JP2020167407A - 積層型圧電セラミックス及びその製造方法、積層型圧電素子並びに圧電振動装置 - Google Patents

積層型圧電セラミックス及びその製造方法、積層型圧電素子並びに圧電振動装置 Download PDF

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智宏 原田
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隆幸 後藤
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亮 伊藤
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寛之 清水
純明 岸本
Sumiaki Kishimoto
純明 岸本
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Abstract

【課題】圧電セラミックス層が構成元素として鉛を含まず、内部電極層中の銀の含有割合が高く、絶縁性に優れる積層型圧電素子を提供する。【解決手段】圧電セラミックス層を、構成元素として鉛を含まず、組成式LixNayK1−x−yNbO3(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有するものとし、前記内部電極層を、銀を80質量%以上含む金属で構成し、積層型圧電セラミックスを、前記主成分以外のLi化合物が偏在するものとした積層型圧電セラミックスとする。【選択図】図1

Description

本発明は、積層型圧電セラミックス及びその製造方法、積層型圧電素子並びに圧電振動装置に関する。
圧電セラミックスは、これにより形成される圧電素子が、機械的変位によって電荷を生じたり、電極間の電位差によって機械的変位を生じたりする性質を利用して、センサ、アクチュエータ等に広く利用されている。
圧電素子を構成する圧電セラミックスの組成としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、PZT)及びその固溶体が広く用いられている。PZT系の圧電セラミックスは、高いキュリー温度を有することから、高温環境下でも使用可能であると共に、高い電気機械結合係数を有することから、電気的エネルギーと機械的エネルギーとを効率良く変換可能であるという利点を有する。また、適切な組成を選択することにより、1000℃を下回る温度で焼成できるため、圧電素子の製造コストを低減できる利点も有する。特に、積層型圧電セラミックスにおいて、圧電セラミックスと同時焼成される内部電極に、白金やパラジウム等の高価な材料の含有量を減らした低融点の材料が使用できるようになることが、大きなコスト低減効果を生む。しかし、PZT系の圧電セラミックスは、有害物質である鉛を含むことが問題視されており、これに代わる、鉛を含まない圧電セラミックスが求められている。
現在まで、鉛を含まない圧電セラミックスの組成として、ニオブ酸アルカリ((Li,Na,K)NbO)系、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi0.5Na0.5)TiO、BNT)系、ビスマス層状化合物系及びタングステンブロンズ系等の種々のものが報告されている。これらのうち、ニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスは、キュリー点が高く、電気機械結合係数も比較的大きいため、PZT系に代わる圧電セラミックスとして注目されている(特許文献1)。
ニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスは、内部電極と交互に積層して積層型圧電セラミックスとする場合に、内部電極として銀を含むものを使用すると、この銀が焼成中に圧電セラミックス中に拡散し、電気抵抗が低下することで、圧電素子の信頼性が損なわれることがある。これに対し、特許文献2では、ニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスの組成を、アルカリ土類金属と銀とを含有するものとすることで、Ag0.7Pd0.3の内部電極を利用した場合でも、高い電気抵抗率が得られたことが報告されている。
国際公開第2007/094115号 特開2017−163055号公報
近年、積層型圧電素子に対するコストダウンの要請が強まっており、内部電極として、高価なPdの使用量を抑えた、Ag:Pd=8:2の合金ないし純銀のような、銀の含有割合がさらに高いものの使用が求められている。
このような、銀の含有割合が高い内部電極を備える積層型圧電素子では、特許文献2に記載された対策をとった場合でも、絶縁性が低いものとなることがあった。
そこで本発明は、圧電セラミックス層が構成元素として鉛を含まず、内部電極層中の銀の含有割合が高く、絶縁性に優れる積層型圧電素子の提供を目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために種々の検討を行ったところ、ニオブ酸アルカリを主成分とする積層型圧電セラミックスを製造する際に、焼成時間を長くして、積層型圧電セラミックス中に主成分以外のリチウム化合物を偏在させることで、該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決するための本発明の第1の実施形態は、圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスであって、前記圧電セラミックス層は、構成元素として鉛を含まず、組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有し、前記内部電極層は、銀を80質量%以上含む金属で構成され、前記積層型圧電セラミックス中には、前記主成分以外のLi化合物が偏在することを特徴とする積層型圧電セラミックスである。
また、本発明の第2の実施形態は、圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスの製造方法であって、組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有し、構成元素として鉛を含まない原料粉末及びバインダーを含有する生シートを準備すること、銀含有量が80質量%以上の金属粉末を含有する導電性ペーストを準備すること、前記生シート上に、該導電性ペーストにより導体層を形成すること、該導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得ること、並びに該生成形体からバインダーを除去した後、850℃以上の温度で5時間以上の焼成を行って焼成体を得ることを含む、積層型圧電セラミックスの製造方法である。
さらに、本発明の第3の実施形態は、前述の積層型圧電セラミックスを含む積層型圧電素子であり、本発明の第4の実施形態は、該圧電素子及びこれに接合された振動板を含む圧電振動装置である。
本発明によれば、圧電セラミックス層が構成元素として鉛を含まず、内部電極層中の銀の含有割合が高く、絶縁性に優れる積層型圧電素子を提供することができる。
積層型圧電セラミックスの構造を示す概略図((a)正面図、(b)斜視図) 圧電セラミックス層中に接続導体を備える積層型圧電セラミックスの構造を示す概略断面図 積層型圧電素子の構造を示す概略図((a)正面図、(b)斜視図) 積層型圧電セラミックス断面の、レーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析(LA−ICP−MS)による線分析結果((a)比較例1、(b)実施例1、(c)実施例3) 積層型圧電素子の素子寿命と焼成時間との関係を示すグラフ
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、数値範囲の記載(2つの数値を「〜」でつないだ記載)については、下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
[積層型圧電セラミックス]
図1に模式的に示すように、本発明の第1の実施形態に係る積層型圧電セラミックス100(以下、単に「第1実施形態」と記載することがある。)は、圧電セラミックス層2及び内部電極層3が交互に積層されて構成される。なお、図中には、内部電極層3の位置が把握しやすいように、内部電極層3が、積層型圧電セラミックス100の複数の端面に露出する構造を示したが、第1実施形態の構造はこれに限定されず、内部電極層3が積層型圧電セラミックス100の1つの端面でのみ露出する構造や、内部電極層3が積層型圧電セラミックス100の端面に露出しない構造とすることも可能である。
そして、前記圧電セラミックス層2は、構成元素として鉛を含まず、組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有する。また、前記内部電極層3は、銀を80質量%以上含む金属で構成される。さらに、前記圧電セラミックス100中には、前記主成分以外のLi化合物21が偏在する。
第1実施形態の圧電セラミックス層2は、構成元素として鉛を含まないものであるため、環境負荷を低減できる。本明細書において、「構成元素として鉛を含まない」とは、原料に不可避的に含まれる鉛や、製造工程で不可避的に混入する鉛以外に、鉛を含まない意味である。
第1実施形態の圧電セラミックス層2は、組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする。ここで、本明細書における「主成分」とは、圧電セラミックス層2中に、質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
前記組成式において、xの値、すなわちLiの含有割合は、0.02を超え0.1以下とする。xの値を0.02超とすることで、圧電セラミックスが緻密なものとなる。xの値は0.04以上とすることが好ましく、0.06以上とすることがより好ましい。他方、xの値を0.1以下とすることで、LiNbO等の導電性を有する化合物の生成が抑制され、絶縁性及び耐久性に優れた圧電セラミックスとなる。xの値は、0.09以下とすることが好ましく、0.08以下とすることがより好ましい。
前記組成式における、x+yの値、すなわちLiの含有割合と任意成分であるNaの含有割合との合計は、0.02を超え1以下とする。x及びyの値をこの条件を満たすものとすることで、優れた圧電特性を有する圧電セラミックスとなる。
第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前述した組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とするものであれば、所期の特性が得られる範囲内で他の添加元素ないし化合物を含有するものであってもよい。含有し得る添加元素の例としては、慣用されているTa及びSbの他、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Mo、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf及びW等が挙げられる。
ここで、圧電セラミックス層2が、前述の組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とすることは、以下の方法で確認する。
まず、積層型圧電セラミックス100の積層方向最表面に露出する圧電セラミックス層2について、Cu−Kα線を用いたX線回折装置(株式会社リガク製、RINT2500シリーズ)で回折線プロファイルを測定し、ペロブスカイト構造由来のプロファイルが主成分として認められ、かつ他の由来と考えられる回折プロファイルにおける最強回折線強度の、前記ペロブスカイト構造由来の最強回折線強度に対する割合が10%以下となった積層型圧電セラミックスを、ペロブスカイト型化合物を主成分とするものと判定する。なお、積層型圧電セラミックスの最表面に電極が形成されており、圧電セラミックス層が露出していない場合には、測定に先立ち、研磨等により該電極を除去する。
次いで、ペロブスカイト型化合物を主成分とすると判定された積層型圧電セラミックス100の圧電セラミックス層2に、導電性を付与するために炭素を蒸着し、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM:日立ハイテクノロジーズ社製、S−4300)に設置した、シリコンドリフト型エネルギー分散型X線検出器(アメテック社製、Apollo)によってエネルギー分散型X線スペクトル(EDS)の測定を行う。測定時の電圧は10kVとし、K−K、Na−K、及びNb−Lスペクトルを定量評価に用いる。測定は、K−Kスペクトルの線強度が5000カウント以上となるように十分な時間をかけて行う。それぞれのスペクトルには、原子番号補正、吸収補正、蛍光補正を施して(ZAF補正)、各元素の含有量を算出する。
最後に、算出されたNb含有量(モル%ないし原子%)に対するNa及びKの含有量比率をそれぞれ、前述の組成式におけるy及び1−x−yの値として組成式を決定し、該決定された組成式が前述の組成式の範囲内にあるものを、前述の組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする圧電セラミックス層2とする。
第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対して、Liを0.2〜3.0モル含有する。
主成分100モルに対して、Liを0.2モル以上含むことで、圧電セラミックスが緻密なものとなる。該作用は、後述するSiとの併用により顕著となる。また、Liの含有により圧電特性の向上も期待できる。Liの含有量は、主成分100モルに対して0.3モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対するLiの含有量を3.0モル以下とすることで、LiNbOをはじめとする導電性を有する化合物の生成が抑制され、絶縁性及び耐久性に優れた圧電セラミックスとなる。前記Liの含有量は、2.0モル以下とすることが好ましく、1.5モル以下とすることがより好ましい。
また、第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対して、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を0.2〜5.0モル含有してもよい。
主成分100モルに対するこれらのアルカリ土類金属元素の含有量を0.2モル以上とすることで、優れた圧電特性を有する圧電セラミックスとなることに加えて、微細な多結晶体の生成により絶縁抵抗に優れたものとなる。前記アルカリ土類金属元素の含有量は、0.4モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対する前記アルカリ土類金属元素の含有量を5.0モル以下とすることで、高い圧電性能を保持することができる。前記アルカリ土類金属の含有量は、4.0モル以下とすることが好ましく、3.0モル以下とすることがより好ましい。
また、第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対して、Mnを0.2〜2.0モル含有してもよい。
主成分100モルに対するMnの含有量を0.2モル以上とすることで、圧電セラミックス層の電気抵抗が向上する。前記Mnの含有量は、0.3モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対するMnの含有量を2.0モル以下とすることで、高い圧電性能を保持することができる。前記Mnの含有量は、1.5モル以下とすることが好ましく、1.0モル以下とすることがより好ましい。
さらに、第1実施形態の圧電セラミックス層2は、前記主成分100モルに対してSiを0.1〜3.0モル含有してもよい。
主成分100モルに対するSiの含有量を0.1モル以上とすることで、圧電セラミックスが緻密なものとなる。該作用は、前述したLiとの併用により顕著となる。また、Siは、余剰のLiとの反応によりLiSiOやLiSiO等の化合物を生成し、LiNbOをはじめとする導電性を有する化合物の生成を抑制する作用も有する。前記Siの含有量は、0.5モル以上とすることが好ましく、1.0モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対するSiの含有量を3.0モル以下とすることで、圧電性を有さない異相の生成量が抑えられ、優れた圧電特性を有する圧電セラミックスとなる。前記Siの含有量は、2.5モル以下とすることが好ましく、2.0モル以下とすることがより好ましい。
ここで、前記各元素の主成分に対する含有量は、圧電セラミックス層2について、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、iCAP6500)、イオンクロマトグラフィー装置(サーモサイエンティフィック、ICS−1600)ないしは、蛍光X線分析装置(XRF、株式会社リガク製ZSX Primus−IV)によってNb及び前記各元素の含有量を測定し、前記各元素のNbに対する含有量比率に基づいて、Nbの含有量を100モルとしたときの前記各元素のモル数を算出することで求める。
第1実施形態の内部電極層3は、銀を80質量%以上含む金属で構成される。銀の含有量を多くすることで、パラジウム(Pd)や白金(Pt)等の高価な材料の使用量を抑え、原料コストを低減できる。また、内部電極層の導電性を高めることができる。電極材料に使用する金属としては、Ag−Pd系合金や純銀等が挙げられる。前記金属中の銀の含有量は、85質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
第1実施形態では、前述の主成分以外のLi化合物21が、積層型圧電セラミックス100中に偏在する。このことにより、圧電セラミックス層2の絶縁性を保持し、絶縁性に優れた積層型圧電素子110を得ることができる。
前述の主成分以外のLi化合物21の偏在により、圧電セラミックス層2の絶縁性が保持されるメカニズムは、以下のように考えられる。積層型圧電セラミックス100を製造する際に、前述の主成分に対して添加されたリチウム化合物は、焼成中に、LiNbOを始めとする導電性の化合物を生成する。こうした導電性のLi化合物が、積層型圧電セラミックス100中に均等に分散していると、本来電気的絶縁性を有すべき圧電セラミックス層2全体の抵抗率が低下してしまう。他方、第1実施形態のように、前述の主成分以外のLi化合物21が、積層型圧電セラミックス100中に偏在する場合には、該Li化合物21が存在する箇所では局所的に抵抗率が低くなるものの、これが存在しない大部分の箇所では抵抗率が高く保たれるため、圧電セラミックス層2全体としての抵抗率の低下を抑制できる。
前記Li化合物21の偏在する箇所は、積層型圧電セラミックス100の積層方向最表面、又は内部電極層3若しくはその近傍であることが好ましい。これらの箇所は、元々導電性を有するか、積層型圧電素子110とする際に表面電極を形成して導電性が付与されるため、偏在による抵抗率低下の影響が小さい。
ここで、積層型圧電セラミックス100中に前述の主成分以外のLi化合物21が偏在することは、以下の方法で判定する。まず、積層型圧電セラミックス100を、積層方向に平行な面で切断する。次いで、該切断面の積層方向中央部から積層方向端部にかけて、レーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析(LA−ICP−MS)により線分析を行い、Nb及びLiの分布を測定する。次いで、得られた測定結果から、各測定点における、原子%で表したNb濃度に対するLi濃度の比(CLi/CNb)を算出する。そして、該比(CLi/CNb)の値が0.2以上となった測定点数の、全測定点数に対する割合が5%以下となった場合、測定対象とした積層型圧電セラミックス100は、前述の主成分以外のLi化合物21が偏在するものと判定する。この判定方法は、前述の主成分以外のLi化合物21が均等に分布している場合には、LiNbOを始めとする前記比(CLi/CNb)が0.2以上の化合物が存在する箇所が多いため、多くの測定点で該比(CLi/CNb)が0.2以上になるとの前提に基づくものである。
また、前記Li化合物21が、積層型圧電セラミックス100の積層方向最表面、又は内部電極層3若しくはその近傍に偏在することは、以下の方法で判定する。まず、前述したLA−ICP−MSによる線分析で、Nb及びLiの濃度分布に加えて、Agの信号強度の分布を測定する。次いで、該信号強度が50,000カウント以上となった測定点を、内部電極層3と判定する。次いで、内部電極層3と判定された測定点間の距離から、各内部電極層3の厚みを算出すると共に、該各厚みの平均値である平均厚み(tavg)を算出する。そして、内部電極層3と判定された領域から、前記平均厚み(tavg)以内の距離にある領域を、内部電極層3の近傍と判定する。また、積層型圧電セラミックス100の積層方向端部からの距離が、前記平均厚み(tavg)の3倍以内の領域を、積層方向最表面と判定する。次いで、線分析で得られたNb及びLiの分布から、各測定点における、原子%で表したNb濃度に対するLi濃度の比(CLi/CNb)を算出する。そして、該比(CLi/CNb)の値が0.2以上となった測定点数のうち、前記内部電極層3、前記内部電極層3の近傍、若しくは前記積層型圧電セラミックス100の積層方向最表面と判定された領域に位置するものの割合が80%以上となった場合、又は該比(CLi/CNb)の値が0より大きくなる測定点のうち、前記内部電極層3、前記内部電極層3の近傍、若しくは前記積層型圧電セラミックス100の積層方向最表面と判定された領域に位置するものの割合が0.15%以上となった場合に、測定対象とした積層型圧電セラミックス100は、前述の主成分以外のLi化合物21が、積層型圧電セラミックス100の積層方向最表面、又は内部電極層3若しくはその近傍に偏在するものと判定する。
第1実施形態は、図2に模式的に示すように、圧電素子とした際に、同じ極性(正又は負)ないし位相の電圧が印加される内部電極層3、3同士を電気的に接続する接続導体41、42を、圧電セラミックス層2中に備えてもよい。圧電セラミックス層2中の接続導体41、42は、図2に示すように、内部電極層3、3を1層おきに接続するように配置される。なお、図2では、積層型圧電セラミックス100中に偏在している主成分以外のLi化合物21は、表示を省略している。
[積層型圧電セラミックスの製造方法]
本発明の第2の実施形態に係る積層型圧電セラミックスの製造方法(以下、単に「第2実施形態」と記載することがある。)は、組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有し、構成元素として鉛を含まない原料粉末及びバインダーを含有する生シートを準備すること、銀含有量が80質量%以上の金属粉末を含有する導電性ペーストを準備すること、前記生シート上に、該導電性ペーストにより導体層を形成すること、該導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得ること、並びに該生成形体からバインダーを除去した後、850℃以上の温度で5時間以上の焼成を行って焼成体を得ること、を含む。
第2実施形態で使用する生シートは、組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有する原料粉末及びバインダーを含有する。
前記生シートに含まれる原料粉末の主成分は、所定量のリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物及びニオブ化合物の粉末を混合し、仮焼して得られる。
使用するリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物及びニオブ化合物は、仮焼によって互いに反応し、前記組成式で表されるペロブスカイト型化合物を生成する粉末であれば、組成、純度及び粒径等は限定されない。Li、Na、K及びNbのうち2種類以上の元素を含む化合物であってもよく、添加元素として作用する他の元素を含む化合物であってもよい。使用できるリチウム化合物の例としては、炭酸リチウム(LiCO)等が挙げられる。また、使用できるナトリウム化合物の例としては、炭酸ナトリウム(NaCO)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等が挙げられる。また、使用できるカリウム化合物の例としては、炭酸カリウム(KCO)及び炭酸水素カリウム(KHCO)等が挙げられる。また、使用できるニオブ化合物の例としては、五酸化ニオブ(Nb)等が挙げられる。
これらの化合物粉末の混合方法は、不純物の混入を防ぎつつ各粉末が均一に混合されるものであれば特に限定されず、乾式混合、湿式混合のいずれを採用してもよい。混合方法としてボールミルを用いた湿式混合を採用する場合には、例えば8〜24時間程度混合すればよい。
仮焼条件は、前記各化合物が反応して上述した組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする仮焼粉が得られるものであれば限定されず、例えば大気雰囲気中、700℃〜1000℃で2時間〜8時間とすればよい。仮焼温度が低すぎたり、仮焼時間が短すぎたりすると、未反応の原料や中間生成物が残存する虞がある。反対に、仮焼温度が高すぎたり、仮焼時間が長すぎたりすると、アルカリ成分の揮発により所期の組成の化合物が得られない虞や、生成物が固結して解砕しにくくなることで生産性が低下する虞がある。
第2実施形態では、前記原料粉末が、前記主成分に加えてリチウム化合物を、前記主成分100モルに対して、Liが0.2〜3.0モルとなる量で含有する。原料粉末が、前記主成分100モルに対してLiを0.2モル以上含有することで、低温で焼成した場合でも緻密な圧電セラミックス層が得られる。また、焼成時にアルカリ成分が揮発することによる、前記主成分中のアルカリサイトの欠損を抑制し、優れた圧電特性が得られる。Liの含有量は、主成分100モルに対して0.3モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましい。
他方、主成分100モルに対するLiの含有量を3.0モル以下とすることで、焼成時にLiNbOをはじめとする導電性を有する化合物の生成が抑制され、絶縁性及び耐久性に優れた圧電セラミックスとなる。前記Liの含有量は、2.0モル以下とすることが好ましく、1.5モル以下とすることがより好ましい。
前記リチウム化合物は、最終的に得られる焼成体において所期の組成の圧電セラミックス層を形成できるものであれば、組成、純度及び粒径等は限定されない。Li以外の元素を含有するものであってもよい。使用できるリチウム化合物の例としては、炭酸リチウム(LiCO)、メタケイ酸リチウム(LiSiO)及びオルトケイ酸リチウム(LiSiO)等が挙げられる。
第2実施形態では、前記原料粉末が、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、マンガン化合物及びケイ素化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有してもよい。前記原料粉末が、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物及びバリウム化合物から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属化合物を含む場合には、前記主成分100モルに対して、アルカリ土類金属元素の合計として0.2〜5.0モルとなる量で、前記原料粉末が、マンガン化合物を含有する場合には、前記主成分100モルに対して、Mnが0.2〜2.0モルとなる量で、前記原料粉末が、ケイ素化合物を含む場合には、前記主成分100モルに対して、Siが0.1〜3.0モルとなる量で、それぞれ含有するものであることが好ましい。
これらの化合物は、最終的に得られる焼成体において所期の組成の圧電セラミックス層を形成できるものであれば、組成、純度及び粒径等は限定されない。Ca、Sr、Ba、Mn及びSiのうち2種類以上の元素を含む化合物であってもよく、添加元素として作用する他の元素を含む化合物であってもよい。使用できるカルシウム化合物の例としては、炭酸カルシウム(CaCO)、メタケイ酸カルシウム(CaSiO)及びオルトケイ酸カルシウム(CaSiO)等が挙げられる。また、使用できるストロンチウム化合物の例としては、炭酸ストロンチウム(SrCO)等が挙げられる。また、使用できるバリウム化合物の例としては、炭酸バリウム(BaCO)等が挙げられる。また、使用できるマンガン化合物の例としては、炭酸マンガン(MnCO)、一酸化マンガン(MnO)、二酸化マンガン(MnO)、四三酸化マンガン(Mn)及び酢酸マンガン(Mn(OCOCH)等が挙げられる。また、使用可能なケイ素化合物の例としては、二酸化ケイ素(SiO)、メタケイ酸リチウム(LiSiO)、オルトケイ酸リチウム(LiSiO)、メタケイ酸カルシウム(CaSiO)及びオルトケイ酸カルシウム(CaSiO)等が挙げられる。
これらの化合物は、不純物の混入を防ぎつつ均一な原料粉末が得られる方法により、前記仮焼粉に混合される。混合方法としては、乾式混合、湿式混合のいずれを採用してもよい。また、混合は、仮焼粉の解砕を兼ねることもできる。混合方法としてボールミルを用いた湿式混合を採用する場合には、例えば8〜24時間程度混合すればよい。さらに、これらの化合物は、後述する成形用組成物を得る際に、バインダーと共に原料粉末に添加・混合されてもよい。
第2実施形態において、前記生シートに含まれるバインダーは、前記原料粉末を所期の形状に成形・保持できるとともに、後述する焼成ないしこれに先立つバインダー除去処理により、炭素等を残存させることなく揮発するものであれば、その種類は限定されない。使用できるバインダーの例としては、ポリビニルアルコール系、ポリビニルブチラール系、セルロース系、ウレタン系及び酢酸ビニル系等が挙げられる。
バインダーの使用量も特に限定されないが、後工程で除去されるものであるため、所期の成形性・保形性が得られる範囲内で極力少なくすることが、原料コストを低減する点で好ましい。
第2実施形態で使用する生シートは、前記原料粉末及びバインダーを混合して得た成形用組成物をシート状に成形して製造される。
成形用組成物には、成形用粉末及びバインダーに加えて、成形性を向上させる可塑剤や、成形用組成物がスラリー状である場合に、成形用粉末を均一分散させるための分散剤等の各種添加剤を混合してもよい。
シートの成形方法としては、ドクターブレード法、押出成形法等の慣用されている方法を採用できる。
なお、上述したような、圧電セラミックス層中に接続導体を備える積層型圧電セラミックスを製造する場合には、得られた生シートに、パンチングやレーザー光の照射等により、接続導体を充填するための貫通孔(スルーホール又はビアと呼ばれることもある)を形成する。
第2実施形態で使用する導電性ペーストは、銀含有量が80質量%以上の金属粉末を含有する。
前記導電性ペーストに含まれる銀含有量が80質量%以上の金属粉末としては、Ag−Pd合金粉末、Ag粉末とPd粉末との混合粉末及び純銀粉末等が挙げられる。
第2実施形態で使用する導電性ペーストは、通常、前述の金属粉末に加えて、バインダーを有機溶剤中に溶解した有機ビヒクルを含有する。
前記有機ビヒクルに用いられるバインダーは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル等の慣用されている各種バインダーから適宜選択すればよい。
また、前記有機ビヒクルに用いられる有機溶剤は、上述した生シート上に前記導電性ペーストで導体層を形成した際に、該生シートの膨潤が小さいものであれば特に限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)等から適宜選択すればよい。
前記導電性ペースト中の前記有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、例えば、バインダーは5質量%〜10質量%程度、有機溶剤は10質量%〜50質量%程度とすることができる。
また、導電性ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤及び可塑剤、並びに焼成後の圧電セラミックス層への付着強度を向上させるための共材やガラスフリット等を含有してもよい。
前記導電性ペーストを調製する場合には、前述した各成分の混合物を三本ロールミル、らいかい機又は遊星ボールミル等で混練する方法を採用することができる。
第2実施形態では、上述の生シート上に、前述の導電性ペーストにて導体層を形成する。
導体層の形成には、慣用されている方法が採用できる。中でも、導電性ペーストを印刷又は塗布する方法が、コストの点で好ましい。
なお、上述したような、圧電セラミックス層中に接続導体を備える積層型圧電セラミックスを製造する場合には、導体層の形成に前後して、焼成後に接続導体となる電極材料を、生シートに形成した貫通孔に充填する。充填方法は特に限定されないが、電極材料を含むペーストを印刷する方法が、コストの点で好ましい。
第2実施形態では、導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得る。
積層及び接着は慣用されている方法で行えば良い。中でも、生シート同士をバインダーの作用で熱圧着する方法が、コストの点で好ましい。
第2実施形態では、生成形体からバインダーを除去した後、850℃以上の温度で5時間以上の焼成を行って焼成体を得る。
バインダーの除去と焼成とは同じ焼成装置を用いて連続して行ってもよい。バインダーの除去及び焼成の条件は、バインダーの揮発温度及び含有量、並びに圧電磁器組成物の焼結性及び内部電極材料の耐久性等を考慮して適宜設定すればよい。
焼成は、850℃以上の温度で5時間以上行う。これにより、生成した導電性を有するLi化合物が十分に凝集し、絶縁性の高い焼成体が得られる。従来、銀を含む導体層を有する生成形体を焼成する場合には、銀の拡散による導体層ないし内部電極層の厚みの減少と、得られる積層型圧電セラミックスの特性低下とを防ぐために、緻密な焼成体が得られる範囲内で焼成時間を極力短くしていた。しかし、第2実施形態は、従来とは逆に、焼成時間を延ばすことで、前述の作用を得た点に重要な意義を有するものである。
前記焼成温度は、900℃以上とすることが好ましい。焼成温度は、内部電極層を構成する金属が溶融して流失しない温度を上限とすればよく、例えば1100℃以下とすればよい。また、前記焼成時間は、前記Li化合物の凝集効果を高める点で、8時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましい。他方、前記焼成時間は、短時間で処理を終えて製造を効率的に行う点で、20時間以下とすることが好ましく、15時間以下とすることがより好ましい。
第2実施形態における焼成は、途中で温度を変えて行ってもよい。この場合、焼成時間は、焼成温度の下限値とされた温度以上となっている時間を意味する。一例として、850℃から1000℃まで3時間かけて昇温した後、1000℃で2時間保持する場合、850℃以上の温度での焼成時間は5時間となる。
第2実施形態における焼成の雰囲気は特に限定されないが、特殊な焼成装置を用いる必要がない点で、大気とすることが好ましい。
なお、ここまでの説明では、生成形体をそのままバインダー除去処理して焼成する場合について述べたが、1つの生成形体から複数の積層型圧電セラミックスを得る場合には、焼成に先立って生成形体を幾つかのブロックに分割してもよい。
[積層型圧電素子]
第1実施形態に係る積層型圧電セラミックス、又は第2実施形態で得られた積層型圧電セラミックスは、表面に電極を形成し、分極処理されて、第3実施形態に係る積層型圧電素子(以下、単に「第3実施形態」と記載することがある。)となる。以下、第3実施形態について、図3を参照しながら説明する。なお、図3では、積層型圧電セラミックス中に偏在している主成分以外のLi化合物は、表示を省略している。
第3実施形態に係る積層型圧電素子110は、積層型圧電セラミックス100の表面に、表面電極51、52を形成して構成される。積層型圧電セラミックス100が、内部電極層3、3同士を電気的に接続する接続導体41、42を圧電セラミックス層2中に備えていない場合には、積層型圧電素子110は、図3に示すように、該接続導体41、42も表面に備える構造とされる。該接続導体41、42は、内部電極層3に対して、一層おきに接続される。すなわち、接続導体41は、上から数えて奇数番目の内部電極層3と電気的に接続され、接続導体42は、上から数えて偶数番目の内部電極層3と電気的に接続される。なお、この電気的な接続は、奇数番目と偶数番目とを入れ替えてもよい。表面電極51、52はそれぞれ、接続導体41、42のいずれか一方と電気的に接続され、これに電気的に接続された内部電極層3と共に、圧電セラミックス層2に電圧を印加する機能を有する。なお、前述の接続導体41、42が積層型圧電素子110の表面に設けられる場合には、接続導体41、42が表面電極51、52を兼ねるように構成してもよい。
表面電極51、52及び接続導体41、42の形成には、電極材料を含むペーストを積層型圧電セラミックス100の表面に塗布ないし印刷して焼き付ける方法や、積層型圧電セラミックス100の表面に電極材料を蒸着する方法等の、慣用されている方法を採用できる。電極材料は、導電性が高く、圧電素子の使用環境下で物理的及び化学的に安定な材料であれば特に限定されない。使用可能な電極材料の例としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)、並びにこれらの合金等が挙げられる。表面電極51、52及び接続導体41、42を構成する電極材料は、内部電極層3を構成する電極材料と同一でもよく、異なっていてもよい。
分極処理の条件は、積層型圧電セラミックス100に亀裂等の損傷を生じることなく、圧電セラミックス層2の自発分極の向きを揃えられるものであれば特に限定されない。一例として、50℃〜200℃の温度にて1kV/mm〜5kV/mmの電界を印加することが挙げられる。
[圧電振動装置]
第3実施形態に係る圧電素子は、圧電振動装置に好適に用いられる。そこで、本発明の第4実施形態として、圧電素子を用いた振動装置について説明する。
第4実施形態に係る振動装置は、圧電素子に電気信号を加えることで振動させ、それによって振動板を振動させることで作動する。
使用する振動板の材質としては、圧電素子の振動により振動するものであれば特に限定されず、例えばポリカーボネートやアクリル等の樹脂、SUSや黄銅等の金属、又はガラス等が使用できる。また、振動板の寸法及び形状についても特に限定されず、例えば厚さ10〜500μmの矩形板、多角形板、円形板又は楕円形板等が利用できる。
圧電素子を振動板に接合する手段は、圧電素子の振動を振動板に対して効率よく伝達できるものであれば特に限定されず、エポキシ系樹脂等の接着剤又は両面テープ等が利用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
(比較例1)
[生シートの製造]
出発原料として、粉末状の高純度の炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)及び五酸化ニオブ(Nb)を使用した。
これらの出発原料を、得られる仮焼粉の組成式がLi0.06Na0.520.42NbOとなるように秤量し、ボールミルにて湿式混合を行った。
混合後のスラリーを乾燥して得た混合粉について、大気中、900℃で3時間の条件で仮焼を行い、仮焼粉を得た。
得られた仮焼粉に対して、高純度の炭酸リチウム(LiCO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸マンガン(MnCO)及び二酸化ケイ素(SiO)を、Li0.06Na0.520.42NbO100モルに対して、Liが1.3モル、Baが0.5モル、Mnが0.5モル及びSiが1.3モルとなる量で添加して、原料粉末を得た。
得られた原料粉末にポリビニルブチラール系バインダーを混合して、成形用組成物を得た。
得られた成形用組成物をドクターブレードにて成形し、厚さ20μmの生シートを得た。
[積層型圧電セラミックスの製造]
得られた生シート上に、Ag−Pd合金ペースト(Ag/Pd比=9/1)をスクリーン印刷し、所定形状の導体層を形成した後、該生シートを積層し、加熱しながら圧着して生成形体を得た。
得られた成形体に対して、大気中で脱バインダー処理を行った後、大気中で、1000℃まで昇温し、1分間保持した後炉冷する焼成を行い、実施例1に係る積層型圧電セラミックスを得た。なお、該積層型圧電セラミックスは、積層方向に平行な、対向する一対の端面に、内部電極層が交互に露出する構造を有する。
[積層型圧電セラミックス中のLi化合物の偏在の有無の判定]
得られた積層型圧電セラミックスについて、上述した方法で主成分以外のLi化合物の偏在の有無を判定した。積層型圧電セラミックス断面のLA−ICP−MS測定に基づくCLi/CNbの値及びAgの信号強度の分布を、それぞれ図4(a)に示す。図中では、黒い線がCLi/CNbの値を示しており、グレーの線がAgの信号強度を示している。この図では、CLi/CNbの値が0より大きくなるとなる測定点が随所に確認される。内部電極1層目から積層方向最表面に至る各測定点では、CLi/CNbが0.1以上となるピークが相当数存在することが確認された。
(実施例1)
焼成における1000℃での保持時間を5時間とした以外は比較例1と同様にして、実施例1に係る積層型圧電セラミックスを得た。
得られた積層型圧電セラミックスについて、比較例1と同様の方法で主成分以外のLi化合物の偏在の有無を判定した。積層型圧電セラミックス断面のLA−ICP−MS測定に基づくCLi/CNbの値及びAgの信号強度の分布を、それぞれ図4(b)に示す。図中では、黒い線がCLi/CNbの値を示しており、グレーの線がAgの信号強度を示している。この図では、CLi/CNbの値が0より大きくなる測定点が、積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、内部電極層及びその近傍に多く確認される。内部電極1層目から積層方向最表面に至る各測定点では、比較例1と比べて、CLi/CNbが0.1以上となるピークが4本に減じ、主成分以外のLi化合物が十分に凝集したものであった。また、CLi/CNbの値が0より大きくなる測定点のうち、積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、又は内部電極層若しくはその近傍に位置するものは、0.15%以上となった。この結果から、実施例1に係る積層型圧電セラミックスは、主成分以外のLi化合物が、積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、又は内部電極層若しくはその近傍に偏在するものといえる。
(実施例2)
焼成における1000℃での保持時間を2時間とした以外は比較例1と同様にして、実施例2に係る積層型圧電セラミックスを得た。
得られた積層型圧電セラミックスについて、比較例1と同様の方法で主成分以外のLi化合物の偏在の有無を判定したところ、実施例1と同様の結果が得られた。この結果から、実施例2に係る積層型圧電セラミックスは、主成分以外のLi化合物が、積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、又は内部電極層若しくはその近傍に偏在するものといえる。
(実施例3)
焼成における1000℃での保持時間を10時間とした以外は比較例1と同様にして、実施例3に係る積層型圧電セラミックスを得た。
得られた積層型圧電セラミックスについて、比較例1と同様の方法で主成分以外のLi化合物の偏在の有無を判定した。積層型圧電セラミックス断面のLA−ICP−MS測定に基づくCLi/CNbの値及びAgの信号強度の分布を、それぞれ図4(c)に示す。図中では、黒い線がCLi/CNbの値を示しており、グレーの線がAgの信号強度を示している。この図では、CLi/CNbの値が0より大きくなる測定点が、積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、内部電極層及びその近傍に多く確認される。内部電極1層目から積層方向最表面に至る各測定点では、比較例1と比べて、CLi/CNbが0.1以上となるピークが4本に減じ、主成分以外のLi化合物が十分に凝集したものであった。また、CLi/CNbの値が0より大きくなる測定点のうち、積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、又は内部電極層若しくはその近傍に位置するものは、0.15%以上となった。この結果から、実施例3に係る積層型圧電セラミックスは、主成分以外のLi化合物が、積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、又は内部電極層若しくはその近傍に偏在するものといえる。
[積層型圧電素子の寿命測定]
比較例1、実施例1及び実施例2に係る積層型圧電セラミックスの内部電極が露出する端面及び積層方向最表面に、Agペーストを塗布した後、ベルト炉内を通過させて焼き付けることで、接続導体及び表面電極をそれぞれ形成した。
電極形成後の積層型圧電セラミックスを、150℃のシリコンオイル中で、3kV/mmの電界強度で15分間分極処理して積層型圧電素子を得た。
得られた各積層型圧電素子に65℃の環境下において3kV/mmの電圧を印加し、電流値が300μAを超えるまでの時間を測定し、素子寿命とした。
得られた素子寿命と焼成時間との関係を、図5に示す。図5からは、各比較例及び実施例にて検討した範囲では、焼成時間が長くなるほど長寿命の積層型圧電素子が得られるといえる。
以上のことから、内部電極層中の銀の含有割合が高いニオブ酸アルカリ系の積層型圧電セラミックスを製造する際に、焼成を長時間行うことで、主成分であるニオブ酸アルカリ以外のLi化合物が偏在する積層型圧電セラミックスが得られるといえる。こうしたLi化合物には、LiNbOを始めとして、導電性を有するものが多いことから、該Li化合物の偏在により、圧電セラミックス層の絶縁性低下が抑制され、長寿命の積層型圧電素子が得られたものと解される。
本発明によれば、圧電セラミックス層が構成元素として鉛を含まず、内部電極層中の銀の含有割合が高く、絶縁性に優れるとともに長寿命の積層型圧電素子を提供することができる。積層型圧電素子における内部電極層中の銀の含有割合を高めることで、パラジウム等の高価な金属の使用量を減らすことができるため、該素子の材料コストを低減できる点で、本発明は有用なものである。また、銀の含有割合が高い内部電極層は、抵抗率が小さく導電性に優れるため、積層型圧電素子を使用(駆動)する際の抵抗発熱が抑えられ、高性能の素子とすることができる点でも好ましいものである。本発明に係る積層型圧電素子の優れた絶縁性及び長い素子寿命は、導電性を有するLi化合物が均等に分布することなく偏在しているため、素子全体の電気抵抗を高く保つことができることに起因すると考えられる。
100 積層型圧電セラミックス
110 積層型圧電素子
2 圧電セラミックス層
21 主成分以外のLi化合物
3 内部電極層
41、42 接続導体
51、52 表面電極

Claims (7)

  1. 圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスであって、
    前記圧電セラミックス層は、
    構成元素として鉛を含まず、
    組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、
    該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有し、
    前記内部電極層は、
    銀を80質量%以上含む金属で構成され、
    前記積層型圧電セラミックス中には、前記主成分以外のLi化合物が偏在する
    ことを特徴とする積層型圧電セラミックス。
  2. 前記Li化合物が、前記積層型圧電セラミックスの積層方向最表面、又は前記内部電極層若しくはその近傍に偏在する、請求項1に記載の積層型圧電セラミックス。
  3. 前記圧電セラミックス層が、前記主成分100モルに対して、
    Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を0.2〜5.0モル、
    Mnを0.2〜2.0モル、並びに
    Siを0.1〜3.0モル
    含有する、請求項1又は2に記載の積層型圧電セラミックス。
  4. 圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスの製造方法であって、
    組成式LiNa1−x−yNbO(ただし、0.02<x≦0.1、0.02<x+y≦1)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、該主成分100モルに対してLiを0.2〜3.0モル含有し、構成元素として鉛を含まない原料粉末及びバインダーを含有する生シートを準備すること、
    銀含有量が80質量%以上の金属粉末を含有する導電性ペーストを準備すること、
    前記生シート上に、該導電性ペーストにより導体層を形成すること、
    該導体層が形成された生シートを積層し、該生シート同士を接着して生成形体を得ること、並びに
    該生成形体からバインダーを除去した後、850℃以上の温度で5時間以上の焼成を行って焼成体を得ること
    を含む、積層型圧電セラミックスの製造方法。
  5. 前記原料粉末が、前記主成分100モルに対して、
    Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を0.2〜5.0モル、
    Mnを0.2〜2.0モル、並びに
    Siを0.1〜3.0モル
    含有する、請求項3に記載の積層型圧電セラミックスの製造方法。
  6. 圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層型圧電セラミックスと、
    前記内部電極層に対して、一層おきに電気的に接続された一対の接続導体と、
    前記積層型圧電セラミックスの表面に設けられ、前記一対の接続導体にそれぞれ電気的に接続された表面電極と、
    を備える積層型圧電素子であって、
    前記積層型圧電セラミックスが、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層型圧電セラミックスであることを特徴とする、積層型圧電素子。
  7. 請求項6に記載の積層型圧電素子と、該圧電素子に接合された振動板とを含む圧電振動装置。
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