JP7295695B2 - トナーバインダー - Google Patents
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Description
フルカラー電子写真用には従来、電子写真感光体等の潜像坦持体に色画像情報に基づく潜像を形成し、該潜像を対応する色のトナーにより現像し、次いで該トナー像を転写材上に転写するといった画像形成工程を繰り返した後、転写材上のトナー像を加熱定着して多色画像を得る方法や装置が知られている。
また、最近では転写材として、表面凹凸の大きい再生紙や、表面が平滑なコート紙など多くの種類の紙が用いられる。これらの転写材の表面性に対応するために、ソフトローラーやベルトローラーなどのニップ幅の広い定着器が好ましく用いられている。しかし、ニップ幅を広くすると、トナーと定着ローラーとの接触面積が増え、定着ローラーに溶融トナーが付着する、いわゆる高温オフセット現象が発生するため、耐ホットオフセット性が要求されるのが前提である。
上記に加えて、多色画像(フルカラー)は写真画像などの再現等から白黒画像(モノクロ)に比べてはるかに高い光沢が必要とされ、得られる画像のトナー層が平滑になるようにする必要がある。
したがって、トナーは、高い光沢を有しながら耐ホットオフセット性を維持しつつ、低温定着性を発現できる必要があり、広いワーキングレンジで高光沢なトナー画像を形成できることが要求されるようになってきている。
しかしながら、ガラス転移点を低くし過ぎると、耐ホットオフセット性が低下し、また粉体の凝集(ブロッキング)が起り易くなることからトナーの保存性が低下する。このガラス転移点は、結着樹脂の設計ポイントであり、ガラス転移点を下げる方法では、さらに低温定着可能なトナーを得ることはできない。
しかしながら、結晶性樹脂の含有量を増やすと樹脂強度が低下する場合があり、また溶融混練時に結晶性樹脂と非晶性樹脂の相溶化により結晶性樹脂が非晶化し、その結果、トナーのガラス転移点が低下することで前述と同様の耐ホットオフセット性やトナーの耐熱保存性に課題が生じる。
かかる方法ではトナーの低温定着性及び光沢性は確保できるが、耐ホットオフセット性やトナーの流動性、粉砕する際の粉砕性が低下し、特に耐久性が不充分である。
また、溶融懸濁法や乳化凝集法を用いて得られた結晶性樹脂を含む樹脂粒子(コア部)をシェル層で被覆する方法等も提案されているが(特許文献5)、結晶性樹脂がコア部の非晶性樹脂と相溶化し、短時間では結晶の再析出が不充分なことから定着後の画像強度が未だ不充分である。
しかしながら、この方法は高温でのオフセット現象は防止できても、定着下限温度が不十分であり、未だ高速化、省エネルギー化の要求には充分に応えられていない。
すなわち本発明は、単量体(a)および単量体(b)を必須構成単量体とする結晶性ビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであり、(b)がビニル基を有する炭素数6以下の単量体であり、(A)を構成する単量体中の(b)の重量割合が(A)の重量を基準として7重量%以上であり、トナーバインダーの酸価が60mgKOH/g以下であり、トナーバインダーの発熱ピークのピークトップ温度(Tc)が20~90℃であり、トナーバインダーの吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が40~100℃であり、さらに関係式(1)を満たすことを特徴とするトナーバインダーである。
関係式(1) : |Tm-Tc|≦20
[関係式(1)において、(Tc)および(Tm)は、示差走査熱量計を用いてトナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をすることで得られるDSC曲線のうち、冷却過程における結晶性樹脂(A)由来の発熱ピークのピークトップ温度が(Tc)であり、第2回目の昇温過程における結晶性樹脂(A)由来の吸熱ピークのピークトップ温度が(Tm)であり、結晶性樹脂(A)由来の発熱ピーク及び吸熱ピークが複数ある場合には(Tc)及び(Tm)は、それぞれの発熱ピーク及び吸熱ピークから計算される発熱量及び吸熱量が最も大きい発熱ピーク及び吸熱ピークのピークトップ温度である。]
関係式(1) : |Tm-Tc|≦20
[関係式(1)において、(Tc)および(Tm)は、示差走査熱量計を用いてトナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をすることで得られるDSC曲線のうち、冷却過程における結晶性樹脂(A)由来の発熱ピークのピークトップ温度が(Tc)であり、第2回目の昇温過程における結晶性樹脂(A)由来の吸熱ピークのピークトップ温度が(Tm)であり、結晶性樹脂(A)由来の発熱ピーク及び吸熱ピークが複数ある場合には(Tc)及び(Tm)は、それぞれの発熱ピーク及び吸熱ピークから計算される発熱量及び吸熱量が最も大きい発熱ピーク及び吸熱ピークのピークトップ温度である。]
以下に、本発明のトナーバインダーを順次、説明する。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
また、本発明における「結晶性」とは下記に記載の示差走査熱量測定(DSC測定ともいう)において、DSC曲線が明確な吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)を有することを意味する。
結晶性ビニル樹脂(A)の吸熱ピークのピークトップ温度の測定方法を記載する。
示差走査熱量計{例えば「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定する。結晶性ビニル樹脂(A)を20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を結晶性ビニル樹脂(A)の吸熱ピークのピークトップ温度とする。
これらの内、好ましくは、直鎖のアルキル基(炭素数18~36)を有する(メタ)アクリレートであり、より好ましくは直鎖のアルキル基(炭素数18~30)を有する(メタ)アクリレートであり、さらに好ましいのはオクタデシル(メタ)アクリレート、アラキジル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、及びトリアコンタ(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはオクタデシルアクリレート、アラキジルアクリレート、ベヘニルアクリレート及びリグノセリルアクリレートである。
単量体(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの内、好ましいのは、炭素数6以下の(メタ)アクリル系モノマー、炭素数6以下のビニルエステルモノマー及びニトリル基を有する炭素数6以下の単量体であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル及び2-ヒドロキシプロピルアクリレートである。
単量体(b)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
単量体(d)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらのうち好ましくはスチレンである。
これらのうち好ましくはブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びそれらの2種以上の混合物である。
炭素数1~30のイソシアネートとしては、モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環式ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]が挙げられる。
炭素数1~26のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール及びエルシルアルコール等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネートとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
なお、本明細書中、イソシアネート基を有する化合物及び構造における炭素数にはイソシアネート基(-NCO)に含まれる炭素数は含まない。
さらに低温定着性、粉砕性、画像強度、帯電安定性、光沢性及び耐久性の両立の点から、より好ましくは35~90重量%であり、さらに好ましくは40~88重量%であり、特に好ましくは45~85重量%である。
より好ましくは7~70重量%であり、更に好ましくは10~65重量%であり、特に好ましくは12~60重量%であり、最も好ましくは15~55重量%である。
さらに、架橋反応が効率よく進行し、使用量が少なくて済むことから、水素引抜き能の高い反応開始剤がより好ましく、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン及びジ-t-へキシルパーオキシド等の水素引抜き能の高いラジカル反応開始剤がさらに好ましい。
まず、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン試料を用いて検量線を作製する。
次に、GPCにより試料を分離し、各保持時間における分離された試料のカウント数を測定する。
次に、上記検量線の対数値と得られたカウント数とから試料の分子量分布のチャートを作成する。分子量分布のチャート中のピーク最大値がピークトップ分子量Mpである。
なお、分子量分布のチャート中の、複数のピークがある場合は、それらのピークの中の最大値がピークトップ分子量Mpとする。なお、GPC測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置(一例) : HLC-8120 [東ソー(株)製]
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
移動相 : テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定は、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分を口径1μmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
結晶性ビニル樹脂(A)の酸価は、単量体の酸価及び酸価を有する単量体の含有量で調整できる。(A)の酸価は、例えばJISK0070などの方法で測定される。
結晶性ビニル樹脂(A)の発熱ピークのピークトップ温度(TcA)は、より好ましくは25~85℃であり、さらに好ましくは30~80℃であり、特に好ましくは35~75℃である。
なお、結晶性ビニル樹脂(A)の発熱ピークのピークトップ温度(TcA)は、トナーバインダーの発熱ピークのピークトップ温度(Tc)と同様の方法で測定することができる。
結晶性ビニル樹脂(A)の発熱ピークに基づく発熱量(QcA)は、より好ましくは9~80J/gであり、さらに好ましくは12~75J/gであり、特に好ましくは14~71J/gである。
なお、(QcA)とは(TcA)を持つ発熱ピークから計算される発熱量である。
結晶性ビニル樹脂(A)の吸熱ピークのピークトップ温度(TmA)は、より好ましくは45~95℃であり、さらに好ましくは50~90℃であり、特に好ましくは53~75℃である。
なお、結晶性ビニル樹脂(A)の吸熱ピークのピークトップ温度(TmA)は、トナーバインダーの吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)と同様の方法で測定することができる。
結晶性ビニル樹脂(A)の吸熱ピークに基づく発熱量(QmA)は、より好ましくは16~80J/gであり、さらに好ましくは18~75J/gであり、特に好ましくは19~72J/gである。
なお、(QmA)とは(TmA)を持つ吸熱ピークから計算される吸熱量である。
結晶性ビニル樹脂(A)の(TmA)をもつ吸熱ピークの半値幅は、(TmA)の測定によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅とする。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
これら飽和モノオールのうち、耐熱保存性の観点から、好ましくは炭素数8~24の直鎖アルキルアルコールであり、より好ましくはドデシルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール及びこれらの併用である。
これらの飽和ジオール(x2)のうち、低温定着性と耐熱保存性の観点から、炭素数2~36のアルキレングリコール(x21)及び芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物(x26)が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物がさらに好ましい。アルキレンオキサイドにおいて、アルキレン基の炭素数は好ましくは2~4であり、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、2,3-、1,3-又はiso-ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン等が好ましい。
[式中、Pは炭素数1~3のアルキレン基、-SO2-、-O-、-S-、又は直接結合を表し、Arは、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物のうち、トナーの定着性、粉砕性及び耐熱保存性の観点から好ましいものは、ビスフェノールAのEO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~4、より好ましくは2~3)及び/又はPO付加物(平均付加モル数は好ましく2~4が好ましく、より好ましくは2~3)である。
さらに好ましくは、炭素数2~6のアルキレングリコール、ビスフェノールAのAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~5)及び炭素数3~36の3価の脂肪族多価アルコールであり、特に好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールAのAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~3)及びトリメチロールプロパンである。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
さらに好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも同様に好ましい。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等)、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数6~36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)等が挙げられる。
また、飽和カルボン酸成分としては、これらのカルボン酸の無水物、低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよいし、これらのカルボン酸と併用してもよい。
耐熱保存性及び帯電安定性の観点からより好ましくは、安息香酸、アジピン酸、アルキルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの併用である。さらに好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
ポリエステル樹脂(B1)は上記ポリエステル(B111)の炭素-炭素二重結合を反応させる他、加熱等による水素引き抜き反応によってポリエステル樹脂(B11)に含まれる炭素原子に結合した水素原子を引き抜いて架橋する方法(水素原子引き抜き反応とも言う)等によっても得ることができる。
なお、上記の架橋反応によってネットワークを形成したポリエステル樹脂はテトラヒドロフラン(以下、「テトラヒドロフラン」をTHFと略記することがある。)に溶解することができないため、架橋反応によってネットワークが形成されたポリエステル樹脂であることは、ポリエステル樹脂をTHFに溶解してTHFに不溶な成分(THF不溶解分)を有することで確認することができる。
さらに、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(B111)は、不飽和カルボン酸成分及び不飽和アルコール成分以外に、飽和アルコール成分や、飽和カルボン酸成分を構成成分として含んでいてもよい。
また、ポリエステル(B111)はこれらの各成分を、それぞれ1種類ずつ用いて重縮合したものでもよく、各成分として複数種類を併用して重縮合したものでもよい。
なお、本明細書において、不飽和カルボン酸とは、炭素原子間不飽和結合(芳香族炭化水素に含まれるものを除く)を有するカルボン酸のことであり、同様に不飽和アルコールとは、炭素原子間不飽和結合(芳香族炭化水素に含まれるものを除く)を有するアルコールのことである。
(B111)の重量平均分子量の測定方法は結晶性ビニル樹脂(A)と同様の条件で測定することができる。
Tgが80℃以下であると低温定着性が良好になり、25℃以上であると耐熱保存性が良好になる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSCQ20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
まず、不飽和カルボン酸成分と不飽和アルコール成分の少なくともどちらかと、必要により飽和カルボン酸成分及び/又は飽和アルコール成分とを構成成分として縮合反応させて分子内に炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(B111)を得る。次に、(B111)にラジカル反応開始剤を作用させて、ラジカル反応開始剤から発生するラジカルを利用して、(B111)中の不飽和カルボン酸成分及び/又は不飽和アルコール成分に起因する炭素-炭素二重結合同士を架橋反応により結合させる。これによりポリエステル樹脂(B1)を製造することができる。この方法は、架橋反応を短時間で均一にできる点で好ましい方法である。
ラジカル反応開始剤の使用量が0.1重量部以上の場合に架橋反応が進行し易くなる傾向にあり、50重量部以下の場合に、臭気が良好となる傾向にある。この使用量は、30重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることがさらに好ましく、10重量部以下であることが特に好ましい。
但し、吸熱ピークトップ温度(Tm)は示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の結晶性ビニル樹脂(A)由来の吸熱ピークのトップを示す温度である。
吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)はトナーとした際の低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは43~95℃であり、より好ましくは45~90℃であり、さらに好ましくは50~90℃であり、特に好ましくは53~89℃である。
トナーバインダーの吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体(a)の炭素数を調整すること及び(A)を構成する単量体(a)の重量比率を調整することにより、上記の好ましい範囲に調整することができる。例えば(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、(A)の重量平均分子量を増やす等の方法により吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)を上げることができる。
但し、発熱ピークのピークトップ温度(Tc)は示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却した際の冷却過程の結晶性ビニル樹脂(A)由来の発熱ピークのトップを示す温度である。
発熱ピークのピークトップ温度(Tc)はトナーとした際の耐熱保存性、画像強度及び耐久性の観点から、好ましくは23~85℃であり、より好ましくは25~83℃であり、さらに好ましくは30~80℃であり、特に好ましくは33~79℃である。
トナーバインダーの発熱ピークのピークトップ温度(Tc)は、結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体(a)の炭素数を調整すること及び(A)を構成する単量体(a)の重量比率を調整することにより、上記の好ましい範囲に調整することができる。例えば(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、(A)の重量平均分子量を増やす等の方法により発熱ピークのピークトップ温度(Tc)を上げることができる。
関係式(1) : |Tm-Tc|≦20
より好ましくは1≦Tm-Tc≦19であり、さらに好ましくは2≦Tm-Tc≦18であり、特に好ましくは5≦Tm-Tc≦18である。
|Tm-Tc|は、結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体(a)の炭素数を調整する、(A)を構成する単量体(a)の重量比率を調整する、(A)の重量平均分子量を調整する、トナーバインダー中の(A)の含有率を調整する等の方法により、上記の好ましい範囲に調整することができる。例えば(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、(A)の重量平均分子量を増やす、(A)の含有率を増やす等の方法により|Tm-Tc|を小さくすることができる。
また、例えば結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体(a)として直鎖のアルキル基(炭素数18~30)を有する(メタ)アクリレートを用い、単量体(a)の重量割合が30重量%以上の場合、結晶性ビニル樹脂(A)の重量平均分子量を5,000~300,000にすることで関係式(1)を満たすことが容易になる。
トナーバインダーの吸熱ピークの半値幅は、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)の測定によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅とする。
トナーバインダーの酸価は、結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体の酸価、必要に応じて用いるその他の樹脂(B)の酸価及び酸価を有する単量体の含有量で調整できる。トナーバインダーの酸価は、例えばJISK0070などの方法で測定される。
関係式(2) : |Qm-Qc|≦10
本関係式は、より好ましくは|Qm-Qc|≦9である。
|Qm-Qc|は、結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体(a)の炭素数を調整する、(A)を構成する単量体(a)の重量比率を調整する、(A)の分子量を調整する、トナーバインダー中の(A)の含有率を調整することにより、上記の好ましい範囲に調整することができる。例えば(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、(A)の重量平均分子量を増やす、(A)の含有率を増やす等の方法により|Qm-Qc|を小さくすることができる。
なお、(Qc)とは(Tc)を持つ発熱ピークから計算される発熱量であり、(Qm)とは(Tm)を持つ吸熱ピークから計算される吸熱量である。
本発明のトナーバインダー中のTHF不溶解分の含有量(重量%)は、低温定着性、光沢性及び耐ホットオフセット性の観点から、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下であり、さらに好ましくは60重量%以下であり、特に好ましくは0.1~55重量%であり、最も好ましくは1~50重量%である。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量をTHF不溶解分の重量とし、試料の重量からTHF不溶解分の重量を引いた重量をTHF可溶分の重量とし、THF不溶解分とTHF可溶分の重量%を算出する。
結晶性ビニル樹脂(A)及びその他の樹脂(B)についても、上記の方法でのTHF不溶解分の含有量を求めることができる。
トナーバインダーの数平均分子量の測定方法は結晶性ビニル樹脂(A)と同様の条件で測定することができる。
トナーバインダーの重量平均分子量の測定方法は結晶性ビニル樹脂(A)と同様の条件で測定することができる。
トナーバインダーは結晶性ビニル樹脂(A)を含有していれば特に限定されず、例えば結晶性ビニル樹脂(A)並びに必要により用いるその他の樹脂(B)及び添加剤を混合する場合の混合方法は公知の方法でよく、混合方法としては、粉体混合、溶融混合及び溶剤混合等が挙げられる。また、(A)並びに必要により用いる(B)及び添加剤は、トナーを製造するときに同時に混合してもよい。この方法の中では、均一に混合し、溶剤除去の必要のない溶融混合が好ましい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、スタティックミキサー、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等が挙げられる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは3~10重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは40~120重量部である。
高化式フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT-500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をフロー軟化点〔T1/2〕とする。
トナーの組成比が上記の範囲であることで耐ホットオフセット性及び帯電安定性が良好なトナーを得ることができる。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分をヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等で乾式ブレンドした後、二軸混練機、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等の連続式の混合装置で溶融混練し、その後ミル機等粗粉砕し、最終的に気流式微粉砕機等を用いて微粒化して、さらにエルボージェット等の分級機で粒度分布を調整することにより、トナー粒子[好ましくは体積平均粒径(D50)が5~20μmの粒子]とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、体積平均粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)]を用いて測定される。
具体的には、電解水溶液であるISOTON-II(ベックマン・コールター社製)100~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1~5mL加える。さらに測定試料を2~20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして50μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナー粒子の体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)を求める。
なお、本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
装置:HLC-8120 [東ソー(株)製]
カラム:TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
移動相: テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
試料溶液注入量:100μL
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)[東ソー(株)製]
重量平均分子量の測定では、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分をアパチャー1μmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とした。
<測定条件>
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析した。
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート[日油(株)製、以下同様]70.0部、スチレン[出光興産(株)製、以下同様]13.7部、アクリロニトリル[ナカライテクス(株)製、以下同様]13.7部、2-イソシアナトエチルメタクリレート[カレンズMOI、昭和電工(株)製、以下同様]1.9部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート[パーブチルO、日油(株)、以下同様]0.4部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600[日東化成工業(株)、以下同様]0.5部を加え、90℃で6時間反応を行った。単量体(a)の反応率を確認したところ、反応率が95%未満であったため、さらにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを0.1部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。その後100℃にて脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-1)を得た。
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート30.0部、酢酸ビニル[日本酢ビ・ポバール(株)製、以下同様]67.5部、2-イソシアナトエチルメタクリレート1.9部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。単量体(a)の反応率を確認したところ、反応率が95%未満であったため、さらにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを0.1部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。その後100℃にて脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-2)を得た。
オートクレーブにトルエン30.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート60.0部、アクリル酸[三菱ケミカル(株)製]3.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製]20.0部、スチレン17.0部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)[アゾV65、富士フィルム和光純薬(株)製、以下同様]1.0部、及びトルエン60.0部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン10.0部で洗浄した。更に同温度で10時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が98%未満であったため、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.5部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。120℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-3)を得た。
オートクレーブにトルエン30.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート40.0部、メタクリル酸[東京化成工業(株)製]9.5部、メチルアクリレート[東京化成工業(株)製、以下同様]7.0部、メタクリロニトリル[東京化成工業(株)製]30.0部、スチレン13.5部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)6.0部、及びトルエン60.0部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン10.0部で洗浄した。更に同温度で10時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を2.0部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。120℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-4)を得た。
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ステアリルアクリレート[協栄社(株)製、以下同様]80.0部、酢酸ビニル15.0部、スチレン5.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.1部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.1部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-5)を得た。
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、1-トリアコンタノール50部、トルエン50部、アクリル酸12部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30ml/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を300mmHgに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、トリアコンタアクリレートを得た。
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。製造例6で得たトリアコンタアクリレート70.0部、酢酸ビニル15.0部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製]15.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.2部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-6)を得た。
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で140℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート90.0部、酢酸ビニル7.0部、スチレン3.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.2部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。更に170℃に昇温した後0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.1部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-7)を得た。
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で140℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート60.0部、スチレン20.0部、アクリロニトリル20.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.2部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。更に170℃で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.2部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-8)を得た。
オートクレーブにベヘニルアクリレート60.0部、トルエン35.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。スチレン26.0部、メタクリル酸4.0部、アクリロニトリル10.0部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)3.0部、及びトルエン28.5部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン3.0部で洗浄した。さらに同温度で4時間保ち、1時間かけて80℃に昇温し、80℃で1時間保持した。単量体(a)の反応率を確認し、単量体(a)の反応率が98%未満であったため、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を1.0部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。120℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-9)を得た。
オートクレーブにベヘニルアクリレート40.0部、ステアリルアクリレート20.0部、トルエン35.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。スチレン21.5部、アクリル酸3.5部、メタクリロニトリル15.0部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)5.0部、及びトルエン28.5部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン3.0部で洗浄した。さらに同温度で4時間保ち、1時間かけて80℃に昇温し、80℃で1時間保持した。単量体(a)の反応率を確認し、単量体(a)の反応率が98%未満であったため、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を2.0部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。120℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-10)を得た。
撹拌機付のオートクレーブにキシレン100部、ベヘニルアクリレート100部、チオグリコール酸1.5部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で85℃まで昇温した。2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8部を仕込み、オートクレーブ内温度を85℃のまま同温度にコントロールしながら3時間かけて重合を行った。その後更に105℃まで昇温し、105℃で1時間撹拌した後に30℃まで冷却した。冷却後、反応容器内に2-ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)2.5部を加え55℃まで昇温した後、シジクロヘキシルカルボジイミド(東京化成工業(株)製)4部、4-メチルアミノピリジン(東京化成工業(株)製)0.1部、t-Buハイドロキノン(東京化成工業(株)製)0.1部をクロロホルム20部に溶解した混合液を1時間かけて滴下した。その後更に55℃で5時間撹拌を行った。その後35℃まで冷却して固形分を除いた溶解分をメタノール沈殿法により精製した。得られた固形分を減圧乾燥してベヘニルアクリレートマクロマーを得た。ベヘニルアクリレートマクロマーは重量平均分子量が6,000、融点が65℃であった。
さらに、別のオートクレーブにトルエン35.0部、上記のベヘニルアクリレートマクロマー50.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。スチレン20.0部、アクリル酸6.0部、メチルアクリレート10.0部、メタクリロニトリル14.0部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.0部、及びトルエン28.5部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン3.0部で洗浄した。さらに同温度で4時間保ち、1時間かけて80℃に昇温し、80℃で1時間保持した。単量体(a)の反応率を確認し、単量体(a)の反応率が98%未満であったため、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を1.0部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。120℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A-11)を得た。
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート60.0部、アクリロニトリル6.0部、スチレン31.5部、2-イソシアナトエチルメタクリレート1.9部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.4部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A’-1)を得た。
オートクレーブにトルエン46部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート40.0部、アクリル酸10.0部、アクリロニトリル20.0部、スチレン27.5部、2-イソシアナトエチルメタクリレート1.9部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3部、及びトルエン23部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、メタノールを0.6部、ネオスタンU-600を0.5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A’-2)を得た。
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。メチルアクリレート10.0部、アクリロニトリル10.0部、スチレン80.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.2部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A’-3)を得た。
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート20.0部、酢酸ビニル60.0部、メタクリロニトリル20.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.2部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.1部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A’-4)を得た。
オートクレーブにキシレン18.3部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ステアリルアクリレート49.0部、アクリロニトリル31.0部、スチレン20.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン13.3部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン1.7部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が95%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.3部投入し、反応率が95%以上まで反応させた。170℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(A’-5)を得た。
<測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:4回
緩和時間:1秒
<サンプル調製>
NMRチューブにサンプルを100mg、重水素化溶媒(例えば重クロロホルム)を0.8mL加え樹脂を溶解させた。
<解析及び計算>
反応前の単量体(a)のプロトンの面積、残存する単量体(a)のプロトンの面積並びに単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(A)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積に基づき、下記の式により反応率を算出した。
反応率:100×[{反応前の単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(A)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}-{残存する単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(A)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}]/{反応前の単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(A)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}
例えば単量体(a)がベヘニルアクリレートであれば、二重結合炭素に結合しているプロトン(約6.4ppm)と、鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトン(約0.9ppm)を使用した。
吸熱ピークのピークトップ温度、発熱ピークのピークトップ温度は、示差走査熱量計{「DSC Q20」、TA Instruments(株)製}を用いて測定した。結晶性ビニル樹脂(A)を20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の冷却過程の発熱ピークのピークトップを示す温度を結晶性ビニル樹脂(A)の発熱ピークのピークトップ温度(TcA)、とし、第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を結晶性ビニル樹脂(A)の吸熱ピークのピークトップ温度(TmA)とした。
示差走査熱量計による冷却過程の発熱ピークに基づく発熱量を発熱ピークに基づく発熱量(QcA)とし、第2回目の昇温過程の吸熱ピークに基づく吸熱量を、吸熱ピークに基づく吸熱量(QmA)とした。
吸熱ピークのピークトップ温度の測定によって得られたDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅を、吸熱ピークの半値幅とした。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物735部、テレフタル酸131部、アジピン酸142部、トリメチロールプロパン21部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら2時間反応させた。次に、0.5~2.5kPaの減圧下に5時間反応させた後、酸価が1以下になったことを確認し、180℃まで降温した。重合禁止剤としてtert-ブチルカテコール1部を入れ、さらにフマル酸を48部入れ、0.5~2.5kPaの減圧下に8時間反応させた後、酸価が2になったことを確認した後取り出し、ポリエステル(B111-1)を得た。ポリエステル(B111-1)のガラス転移温度は37℃、重量平均分子量22,000、酸価は2mgKOH/gだった。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物762部、テレフタル酸113部、アジピン酸124部、無水トリメリット酸30部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら2時間反応させた。次に、0.5~2.5kPaの減圧下に5時間反応させた後、酸価が1以下になったことを確認し、180℃まで降温した。重合禁止剤としてtert-ブチルカテコール1部を入れ、さらにフマル酸を38部入れ、0.5~2.5kPaの減圧下に8時間反応させた後、酸価が2になったことを確認した後取り出し、ポリエステル(B111-2)を得た。ポリエステル(B111-2)のガラス転移温度は35℃、重量平均分子量29,000、酸価は2mgKOH/gだった。
冷却管、加熱冷却装置、温度計、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物2モル付加物620重量部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物157重量部、テレフタル酸268重量部、フマル酸1部及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3重量部を入れ、加圧下、220℃で反応させ、生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで徐々に圧抜きをしながら常圧にもどし、さらに0.5~2.5kPaの減圧下で反応を進めた。フロー軟化点が100℃になったところで常圧にもどし、180℃に冷却した。無水トリメリット酸11重量部加え、1時間反応させた。150℃に冷却し、スチールベルトクーラーを使用してポリエステル樹脂(b-1)を得た。
ポリエステル樹脂(B1-1)はガラス転移温度58℃、酸価13mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/g、重量平均分子量150,000であった。
結晶性ビニル樹脂(A-1)を本発明のトナーバインダー(C-1)とした。
結晶性ビニル樹脂(A-2)を本発明のトナーバインダー(C-2)とした。
結晶性ビニル樹脂(A-3)80部及びポリエステル(B111-2)20部を混合し、二軸混練器(栗本鉄工所製,S5KRCニーダー)に52kg/時で供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)としてt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c-4)1.0部を0.52kg/時で供給して160℃で7分間90rpmで混練押出して架橋反応を行い、さらにベント口から10kPaで減圧して有機溶剤の除去を行いながら混合した。混合で得られたものを冷却することにより、本発明のトナーバインダー(C-3)を得た。
表3に示した重量部数の結晶性ビニル樹脂(A)、ポリエステル(B111)を混合し、二軸混練器に供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)を供給して、実施例3と同様に架橋反応と有機溶剤の除去を行い、本発明のトナーバインダー(C-4)~(C-7)、(C-11)~(C-13)を得た。なお、表3中のラジカル反応開始剤(c)は以下のとおりである。
(c-2):ジ-t-ブチルパーオキシド
(c-4):t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート
結晶性ビニル樹脂(A-4)8部及びポリエステル(B1-1)92部を混合し、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。得られたものを冷却することにより、本発明のトナーバインダー(C-8)を得た。
結晶性ビニル樹脂(A-7)6部及びポリエステル(B1-1)94部を混合し、二軸混練機で混練した。得られたものを冷却することにより、本発明のトナーバインダー(C-9)を得た。
結晶性ビニル樹脂(A-8)5部及びポリエステル(B1-1)95部を混合し、二軸混練機で混練した。得られたものを冷却することにより、本発明のトナーバインダー(C-10)を得た。
結晶性ビニル樹脂(A’-1)を本発明のトナーバインダー(C’-1)とした。なお、(C’-1)は結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体中の(b)の重量割合が7%未満である。
結晶性ビニル樹脂(A’-2)を本発明のトナーバインダー(C’-2)とした。なお、(C’-2)は酸価が60より大きい。
表3に示した重量部数の結晶性ビニル樹脂(A’)、その他の樹脂(B)を混合し、二軸混練器に供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)を供給して、実施例3と同様に架橋反応と有機溶剤の除去を行い、トナーバインダー(C’-3)~(C’-5)を得た。
なお、(C’-3)は結晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体中の(a)を含まず、(C’-4)はTm-Tcが20℃より大きく、(C’-5)は発熱ピークのピークトップ温度(Tc)が20℃未満および吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が40℃未満である。
吸熱ピークのピークトップ温度、発熱ピークのピークトップ温度は、示差走査熱量計{「DSC Q20」、TA Instruments(株)製}を用いて測定した。トナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の冷却過程の結晶性樹脂(A)由来の発熱ピークのピークトップを示す温度を発熱ピークのピークトップ温度(Tc)、とし、第2回目の昇温過程の結晶性樹脂(A)由来の吸熱ピークのトップを示す温度を吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)とした。
示差走査熱量計による冷却過程の発熱ピークに基づく発熱量を発熱ピークに基づく発熱量(Qc)とし、第2回目の昇温過程の吸熱ピークに基づく吸熱量を、吸熱ピークに基づく吸熱量(Qm)とした。
吸熱ピークのピークトップ温度の測定によって得られたDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅を、吸熱ピークの半値幅とした。
トナーバインダー(C-1)85部に対して、顔料のカーボンブラック[MA-100、三菱ケミカル(株)製]8部、離型剤のカルナバワックス4部、荷電制御剤[T-77、保土谷化学工業(株)製]2部を加え下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。ついで気流式微粉砕機[(株)栗本鐵工所製 KJ-25]を用いて微粉砕した後、エルボージェット分級機[(株)マツボー製 EJ-L-3(LABO)型]で分級し、体積平均粒径が7μmのトナー粒子を得た。
ついで、トナー粒子100部に流動化剤として疎水性シリカ[アエロジルR972、日本アエロジル(株)製]1部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T-1)を得た。
表4に記載した原料の配合部数で、実施例14と同様にトナーを製造し、本発明のトナー(T-2)~(T-13)を得た。
表4に記載した原料の配合部数で、実施例10と同様にトナーを製造し、トナー(T’-1)~(T’-5)を得た。
以下に、得られたトナー(T-1)~(T-13)及び(T’-1)~(T’-5)の低温定着性、耐ホットオフセット性、粉砕性、画像強度、耐熱保存性、帯電安定性、光沢性及び耐久性の測定方法と評価方法を、判定基準を含めて説明する。評価結果を表4に示す。
トナーを紙面上に1.00mg/cm2となるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90~200℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。この評価条件では、一般には125℃以下であることが好ましい。
上記低温定着性に記載した方法と同じ方法で、トナーを紙面上に載せ、この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90~200℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのホットオフセットの有無を目視し、ホットオフセットの発生温度を測定した。
ホットオフセットの発生温度が高いほど、耐ホットオフセット性に優れることを意味する。この評価条件では、180℃以上であることが好ましい。
実施例に用いた各トナーバインダー(C-1)~(C-13)及び(C’-1)~(C’-5)85部に対して、それぞれ顔料のカーボンブラックMA-100を8部、離型剤のカルナバワックスを4部、荷電制御剤T-77を2部を加え、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、二軸混練機で混練して得た混合物を冷却後に8.6メッシュパス~30メッシュオンの大きさに粉砕分級したものを粉砕性評価用粒子として用い、この粉砕性評価用粒子を超音速ジェット粉砕機ラボジェットにより下記の条件で微粉砕した。
粉砕圧:0.64MPa
粉砕時間:15分
セパレ-ター周波数:150Hz
アジャスターリング:15mm
ルーバーの大きさ:中
粉砕性評価用粒子の微粉砕物を分級せずに、体積平均粒径(μm)をコールターカウンター[商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]により測定し粉砕性を評価した。粉砕性の評価結果として、体積平均粒径(μm)を表4に示す。
粒子径が小さいほど、粉砕性に優れることを意味する。この評価条件では、8.0μm以下であることが好ましい。
前記の低温定着性の評価で定着した画像を、JIS K5600に準じて、斜め45度に固定した鉛筆の真上から10gの荷重が加わる様にして手かき法によりかけ引っ掻き硬度試験を行い、傷のつかない鉛筆硬度から画像強度を評価した。
鉛筆硬度が高いほど画像強度に優れることを意味する。一般にはHB以上であることが好ましい。
トナー1gと疎水性シリカ(アエロジルR8200、エボニックジャパン(株)製)0.01gをシェイカーで1時間混合した。混合物を密閉容器に入れ、温度40℃、湿度80%の雰囲気で48時間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記判定基準で耐熱保存性を評価した。
○:ブロッキングが全く発生していない。
△:一部にブロッキングが発生している。
×:全体にブロッキングが発生している。
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F-150)20gとを50mLのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて50rpmで10分間及び60分間摩擦攪拌し、それぞれの時間での帯電量をブローオフ帯電量測定装置[京セラケミカル(株)製]を用いて測定した。
得られた値を用いて「摩擦時間120分後の帯電量/摩擦時間10分後の帯電量」を計算し、これを帯電安定性の指標とした。帯電安定性の評価結果として「摩擦時間120分後の帯電量/摩擦時間10分後の帯電量」を表4に示す。
本指標が大きいほど帯電安定性に優れることを意味する。この評価条件では0.8以上であると好ましい。
上記低温定着性に記載した方法と同じ方法で、トナーを紙面上に載せ、トナーの定着を行った。次に、トナーが定着した紙面の下に白色の厚紙を敷き、光沢度計(株式会社堀場製作所製、「IG-330」)を用いて、入射角度60度にて、印字画像の光沢度(%)を、コールドオフセットの発生温度(MFT)以上の温度からホットオフセットが発生した温度まで、5℃ごとに測定し、その範囲において最も高い光沢度(%)をトナーの光沢性の指標とした。例えば、光沢度が120℃では10%、125℃では15%、130℃では20%、135℃では18%であれば、130℃の20%が最も高い値なので20%を採用する。光沢性の指標として、光沢度を表4に示した。
光沢度が高いほど、光沢性に優れることを意味する。この評価条件では、10%以上が好ましい。
トナーを二成分現像剤として、市販モノクロ複写機[AR5030、シャープ(株)製]を用いて連続コピーを行い、以下の基準で耐久性を評価した。
◎:1万枚コピー後も画質に変化なく、カブリの発生もない。
○:1万枚コピー後でカブリが発生している。
△:6千枚コピー後でカブリが発生している。
×:2千枚コピー後でカブリが発生している。
さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。
Claims (5)
- 単量体(a)、単量体(b)および単量体(d)を必須構成単量体とする結晶性ビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、
(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであり、
(b)がビニル基を有する炭素数6以下の単量体であり、
(d)が単量体(a)及び単量体(b)以外であって、スチレンおよび/または2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートとメタノールの反応物を含み、
(A)を構成する単量体中の(a)の重量割合が(A)の重量を基準として30~90重量%であり、(b)の重量割合が(A)の重量を基準として7~67.5重量%であり、(d)の重量割合が(A)の重量を基準として2.5~26重量%であり、
トナーバインダーの酸価が30mgKOH/g以下であり、
トナーバインダーの発熱ピークのピークトップ温度(Tc)が20~90℃であり、
トナーバインダーの吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が40~100℃であり、
前記(Tm)を持つ吸熱ピークの半値幅が6℃以下であり、
さらに関係式(1)を満たすことを特徴とするトナーバインダー。
関係式(1) : |Tm-Tc|≦20
[関係式(1)において、(Tc)および(Tm)は、示差走査熱量計を用いてトナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をすることで得られるDSC曲線のうち、冷却過程における結晶性樹脂(A)由来の発熱ピークのピークトップ温度が(Tc)であり、第2回目の昇温過程における結晶性樹脂(A)由来の吸熱ピークのピークトップ温度が(Tm)であり、結晶性樹脂(A)由来の発熱ピーク及び吸熱ピークが複数ある場合には(Tc)及び(Tm)は、それぞれの発熱ピーク及び吸熱ピークから計算される発熱量及び吸熱量が最も大きい発熱ピーク及び吸熱ピークのピークトップ温度である。] - 関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のトナーバインダー。
関係式(2) : |Qm-Qc|≦10
[関係式(2)において、(Qc)とは(Tc)を持つ発熱ピークから計算される発熱量であり、(Qm)とは(Tm)を持つ吸熱ピークから計算される吸熱量である。] - (b)が、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル及び2-ヒドロキシプロピルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のトナーバインダー。
- さらに、ポリエステル樹脂(B1)を含有してなる請求項1~3のいずれか1項に記載のトナーバインダー。
- 結晶性ビニル樹脂(A)の含有率が5重量%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のトナーバインダー。
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