図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70と、を備える。
エンジン22は、ガソリンとアルコールとの混合燃料を用いて動力を出力する内燃機関として構成されている。図2は、エンジン22の構成の概略を示す構成図である。エンジン22は、図示するように、エアクリーナ122によって清浄された空気を吸気管(吸気ポート)123に配置されたスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126から燃料を噴射して、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室(筒内)129に吸入する。そして、吸入した混合気を点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギによって押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。燃焼室129からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)を有する浄化装置134を介して外気に排出される。エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24によって運転制御されている。
エンジン22は、可変バルブタイミング機構150を備える。可変バルブタイミング機構150は、吸気カムの吸気カムシャフトに対する位相を変更することにより、吸気バルブ128の開閉タイミングVTinを作動角を維持した状態で変更する。
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw、スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度TH、燃焼室129へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブ131を開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション、吸気管(吸気ポート)123に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa、同じく吸気管(吸気ポート)123に取り付けられた温度センサ149からの吸気温、空燃比センサ135aからの空燃比AF、酸素センサ135bからの酸素信号、燃料タンク127に取り付けられたアルコール濃度センサ127aからのアルコール濃度Dalを挙げることができる。
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。各種制御信号としては、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ124bへの駆動制御信号や燃料噴射弁126への駆動制御信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への駆動制御信号、可変バルブタイミング機構150への制御信号を挙げることができる。
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されており、HVECU70からの制御信号によってエンジン22を運転制御する。また、エンジンECU24は、必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。エンジンECU24は、クランク角θcrに基づいて、クランクシャフト26の回転数、即ち、エンジン22の回転数Neを演算している。エンジンEUC24は、演算したエンジン22の回転数Neとエアフローメータ148からの吸入空気量Qaとに基づいて、負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算している。
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリアには、ねじれ要素としてのダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、電力ライン54を介してバッテリ50と接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2が入力ポートを介して入力されている。
モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の駆動状態に関するデータをHVECU70に出力する。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン54を介してインバータ41,42と接続されている。バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、電圧センサ51aからの電池電圧Vbや電流センサ51bからの電池電流Ib,温度センサ51cからの電池温度Tbが入力ポートを介して入力されている。また、バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vを挙げることができる。
HVECU70は、エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された第1実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド走行モード(HV走行モード),電動走行モード(EV走行モード)などの走行モードで走行する。HV走行モードは、エンジン22の運転とモータMG1,MG2の駆動とを伴って走行する走行モードである。EV走行モードは、エンジン22を運転停止すると共にモータMG2を駆動して走行する走行モードである。
HV走行モードでは、HVECU70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて、走行に要求される(駆動軸36に出力すべき)走行用トルクTd*を設定する。続いて、走行用トルクTd*に駆動軸36の回転数Npを乗じて、走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算する。ここで、駆動軸36の回転数Npとしては、モータMG2の回転数Nm2,車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数などを用いることができる。そして、走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じて、車両に要求される要求パワーPe*を計算する。次に、要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるように、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する。そして、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。
エンジンECU24は、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信すると、受信した目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいてエンジン22が運転されるように、エンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,開閉タイミング制御などを行なう。吸入空気量制御では、エンジン22の目標トルクTe*に基づいて目標空気量Qa*を設定し、吸入空気量Qaが目標空気量Qa*となるように目標スロットル開度TH*を設定し、スロットルバルブ124のスロットル開度THが目標スロットル開度TH*となるようにスロットルモータ124bを制御する。燃料噴射制御では、吸入空気量Qaに基づいて空燃比AFが目標空燃比AF*(例えば、理論空燃比)となるように目標燃料噴射量Qf*を設定し、燃料噴射弁126から目標燃料噴射量Qf*の燃料が噴射されるように燃料噴射弁126を制御する。点火制御では、エンジン22の回転数Neと負荷率KLとに基づいて目標点火タイミングTf*を設定し、目標点火タイミングTf*で点火が行なわれるように点火プラグ130を制御する。開閉タイミング制御では、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を効率よく運転するための吸気バルブ128の目標開閉タイミングVTin*を設定し、吸気バルブ128の開閉タイミングVTinを目標開閉タイミングVTin*となるように可変バルブタイミング機構150を制御する。図3は、吸気バルブ128の開閉タイミングVTinの一例を示す説明図である。図中、実線は、エンジン22から効率よく動力が出力される吸気バルブ128の開閉タイミングVTin(開タイミングVTino、閉タイミングVTinc)の一例を示している。一点鎖線は、排気バルブ128bの開閉タイミングVTex(開タイミングVTexo、閉タイミングVTexc)の一例を示している。開閉タイミングVTinは、閉タイミングVTincがエンジン22のピストン132が下死点BDCから上死点TDCへ向かう期間内のタイミングになるように調整されている。これにより、圧縮比よりも膨張比を大きくして熱効率を高めている。
モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このHV走行モードでは、要求パワーPe*が停止用閾値Pstop以下に至ったときなどに、エンジン22の停止条件が成立したと判断し、エンジン22の運転を停止して、EV走行モードに移行する。
EV走行モードでは、HVECU70は、まず、HV走行モードと同様に、走行用トルクTd*を設定する。続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する。そして、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるように、モータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このEV走行モードでの走行時には、HV走行モードでの走行時と同様に計算した要求パワーPe*が始動用閾値Pstart以上に至ったときなどエンジン22の始動条件が成立したときに、エンジン22を始動してHV走行モードでの走行に移行する。
HV走行モードで、アクセルオフのときには、燃料噴射を停止する燃料カット制御を実行する。燃料カット制御では、車速Vに基づいて走行用トルクTd*(基本的に負の値)を設定し、エンジン22の燃料カットとモータMG1によるエンジン22のモータリングとモータMG2の駆動とにより、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する。そして、エンジン22の燃料カット指令をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。エンジンECU24は、燃料カット指令を受信すると、スロットルバルブ124の開度が所定開度THfc(全閉または数%(例えば、1%、2%、3%など)の開度)となるようにスロットルモータ124bを制御してスロットルバルブ124のポジションを調整すると共に、エンジン22の燃料噴射制御(燃料噴射弁126からの燃料の噴射)や点火制御、開閉タイミング制御を停止する。エンジンECU24は、燃料カットの実行を開始すると、アクセルオンなど燃料噴射を開始する復帰条件が成立するまで、燃料カットが継続している時間(継続時間)tfcを計測する。モータECU40によるインバータ41,42の制御については上述した。
燃料カット制御中に、アクセルオンのときであることなどの復帰条件が成立したときには、HVECU70は、燃料噴射を開始する燃料復帰制御を実行する。燃料復帰制御では、モータMG1によるエンジン22のモータリングとモータMG2の駆動とにより、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する。トルク指令Tm1*は、エンジン22の回転数Neが復帰時回転数Nesとなるように設定される。復帰時回転数Nesについては後述する。そして、エンジン22の復帰指令をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。モータECU40によるインバータ41,42の制御については上述した。
エンジンECU24は、復帰指令を受信すると、エンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御、開閉タイミング制御などを再開する。吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御、開閉タイミング制御では、スロットル開度TH、燃料噴射量Qf、点火タイミング、吸気バルブ128の開閉タイミングVTinが、燃料噴射を開始する際にエンジン22を良好に燃焼させることができるスロットル開度TH、燃料噴射量Qf、点火タイミング、吸気バルブ128の開閉タイミングVTinとして予め定めた目標スロットル開度TH*、目標燃料噴射量Qf*、目標点火タイミングTf*、目標開閉タイミングVTin*となるようにスロットルモータ124b、燃料噴射弁126、点火プラグ130、可変バルブタイミング機構150を制御する。燃料噴射制御では、燃料噴射弁126から基本燃料噴射量Qfbに増量補正値Qfcを加えた燃料噴射量Qf(=Qfb+Qfc)の燃料が噴射されるよう燃料噴射弁126が制御される。基本燃料噴射量Qfbは、吸入空気量Qaに対して空燃比が理論空燃比となる燃料の噴射量である。増量補正値Qfcは、エンジン22が良好に爆発燃焼するよう定めた補正値である。増量補正値Qfcは、冷却水温Twとアルコール濃度Dalと燃料カットの継続時間tfcと復帰時回転数Nesとに基づいて設定される。燃料噴射制御では、燃料噴射を開始した後は、燃料噴射量Qfを基本燃料噴射量Qfbに増量補正値Qfcを加えた噴射量から基本燃料噴射量Qfbに向けて徐々に減少させ、HV走行モードでのエンジン22の燃料噴射制御へ移行する。
次に、こうして構成された第1実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、復帰時回転数Nesを設定する際の動作について説明する。図4は、HVECU70により実行される復帰時設定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、燃料カット制御中に復帰条件が成立したときに実行される。
本ルーチンが実行されると、HVECU70は、水温センサ142からの冷却水温Twやアルコール濃度センサ127aからのアルコール濃度Dal、燃料カットの継続時間tfcをエンジンECU24より通信を介して入力する処理を実行する(ステップS100)。
次に、冷却水温Twが所定温度Twref以下である第1条件と、アルコール濃度Dalが所定濃度Dalref以上である第2条件と、燃料カットの継続時間tfcが所定時間tfcref以上である第3条件と、の3つの条件が成立しているか否かを判定する(ステップS110)。所定温度Twrefは、燃料噴射弁126から吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化が不十分となる冷却水温であるか否かを判定する閾値であり、例えば、18℃、20℃、22℃などである。所定濃度Dalrefは、燃料噴射弁126から吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化が不十分となるアルコール濃度であるか否かを判定するための閾値であり、例えば、65%、70%、75%などである。所定時間tfcrefは、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化が不十分となる燃料カットの継続時間tfcの上限として予め定めた時間(例えば、55sec、60sec、65secなど)である。したがって、ステップS110は、燃料噴射弁126から吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化が十分であるか否かを判定する処理となっている。
ステップS110で第1~第3条件のうちの少なくとも1つが成立していないときには、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料が十分に霧化や気化していると判断して、基本回転数Nesb(例えば、900rpm、1000rpm、1100rpmなど)を復帰時回転数Nesに設定して(ステップS120)、本ルーチンを終了する。こうして復帰時回転数Nesを設定すると、上述の燃料復帰制御において、エンジン22の燃料噴射と設定した復帰時回転数NesでのモータMG1によるエンジン22のモータリングとモータMG2の駆動とにより、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信し、燃料復帰指令をエンジンECU24に送信する。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。エンジンECU24は、燃料復帰指令を受信すると、上述したように吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,開閉タイミング制御を実行する。
ステップS110で第1~第3条件の3つの条件の全てが成立しているときには、上述の基本回転数Nesbに嵩上げ量dNrefを加えたものを復帰時回転数Nesに設定して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。嵩上げ量dNrefは、冷却水温Twとアルコール濃度Dalと燃料カットの継続時間tfcとに基づいて正の値に設定する。したがって、ステップS130の復帰時回転数Nesは、ステップS120の復帰時回転数Nesより高く設定される。
図5は、冷却水温Twと嵩上げ量dNrefとの関係の一例を示す説明図である。図6は、アルコール濃度Dalと嵩上げ量dNrefとの関係の一例を示す説明図である。図7は、継続時間tfcと嵩上げ量dNrefとの関係の一例を示す説明図である。実施例では、嵩上げ量dNrefを、図5~図7に示すように、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくしている。冷却水温Twが低いときには、高いときに比してエンジン22や吸気管(吸気ポート)123の温度が低く、燃料の噴射を開始したときに吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。また、ガソリンとアルコールとの混合燃料では、アルコールがガソリンに比して沸点が高いことから、アルコール濃度Dalが高いときには、低いときに比して燃料中に沸点が低い成分が少なく、燃料の噴射を開始したときに吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。さらに、継続時間tfcが長いときには、短いときに比して吸気管(吸気ポート)123の内壁に燃料が付着しやすく、燃料の噴射を開始したときに吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。第1実施例では、これらを考慮して、嵩上げ量dNrefを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくすることにより、復帰時回転数Nesを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して高く、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して高く、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して高くしている。
こうして復帰時回転数Nesを設定すると、上述の燃料復帰制御において、エンジン22の燃料噴射と設定した復帰時回転数Nes(=Nesb+dNref)でのモータMG1によるエンジン22のモータリングとモータMG2の駆動とにより、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信し、燃料復帰指令をエンジンECU24に送信する。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。エンジンECU24は、燃料復帰指令を受信すると、上述したように吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,開閉タイミング制御を実行する。
こうした制御により、ステップS110で第1~第3条件の3つの条件の全てが成立しているときには、復帰時回転数Nesを、ステップS110で第1~第3条件の3つの条件のうちの少なくとも1つの条件が成立していないときにステップS120で設定される復帰時回転数Nesに比して高く設定するから、燃料の噴射を開始する際のエンジン22の回転数Neをより高くして、吸気管(吸気ポート)123の負圧をより大きくする。これにより、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進することができ、燃料の噴射を開始する際のエンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。また、復帰時回転数Nesを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して高く、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して高く、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して高くするから、吸気管123内の負圧を、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくして、より適正に吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進する。これにより、より適正にエンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。
以上説明した第1実施例の本発明の駆動装置では、燃料カットの実行中に復帰条件が成立している場合において、冷却水温Twが所定温度Twref以下である第1条件と、燃料のアルコール濃度Dalが所定濃度Dalref以上である第2条件と、燃料カットの継続時間tfcが所定時間tfcref以上である第3条件と、の3つの条件が成立しているときには、3つの条件のうちの少なくとも1つの条件が成立していないときに比して復帰時回転数Nesを高くすることにより、燃焼安定性を向上させることができる。
また、復帰時回転数Nesを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して高く、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して高く、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して高くすることにより、より適正に燃焼安定性を向上させることができる。
第1実施例の駆動装置では、ステップS120、S130で基本回転数Nesbを、一定回転数(例えば、900rpm、1000rpm、1100rpmなど)にしている。しかしながら、基本回転数Nesbを、冷却水温Twに応じて変化させてもよい。この場合、例えば、冷却水温Twが低いときには高いときに比して高くなるように設定することにより、低温時で燃焼性の悪化が想定される環境下において、燃焼安定性の向上を図ることができる。
第1実施例の駆動装置では、ステップS110で第1~第3条件が成立したときには、エンジン22では上述した復帰条件が成立したときの吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,開閉タイミング制御を実行し、その後HV走行モードへ移行する。しかしながら、ステップS110で第1~第3条件が成立したときには、HV走行モードへ移行する前に、吸入空気量制御については、HV走行モードと同一の処理で設定されるスロットル開度THより小さく全閉または若干の開度(例えば、2%、3%、4%など)となるように目標スロットル開度TH*を設定してスロットル開度THをより小さくした状態で燃料噴射を実行し、初爆が完了した後は所定時間tref(例えば、1.0sec、1.5sec、2.0secなど)に亘りスロットル開度THをより小さくしてもよい。こうすれば、燃料の噴射を開始した時および初爆が完了した後の所定時間trefに亘り吸気管(吸気ポート)123の負圧を大きくすることができ、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化をさらに促進させることができる。
次に、本発明の第2実施例の駆動装置を搭載したハイブリッド自動車220について説明する。第2実施例のハイブリッド自動車220は、図1に例示する第1実施例のハイブリッド自動車20と同一のハード構成をしている。したがって、重複する説明を回避するため、図1のハイブリッド自動車20をハイブリッド自動車220と読み替えることにより第2実施例のハイブリッド自動車220のハード構成についての説明は省略する。
第2実施例のハイブリッド自動車220では、燃料カット制御中に、復帰条件が成立したときには、HVECU70は、燃料噴射を開始する燃料復帰制御を実行する。燃料復帰制御では、エンジンECU24に後述する吸入空気量制御の実行開始を指示すると共に、モータMG1によるエンジン22のモータリングとモータMG2の駆動とにより、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する。トルク指令Tm1*は、エンジン22の回転数Neが基本回転数Nesb(例えば、900rpm、1000rpm、1100rpmなど)に設定された復帰時回転数Nesとなるように設定される。そして、エンジン22の復帰指令をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。エンジンECU24は、復帰指令を受信すると、上述した第1実施例のハイブリッド自動車20における復帰指令の受信時のエンジン22の燃料噴射制御,点火制御,開閉タイミング制御を実行して、エンジン22における燃料噴射を開始する。
次に、エンジン22における吸入空気量制御について説明する。図8は、第2実施例のハイブリッド自動車220のエンジンECU24により実行される吸入空気量制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、HVECU70から吸入空気量制御の実行開始の指示を受信したときに実行される。なお、図8の吸入空気量制御ルーチンのステップS200,S210は、図4の復帰時駆動制御ルーチンのステップS100、S110と同一である。このため、図8のステップS200,S210についての説明は省略する。
ステップS210で第1~第3条件のうちの少なくとも1つが成立していないときには、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料が霧化や気化が十分であると判断して、本ルーチンを終了する。この場合、第1実施例と同様に、HVECU70から復帰指令を受信したときに、スロットル開度THが燃料噴射を開始する際にエンジン22を良好に燃焼させる開度となるようにスロットルモータ124b(スロットルバルブ124)を制御する。
ステップS210で第1~第3条件の3つの条件の全てが成立しているときには、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料が霧化や気化が不十分となっていると判断して、燃料カット制御時の所定開度THfcから正の値の開度補正量dTHを減じたものと値0のうち大きいほうの値を復帰時開度THs*に設定して、スロットル開度THが復帰時開度THs*となるようにスロットルモータ124b(スロットルバルブ124)を制御する(ステップS220)。
開度補正量dTHは、冷却水温Twとアルコール濃度Dalと燃料カットの継続時間tfcとに基づいて設定される。図9は、冷却水温Twと開度補正量dTHとの関係の一例を示す説明図である。図10は、アルコール濃度Dalと開度補正量dTHとの関係の一例を示す説明図である。図11は、継続時間tfcと復帰時開度THs*との関係の一例を示す説明図である。実施例では、開度補正量dTHを、図9~図11に示すように、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくしている。冷却水温Twが低いときには、高いときに比してエンジン22や吸気管(吸気ポート)123の温度が低く、吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。また、アルコール濃度Dalが高いときには、低いときに比して沸点が低い成分が少なく、吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。さらに、継続時間tfcが長いときには、短いときに比して壁面に燃料が付着しやすく、吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。第2実施例では、これらを考慮して、開度補正量dTHを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくすることにより、目標スロットル開度TH*を、値0を下回らない範囲で、冷却水温Twが低いときには高いときに比して小さくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して小さくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して小さくしている。
こうしてスロットル開度THが復帰時開度THs*となるようにスロットルモータ124b(スロットルバルブ124)を制御すると、エンジン22の初爆が完了したか否かを判定する(ステップS230)。エンジン22の初爆が完了していないときには、スロットル開度THが復帰時開度THs*となるようにスロットルモータ124b(スロットルバルブ124)を制御した状態で、エンジン22の初爆が完了するのを待つ。
エンジン22の初爆が完了すると、所定時間tref(例えば、1.0sec、1.5sec、2.0secなど)に亘りスロットル開度THが復帰時開度THs*に維持されるようにスロットルモータ124b(スロットルバルブ124)を制御して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。なお、ステップS240を実行している際に、エンジン22の燃料噴射制御,点火制御,開閉タイミング制御については、HV走行モードと同一の制御を実行する。
こうした制御により、ステップS210で第1~第3条件の3つの条件の全てが成立しているときには、スロットル開度THを、ステップS210で第1条件~第3条件の少なくとも1つの条件が成立していないときに比して小さくするから、燃料の噴射を開始する際の吸気管(吸気ポート)123の負圧を大きくして、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進することができる。よって、エンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。また、スロットル開度THを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して小さく、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して小さく、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して小さくするから、吸気管123内の負圧を、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくして、より適正に吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進する。これにより、より適正にエンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。さらに、ステップS240で、初爆が完了した後も所定時間trefに亘りスロットル開度THが復帰時開度THs*に維持されるようにスロットルモータ124b(スロットルバルブ124)を制御するから、初爆が完了した後も吸気管(吸気ポート)123の負圧を大きくて、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進することができる。よって、初爆後のエンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。
以上説明した第2実施例の本発明の駆動装置では、燃料カットの実行中に復帰条件が成立している場合において、冷却水温Twが所定温度Twref以下である第1条件と、燃料のアルコール濃度Dalが所定濃度Dalref以上である第2条件と、燃料カットの継続時間tfcが所定時間tfcref以上である第3条件と、の3つの条件が成立しているときには、3つの条件のうちの少なくとも1つの条件が成立していないときに比してスロットル開度THを小さくすることにより、燃焼安定性を向上させることができる。
また、復帰時開度THs*を、冷却水温Twが低いときには高いときに比して小さく、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して小さく、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して小さくすることにより、より適正にエンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。
第2実施例の駆動装置では、ステップS220で復帰時開度THs*を冷却水温Twとアルコール濃度Dalと燃料カットの継続時間tfcとの3つのパラメータを用いて設定している。しかしながら、復帰時開度THs*を、これらの3つのパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて設定すればよい。また、復帰時開度THs*を、3つのパラメータに拘わらず一定値に設定してもよい。
次に、本発明の第3実施例の駆動装置を搭載したハイブリッド自動車320について説明する。第3実施例のハイブリッド自動車320は、図1に例示する第1実施例のハイブリッド自動車20と同一のハード構成をしている。したがって、重複する説明を回避するため、図1のハイブリッド自動車20をハイブリッド自動車320と読み替えることにより第3実施例のハイブリッド自動車320のハード構成についての説明は省略する。
第3実施例のハイブリッド自動車320では、燃料カット制御中に、復帰条件が成立したときには、HVECU70は、燃料噴射を開始する燃料復帰制御を実行する。燃料復帰制御では、エンジンECU24に後述する開閉タイミング制御の実行開始を指示すると共に、モータMG1によるエンジン22のモータリングとモータMG2の駆動とにより、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する。トルク指令Tm1*は、エンジン22の回転数Neが基本回転数Nesb(例えば、900rpm、1000rpm、1100rpmなど)に設定された復帰時回転数Nesとなるように設定される。そして、エンジン22の復帰指令をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。エンジンECU24は、復帰指令を受信すると、上述した第1実施例のハイブリッド自動車20における復帰指令の受信時のエンジン22の吸入空気量制御,燃料噴射制御,点火制御を実行して、エンジン22における燃料噴射を開始する。
次に、エンジン22における開閉タイミング制御について説明する。図12は、第3実施例のハイブリッド自動車320のエンジンECU24により実行される開閉タイミング制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、HVECU70から開閉タイミング制御の実行開始の指示を受信したときに実行される。なお、図12の開閉タイミング制御ルーチンのステップS300,S310は、図8の吸入空気量制御ルーチンのステップS200,S210と同一である。このため、図12のステップS300,S310についての説明は省略する。
ステップS310で第1~第3条件のうちの少なくとも1つが成立していないときには、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料が霧化や気化が十分であると判断して、本ルーチンを終了する。この場合、第1,第2実施例と同様に、HVECU70から復帰指令を受信したときに、開閉タイミングVTinが燃料噴射を開始する際にエンジン22を良好に燃焼させることができる開閉タイミングとなるように可変バルブタイミング機構150を制御し、燃料噴射が開始されエンジン22が初爆した後は、HV走行モードに移行する。
ステップS310で第1~第3条件の3つの条件の全てが成立しているときには、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料が霧化や気化が不十分となっていると判断して、エンジン22から効率よく動力が出力される吸気バルブ128の開閉タイミングVTinである第1開閉タイミングVTin1(開タイミングVTin1o、閉タイミングVTin1c)からタイミング補正量dVTを減じたものを復帰時タイミングVTins*(開タイミングVTinso、閉タイミングVTinsc)に設定して、開閉タイミングVTinが復帰時タイミングVTins*となるように可変バルブタイミング機構150を制御する(ステップS320)。
タイミング補正量dVTは、冷却水温Twとアルコール濃度Dalと燃料カットの継続時間tfcとに基づいて、復帰時タイミングTVins*が下死点BDCのタイミングより遅角した(遅い)タイミングとなるように、0度から20度の範囲内に設定される。図13は、冷却水温Twとタイミング補正量dVTとの関係の一例を示す説明図である。図14は、アルコール濃度Dalとタイミング補正量dVTとの関係の一例を示す説明図である。図15は、継続時間tfcとタイミング補正量dVTとの関係の一例を示す説明図である。図16は、第1開閉タイミングVTin1と復帰時タイミングVTins*との関係の一例を示す説明図である。図16中、実線は、エンジン22から効率よく動力が出力される吸気バルブ128の第1開閉タイミングVTin1(開タイミングVTin1o、閉タイミングVTin1c)の一例を示している。一点鎖線は、排気バルブ128bの開閉タイミングVTex(開タイミングVTexo、閉タイミングVTexc)の一例を示している。破線は、復帰時タイミングVTins*(開タイミングVTinso、閉タイミングVTinsc)の一例を示している。実施例では、タイミング補正量dVTを、図13~図15に示すように、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくなり、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくなり、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくしている。冷却水温Twが低いときには、高いときに比してエンジン22や吸気管(吸気ポート)123の温度が低く、吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。また、アルコール濃度Dalが高いときには、低いときに比して沸点が低い成分が少なく、吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。さらに、継続時間tfcが長いときには、短いときに比して壁面に燃料が付着しやすく、吸気管(吸気ポート)123内での燃料の霧化や気化が不十分となりやすい。第3実施例では、これらを考慮して、タイミング補正量dVTを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくすることにより、図16に示すように、復帰時タイミングVTins*を、下死点BDCより遅角する(遅い)範囲で、冷却水温Twが低いときには高いときに比して進角し(早くし)、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して進角し(早くし)、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して進角する(早くする)ように設定される。
こうして開閉タイミングVTinが復帰時タイミングVTins*となるように可変バルブタイミング機構150を制御すると、復帰指令を受信したタイミングでエンジン22の吸入空気量制御、燃料噴射制御、点火制御などを再開して、エンジン22の初爆が完了したか否かを判定する(ステップS330)。エンジン22の初爆が完了していないときには、開閉タイミングVTinが復帰時タイミングVTins*となるように可変バルブタイミング機構150を制御した状態で、エンジン22の初爆が完了するのを待つ。
そして、エンジン22の初爆が完了すると、開閉タイミングVTinが所定時間tref(例えば、1.0sec、1.5sec、2.0secなど)に亘り復帰時タイミングVTins*となるように可変バルブタイミング機構150を制御して(ステップS340)、本ルーチンを終了する。なお、エンジン22の吸入空気量制御、燃料噴射制御,点火制御については、HV走行モードと同一の制御を実行する。
ステップS310で第1条件~第3条件の少なくとも1つの条件が成立していないときには、復帰後直ちにHV走行モードへ移行するから、吸気バルブ128の開閉タイミングVTは第1開閉タイミングVTin1となる。したがって、復帰時タイミングVTins*は、ステップS310で第1条件~第3条件の少なくとも1つの条件が成立していないときに比して進角した(早い)タイミングとなる。つまり、エンジン22の燃料の噴射を開始する際に、ステップS310で第1条件~第3条件の少なくとも1つの条件が成立していないときに比して吸気バルブ128の閉タイミングが早くなり、吸気管(吸気ポート)123への混合気の戻り量が少なくなる。これにより、燃料の噴射を開始する際の吸気管(吸気ポート)123の負圧を大きくなるから、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進することができ、エンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。また、復帰時タイミングVTins*を、冷却水温Twが低いときには高いときに比して進角し(早くし)、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して進角し(早くし)、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して進角させる(早くする)から、吸気管(吸気ポート)123への混合気の戻し量を、冷却水温Twが低いときには高いときに比して小さくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して小さくし、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して小さくする。これにより、吸気管123内の負圧を、冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくし、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して大きく、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して大きくする。これにより、より適正に吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進する。さらに、ステップS340で、初爆が完了した後も所定時間trefに亘り吸気バルブ128の開閉タイミングVTが復帰時タイミングVTins*に維持されるように可変バルブタイミング機構150を制御するから、初爆が完了した後も吸気管(吸気ポート)123の負圧を大きくて、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化を促進することができる。よって、初爆後のエンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。
以上説明した第3実施例の本発明の駆動装置では、燃料カットの実行中に復帰条件が成立している場合において、冷却水温Twが所定温度Twref以下である第1条件と、燃料のアルコール濃度Dalが所定濃度Dalref以上である第2条件と、燃料カットの継続時間tfcが所定時間tfcref以上である第3条件と、の3つの条件が成立しているときには、3つの条件のうちの少なくとも1つの条件が成立していないときに比して吸気バルブ128の開閉タイミングVTinを早くすることにより、燃焼安定性を向上させることができる。
また、復帰時タイミングVTins*を、冷却水温Twが低いときには高いときに比して小さく、且つ、アルコール濃度Dalが高いときに低いときに比して小さく、且つ、継続時間tfcが長いときには短いときに比して小さくすることにより、より適正にエンジン22の燃焼安定性を向上させることができる。
第3実施例の駆動装置では、ステップS320で復帰時タイミングVTins*を冷却水温Twとアルコール濃度Dalと燃料カットの継続時間tfcとの3つのパラメータを用いて設定している。しかしながら、復帰時タイミングVTins*を、これらの3つのパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて設定すればよい。また、復帰時タイミングVTins*を、3つのパラメータに拘わらず一定値に設定してもよい。
第3実施例の駆動装置では、ステップS320で復帰時タイミングVTins*を第1開閉タイミングVTin1より早くしている。しかしながら、復帰時タイミングVTins*を第1開閉タイミングVTin1より遅角させる(遅くする)ほうが吸気ポートの負圧が増加する場合には、復帰時タイミングVTins*を第1開閉タイミングVTin1より遅角させて(遅くして)もよい。
第3実施例の駆動装置では、燃料噴射の開始時から初爆が完了した後所定時間trefに亘って開閉タイミングVTを復帰時タイミングVTins*に維持している。しかしながら、こうした開閉タイミング制御に加えて、吸入空気量制御について、燃料噴射の開始時から初爆完了した後所定時間trefに亘って、スロットルバルブ124が全閉または若干開くように(例えば、2%、3%、4%など)目標スロットル開度TH*を設定して、スロットル開度THが目標スロットル開度TH*、即ち、HV走行モードと同一の処理で設定されるスロットル開度THより小さくなるようにスロットルバルブ124を制御してもよい。こうすれば、吸気管(吸気ポート)123の負圧をさらに大きくすることができ、吸気管(吸気ポート)123に噴射した燃料の霧化や気化をさらに促進させることができる。また、開閉タイミングVTを第1開閉タイミングVTin1より進角させるとエンジン22から出力されるトルクが増加するが、スロットル開度THより小さくすることにより、エンジン22から出力されるトルクの変化を抑制できる。
第1~第3実施例の駆動装置では、増量補正値Qfcを、冷却水温Twとアルコール濃度Dalと燃料カットの継続時間tfcと復帰時回転数Nesとの4つのパラメータを用いて設定している。しかしながら、増量補正値Qfcを、これらの4つのパラメータのうちの1つないし3つに基づいて設定してもよいし、4つのパラメータに拘わらず一定値に設定してもよい。
第1~第3実施例の駆動装置では、増量補正値Qfcを設定し、燃料噴射弁126から基本燃料噴射量Qfbに増量補正値Qfcを加えた燃料噴射量Qf(=Qfb+Qfc)の燃料でエンジン22の燃料噴射を開始している。しかしながら、基本燃料噴射量Qfbを燃料噴射量Qfに設定し、燃料噴射量Qfの燃料を燃料噴射弁126から噴射してエンジン22の燃料噴射を開始してもよい。
第1~第3実施例の駆動装置では、燃料をアルコールとガソリンとの混合燃料としているが、アルコールを含む燃料であれば如何なる燃料でもよく、アルコールとガソリンとは異なるものとの混合燃料としても構わない。
第1~第3実施例の駆動装置では、可変バルブタイミング機構150は、吸気バルブ128の開タイミングVTinoおよび閉タイミングVTincを作動角を維持した状態で変更している。しかしながら、可変バルブタイミング機構150を、作動角を維持せずに開タイミングVTinoおよび閉タイミングVTincを個別に変更するものとしてもよいし、開タイミングVTinoは変更せずに閉タイミングVTincのみ変更するものとしてもよい。
第1~第3実施例では、本発明の駆動装置を、エンジン22とモータMG1.MG2とを備えるハイブリッド自動車20、220、320に適用する場合について例示している。しかしながら、本発明の駆動装置を、モータMG1,MG2を備えずに、エンジン22と、エンジン22からの動力を変速して車軸に連結された駆動軸36に伝達する変速機と、を備える自動車に適用しても構わない。この場合、基本回転数Nesbを冷却水温Twが低いときには高いときに比して大きくなるように設定し、エンジン22の回転数Neが復帰時回転数Nesとなるよう変速機の変速比を調整すればよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本発明の第1の駆動装置について、第1実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「回転数調整装置」に相当し、エンジンECU24とモータECU40とHVECU70とが「制御装置」に相当する。本発明の第2の駆動装置について、第2、第3実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、エンジンECU24が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。