JP7261047B2 - 積層型圧電セラミックス及びその製造方法、積層型圧電素子並びに圧電振動装置 - Google Patents

積層型圧電セラミックス及びその製造方法、積層型圧電素子並びに圧電振動装置 Download PDF

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Description

本発明は、積層型圧電セラミックス及びその製造方法、積層型圧電素子並びに圧電振動装置に関する。
圧電セラミックスは、これにより形成される圧電素子が、機械的変位によって電荷を生じたり、電極間の電位差によって機械的変位を生じたりする性質を利用して、センサ、アクチュエータ等に広く利用されている。
圧電素子を構成する圧電セラミックスの組成としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、PZT)及びその固溶体が広く用いられている。PZT系の圧電セラミックスは、高いキュリー温度を有することから、高温環境下でも使用可能であると共に、高い電気機械結合係数を有することから、電気的エネルギーと機械的エネルギーとを効率良く変換可能であるという利点を有する。また、適切な組成を選択することにより、1000℃を下回る温度で焼成できるため、圧電素子の製造コストを低減できる利点も有する。特に、積層型圧電セラミックスにおいて、圧電セラミックスと同時焼成される内部電極に、白金やパラジウム等の高価な材料の含有量を減らした低融点の材料が使用できるようになることが、大きなコスト低減効果を生む。しかし、PZT系の圧電セラミックスは、有害物質である鉛を含むことが問題視されており、これに代わる、鉛を含まない圧電セラミックスが求められている。
現在まで、鉛を含まない圧電セラミックスの組成として、ニオブ酸アルカリ((Li,Na,K)NbO)系、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi0.5Na0.5)TiO、BNT)系、ビスマス層状化合物系及びタングステンブロンズ系等の種々のものが報告されている。これらのうち、ニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスは、キュリー点が高く、電気機械結合係数も比較的大きいため、PZT系に代わる圧電セラミックスとして注目されている(特許文献1)。
ニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスは、内部電極と交互に積層して積層型圧電セラミックスとする場合に、内部電極として銀を含むものを利用すると、この銀が焼成中に圧電セラミックス中に拡散し、電気抵抗が低下することで、圧電素子の信頼性が損なわれることがある。これに対し、特許文献2では、ニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスの組成を、アルカリ土類金属と銀とを含有するものとすることで、Ag0.7Pd0.3の内部電極を利用した場合でも、高い電気抵抗率が得られたことが報告されている。
国際公開第2007/094115号 特開2017-163055号公報
近年、積層型圧電素子に対するコストダウンの要請が強まっており、内部電極として、高価なPdの使用量を抑えた、Ag:Pd=8:2の合金ないし純銀のような、銀の含有割合がさらに高いものの使用が求められている。
このような、銀の含有割合が高い内部電極を備える積層型圧電素子では、特許文献2に記載された対策をとった場合でも、寿命が短く信頼性の低いものとなることがあった。
そこで本発明は、圧電セラミックス層が構成元素として鉛を含まず、内部電極中の銀の含有割合が高く、長寿命の積層型圧電素子の提供を目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために種々の検討を行ったところ、積層型圧電素子を構成するニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスを、特定の組成のものとすることで、該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決するための本発明の第1の実施形態は、圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスであって、前記圧電セラミックス層は、構成元素として鉛を含まず、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0≦y≦1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とすると共に、前記主成分100モルに対して、Liを0~1.0モル、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を0.2~5.0モル、Mnを0.2~2.0モル、並びにSiを0.1~3.0モル含有し、前記内部電極層は、銀を80質量%以上含む金属で構成されることを特徴とする積層型圧電セラミックスである。
また、本発明の第2の実施形態は、積層型圧電セラミックスの製造方法であって、所定量のリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物及びニオブ化合物の粉末を混合し、仮焼して、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする仮焼粉を得ること、該仮焼粉中の前記主成分100モルに対して、Liが0~1.0モル、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素が0.2~5.0モル、Mnが0.2~2.0モル、Siが0.1~3.0モルとなる量で、前記仮焼粉に、リチウム化合物、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物及びケイ素化合物を混合して、構成元素として鉛を含まない成形用粉末を得ること、該成形用粉末をバインダーと混合して成形用組成物を得ること、該成形用組成物をシート状に成形して生シートを得ること、該生シート上に、銀の含有量が80質量%以上の金属を含む導体層を形成すること、該導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得ること、並びに該生成形体からのバインダーの除去及び焼成を行って焼成体を得ることを含む、積層型圧電セラミックスの製造方法である。
さらに、本発明の第3の実施形態は、前述の積層型圧電セラミックスを含む積層型圧電素子であり、本発明の第4の実施形態は、該圧電素子及びこれに接合された振動板を含む圧電振動装置である。
本発明によれば、圧電セラミックス層が構成元素として鉛を含まず、内部電極中の銀の含有割合が高く、長寿命の積層型圧電素子を提供することができる。
積層型圧電セラミックスの構造を示す概略図((a)正面図、(b)斜視図) 圧電セラミックス層中に接続導体を備える積層型圧電セラミックスの構造を示す概略断面図 積層型圧電素子の構造を示す概略図((a)正面図、(b)斜視図) 実施例及び比較例に係る積層型圧電セラミックスの積層方向最表面に位置する圧電セラミックス層表面についてのX線回折測定結果((a)実施例1、(b)実施例2、(c)実施例3、(d)比較例1、(e)比較例2) 実施例及び比較例に係る積層型圧電セラミックスの積層方向最表面に位置する圧電セラミックス層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察結果((a)実施例1、(b)実施例2、(c)実施例3、(d)比較例1、(e)比較例2) 実施例及び比較例に係る積層型圧電素子のHALT試験結果((a)実施例1、(b)実施例2、(c)実施例3、(d)比較例1、(e)比較例2)
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、数値範囲の記載(2つの数値を「~」でつないだ記載)については、下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
[積層型圧電セラミックス]
図1に模式的に示すように、本発明の第1の実施形態に係る積層型圧電セラミックス100(以下、単に「第1実施形態」と記載することがある。)は、圧電セラミックス層2及び内部電極層3が交互に積層されて構成される。なお、図中には、内部電極層3の位置が把握しやすいように、内部電極層3が、積層型圧電セラミックス100の複数の端面に露出する構造を示したが、第1実施形態の構造はこれに限定されず、内部電極層3が積層型圧電セラミックス100の1つの端面でのみ露出する構造や、内部電極3が積層型圧電セラミックス100の端面に露出しない構造とすることも可能である。そして、前記圧電セラミックス層2は、構成元素として鉛を含まず、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とすると共に、前記主成分100モルに対して、Liを0~1.0モル、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を0.2~5.0モル、Mnを0.2~2.0モル、並びにSiを0.1~3.0モル含有し、前記内部電極層3は、銀を80質量%以上含む金属で構成される。
第1実施形態の圧電セラミックス層2は、構成元素として鉛を含まないものであるため、環境負荷を低減できる。本明細書において、「構成元素として鉛を含まない」とは、原料に不可避的に含まれる鉛や、製造工程で不可避的に混入する鉛以外に、鉛を含まない意味である。
第1実施形態の圧電セラミックス層2は、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする。ここで、本明細書における「主成分」とは、圧電セラミックス層2中に、質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
前記組成式において、xの値、すなわちLiの含有割合は、0.02を超え0.1以下とする。xの値を0.02超とすることで、圧電セラミックスが緻密なものとなる。xの値は0.04以上とすることが好ましく、0.06以上とすることがより好ましい。他方、xの値を0.1以下とすることで、LiNbO等の導電性を有する化合物の生成が抑制され、絶縁性及び耐久性に優れた圧電セラミックスとなる。xの値は、0.09以下とすることが好ましく、0.08以下とすることがより好ましい。
前記組成式における、x+yの値、すなわちLiの含有割合と任意成分であるNaの含有割合との合計は、0.02を超え1以下とする。x及びyの値をこの条件を満たすものとすることで、優れた圧電特性を有する圧電セラミックスとなる。
第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前述した組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とするものであれば、所期の特性が得られる範囲内で他の添加元素ないし化合物を含有するものであってもよい。含有し得る添加元素の例としては、慣用されているTa及びSbの他、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Mo、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf及びW等が挙げられる。
ここで、圧電セラミックス層2が、前述の組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とすることは、以下の方法で確認する。
まず、積層型圧電セラミックス100の積層方向最表面に露出する圧電セラミックス層2について、Cu-Kα線を用いたX線回折装置(株式会社リガク製、RINT2500シリーズ)で回折線プロファイルを測定し、ペロブスカイト構造由来のプロファイルが主成分として認められ、かつ他の由来と考えられる回折プロファイルにおける最強回折線強度の、前記ペロブスカイト構造由来の最強回折線強度に対する割合が10%以下となった積層型圧電セラミックスを、ペロブスカイト型化合物を主成分とするものと判定する。なお、積層型圧電セラミックスの最表面に電極が形成されており、圧電セラミックス層が露出していない場合には、測定に先立ち、研磨等により該電極を除去する。
次いで、ペロブスカイト型化合物を主成分とすると判定された積層型圧電素子100の圧電セラミックス層2に、導電性を付与するために炭素を蒸着し、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日立ハイテクノロジーズ社製、S-4300)に設置した、シリコンドリフト型エネルギー分散型X線検出器(アメテック社製、Appolo)によってエネルギー分散型X線スペクトル(EDS)の測定を行う。測定時の電圧は10kVとし、K-K、Na-K、及びNb-Lスペクトルを定量評価に用いる。測定は、K-Kスペクトルの線強度が5000カウント以上となるように十分な時間をかけて行う。それぞれのスペクトルには、原子番号補正、吸収補正、蛍光補正を施して(ZAF補正)、各元素の含有量を算出する。
最後に、算出されたNb含有量(モル%ないし原子%)に対するNa及びKの含有量比率をそれぞれ、前述の組成式におけるy及び1-x-yの値として組成式を決定し、該決定された組成式が前述の組成式の範囲内にあるものを、前述の組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする圧電セラミックス層2とする。
また、第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対して、Liを0~1.0モル含有する。
主成分100モルに対するLiの含有量を1.0モル以下とすることで、LiNbOをはじめとする導電性を有する化合物の生成が抑制され、絶縁性及び耐久性に優れた圧電セラミックスとなる。前記Liの含有量は、0.7モル以下とすることが好ましく、0.5モル以下とすることがより好ましい。
また、第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対して、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を0.2~5.0モル含有する。
主成分100モルに対するこれらのアルカリ土類金属元素の含有量を0.2モル以上とすることで、優れた圧電特性を有する圧電セラミックスとなることに加えて、微細な多結晶体の生成により絶縁抵抗に優れたものとなる。前記アルカリ土類金属元素の含有量は、0.4モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対する前記アルカリ土類金属元素の含有量を5.0モル以下とすることで、高い圧電性能を保持することができる。前記アルカリ土類金属の含有量は、4.0モル以下とすることが好ましく、3.0モル以下とすることがより好ましい。
また、第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対して、Mnを0.2~2.0モル含有する。
主成分100モルに対するMnの含有量を0.2モル以上とすることで、圧電セラミックス層2の電気抵抗が向上する。前記Mnの含有量は、0.3モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対するMnの含有量を2.0モル以下とすることで、高い圧電性能を保持することができる。前記Mnの含有量は、1.5モル以下とすることが好ましく、1.0モル以下とすることがより好ましい。
さらに、第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対して、Siを0.1~3.0モル含有する。
主成分100モルに対するSiの含有量を0.1モル以上とすることで、圧電セラミックスが緻密なものとなることに加えて、Siと余剰のLiとの反応によりLiSiOやLiSiO等の化合物を生成し、LiNbOをはじめとする導電性を有する化合物の生成を抑制できる。前記Siの含有量は、0.5モル以上とすることが好ましく、1.0モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対するSiの含有量を3.0モル以下とすることで、圧電性を有さない異相の生成量が抑えられ、優れた圧電特性を有する圧電セラミックスとなる。前記Siの含有量は、2.5モル以下とすることが好ましく、2.0モル以下とすることがより好ましい。
ここで、前記各元素の主成分に対する含有量は、圧電セラミックス層2について、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、iCAP6500)、イオンクロマトグラフィー装置(サーモサイエンティフィック、ICS-1600)ないしは、蛍光X線分析装置(XRF、株式会社リガク製ZSX Primus-IV)によってNb及び前記各元素の含有量を測定し、前記各元素のNbに対する含有量比率に基づいて、Nbの含有量を100モルとしたときの前記各元素のモル数を算出することで求める。
第1実施形態は、積層型圧電セラミックス100を粉砕した粉末についてのCu-Kα線を用いたX線回折測定において、2θ=25.5°~26.5°における回折強度の最小値(Imin)に対する最大値(Imax)の比(Imax/Imin)が1.50以下であることが好ましい。該回折強度比(Imax/Imin)が小さいことは、圧電セラミックス層2におけるLiNbOの量が少ないことを意味する。すなわち、LiNbOのX線回折プロファイルにおいて、メインピークは2θ=25.5°~26.5°の範囲に現れるため、該範囲における回折強度の最大値(Imax)は、LiNbOのメインピーク強度に相当する。このため、該強度が、バックグラウンドに相当する、回折強度の最小値(Imin)に対して十分に小さいことは、LiNbOの含有量が少ないことに相当する。このように、導電性を有するLiNbOの含有量が少ないことで、絶縁性及び耐久性により優れる圧電セラミックスとなる。前記回折強度比(Imax/Imin)は、1.45以下であることがより好ましく、1.40以下であることがさらに好ましい。
ここで、前記回折強度の最小値(Imin)に対する最大値(Imax)の比(Imax/Imin)は、積層型圧電セラミックス100を粉砕した粉末について、Cu-Kα線を用いたX線回折装置(株式会社リガク製、RINT2500シリーズ)で回折線プロファイルを測定し、2θ=25.5°~26.5°の範囲における回折線強度のうち、最大のものをImax、最小のものをIminとして算出される両者の比(Imax/Imin)とする。
第1実施形態の内部電極層3は、銀を80質量%以上含む金属で構成される。銀の含有量を多くすることで、パラジウム(Pd)や白金(Pt)等の高価な材料の使用量を抑え、原料コストを低減できる。また、内部電極層の導電性を高めることができる。電極材料に使用する金属としては、Ag-Pd系合金や純銀等が挙げられる。前記金属中の銀の含有量は、85質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
第1実施形態は、図2に模式的に示すように、圧電素子とした際に、同じ極性(正又は負)ないし位相の電圧が印加される内部電極層3、3同士を電気的に接続する接続導体41、42を、圧電セラミックス層2中に備えてもよい。圧電セラミックス層2中の接続導体41、42は、図2に示すように、内部電極層3、3を1層おきに接続するように配置される。
[積層型圧電セラミックスの製造方法]
本発明の第2の実施形態に係る積層型圧電セラミックスの製造方法(以下、単に「第2実施形態」と記載することがある。)は、所定量のリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物及びニオブ化合物の粉末を混合し、仮焼して、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする仮焼粉を得ること、該仮焼粉中の前記主成分100モルに対して、Liが0~1.0モル、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素が0.2~5.0モル、Mnが0.2~2.0モル、Siが0.1~3.0モルとなる量で、前記仮焼粉に、リチウム化合物、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物及びケイ素化合物を混合して、構成元素として鉛を含まない成形用粉末を得ること、該成形用粉末をバインダーと混合して成形用組成物を得ること、該成形用組成物をシート状に成形して生シートを得ること、該生シート上に、銀の含有量が80質量%以上の金属を含む導体層を形成すること、該導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得ること、並びに該生成形体からのバインダーの除去及び焼成を行って焼成体を得ること、を含むことを特徴とする。
第2実施形態では、所定量のリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物及びニオブ化合物の粉末を混合し、仮焼して、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする仮焼粉を得る。
原料として使用するリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物及びニオブ化合物は、仮焼によって互いに反応し、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を生成する粉末であれば、組成、純度及び粒径等は限定されない。Li、Na、K及びNbのうち2種類以上の元素を含む化合物であってもよく、添加元素として作用する他の元素を含む化合物であってもよい。使用できるリチウム化合物の例としては、炭酸リチウム(LiCO)等が挙げられる。また、使用できるナトリウム化合物の例としては、炭酸ナトリウム(NaCO)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等が挙げられる。また、使用できるカリウム化合物の例としては、炭酸カリウム(KCO)及び炭酸水素カリウム(KHCO)等が挙げられる。また、使用できるニオブ化合物の例としては、五酸化ニオブ(Nb)等が挙げられる。
原料粉末の混合方法は、不純物の混入を防ぎつつ各粉末が均一に混合されるものであれば特に限定されず、乾式混合、湿式混合のいずれを採用してもよい。混合方法としてボールミルを用いた湿式混合を採用する場合には、例えば8~24時間程度混合すればよい。
仮焼条件は、各原料が反応して上述した組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする仮焼粉が得られるものであれば限定されず、例えば大気雰囲気中、700℃~1000℃で2時間~8時間とすればよい。焼成温度が低すぎたり、焼成時間が短すぎたりすると、未反応の原料や中間生成物が残存する虞がある。反対に、焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎたりすると、アルカリ成分の揮発により所期の組成の化合物が得られない虞や、生成物が固結して解砕しにくくなることで生産性が低下する虞がある。
第2実施形態では、仮焼により得られた仮焼粉中の前記主成分100モルに対して、Liが0~1.0モル、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素が0.2~5.0モル、Mnが0.2~2.0モル、Siが0.1~3.0モルとなる量で、前記仮焼粉に、リチウム化合物、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物及びケイ素化合物を混合して、構成元素として鉛を含まない成形用粉末を得る。
仮焼粉に混合するリチウム化合物、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物及びケイ素化合物は、最終的に得られる焼成体において所期の組成の圧電セラミックス層を形成できるものであれば、組成、純度及び粒径等は限定されない。Li、Ca、Sr、Ba、Mn及びSiのうち2種類以上の元素を含む化合物であってもよく、添加元素として作用する他の元素を含む化合物であってもよい。使用できるリチウム化合物の例としては、炭酸リチウム(LiCO)、メタケイ酸リチウム(LiSiO)及びオルトケイ酸リチウム(LiSiO)等が挙げられる。また、使用できるアルカリ土類金属化合物の例としては、カルシウム化合物として、炭酸カルシウム(CaCO)、メタケイ酸カルシウム(CaSiO)及びオルトケイ酸カルシウム(CaSiO)等が、ストロンチウム化合物として、炭酸ストロンチウム(SrCO)等が、バリウム化合物として、炭酸バリウム(BaCO)等が、それぞれ挙げられる。また、使用できるマンガン化合物の例としては、炭酸マンガン(MnCO)、一酸化マンガン(MnO)、二酸化マンガン(MnO)、四三酸化マンガン(Mn)及び酢酸マンガン(Mn(OCOCH)等が挙げられる。また、使用可能なケイ素化合物の例としては、二酸化ケイ素(SiO)、メタケイ酸リチウム(LiSiO)、オルトケイ酸リチウム(LiSiO)、メタケイ酸カルシウム(CaSiO)及びオルトケイ酸カルシウム(CaSiO)等が挙げられる。
これらの化合物と仮焼粉との混合方法は、不純物の混入を防ぎつつ各粉末が均一に混合されるものであれば特に限定されず、乾式混合、湿式混合のいずれを採用してもよい。また、混合は、仮焼粉の解砕を兼ねることもできる。混合方法としてボールミルを用いた湿式混合を採用する場合には、例えば8~24時間程度混合すればよい。
第2実施形態では、混合により得られた成形用粉末をバインダーと混合して成形用組成物を得る。
成形用粉末に混合するバインダーは、該粉末を所期の形状に成形・保持できるとともに、焼成ないしこれに先立つバインダー除去処理により、炭素等を残存させることなく揮発するものであれば、その種類は限定されない。使用できるバインダーの例としては、ポリビニルアルコール系、ポリビニルブチラール系、セルロース系、ウレタン系及び酢酸ビニル系等が挙げられる。
バインダーの使用量も特に限定されないが、後工程で除去されるものであるため、所期の成形性・保形性が得られる範囲内で極力少なくすることが、原料コストを低減する点で好ましい。
成形用組成物には、成形用粉末及びバインダーに加えて、成形性を向上させる可塑剤や、成形用組成物がスラリー状である場合に、成形用粉末を均一分散させるための分散剤等の各種添加剤を混合してもよい。
第2実施形態では、成形用組成物をシート状に成形して生シートを得る。
シートの成形方法としては、ドクターブレード法、押出成形法等の慣用されている方法を採用できる。
なお、上述したような、圧電セラミックス層中に接続導体を備える積層型圧電セラミックスを製造する場合には、得られた生シートに、パンチングやレーザー光の照射等により、接続導体を充填するための貫通孔(スルーホール又はビアと呼ばれることもある)を形成する。
第2実施形態では、成形された生シート上に、銀の含有量が80質量%以上の金属を含む導体層を形成する。
導体層は、慣用されている方法で形成すればよく、銀の含有量が80質量%以上の金属粉末を含むペーストを印刷又は塗布する方法が、コストの点で好ましい。印刷又は塗布により電極パターンを形成する際には、焼成後の圧電セラミックス層2への付着強度を向上させるため、ガラスフリットや生シート中に含まれる仮焼粉と同様の組成を有する粉末をペースト中に含有させてもよい。
なお、上述したような、圧電セラミックス層中に接続導体を備える積層型圧電セラミックスを製造する場合には、導体層の形成に前後して、焼成後に接続導体となる電極材料を、生シートに形成した貫通孔に充填する。充填方法は特に限定されないが、電極材料を含むペーストを印刷する方法が、コストの点で好ましい。
第2実施形態では、導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得る。
積層及び接着は慣用されている方法で行えば良く、生シート同士をバインダーの作用で熱圧着する方法がコストの点で好ましい。
第2実施形態では、生成形体からのバインダーの除去及び焼成を行って焼成体を得る。
バインダーの除去と焼成とは同じ焼成装置を用いて連続して行ってもよい。バインダーの除去及び焼成の条件は、バインダーの揮発温度及び含有量、並びに圧電磁器組成物の焼結性及び内部電極材料の耐久性等を考慮して適宜設定すればよい。焼成条件の例としては、大気雰囲気中、850℃~1100℃で1時間~5時間が挙げられる。1つの生成形体から複数の積層型圧電セラミックスを得る場合には、焼成に先立って生成形体を幾つかのブロックに分割してもよい。
[積層型圧電素子]
第1実施形態に係る積層型圧電セラミックス、又は第2実施形態で得られた積層型圧電セラミックスは、表面に電極を形成し、分極処理されて、第3実施形態に係る積層型圧電素子(以下、単に「第3実施形態」と記載することがある。)となる。以下、第3実施形態について、図3を参照しながら説明する。
第3実施形態に係る積層型圧電素子110は、積層型圧電セラミックス100の表面に、表面電極51、52を形成して構成される。積層型圧電セラミックス100が、内部電極層3、3同士を電気的に接続する接続導体41、42を圧電セラミックス層2中に備えていない場合には、積層型圧電素子110は、図3に示すように、該接続導体41、42も表面に備える構造とされる。該接続導体41、42は、内部電極層3に対して、一層おきに接続される。すなわち、接続導体41は、上から数えて奇数番目の内部電極層3と電気的に接続され、接続導体42は、上から数えて偶数番目の内部電極層3と電気的に接続される。なお、この電気的な接続は、奇数番目と偶数番目とを入れ替えてもよい。表面電極51、52はそれぞれ、接続導体41、42のいずれか一方と電気的に接続され、これに電気的に接続された内部電極層3と共に、圧電セラミックス層2に電圧を印加する機能を有する。なお、前述の接続導体41、42が積層型圧電素子110の表面に設けられる場合には、接続導体41、42が表面電極51、52を兼ねるように構成してもよい。
表面電極51、52及び接続導体41、42の形成には、電極材料を含むペーストを積層型圧電セラミックス100の表面に塗布ないし印刷して焼き付ける方法や、積層型圧電セラミックス100の表面に電極材料を蒸着する方法等の、慣用されている方法を採用できる。電極材料は、導電性が高く、圧電素子の使用環境下で物理的及び化学的に安定な材料であれば特に限定されない。使用可能な電極材料の例としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)、並びにこれらの合金等が挙げられる。表面電極51、52及び接続導体41、42を構成する電極材料は、内部電極層3を構成する電極材料と同一でもよく、異なっていてもよい。
分極処理の条件は、積層型圧電セラミックス100に亀裂等の損傷を生じることなく、圧電セラミックス層2の自発分極の向きを揃えられるものであれば特に限定されない。一例として、50℃~200℃の温度にて1kV/mm~5kV/mmの電界を印加することが挙げられる。
[圧電振動装置]
第3実施形態に係る圧電素子は、圧電振動装置に好適に用いられる。そこで、本発明の第4実施形態として、圧電素子を用いた振動装置について説明する。
第4実施形態に係る振動装置は、圧電素子に電気信号を加えることで振動させ、それによって振動板を振動させることで作動する。
使用する振動板の材質としては、圧電素子の振動により振動するものであれば特に限定されず、例えばポリカーボネートやアクリル等の樹脂、SUSや黄銅等の金属、又はガラス等が使用できる。また、振動板の寸法及び形状についても特に限定されず、例えば厚さ10~500μmの矩形板、多角形板、円形板又は楕円形板等が利用できる。
圧電素子を振動板に接合する手段は、圧電素子の振動を振動板に対して効率よく伝達できるものであれば特に限定されず、エポキシ系樹脂等の接着剤又は両面テープ等が利用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[仮焼粉の製造]
出発原料として、高純度の炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)及び五酸化ニオブ(Nb)を使用した。
これらの出発原料を、得られる仮焼粉の組成式がLi0.06Na0.520.42NbOとなるように秤量し、ボールミルにて湿式混合を行った。
混合後のスラリーを乾燥して得た混合粉について、大気中、900℃で3時間の条件で仮焼を行い、仮焼粉を得た。
[生シートの製造]
得られた仮焼粉に対して、高純度の炭酸リチウム(LiCO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸マンガン(MnCO)及び二酸化ケイ素(SiO)を、Li0.06Na0.520.42NbO100モルに対して、Liが0.5モル、Baが0.5モル、Mnが0.5モル及びSiが1.3モルとなる量で添加して成形用粉末を得た。
得られた成形用粉末にポリビニルブチラール系バインダーを混合して、成形用組成物を得た。
得られた成形用組成物をドクターブレードにて成形し、厚さ20μmの生シートを得た。
[積層型圧電セラミックスの製造]
得られた生シート上に、Ag-Pd合金ペースト(Ag/Pd比=9/1)をスクリーン印刷し、電極パターンを形成した後、該生シートを積層し、加熱しながら圧着して生成形体を得た。
得られた成形体に対して、大気中で脱バインダー処理を行った後、大気中、1010℃で3時間の焼成を行い、積層方向に平行な、対向する一対の端面に、内部電極層が交互に露出する積層型圧電セラミックスを得た。
[積層型圧電セラミックスのX線回折強度比測定]
得られた積層型圧電セラミックスについて、上述した方法で粉末X線回折測定を行ったところ、図4中に(a)として示す結果が得られた。この結果を基に、2θ=25.5°~26.5°の範囲での回折線強度の最大値(Imax)と最小値(Imin)の比(Imax/Imin)を、上述した方法により算出したところ、Imax/Imin=1.36となった。
[積層型圧電セラミックスの表面観察]
得られた積層型圧電セラミックスについて、積層方向最表面に位置する圧電セラミックス層の表面に白金を蒸着した後、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製 S-4300)にて該表面を観察したところ、図5(a)に示す結果が得られた。
[積層型圧電素子の製造]
得られた積層型圧電セラミックスの内部電極が露出する端面及び積層方向最表面に、Agペーストを塗布した後、ベルト炉内を通過させて焼き付けることで、接続導体及び表面電極をそれぞれ形成した。
電極形成後の積層型圧電セラミックスを、150℃のシリコンオイル中で、3kV/mmの電界強度で15分間分極処理して積層型圧電素子を得た。
[積層型圧電素子の特性評価]
得られた積層型圧電素子の特性を、変位量d 33(pm/V)によって評価した。変位量d 33は、レーザードップラー変位計を用いて測定・算出した。まず、積層型圧電セラミックスに100Hz程度で最大電界8kV/mmとなる単極性のサイン波形を打ち込み、積層型圧電素子の変位量をレーザードップラー変位計にて測定した。そして、得られた積層型圧電素子の変位量を、電極間の層数及び最大電圧で割って得られる商として、1層における単位電圧あたりの変位量d 33を算出した。算出されたd 33は、226pm/Vであった。
[積層型圧電素子のHALT試験]
得られた積層型圧電素子に対してHALT試験を行った。HALT試験においては、65℃の環境下において3kV/mmの電圧を印加し、電流値300μAを超えるまでの時間をそのサンプルの寿命として測定した。結果を、図6に(a)として示す。
(実施例2)
[積層型圧電セラミックスの製造]
生シートを製造する際に、仮焼粉に対する炭酸リチウムの添加量を、Li0.06Na0.520.42NbO100モルに対して、Liが0.2モルとなる量とした以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る積層型圧電セラミックスを得た。
[積層型圧電セラミックスのX線回折強度比測定及び表面観察]
得られた積層型圧電セラミックスについて、実施例1と同様の方法で粉末X線回折測定を行ったところ、図4中に(b)として示す結果が得られた。この結果を基に、2θ=25.5°~26.5°の範囲での回折線強度の最大値(Imax)と最小値(Imin)の比(Imax/Imin)を、実施例1と同様の方法で算出したところ、Imax/Imin=1.34となった。
また、得られた積層型圧電セラミックスについて、積層方向最表面に位置する圧電セラミックス層の観察を、実施例1と同様の方法で行ったところ、図5(b)に示す結果が得られた。
[積層型圧電素子の製造、並びにその特性評価及びHALT試験]
得られた積層型圧電セラミックスから、実施例1と同様の手順により、実施例2に係る積層型圧電素子を得た。
得られた積層型圧電素子の変位量d 33を、実施例1と同様の方法で測定・算出したところ、d 33=228pm/Vとなった。
また、得られた積層型圧電素子について、実施例1と同様の方法でHALT試験を行ったところ、図6に(b)として示す結果が得られた。
(実施例3)
[積層型圧電セラミックスの製造]
生シートを製造する際に、仮焼粉に対して炭酸リチウムを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る積層型圧電セラミックスを得た。
[積層型圧電セラミックスのX線回折強度比測定及び表面観察]
得られた積層型圧電セラミックスについて、実施例1と同様の方法で粉末X線回折測定を行ったところ、図4に(c)として示す結果が得られた。この結果を基に、2θ=25.5°~26.5°の範囲での回折線強度の最大値(Imax)と最小値(Imin)の比(Imax/Imin)を、実施例1と同様の方法で算出したところ、Imax/Imin=1.31となった。
また、得られた積層型圧電セラミックスについて、積層方向最表面に位置する圧電セラミックス層の観察を、実施例1と同様の方法で行ったところ、図5(c)に示す結果が得られた。
[積層型圧電素子の製造、並びにその特性評価及びHALT試験]
得られた積層型圧電セラミックスから、実施例1と同様の手順により、実施例3に係る積層型圧電素子を得た。
得られた積層型圧電素子の変位量d 33を、実施例1と同様の方法で測定・算出したところ、d 33=226pm/Vとなった。
また、得られた積層型圧電素子について、実施例1と同様の方法でHALT試験を行ったところ、図6に(c)として示す結果が得られた。
(比較例1)
[積層型圧電セラミックスの製造]
生シートを製造する際に、仮焼粉に対する炭酸リチウムの添加量を、Li0.06Na0.520.42NbO100モルに対して、Liが1.3モルとなる量とした以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る積層型圧電セラミックスを得た。
[積層型圧電セラミックスのX線回折強度比測定及び表面観察]
得られた積層型圧電セラミックスについて、実施例1と同様の方法で粉末X線回折測定を行ったところ、図4に(d)として示す結果が得られた。この結果を基に、2θ=25.5°~26.5°の範囲での回折線強度の最大値(Imax)と最小値(Imin)の比(Imax/Imin)を、実施例1と同様の方法で算出したところ、Imax/Imin=1.52となった。
また、得られた積層型圧電セラミックスについて、積層方向最表面に位置する圧電セラミックス層の観察を、実施例1と同様の方法で行ったところ、図5(d)に示す結果が得られた。
[積層型圧電素子の製造、並びにその特性評価及びHALT試験]
得られた積層型圧電セラミックスから、実施例1と同様の手順により、比較例1に係る積層型圧電素子を得た。
得られた積層型圧電素子の変位量d 33を、実施例1と同様の方法で測定したところ、d 33=230pm/Vとなった。
また、得られた積層型圧電素子について、実施例1と同様の方法でHALT試験を行ったところ、図6に(d)として示す結果が得られた。
(比較例2)
[積層型圧電セラミックスの製造]
生シートを製造する際に、仮焼粉に対する炭酸リチウムの添加量を、Li0.06Na0.520.42NbO100モルに対して、Liが1.7モルとなる量とした以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る積層型圧電セラミックスを得た。
[積層型圧電セラミックスのX線回折強度比測定及び表面観察]
得られた積層型圧電セラミックスについて、実施例1と同様の方法で粉末X線回折測定を行ったところ、図4に(e)として示す結果が得られた。この結果を基に、2θ=25.5°~26.5°の範囲での回折線強度の最大値(Imax)と最小値(Imin)の比(Imax/Imin)を、実施例1と同様の方法で算出したところ、Imax/Imin=1.63となった。
また、得られた積層型圧電セラミックスについて、積層方向最表面に位置する圧電セラミックス層の観察を、実施例1と同様の方法で行ったところ、図5(e)に示す結果が得られた。
[積層型圧電素子の製造、並びにその特性評価及びHALT試験]
得られた積層型圧電セラミックスから、実施例1と同様の手順により、比較例1に係る積層型圧電素子を得た。
得られた積層型圧電素子の変位量d 33を、実施例1と同様の方法で測定したところ、d 33=228pm/Vとなった。
また、得られた積層型圧電素子について、実施例1と同様の方法でHALT試験を行ったところ、図6に(e)として示す結果が得られた。
実施例1~3及び比較例1,2に係る積層型圧電セラミックスについて、製造時に仮焼粉に対して添加したLiの量、X線回折測定におけるImax/Iminの値及び変位量d 33の関係を、まとめて表1に示す。
Figure 0007261047000001
表1からは、圧電素子の変位量d 33は、仮焼粉に対するLiの添加量によらず、ほぼ一定であるのに対し、Imax/Iminの値は、仮焼粉に対するLiの添加量が増加するにつれて増加することが判る。Liの添加量の増加に伴うImax/Iminの値の増加傾向は、X線回折測定結果を示す図4においても確認される。また、HALT試験の結果を示す図6からは、仮焼粉に添加するLiの量が(c)→(b)→(a)→(d)→(e)と増加するにつれて、圧電素子とした際の素子寿命が短くなることが判る。
上述したように、Imax/Iminの値は、積層型圧電セラミックスの表面に存在するLiNbOの量と正の相関を有することから、前述した素子寿命の短縮は、圧電セラミックス層中に存在する、導電性のLiNbOの増加に起因するものといえる。
表1及び図4の結果と、各実施例及び比較例についてのSEM像を示す図5とを併せて検討すると、仮焼粉に対するLiの添加量が増加するにつれて、積層型圧電セラミックス表面に観察される斑点(暗色部分)の量が増加していることから、該斑点がLiNbOであるといえる。
以上のことから、ニオブ酸アルカリ系の積層型圧電セラミックスを製造する際に、仮焼粉に対するLiの添加量を少なくして、導電性を有するLiNbOの生成量を抑えた特定組成の圧電セラミックス層とすることで、内部電極層を銀の含有比率の多い金属で構成した場合でも、長寿命の圧電素子が得られるといえる。
本発明によれば、圧電セラミックス層が構成元素として鉛を含まず、内部電極中の銀の含有割合が高く、長寿命の積層型圧電素子を提供することができる。内部電極層中の銀の含有割合を高めることで、パラジウム等の高価な金属の使用量を減らすことができるため、積層型圧電素子の材料コストを低減できる点で、本発明は有用なものである。また、銀の含有割合が高い内部電極層は、抵抗率が小さく導電性に優れるため、積層型圧電素子を使用(駆動)する際の抵抗発熱が抑えられ、高性能の素子とすることができる点でも好ましいものである。このため、本発明は、積層型圧電素子及びこれを用いた各種圧電振動装置を高性能化できる点においても有用なものである。
100 積層型圧電セラミックス
110 積層型圧電素子
2 圧電セラミックス層
3 内部電極層
41、42 接続導体
51、52 表面電極

Claims (4)

  1. 圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスであって、
    前記圧電セラミックス層は、
    構成元素として鉛を含まず、
    組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とすると共に、
    前記主成分100モルに対して、
    Liを0~1.0モル、
    Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を0.2~5.0モル、
    Mnを0.2~2.0モル、並びに
    Siを0.1~3.0モル
    含有し、かつ
    これを粉砕した粉末についてのCu-Kα線を用いたX線回折測定において、2θ=25.5°~26.5°における回折強度の最小値(Imin)に対する最大値(Imax)の比(Imax/Imin)が、1.31以上1.50以下であり、
    前記内部電極層は、銀を80質量%以上含む金属で構成される
    ことを特徴とする積層型圧電セラミックス。
  2. 請求項1に記載の積層型圧電セラミックスの製造方法であって、
    所定量のリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物及びニオブ化合物の粉末を混合し、仮焼して、組成式LiNa1-x-yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0≦y≦1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする仮焼粉を得ること、
    該仮焼粉中の前記主成分100モルに対して、
    Liが0~1.0モル、
    Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素が0.2~5.0モル、
    Mnが0.2~2.0モル、
    Siが0.1~3.0モル
    となる量で、前記仮焼粉に、リチウム化合物、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物及びケイ素化合物を混合して、構成元素として鉛を含まない成形用粉末を得ること、
    該成形用粉末をバインダーと混合して成形用組成物を得ること、
    該成形用組成物をシート状に成形して生シートを得ること、
    該生シート上に、銀含有量が80質量%以上の金属を含む導体層を形成すること、
    該導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得ること、並びに
    該生成形体からのバインダーの除去及び焼成を行って焼成体を得ること
    を含む、積層型圧電セラミックスの製造方法。
  3. 圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスと、
    前記内部電極層に対して、一層おきに電気的に接続された一対の接続導体と、
    前記積層型圧電セラミックスの表面に設けられ、前記一対の接続導体にそれぞれ電気的に接続された表面電極と、
    を備える積層型圧電素子であって、
    前記積層型圧電セラミックスが、請求項1に記載の積層型圧電セラミックスであることを特徴とする、積層型圧電素子。
  4. 請求項3に記載の積層型圧電素子と、該圧電素子に接合された振動板とを含む圧電振動装置。
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