JP7108001B2 - トナーバインダー - Google Patents
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Description
すなわち本発明は、鎖状炭化水素基の炭素数が18~24の(メタ)アクリレートである単量体(a)と、以下の関係式(1)を満たす単量体(x)とを構成単量体とする重合体(A)を含むトナーバインダーであり、前記重合体(A)が架橋構造を有し、前記重合体(A)のキシレン不溶分が7~30重量%であり、前記重合体(A)が以下の関係式(2)を満たすトナーバインダーである。
関係式(1):{(dP)2+(dH)2}0.5≧8.3
[関係式(1)において、(dP)は前記単量体(x)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の極性項であり、(dH)は前記単量体(x)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の水素結合項である。]
関係式(2):Tm-Tg≧10
[関係式(2)において、Tmは、DSC測定による吸熱ピークのピークトップ温度(℃)であり、Tgは、DSC測定によるガラス転移温度(℃)である。]
重合体(A)は、単量体(a)と単量体(x)とを構成単量体とする重合体であり、上記単量体(a)が、鎖状炭化水素基の炭素数が18~24の(メタ)アクリレートであり、上記単量体(x)が上記の関係式(1)を満たす。また、上記重合体(A)が架橋構造を有し、重合体(A)が上記の関係式(2)を満たす。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
鎖状炭化水素基の炭素数が18~24の(メタ)アクリレートとしては、炭素数18~24の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート[オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンエイコサニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート等]及び炭素数18~24の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリレート[2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
これらの内、トナーの保存安定性の観点から好ましくは炭素数18~24の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、より好ましくは炭素数20~24の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは22~24の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートである。
単量体(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
単量体(x)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」及び/又は「メタクリル酸」を意味する。
これらのうち好ましくはスチレンである。
これらのうち好ましくはアルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの2種以上の混合物である。
炭素数1~30のイソシアネートとしては、モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環式ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等が挙げられる。
炭素数1~26のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール及びエルシルアルコール等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネートとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
なお、本明細書中、イソシアネート基を有する化合物及び構造における炭素数にはイソシアネート基(-NCO)に含まれる炭素数は含まない。
関係式(1):{(dP)2+(dH)2}0.5≧8.3
関係式(1-2):18.8≧{(dP)2+(dH)2}0.5≧8.3
関係式(1-3):10.7≧{(dP)2+(dH)2}0.5≧8.3
本発明における重合体(A)を構成する単量体(x)の重量割合は、重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、低温定着性及び高温高湿下での保存性の観点から好ましくは7~70重量%であり、より好ましくは15~55重量%であり、特に好ましくは30~45重量%である。
また、架橋性製単量体(b)と非架橋性単量体(d)との重量比[(b)/(d)]は、低温定着性及び耐加水分解性の観点から、0.1/99.9~20/80が好ましく、より好ましくは1/99~10/90である。
(1)上記の2個以上のビニル基を有する単量体(b1)を含む単量体(x)及び単量体(a)を含有する単量体組成物を連鎖重合させる方法。
(2)上記のイソシアネート基又はブロック化されたイソシアネート基を有するビニル重合性単量体(b2)を含む単量体(x)及び単量体(a)を含有する単量体組成物を連鎖重合させたのち、前記重合物と水酸基、アミノ基等のイソシアネート基と反応する活性水素を2個以上有する化合物とを重付加させる方法。
(3)上記のエポキシ基を有するビニル重合性単量体(b3)を含む単量体(x)及び単量体(a)を含有する単量体組成物を連鎖重合させたのち、前記重合物とカルボキシル基等のエポキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物とを重付加させる方法。
なお、重合体(A)が架橋構造を有するかどうかは、重合体(A)をキシレンに溶解してキシレンに不溶な成分(キシレン不溶解分)を有するかどうかで確認することができる。
上記方法の内プロセスの簡易性の観点から(1)の方法が好ましい。
関係式(2):Tm-Tg≧10
より好ましくは10≦Tm-Tg≦30である。
Tm-Tgは、重合体(A)を構成する単量体(a)の炭素数を調整する、(A)を構成する単量体(a)の重量比率を調整する、(A)の重量平均分子量を調整する、重合体(A)を構成する単量体(x)のFox-Floryの等式から計算されるガラス転移温度を調整する等の方法により、上記の好ましい範囲に調整することができる。例えば(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、(A)の重量平均分子量を増やす、(A)の含有率を増やす、重合体(A)を構成する単量体(x)のFox-Floryの等式から計算されるガラス転移温度を下げる等の方法によりTm-Tgを大きくすることができる。
また、例えば重合体(A)を構成する単量体(a)が炭素数18~24の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、単量体(a)の重量割合が重合体(A)を構成する単量体の合計重量を基準として、30重量%以上であり、重合体(A)を構成する単量体(x)が非架橋性単量体(d)の(メタ)アクリル系モノマー(d2)を含有することで関係式(2)を満たすことが容易になる。
装置 :HLC-8120 [東ソー(株)製]
カラム :TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のTHF溶液
移動相 :テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
溶液注入量:100μL
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)[東ソー(株)製]
重量平均分子量の測定では、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分を孔径1μmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とした。
重合体(A)の酸価は、単量体の酸価及び酸価を有する単量体の含有量を調整することで調整できる。重合体(A)の酸価は、例えばJISK0070などの方法で測定される。
関係式(3):8.0×105≦G’(40)≦1.5×108
なお、関係式(3)において、G’(40)は、粘弾性測定による40℃の貯蔵弾性率(Pa)である。
G’(40)が8.0×105以上であるとトナーバインダーの固さが十分であるため高温高湿下での保存性が良好となる。一方、G’(40)が1.5×108以下であると低温定着性が良好となる。G’(40)は、重合体(A)のTgや単量体(a)の比率等で調整することができる。
治具 :8mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :1%
昇温速度:5℃/min
重合体(A)のキシレン不溶分の測定方法は以下の通りである。
サンプル作製としては、重合体(A)1.00gを吸熱ピークのピークトップ温度以上の温度でキシレン100gに溶解又は分散し、25℃まで冷却したものを遠心分離機により、遠心分離を行い、上澄み液を除去した後、減圧乾燥(170℃、2時間)し、キシレン不溶分を得て、キシレン不溶分の重量を小数点以下第4位まで測定し、下記式により(A)のキシレン不溶分を算出する。
重合体(A)のキシレン不溶分(重量%)=(キシレン不溶分の重量(g)/1.00)×100
尚、遠心分離の条件は以下の通りである。
<遠心分離条件>
遠心分離機:H-19F(株式会社コクサン製)
回転速度 :4000rpm
回転時間 :20分
ウレタン基及びウレア基濃度はイソシアネートとアルコールやイソシアネートと活性水素を有するアミンが反応することで生じるため、これらの使用量を調整することで調整できる。
重合体(A)のウレタン基及びウレア基の濃度は以下の方法により求めることができる。
<サンプル調整>
NMRチューブにサンプルを100mg、内部標準物質としてトリメチルシリルプロパンスルホン酸ナトリウムを10mg、緩和試薬としてCr(AcAc)3を10mgはかりとり、ジメチルスルホキシド、またはジメチルホルムアミドの重水素溶媒を0.45mL加え樹脂を溶解させる。
<測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:32回
<解析および計算>
例えば芳香族イソシアネート誘導体のNHプロトンはDMSO中ではウレア基は7.8~8.6、ウレタン基は8.7~9.6にピークが観測される。一方、脂肪族イソシアネート誘導体のNHプロトンはDMSO中ではウレア基は5.7~6.2、ウレタン基は6.7~7.0にピークが観測される。これらの積分比と内部標準物質のプロトンのピーク(0ppm)の積分比からウレア基およびウレタン基の含有量(mmol/g)を算出する。
また、本発明のトナーバインダーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記の重合体(A)の重合時に使用した化合物及びその残渣を含んでいてもよい。
トナーバインダーは重合体(A)を含有していれば特に限定されず、例えば重合体(A)、その他の重合体及び添加剤を混合する場合の混合方法は公知の方法でよく、混合方法としては、粉体混合、溶融混合及び溶剤混合等が挙げられる。また、(A)、その他の重合体及び添加剤は、トナーを製造するときに同時に混合してもよい。この方法の中では、均一に混合し、溶剤除去の必要のない溶融混合が好ましい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、スタティックミキサー、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等が挙げられる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは3~10重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは40~120重量部である。
高化式フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT-500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をフロー軟化点〔T1/2〕とする。
これらの製造方法のうち、生産性、低温定着性及び保存性の観点から混練粉砕法及び溶解懸濁法が好ましい。
また、以下において実施例11及び17は参考例1~2を意味する。
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート[日油(株)製、以下同様]60部、アクリロニトリル[ナカライテクス(株)製、以下同様]10部、スチレン[出光興産(株)製、以下同様]8部、メチルアクリレート[ナカライテクス(株)製、以下同様]21.5部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート[協栄社化学(株)製、以下同様]0.5部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート[パーブチルO、日油(株)、以下同様]0.359部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させた。その後100℃にて脱溶剤を行い、重合体(A-1)を得た。
表1に記載の単量体の組成に基づきそれぞれの単量体を指定の重量部とした以外は製造例1と同様にして重合体(A-2)~(A-15)、(A’-1)~(A’-5)を得た。
なお、オクタデシルアクリレート、ベヘニルメタクリレート、リグノセリルアクリレート、メタクリロニトリル、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メタクリル酸、ヘキサデシルアクリレート及び2-イソシアナトエチルメタクリレートとメタノールの反応物は下記のものを用いた。
オクタデシルアクリレート:東京化成工業株式会社製
ベヘニルメタクリレート:日油(株)製
リグノセリルアクリレート:製造例16に記載した。
メタクリロニトリル:東京化成工業株式会社製
2-ヒドロキシプロピルアクリレート:東京化成工業株式会社製
メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート(ライトアクリレートMTG-A):共栄社化学株式会社製
メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A):共栄社化学株式会社製
メチルメタクリレート:東京化成工業株式会社製
ブチルメタクリレート:東京化成工業株式会社製
メタクリル酸:東京化成工業株式会社製
ヘキサデシルアクリレート:東京化成工業株式会社製
2-イソシアナトエチルメタクリレート[カレンズMOI、昭和電工(株)製、以下同様]とメタノールの反応物:製造例17に記載した。
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、リグノセリルアルコール[BASF社製]870部、トルエン1000部、アクリル酸[三菱ケミカル(株)製]280部、ハイドロキノン2部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸4部を加え、30分撹拌した後、空気を30mL/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を300mmHgに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液20部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン1部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、リグノセリルアクリレートを得た。
オートクレーブに脱水メチルエチルケトン50部を仕込み、ドライエア通気を行った後、2-イソシアナトエチルメタクリレート50部、脱水メタノールを30部、ネオスタンU-600[日東化成工業(株)、以下同様]0.039部を加え、80℃で10時間反応を行った。その後空気で置換しながら80℃にて脱溶剤を行い、定量的に反応が完結した2-イソシアナトエチルメタクリレートとメタノール反応物を得た。
十分乾燥させたオートクレーブに脱水トルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。それぞれ脱水したベヘニルアクリレート[日油(株)製、以下同様]60部、アクリロニトリル[ナカライテクス(株)製、以下同様]10部、スチレン[出光興産(株)製、以下同様]8部、メチルアクリレート[ナカライテクス(株)製、以下同様]21.5部、2-イソシアナトエチルメタクリレート0.1部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート[パーブチルO、日油(株)、以下同様]0.359部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させた。その後50℃まで冷却した後、1,6-ヘキサンジオール[東京化成工業株式会社製]0.1部、ネオスタンU-600[日東化成工業(株)、以下同様]0.044部を加え、80℃で10時間反応を行った。その後140℃にて脱溶剤を行い、重合体(A-16)を得た。
反応槽中に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物697部、テレフタル酸297部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、0.5~2.5kPaの減圧下220℃で反応させ、生成する水を留去しながら10時間反応させた。酸価が1mgKOH/g以下になったところで、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸25部を加え、1時間反応させた後、反応槽から取り出し、非晶性ポリエステル樹脂であるその他の樹脂(B-1)を得た。
非晶性ポリエステル樹脂であるその他の樹脂(B-1)のガラス転移温度は67℃、フロー軟化点114℃、数平均分子量は2,800、重量平均分子量は6,500、酸価は12mgKOH/gであった。
製造例1~19と比較製造例1~5で得た重合体(A-1)~(A-16)、(A’-1)~(A’-5)を各々93部とその他の樹脂(B-1)7部をテトラヒドロフランと混和して蒸発後固形分量が50%の均一溶液とした。続けて80℃にて溶剤除去を行い、蒸発後固形分量が99.90%以上の樹脂混合物を得てこれをトナーバインダー(D-1)~(D-16)として以下に記載の方法でトナー(Ts-1)~(Ts-16)、(Tf-1)及び(Ts’-1)~(Ts’-5)を得た。
[微粒子分散液1の製造]
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩[エレミノールRS-30、三洋化成工業社製]11部、ビニルベンゼン139部、メタクリル酸138部、アクリル酸ブチル184部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成してビニルポリマー(ビニルベンゼン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置[LA-920、株式会社堀場製作所製]で測定した体積平均粒径は、0.15μmであった。
[ワックス分散液1の製造]
冷却管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、カルナウバワックス15部及び酢酸エチル85部を投入し、80℃に加熱して溶解し、1時間かけて30℃まで冷却し、カルナウバワックスを微粒子状に晶析させ、更に「ウルトラビスコミル」(アイメックス製)で湿式粉砕し[ワックス分散液1]を作製した。
[顔料マスターバッチの製造]
水1200部、カーボンブラック(キャボット社製、リーガル400R)40部、製造例4で製造した重合体(A-4)20部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を3本ロールを用いて90℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して顔料マスターバッチ[MB1]を得た。
[水相s1の製造]
攪拌棒をセットした容器に、水955部、[微粒子分散液1]15部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON7、三洋化成工業製)30部を投入し、乳白色の液体[水相s1]を得た。
・粒子化
ビーカー内にトナーバインダー(D-1)191部、顔料マスターバッチ[MB1]25部、[ワックス分散液1]67部、酢酸エチル124部を投入して溶解・混合均一化し、[油相s1]を得た。この[油相s1]中に[水相s1]600部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を使用し、回転数12000rpmで25℃で1分間分散操作を行い、さらにフィルムエバポレータで減圧度-0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤し、水性着色重合体分散体(X-1)を得た。
・分級
(X-1)100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥した後に、分級機としてエルボジェット分級機[(株)マツボウ製、EJ-L-3(LABO)型]で、3.17μm以下の微粉が12個数%以下、8.0μm以上の粗粉が3体積%以下となるように、微粉及び粗粉を除去して着色重合体粒子[Cs-1]を得た。
・外添処理
次に、得られた着色粉体の着色重合体粒子[Cs-1]100部に対し、疎水性シリカ[アエロジルR972、日本アエロジル(株)製]を1部添加し、周速を15m/secとして30秒混合、1分間休止を5サイクル行い、トナー(Ts-1)を得た。
トナーバインダー(D-1)に変えて(D-2)~(D-16)及び(D’-1)~(D’-5)を用いること以外はトナー(Ts-1)と同様の手順でそれぞれ[油相s2]~[油相s16]及び、[油相s’1]~[油相s’5]を得て、表3及び表4に記載の組成でトナー(Ts-2)~(Ts-16)及び(Ts’-1)~(Ts’-5)を得た。
製造例11で得た重合体(A-11)をトナーバインダー(D-17)として以下の記載の方法でトナー(Tf-1)を得た。
・混練
(D-17)85部、顔料のカーボンブラックMA-100[三菱ケミカル(株)製]6部、離型剤のカルナウバワックス4部、荷電制御剤[T-77、保土谷化学工業(株)製]4部を下記の方法でトナー化した。まず、ヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製 FM10B]を用いて各々の原料を予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。
・粉砕、分級
ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製 LJ型]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS-I]で分級し、着色樹脂粒子(FP-1)を得た。
・外添処理
ついで、着色樹脂粒子(FP-1)100部に流動化剤として疎水性シリカ[アエロジルR972、日本アエロジル(株)製]1部をサンプルミルにて混合して、トナー(Tf-1)を得た。
トナーを紙面上に1.00mg/cm2となるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90~200℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生温度を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。この評価条件では、一般には125℃以下であることが好ましい。
トナー1gと疎水性シリカ(アエロジルR8200、エボニックジャパン(株)製)0.01gをシェイカーで1時間混合した。混合物をフタの無いガラス容器に入れ、温度40℃、湿度80%の雰囲気で48時間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記判定基準で耐熱保存性を評価した。
◎:ブロッキングは発生しておらず目視での流動性に変化なし
○:ブロッキングが発生しているが容器を揺すると凝集がほどけて流動する
×:ブロッキングが発生している
トナー1gをフタの無いガラス容器に入れ、温度95℃、湿度95%の雰囲気で10日間静置し、試験前後のGPC測定による重量平均分子量と100℃での貯蔵弾性率(Pa)測定を行い重量平均分子量の変化、及び貯蔵弾性率の変化を確認し、加水分解が生じているかを評価した。なおGPC測定及び100℃での貯蔵弾性率(Pa)は重合体(A)と同様の方法で測定した。
◎:重量平均分子量及び貯蔵弾性の変化は共に±5%未満
○:分子量のは±5%以上の変化があるが、貯蔵弾性の変化は±5%未満
×:分子量及び弾性共に±5%以上の変化
一方で、比較用のトナーバインダーを含有するトナー(Ts’-1)~、(Ts’-5)は、低温定着性、高温高湿下での保存性及び耐加水分解性のうち、少なくとも1つで評価結果が劣っていた。
さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。
Claims (3)
- 鎖状炭化水素基の炭素数が18~24の(メタ)アクリレートである単量体(a)と、
以下の関係式(1)を満たす単量体(x)とを構成単量体とする重合体(A)を含むトナーバインダーであり、
前記重合体(A)が架橋構造を有し、前記重合体(A)のキシレン不溶分が7~30重量%であり、前記重合体(A)が以下の関係式(2)を満たすトナーバインダー。
関係式(1):{(dP)2+(dH)2}0.5≧8.3
[関係式(1)において、(dP)は前記単量体(x)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の極性項であり、(dH)は前記単量体(x)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の水素結合項である。]
関係式(2):Tm-Tg≧10
[関係式(2)において、Tmは、DSC測定による吸熱ピークのピークトップ温度(℃)であり、Tgは、DSC測定によるガラス転移温度(℃)である。] - 前記重合体(A)のDSC測定によるガラス転移温度が45℃以下である請求項1に記載のトナーバインダー。
- 前記重合体(A)が関係式(3)を満たす請求項1又は2に記載のトナーバインダー。
関係式(3):8.0×105≦G’(40)≦1.5×108
[関係式(3)において、G’(40)は、粘弾性測定による40℃の貯蔵弾性率(Pa)である。]
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