JP7243828B2 - 操舵制御方法及び操舵制御装置 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1に記載の車両用操舵反力制御装置は、緊急に障害物を回避するための緊急ハンドル操作(緊急操舵操作)が必要であるか否かを判定する緊急ハンドル操作要否判定手段と、緊急ハンドル操作が必要であるとき操舵反力を低減する操舵反力低減手段を備える。
本発明は、運転者によるステアリングホイールの緊急操舵操作がされる場合において操舵反力に対する違和感を軽減しながら、ステアリングホイールの操作性を向上することを目的とする。
本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化され達成される。前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないと解するべきである。
(構成)
図1は、本実施形態に係る操舵制御装置を搭載した車両(以下、「自車両」と表記する)の操舵系の一例の概略構成図である。
図1に示すように、自車両は、操舵部31と、転舵部32と、バックアップクラッチ33を備える。また自車両は、コントローラ11と、外部センサ16を備える。
自車両は、バックアップクラッチ33が解放状態になると、運転者の操舵入力を受け付ける操舵部31と、操向輪である左右前輪34FL、34FRを転舵する転舵部32と、が機械的に分離されるステアバイワイヤ(SBW)システムを採用している。以下の説明において左右前輪34FL、34FRを「操向輪34」と表記することがある。
一方で転舵部32は、ピニオンシャフト32aと、ステアリングギア32bと、ラックギア32cと、ステアリングラック32dと、転舵アクチュエータ14と、第2駆動回路15と、転舵角センサ35を備える。
コラムシャフト31bは、ステアリングホイール31aと一体に回転する。
バックアップクラッチ33は、コラムシャフト31bとピニオンシャフト32aとの間に設けられる。そして、バックアップクラッチ33は、解放状態になると操舵部31と転舵部32とを機械的に切り離し、締結状態になると操舵部31と転舵部32とを機械的に接続する。
カメラと測距装置は、自車両の周囲に存在する物体(例えば、他車両、歩行者、車線境界線や車線区分線などの白線、道路上又は道路周辺に設けられた信号機、停止線、標識、建物、電柱、縁石、横断歩道等の地物)、自車両に対する物体の相対位置、自車両と物体との間の相対距離等の自車両の周囲環境を検出する。
測距装置は、例えば、レーザレンジファインダ(LRF:Laser Range-Finder)、レーダユニット、レーザスキャナユニットであってよい。
転舵角センサ35は、操向輪34の転舵角(実転舵角)θtを検出する。
なお、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路でコントローラ11を実現してもよい。例えば、コントローラ11はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
転舵制御部36、反力制御部37及び緊急操舵判定部38の機能は、例えばコントローラ11の記憶装置21に格納されたコンピュータプログラムを、プロセッサ20が実行することによって実現されてよい。
転舵制御部36は、算出した指令転舵角を第2駆動回路15に出力し、実転舵角θtが指令転舵角となるように転舵アクチュエータ14を駆動する。
転舵アクチュエータ14は、第2駆動回路15から出力される指令電流に応じて、操向輪34を転舵するための転舵トルクをステアリングラック32dに出力する。
第2駆動回路15は、サーボ制御により、転舵角センサ35により検出される実際の転舵角と転舵制御部36からの制御信号が示す指令転舵角とが一致するように転舵アクチュエータ14への指令電流を制御する。
以下、運転者によるステアリングホイール31aの緊急操舵操作を単に「緊急操舵操作」と表記することがある。なお、緊急操舵操作とは、車線に沿った走行のような通常走行時の操舵操作とは異なり、車両の進行方向の急な変更を要する際のような急峻な操舵操作を意味し、その一例は、自車両周囲の障害物を回避するための緊急操舵である。
例えば緊急操舵判定部38は、自車両の周辺の障害物に対するリスクを算出し、算出したリスクが閾値以上の場合に緊急操舵操作が行われる可能性があると判定し、リスクが閾値未満の場合に緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない。又はリスクが閾値未満の場合に緊急操舵操作が行われる可能性がないと判定する。
また例えば緊急操舵判定部38は、上記リスクとして自車両首位の他車両に対する車間時間(THW:Time-Headway)を算出してよい。緊急操舵判定部38は、車間時間THWが予め定めた所定値以下である場合にリスクが閾値以上であると判定してよい。
あるいは、上述のように衝突余裕時間TTCや車間時間THWに応じて、衝突余裕時間TTCもしくは車間時間THWが短いほど高いリスクを算出し、算出したリスクが予め定めた所定の閾値以上であることを判定しても良い。
更には、自車両進行方向の障害物の位置を検出して、障害物の自車両幅方向に対するラップ量あるいはオフセット量を算出し、衝突余裕時間TTCもしくは車間時間THWが予め定めた所定値以下であって且つ、ラップ量が予め定めた所定値以上あるいはオフセット量が予め定めた所定値以下である場合にリスクが閾値以上であると判定してよい。
緊急操舵判定部38は、緊急操舵操作が行われる可能性があるか否かの判定結果を表す緊急操舵フラグを出力する。
反力制御部37は、指令反力トルクTrを反力アクチュエータ12に発生させる制御信号を第1駆動回路13へ出力し、反力アクチュエータ12を駆動することにより、算出した操舵反力トルクをステアリングホイールへ付与する。
反力アクチュエータ12は、第1駆動回路13から出力される指令電流に応じて、ステアリングホイール31aに付与する回転トルクをコラムシャフト31bに出力する。回転トルクを付与することによって、ステアリングホイール31aに操舵反力トルクを発生させる。
反力アクチュエータ12と、第1駆動回路13と、コントローラ11は、操舵制御装置を形成する。
反力制御部37は、第1操舵反力トルク算出部40と、第2操舵反力トルク算出部41と、第3操舵反力トルク算出部42と、加算器43を備える。
第1操舵反力トルク算出部40は、実操舵角θsに応じた第1操舵反力トルクTr1を算出する。
さらに、第2操舵反力トルク算出部41は、緊急操舵フラグに基づいて第2操舵反力トルクTr2を制御する。緊急操舵操作が行われる可能性があると緊急操舵判定部38が判定した場合は、緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない場合(又は緊急操舵操作が行われる可能性がないと判定した場合)に比べて第2操舵反力トルクTr2をより小さくする。
したがって、第2操舵反力トルクTr2をより小さくすることにより、緊急操舵操作時に運転者が速く操舵しようとして大きな力(操舵トルク)をステアリングホイール31aに加えた際に、この大きな力に応じて初期に発生する操舵反力を低減することができる。このため、緊急操舵操作が容易になりステアリングホイール31aの操作性が向上する。
ねじれ反力算出部44は、実操舵角θsの変化に対する実転舵角θtの変化の遅れに応じて増加するねじれ反力トルクTrtを算出する。
ねじれ反力算出部44は、実操舵角θsと操向輪34の実転舵角θtとの差に応じてねじれ反力トルクTrtを算出する。
実操舵角θsとピニオン角の角度差は、ステアリングホイール31aに加わる力(トルク)に応じて変化する。このため、ねじれ反力トルクTrtは、ステアリングホイール31aの操舵角加速度d2θs/dt2が大きいほど大きな反力トルクとなる。
また、路面負荷の違いに応じて実転舵角θtの応答遅れ(すなわち実操舵角θsの変化率と実転舵角θtの変化率との差分)が変化すると、ねじれ反力トルクTrtもこれに応じて変化する。
運転者がステアリングホイール31aを比較的緩やかに操作している間は、第2駆動回路15によるサーボ制御の応答保証の範囲内で実転舵角θtが変化する。このため無駄時間と応答遅れは所定の設計値以下に抑えられる。
図5Aは、実転舵角θtに対応するピニオン角と実操舵角θsの一例を示す。実線50が実操舵角θsを示し、実線51がピニオン角を示す。
図5B及び図5Cは、図5Aのピニオン角と実操舵角θsとの偏差角速度及び偏差角加速度を示す。
それに応じて、実操舵角θsと実転舵角θtとの差が大きくなるためにねじれ反力トルクTrtが大きくなる。
仮想転舵角算出部45は、実操舵角θsに応じて変化する仮想転舵角を算出する。
例えば、仮想転舵角算出部45は、仮想転舵角の無駄時間と応答遅れが、第2駆動回路15によるサーボ制御の応答保証を満たすように(すなわち応答保証で保証されている無駄時間と応答遅れの設計値以下となるように)仮想転舵角を算出する。
具体的には、疑似ねじれ反力算出部46は、仮想転舵角に対応するピニオン角と実操舵角θsの角度差に比例する疑似ねじれ反力トルクTrpを算出する。
このように、疑似ねじれ反力算出部46は、実転舵角θtの代わりに、仮想的に算出した仮想転舵角に基づいて疑似ねじれ反力トルクTrpを算出する。
図6Aは、仮想転舵角に対応するピニオン角と実操舵角θsの一例を示す。実線50が実操舵角θsを示し、実線52がピニオン角を示す。
図6B及び図6Cは、図6Aのピニオン角と実操舵角θsとの偏差角速度及び偏差角加速度を示す。
また、時刻t0から時刻t3までの期間では実操舵角θsに対するピニオン角の応答遅れ(すなわち実操舵角θsの変化率に対してピニオン角の変化率が小さくなること)が生じているが、その差分は、応答保証で設計されている設計値を満たすように小さく設定されている。
このため、急峻な操舵があっても、実操舵角θsと仮想転舵角との差は小さな値に維持されるので、疑似ねじれ反力トルクTrpは、ねじれ反力トルクTrtより小さくなる。
緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない場合(又は緊急操舵操作が行われる可能性がないと判定した場合)に、ねじれ反力トルクTrtを第2操舵反力トルクTr2として加算器43へ出力する。
この結果、緊急操舵操作が行われる可能性がある場合に、第2操舵反力トルクTr2をより小さくできる。
第3操舵反力トルクTr3の一例を図7に示す。第3操舵反力トルク算出部42は、実操舵角θsが変化する方向と反対の操舵トルクを第3操舵反力トルクTr3として算出する。第3操舵反力トルクTr3は、操舵角速度dθs/dtが大きくなるほど増加する。第3操舵反力トルクTr3をステアリングホイール31aに加えることにより、摩擦成分と粘性成分に対応する操舵反力を付与することができる。第3操舵反力トルク算出部42は、第3操舵反力トルクTr3を加算器43へ出力する。
以上の構成により、緊急操舵操作が行われる可能性があると緊急操舵判定部38が判定した場合には、緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない場合(又は緊急操舵操作が行われる可能性がないと判定した場合)に比べて第2操舵反力トルクTr2のみが小さくなる。
一方で、第1操舵反力トルクTr1と第3操舵反力トルクTr3による適度な操舵反力が残るため、第2操舵反力トルクTr2が小さくなっても操舵反力に対する違和感を軽減することができる。なお、本実施形態においては第1操舵反力トルクTr1と第2操舵反力トルクTr2に対して、操舵角速度dθs/dtに応じた第3操舵反力トルクTr3を加算して指令反力トルクTrとしているが、上述の通り第3操舵反力トルクTr3は摩擦成分や粘性成分に対応する操舵反力であり、第1操舵反力トルクTr1と第2操舵反力トルクTr2に比較して非常に小さい値である。このため、第1操舵反力トルクTr1と第2操舵反力トルクTr2のみを加算した値を指令反力トルクTrとしても良く、第3操舵反力トルクTr3は必ずしも必要としない。但し、より望ましい操舵反力を付与する為には本実施形態に記載の通り、第1操舵反力トルクTr1と第2操舵反力トルクTr2に対して第3操舵反力トルクTr3を加算して指令反力トルクTrとすることが好ましい。
次に、図8を参照して実施形態の操舵制御方法の一例を説明する。
ステップS1において第1操舵反力トルク算出部40は、実操舵角θsに応じた第1操舵反力トルクTr1を算出する。
ステップS2において緊急操舵判定部38は、緊急操舵操作が行われる可能性があるか否かを判定する。緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合(ステップS2:Y)に処理はステップS4へ進む。
ステップS3において第2操舵反力トルク算出部41は、実操舵角θsと実転舵角θtとの差に応じて第2操舵反力トルクTr2を算出する。その後に処理はステップS5へ進む。
ステップS4で第2操舵反力トルク算出部41は、実操舵角θsと仮想転舵角との差に応じて第2操舵反力トルクTr2を算出する。その後に処理はステップS5へ進む。
ステップS6において加算器43は、第1操舵反力トルクTr1と、第2操舵反力トルクTr2と、第3操舵反力トルクTr3を加算して、指令反力トルクTrを算出し、指令反力トルクTrを反力アクチュエータ12に発生させる制御信号を第1駆動回路13へ出力する。第1駆動回路13は、制御信号に応じて反力アクチュエータ12を駆動する。
(1)反力制御部37、第1駆動回路13及び反力アクチュエータ12は、ステアリングホイール31aの実操舵角θsに応じた第1操舵反力Tr1と、ステアリングホイール31aの操舵角加速度d2θs/dt2に応じた第2操舵反力Tr2とを加算した操舵反力を、ステアリングホイール31aに付与する。
緊急操舵判定部38は、運転者によるステアリングホイール31aの緊急操舵操作が行われる可能性を判定する。緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合には、反力制御部37は、緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない場合に比べて第2操舵反力Tr2を小さくする。
一方で、第1操舵反力トルクTr1による適度な操舵反力が残るため、第2操舵反力トルクTr2が小さくなっても操舵反力に対する違和感を軽減することができる。
このため、運転者によるステアリングホイール31aの緊急操舵操作がされる場合において操舵反力に対する違和感を軽減しながら、ステアリングホイール31aの操作性が向上する。
操舵角速度dθs/dtに応じた第3操舵反力Tr3を加えることにより、摩擦成分と粘性成分に対応する操舵反力を付与することができ、操舵反力に対する違和感を軽減することができる。
(4)緊急操舵判定部38は、障害物に対する衝突余裕時間が所定値以下である場合にリスクが閾値以上であると判定する。これにより、運転者によるステアリングホイール31aの緊急操舵操作が行われる可能性をより正確に判定できる。
これにより、操向輪34の路面への接地状態のフィードバックを第2操舵反力Tr2として運転者に与えることができるとともに、緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合には、第2操舵反力Tr2を小さくして緊急操舵操作を容易にし、ステアリングホイール31aの操作性を向上できる。
(1)上記の実施形態において第2操舵反力トルク算出部41は、緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合には、疑似ねじれ反力トルクTrpを第2操舵反力トルクTr2として算出した。また、緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない場合(又は緊急操舵操作が行われる可能性がないと判定した場合)に、ねじれ反力トルクTrtを第2操舵反力トルクTr2として算出した。
ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な方法によって第2操舵反力トルクTr2を算出してもよい。
第2操舵反力トルク算出部41は、緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合に第2操舵反力トルクTr2を0に設定してもよい。これにより、ステアリングホイール31aに加える力(トルク)に比例する反力トルク成分を0にすることができ、ステアリングホイール31aの操作性がより向上する。
Claims (7)
- ステアリングホイールの操舵角に応じた第1操舵反力と、前記ステアリングホイールの操舵角加速度に応じた第2操舵反力とを加算した操舵反力を、前記ステアリングホイールに付与し、
運転者による前記ステアリングホイールの緊急操舵操作が行われる可能性を判定し、
前記緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合には、前記緊急操舵操作が行われる可能性が有ると判定しない場合に比べて前記第2操舵反力を小さくする、
ことを特徴とする操舵制御方法。 - 前記緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合には前記第2操舵反力を0にすることを特徴とする請求項1に記載の操舵制御方法。
- 前記ステアリングホイールの操舵角速度に応じた第3操舵反力と、前記第1操舵反力と、前記第2操舵反力とを加算した操舵反力を、前記ステアリングホイールに付与することを特徴とする請求項1又は2に記載の操舵制御方法。
- 自車両の周辺の障害物に対するリスクが閾値以上である場合に前記緊急操舵操作が行われる可能性が有ると判定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の操舵制御方法。
- 前記障害物に対する衝突余裕時間が所定値以下である場合に前記リスクが閾値以上であると判定することを特徴とする請求項4に記載の操舵制御方法。
- 前記緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない場合には、操向輪の実転舵角と前記操舵角との差に応じて前記第2操舵反力を算出し、
前記緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合には、前記操舵角の変化に対して前記実転舵角より早期に応答するように設定された仮想転舵角と前記操舵角との差に応じて前記第2操舵反力を算出する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の操舵制御方法。 - ステアリングホイールに操舵反力を付与する反力アクチュエータと、
前記反力アクチュエータを駆動する駆動回路と、
前記ステアリングホイールの操舵角に応じた第1操舵反力と前記ステアリングホイールの操舵角加速度に応じた第2操舵反力とを加算した操舵反力を前記反力アクチュエータに発生させる制御信号を、前記駆動回路へ出力するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、運転者による前記ステアリングホイールの緊急操舵操作が行われる可能性を判定し、前記緊急操舵操作が行われる可能性があると判定した場合には、前記緊急操舵操作が行われる可能性があると判定しない場合に比べて前記第2操舵反力を小さくする、ことを特徴とする操舵制御装置。
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