JP7236285B2 - テトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、テトラアセチルエチレンジアミンは水への溶解速度が低いため、その利用が限定されているのが現状である。
また、特許文献2には、テトラアセチルエチレンジアミンを含む無水酢酸液を冷却してテトラアセチルエチレンジアミンを晶出させる方法、特許文献3には、粗テトラアセチルエチレンジアミンを含む母液から11p/hの速さで25℃まで冷却して微細なテトラアセチルエチレンジアミンを晶出させる方法が記載されている。
従って、本発明の課題は、水への溶解速度が高いテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法を提供することにある。
本発明のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法は、テトラアセチルエチレンジアミン、並びにアニオン性高分子及び非イオン性高分子から選ばれる少なくとも1種の高分子を含む溶液から、テトラアセチルエチレンジアミンの結晶を析出する工程を含むものである。
アニオン性高分子及び非イオン性高分子から選ばれる少なくとも1種の高分子は、テトラアセチルエチレンジアミン結晶の析出時に存在していればよい。テトラアセチルエチレンジアミンを含む溶液に前記高分子を添加するタイミングは特に制限されない。
以下、本明細書において、テトラアセチルエチレンジアミンはTAEDとも云う。
TAEDは、例えば、無水酢酸を用いてジアセチルエチレンジアミンをアセチル化する方法(特公昭54-4927号公報等を参照)により得ることができる。本発明の結晶化にあたっては、TAEDを合成後、例えば、結晶として取り出さないままのもの、一旦結晶として取り出したものを使用できる。
TAEDを溶解させる溶媒は、TAEDを溶解させることができれば特に制限されず、例えば、水、無水酢酸等が使用される。
TAEDの溶解温度は、TAEDを完全に溶解させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、また、TAEDの安定性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。TAEDの溶解温度での保持時間は、TAEDを完全に溶解させる観点から、好ましくは1時間以上であり、また、TAEDの安定性の観点から、好ましくは4時間以下である。
TAEDを含む溶液中のTAEDの含有量は、TAEDの飽和溶解度以下であるが、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、また、スラリーの流動性等の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
本発明で用いるアニオン性高分子及び非イオン性高分子から選ばれる少なくとも1種の高分子は、TAEDを含む溶液に溶解することが好ましい。斯かる高分子は、塩の状態で用いてもよい。
本発明で用いるアニオン性高分子としては、アニオン性基、例えば、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基等を有するポリマーが挙げられる。具体的には、天然高分子として、キサンタンガムやアラビアガム、アルギン酸、ポリグルタミン酸又はそれらの塩が挙げられる。合成高分子として、(メタ)アクリル酸やマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸等のモノマーから構成される重合体又は共重合体とそれらの塩が挙げられる。また、カルボキシメチルセルロース又はカルボキシエチルセルロースといった、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシビニルポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、炭素数1~22のアルキル又はアルケニルアンモニウム塩、炭素数1~22のアルキル又はアルケニル置換ピリジニウム塩、炭素数1~22のアルカノールアンモニウム塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
アニオン性高分子は、溶解速度の高いTAEDを結晶化させる観点から、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸、ポリグルタミン酸、カルボキシアルキルセルロース又はそれらの塩であり、より好ましくはポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、又はポリグルタミン酸であり、より好ましくはポリアクリル酸又はその塩である。
非イオン性高分子は、溶解速度の高いTAEDを結晶化させる観点から、好ましくはビニル基を有するモノマー(アクリル酸を除く、以下同じ)を重合させたビニル系高分子やヒドロキシアルキルセルロースであり、より好ましくはポリビニルアルコールやヒドロキシエチルセルロースである。
高分子の重量平均分子量は、溶解速度の高いTAEDを結晶化させる観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは30,000以上であり、また、TAED結晶懸濁液のろ過性、ろ過後のケークの含水率の観点から、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは500,000以下である。
高分子の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
TAEDを含む溶液中の高分子の含有量は、溶解速度の高いTAEDを結晶化させる観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、工業的生産性、コスト、液粘度の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
本発明において、TAEDを含む溶液中のTAEDの含有量に対する高分子の含有量の質量比〔高分子の含有量/TAEDの含有量〕は、溶解速度の高いTAEDを結晶化させる観点から、好ましくは1×10-4以上、より好ましくは1×10-3以上、更に好ましくは1×10-2以上であり、また、晶析液の粘度の観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下である。
TAED結晶の析出は、撹拌翼を有する反応槽を用いて、撹拌しながら行うことが好ましい。撹拌翼は、いずれの形状でもかまわないが、特に結晶の混合を良好にするため、パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、アンカー翼、大翼径パドル翼、マックスブレンド翼であることが好ましい。
撹拌の周速は、溶解速度の高いTAEDを均一に晶析させる観点から、好ましくは0.2m/s以上、より好ましくは0.3m/s以上、更に好ましくは0.5m/s以上であり、また、TAED結晶の破砕を抑制する観点から、好ましくは10m/s以下、より好ましくは5m/s以下、更に好ましくは3m/s以下である。
TAED結晶を析出させる方法は、特に制限されず、冷却による析出方法、濃縮による析出方法、反応による析出方法等の操作により行うことができる。これらの析出方法は単独で実施してもよいし、複数の方法を組み合わせて実施してもよい。高い溶解速度のTAED結晶を生成する観点から、好ましくは冷却による析出方法である。
冷却による析出方法は、TAEDを含む溶液を高温から低温に冷却することで、TAED濃度を溶解度以上に高めることによりTAEDを晶析することができる。
冷却前のTAEDを含む溶液の好ましい温度は、TAEDの溶解温度と同じである。
冷却温度は、TAEDの回収率の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下であり、また、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上である。
濃縮による析出方法は、TAEDを含む溶液の溶媒(例えば、水)を蒸発させ、濃縮することで、TAED濃度を溶解度以上に高めることにより、TAEDを晶析することができる。
蒸発時の温度は、特に限定されないが、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下であり、また、好ましくは5℃以上である。
なお、減圧下で蒸発を行ってもよい。
反応による析出方法は、ジアセチルエチレンジアミンと無水酢酸を反応させてTAEDを生成させることで、TAEDを晶析することができる。
斯かる析出方法において、ジアセチルエチレンジアミンと無水酢酸の反応によりTAED濃度を溶解度以上に高めることでTAED結晶を晶析することができる。
ジアセチルエチレンジアミンと無水酢酸の反応は常法に従って行うことができる。反応時の温度は、特に限定されないが、反応速度の観点から、好ましくは50℃以上であり、また、溶媒の沸点の観点から、好ましくは100℃以下である。反応時間は、収率の観点から、好ましくは1時間以上であり、また、サイクルタイムの観点から、好ましくは5時間以下である。
TAEDの結晶は、遠心分離、濾過、デカンテーション等の固液分離操作により分取することができる。TAED結晶は、必要に応じて洗浄を行ってもよい。その後、乾燥することによりTAED結晶を得ることができる。
乾燥は、棚段乾燥機、コニカルドライヤー、パドルドライヤー、ナウターミキサー、流動層乾燥機、真空撹拌乾燥機、ディスクドライヤー等の通常の乾燥機を使用することができる。TAED結晶構造を維持するために高いせん断をかけない乾燥方法であることが好ましい。
乾燥温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。なお、減圧乾燥を行ってもよい。
乾燥後のTAED結晶は必要に応じて、篩を通す等の処理を行ってもよい。
かくして水への溶解速度が高いTAED結晶が得られる。従って、本発明のTAED結晶は、水中で過酸化水素と反応して過酢酸を効率よく生成するため、過炭酸ナトリウム等の漂白剤の効果を高める漂白活性化剤等として好適である。
・N,N,N’,N’-Tetraacetylethylenediamine:Alfa Aesar社製
[アニオン性高分子]
・ポリアクリル酸(PAA、重量平均分子量1,000,000、富士フィルム和光純薬(株)製)
・ポリアクリル酸(PAA、重量平均分子量250,000、富士フィルム和光純薬(株)製)
・ポリアクリル酸(PAA、重量平均分子量25,000、富士フィルム和光純薬(株)製)
・ポリアクリル酸(PAA、重量平均分子量5,000、富士フィルム和光純薬(株)製)
[ノニオン性高分子]
・ポリビニルアルコール(PVA、重量平均分子量100,000、MP Biomedical社製)
1Lビーカーに5℃の水道水1Lを入れ、マグネチックスターラー上で撹拌子(長さ3.5cm、幅0.7cm)を使用して900r/minの速さで撹拌しているところに0.2gのTAED結晶を入れた。TAED結晶を投入して2分が経過した液をステンレスメッシュ200(細川金網、SUS-316)の篩に注ぎ、メッシュ上に残った固形分を回収した。回収した固形分を乾燥させ、その重量と投入したTAED結晶の重量との差から次式より溶解率(%)を算出した。
溶解率(%)=〔(投入したTAED結晶(0.2g)-メッシュ上に残った固形分の乾燥重量(g))/投入したTAED結晶(0.2g)〕×100
過炭酸ナトリウム(PC-NC、保土谷化学工業(株)製)1gとTAED結晶0.2gを1Lの水道水(5℃)に投入し、マグネチックスターラー上で撹拌子(長さ3.5cm、幅0.7cm)を使用して900r/minで2分間撹拌し、サンプル液とした。
以下の操作は、ヨードメトリー法に準じて行なった。サンプル液10mLに、1.5%カタラーゼ(ウシ肝臓由来、富士フィルム和光純薬(株)製)を1mL添加し、系中の過酸化水素を分解した。そこに20%硫酸10mL、10%ヨウ化カリウム水溶液10mLを添加した後、1/100Nチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて、無色になるまで滴定した。過酢酸生成量は下記の式から算出した。
過酢酸生成量(mM)
={1/100(N)×(チオ硫酸ナトリウム水溶液滴定量; mL)÷1000÷2}÷(10÷1000)×1000
500mLの三角フラスコにイオン交換水200g、TAED6.0gを混合した後、40分かけて85℃まで加熱し、85℃で120分間保持することで、TAEDを完全に溶解させた。TAEDが完全に溶解したことを確認した後、振とう機を使用し、150r/minで振とうさせながら0.9℃/min(85℃から30℃までの平均)の冷却速度で室温30℃まで冷却した。得られたスラリーは吸引濾過を行った後、60℃で一晩乾燥させることでTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、26.3%であった。
500mLの三角フラスコにイオン交換水200g、TAED6.0g、ポリアクリル酸(分子量5,000)0.24gを混合した後、40分かけて85℃まで加熱し、85℃で120分間保持することで、TAEDを完全に溶解させた。TAEDが完全に溶解したのを確認した後、振とう機を使用し、150r/minで振とうさせながら0.9℃/min(85℃から30℃までの平均)の冷却速度で30℃まで冷却した。得られたスラリーは吸引濾過を行った後、60℃で一晩乾燥させることでTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、55.0%であった。
ポリアクリル酸(分子量5,000)をポリアクリル酸(分子量25,000)に変えた以外は実施例1と同様にしてTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、42.5%であった。
ポリアクリル酸(分子量5,000)をポリアクリル酸(分子量250,000)に変えた以外は実施例1と同様にしてTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、95.8%であった。
ポリアクリル酸(分子量5,000)をポリアクリル酸(分子量1,000,000)に変えた以外は実施例1と同様にしてTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、50.5%であった。
ポリアクリル酸(分子量5,000)の添加量を0.24gから0.12gに変えた以外は実施例1と同様にしてTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、40.0%であった。
ポリアクリル酸(分子量5,000)の添加量を0.24gから0.48gに変えた以外は実施例1と同様にしてTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、39.0%であった。
ポリアクリル酸(分子量5,000)をポリビニルアルコール(分子量100,000)に変えた以外は実施例1と同様にしてTAED結晶を得た。
得られたTAED結晶の溶解率を測定したところ、31.0%であった。
Claims (9)
- テトラアセチルエチレンジアミン、並びに(メタ)アクリル酸を構成モノマーとする重合体、共重合体又はそれらの塩、及びビニル基を有するモノマー(アクリル酸を除く)を重合させたビニル系高分子から選ばれる少なくとも1種の高分子を含む溶液から、テトラアセチルエチレンジアミンの結晶を析出する工程を含む、テトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 前記高分子の重量平均分子量が、3,000以上2,000,000以下である請求項1記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 前記テトラアセチルエチレンジアミンを含む溶液中の高分子の含有量が、0.001質量%以上5質量%以下である請求項1又は2記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 前記テトラアセチルエチレンジアミンを含む溶液中のテトラアセチルエチレンジアミンの含有量に対する高分子の含有量の質量比が、1×10-4以上0.5以下である請求項1~3のいずれか1項記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 前記(メタ)アクリル酸を構成モノマーとする重合体、共重合体又はそれらの塩がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩である請求項1~4のいずれか1項記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 前記ビニル基を有するモノマー(アクリル酸を除く)を重合させたビニル系高分子がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリビニルメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 結晶を析出する工程が、冷却による析出、濃縮による析出、及び反応による析出から選ばれる1以上の方法である請求項1~6のいずれか1項記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 冷却による析出時の冷却速度が、0.01℃/min以上10℃/min以下である請求項7記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
- 前記テトラアセチルエチレンジアミンを含む溶液の溶媒が水又は無水酢酸である請求項1~8のいずれか1項記載のテトラアセチルエチレンジアミン結晶の製造方法。
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