結晶粒径が小さかったため、意匠性に劣るとの結果となった。
以上の結果より、本発明に係るアルミニウム合金板は、大きな粒径の結晶粒模様を板表面に発現させるとともに、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを鮮明にすることができることがわかった。
なお、供試材1〜10、22〜24について、膜厚が2μmのフッ素系樹脂皮膜を形成(特許第3966520号の段落0034、0040の実施例1と同様の方法により形成)させた後、Cube方位分布密度を測定したが、形成前とほとんど変わらない結果となった。
よって、樹脂皮膜であれば、結晶粒と結晶粒との間のコントラストを低下させることなく、当該樹脂皮膜が奏する効果(耐疵付き性等)を享受できることがわかった。

Claims (8)

  1. Mg:2.0〜6.0質量%、Mn+Cr:0.01〜0.20質量%、Fe:0.20質量%以下、Si:0.10質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、
    板表面における平均結晶粒径が1〜10mmであり、
    板表面のCube方位分布密度がランダム方位に対して20以下であることを特徴とするアルミニウム合金板。
  2. 前記Mnと前記Crとの合計の含有量が、0.01〜0.14質量%であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金板。
  3. Zrをさらに含有し、
    前記Mnと前記Crと前記Zrとの合計の含有量が、0.01〜0.20質量%であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金板。
  4. 前記Mnと前記Crと前記Zrとの合計の含有量が、0.01〜0.14質量%であることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム合金板。
  5. Cuをさらに含有し、
    前記Cuの含有量が、0.60質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板。
  6. 引張強さが150MPa以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板に表面処理を施したものであることを特徴とするアルミニウム合金板。
  8. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板の表面に樹脂皮膜が形成されたものであることを特徴とするアルミニウム合金板。
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