JP7221130B2 - トナーバインダー - Google Patents

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Description

本発明は、トナーバインダーに関する。
複写機、プリンター等における画像の定着方式として一般的に採用されている熱定着方式用のトナーバインダーは、低温定着性、耐ホットオフセット性及び保存安定性等を両立させることが要求されている。このため、トナーバインダーは、定着温度より低い温度では貯蔵弾性率が高く、定着し始める温度では短時間で貯蔵弾性率が低く、また高い温度まで一定の貯蔵弾性率を維持するというように、定着温度前後で貯蔵弾性率が適切な値に変化することが求められる。
上述の適切な貯蔵弾性率変化を達成するために、従来のトナーバインダーでは、ポリエステルを主成分として用いている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかし、ポリエステルを主成分とするトナーバインダー及びこれを用いたトナーは、エチレン不飽和結合を有する単量体の付加重合物に比べて、吸湿を原因とする体積固有抵抗値の低下により帯電安定性が悪化するという問題がある。また、ポリエステルを主成分とするトナーバインダーを用いたケミカルトナーを製造する場合は、エチレン不飽和結合を有する単量体を用いる乳化重合や懸濁重合以外の、溶解懸濁法(例えば、特許文献3参照)や乳化凝集法(例えば、特許文献4参照)等の特殊な粒子化技術が必要となり製造コストがかかるという問題がある。
一方、ポリエステルの代わりに、従来のエチレン性不飽和結合を有する単量体の付加重合物を主成分として用いたトナーバインダーは、分子間凝集力がポリエステルに比べて小さいため、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立が困難である。
この課題解決のために、低分子量と高分子量の成分を併用する技術や(例えば、特許文献5参照)、高凝集力を持つ部位を構成単位に使用する技術(例えば、特許文献6参照)などが示されているが、いずれも定着温度範囲での貯蔵弾性率の上昇に伴い、低温定着性が不充分であるという問題がある。
そこで、エチレン不飽和結合を有する単量体の付加重合物のうち結晶性のアクリレート樹脂を用いることで低温定着性を向上できるとする技術(特許文献7~10など)が提案されている。
特許文献7では結晶性のアクリレート樹脂単独やスチレンとの共重合物を用いたトナーが示されている。結晶性のアクリレート樹脂単独では高い融点による保存性とシャープメルト性による低温定着性を達成できるが、高温弾性が不足するため、モノクロ用高速機などのニップ圧の高い定着機では耐ホットオフセット性が不足するという問題がある。
特許文献8、9では結晶性のアクリレート樹脂と架橋剤との組合せにより、上記の耐ホットオフセット性を解決しようとしているが、不溶成分の発生により水性媒体中への樹脂分散が困難になりケミカルトナーへの応用が難しく、粉砕トナーへの適用のみとなる事に加え、架橋による低温粘度が上昇する。そのため近年ますます求められるようになった低温定着性の要求を満たすことができない。
特許文献10では結晶性アクリレート樹脂を用いることで、クリアトナーのワックスによる質感のムラを抑える事に応用しているが、通常のトナーバインダーとして求められる低温定着性と耐ホットオフセット性とを両立することができない。
特許第4493080号公報 特許第2105762号公報 特許第3596104号公報 特許第3492748号公報 特開平11-327210号公報 特許第3212860号公報 特開平11-44967号公報 特許第3458165号公報 特開2000-352839号公報 特開2011-095727号公報
本発明の目的は、低温定着性、耐ホットオフセット性、保存安定性、帯電安定性及び耐久性に優れたトナーに用いられるトナーバインダーを提供することにある。
これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、ビニル樹脂(A)が単量体(a)を必須構成単量体とする重合物であり、単量体(a)が、鎖状炭化水素基を有し、鎖状炭化水素基の炭素数が18~36の(メタ)アクリレートであり、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、鎖状炭化水素基の炭素数が22の(メタ)アクリレート(a1)の重量割合が30~98.5重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)の重量割合が0.1~20重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が24の(メタ)アクリレート(a3)の重量割合が0.1~1重量%であるトナーバインダーである。
本発明により、低温定着性、耐ホットオフセット性、保存安定性、帯電安定性及び耐久性に優れたトナーに用いられるトナーバインダーを提供することができる。
本発明のトナーバインダーは、ビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、ビニル樹脂(A)が単量体(a)を必須構成単量体とする重合物であり、単量体(a)が、鎖状炭化水素基を有し、鎖状炭化水素基の炭素数が18~36の(メタ)アクリレートであり、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、鎖状炭化水素基の炭素数が22の(メタ)アクリレート(a1)の重量割合が30~98.5重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)の重量割合が0.1~20重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が24の(メタ)アクリレート(a3)の重量割合が0.1~1重量%であるトナーバインダーである。
上記の単量体(a)は、鎖状炭化水素基を有し、鎖状炭化水素基の炭素数が18~36の(メタ)アクリレートである。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
鎖状炭化水素基の炭素数が18~36の(メタ)アクリレートとしては、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート[オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、アラキジル(メタ)アクリレート、ヘンエイコサニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、モンタニル(メタ)アクリレート、ミリシル(メタ)アクリレート及びドトリアコンチル(メタ)アクリレート等]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリレート[2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
これらの内、(A)の結晶性やトナーの保存安定性の観点から好ましくは炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、更に好ましくは炭素数18~30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはオクタデシル(メタ)アクリレート、アラキジル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート及びリグノセリル(メタ)アクリレートであり、最も好ましいのはアラキジルアクリレート、ベヘニルアクリレート及びリグノセリルアクリレートである。
単量体(a)は少なくとも3種を併用しており、4種以上を併用しても良い。
ビニル樹脂(A)の必須構成単量体である単量体(a)は、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、鎖状炭化水素基の炭素数が22の(メタ)アクリレート(a1)の重量割合が30~98.5重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)の重量割合が0.1~20重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が24の(メタ)アクリレート(a3)の重量割合が0.1~1重量%であり、以下に詳細を説明する。
鎖状炭化水素基の炭素数が22の(メタ)アクリレート(a1)は(A)の結晶性やトナーの保存安定性及び低温定着性の観点から、好ましくはベヘニルアクリレートである。また、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、(a1)の重量割合は、(A)の結晶性の観点から、30~98.5重量%であり、好ましくは35~97重量%、更に好ましくは40~95重量%、特に好ましくは45~93重量%、最も好ましくは48~90重量%である。
鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)は(A)の結晶性やトナーの保存安定性や帯電安定性及び耐久性の観点から、好ましくはアラキジルアクリレートである。また、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、(a2)の重量割合はトナーの保存安定性及び帯電安定性の観点から、0.1~20重量%であり、好ましくは0.5~20重量%であり、より好ましくは0.6~17重量%、更に好ましくは0.7~15重量%、特に好ましくは0.9~13重量%、最も好ましくは1~10重量%である。
鎖状炭化水素基の炭素数が24の(メタ)アクリレート(a3)はトナーの保存安定性や帯電安定性及び耐久性の観点から、好ましくはリグノセリルアクリレートである。また、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、(a3)の重量割合はトナーの保存安定性及び帯電安定性の観点から、0.1~1重量%であり、好ましくは0.1~0.9重量%、更に好ましくは0.1~0.8重量%、特に好ましくは0.2~0.7重量%、最も好ましくは0.2~0.6重量%である。
本発明におけるビニル樹脂(A)を構成する単量体中の単量体(a)の含有量は、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、低温定着性の観点から好ましくは30.6~99.1重量%であり、更に好ましくは39.0~98.0重量%であり、特に好ましくは44.0~95.8重量%であり、最も好ましくは50.0~91.2重量%である。
ビニル樹脂(A)は構成単量体として上記単量体(a)以外に、トナーの耐ホットオフセット性の観点から、更にニトリル基、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基及びビューレット基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体(b)を含んでも良い。
上記の単量体(b)としては、ニトリル基を有する単量体(b1)、ウレタン基を有する単量体(b2)、ウレア基を有する単量体(b3)、アミド基を有する単量体(b4)、イミド基を有する単量体(b5)、アロファネート基を有する単量体(b6)、イソシアヌレート基を有する単量体(b7)及びビューレット基を有する単量体(b8)等が挙げられる。
単量体(b)が有する官能基は、凝集度が高い官能基、かつ、極性が高い官能基を有しているので、単量体(b)を用いることで、ビニル樹脂(A)の融解ピーク温度Tmを上げることができる。
ニトリル基を有する単量体(b1)としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられる。
ウレタン基を有する単量体(b2)としては、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~22のアルコール(ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート及びビニルアルコール等)と炭素数1~30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体、並びに、炭素数1~26のアルコールとエチレン性不飽和結合を有する炭素数1~30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体等が挙げられる。
炭素数1~30のイソシアネートとしては、モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート,水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’一ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等が挙げられる。
炭素数1~26のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール及びエルシルアルコール等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する炭素数1~30のイソシアネートとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
なお、本明細書中、イソシアネート基を有する化合物及び構造における炭素数にはイソシアネート基(-NCO)に含まれる炭素数は含まない。
ウレア基を有する単量体(b3)としては、炭素数3~22のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t-ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、2級アミン(ジエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロヘキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体等が挙げられる。
アミド基を有する単量体(b4)としては、炭素数3~22のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を公知の方法で反応させた単量体等が挙げられる。
なお、本明細書中、カルボキシル基を有する化合物及び構造における炭素数には、カルボキシル基部分に含まれる炭素数は含まない。
イミド基を有する単量体(b5)としては、アンモニアとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~10の無水カルボン酸(無水マレイン酸及びジアクリル酸無水物等)を公知の方法で反応させた単量体、及び炭素数1~30の1級アミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~10の無水カルボン酸を公知の方法で反応させた単量体等が挙げられる。
なお、本明細書中、無水カルボン酸構造を有する単量体における炭素数には、カルボキシル基部分に由来する炭素数(2つ)は含まない。
アロファネート基を有する単量体(b6)としては、ウレタン基を有する単量体(b2)と炭素数1~30のイソシアネートを公知の方法で反応させた単量体等が挙げられる。
イソシアヌレート基を有する単量体(b7)としては、イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
ビューレット基を有する単量体(b8)としては、ウレア基を有する単量体(b3)と炭素数1~30のイソシアネートを公知の方法で反応させた単量体等が挙げられる。
なお、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基及びビューレット基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基をビニル樹脂(A)中に導入する方法としては、上記単量体(b2)~(b8)を用いる方法のほかに、以下の方法を用いることもできる。
まず、単量体(b2)~(b8)を得るための2つの化合物(エチレン性不飽和結合を有する化合物及び他方の化合物)のうち、エチレン性不飽和結合を有する化合物を単量体(a)と反応させる。続いて、上記エチレン性不飽和結合を有する化合物と単量体(a)との重合物に対して他方の化合物を反応させる。以上の手順によって、「エチレン性不飽和結合を有する化合物と単量体(a)との重合物」と「他方の化合物」とが結合してビニル樹脂(A)が得られる。この反応の際に、「エチレン性不飽和結合を有する化合物と単量体(a)との重合物」と「他方の化合物」とが、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基又はビューレット基により結合されるため、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基及びビューレット基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基をビニル樹脂(A)中に導入することができる。
上記方法の場合、ビニル樹脂(A)を構成する単量体として単量体(b2)~(b8)を用いているわけではないが、得られる化合物が同じであるため、便宜上、単量体(b2)~(b8)を用いたと表現する。
これらの単量体(b)の内、トナーにした際の貯蔵弾性率と損失弾性率とのバランスの観点から好ましくはニトリル基を有する単量体(b1)、ウレタン基を有する単量体(b2)、ウレア基を有する単量体(b3)及びアミド基を有する単量体(b4)であり、更に好ましくは、ニトリル基を有する単量体(b1)、ウレア基を有する単量体(b3)及びアミド基を有する単量体(b4)である。
単量体(b)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ビニル樹脂(A)を構成する単量体に単量体(b)を含む場合、単量体(b)の重量割合は、低温定着性や耐ホットオフセット性及び帯電安定性の観点から、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、好ましくは0.5~34.7重量%であり、更に好ましくは1.0~31.0重量%であり、特に好ましくは2.5~28.0重量%であり、最も好ましくは5.0~25.0重量%である。
上記単量体(b)の分子量を、上記単量体(b)1分子が有するニトリル基、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基及びビューレット基の合計数で除した値(官能基当量とも言う)はトナーにした際の損失弾性率の観点から800以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
ビニル樹脂(A)は構成単量体として上記単量体(a)及び単量体(b)以外に、(a)及び(b)以外の単量体(c)を含んでもよい。
単量体(c)としては、スチレン、アルキル基の炭素数が1~3のアルキルスチレン(α-メチルスチレン及びp-メチルスチレン等)、アルキル基の炭素数が1~17のアルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレート等)及びエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~22のアルコール(ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート及びビニルアルコール等)及びアルキル基の炭素数が1~17のアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、モノカルボン酸〔(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等が含まれ、好ましくは炭素数2~15のモノカルボン酸〕、ジカルボン酸〔(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等が含まれ、好ましくは炭素数2~15のジカルボン酸〕及びジカルボン酸モノエステル〔上記ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル等が含まれ、好ましくは炭素数1~17のモノアルキル基)等〕等が挙げられる。
ビニルエステルモノマーとしては、脂肪族ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びイソプロペニルアセテート等が含まれ、好ましくは炭素数4~15の脂肪族ビニルエステル)、不飽和カルボン酸多価アルコールエステル〔エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が含まれ、好ましくは炭素数8~200の不飽和カルボン酸多価アルコールエステル〕及び芳香族ビニルエステル(メチル-4-ビニルベンゾエート等が含まれ、好ましくは炭素数9~15の芳香族ビニルエステル)等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系ビニルモノマーとしてはオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン及びオクテン等が含まれ、好ましくは炭素数2~10のオレフィン)及びジエン(ブタジエン、イソプレン、1,6-ヘキサジエン等が含まれ、好ましくは炭素数4~10のジエン)等が挙げられる。
これらのうち耐ホットオフセット性、保存安定性及び帯電安定性の観点から、好ましくはスチレン、アルキル基の炭素数が1~3のアルキルスチレン、アルキル基の炭素数が1~17のアルキル(メタ)アクリレート及びカルボキシル基含有ビニルモノマーであり、特に好ましくはスチレン、メチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸である。また、これらを2種以上混合物してもよい。
ビニル樹脂(A)を構成する単量体中に単量体(c)を含む場合、単量体(c)の重量割合は保存安定性、帯電安定性及び耐久性の観点から、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、好ましくは0.4~34.7重量%であり、更に好ましくは1.0~30.0重量%であり、特に好ましくは2.5~28.0重量%であり、最も好ましくは5.0~25.0重量%である。
本発明におけるビニル樹脂(A)の重量平均分子量は、トナーの耐ホットオフセット性及び帯電安定性の観点から、好ましくは10,000~3,000,000、更に好ましくは20,000~2,000,000、特に好ましくは30,000~1,500,000、最も好ましくは50,000~1,000,000である。ビニル樹脂(A)の重量平均分子量は、重合温度、ラジカル重合開始剤量、連鎖移動剤などで調整できる。
ビニル樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(以降GPCと略記)を用いて以下の条件で測定する。
装置(一例) : HLC-8120 〔東ソー(株)製〕
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をアパチャー1μmのPTFEフィルターでろ過したものを用いる)
移動相 :テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)〔東ソー(株)製〕
ビニル樹脂(A)並びに後記するトナーバインダーについて樹脂をDSC測定(示差走査熱量測定)して得られる融解ピーク温度Tm(℃)は、トナーとした際の保存安定性の観点から、好ましくは40~100℃であり、更に好ましくは45~80℃、特に好ましくは50~75℃である。
Tmは(A)を構成する単量体の種類や構成比率(ビニル樹脂(A)を構成する単量体(a)の炭素数を調整すること及び(A)を構成する単量体(a)の重量比率を調整する等)、重量平均分子量などで調整することができる。一般的には(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、(A)の重量平均分子量を増やす等の方法によりTmを上げることができる。
本発明におけるDSC測定は、示差走査熱量計{TA Instruments(株)製、DSC Q20等}を用いて以下の条件で測定される値である。
<測定条件>
(1)30℃で10分間保持
(2)10℃/分で150℃まで昇温
(3)150℃で10分間保持
(4)10℃/分で0℃まで冷却
(5)0℃で10分間保持
(6)10℃/分で150℃まで昇温
(7)(6)の過程にて測定される示差走査熱量曲線の各吸熱ピークを解析する。
ビニル樹脂(A)は、トナーにした際の保存安定性と低温定着性の観点から、関係式(1-1)を満たすことが好ましい。
関係式(1-1):1.2≦ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)≦2.6
但し、計算値は小数点第2位を四捨五入して求めるものとする。
更に好ましくは関係式(1-2)を満たすものであり、特に好ましくは関係式(1-3)を満たすものである。
関係式(1-2):1.6≦ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)≦2.6
関係式(1-3):1.7≦ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)≦2.5
関係式(1-1)、(1-2)及び(1-3)において、G’Tm-10は、ビニル樹脂(A)の温度が(Tm-10)℃である時の(A)の貯蔵弾性率(Pa)であり、G’Tm+30は、(A)の温度が(Tm+30)℃である時の(A)の貯蔵弾性率(Pa)である。 ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)は、(A)の重量平均分子量や単量体(b)又は単量体(c)の種類及び量で調整することができる。(A)の重量平均分子量を減らす、(b)や(c)の極性を下げる、(b)の量を減らす、(c)の量を増やす等の方法によりln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)を上げることができる。
本発明におけるビニル樹脂(A)の貯蔵弾性率G’並びに後記するトナーバインダーの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’は、下記粘弾性測定装置を用いて、以下の条件で測定される値である。
装置 :ARES-24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
本発明におけるビニル樹脂(A)の酸価は40mgKOH/g以下が好ましい。酸価が40mgKOH/g以下であると融解ピーク温度Tmが上がることや吸湿性が下がることで保存安定性が良好になる。ビニル樹脂(A)の酸価は、更に好ましくは1~30mgKOH/gであり、特に好ましくは2~25mgKOH/gである。
ビニル樹脂(A)の酸価は、単量体の酸価及び酸価を有する単量体の含有量で調整できる。(A)の酸価は、例えばJIS K 0070などの方法で測定される。
本発明におけるビニル樹脂(A)は、単量体(a)、並びに必要に応じて単量体(b)及び/又は単量体(c)を含有する単量体組成物を公知の方法(特開平5-117330号公報等に記載の方法等)で重合することで製造できる。例えば、上記単量体を溶媒(トルエン等)中でラジカル開始剤とともに反応させる溶液重合法により合成することが出来る。
ラジカル反応開始剤としては、特に制限されず、無機過酸化物、有機過酸化物及びアゾ化合物等が挙げられる。また、これらのラジカル反応開始剤を併用してもかまわない。
無機過酸化物としては、特に限定されないが、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
有機過酸化物としては、特に制限されないが、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン、ジ-t-へキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシへキシン-3、アセチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、オクタニノルパーオキシド、デカノリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、m-トルイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及びt-ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
アゾ化合物としては、特に制限されないが、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
これらの中でも開始剤効率が高く、シアン化合物などの有毒な副生成物を生成しないことから、有機過酸化物が好ましい。さらに、ラジカル反応が効率よく進行し、使用量が少なくて済むことから、水素引抜き能の高い反応開始剤が更に好ましく、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン及びジ-t-へキシルパーオキシド等の水素引抜き能の高いラジカル反応開始剤が特に好ましい。
本発明のトナーバインダーは、ビニル樹脂(A)以外のトナーバインダー用重合物として公知であるその他の樹脂(B)(特許第4493080号公報、特許第2105762号公報及び特開平06-194876号公報に記載の重合物等)を含有しても良い。
また、本発明のトナーバインダーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記のビニル樹脂(A)の重合時に使用した化合物及びその残渣を含んでいてもよい。
その他の樹脂(B)はポリエステル樹脂(B1)、(A)を除くビニル樹脂樹脂(B2)等が挙げられる。
ポリエステル樹脂(B1)としては線形ポリエステル樹脂及び非線形ポリエステル樹脂等が挙げられ、保存安定性、耐ホットオフセット性、帯電安定性及び耐久性の観点から、非線形ポリエステル樹脂が好ましい。ここで、「非線形」のポリエステル樹脂(B1)とは、主鎖中に分岐(架橋点)を有するポリエステル樹脂である。
ポリエステル樹脂(B1)はポリエステル(B11)を炭素-炭素結合により架橋した構造を有する樹脂であってもよい。ここで、炭素-炭素結合による架橋は、ポリエステル(B11)分子に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(B11)分子に含まれる他の炭素原子とが直接結合することにより形成される。ここでいうポリエステル(B11)は特に限定はなく、炭素-炭素結合による架橋を形成できるものであればどのようなポリエステルでもよい。なかでも架橋構造を形成し易いという観点から、好ましくは炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(B111)である。
ポリエステル樹脂(B1)は上記ポリエステル(B111)の炭素-炭素二重結合を反応させる方法の他、加熱等による水素引き抜き反応によってポリエステル樹脂(B11)に含まれる炭素原子に結合した水素原子を引き抜いて架橋する方法(水素原子引き抜き反応とも言う)等によっても得ることができる。
また、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(B111)は、例えば不飽和カルボン酸成分及び/又は不飽和アルコール成分を含有し、不飽和カルボン酸成分及び不飽和アルコール成分のいずれかの構成成分を重縮合して得られたポリエステル樹脂であることが好ましい。
さらに、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(B111)は、不飽和カルボン酸成分及び不飽和アルコール成分以外に、飽和アルコール成分や、飽和カルボン酸成分を構成成分として含んでいてもよい。
また、ポリエステル(B111)はこれらの各成分を、それぞれ1種類ずつ用いて重縮合したものでもよく、各成分として複数種類を併用して重縮合したものでもよい。
なお、本明細書において、不飽和カルボン酸とは、炭素原子間不飽和結合(芳香族炭化水素に含まれるものを除く)を有するカルボン酸のことであり、同様に不飽和アルコール成分とは、炭素原子間不飽和結合(芳香族炭化水素に含まれるものを除く)を有するアルコールのことである。
不飽和アルコール成分としては、不飽和モノオール及び不飽和ジオール等が挙げられる。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
不飽和モノオールとしては、炭素数2~30の不飽和モノオールが挙げられ、好ましい例としては、2-プロペン-1-オール、パルミトレイルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
不飽和ジオールとしては、炭素数2~30の不飽和ジオールが挙げられ、好ましい例としてはリシノレイルアルコールが挙げられる。
不飽和アルコール成分として耐熱保存性の観点から、好ましくは炭素数2~30の不飽和モノオールであり、より好ましくは2-プロペン-1-オール、パルミトレイルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチルである。
飽和アルコール成分としては、飽和モノオール(x1)、飽和ジオール(x2)、及び3価以上の価数のポリオール(x3)等が挙げられる。
飽和モノオール(x1)としては、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等)等が挙げられる。
これら飽和モノオールのうち、保存安定性の観点から、好ましいものは炭素数8~24の直鎖アルキルアルコールであり、更に好ましくはドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びこれらの併用である。
飽和ジオール(x2)としては、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール(プロピレングリコール)、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール及び1,12-ドデカンジオール等)(x21)、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等)(x22)、炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)(x23)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物(好ましくは付加モル数1~30)(x24)、芳香族ジオール〔単環2価フェノール(ハイドロキノン等)及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(好ましくは付加モル数2~30)〕(x25)等が挙げられる。
これらの飽和ジオール(x2)のうち、低温定着性と耐熱保存性の観点から、炭素数2~36のアルキレングリコール(x21)及び芳香族ジオール(x25)が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物がさらに好ましい。アルキレンオキサイドにおいて、アルキレン基の炭素数は好ましくは2~4であり、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、2,3-、1,3-又はiso-ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン等が好ましい。
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノール類にアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)を付加して得られる。ビスフェノール類としては、下記一般式(2)で示されるもの等が挙げられる。
HO-Ar-P-Ar-OH (2)
[式中、Pは炭素数1~3のアルキレン基、-SO-、-O-、-S-、又は直接結合を表し、Arは、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
ビスフェノール類とは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2-メチルビスフェノールA、2,6-ジメチルビスフェノールA及び2,2’-ジエチルビスフェノールF等が挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。
これらビスフェノール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、炭素数が2~4のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記することがある。)、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド(「1,2-プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある。)、1,2-、2,3-、1,3-又はiso-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン及びこれらの2種以上の併用等が挙げられる。
耐熱保存性及び低温定着性の観点から、ビスフェノール類のAO付加物を構成するAOは好ましくはEO及び/又はPOである。また、AOの付加モル数は、好ましくは2~30モル、さらに好ましくは2~10モルである。
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物のうち、トナーの定着性、粉砕性及び耐熱保存性の観点から好ましいものは、ビスフェノールAのEO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~4、より好ましくは2~3)及び/又はPO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~4、より好ましくは2~3)である。
3価以上の価数のポリオール(x3)としては、炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコール、糖類及びその誘導体、脂肪族多価アルコールのAO付加物(AO付加モル数は好ましくは1~30)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のAO付加物(付加モル数は好ましくは2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(付加モル数は好ましくは2~30)等が挙げられる。
炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコールとしては、アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物が挙げられ、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
糖類及びその誘導体としては、ショ糖及びメチルグルコシド等が挙げられる。
3価以上の価数のポリオール(x3)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から、炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコール及びノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(付加モル数は好ましくは2~30)が好ましい。
飽和アルコール成分のうち、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性の両立の観点から好ましいものは、炭素数2~36のアルキレングリコール、ビスフェノール類のAO付加物(付加モル数は好ましくは2~30)、炭素数3~36の3価以上の価数の脂肪族多価アルコール及びノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(付加モル数は好ましくは2~30)である。
飽和アルコール成分として、保存安定性の観点から更に好ましいものは、炭素数2~10のアルキレングリコール、ビスフェノール類のAO付加物(付加モル数は好ましくは2~5)、炭素数2~36の3~8価の脂肪族多価アルコール及びノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(付加モル数は好ましくは2~30)である。
特に好ましくは、炭素数2~6のアルキレングリコール、ビスフェノールAのAO付加物(付加モル数は好ましくは2~5)及び炭素数3~36の3価の脂肪族多価アルコールであり、最も好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールAのAO付加物(付加モル数は好ましくは2~3)及びトリメチロールプロパンである。
不飽和カルボン酸成分としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物や低級アルキルエステル等が挙げられる。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
不飽和モノカルボン酸としては、炭素数2~30の不飽和モノカルボン酸が含まれ、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3-ブテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、4-ペンテン酸、2-エチル-2-ブテン酸、10-ウンデセン酸、2,4-ヘキサジエン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸及びネルボン酸等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸としては、炭素数2~50のアルケンジカルボン酸が挙げられ、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸及びグルタコン酸等が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸成分のうち、低温定着性及び耐ホットオフセット性の両立の観点から、好ましくは炭素数2~10の不飽和モノカルボン酸及び炭素数2~18のアルケンジカルボン酸であり、更に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸及びフマル酸である。
特に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも同様に好ましい。
飽和カルボン酸成分としては、芳香族カルボン酸及び脂肪族カルボン酸等が挙げられる。飽和カルボン酸成分は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族カルボン酸としては、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、炭素数9~20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等)、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数6~36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)等が挙げられる。
また、飽和カルボン酸成分としては、これらのカルボン酸の無水物、低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよいし、これらのカルボン酸と併用してもよい。
これらの飽和カルボン酸成分のうち、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性の両立の観点から好ましいものは、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸、炭素数0~50の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸及び炭素数9~20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸である。
保存安定性及び帯電安定性の観点から更に好ましくは、安息香酸、アジピン酸、アルキルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの併用である。特に好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
本発明において、ポリエステル(B111)を含むポリエステル樹脂(B1)等は、公知のポリエステルと同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、更に好ましくは160~250℃、特に好ましくは170~235℃で構成成分を反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに好ましくは2~40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(ジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[チタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(酢酸ジルコニル等)及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
また、ポリエステル重合安定性を得る目的で、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、フェノール化合物(ハイドロキノン、メチルハイドロキノン2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-イソプロピルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール及び4-tert-ブチルカテコール等)が挙げられる。
ポリエステル樹脂(B1)の製造法としては、好ましいものとして以下の方法が挙げられる。
まず、不飽和カルボン酸成分と不飽和アルコール成分の少なくともどちらかと、必要により飽和カルボン酸成分及び/又は飽和アルコール成分とを構成成分として縮合反応させて分子内に炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(B111)を得る。次に、ポリエステル(B111)にラジカル反応開始剤を作用させて、ラジカル反応開始剤から発生するラジカルを利用して、ポリエステル(B111)中の不飽和カルボン酸成分及び/又は不飽和アルコール成分に起因する炭素-炭素二重結合同士を架橋反応により結合させる。これにより非線形ポリエステル樹脂を製造することができる。この方法は、架橋反応を短時間で均一にできる点で好ましい方法である。
ポリエステル(B111)の架橋反応のために用いるラジカル反応開始剤としては、特に制限されず、前述した無機過酸化物、有機過酸化物及びアゾ化合物等が挙げられる。また、これらのラジカル反応開始剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ラジカル反応開始剤の使用量は、特に制限されないが、ポリエステル(B111)を得るための重合反応に用いた不飽和カルボン酸成分及び不飽和アルコール成分の合計重量に基づいて、0.1~50重量部が好ましい。
ラジカル反応開始剤の使用量が0.1重量部以上の場合に架橋反応が進行し易くなる傾向にあり、50重量部以下の場合に、臭気が良好となる傾向にある。この使用量は、30重量部以下であることが更に好ましく、20重量部以下であることが特に好ましく、10重量部以下であることが最も好ましい。
上記種類のラジカル反応開始剤を上記の使用量で用いることでポリエステル樹脂(B1)を作製した場合、好適にポリエステル(B111)中の炭素-炭素二重結合同士の架橋反応が起こり、トナーの耐ホットオフセット性と耐熱保存性及び画像強度が良好になることから好ましい。
ポリエステル樹脂(B1)の酸価は、帯電安定性の観点から好ましくは0~30mgKOH/gであり、更に好ましくは0~25mgKOH/gであり、特に好ましくは0~10mgKOH/gであり、最も好ましくは、0.1~10mgKOH/gである。
ポリエステル樹脂(B1)の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
トナーバインダー中のビニル樹脂(A)の重量割合は、トナーにした際の貯蔵弾性と損失弾性のバランスや帯電安定性及び耐久性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として5~100重量%であることが好ましく、更に好ましくは10~100重量%、特に好ましくは20~100重量%、最も好ましくは30~95重量%である。
トナーバインダーの粘弾性につき、特に80℃での損失弾性率[低温損失弾性率G’’(80℃)]は、トナーの定着性の観点から、好ましくは6.0E+02Pa~3.0E+05Pa、更に好ましくは6.0E+02Pa~1.0E+05Paである。
6.0E+02Pa以上だと定着が良好になる。一方で、3.0E+05Pa以下であると定着時に紙への接着が十分となる。
トナーバインダーの粘弾性につき、特に110℃での貯蔵弾性率[高温貯蔵弾性率G’(110℃)]は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは6.0E+02Pa以上、更に好ましくは1.0E+04Pa以上である。
なお、本明細書において、E+数字で表示する場合、E+02は100倍、E+05は100,000倍のように、数字の数だけゼロを付した数をかけることを意味する。
なお、トナーバインダーの損失弾性率及び貯蔵弾性率は、上記のビニル樹脂(A)の貯蔵弾性率G’の説明で述べた方法と同様の方法で測定することができる。
トナーバインダーの貯蔵弾性率及び損失弾性率は、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量及び構成単量体の組成により、上記の好ましい範囲に調整することができる。、(A)の重量平均分子量を上げる、単量体の組成の極性を上げる等の方法によりトナーバインダーの貯蔵弾性率及び損失弾性率を上げることができる。
トナーバインダーのDSC測定による融解ピーク温度Tmは、40~100℃であることが好ましく、更に好ましくは45~80℃であり、特に好ましくは50~75℃である。
40℃以上ではトナーとした際の保存安定性が良好となる。一方で100℃以下であると低温定着性が良好となる。
なお、トナーバインダーの融解ピーク温度Tmは、ビニル樹脂(A)の融解ピーク温度Tmの説明で述べた方法と同様の方法で測定することができる。
トナーバインダーの融解ピーク温度Tmは、ビニル樹脂(A)を構成する単量体(a)の炭素数を調整すること及び(A)を構成する単量体(a)の重量比率を調整することにより、上記の好ましい範囲に調整することができる。(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、(A)の重量平均分子量を増やす等の方法によりTmを上げることができる。また、(A)の含有量が少ない場合は、その他の樹脂(B)との|ΔSP値|を上げることでTmを下げずに維持することができる。
樹脂のSP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]に従って求めた。
トナーバインダーは、トナーにした際の保存安定性と低温定着性の観点から、関係式(1)を満たすことが好ましい。
関係式(1):1.2≦ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)≦2.6
但し、計算値は小数点第2位を四捨五入して求めるものとする。
更に好ましくは関係式(2)を満たすものであり、特に好ましくは関係式(3)を満たすものである。
関係式(2):1.6≦ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)≦2.6
関係式(3):1.7≦ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)≦2.5
関係式(1)、(2)及び(3)において、G’Tm-10は、トナーバインダーの温度が(Tm-10)℃である時のトナーバインダーの貯蔵弾性率(Pa)であり、G’Tm+30は、トナーバインダーの温度が(Tm+30)℃である時のトナーバインダーの貯蔵弾性率(Pa)である。
ln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)は、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量や単量体(b)又は単量体(c)の種類及び量で調整することができる。ビニル樹脂(A)の重量平均分子量を減らす、(b)や(c)の極性を下げる、(b)の量を減らす、(c)の量を増やす等の方法によりln(G’Tm-10)/ln(G’Tm+30)を上げることができる。
なお、トナーバインダーの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’は、上記粘弾性測定装置を用いて、ビニル樹脂(A)の説明で述べた方法と同様の方法で測定することができる。
トナーバインダーの製造方法について説明する。
トナーバインダーはビニル樹脂(A)を含有していれば特に限定されず、例えばビニル樹脂(A)並びに必要により用いるその他の樹脂(B)及び添加剤を混合する場合の混合方法は公知の方法でよく、混合方法としては、粉体混合、溶融混合及び溶剤混合等が挙げられる。また、(A)並びに必要により用いる(B)及び添加剤は、トナーを製造するときに同時に混合してもよい。この方法の中では、均一に混合し、溶剤除去の必要のない溶融混合が好ましい。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、スタティックミキサー、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等が挙げられる。
混合時の温度としては、50~200℃であることが好ましい。また、混合時間としては、0.5~24時間であることが好ましい。
溶剤に溶解する方法を用いる場合は、溶剤としては特に制限はなく、トナーバインダーを構成する全ての重合物を好適に溶解するものであればよい(トルエン及びアセトン等)。
溶剤を除去する時の温度は50~200℃であることが好ましく、必要に応じて減圧や排風することで溶剤の除去を促進することができる。
本発明のトナーバインダーをトナーとして用いる場合は、必要により着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等を含有してもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、ピグメントレッド、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、ピグメントイエロー、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100部に対して、好ましくは1~40部、より好ましくは3~10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは20~150部、より好ましくは40~120部である。上記及び以下において、部は重量部を意味する。
離型剤としては、以下に記載するフロー軟化点〔T1/2〕が50~170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、エステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。
<フロー軟化点〔T1/2〕>
降下式フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT-500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)をフロー軟化点〔T1/2〕とする。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-ドデセン、1-オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合物[(共)重合により得られるもの及びそれをさらに熱減成して得られるものを含む]、(例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合物)、オレフィンの(共)重合物の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合物のマレイン酸変性物[マレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物等]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル等]等との共重合物等が挙げられる。
マイクロクリスタリンワックスとしては、日本精蝋(株)製のHi-Mic-2095、Hi-Mic-1090、Hi-Mic-1080、Hi-Mic-1070、Hi-Mic-2065、Hi-Mic-1045、Hi-Mic-2045等が挙げられる。
パラフィンワックスとしては、日本精蝋(株)製のParaffin WAX-155、Paraffin WAX-150、Paraffin WAX-145、Paraffin WAX-140、Paraffin WAX-135、HNP-3、HNP-5、HNP-9、HNP-10、HNP-11、HNP-12、HNP-51等が挙げられる。
フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社製のSasolwax C80等が挙げられる。
カルナバワックスとしては、株式会社加藤洋行社製の精製カルナウバワックス 特製1号等が挙げられる。
エステルワックスとしては、脂肪酸エステルワックス(日油社製のニッサンエレクトールWEP-2、WEP-3、WEP-4、WEP-5及びWEP-8等)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、炭素数30~50の脂肪族アルコールなどであり、例えばトリアコンタノールが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数30~50の脂肪酸などであり、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、三菱ケミカル社製のダイヤミッドY、ダイヤミッド200等が挙げられる。
上記の中では低温定着性や耐ホットオフセット性の観点から好ましくは、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナバワックス及びエステルワックスが好ましい。
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有重合物、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有重合物、含フッ素系重合物及びハロゲン置換芳香環含有重合物等が挙げられる。
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。
トナー中のトナーバインダーの含有量はトナー重量に基づき、好ましくは30~97重量%、より好ましくは40~95重量%、さらに好ましくは45~92重量%である。着色剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0.05~60重量%、より好ましくは0.1~55重量%、さらに好ましくは0.5~50重量%である。離型剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。荷電制御剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~7.5重量%である。流動化剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0~10重量%、より好ましくは0~5重量%、さらに好ましくは0.1~4重量%である。また、着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤の合計含有量は、好ましくは3~70重量%、より好ましくは4~58重量%、さらに好ましくは5~50重量%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
本発明のトナーバインダーをトナーとして用いる場合のトナーの製造方法は特に限定されず、混練粉砕法、乳化転相法、乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法及び乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒子化して、さらに分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5~20μmの微粒子とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、体積平均粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3~15μmが好ましい。
乳化重合法及び懸濁重合法は、公知の方法[特公昭36-10231号公報、特公昭47-518305号公報、特公昭51-14895号公報等に記載の方法]を用いることができる。
溶解懸濁法及び乳化凝集法は、公知の方法[特許第3596104号公報、特許第3492748号公報等に記載の方法]を用いることができる。
本発明のトナーバインダーをトナーとして用いる場合のトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル重合物、及びシリコーン重合物等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリアー粒子との重量比は、1/99~100/0である。また、キャリアー粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
本発明のトナーバインダーは、溶解懸濁法や乳化凝集法等の特殊な粒子化技術が必要な手法に加え、乳化重合や懸濁重合といったエチレン不飽和結合を有する単量体を用いる手法によるケミカルトナーの製造にも適する。
本発明のトナーバインダーをトナーとして用いる場合のトナーは、複写機及びプリンター等により支持体(紙及びポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法及びフラッシュ定着方法等が適用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り部は重量部を示す。
<製造例1>[アラキジルアクリレート(a2-1)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、アラキジルアルコール50部、トルエン50部、アクリル酸18部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30ml/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を40kPaに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、アラキジルアクリレート(a2-1)を得た。
<製造例2>[リグノセリルアクリレート(a3-1)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、リグノセリルアルコール50部、トルエン50部、アクリル酸15部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30ml/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を40kPaに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10%重量水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、リグノセリルアクリレート(a3-1)を得た。
<製造例3>[ビニル樹脂(A-1)の合成]
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート[日油(株)製、以下同様]59.4部、製造例1で得たアラキジルアクリレート0.5部、製造例2で得たリグノセリルアクリレート0.1部、スチレン[出光興産(株)製、以下同様]20.0部、アクリロニトリル[ナカライテクス(株)製、以下同様]20.0部、カレンズMOI[2-イソシアナトエチルメタクリレート、昭和電工(株)製、以下同様]1.9部、パーブチルO[t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、日油(株)、以下同様]0.36部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600[日東化成工業(株)、以下同様]0.5部を加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A-1)を得た。
<製造例4>[ビニル樹脂(A-2)の合成]
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート49.0部、アラキジルアクリレート10.0部、リグノセリルアクリレート1.0部、スチレン20.0部、アクリロニトリル20.0部、カレンズMOI1.9部、パーブチルO0.36部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A-2)を得た。
<製造例5>[ビニル樹脂(A-3)の合成]
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート75.0部、アラキジルアクリレート4.5部、リグノセリルアクリレート0.5部、スチレン10.0部、アクリロニトリル10.0部、カレンズMOI1.9部、パーブチルO0.36部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A-3)を得た。
<製造例6>[ビニル樹脂(A-4)の合成]
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート65.0部、アラキジルアクリレート4.5部、リグノセリルアクリレート0.5部、スチレン15.0部、アクリロニトリル15.0部、パーブチルO0.36部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、100℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A-4)を得た。
<製造例7>[ビニル樹脂(A-5)の合成]
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で140℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート90.0部、アラキジルアクリレート0.1部、リグノセリルアクリレート0.1部、スチレン9.8部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.0部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。170℃で0.5時間保持後、さらにジ-t-ブチルパーオキシド0.5部投入し170℃で1時間反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A-5)を得た。
<製造例8>[ビニル樹脂(A-6)の合成]
オートクレーブにベヘニルアクリレート30.0部、アラキジルアクリレート2.0部、リグノセリルアクリレート0.1部、ステアリルアクリレート17.9部、トルエン35.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。スチレン15部、アクリル酸5部、メタクリロニトリル30.0部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5部、及びトルエン28.5部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン3.0部で洗浄した。さらに同温度で4時間保ち、1時間かけて80℃に昇温し、80℃で1時間保持した。さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.3部投入し80℃で2時間反応させた。120℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A-6)を得た。
<製造例9>[アラキジルメタクリレート(a2-2)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、アラキジルアルコール50部、トルエン50部、メタクリル酸22部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30ml/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を40kPaに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10%重量水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、アラキジルメタクリレート(a2-2)を得た。
<製造例10>[リグノセリルメタクリレート(a3-2)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、リグノセリルアルコール50部、トルエン50部、メタクリル酸18部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30ml/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を40kPaに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10%重量水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、リグノセリルメタクリレート(a3-2)を得た。
<製造例11>[ビニル樹脂(A-7)の合成]
オートクレーブにベヘニルメタクリレート[BASF(株)製]59.8部、アラキジルメタクリレート0.1部、リグノセリルメタクリレート0.1部、トルエン35.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。スチレン15.0部、メタクリル酸8.0部、メタクリロニトリル17.0部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.0部、及びトルエン28.5部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン3.0部で洗浄した。さらに同温度で4時間保ち、1時間かけて80℃に昇温し、80℃で1時間保持した。さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.5部投入し80℃で2時間反応させた。120℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A-7)を得た。
<製造例12>[ポリエステル(B111-1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物740部、テレフタル酸118部、アジピン酸118部、トリメチロールプロパン13部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら2時間反応させた。次に、0.5~2.5kPaの減圧下に5時間反応させた後、180℃まで降温した。重合禁止剤としてtert-ブチルカテコール1部を入れ、さらにフマル酸を86部入れ、0.5~2.5kPaの減圧下に8時間反応させた後取り出し、ポリエステル(B111-1)を得た。ポリエステル(B111-1)のガラス転移温度は37℃、重量平均分子量24,000、酸価は2だった。
<比較製造例1>[ビニル樹脂(A’-1)の合成]
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート39.6部、アラキジルアクリレート0.4部、スチレン30.0部、アクリロニトリル30.0部、カレンズMOI1.9部、パーブチルO0.36部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A’-1)を得た。
<比較製造例2>[ビニル樹脂(A’-2)の合成]
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート58.0部、リグノセリルアクリレート2.0部、スチレン20.0部、アクリロニトリル20.0部、カレンズMOI1.9部、パーブチルO0.36部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A’-2)を得た。
<比較製造例3>[ビニル樹脂(A’-3)の合成]
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート69.0部、アラキジルアクリレート20.6部、リグノセリルアクリレート0.4部、スチレン5.0部、アクリロニトリル5.0部、カレンズMOI1.9部、パーブチルO0.36部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A’-3)を得た。
製造例3~8、11で得たビニル樹脂(A-1)~(A-7)及び比較製造例1~3で得た比較用のビニル樹脂(A’-1)~(A’-3)について、以下の方法で、重量平均分子量、融解ピーク温度Tm(℃)を評価した。結果は表1に示した。
Figure 0007221130000001
ビニル樹脂(A)及び(A’)の重量平均分子量は、上記の条件でGPCを用いて測定した。
ビニル樹脂(A)及び(A’)の融解ピーク温度Tm(℃)は、示差走査熱量計{TA Instruments(株)製、DSC Q20等}を用いて以下の条件で測定した。
<測定条件>
(1)30℃で10分間保持
(2)10℃/分で150℃まで昇温
(3)150℃で10分間保持
(4)10℃/分で0℃まで冷却
(5)0℃で10分間保持
(6)10℃/分で150℃まで昇温
(7)(6)の過程にて測定される示差走査熱量曲線の各吸熱ピークを解析する。
<実施例1~3及び比較例1~3>
製造例1~3で得たビニル樹脂(A-1)~(A-3)をトナーバインダーとし、比較製造例1~3で得たビニル樹脂(A’-1)~(A’-3)を比較用のトナーバインダーとして、以下に記載の方法でトナー(T-1)~(T-3)、(T’-1)~(T’-3)を得た。 なお、着色剤(C-1)としてカーボンブラック[三菱ケミカル(株)製のMA-100]、離型剤(D-1)としてポリオレフィンワックス[三洋化成工業(株)製のビスコール550P]、荷電制御剤(E-1)としてアイゼンスピロンブラック[保土谷化学(株)製のT-77]、流動化剤(F-1)として疎水性シリカ[日本アエロジル製のアエロジルR972]を使用した。
まず、ビニル樹脂(A)、着色剤、離型剤及び荷電制御剤を表2の配合比となるよう加え、ヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS-I]で分級し、体積平均粒径(D50)が7μmのトナー粒子を得た。次いで、トナー粒子100重量部に表2の配合比となるように疎水性シリカをサンプルミルにて混合して、トナーを得た。
<実施例4>
ポリエステル(B111-1)を30重量部、ビニル樹脂(A-4)70重量部を混合し、二軸混練器(栗本鉄工所製,S5KRCニーダー)に52kg/時で供給し、同時にt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート2.0重量部を1.04kg/時で供給して160℃で7分間90rpmで混練押出して架橋反応を行い、さらにベント口から10kPaで減圧して有機溶剤の除去を行いながら混合した。混合で得られたものを冷却することにより、本発明のトナーバインダーを得た。
実施例1においてビニル樹脂(A-1)に代えて得られたトナーバインダーを用いる以外は同様に実施して、体積平均粒径(D50)が7μmのトナー粒子及びトナー(T-4)を得た。
Figure 0007221130000002
<実施例5~7>
表2に示した重量部数のビニル樹脂(A)、ポリエステル(B111)を混合し、二軸混練器に供給し、同時にt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを供給して、実施例4と同様に架橋反応と有機溶剤の除去を行い、本発明のトナーバインダーを得た。
実施例1においてビニル樹脂(A-1)に代えて得られたトナーバインダーを用いる以外は同様に実施して、体積平均粒径(D50)が7μmのトナー粒子及びトナー(T-5)~(T-7)を得た。
トナーバインダーのG’Tm-10(Pa)及びG’Tm+30(Pa)は、下記粘弾性測定装置を用いて、以下の条件で測定した。
装置 :ARES-24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
トナーバインダーの融解ピーク温度Tm(℃)はビニル樹脂(A)の融解ピーク温度Tm(℃)と同様の測定を行なった。
[評価方法]
トナー(T-1)~(T-7)及び比較のトナー(T’-1)~(T’-3)について、以下の方法で低温定着性、耐ホットオフセット性、保存安定性、帯電安定性及び耐久性を評価した。その結果を表2に示す。
<低温定着性>
トナーを紙面上に0.6mg/cmとなるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。
この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cmの条件で通したときのコールドオフセットの発生温度である低温定着温度を測定した。
低温定着温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
<耐ホットオフセット性(ホットオフセット発生温度)>
低温定着性と同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。
加圧ローラー通過後、ホットオフセットが発生した温度を耐ホットオフセット性(℃)とした。
<保存安定性試験(ブロッキング試験)>
45℃に温調された乾燥機に粒子状トナーを15時間静置し、ブロッキングの有無を目視で判断し、下記の基準で耐熱保存安定性を評価した。
[判定基準]
○:ブロッキングは発生していない
△:一部にブロッキングが発生している
×:全体にブロッキングが発生している
<帯電安定性>
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F-150)20gとを50mLのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm×10分間と60分間摩擦攪拌し、それぞれの時間での帯電量を測定した。
測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた。
「摩擦時間60分の帯電量/摩擦時間10分の帯電量」を計算し、これを帯電安定性の指標とした。
[判定基準]
◎:0.8以上
○:0.7以上0.8未満
△:0.6以上0.7未満
×:0.6未満
<耐久性>
トナーを二成分現像剤として、市販モノクロ複写機[AR5030、シャープ(株)製]を用いて連続コピーを行い、以下の基準で耐久性を評価した。
[判定基準]
◎:1万枚コピー後も画質に変化なく、カブリの発生もない。
○:1万枚コピー後でカブリが発生している。
△:6千枚コピー後でカブリが発生している。
×:2千枚コピー後でカブリが発生している。
表2の評価結果から明らかなように、実施例1~7の本発明のトナーバインダーを含有するトナーはいずれの性能評価項目でも優れた結果が得られた。一方、鎖状炭化水素基の炭素数が24の(メタ)アクリレート(a3)を用いていないビニル樹脂(A’-1)を含有するトナーバインダーを用いた比較例1のトナーは、低温定着性、保存安定性及び帯電安定性が不良であり、鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)を用いていないビニル樹脂(A’-2)を含有するトナーバインダーを用いた比較例2のトナーは、帯電安定性が不良であり、鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)の含有量が20重量%より多いビニル樹脂(A’-3)を含有するトナーバインダーを用いた比較例3のトナーは、帯電安定性及び耐久性が不良であった。

本発明のトナーバインダーは、低温定着性、耐ホットオフセット性、保存安定性、帯電安定性および耐久性に優れるため、電子写真、静電記録及び静電印刷等に用いる静電荷像現像用トナーとして有用である。

Claims (2)

  1. ビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、ビニル樹脂(A)が単量体(a)を必須構成単量体とする重合物であり、単量体(a)が、鎖状炭化水素基を有し、鎖状炭化水素基の炭素数が18~36の(メタ)アクリレートであり、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、鎖状炭化水素基の炭素数が22の(メタ)アクリレート(a1)の重量割合が30~98.5重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)の重量割合が0.1~20重量%であり、鎖状炭化水素基の炭素数が24の(メタ)アクリレート(a3)の重量割合が0.1~1重量%であるトナーバインダー。
  2. 鎖状炭化水素基の炭素数が22の(メタ)アクリレート(a1)がベヘニルアクリレートであり、鎖状炭化水素基の炭素数が20の(メタ)アクリレート(a2)がアラキジルアクリレートであり、炭化水素基の炭素数が24の(メタ)アクリレート(a3)がリグノセリルアクリレートである請求項1に記載のトナーバインダー。
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