JP6259577B2 - 圧電セラミックス及び圧電素子 - Google Patents

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本発明は、アルカリ含有ニオブ酸ペロブスカイト構造の圧電セラミックス、圧電素子、及び圧電セラミックスの製造方法に関する。
圧電素子は、機械エネルギを電気エネルギに変換可能な圧電効果を応用してセンサ素子や発電素子などとして用いられる。また、圧電素子は、電気エネルギを機械エネルギに変換可能な逆圧電効果を応用して振動子や発音体やアクチュエータや超音波モータやポンプなどとして用いられる。さらに、圧電素子は、圧電効果と逆圧電効果とを組み合わせ、回路素子や振動制御素子などとして用いられる。
一般的に、圧電素子は、シート状の圧電セラミックスが積層されるとともに各層間に内部電極が配置された構造を有している。圧電素子は2つの端子を有し、内部電極は交互に異なる端子に接続されている。これにより、各端子間に電圧が印加されると、各圧電セラミックス層に電圧が加わる。
高性能の圧電セラミックスとしては、Pb(Zr,Ti)O−PbTiOの組成式で表されるPZT材料や(Pb,La)(Zr,Ti)O−PbTiOの組成式で表されるPLZT材料が広く知られている。しかし、これらの圧電セラミックスは、高い圧電特性を有する一方で、いずれも環境負荷の高いPbを含む。
Pbを含まない非鉛系圧電セラミックスの中で比較的良好な性能を有するものとして、アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造の圧電セラミックスが知られている(特許文献1〜4及び非特許文献1,2参照)。
特開2004−244301号公報 特開平11−228227号公報 国際公開2010/050258号パンフレット 特開2010−52999号公報
Nature,432(4),2004,pp.84−87 Applied Physics Letters 85(18),2004,pp.4121−4123
圧電素子の高性能化や小型化のためには、各圧電セラミックス層の薄層化が不可欠である。圧電セラミックス層の薄型化は、絶縁性や機械的強度の低下を招く。そのため、圧電セラミックスには絶縁性及び機械的強度の向上が求められる。圧電セラミックスの絶縁性及び機械的強度の向上を実現するために、圧電セラミックスの結晶粒の微細化を図ることができるが、これを実現する技術について開示する文献は少ない。
特許文献4には、結晶粒の微細化が図られた圧電セラミックスが記載されている。特許文献4では、アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造の主相の結晶粒界にあるKNbSiによって、焼成時における結晶成長が抑制される。したがって、特許文献4に記載された技術は有効であるものの、圧電素子に対する更なる高性能化や小型化の要求に応じて圧電セラミックスには更なる絶縁性及び機械的強度の向上が求められる。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、絶縁性及び機械的強度に優れた圧電セラミックス、圧電素子、及び圧電セラミックスの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る圧電セラミックスは、アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とする多結晶体からなり、当該多結晶体の結晶粒界に、Si及びKを有する第1の酸化物相と、第2族元素及び第4族元素を有する第2の酸化物相とを含む。
上記主相の組成式は(LiNa1−a−b(Nb1−c−dTaSb(但し、0.04<a≦0.1、0≦b≦1、0≦c<1、0≦d<1、m=1、0.95≦n≦1.01、a+b<1、c+d≦1が満たされる。)と表されてもよい。
また、上記第1の酸化物相の組成式はKNbSiと表されてもよい。
更に、上記第2の酸化物相の組成式はM (但し、M元素は上記第2族元素、M元素は上記第4族元素である。また、g=e+2fが満たされる。)と表されてもよい。
また、上記圧電セラミックスは、1モルの上記主相に対して、0.003モル以上0.10モル以下の上記第1の酸化物相、0.001モル以上0.2モル以下の上記第2の酸化物相、及び0.02モル以上0.04モル以下のマンガン含有相を含んでいてもよい。
上記第2族元素がCaであり、上記第4族元素がTiであってもよい。
上記主相の最大結晶粒径が15μm以下であってもよい。
本発明の一形態に係る圧電素子は第1の内部電極と第2の内部電極と圧電セラミックス層とを具備する。
上記セラミックス層は、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電セラミックスより成る。
上記圧電素子は第1の外部電極と第2の外部電極とをさらに具備してもよい。
上記圧電素子は、上記第1の内部電極と上記第2の内部電極とが上記圧電セラミックス層を介して交互に配置され、上記第1の内部電極はそれぞれ上記第1の外部電極に接続され、上記第2の内部電極はそれぞれ上記第2の外部電極に接続されていてもよい。
上記第1の内部電極及び上記第2の内部電極はNiを主成分とする導電性材料からなってもよい。
本発明の一形態に係る圧電セラミックスの製造方法では、アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とする多結晶体の原料粉末と、第2族元素及び第4族元素を有する酸化物粉末とを混合した混合粉末を作製し、当該混合粉末を焼成する。
絶縁性及び機械的強度に優れた圧電セラミックス、圧電素子、及び圧電セラミックスの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る圧電素子の斜視図である。 図1Aに示した圧電素子のA−A’線に沿った断面図である。 図1Aに示した圧電素子の製造方法を示したフローチャートである。 図1Aに示した圧電素子の製造過程における模式図である。 本発明の一実施形態に係る圧電セラミックスの破断面のSEM写真である。 図1に示した圧電セラミックスの表面のSEM写真である。 本発明の一実施形態に係る圧電素子の断面のSEM写真である。
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係る圧電セラミックスは、アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とする多結晶体からなり、当該多結晶体の結晶粒界に、Si及びKを有する第1の酸化物相と、第2族元素及び第4族元素を有する第2の酸化物相とを含む。
上記主相の組成式は(LiNa1−a−b(Nb1−c−dTaSb(但し、0.04<a≦0.1、0≦b≦1、0≦c<1、0≦d<1、m=1、0.95≦n≦1.01、a+b<1、c+d≦1が満たされる。)と表されてもよい。
また、上記第1の酸化物相の組成式はKNbSiと表されてもよい。
更に、上記第2の酸化物相の組成式はM (但し、M元素は上記第2族元素、M元素は上記第4族元素である。また、g=e+2fが満たされる。)と表されてもよい。
また、上記圧電セラミックスは、1モルの上記主相に対して、0.003モル以上0.10モル以下の上記第1の酸化物相、0.001モル以上0.2モル以下の上記第2の酸化物相、及び0.02モル以上0.04モル以下のマンガン含有相を含んでいてもよい。
上記第2族元素がCaであり、上記第4族元素がTiであってもよい。
上記主相の最大結晶粒径が15μm以下であってもよい。
これらの構成により、圧電セラミックスの主相の結晶粒が微細化するため、圧電セラミックスの絶縁性及び機械的強度が向上する。
本発明の一実施形態に係る圧電素子は第1の内部電極と第2の内部電極と圧電セラミックス層とを具備する。
上記セラミックス層は、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧電セラミックスより成る。
上記圧電素子は第1の外部電極と第2の外部電極とをさらに具備してもよい。
上記圧電素子は、上記第1の内部電極と上記第2の内部電極とが上記圧電セラミックス層を介して交互に配置され、上記第1の内部電極はそれぞれ上記第1の外部電極に接続され、上記第2の内部電極はそれぞれ上記第2の外部電極に接続されていてもよい。
上記第1の内部電極及び上記第2の内部電極はNiを主成分とする導電性材料からなってもよい。
これらの構成により、上記圧電セラミックス層の絶縁性及び機械的強度が向上するため、上記圧電素子の高性能化や薄層化を図れるようになる。
本発明の一実施形態に係る圧電セラミックスの製造方法では、アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とする多結晶体の原料粉末と、第2族元素及び第4族元素を有する酸化物粉末とを混合した混合粉末を作製し、当該混合粉末を焼成する。
この構成により、焼成時における主相の結晶成長が抑制されるため、絶縁性及び機械的強度に優れた圧電セラミックスが得られる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。X軸、Y軸、およびZ軸は全図において共通である。
[全体構成]
図1A及び図1Bは本実施形態に係る圧電素子10を示し、図1Aは斜視図であり、図1Bは図1AのA−A’線に沿った断面図である。図1Aでは、説明の便宜上、圧電素子10の内部構造を透視して破線で示している。
圧電素子10は、圧電セラミックス11と、圧電セラミックス11のY軸方向の両端に設けられた外部電極14,15と、を具備する。また、圧電素子10は、圧電セラミックス11の内部にXY平面に沿って広がり、Z軸方向に対向するように交互に配置された2種類の内部電極12,13を具備する。
内部電極12,13の枚数は任意に決定可能である。各内部電極12には、Y軸方向の外部電極14側に突出し、圧電セラミックス11の側面に露出した突出部12aが形成されている。各突出部12aは、それぞれ外部電極14に接続されている。また、各内部電極13には、Y軸方向の外部電極15側に突出し、圧電セラミックス11の側面に露出した突出部13aが形成されている。各突出部13aは、それぞれ外部電極15に接続されている。内部電極12,13のZ軸方向の厚さは適宜決定可能である。内部電極12,13のZ軸方向の厚さは、例えば、0.5μm以上2μm以下とすることができる。
図1A及び図1Bでは、説明の便宜上、内部電極12,13の合計が8枚の場合を示しているが、内部電極12,13の枚数は圧電素子10の用途等に応じて任意に決定可能である。つまり、圧電セラミックス11の層数は1以上であれば幾つであってもよい。
また、圧電セラミックス11の各層のうち、内部電極12,13の間に配置されていない、Z軸方向の最上層と最下層は、圧電素子10の使用時に圧電効果を奏しない。したがって、圧電素子10のZ軸方向の最上層及び最下層は、圧電セラミックス11で構成されていなくてもよい。しかし、当該最上層及び最下層は、外部電極14,15の間の導通を防ぐため、絶縁体材料によって構成されている必要がある。
圧電素子10の内部電極12,13はNiを主成分として含む導電層であるNi電極として構成されている。しかし、内部電極12,13を形成する材料は、Niに限らず、例えば、Cuであってもよい。なお、内部電極12,13を形成する材料は、PdやAg−Pdなどの貴金属であってもよいが、製造コストの観点から卑金属であることが好ましい。
また、圧電素子10の外部電極14,15は、Agを主成分とする導電体であるAg電極として構成されている。しかし、外部電極14,15は、Ag電極に限らず、例えば、無鉛はんだにより構成されていてもよい。
なお、外部電極14,15はY軸方向の両面にZ軸方向に延びる帯状に設けられている。しかし、外部電極14,15は、内部電極12,13をそれぞれ導通させていればよく、例えば、圧電素子10のY軸方向の両面全体を被覆する構成であってもよい。
圧電素子10の当該構成により、外部電極14と外部電極15との間に電圧を印加すると、互いに隣接する内部電極12と内部電極13との間に電圧が加わる。内部電極12,13間に加わる電圧に応じ、内部電極12と内部電極13との間にある圧電セラミックス11の各層が圧電効果を発現してZ軸方向に伸縮変形する。
[圧電セラミックス11]
(主相について)
本実施形態に係る圧電セラミックス11としては、アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とするものを用いた。具体的には、圧電セラミックス11は、以下の組成式(1)で表される多結晶体として構成される。
(LiNa1−a−b(Nb1−c−dTaSb …(1)
ペロブスカイト構造は、組成式ABOと表され、Aサイトに配座する原子、Bサイトに配座する原子、及び酸素(O)原子により構成される。ペロブスカイト構造では、Bサイトの原子の周囲に6つの酸素原子が配位し、Aサイトの原子の周囲に12個の酸素原子が配位し、この構造が周期的に連続することで結晶が構成されている。
本実施形態に係る圧電セラミックス11では、図1におけるAサイトにはアルカリ金属元素であるLi,Na,Kが配座し、BサイトにはNb,Ta,Sbが配座する。ペロブスカイト構造では、化学量論比であるA:B=1:1であるときに、理論的に全てのAサイト及びBサイトに各原子が配座する安定な構造となる。具体的には、組成式(1)におけるm及びnがともに1に等しい場合である。
しかし、実際には、Aサイトに配座する元素であるLi,Na,Kは、焼成時における揮発などに起因する欠損が生じやすく、具体的には化学量論組成から2%程度減少することがある。そのため、Li,Na,Kの欠損量を予め予測することにより、仕込み組成(秤量時の組成)が化学量論組成よりもLi,Na,Kが多くなるようにする。これにより、焼成後に化学量論組成に近い安定したペロブスカイト構造を得られる。
具体的には、組成式(1)において、mの値が1の場合におけるnの値の範囲が0.95≦a≦1.01であれば安定したペロブスカイト構造が得られることがわかっている。また、mの値が1の場合におけるnの値の範囲は0.98≦a≦1.005であることが更に好適である。
また、Aサイトに配座する元素の比率を決定する組成式(1)におけるa及びbの値の範囲が0.04<a≦0.1で、かつ、0≦b≦1であり、Bサイトに配座する元素の比率を決定するc及びdの値の範囲が0≦c<1で、かつ、0≦d<1である場合に良好な圧電特性が得られることがわかっている。なお、組成式(1)において、a+b<1及びc+d≦1が満たされる必要がある。
(副相について)
本実施形態に係る圧電セラミックス11は、上記のアルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とする多結晶体からなり、当該多結晶体の結晶粒界に副相を含む。ここで、結晶粒界には粒界三重点が含まれるものとする。圧電セラミックス11の副相としては、シリコン(Si)を有する第1の酸化物相と、第2族元素(M)及び第4族元素(M)を有する第2の酸化物相と、Mnを含むマンガン(Mn)含有相と、が含まれる。
(1)シリコン(Si)を有する第1の酸化物相
圧電セラミックス11の結晶粒界には、副相としてシリコン(Si)を有する第1の酸化物相が分散している。第1の酸化物相は数ミクロン以下の微細結晶粒として存在する。この第1の酸化物相は、圧電セラミックス11の焼成時に、主相の結晶粒成長を抑制するように作用する。したがって、圧電セラミックス11では、第1の酸化物相の作用により、主相の各結晶粒が微細化する。
圧電セラミックス11の主相の各結晶粒が微細化するほど、圧電セラミックス11の単位体積あたりに占める粒界の量が多くなる。これにより、圧電セラミックス11の絶縁性が向上するとともに、機械的強度が向上する。
第1の酸化物相は、SiOの状態で存在してもよいが、KNbSiの状態で存在していることが好ましい。副相としてKNbSiが存在する圧電セラミックス11を得るためには、主相の粉末とは別にKNbSiの粉末を用意して、当該粉末と主相の粉末との混合粉末を焼結させる手法を採ることが可能である。また、主相の粉末とSiOの粉末との混合粉末を焼結させる際にKNbSiを析出させる手法を採ることも可能である。
上記のように、圧電セラミックス11は、第1の酸化物相を含むことが好ましいが、主相に対して副相である第1の酸化物相が多すぎると、圧電セラミックス11の圧電特性が低下する。これらを考慮すると、KNbSiの量の範囲は、1モルの主相に対して0.003モル以上0.10モル以下、より好ましくは0.006モル以上0.08モル以下である。
(2)第2族元素(M)及び第4族元素(M)を有する第2の酸化物相
圧電セラミックス11の結晶粒界には、副相として第2族元素(M)及び第4族元素(M)を有する第2の酸化物相が分散している。第2の酸化物相は数ミクロン以下の微細結晶粒として存在する。この第2の酸化物相は、第1の酸化物相と同様に、圧電セラミックス11の焼成時に、主相の結晶粒成長を抑制するように作用する。したがって、圧電セラミックス11では、第2の酸化物相の作用により、主相の各結晶粒を微細化することができる。
したがって、第2の酸化物相の作用により、圧電セラミックス11の絶縁性が向上するとともに、機械的強度が向上する。このように、第2の酸化物相は、第1の酸化物相と同様の作用を奏するため、本実施形態では、第1の酸化物相と第2の酸化物相との双方の作用によって、より高い効果が得られる。
具体的には、圧電素子10における圧電セラミックス11の各層の厚さが50μmであると想定した場合、圧電セラミックス11の主相の最大結晶粒径が15μm以下となることが好ましい。更には、圧電素子10における圧電セラミックス11の各層の厚さが50μmより薄い場合を想定すると、圧電セラミックス11の主相の最大結晶粒径は5μm以下となることが好ましい。
第2の酸化物相において、第2族元素(M)がカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)の少なくとも一方であり、第4族元素(M)がチタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方である場合に、上記の効果がより有効に得られる。第2族元素(M)及び第4族元素(M)はそれぞれ単一の元素で構成されていても複数の元素で構成されていてもよい。
第2の酸化物相の組成式はM と表すことができる。第2の酸化物相では、第2族元素(M)及び第4族元素(M)の双方が含まれていればよく、eの値が1である場合に、fの値の範囲が0.01≦f≦0.99であることが好適である。酸素量を示すgの値は、2価の第2族元素(M)と4価の第4族元素(M)との比率によって決定する。具体的には、g=e+2fが満たされる。一例として、2価の第2族元素(M)の量と4価の第4族元素(M)の量とが等しい場合、すなわちeの値が1の場合、酸素量を示すgの値は3となる。なお、この場合、第2の酸化物相はペロブスカイト構造となることが確認されている。
上記のように、圧電セラミックス11は、第2の酸化物相を含むことが好ましいが、主相に対して副相である第2の酸化物相が多すぎると、圧電セラミックス11の圧電特性が低下する。第2の酸化物相の量は、1モルの主相に対して0.001モル以上0.2モル以下の範囲内であることが好適である。
(3)マンガン(Mn)含有相
圧電セラミックス11の結晶粒界には、副相としてマンガン(Mn)含有相が分散している。第1の酸化物相は数ミクロン程度の粒子として存在する。マンガン(Mn)含有相は、圧電セラミックス11の圧電特性を損なうことなく、圧電セラミックス11の絶縁性を向上させる作用を有する。マンガン(Mn)含有相は、MnOやMnOの結晶や、他の元素(例えば、ニッケル(Ni))の酸化物と固溶した結晶や、非晶質として存在している。
圧電セラミックス11は、マンガン(Mn)含有相を含むことが好ましいが、主相に対して副相であるマンガン(Mn)含有相が多すぎると、圧電セラミックス11の圧電特性が低下する。第2の酸化物相の量は、1モルの主相に対して、0.02モル以上0.04モル以下である範囲内であることが好適である。
(4)その他の副相
圧電セラミックス11は、上記の副相以外にも、以下のような副相を含んでいてもよい。
・リチウム含有相
圧電セラミックス11の焼結時の焼結助剤としてLiOやLiCOを用いることにより、圧電セラミックス11の焼結性が向上する。また、LiOやLiCOは、焼結助剤としての機能以外にも、焼結時におけるAサイトのアルカリ金属元素の欠損を補う機能も有する。
LiOやLiCOが焼結助剤として用いられる場合、焼結後の圧電セラミックス11には、副相としてリチウム含有相が残存する場合がある。リチウム含有相は、例えば、LiOの状態で存在する。しかし、焼結助剤としてのLiOやLiCOの量は、1モルの主相に対して0.001モル以上0.015モル以下の範囲内であれば、圧電セラミックス11の焼結性が向上するとともに、圧電セラミックス11の圧電特性に悪影響を及ぼさないことがわかっている。
・アルカリ土類金属含有相
圧電セラミックス11の焼結時の焼結助剤としてアルカリ土類金属含有酸化物を用いることにより、圧電セラミックス11の焼結性が向上する。具体的には、当該酸化物に含まれるアルカリ土類金属が、焼結時におけるAサイトのアルカリ金属元素の欠損を補うとともに、Aサイトにおける価数の減少を補償するように作用するためである。ここで、アルカリ土類金属としては、Ca,Ba,Srのうちの少なくとも1つを採用することが可能である。
アルカリ土類金属含有酸化物を焼結助剤として用いる場合、焼結後の圧電セラミックス11には、副相としてアルカリ土類金属含有相が残存する場合がある。アルカリ土類金属含有相は、例えば、(Ca,Ba,Sr)Oの状態で存在する。しかし、焼結助剤としてのアルカリ土類金属含有酸化物の量は、1モルの主相に対して0.0002モル以上0.02モル以下の範囲内であれば、圧電セラミックス11の焼結性が向上するとともに、圧電セラミックス11としての特性に悪影響を及ぼさないことがわかっている。
・その他
圧電セラミックス11には、絶縁性低下の防止の目的で、ジルコニウム含有酸化物を添加することが可能である。ジルコニウム含有酸化物としては、例えば、ZrOが挙げられる。
また本実施形態に係る圧電セラミックス11には、必要に応じ、焼結温度の制御や結晶粒成長の抑制の目的で、例えば、第一遷移元素であるSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Znのうちの少なくとも1つを含む組成物を添加することが可能である。
さらに、本実施形態に係る圧電セラミックス11には、必要に応じ、焼結温度の制御や結晶粒成長の抑制や高電界における長寿命化の目的で、例えば、第二遷移元素であるY、Mo、Ru、Rh、Pdのうち少なくとも1つを含む組成物を添加することが可能である。
加えて、本実施形態に係る圧電セラミックス11には、必要に応じ、焼結温度の制御や結晶粒成長の抑制や高電界における長寿命化の目的で、例えば、第三遷移元素であるLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、W、Re、Os、Ir、Pt、Auのうち少なくとも1つを含む組成物を添加することが可能である。
なお、本実施形態に係る圧電セラミックス11には、必要に応じ、上記の第一遷移元素、第二遷移元素及び第三遷移元素を選択的に複合組成物として添加することも可能である。
[圧電素子10の製造方法]
図2は本実施形態に係る圧電素子10の製造方法を示したフローチャートである。以下、各工程について説明する。
(S1)原料粉末混合工程
まず、目的の組成となるように原料粉末の秤量を行なう。リチウムを含む原料粉末としては、例えば、炭酸リチウム(LiCO)を用いることができる。ナトリウムを含む原料粉末としては、例えば、炭酸ナトリウム(NaCO)や炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を用いることができる。カリウムを含む原料粉末としては、例えば、炭酸カリウム(KCO)や炭酸水素カリウム(KHCO)を用いることができる。ニオブを含む原料粉末としては、例えば、五酸化ニオブ(Nb)を用いることができる。タンタルを含む原料粉末としては、例えば、五酸化タンタル(Ta)を用いることができる。アンチモンを含む原料粉末としては、例えば、三酸化アンチモン(Sb)や五酸化アンチモン(Sb)を用いることができる。
次に、秤量した各原料粉末の混合を行なう。混合は、例えば、各原料粉末を、エタノール、及び部分安定化ジルコニア(PSZ:Partially Stabilized Zirconia)ボールとともに円筒状のポットに封入し、ボールミル法により行なう。10時間〜60時間のボールミル法による攪拌の後、エタノールを蒸発させて乾燥させることにより原料粉末が十分に混ざり合った混合粉末が得られる。なお、ボールミル法においては、エタノールを他の有機溶剤に代えてもよい。
続いて、混合粉末の仮焼成を行なう。仮焼結は、混合粉末を坩堝中において850〜950℃で1時間〜10時間保持することにより行なう。そして、仮焼結体をボールミル法にて粉砕することにより仮焼成粉末が得られる。
ここで、上記の副相となる副相粉末を、仮焼成粉末に混合する。本実施形態では、副相粉末として、第1の酸化物相(例えば、KNbSi)の粉末と第2の酸化物相(M )とマンガン含有相(例えば、MnO)を予め用意した。
仮焼成粉末に、所定量の副相粉末(第1の酸化物相、第2の酸化物相副相、及びマンガン含有相の粉末)、有機バインダ、分散剤及び溶剤を加えて、ボールミル法によって湿式混合を行ない、セラミックススラリーを作製する。ボールミル法の条件は、仮焼成粉末と、副相粉末とが十分均一に混ざり合うように適宜決定される。なお、ボールミル法による湿式混合には、純水に代えてエタノール等の有機溶剤を用いてもよい。
有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコールやビニルブチラールやエチルセルロースなどを主成分とするものが用いられる。分散剤としては、アニオン、カチオン、ノニオンなどが適宜選択される。溶剤としては、例えば、純粋やエタノールが用いられる。
(S2)セラミックスシート作製工程
セラミックススラリーは、ドクターブレード法によりシート状に成形してセラミックスシートとする。セラミックスシートの厚さは、ドクターブレード装置の刃の高さやセラミックススラリーの粘性などにより制御することができ、圧電素子10の構成により適宜決定される。セラミックスシートの厚さは、例えば20μmとすることができる。
(S3)内部電極ペースト塗布工程
内部電極塗布工程(S3)では、上記工程(S2)で得られたセラミックスシートに、図1A及び図1Bに示す内部電極12,13を形成するための工程である。
図3は圧電素子10の製造過程を示した模式図である。内部電極ペースト塗布工程(S3)では、図3に示すように、各セラミックスシート210に、所定のパターンで導電性ペースト(電極ペースト)を塗布し、内部電極膜212,213を形成する。内部電極膜212,213は、例えば、内部電極のパターンが形成されたスクリーンを用いたスクリーン印刷により形成する。なお、セラミックスシート210は、上記工程(S2)で得られたセラミックスシートが所定の枚数重ねられて形成される。
図3を参照すると明らかなように、X軸方向及びY軸方向に大経を有する1枚のセラミックスシート210にX軸方向及びY軸方向に複数の内部電極膜212,213を形成する。内部電極膜212と内部電極膜213とは、X軸方向に幅狭になるように形成された幅狭部214において連続している。なお、パターンの都合上、セラミックスシート210のY軸方向端部ではX軸方向一列おきに内部電極膜212,213が幅狭部214で途切れている。
本実施形態では、図1A及び図1Bに示す内部電極13,14がNi電極であるため、内部電極膜212,213としてNiを含む導電性ペーストを用いた。しかし、導電性ペーストは、内部電極13,14の材質によって適宜変更可能である。
(S4)セラミックスシート積層工程
セラミックスシート積層工程(S4)では、図3に示すように、上記工程(S3)で得られた内部電極膜212,213が形成されたセラミックスシート210を、内部電極膜212,213のパターンがY軸方向に交互に反転するように所定の層数だけZ軸方向に積層する。
そして、セラミックスシート210の積層体を、積層方向であるZ軸方向に加圧することにより、各層を圧着して一体化させる。セラミックスシート210の積層体をZ軸方向に加圧する圧力は適宜決定可能であり、例えば、50MPaとすることができる。このように、セラミックスシート210の積層体をZ軸方向に加圧することにより、セラミックスシート210の各層がやや変形し、隣接する複合セラミックスシート210がその外縁部で密着する。これにより、複合セラミックスシート210の積層体が一体となって直方体状となる。
なお、Z軸方向の最上層のセラミックスシート210aには、内部電極膜212,213を形成していないものを用いる。これにより、積層体のZ軸方向上面が絶縁される。
(S5)切断工程
切断工程(S5)では、上記工程(S4)で得られた積層体を圧電素子10(図1A及び図1B)ごとに切り分ける。まず、積層体を、図3における内部電極膜212,213のX軸方向に並ぶ各列の間の部分をY軸方向に沿ってそれぞれ切断する。そして、積層体を、図3における各幅狭部214の中間位置がY軸方向に等分されるようにX軸方向に沿ってそれぞれ切断する。勿論、X軸方向に沿った切断とY軸方向に沿った切断との順序は任意である。
このように、切断工程(S5)によって、図1A及び図1Bに示す各圧電素子10ごとの未焼結体となる。この未焼結体では、Z軸方向に内部電極膜212と内部電極膜213とが交互に対向するとともに、内部電極膜212の幅狭部214と内部電極膜213の幅狭部214とがY軸方向において反対側に露出している。
(S6)脱バインダ工程
脱バインダ工程(S6)では、上記工程(S5)で得られた未焼結体に含まれるバインダ成分を除去する。具体的には、例えば、アルミナ製のサヤに収容した未焼結体について、還元雰囲気の電気炉内で、350〜600℃の温度で1時間〜8時間の熱処理を行なう。電気炉の昇温速度は、例えば、1〜10℃/minとすることができる。還元雰囲気は、酸素や窒素や水素や水蒸気を所定の比率で混合することにより生成した。
(S7)焼結工程
焼結工程(S7)では、上記工程(S6)で得られた各未焼結体を焼結させる。具体的には、還元雰囲気中において980〜1120℃の温度で2時間保持することにより焼成する。これにより、緻密な焼結体(積層セラミックス焼結体)が得られる。
(S8)再酸化工程
再酸化工程(S8)では、上記工程(S7)で得られた焼結体に対して再酸化処理を行なう。上記焼結工程(S7)は、還元雰囲気中で行なうため、得られる焼結体の酸素が欠損している。再酸化処理は、焼結体における酸素の欠損を補うために行われる。具体的には、焼結体に対して、酸素や窒素や水素や水蒸気を所定の比率で混合した混合ガス中で750〜900℃の温度で1時間〜8時間の熱処理を行なう。
なお、上記工程(S6),(S7)は、圧電素子10の内部電極13,14を形成する材料が酸化しやすいNiであるため、還元雰囲気で熱処理を行なう必要がある。さらに、上記工程(S8)は、Niの酸化により内部電極13,14の機能を損なわない条件で行なわれる。しかし、内部電極13,14を形成する材料がPdやAg−Pdなどの貴金属である場合には、上記工程(S6),(S7)は大気中で行なうことができ、上記工程(S8)を行なう必要がない。
(S9)外部電極形成工程
外部電極形成工程(S9)では、上記工程(S8)で得られた積層セラミックス焼結体に図1A及び図1Bに示す外部電極14,15を形成する。図1A及び図1Bに示すように、外部電極14は、セラミックス焼結体の一面に設けられるとともに全ての内部電極12を接続し、外部電極15は、セラミックス焼結体の一面に設けられるとともに全ての内部電極13を接続する。
具体的には、セラミックス焼結体のY軸方向の両面にAgなどの金属粉末を含む導電性ペーストを印刷し、750〜850℃程度で焼き付け処理を行なう。なお、導電性ペーストは、バインダを溶剤に溶解させた溶液(いわゆる、ビヒクル)に金属粉末を混合して作製される。バインダとしては、例えば、エチルセルロースやビニルブチラールが用いられる。但し、本実施形態に係る圧電セラミックスには水に溶解しやすいアルカリ金属元素が含まれるため、導電性ペーストにアルカリ金属元素が溶解することを防止するため、疎水性の高い有機成分からなるバインダを用いることが好ましい。
導電性ペーストは、バインダの量が1〜5wt%で、溶剤の量が10〜60wt%となるように調整した。また、導電性ペーストには、必要に応じて、分散剤や可塑剤を添加してもよい。さらに、導電性ペーストには、圧電素子10との密着性を高めるために、圧電セラミックス11の主相と同様の成分の主相粉末を添加してもよい。分散剤、可塑剤、及び主相粉末の添加量の合計は、12wt%以下であることが好適である。
なお、セラミックス焼結体への外部電極14,15の形成方法は、焼き付け処理によらなくてもよい。外部電極14,15は、内部電極12,13をそれぞれ良好に接続可能であればよく、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの薄膜形成方法によって形成しても構わない。
(S10)分極処理工程
分極処理工程(S10)では、上記工程(S9)で得られた圧電素子10を圧電アクチュエータ等として使用可能とするために、圧電素子10中の圧電セラミックス11を分極させる。分極処理は、圧電素子10の外部電極14,15間に高電界を印加することにより行なう。具体的には、圧電素子10を100〜150℃のシリコーンオイル中に入れ、外部電極14,15間に2〜5kV/mmの電界を10〜15分間印加する。
上記工程(S10)の後に、圧電素子10を24時間以上静置するエイジングを行なう。
[実施例及び比較例]
以下に、本実施形態に係る圧電素子10の実施例及び比較例について説明する。なお、圧電素子の各試料は、圧電セラミックスの組成以外、同様の構成とした。内部電極を形成する材料としてはNiを用い、外部電極を形成する材料としてはAgを用いた。
(1)試料の説明
圧電素子10の実施例又は比較例として7種類の試料を作製した。各試料における圧電セラミックスの組成は以下のとおりである。試料No.1〜4が本実施形態の比較例に係る圧電素子であり、試料No.5〜7が本実施形態に係る圧電素子10である。
・No.1:K0.42Na0.52Li0.064NbO
・No.2:K0.42Na0.52Li0.064NbO−0.002MnO
・No.3:K0.42Na0.52Li0.064NbO−0.1Ca0.5Zr0.51.5
・No.4:K0.42Na0.52Li0.064NbO−0.013KNbSi−0.002MnO
・No.5:K0.42Na0.52Li0.064NbO−0.013KNbSi−0.08Ca0.375Ti0.6251.625−0.002MnO
・No.6:K0.42Na0.52Li0.064NbO−0.013KNbSi−0.06Ca0.167Ti0.8331.833−0.002MnO
・No.7:K0.42Na0.52Li0.064NbO−0.013KNbSi−0.15Ca0.667Ti0.3331.333−0.002MnO
各試料における圧電セラミックスの主相及び副相を同定するためにX線回折装置(リガク社製UltimaIV)を用いて2θ/θスキャンによってX線回折パターンを得た。X線回折パターンから、いずれの試料においても主相がペロブスカイト構造であることが確かめられた。また、X線回折パターンから、試料No.3ではCa0.5Zr0.51.5が副相として含まれることが確認され、試料No.5〜7ではCaTiが副相として含まれることが確認された。更に、EDS(Energy dispersive X−ray spectrometry)やTEM(透過型電子顕微鏡:Transmission Electron Microscope)を用い、試料No.2,4〜7ではMn含有相が副相として含まれることが確認された。
(2)試料の評価方法
各試料について、最大結晶粒径、比誘電率(εr)、誘電損失(tanδ)、分極可否、絶縁抵抗、電気機械結合係数(k31)、及び圧電定数(d33)の評価を行なった。
本実施形態では、結晶粒径は、いわゆる面積相当径として算出される。具体的には、結晶組織の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)によって観察した際の、結晶粒の面積から同等の面積となる円の直径に換算したものを結晶粒径とした。各試料の最大結晶粒径は、例えば、結晶組織における任意の100μm×100μmの領域中にある最大の結晶の粒径とした。
なお、SEMとしては、粒子面走査型電子顕微鏡(日立テクノロジー社製S−4300)を用いた。観察に際し、各試料の観察面には、鏡面研磨を施した後、強酸などを用いたケミカルエッチングを施した。更に、各試料の破断面もSEMによって観察を行った。
比誘電率(εr)及び誘電損失(tanδ)は、インピーダンスアナライザ(アジレントテクノロジー社製4294A)を用いて測定した。
電気機械結合係数(k31)及び圧電定数(d33)は、レーザードップラー変位計を用いて測定した。なお、測定に際し、各試料について、電子情報技術産業協会規格であるJEITA−EM−4501に即した形状の圧電セラミックスを作製した。
(試料の評価結果)
図4〜6は試料No.7のSEM写真である。図4は圧電セラミックスの観察面を撮影したSEM写真であり、図5は圧電セラミックスの破断面を撮影したSEM写真であり、図7は圧電素子の観察面を撮影したSEM写真である。
図4及び図5から、試料No.7の圧電セラミックスが5μm以下の微細で均一な結晶組織であることが確認できる。同様に試料No.7以外の各試料についても同様の結晶組織の観察を行なった。その詳細については後述する。
また図6から、試料No.7の圧電素子の積層構造が確認できる。同様に試料No.7以外の各試料でも積層構造が確認された。より詳細には、図7では、線状の明色の部分がNi電極であり、Ni電極間の暗色の部分が圧電セラミックスの層である。各試料における圧電セラミックスの層の厚さ(Ni電極間距離)は50μm程度とした。
各試料の圧電セラミックスにおける最大結晶粒径、比誘電率(εr)、誘電損失(tanδ)、分極可否、絶縁抵抗、電気機械結合係数(k31)、及び圧電定数(d33)の評価結果を表1に示す。なお、焼成温度は、図2の焼結工程(S7)における保持温度であり、各試料の組成に応じて決定されている。なお、表1中、試料No.1〜4に付した「(*)」印は、比較例であることを示すものである。
・最大結晶粒径
試料No.1〜3では結晶成長が進んで粗大化した結晶粒が観察され、最大結晶粒径が20μm以上であった。これに対し、試料No.4〜7では微細な結晶粒からなる均一な組織が観察され、最大結晶粒径が15μm以下であった。これは、試料No.1〜3における圧電セラミックスには副相として第1の酸化物相と第2の酸化物相とのいずれも含まれていないため焼成時に結晶成長が進んだ結果である。
・比誘電率(εr)及び誘電損失(tanδ)
比誘電率(εr)及び誘電損失(tanδ)はいずれの試料も良好な値であった。
・分極可否
試料No.1,3は分極できず、その他の試料は分極できた。したがって、試料No.1,3は圧電セラミックスとして使用できないため、試料No.1,3については絶縁抵抗、電気機械結合係数(k31)、及び圧電定数(d33)の評価を行なわなかった。
・絶縁抵抗
絶縁抵抗は、試料No.2,4〜7のいずれも良好な値であった。より詳細には、試料No.4が、他の試料よりも抵抗値が低く、絶縁性がやや低いことがわかった。
・電気機械結合係数(k31)及び圧電定数(d33
電気機械結合係数(k31)及び圧電定数(d33)は、試料No.2,4〜7のいずれの試料も良好な値であった。
(まとめ)
・比較例に係る試料No.1〜3について
試料No.1〜3は、いずれも主相の結晶が粗大化し、当該主相の最大結晶粒径が20μm以上であった。したがって、図6に示すように圧電セラミックスの層の厚さが50μmとする場合、Ni電極間に1つから2つの結晶しかない状態となりうる。このような圧電素子は、機械的強度が低く、使用時に絶縁破壊を生じやすい。したがって、試料No.1〜3は信頼性に欠ける。
また、圧電素子を形状の変更なしに更なる高性能化を求めると、圧電セラミックスの層数を多くするとともに圧電セラミックスの各層の厚さを薄くする必要がある。さらに、圧電素子をその性能を保ちつつ更なる小型化を求めると、圧電セラミックスの層数を一定に保ちつつ圧電セラミックスの各層の厚さを薄くする必要がある。したがって、図6に示す圧電セラミックスの層の厚さである50μmより、圧電セラミックスの層の更なる薄層化が求められる。しかし、比較例に係る試料No.1〜3では、圧電セラミックスの層の更なる薄層化に対応することが困難である。
なお、試料No.2は、絶縁抵抗、電気機械結合係数(k31)、及び圧電定数(d33)については良好な値が得られている。試料No.2は、圧電セラミックスの副相としてMnOが含まれている点で試料No.1,3とは異なる。したがって、圧電セラミックスに副相としてMnOが含まれていることは、良好な絶縁抵抗、電気機械結合係数(k31)、及び圧電定数(d33)を得るために有効であることがわかる。
・比較例に係る試料No.4について
比較例に係る試料No.4では、主相の結晶粒の粗大化が見られず、微細で均一な結晶組織が得られた。具体的には、主相の最大結晶粒径が15μm以下であった。したがって、試料No.4では、試料No.1〜3と比較して、機械的強度が高く、使用時に絶縁破壊を生じにくい。さらに試料No.4では、絶縁抵抗、電気機械結合係数(k31)、及び圧電定数(d33)についても良好な値が得られている。
試料No.4は、圧電セラミックスの副相としてKNbSiが含まれている点で試料No.1,3と異なる。したがって、圧電セラミックスに副相としてKNbSiが含まれていることは、主相の結晶の微細化に有効であることがわかる。
一方、試料No.4は、試料No.5〜7と比較して絶縁抵抗が低い。試料No.4では、図6に示すように圧電セラミックスの層の厚さが50μmとする場合には十分な絶縁性が得られるものの、圧電セラミックスの層を50μmよりも更に薄くする場合に十分な絶縁性が得られなくなる場合もある。
・実施例に係る試料No.5〜7について
試料No.5〜7のいずれも、主相の最大粒径が15μm以下であり、かつ、絶縁抵抗、電気機械結合係数(k31)、及び圧電定数(d33)について良好な値が得られている。
試料No.5〜7は、試料No.4と比較して絶縁抵抗が向上している。試料No.5〜7は、圧電セラミックス11の副相としてCaTiが含まれている点で試料No.4と異なる。したがって、圧電セラミックス11に副相としてCaTiが含まれていることは、絶縁抵抗の向上に有効であることがわかる。
したがって、試料No.5〜7では、圧電セラミックスの層を50μm更に薄くする場合に十分な絶縁性が得られる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、図2に示す圧電素子10の製造方法では、主相の粉末と、第1の酸化物相の粉末と、第2の酸化物相の粉末とを各別に予め用意し、各粉末を混合したが、所望の主相及び副相が得られる限りにおいてこの構成は必須ではない。例えば、原料粉末混合工程(S1)において、主相の原料粉末及び全ての副相の原料粉末を混合してもよい。これにより、圧電素子10の製造工程が簡素化する。
10…圧電素子
11…圧電セラミックス
12,13…内部電極
14,15…外部電極

Claims (6)

  1. アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とする多結晶体からなり、当該多結晶体の結晶粒界に、Siを有する第1の酸化物相と、第2族元素及び第4族元素を有する第2の酸化物相とを含み、
    前記主相の組成式は(Li Na 1−a−b (Nb 1−c−d Ta Sb (但し、0.04<a≦0.1、0≦b≦1、0≦c<1、0≦d<1、m=1、0.95≦n≦1.01、a+b<1、c+d≦1が満たされる。)と表され、
    前記第1の酸化物相の組成式はK Nb Si と表され、
    前記第2の酸化物相の組成式はM (但し、M 元素は前記第2族元素、M 元素は前記第4族元素である。また、g=e+2fが満たされる。)と表され、
    1モルの前記主相に対して、0.003モル以上0.10モル以下の前記第1の酸化物相、0.001モル以上0.2モル以下の前記第2の酸化物相、及び0.02モル以上0.04モル以下のマンガン含有相を含む
    圧電セラミックス。
  2. アルカリ含有ニオブ酸系ペロブスカイト構造を主相とする多結晶体からなり、当該多結晶体の結晶粒界に、Siを有する第1の酸化物相と、Ca及びTiを有する第2の酸化物相とを含み、
    前記主相の組成式は(Li Na 1−a−b (Nb 1−c−d Ta Sb (但し、0.04<a≦0.1、0≦b≦1、0≦c<1、0≦d<1、m=1、0.95≦n≦1.01、a+b<1、c+d≦1が満たされる。)と表され、
    前記第1の酸化物相の組成式はK Nb Si と表され、
    前記第2の酸化物相の組成式はCa Ti (但し、g=e+2fが満たされる。)と表される
    圧電セラミックス。
  3. 請求項1又は2に記載の圧電セラミックスであって、
    前記主相の最大結晶粒径が15μm以下である
    圧電セラミックス。
  4. 第1の内部電極及び第2の内部電極と、
    請求項1からのいずれか1項に記載の圧電セラミックスより成る圧電セラミックス層と
    を具備する圧電素子。
  5. 請求項に記載の圧電素子であって、
    第1の外部電極と第2の外部電極とをさらに具備し、
    前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とが前記圧電セラミックス層を介して交互に配置され、前記第1の内部電極はそれぞれ前記第1の外部電極に接続され、前記第2の内部電極はそれぞれ前記第2の外部電極に接続されている
    圧電素子。
  6. 請求項又はに記載の圧電素子であって、
    前記第1の内部電極及び前記第2の内部電極はNiを主成分とする導電性材料からなる
    圧電素子。
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