JP4222787B2 - アミノポリカルボン酸類の安定化方法及びアミノポリカルボン酸類水溶液組成物 - Google Patents
アミノポリカルボン酸類の安定化方法及びアミノポリカルボン酸類水溶液組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミノポリカルボン酸類の安定化方法及びアミノポリカルボン酸類水溶液組成物に関する。詳しくは、アミノポリカルボン酸類を、長期にわたり安定かつ均一な水溶液として取り扱うことができる方法、及び、安定化されたアミノポリカルボン酸類水溶液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
N−2−カルボキシエチル−アスパラギン酸等のアミノポリカルボン酸の塩(アミノポリカルボン酸類)は、金属イオンを封鎖するキレート能が高いことから、有害金属の除去、有価金属の濃縮回収、金属の分離精製等に用いる金属キレート剤として活用することができる可能性がある。
【0003】
しかしながら、アミノポリカルボン酸類は、粉末又は粒状の固体状態で取り扱うと、空気中の水分を吸収して粘着性の塊状物となってしまうことから、金属キレート剤等として用いる場合に、このような不具合が生じないようにするための工夫の余地があった。また、純度が低いアミノポリカルボン酸類については、水溶液中で析出しやすく、製品濃度を低くせざるをえないという問題点があった。すなわちアミノポリカルボン酸類を安定的に取り扱うことができれば、例えば、洗剤用ビルダー、石鹸添加剤、繊維・染色用薬剤、めっき工業用薬剤、漂白剤助剤や、写真用処理剤の調製に用いる写真用薬剤(写真用キレート剤)等へアミノポリカルボン酸類を工業的に適応することが可能となることから、アミノポリカルボン酸類の安定化方法について工夫する余地があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、アミノポリカルボン酸類が塊状物とならないようにしたうえで安定化する方法、及び、安定化されたアミノポリカルボン酸水溶液組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、アミノポリカルボン酸類が塊状物とならないようにしたうえで安定化する方法について検討するうち、水溶液の形態にするとよいことに着目した。この場合に、(1)アミノポリカルボン酸類を高い濃度及び低い温度で取り扱うのが経済的であるが、このような高濃度、低温度の条件下ではアミノポリカルボン酸類結晶が析出し、特に時間の経過とともに析出が著しくなり、場合によっては、水溶液自体が完全に固化してしまうこと、(2)不純物量が多い場合、すなわち製品の純度が低い場合には析出が起こりやすいこと、(3)結晶の析出がなくても、水溶液の粘度が10Pa・sを超えると取り扱いが著しく困難となり、各種の用途に適応しにくくなること、(4)アミノポリカルボン酸類の水溶液を加熱濃縮してその濃度を所望の濃度まで高めようとすると、アミノポリカルボン酸類の水溶液が着色して製品としての価値が損なわれるうえに、アミノポリカルボン酸類が析出するという問題があることが分かった。
【0006】
そして、アミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分におけるD体とL体との割合において、等量とはならないように特定すると、等量混合物(ラセミ体)と比較して水溶液中の安定性が向上することを見いだし、また、アミノポリカルボン酸類の水溶液中の含有量を特定すると、D体とL体との割合を特定することによる作用効果と相まって、長期にわたり結晶の析出、水溶液の固化等もない、安定かつ均一なアミノカルボン酸塩の水溶液とすることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、水溶液中の固形分濃度や水溶液のpHを特定すると、このような作用効果を更に充分に発揮することができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Xは、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)で表されるアミノポリカルボン酸類を安定化する方法であって、上記アミノポリカルボン酸類の安定化方法は、上記アミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分におけるD体とL体とのモル比を1/0〜0.7/0.3又は0.3/0.7〜0/1とし、かつ、上記アミノポリカルボン酸類を、固形分濃度を25〜60質量%とし、更にpHが11以下に調製された水溶液とするアミノポリカルボン酸類の安定化方法である。
【0010】
本発明はまた、上記アミノポリカルボン酸類の安定化方法に用いられてなるアミノポリカルボン酸類水溶液組成物でもある。
以下に、本発明を詳述する。
【0011】
本発明のアミノポリカルボン酸類の安定化方法は、上記一般式(1)で表されるアミノポリカルボン酸類を安定化する方法であるが、このようなアミノポリカルボン酸類を含むものを安定かつ均一な水溶液とする場合に適用することができる。
本発明において、一般式(1)で表されるアミノポリカルボン酸類は、N−2−カルボキシエチル−アスパラギン酸及び/又はその塩であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
上記一般式(1)において、Xは、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。アルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好適であり、より好ましくは、ナトリウムである。
【0013】
本発明のアミノポリカルボン酸類の安定化方法は、上記アミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分におけるD体とL体とのモル比を1/0〜0.7/0.3、又は、0.3/0.7〜0/1とし、かつ、該アミノポリカルボン酸類の水溶液中の固形分濃度を25〜60質量%とし、更にpHが11以下に調製された水溶液とすることになる。なお、安定化方法とは、安定化する化合物が塊状物とならないように水溶液の形態としたときに、長期にわたり結晶の析出、水溶液の固化等の不具合が生じることが抑制され、十分に安定かつ均一な状態とすることを意味する。このような安定化方法は、例えば、タンクローリー等による輸送;タンク等での貯蔵;パイプ、バルブ、ノズル等を含めた配管での移送等をする場合に好適に適用することができる。水溶液組成物とは、アミノポリカルボン酸類の水溶液を必須とし、必要に応じてその他の成分を含んでなる組成物を意味する。
【0014】
本発明において、上記一般式(1)で表される該アミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分とは、一般式(1)中の下記一般式(2);
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、Xは、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)で表される構造を意味する。
また、アスパラギン酸骨格部分におけるL体、D体とは、一般式(2)で表される構造中の不斉炭素原子における立体配置がS配置、R配置である化合物であり、S配置の場合はL体、R配置の場合はD体となる。
【0017】
上記アミノポリカルボン酸類水溶液組成物において、アミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分におけるD体とL体との割合が上記範囲外であると、このような組成のアミノポリカルボン酸類を水溶液組成物として取り扱う場合、短時間で結晶が析出し、不均一なスラリー状態となってしまい、水溶液組成物を均一なスラリーとして取り扱うためには撹拌、ポンプによる強制循環等の特別な混合操作が必要となるだけではなく、ポンプ等による移送時の詰まり等のトラブルの原因となる。アスパラギン酸骨格部分における異性体割合としては、D体/L体(モル比)が、1/0〜0.7/0.3、又は、0.3/0.7〜0/1であるが、好ましくは、1/0〜0.8/0.2、又は、0/1〜0.2/0.8である。
【0018】
本発明のアミノポリカルボン酸類の安定化方法において、上記アミノポリカルボン酸類の水溶液の固形分濃度が25質量%未満であると、安定な水溶液として取り扱うことができるが、希薄水溶液であるため貯蔵及び輸送の設備が大型なものになってしまい不経済である。また、60質量%を超えると、水溶液組成物から結晶が析出して取り扱いが困難となる。上記濃度範囲では、アミノポリカルボン酸のナトリウム塩の場合も安定した水溶液組成物として取り扱うことができる。より好ましくは、35質量%以上であり、また、55質量%以下であり、更に好ましくは、40質量%以上であり、また、50質量%以下である。なお、固形分濃度における固形分とは、アミノポリカルボン酸類だけでなく、後述する不純物や不純物の塩も含むものである。
【0019】
本発明のアミノポリカルボン酸類の安定化方法において、アミノポリカルボン酸類の水溶液のpHが11を超えると、貯蔵時の水溶液の着色やアミノポリカルボン酸類の分解が進行して製品品質が劣化することになる。また、水溶液のpHを4以上とすることが好ましい。pH4未満であると、アミノポリカルボン酸類の分解が起こりやすくなり、また、水溶液に析出が生じ、均一な水溶液として取り扱うことができなくなるおそれがある。また、pHを10.5以下とすることが好ましく、また、pH4.5以上とすることが好ましい。より好ましくは、pH10以下とすることであり、また、pH6以上とすることである。
【0020】
本発明において安定化されるアミノポリカルボン酸類の純度は、下記式で表される。
純度(質量%)=アミノポリカルボン酸類濃度/固形分濃度×100
本発明の安定化方法により、高純度品はもちろん、従来はアミノポリカルボン酸類結晶が析出していた不純物を多く含むアミノポリカルボン酸類も安定化されることになる。
本発明の安定化方法における安定化の効果は、アミノポリカルボン酸類の純度95質量%以下から大きくなる。また、本発明の安定化方法を好適に適用することができるアミノポリカルボン酸類の純度の下限としては、60質量%以上である。すなわち本発明の安定化方法は、このような純度のアミノポリカルボン酸類を安定かつ均一な水溶液とする場合に好適に適用することができ、本発明の作用効果を充分に発揮することができることになる。また、純度が90質量%以下では、更に効果が大きくなり、80質量%以下ではより大きな効果を発揮することになる。
【0021】
上記不純物としては、未反応のアスパラギン酸、アクリル酸の重合物、フマル酸等が挙げられる。中でも、フマル酸、アスパラギン酸は水に対する溶解度が低く、析出の原因となりやすい。アクリル酸の重合物も水溶液から分離する等、液の均一性を損ないやすい。このような析出しやすい不純物が含まれていても、本発明によれば、析出のない水溶液として安定化させることができる。
アクリル酸の重合物は、水溶液全体に対して1質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5質量%以下である。
【0022】
本発明におけるアミノポリカルボン酸類水溶液組成物の調製方法としては、(I)アスパラギン酸及び/又はその塩と、アクリル酸化合物とを含む原料を水性媒体中で反応させる方法、(II)アスパラギン酸にアルカリ条件下でアクリロニトリルを付加し、その反応生成物にアルカリ金属水酸化物を添加して加水分解する方法等が好適であり、これにより、一般式(1)で表されるアミノポリカルボン酸類を含む水溶液組成物を得ることができる。これらの中でも、工程数を増やすことなく、任意のpHのアミノポリカルボン酸類水溶液組成物を得られることから(I)の方法が好適である。
【0023】
上記(I)の調製方法において、アクリル酸化合物としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸ナトリウムが好適であり、アスパラギン酸及び/又はその塩と、アクリル酸化合物とは、それぞれ1種又は2種以上用いることができる。原料におけるアスパラギン酸及び/又はその塩と、アクリル酸化合物との比率や、反応温度等の反応条件としては特に限定されるものではない。水性媒体とは、水又は水と水に溶解する溶媒との混合物であり、水;水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル等との混合溶媒が好適であるが、これらの中でも、水を用いることが好ましい。
なお、上記反応において、例えば、D体のアスパラギン酸及び/又はその塩を原料として用いると、これに由来する立体配置が生成するアミノポリカルボン酸類の構造式中のアスパラギン酸骨格部分の不斉炭素原子にR配置として保持されることになり、アスパラギン酸骨格部分における異性体がD体であるアミノポリカルボン酸類が生成することになる。このようなアミノポリカルボン酸類は、アスパラギン酸のカルボン酸の一部又は全部を中和した反応液に、アクリル酸化合物を添加し反応させることで、アミノポリアスパラギン酸を含む水溶液を得る方法で調製可能である。アクリル酸化合物を添加する際には、アスパラギン酸のカルボン酸の中和率は60〜100%とし、アスパラギン酸に対するアクリル酸化合物の添加モル比は0.8〜1.2とすることが好ましい。また、アクリル酸化合物を添加する際には、反応液の温度を50℃以上かつ、アクリル酸化合物の該反応液中の濃度が10質量%以下になるように調整する。更に、反応中又は反応後に反応液のpHを11以下となるように調整することで、析出が起らない、安定なアミノポリカルボン酸類の水溶液を得ることが可能である。
【0024】
上記(II)の調製方法においても、D体のアスパラギン酸を原料として用いると、アスパラギン酸骨格部分における異性体がD体であるアミノポリカルボン酸類が生成することになる。
【0025】
上記(I)及び(II)の調製方法において、上記アミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分における異性体割合を上記の範囲に調整する方法としては、一般式(1)で表されるアミノポリカルボン酸類を製造する際に、D体とL体の比率が特定範囲にあるアスパラギン酸及び/又はその塩を含む原料を用いて反応を行う方法、D体のアミノポリカルボン酸類とL体のアミノポリカルボン酸類とを別々に合成し、これらを特定比率で混合する方法が好適である。また、アミノポリカルボン酸類を含有する水溶液のpHを上記の範囲とする方法としては、水溶液のpHが上記範囲となるアスパラギン酸やアクリル酸化合物を含む原料を用いてもよいし、反応前及び/又は反応後に塩基性化合物を用いて調整してもよい。塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物や炭酸塩、アンモニウム基を有する化合物が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる、これらの中でも、ナトリウムの水酸化物を用いることが好ましい。
【0026】
上記アミノポリカルボン酸類水溶液は、上記のようにアスパラギン酸とアクリル酸化合物とを反応させて得られるが、反応中における結晶の析出等を防止するために、反応終了後の反応溶液、すなわち生成アミノポリカルボン酸類の水溶液中のアミノポリカルボン酸類の濃度が30質量%より低くなるような濃度の原料を用いて反応を行うこともできる。この場合、アミノポリカルボン酸類水溶液を加熱濃縮して、固形分濃度が25〜60質量%であり、更にpHが11以下に調製された水溶液とする必要があるが、この加熱濃縮は減圧下に30〜90℃の温度及び水溶液のpHが4〜11で行うのが好ましい。90℃を超える温度ではアミノポリカルボン酸類の一部が分解して着色し、その製品価値が著しく損なわれるおそれがあり、30℃より低い温度での濃縮は、減圧度を高くする必要がある等の理由から工業的には望ましくない。また、濃縮する際に、pHが4未満であると、アミノポリカルボン酸類が分解しやすく、また、アミノポリカルボン酸類が析出しやすくなるおそれがある。pHが11を超えると、水溶液の着色やアミノポリカルボン酸類の分解が進行して製品品質が劣化するおそれがある。
【0027】
本発明において、アミノポリカルボン酸類水溶液組成物の取り扱い温度としては特に限定されず、任意の温度で取り扱うことができるが、本発明の安定化方法は、特に−10〜10℃又は30〜70℃の低温又は高温の過酷な温度条件においてアミノポリカルボン酸類水溶液組成物を取り扱う際、その作用効果が顕著に発揮される。このように、上記アミノポリカルボン酸類水溶液組成物を−10〜10℃又は30〜70℃の温度で取り扱うことは、本発明における好ましい実施形態の1つである。本発明の安定化方法によれば、10℃以下の低温でも上記のような高濃度のアミノポリカルボン酸類水溶液から結晶の析出や水溶液の固化がなく取り扱いが容易であり、また30℃以上の高温でも長期保存中にアミノポリカルボン酸類の分解や着色がなく取り扱いが容易となる。なお、取り扱い温度が−10℃より低くなると水溶液の流動性が極端に低下し移送や輸送が困難となることがあり、70℃を超えるとアミノポリカルボン酸類自体が分解してしまい、製品の純度低下の原因となることがある。
【0028】
本発明の最も好ましい実施形態の一つは、アスパラギン酸と、アクリル酸化合物とを反応させて得られるアミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分における異性体割合が、D体/L体(モル比)=1/0〜0.7/0.3、又は、D体/L体(モル比)=0/1〜0.3/0.7であるアミノポリカルボン酸水溶液組成物を温度30〜90℃の温度及び水溶液のpHが4〜11の条件下に加熱濃縮して、固形分濃度が25〜60質量%であり、更にpHが11以下である水溶液組成物を調製し、これを30〜70℃の温度で取り扱うことである。これにより、濃縮過程での着色が防止できるとともに、アミノポリカルボン酸類を結晶の析出及び固化のない安定かつ均一な水溶液として取り扱うことができる。
【0029】
本発明のアミノポリカルボン酸類の安定化方法によれば、アミノポリカルボン酸類を常に均一な水溶液として取り扱うことができるため、保温、撹拌等の特別な装置を必要とすることなく、貯蔵容器に蓄えることができる。また、反応槽、貯槽等から直接目的とする場所へ配管を経由して送液したり、タンクローリー、タンク貨車、コンテナ、ドラム缶等に充填して輸送したりすることができる。貯蔵又は輸送の際、気相部の条件としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス、空気等を用いることが好適である。
【0030】
本発明において、アミノポリカルボン酸類水溶液組成物を取り扱う際の、例えばタンクに貯蔵する場合のタンクの構成材料としては炭素鋼、ステンレススチール鋼、ハステロイ鋼、チタン合金鋼、ニッケル鋼等が好適であるが、アミノポリカルボン酸類水溶液が接触する部分をグラスライニング、テフロン(R)等による樹脂ライニング、ゴムライニング等としてもよい。特に、ステンレススチール鋼が好適に用いられる。
【0031】
本発明においては、アミノポリカルボン酸類を上述したような水溶液組成物とすることにより、アミノカルボン酸類を安定化された水溶液として、すなわちアミノポリカルボン酸類の結晶や不純物の析出やまたこれらに起因する水溶液の固化や分離がない、長期間安定で均一な水溶液として取り扱うことが可能となる。しかも、このアミノポリカルボン酸類水溶液の粘度は10Pa・s以下であって取り扱いが容易である。このようなアミノポリカルボン酸類水溶液組成物、すなわち上記アミノポリカルボン酸類の安定化方法に用いられてなるアミノポリカルボン酸類水溶液組成物もまた、本発明の1つである。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「重量部」を、「%」は、「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0033】
各成分の分析及び測定には以下の装置を用いた。
アミノポリカルボン酸類、アクリル酸重合物以外の不純物:
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、検出器;示差屈折率計、紫外可視検出器
アクリル酸重合物:GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)、カラム;SHODEX Asahipak GF−7M HQ(商品名、昭和電工社製)
pH:pH METAR F−22(商品名、堀場製作所社製)、ガラス複合電極;6366−10D
【0034】
実施例1
水2.7kgと48%NaOH水溶液4.75kgの混合物に、L−アスパラギン酸4.56kgを溶解した。この液を還流温度下で攪拌しながら、80%アクリル酸水溶液3.06kgを2時間かけて滴下した。滴下終了後も還流温度で攪拌を6時間続けた。その後、水3.2kg、48%NaOH水溶液1.69kgを加え40℃以下に冷却した。
この液はN−(2−カルボキシエチル)−L−アスパラギン酸・3Naを35質量%含み、その他不純物を8.8質量%含んでいた。また、この液の25℃におけるpHの値は9.7であった。
【0035】
実施例2
L−アスパラギン酸の代わりにD−アスパラギン酸を用いた以外は、実施例1と同様に操作しN−(2−カルボキシエチル)−D−アスパラギン酸・3Naを35質量%、その他不純物を8.8質量%含む水溶液を得た。この液の25℃におけるpHは9.7であった。
【0036】
実施例3
水2.7kgと48%NaOH水溶液4.75kgの混合物に、L−アスパラギン酸4.56kgを溶解した。この液を還流温度下で攪拌しながら、80%アクリル酸水溶液3.06kgを2時間かけて滴下した。滴下終了後も還流温度で攪拌を6時間続けた。その後、水3.2kgを加え40℃以下に冷却した。
この液はN−(2−カルボキシエチル)−L−アスパラギン酸・3Naを38.2質量%含み、その他不純物を9.5質量%含んでいた。また、この液の25℃におけるpHの値は5.2であった。
【0037】
実施例4
L−アスパラギン酸の代わりにD−アスパラギン酸を用いた以外は、実施例3と同様に操作しN−(2−カルボキシエチル)−D−アスパラギン酸・3Naを38.3質量%、その他不純物を9.6質量%含む水溶液を得た。この液の25℃におけるpHは5.1であった。
【0038】
比較例1
水4000gと48%NaOH水溶液766gの混合物に、L−アスパラギン酸612gを溶解した。この液にアクリロニトリル260gを30℃で攪拌しながら、1時間かけて滴下し、滴下終了30℃で7時間攪拌を続けた。その後、48%NaOH水溶液437gを加え108℃に加熱してアンモニア水2440gを系外に留出させた。
この液はN−(2−カルボキシエチル)−L−アスパラギン酸・3Naを33質量%含み、その他不純物を3.7質量%含んでいた。また、この液の25℃におけるpHは13.2であった。
【0039】
比較例2
冷却しながら水2.7kgと48%NaOH水溶液4.75kgを混合し、更にL−アスパラギン酸4.56kgを溶解した。この液の温度は30℃であった。この液を攪拌しながら80%アクリル酸水溶液3.06kgを一括投入した後、還流温度まで昇温し攪拌を8時間続けた。その後、水3.2kg、48%NaOH水溶液1.69kgを加え40℃以下に冷却した。この液はN−(2−カルボキシエチル)−L−アスパラギン酸・3Naを35質量%含み、その他不純物を8.5質量%含んでいた。また不純物のうち2質量%は分子量約40万の高分子であった。また、この液の25℃におけるpHは10であった。
【0040】
合成例1
比較例1と同様にして得た水溶液を攪拌しながら、98%硫酸1000gをゆっくりと加え、更に80℃で1時間攪拌した。室温まで冷却後、ろ過により得た白色の結晶を水洗、乾燥し855gのN−(2−カルボキシエチル)−L−アスパラギン酸を得た。
【0041】
合成例2
L−アスパラギン酸の代わりにD−アスパラギン酸を用いた以外は、比較例1と同様に操作し、N−(2−カルボキシエチル)−D−アスパラギン酸・3Naを33質量%含み、その他不純物を3.6質量%含んだ水溶液を得た。この液の25℃におけるpHは13.1であった。
【0042】
合成例3
比較例2と同様にして得た水溶液を攪拌しながら、98%硫酸1000gをゆっくりと加え、更に80℃で1時間攪拌した。室温まで冷却後、ろ過により得た白色の結晶を水洗、乾燥し850gのN−(2−カルボキシエチル)−D−アスパラギン酸を得た。
【0043】
実施例及び合成例で合成したサンプルを任意の割合で混合し、また、必要に応じてNaOHを加えることによって得た水溶液を用いて、保存安定性試験を行った結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
比較例で合成したサンプルを用いて、保存安定性試験を行った結果を表2に示す。また、合成例で合成したサンプルを適宜及び/又は濃縮して得たサンプルを用いて保存安定性試験を行った結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明のアミノポリカルボン酸類の安定化方法は、上述の構成からなり、アミノカルボン酸塩を、長期にわたり結晶の析出、水溶液の固化等もない、安定かつ均一な水溶液として取り扱うことができる。
Claims (3)
- 下記一般式(1);
該アミノポリカルボン酸類の安定化方法は、該アミノポリカルボン酸類のアスパラギン酸骨格部分におけるD体とL体とのモル比を1/0〜0.7/0.3又は0.3/0.7〜0/1とし、かつ、
該アミノポリカルボン酸類を、固形分濃度を25〜60質量%とし、更にpHが11以下、アクリル酸の重合物が水溶液全体に対して1質量%以下に調製された水溶液とする方法であり、
該アミノポリカルボン酸類の水溶液は、アスパラギン酸のカルボン酸の一部又は全部を中和した反応液に、反応液の温度が50℃以上にて、アクリル酸化合物を滴下し反応させて得られるものである
ことを特徴とするアミノポリカルボン酸類の安定化方法。 - 前記アクリル酸化合物の添加は、アスパラギン酸のカルボン酸の中和率が60〜100%、アスパラギン酸に対するアクリル酸化合物の添加モル比が0.8〜1.2となるように行われる
ことを特徴とする請求項1に記載のアミノポリカルボン酸類の安定化方法。 - 下記一般式(1);
該アミノポリカルボン酸類は、アスパラギン酸骨格部分におけるD体とL体とのモル比が1/0〜0.7/0.3又は0.3/0.7〜0/1であり、
該アミノポリカルボン酸類水溶液の製造方法は、アスパラギン酸のカルボン酸の一部又は全部を中和した反応液に、反応液の温度が50℃以上にて、アクリル酸化合物を滴下し反応させることにより、固形分濃度が25〜60質量%、pHが11以下、かつアクリル酸の重合物が水溶液全体に対して1質量%以下に調製された水溶液を得る方法である
ことを特徴とするアミノポリカルボン酸類水溶液の製造方法。
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