以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“PCLK”によって参照される基準クロック信号は(図3参照)、基準クロック信号PCLKと表記されることもあるし、クロック信号PCLKと略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
まず、本実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部を指す又は基準電位そのものを指す。各実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。ラインは配線と同義である。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。
FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係るEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)1の概略的な全体ブロック図を示す。図1にはEEPROM1に接続される信号処理装置の例であるMPU(Micro Processing Unit)2も示されている。EEPROM1は、チャージポンプ回路10と、電圧選択部20と、メモリ部30と、制御部40と、を備える。チャージポンプ回路10、電圧選択部20及びメモリ部30及び制御部40を含む、EEPROM1を形成する各回路が半導体にて集積化されて半導体集積回路が構成される。
図2にEEPROM1を含む半導体装置IC1の外観斜視図を示す。半導体装置IC1は、EEPROM1を構成する各素子を含んだ半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。半導体装置IC1の筐体に複数の外部端子が露出して設けられており、その複数の外部端子には、図1に示される電源入力端子VCC、グランド端子GND及び通信用端子COMを含む。これら以外の端子も、上記複数の外部端子に含まれうる。通信用端子COMに対してMPU2が接続される。通信用端子COMは2以上の外部端子から構成されていて良い。MPU2は通信用端子COMを介して様々なコマンドをEEPROM1に与えることができる。コマンドは制御部40に対して与えられるものであると解しても良い。尚、図2に示される半導体装置IC1の外部端子の数及び半導体装置IC1の外観は例示に過ぎず、半導体装置IC1において外部端子の数及び筐体の種類は任意である。以下に述べるEEPROM1に対する説明は半導体装置IC1に対する説明でもある。
チャージポンプ回路10は、電源電圧Vccを昇圧することで電源電圧Vccよりも高い電圧を出力電圧Vppとして生成する。電源入力端子VCCに対し、EEPROM1の外部から正の直流電圧である電源電圧Vccが入力される。例えば1.6V以上且つ5.5以下の範囲内の電圧が電源電圧Vccとして入力される。これに対し、出力電圧Vppの目標となる基準電圧Vtgは例えば15V~20V程度に設定される。グランド端子GNDはグランドに接続される。
電圧選択部20は、制御部40による制御の下、電源電圧Vcc及びチャージポンプ回路10の出力電圧Vppの内、何れか一方をメモリ駆動電圧Vmとしてメモリ部30に供給する。
メモリ部30は、マトリクス状に配置される複数のメモリセルから構成されたメモリアレイを含む。各メモリセルにて1ビット分のデータが記憶される。メモリ部30は、電源入力端子VCCに対する電源電圧Vccの供給が途絶えても、各メモリセルでの記憶内容を保持できる不揮発性メモリである。メモリ部30において多数のアドレスから成るアドレス空間が定義され、各アドレスに8ビット分のデータを記憶することができる。
制御部40は、制御ロジック、アドレスレジスタ、アドレスデコーダ及びデータレジスタなどを含み、MPU2から受信したコマンドに基づき、チャージポンプ回路10及び電圧選択部20の動作を制御すると共にメモリ部30に対するデータの読み書きを実行する。
MPU2がEEPROM1に対して送信するコマンドには、EEPROM1に対してデータの書き込みを指示するライトコマンド、及び、EEPROM1に対してデータの読み出しを指示するリードコマンドが含まれる。MPU2がEEPROM1に対して送信するコマンドに、ライトコマンド及びリードコマンド以外のコマンドが更に含まれ得る。
EEPROM1にてリードコマンドが受信されたとき、制御部40は、以下のリード処理を実行する。リード処理において、制御部40は、メモリ駆動電圧Vmとして電源電圧Vccがメモリ部30に供給されるよう電圧選択部20を制御した状態で、リードコマンドにて指定されるアドレス内のデータをメモリ部30から読み出し、読み出したデータを通信用端子COMを介してMPU2に送信する。
EEPROM1にてライトコマンドを受信したとき、制御部40は、以下のライト処理を実行する。ライト処理において、制御部40は、メモリ駆動電圧Vmとして出力電圧Vppがメモリ部30に供給されるよう電圧選択部20を制御した状態で、ライトコマンドにて指定されるメモリ部30内のアドレスに対しライトコマンドにて指定されるデータを書き込む。EEPROM1においてメモリ部30内のデータを消去するイレース処理も実行可能であるが、イレース処理は規定の値(例えば“0”の値)をメモリ部30に書き込むことに相当するため、以下ではイレース処理もライト処理の一種であると考える。
チャージポンプ回路10が行う動作であって、且つ、電源電圧Vccを昇圧することで電源電圧Vccよりも高い電圧を出力電圧Vppとして生成する動作を昇圧動作と称する。昇圧動作の実行時において、出力電圧Vppは、出力電圧Vppに対して予め設定された目標電圧である基準電圧Vtgにて安定化される。ここにおける安定化とは、出力電圧Vppが概ね基準電圧Vtg近辺に保たれることを意味し、一時的に出力電圧Vppが基準電圧Vtgを多少上回ることもあるし、基準電圧Vtgを多少下回ることもある。
制御部40は、チャージポンプ回路10による昇圧動作の実行、非実行を制御する機能を備える。具体的には、制御部40は、ライト処理が行われる区間においてチャージポンプ回路10に昇圧動作を実行させ、それ以外の区間においてチャージポンプ回路10による昇圧動作を停止させる。相対的に高い電圧(Vpp)はデータの書き込みの際にのみ必要となるからである。従って、リード処理が行われる区間を含め、ライト処理が行われない区間では昇圧動作は停止せしめられる。尚、昇圧動作を開始してから或る程度時間が経過しないと出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達さないが、メモリ部30における実際のデータの書き込みは、昇圧動作の開始後、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達してから実行される。
図3にチャージポンプ回路10の内部構成を示す。チャージポンプ回路10は所謂ディクソン型のチャージポンプ回路である。チャージポンプ回路10は、n個の整流素子D[1]~D[n]と、n個のコンデンサC[1]~C[n]と、クロックドライバ110と、電圧検出回路120と、電圧入力回路130と、オシレータ140と、を備えると共に、1以上のデプレッション型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)が備える。ここでは、チャージポンプ回路10に対しデプレッション型且つNチャネル型のMOSFETとして2つのトランジスタMA及びMBが設けられているものとする。尚、オシレータ140は、EEPROM1内であって且つチャージポンプ回路10外に設けられる回路であると考えても良い。nは4以上の任意の整数であり、例えば“n=34”である。以下では、特に記述無き限り“n=34”であると考える。ラインLL1、LL2、LL1’及びLL2’はチャージポンプ回路10に設けられたクロックラインを表している。
オシレータ140は基準クロック信号PCLKを生成及び出力する。オシレータ140は必要なときにのみ基準クロック信号PCLKの生成を行う回路である。即ち、オシレータ140は、EEPROM1にてライトコマンドが受信されたことに応答して基準クロック信号PCLKの生成及び出力を開始し、ライト処理の完了に応答して基準クロック信号PCLKの生成を停止する。リード処理が行われる区間を含め、ライト処理が行われない区間では基準クロック信号PCLKの生成は停止される。但し、オシレータ140にて基準クロック信号PCLKが常時生成されるようにしても構わない。基準クロック信号PCLKを含む本実施形態で述べる全てのクロック信号は所定の周波数を有する矩形波信号であり、故に、ハイレベル、ローレベルの信号レベルを周期的に且つ交互にとる。
整流素子D[1]~D[n]は電圧入力端子151と電圧出力端子152との間に直列に挿入される。ここでは、各整流素子は、ダイオード接続されたNチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)にて構成されているものとする。各整流素子としてのMOSFETを含む任意のMOSFETは、トランジスタMA及びMBを除き、特に記述無き限りエンハンスメント型のMOSFETであるとする。電圧出力端子152にチャージポンプ回路10の出力電圧Vppが生じる。
具体的には、整流素子D[i]としてのMOSFETにおいてドレイン及びゲートが互いに共通接続される。“i”は任意の整数を表す。つまり例えば、整流素子D[1]としてのMOSFETにおいてドレイン及びゲートが互いに共通接続され、整流素子D[2]としてのMOSFETにおいてドレイン及びゲートが互いに共通接続される。整流素子D[3]~D[n]についても同様である。そして、電圧入力端子151から電圧出力端子152に向け、整流素子D[1]、D[2]、D[3]、・・・、D[n-1]、D[n]の順番で、整流素子D[1]~D[n]が直列接続される。各整流素子は電荷転送素子として機能する。各整流素子としてのMOSFETにおいて、ドレインが電荷の入力側に対応し、ソースが電荷の出力側に対応する。
電圧入力端子151から電圧出力端子152までにおいて、電圧入力端子151に対して近い方が前段に対応し、電圧出力端子152に対して近い方が後段に対応する。故に、整流素子D[i]から見て、整流素子D[i-1]は前段側に位置し、整流素子D[i+1]は後段側に位置する(ここにおける“i”は2以上且つ(n-1)以下の整数)。整流素子D[1]を除く各整流素子のドレインは前段側に隣接する整流素子のソースに接続され、且つ、整流素子D[n]を除く各整流素子のソースは後段側に隣接する整流素子のドレインに接続される。即ち、2以上且つ(n-1)以下の整数である変数“i”を用いて表現すると、整流素子D[i]のドレインは整流素子D[i-1]のソースに接続され、整流素子D[i]のソースは整流素子D[i+1]のドレインに接続される。そして、最も前段側に配置される整流素子D[1](即ち初段に配置される整流素子D[1])のドレインは電圧入力端子151に接続され、最も後段側に配置される整流素子D[n](即ち最終段に配置される整流素子D[n])のソースは電圧出力端子152に接続される。
互いに隣接する2つの整流素子D[i-1]及びD[i]間の接続ノード(より具体的には、整流素子D[i-1]のソースと整流素子D[i]のドレインとが互いに接続されるノード)を、符号“ND[i]”にて表す。また、便宜上、整流素子D[1]のドレインが接続される電圧入力端子151を接続ノードND[1]と表現し、整流素子D[n]のソースが接続される電圧出力端子152を接続ノード[n+1]と表現することがある。コンデンサC[i]の一端はノードND[i]に接続される(ここおける“i”は1以上n以下の任意の整数)。
コンデンサC[1]~C[n-2]の内、奇数番目のコンデンサの他端は第1クロックラインLL1に接続され、偶数番目のコンデンサの他端は第2クロックラインLL2に接続される。即ち、1以上(n/2-1)以下の整数“m”に関して、コンデンサC[2・m-1]の他端は第1クロックラインLL1に接続され、コンデンサC[2・m]の他端は第2クロックラインLL2に接続される。コンデンサC[n-1]の他端はクロックラインLL1’に接続され、コンデンサC[n]の他端はクロックラインLL2’に接続される。また、クロックラインLL1’にはトランジスタMBのソースも接続され、クロックラインLL2’にはトランジスタMAのソースも接続される。そして、トランジスタMBのドレインが第1クロックラインLL1に接続され、トランジスタMAのドレインが第2クロックラインLL2に接続される。即ち、一端がノードND[n-1]に接続されたコンデンサC[n-1]の他端と第1クロックラインLL1との間にトランジスタMBが直列に挿入され、一端がノードND[n]に接続されたコンデンサC[n]の他端と第2クロックラインLL2との間にトランジスタMAが直列に挿入されている。尚、コンデンサC[i]の一端、他端は、夫々、第1端、第2端に相当する。コンデンサC[i]の第1端は整流素子接続端に相当し、コンデンサC[i]の第2端はクロックライン接続端に相当する。
図4にクロックドライバ110の一構成例を示す。クロックドライバ110は、クロックラインLL1、LL2に対して、夫々、クロック信号CLK、CLKBを供給するための回路であって、図4のクロックドライバ110は、AND回路111及び112と、インバータ回路113と、を備える。オシレータ140からの基準クロック信号PCLKがクロックドライバ110に供給される。
インバータ回路113は、基準クロック信号PCLKの反転信号を生成及び出力する。AND回路111は、基準クロック信号PCLKと電圧検出回路120から供給されるイネーブル信号CPENとの論理積信号を出力する。AND回路112は、インバータ回路113の出力信号(即ち基準クロック信号PCLKの反転信号)と電圧検出回路120から供給されるイネーブル信号CPENとの論理積信号を出力する。AND回路111の出力信号が加わるAND回路111の出力端子は第1クロックラインLL1に接続され、インバータ回路112の出力信号が加わるインバータ回路112の出力端子は第2クロックラインLL2に接続される。
故に、イネーブル信号CPENがハイレベルである場合、基準クロック信号PCLKがそのままAND回路111を通じ第1クロック信号CLKとして第1クロックラインLL1に出力されると共に、基準クロック信号PCLKを反転させたクロック信号がインバータ回路113及びAND回路112を通じ第2クロック信号CLKBとして第2クロックラインLL2に出力される。イネーブル信号CPENがローレベルである場合、AND回路111及び112の出力信号のレベル(故にクロックラインLL1及びLL2の信号レベル)はローレベルに維持される。
このように、クロックドライバ110は、イネーブル信号CPENがハイレベルである場合、基準クロック信号PCLKと同相のクロック信号を第1クロック信号CLKとして第1クロックラインLL1に出力すると共に基準クロック信号PCLKと逆相のクロック信号を第2クロック信号CLKBとして第2クロックラインLL2に出力する動作(以下、クロック出力動作と称する)を実行する。クロック出力動作にて上述の昇圧動作が実現される。イネーブル信号CPENがローレベルである場合にはクロック出力動作は非実行となる(換言すればクロック出力動作は停止される)。
クロック出力動作の実行中には、各整流素子の導通/非導通及び各コンデンサでの電荷の蓄積が繰り返されることで出力電圧Vppが上昇してゆく。そして、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達すると後述の電圧検出回路120の機能によりクロック出力動作が停止される。クロック出力動作の停止区間では、電圧入力端子151から電圧出力端子152に向けた電荷の供給が途絶えるので、少なくとも出力電圧Vppの上昇は停止し、電圧出力端子152に接続される負荷(メモリ部30を含む)の電力消費を通じ出力電圧Vppが低下してゆく。そして、出力電圧Vppが基準電圧Vtgを下回るとクロック出力動作が再開される。これらのシーケンスが繰り返されことで出力電圧Vppが基準電圧Vtg近辺に保たれる。
尚、上述のクロック出力動作を実現できる限り、クロックドライバ110の回路構成は任意である。例えば、基準クロック信号PCLKの信号レベルにおけるローレベルからハイレベルへの切り替わり又はハイレベルからローレベルへの切り替わりに同期してイネーブル信号CPENをラッチするフリップフロップをクロックドライバ110に設けておき、ラッチした信号に基づきクロック出力動作の実行、非実行を切り替えるようにしても良い。
電圧検出回路120について説明する。電圧検出回路120は、電圧出力端子152に接続され、チャージポンプ回路10の出力電圧Vppに応じ、ローレベル又はハイレベルのイネーブル信号CPENを出力する。具体的には、電圧検出回路120は、電圧出力端子152に生じる出力電圧Vppと所定の基準電圧Vtgとの高低関係を検出し、その高低関係に応じたイネーブル信号CPENを生成及び出力する。
図5に電圧検出回路120の一構成例を示す。図5の電圧検出回路120は、ツェナーダイオード121と、トランジスタ122~124と、定電流回路125と、バッファ回路126と、を備える。トランジスタ122はPチャネル型のMOSFETとして構成され、トランジスタ123及び124はNチャネル型のMOSFETとして構成される。
ツェナーダイオード121のカソードは電圧出力端子152に接続され、ツェナーダイオード121のアノードはトランジスタ122のソースに接続される。ツェナーダイオード121は複数のツェナーダイオードを直列接続したものであって良いし、単一のツェナーダイオードであっても良い。トランジスタ122のドレインと、トランジスタ123のドレイン及びゲートと、トランジスタ124のゲートとは、互いに共通接続される。トランジスタ123及び124の各ソースはグランドに接続される。トランジスタ123及び124によりカレントミラー回路が形成される。トランジスタ124のドレインは、定電流回路125に接続されると共にバッファ回路126の入力端子に接続される。定電流回路125は、電源電圧Vccに基づき定電流をトランジスタ124のドレインに向けて流すよう動作する。バッファ回路126は、トランジスタ124のドレインでの電圧が所定の閾電圧未満であれば、ローレベルのイネーブル信号CPENを出力し、トランジスタ124のドレインでの電圧が所定の閾電圧以上であれば、ハイレベルのイネーブル信号CPENを出力する。バッファ回路126は2つのインバータ回路を直列接続して構成されるものであって良い。
図5の電圧検出回路120は以下のように動作する。出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtgよりも低いときには、ツェナーダイオード121が非導通となってトランジスタ122及び123に電流が流れず、故にトランジスタ124に電流が流れないので、トランジスタ124のドレイン電圧が閾電圧よりも高くなってイネーブル信号CPENがハイレベルとなる。一方、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg以上であるときには、ツェナーダイオード121が導通してトランジスタ122及び123に電流が流れ、故にトランジスタ124にも電流が流れるので、トランジスタ124のドレイン電圧が閾電圧未満となってイネーブル信号CPENがローレベルとなる。
トランジスタ122のゲートには所定の調整電圧Vgが印加される。調整電圧Vgは例えば0V又は所定の正の直流電圧とされる。ツェナーダイオード121に電流が流れるときのトランジスタ122のソース電圧は、調整電圧Vgの増減に伴って増減する。故に、調整電圧Vgを設定することで上述の基準電圧Vtgを設定することができる。
尚、実際には、出力電圧Vppが基準電圧Vtg近辺にあるときにおけるツェナーダイオード121の導通/非導通の境界は幅を有した概念であると考えることができる。イネーブル信号CPENがローレベルとなる程度にツェナーダイオード121に電流が流れる状態がツェナーダイオード121の導通状態に相当し、それ以外でのツェナーダイオード121の状態はツェナーダイオード121の非導通状態に相当する、と考えることもできる。
何れにせよ図5に示した回路構成は例に過ぎず、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg以上であるときローレベルのイネーブル信号CPENを出力する一方で出力電圧Vppが基準電圧Vtg未満であるときハイレベルのイネーブル信号CPENを出力する機能を有している限り、電圧検出回路120の内部構成は任意である。ローレベルのイネーブル信号CPENは、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg以上となっていることを示す信号として機能する。これに対し、ハイレベルのイネーブル信号CPENは、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg未満であることを示す信号として機能する。
次に、電圧入力回路130(図3参照)について説明する。電圧入力回路130は、電圧入力端子151に対して電源電圧Vccに基づく電圧を入力する回路である。
図6に電圧入力回路130の一構成例を示す。図6の電圧入力回路130は、Pチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ131と、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ132及び133と、コンデンサ134と、を備える。トランジスタ131のソースには電源電圧Vccが印加される。トランジスタ131のゲートはグランドに接続される。トランジスタ131のドレインと、トランジスタ132のドレインと、トランジスタ133のドレイン及びゲートは、互いに共通接続される。トランジスタ132のソースは電圧入力端子151に接続される。コンデンサ134の一端はトランジスタ132のゲート及びトランジスタ133のソースに共通接続され、コンデンサ134の他端は第2クロックラインLL2に接続される。
このような電圧入力回路130を用いることで、クロック出力動作が行われている区間においては、電源電圧Vccよりも高い電圧を電圧入力端子151に生じさせることができ、電圧入力端子151での電圧を整流素子D[1]~D[n]及びコンデンサC[1]~C[n]にて更に高めて出力電圧Vppを得ることができる。
尚、電源電圧Vccそのものが電圧入力端子151に加わるようにチャージポンプ回路10を構成しておいても良い。この場合、電圧入力回路130は不要であり、コンデンサC[1]も省略可能である。
上述の説明から明らかなように、第1クロックラインLL1は第1クロック信号CLKが伝搬されるべき配線であり、第2クロックラインLL2は第2クロック信号CLKBが伝搬されるべき配線である。そして、コンデンサC[1]~C[n]は、第1クロック信号CLKと同相のクロック信号(クロック信号CLKそのもの又は後述のクロック信号CLK’)の供給を受けるべき第1コンデンサ、及び、第2クロック信号CLKBと同相のクロック信号(クロック信号CLKBそのもの又は後述のクロック信号CLKB’)の供給を受けるべき第2コンデンサの何れかに分類されると言え、互いに隣接する2つの接続ノードND[i]及びND[i+1]の内、一方のノードは第1コンデンサの一端に接続され且つ他方のノードは第2コンデンサの一端に接続されることになる。
コンデンサC[1]~C[n-2]は第1クロックラインLL1又は第2クロックラインLL2に直接接続されて第1クロック信号CLK又は第2クロック信号CLKBの供給を受ける。但し、コンデンサC[n-1]はトランジスタMBを介して第1クロックラインLL1に接続され、且つ、コンデンサC[n]はトランジスタMAを介して第2クロックラインLL2に接続される。このため、コンデンサC[n-1]に加わるクロック信号CLK’の振幅はクロック信号CLKの振幅よりも小さくなり、且つ、コンデンサC[n]に加わるクロック信号CLKB’の振幅はクロック信号CLKBの振幅よりも小さくなる。クロック信号CLK’、CLKB’は、夫々、クロックラインLL1’、LL2’に加わるクロック信号を表す。
図7(a)にクロック信号CLK及びCLK’の波形例を示し、図7(b)にクロック信号CLKB及びCLKB’の波形例を示す。オシレータ140及びクロックドライバ110は電源電圧Vccを元に各クロック信号を生成する回路であり、故に、基準クロック信号PCLK、第1クロック信号CLK及び第2クロック信号CLKBの夫々において、信号のハイレベルは電源電圧Vccのレベルと一致し且つ信号のローレベルはグランドのレベルと一致している。即ち、クロック信号PCLK、CLK及びCLKBの振幅は全て電源電圧Vccの大きさと一致している。電源電圧Vccは様々に変化し得るが、ここでは、1.6V以上且つ5.5以下の範囲内の電圧が電源電圧Vccとして入力されることがEEPROM1の仕様にて定められているものとする。図7(a)及び(b)では、電源電圧Vccが仕様の最大電圧5.5Vと一致していることが想定されている。
トランジスタMA及びMBのゲート電圧(即ちトランジスタMA及びMBのゲートに加わる電圧)を符号“Vdg”にて表す(図3参照)。トランジスタMAのゲート電圧Vdgの具体的な値とトランジスタMBのゲート電圧Vdgの具体的な値とを互いに異ならせることも可能ではあるが、ここではトランジスタMA及びMBに対して共通のゲート電圧Vdgが加えられるものとする。
また、トランジスタMA及びMBの夫々のゲート閾値電圧を符号“Vth”にて表す。トランジスタMAのゲート-ソース間電圧(即ちソースの電位から見たゲートの電位)がゲート閾値電圧Vth以上であるとき、トランジスタMAはオン状態となり、トランジスタMAのゲート-ソース間電圧がゲート閾値電圧Vth未満であるとき、トランジスタMAはオフ状態となる。同様に、トランジスタMBのゲート-ソース間電圧(即ちソースの電位から見たゲートの電位)がゲート閾値電圧Vth以上であるとき、トランジスタMBはオン状態となり、トランジスタMBのゲート-ソース間電圧がゲート閾値電圧Vth未満であるとき、トランジスタMBはオフ状態となる。
そうすると、クロックラインLL1’に加わるクロック信号CLK’は、第1クロックラインLL1に加わる第1クロック信号CLKと同相のクロック信号となる。即ち、クロック信号CLK’は、第1クロック信号CLKがハイレベルであるときにハイレベルとなり、第1クロック信号CLKがローレベルであるときにローレベルとなる。同様に、クロックラインLL2’に加わるクロック信号CLKB’は、第2クロックラインLL2に加わる第2クロック信号CLKBと同相のクロック信号となる。即ち、クロック信号CLKB’は、第2クロック信号CLKBがハイレベルであるときにハイレベルとなり、第2クロック信号CLKBがローレベルであるときにローレベルとなる。
但し、第1クロック信号CLKにおけるハイレベルの電圧は電源電圧Vccと一致するのに対して、クロック信号CLK’におけるハイレベルの電圧は電源電圧Vccよりも小さな電圧Vqである。同様に、第2クロック信号CLKBにおけるハイレベルの電圧は電源電圧Vccと一致するのに対して、クロック信号CLKB’におけるハイレベルの電圧は電源電圧Vccよりも小さな電圧Vqである。クロック信号CLK、CLK’、CLKB及びCLKB’のローレベルはグランドのレベルと一致する。クロック信号CLK及びCLKBは電源電圧Vccの大きさと一致する所定の基準振幅を有する矩形波信号であるのに対し、クロック信号CLK’及びCLKB’は該基準振幅よりも小さな振幅を有する矩形波信号となる。
クロック信号CLK’及びCLKB’の振幅は電圧Vqの大きさと一致し、電圧Vqは“Vq=Vdg-Vth”にて表される。故に例えば、トランジスタMA及びMBについて、ゲート電圧Vdgが1.2Vであって且つゲート閾値電圧が(-0.4V)であったならば、電圧Vqは1.6Vとなる。
図8(a)、(b)に、夫々、クロックラインLL2での電圧が5.5V、0VであるときにおけるトランジスタMA周辺の各電圧の関係を示す。但し、図8(a)及び(b)では、ゲート電圧Vdgが1.2Vであって且つゲート閾値電圧が(-0.4V)であると仮定している。クロックラインLL2での電圧が1.6V以上であるときには、クロックラインLL2での電圧が5.5Vであるときを含めて、クロックラインLL2’での電圧は電圧“(Vdg-Vth)”、即ち1.6V(=1.2-(-0.4)V)に固定される。クロックラインLL2での電圧が1.6V未満であるときにはトランジスタMAが導通状態となるため、クロックラインLL2’での電圧はクロックラインLL2での電圧と一致することになる。クロックラインLL1及びLL1’での電圧についても同様である。
上述したように、クロック信号の立ち上がり時には瞬間的に比較的大きな電圧が対応する素子(整流素子及びコンデンサ)に加わることになる(図16参照)。一方で、素子に対して過大な電圧が加わると素子の不良(破壊又は劣化)が生じ易くなる。これを考慮し、本実施形態に係るチャージポンプ回路10では、コンデンサC[1]~C[n]の内、相対的に大きな電圧が加わるコンデンサC[n-1]及びC[n]に対して、それ以外のコンデンサC[1]~C[n-2]よりも小さな振幅のクロック信号を供給するようにしている。このため、電源電圧Vccが比較的高い状況においても、ノードND[n-1]に接続される素子(整流素子D[n-1]及びコンデンサC[n-1]を含む)及びノードND[n]に接続される素子(整流素子D[n]及びコンデンサC[n]を含む)に対し、電源電圧Vccが比較的低い状況と同程度のピーク電圧しか加わらなくなるため、それらの素子に不良が生じる確率が低く抑えられる。
尚、クロック出力動作が実行される区間においてのみ所定の正の電圧がゲート電圧VdgとしてトランジスタMA及びMBに加えられれば足り、クロック出力動作が実行されない区間ではゲート電圧Vdgは0Vであって構わない。このようなゲート電圧VdgをトランジスタMA及びMBの各ゲートに供給するゲート電圧供給回路(不図示)がチャージポンプ回路10に内蔵されている。ゲート電圧供給回路は、例えば、ライトコマンドの受信に応答したオシレータ140による基準クロック信号PCLKの生成開始に同期してゲート電圧Vdgを0Vから正の所定電圧(例えば1.2V)に上昇させ、ライト処理の完了に応答した基準クロック信号PCLKの生成停止に同期してゲート電圧Vdgを0Vに戻せば良い。
電圧Vqの大きさに相当するクロック信号CLK’及びCLKB’の振幅は電源電圧Vccの仕様における最小電圧と一致していると良い。即ち例えば、1.6V以上且つ5.5以下の範囲内の電圧が電源電圧Vccとして入力されることがEEPROM1の仕様にて定められている場合、電圧Vqが1.6Vとなるように、ゲート閾値電圧Vth及びクロック出力動作の実行時のゲート電圧Vdgを定めておくと良い。これにより、上記範囲内であれば電源電圧Vccに依存せずクロック信号CLK’及びCLKB’の振幅は一定となる。結果、それらの振幅が一定であるとの前提の下で耐圧設計を行うことができ、有益である。それらの振幅が変動する場合には、最大の振幅に合わせた耐圧設計が必要となる分、素子の大型化等が生じ得る。但し、電圧Vqは電源電圧Vccの仕様における最小電圧と異なっていても構わない。
コンデンサC[1]~C[n]の内、クロック信号CLK’又はCLKB’の供給を受けるコンデンサを対象コンデンサと称し、それ以外のコンデンサ(即ち第2端がクロックラインLL1又はLL2に接続されてクロック信号CLK又はCLKBの供給を受けるコンデンサ)を非対象コンデンサと称する。図3の構成では、コンデンサC[n-1]及びC[n]のみが対象コンデンサとして機能する。この際、コンデンサC[n]、C[n-1]は、夫々、第1、第2対象コンデンサに相当すると言える。対象コンデンサの数を増やすほど、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達するまでに要する時間が増大する。このため、コンデンサC[1]~C[n]の一部のみが対象コンデンサに設定される。ここでは“n=34”と仮定したが、コンデンサC[1]~C[n]の内の2つのコンデンサを対象コンデンサとする場合にあっては、“n”は4以上の任意の整数であって良い。従って例えば、“n=4”であるならば、コンデンサC[3]及びC[4]を対象コンデンサに設定すると共にコンデンサC[1]及びC[2]を非対象コンデンサに設定することができる。
コンデンサC[1]~C[n]の内、3以上のコンデンサを対象コンデンサに設定しても良い。即ち例えば“n≧6”の場合、計4つのコンデンサC[n-3]~C[n]を対象コンデンサに設定し、他のコンデンサC[1]~C[n-4]を非対象コンデンサに設定することもできる。この場合には、図3の構成を基準として、コンデンサC[n-1]だけでなくコンデンサC[n-3]の第2端もクロックラインLL1に代えてクロックラインLL1’に接続し、且つ、コンデンサC[n]だけでなくコンデンサC[n-2]の第2端もクロックラインLL2に代えてクロックラインLL2’に接続すれば良い。コンデンサC[1]~C[n]の一部のみを対象コンデンサに設定するためには、対象コンデンサの個数よりも2以上大きい整数値を“n”に持たせる必要がある。
コンデンサC[1]~C[n]に含まれる対象コンデンサの個数は1であっても良い。対象コンデンサの個数を1とする場合、“n”は3以上の任意の整数であって良い(勿論、“n”は4以上の任意の整数であっても良い)。この場合における対象コンデンサは、コンデンサC[1]~C[n]の内、相対的に高い電圧が加わるコンデンサC[n]であると良く、その際には、図3の構成を基準としてトランジスタMBを削除し、図9に示す如くコンデンサC[n-1]の第2端をクロックラインLL1’に代えてクロックラインLL1に接続する変形を施せば良い(図9には当該変形が施されたチャージポンプ回路10aが示されている)。或いは、対象コンデンサはコンデンサC[n-1]であっても良く、その際には、図3の構成を基準としてトランジスタMAを削除し、図10に示す如くコンデンサC[n]の第2端をクロックラインLL2’に代えてクロックラインLL2に接続する変形を施せば良い(図10には当該変形が施されたチャージポンプ回路10bが示されている)。
但し、整流素子D[1]~D[n]及びコンデンサC[1]~C[n]から成る回路において、クロック信号CLK及びCLKBの夫々のローレベルからハイレベルへの切り替わりの瞬間にピーク電圧が生じ、そのピーク電圧はノードND[n-1]及びND[n]間で同程度に高いことが想定されるため、コンデンサC[n]及びC[n-1]の双方を対象コンデンサに含めることが望ましい。
“n=3”とされうることからも理解されるように、整流素子D[1]~D[n]の個数は奇数個(但し3以上)であっても良い。整流素子D[1]~D[n]の個数が奇数個である場合、コンデンサC[1]~C[n-2]の内、偶数番目のコンデンサの他端(第2端)が第1クロックラインLL1に接続され且つ奇数番目のコンデンサの他端(第2端)が第2クロックラインLL2に接続されても良い。
ここでは、基準クロック信号PCLKとクロック信号CLK及びCLKBとの関係を逆にしても良い。即ち、クロック信号CLKBが基準クロック信号PCLKと同相であって且つクロック信号CLKが基準クロック信号PCLKと逆相であっても良い。
これらの変形技術をも加味し、本発明に係るチャージポンプ回路(便宜上、チャージポンプ回路Wと称する)は以下のような構成を有していると考えることができる。即ち、本発明に係るチャージポンプ回路Wは、電圧入力端子(151)と電圧出力端子(152)との間に直列に挿入された複数の整流素子(D[1]~D[n])と、複数の整流素子における互いに隣接する整流素子間の接続ノードに第1端が接続され、第2端にて基準クロック信号と同相又は逆相のクロック信号を受ける複数のコンデンサ(C[1]~C[n])と、を備えて、電圧入力端子における電圧よりも高い出力電圧(Vpp)を電圧出力端子に生じさせるチャージポンプ回路であって、複数のコンデンサの一部である対象コンデンサに対して供給されるクロック信号の振幅を、対象コンデンサと異なる非対象コンデンサに対して供給されるクロック信号の振幅よりも小さくする振幅低減部を備えている。
振幅低減部は、図3の構成例においてはトランジスタMA及びMBを含み、図9の構成例においてはトランジスタMAを含み、図10の構成例においてはトランジスタMBを含む。図3、図9、図10のチャージポンプ回路(10、10a、10b)はチャージポンプ回路Wの具体例である。
“n≧4”のケースでは、以下のようにチャージポンプ回路Wを構成することができる。即ち、チャージポンプ回路Wにおいて、複数のコンデンサ(C[1]~C[n])の内、第(n-1)整流素子及び第n整流素子間の接続ノード(ND[n])に第1端が接続されたコンデンサ(C[n])と、第(n-2)整流素子及び第(n-1)整流素子間の接続ノード(ND[n-1])に第1端が接続されたコンデンサ(C[n-1])とが、対象コンデンサに、第1対象コンデンサ及び第2対象コンデンサとして含まれていて良い。
そして、“n≧4”のケースにおいて、チャージポンプ回路Wは、所定の基準振幅を有する第1クロック信号(CLK)が加わる第1クロックライン(LL1)と、基準振幅を有し且つ第1クロック信号とは逆相の第2クロック信号(CLKB)が加わる第2クロックライン(LL2)とを更に備え、第1対象コンデンサ及び第2対象コンデンサと第1クロックライン及び第2クロックライン(LL1、LL2)との間に振幅低減部(MA、MB)が設けられ、振幅低減部は、第1クロック信号(CLK)と同相であって且つ基準振幅よりも小さな振幅を有するクロック信号(CLK’)を第1対象コンデンサ及び第2対象コンデンサの内の一方のコンデンサの第2端(図3の構成ではコンデンサC[n-1]の第2端)に供給し、第2クロック信号(CLKB)と同相であって且つ基準振幅よりも小さな振幅を有するクロック信号(CLKB’)を第1対象コンデンサ及び第2対象コンデンサの内の他方のコンデンサの第2端(図3の構成ではコンデンサC[n]の第2端)に供給すると良い。
第1クロック信号(CLK)と同相であって且つ基準振幅よりも小さな振幅を有するクロック信号(CLK’)を第2端にて受けるコンデンサは、図3の構成ではコンデンサC[n-1]であるが、コンデンサC[n]であり得る。同様に、第2クロック信号(CLKB)と同相であって且つ基準振幅よりも小さな振幅を有するクロック信号(CLKB’)を第2端にて受けるコンデンサは、図3の構成ではコンデンサC[n]であるが、コンデンサC[n-1]であり得る。
“n≧3”のケース又は“n≧4”のケースでは、以下のようにチャージポンプ回路Wを構成することができる。即ち、チャージポンプ回路Wにおいて、複数のコンデンサ(C[1]~C[n])の内、第(n-1)整流素子及び第n整流素子間の接続ノード(ND[n])又は第(n-2)整流素子及び第(n-1)整流素子間の接続ノード(ND[n-1])に第1端が接続されたコンデンサ(C[n]又はC[n-1])が対象コンデンサに含まれていて良い。
そして、“n≧3”のケース又は“n≧4”のケースにおいて、チャージポンプ回路Wは、所定の基準振幅を有する第1クロック信号(CLK)が加わる第1クロックライン(LL1)と、基準振幅を有し且つ第1クロック信号とは逆相の第2クロック信号(CLKB)が加わる第2クロックライン(LL2)とを更に備え、対象コンデンサと第1クロックライン及び第2クロックラインの何れか一方との間に振幅低減部(MA又はMB)が設けられ、振幅低減部は、第1クロック信号又は第2クロック信号と同相であって且つ基準振幅よりも小さな振幅を有するクロック信号(CLK’又はCLKB’)を、対象コンデンサの第2端に供給すると良い。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態並びに後述の第3及び第4実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第4実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第4実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3及び第4実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第4実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
振幅低減部をデプレッション型のMOSFETにて構成する例を上述したが、非対象コンデンサに対して供給されるクロック信号の振幅よりも小さな振幅を持つクロック信号を対象コンデンサに供給できる限り、振幅低減部の構成は任意であって良い。
例えば、チャージポンプ回路10において、図11に示す如く、トランジスタMA及びMBの代わりにレベルシフタ170を設け、レベルシフタ170を振幅低減部として機能させても良い。図11において、コンデンサC[n-1]の第2端、コンデンサC[n]の第2端は、夫々、クロックラインLL1’、LL2’に接続され、且つ、レベルシフタ170は、クロックラインLL1及びLL1’間に挿入されると共にクロックラインLL2及びLL2’間に挿入される。そして、レベルシフタ170は、クロック信号CLK、CLKBのハイレベルを低電位側にシフトさせたクロック信号を、夫々、クロック信号CLK’、CLKB’として生成する。即ち、レベルシフタ170は、クロック信号CLKと同相であって且つハイレベルの電位をクロック信号CLKのそれよりも低く抑えたクロック信号CLK’を生成すると共に、クロック信号CLKBと同相であって且つハイレベルの電位をクロック信号CLKBのそれよりも低く抑えたクロック信号CLKB’を生成する。故に、クロック信号CLK’及びCLKB’の振幅はクロック信号CLK及びCLKBの振幅よりも小さい。クロック信号CLK’及びCLKB’の振幅の定め方は第1実施形態で述べた通りである。生成されたクロック信号CLK’、CLKB’は、夫々、クロックラインLL1’、LL2’に出力される。
図9の構成にレベルシフタを適用する場合には、クロックラインLL2及びLL2’間にのみレベルシフタを挿入してクロック信号CLKBからクロック信号CLKB’を生成する機能のみをレベルシフタに持たせれば良い。同様に、図10の構成にレベルシフタを適用する場合には、クロックラインLL1及びLL1’間にのみレベルシフタを挿入してクロック信号CLKからクロック信号CLK’を生成する機能のみをレベルシフタに持たせれば良い。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。EEPROM1は任意の電気機器に搭載される、或いは、EEPROM1及びMPU2は任意の電気機器に搭載される。電気機器は一般に電子機器に分類される機器を含み、以下の説明における電気機器を電子機器と読み替えても良い。EEPROM1が搭載される又はEEPROM1及びMPU2が搭載される電気機器は、例えば、情報端末、携帯電話機(スマートホンに分類される携帯電話機を含む)、パーソナルコンピュータ、テレビ受信機、洗濯機、空調機を含む他、車載用の電気機器であっても良い。
図12に自動車である車両CRの外観図の例を示す。車両CRは、図示されないバッテリと、バッテリの出力電圧に基づく駆動電圧の供給を受けて動作する電気機器E11~E18と、を搭載している。尚、図12に示される電気機器E11~E18の搭載位置は例に過ぎず、それらの搭載位置は様々に変更され得る。EEPROM1及びMPU2を電気機器E11~E18の何れに対しても組み込むことが可能である。
電気機器E11は、車両CRのエンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御及びオートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。電気機器E12は、車両CRに設けられたHID(high intensity discharged lamp)及びDRL(daytime running lamp)などの点灯制御及び消灯制御を行うランプコントロールユニットである。電気機器E13は、車両CRのトランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。電気機器E14は、車両CRの運動に関連する制御、例えば、ABS(anti-lock brake system)制御、EPS(electric power steering)制御及び電子サスペンション制御などを行うボディコントロールユニットである。
電気機器E15は、車両CRのドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。電気機器E16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ及び電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、車両CRの工場出荷段階で車両CRに組み込まれる電気機器である。電気機器E17は、車載A/V(audio/visual)機器、カーナビゲーションシステム及びETC(electronic toll collection system)用機器など、ユーザオプション品として任意で車両CRに装着される電気機器である。電気機器E18は、車両CRにおけるブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電気機器である。
図13に、車両CRに搭載可能なエアバッグシステム400の例を示す。図13に示すエアバッグシステム400は、ECU(Electronic Control Unit)410、衝突検知センサ420、着火装置(スクイブ)430及びエアバッグ440を備えている。ECU410は、MPU411、点火回路412及びEEPROM413を含んで構成される。EEPROM413として第1又は第2実施形態に係るEEPROM1を用いることができ、MPU411は図1のMPU2として機能する。
衝突検知センサ420は、車両CRの前方及び側方からの衝撃を検出する。MPU411は、衝突検知センサ420の検知結果に基づいて衝撃評価値を演算し、演算された衝撃評価値が所定の衝突判定値を超える場合に点火回路412を作動させる。これにより、着火装置430に電流が流れてエアバッグ440が展開される。EEPROM413にはエアバッグシステム400の動作状況についてのデータを格納できる。当該データは、故障診断により故障が検知された場合などにEEPROM413に書き込まれて良い。書き込まれたデータは故障原因の解析等に有益となる。
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態では、上述の第1~第3実施形態に対して適用可能な変形技術等を説明する。
整流素子D[1]~D[n]の夫々は、ダイオード接続されたMOSFETではなく、PN接合により構成されたダイオード(半導体ダイオード)であっても良い。
EEPROM1は不揮発性メモリとしての半導体記憶装置の例である。本発明に係る半導体記憶装置は、EEPROM1に限定されず、チャージポンプ回路10の出力電圧Vppを用いて駆動する記憶装置(特に例えばチャージポンプ回路10の出力電圧Vppを用いてライト処理を行う記憶装置)であれば任意である。例えば、半導体記憶装置はフラッシュメモリであっても良い。
EEPROM1等の半導体記憶装置において、チャージポンプ回路10は、半導体記憶装置の外部に設けられるものであっても良い。即ち、図1の構成を例にして説明すると、図1に示されるEEPROM1からチャージポンプ回路10を削除したEEPROMを半導体記憶装置として形成し、その半導体記憶装置に対しチャージポンプ回路10を外付け接続するようにしても良い。
チャージポンプ回路10の適用先は半導体記憶装置に限定されない。即ち例えば、チャージポンプ回路10を用いて昇圧型電源装置を構成するようにしても良い。チャージポンプ回路10そのものが昇圧型電源装置であると解することもできる。チャージポンプ回路10を半導体集積回路にて構成すれば、その昇圧型電源装置は半導体装置の一種に相当する。
上述の主旨を損なわない形で、任意の信号又は電圧に関して、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。また、上述の主旨を損なわない形で、FETのチャネル型を任意に変更可能である。
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。