JP7488868B2 - トナーバインダー - Google Patents

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Description

本発明は、トナーバインダーに関する。
近年、電子写真システムの発展に伴い、複写機やレーザープリンター等の電子写真装置の需要は急速に増加しており、それらの性能に対する要求も高度化している。
フルカラー電子写真用には従来、電子写真感光体等の潜像担持体に色画像情報に基づく潜像を形成し、該潜像を対応する色のトナーにより現像し、次いで該トナー像を転写材上に転写するといった画像形成工程を繰り返した後、転写材上のトナー像を加熱定着して多色画像を得る方法や装置が知られている。
これらのプロセスを問題なく通過するためには、紙への定着性が良好であることが必要とされる。また、装置は定着部に加熱体を有するため、装置内で温度が上昇することから、トナーは、装置内でブロッキングしないことが要求される。
さらに、電子写真装置の小型化、高速化、高画質化の促進とともに、定着工程における消費エネルギーを低減するという省エネルギーの観点から、トナーの低温定着性の向上が強く求められている。
上記に加えて、多色画像(フルカラー)は写真画像などの再現等から白黒画像(モノクロ)に比べてはるかに高い光沢が必要とされ、得られる画像のトナー層が平滑になるようにする必要がある。
したがって、低温定着性を有しながら耐熱保存性を維持しつつ、高い光沢性を発現させる必要がある。
上記性能を発現させるためにシャープメルト性に優れた結晶性ビニル樹脂と炭素-炭素結合により架橋されたポリエステル樹脂を併用するトナーバインダーが提案されている(特許文献1~3)。
しかしながら、さらなる高画質化の要望に応えるため、トナーを小粒子径化した場合、上記トナーバインダーを使用したトナーは、トナー中の離型剤の分散性が十分といえず、無着色トナーが発生する場合があり、それらの改善が望まれている。
国際公開第2019/073731号 特開2019-194672号公報 特開2020-76954号公報
本発明は、離型剤の分散性、低温定着性、耐熱保存性及び光沢性に優れたトナーバインダーを提供することを目的とする。
上記の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、非線形ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)とを含有するトナーバインダーであって、前記非線形ポリエステル樹脂(A)はポリエステル(A1)が炭素-炭素結合により架橋された樹脂であり、前記ポリエステル(A1)は炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び/又は炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸を必須構成成分とする重縮合体であり、トナーバインダーが吸熱ピークトップ温度(Tm)を50~90℃の範囲に少なくとも1個有することを特徴とするトナーバインダー。
但し、(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での吸熱ピークのピークトップ温度である。
本発明により、離型剤の分散性、低温定着性、耐熱保存性及び光沢性に優れたトナーバインダーを提供することが可能になる。
本発明のトナーバインダーは、非線形ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)とを含有するトナーバインダーであって、前記非線形ポリエステル樹脂(A)はポリエステル(A1)が炭素-炭素結合により架橋された樹脂であり、前記ポリエステル(A1)は炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び/又は炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸を必須構成成分とする重縮合体であり、トナーバインダーが吸熱ピークトップ温度(Tm)を50~90℃の範囲に少なくとも1個有することを特徴とするトナーバインダーである。
但し、(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での吸熱ピークのピークトップ温度である。
以下に、本発明のトナーバインダーを順次、説明する。
本発明のトナーバインダーは、ポリエステル(A1)が炭素-炭素結合により架橋された樹脂である非線形ポリエステル樹脂(A)を必須成分として含む。
非線形ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル(A1)を炭素-炭素結合により架橋した構造を有する樹脂である。炭素-炭素結合による架橋は、ポリエステル(A1)分子に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A1)に含まれる他の炭素原子とが直接結合することにより形成される。
ここでいうポリエステル(A1)は、炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び/又は炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸を必須構成成分とする重縮合体であれば、特に限定はなく、炭素-炭素結合により架橋した状態となるものであればどのようなポリエステルでもよい。
なかでも架橋構造を形成し易いという観点から、好ましくは炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)である。
また、非線形ポリエステル樹脂(A)の炭素-炭素結合による架橋の少なくとも一部は、上記ポリエステル(A11)分子に存在する一の炭素-炭素二重結合を構成していた炭素原子がポリエステル(A11)分子に存在する他の炭素-炭素二重結合を構成していた炭素原子と結合することにより形成された炭素-炭素結合であることが好ましい。
一の炭素-炭素二重結合と他の炭素-炭素二重結合は、同一のポリエステル(A11)分子内に存在していてもよく、別々のポリエステル(A11)分子に存在していてもよい。
非線形ポリエステル樹脂(A)は上記ポリエステル(A11)の炭素-炭素二重結合を反応させる他、加熱等による水素引き抜き反応によってポリエステル(A1)に含まれる炭素原子に結合した水素原子を引き抜いて架橋する方法(水素原子引き抜き反応とも言う)等によっても得ることができる。
炭素-炭素結合を生成する架橋反応の形態としては、例えば、不飽和二重結合をポリエステル樹脂の主鎖や側鎖に導入し、ラジカル付加反応、カチオン付加反応又はアニオン付加反応等によって反応させ、分子間炭素-炭素結合を生成させる反応、及び過酸化物等を用いて水素原子引き抜き反応によって分子間炭素-炭素結合を生成させる反応等が挙げられる。
なお、上記の架橋反応によってネットワークを形成したポリエステル樹脂はテトラヒドロフラン(以下、「テトラヒドロフラン」をTHFと略記することがある。)に溶解することができないため、架橋反応によってネットワークが形成されたポリエステル樹脂であることは、ポリエステル樹脂をTHFに溶解してTHFに不溶な成分(THF不溶解分)を有することで確認することができる。
本発明のトナーバインダーに用いる非線形ポリエステル樹脂(A)は、炭素-炭素結合を生成する架橋反応によりポリエステル(A1)を架橋した樹脂であり、これらの架橋反応の形態のうち、炭素-炭素結合を生成する架橋反応としては、粉砕性及び低温定着性の観点から、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)をラジカル付加反応、カチオン付加反応又はアニオン付加反応等によって反応させ、分子間炭素-炭素結合を生成させる方法が好ましい。
なお、非線形ポリエステル樹脂(A)は炭素-炭素結合による架橋を有していればよく、エステル結合による架橋、重付加反応による架橋又はその両方による架橋等も有していてもよい。
また、非線形ポリエステル樹脂(A)は、1種類のポリエステル樹脂からなっていてもよく、2種類以上のポリエステル樹脂の混合物であってもよい。
また、本発明のトナーバインダーにおいて、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)は、炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び/又は炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸に加え、不飽和カルボン酸成分(y)又は不飽和アルコール成分(z)のいずれかを必須成分とする構成成分を重縮合して得られたポリエステル樹脂であることが好ましい。
さらに、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)は、上記必須成分以外に、飽和アルコール成分(x)や、飽和カルボン酸成分(w)を構成成分として含んでいてもよい。
また、ポリエステル(A11)はこれらの各成分を、それぞれ1種類ずつ用いて重縮合したものでもよく、各成分として複数種類を併用して重縮合したものでもよい。
なお、本明細書において、不飽和カルボン酸成分(y)であるか、飽和カルボン酸成分(w)であるかの判断に、芳香環及び複素環の結合は考慮しない。
同様に、不飽和アルコール成分(z)であるか、飽和アルコール成分(x)であるかの判断に芳香環及び複素環の結合は考慮しない。
炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコールとしては、直鎖又は分岐のアルキル基(アルキル基の炭素数14~30)を有する1価のアルコール(テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール(ステアリルアルコール)、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール及びメリシルアルコール(1-トリアコンタノール)等)が挙げられる。炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコールのうち光沢性と離型剤の分散性の観点から、好ましいものは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数14~30)を有する1価のアルコールであり、より好ましくは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18~24)を有する1価のアルコールであり、さらに好ましくは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18~22)を有する1価のアルコールであり、特に好ましくはオクタデシルアルコール(ステアリルアルコール)、アラキジルアルコール及びベヘニルアルコールである。
炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸としては、直鎖又は分岐のアルキル基(アルキル基の炭素数13~30)を有する1価のカルボン酸(テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸及びトリアコンタン酸等)が挙げられる。炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸のうち光沢性と離型剤の分散性の観点から、好ましいものは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数13~30)を有する1価のカルボン酸であり、より好ましくは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数17~24)を有する1価のカルボン酸であり、さらに好ましくは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数17~22)を有する1価のカルボン酸であり、特に好ましくはオクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸、ドコサン酸(ベヘン酸)である。
不飽和アルコール成分(z)としては、不飽和モノオール(z1)及び不飽和ジオール(z2)等が挙げられる。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
不飽和モノオール(z1)としては、2-プロペン-1-オール、及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
不飽和ジオール(z2)としては、リシノレイルアルコールが挙げられる。
飽和アルコール成分(x)としては、飽和モノオール(x1)、飽和ジオール(x2)及び3価以上の飽和ポリオール(x3)等が挙げられる。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
飽和モノオール(x1)としては、炭素数1~13の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-デカノール及びドデシルアルコール等)等が挙げられる。
飽和ジオール(x2)としては、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール及び1,12-ドデカンジオール等)(x21)、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等)(x22)、炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)(x23)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)付加物(好ましくは平均付加モル数1~30)(x24)、芳香族ジオール[単環2価フェノール(例えばハイドロキノン等)及びビスフェノール類等](x25)及び上記芳香族ジオールのAO付加物(好ましくは平均付加モル数2~30)(x26)等が挙げられる。
これらの飽和ジオール(x2)のうち、低温定着性の観点から、炭素数2~36のアルキレングリコール(x21)及び芳香族ジオールのAO付加物(x26)が好ましく、ビスフェノール類のAO付加物がさらに好ましい。
上記AOとしては、アルキレン基の炭素数2~4のもの(エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、1,2-、2,3-又はiso-ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン)が好ましい。AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ビスフェノール類としては、下記一般式(1)で示されるもの等が挙げられる。
HO-Ar-P-Ar-OH (1)
一般式(1)におけるPは炭素数1~3のアルキレン基、-SO-、-O-、-S-又は直接結合を表し、Arは、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。
一般式(1)で表されるビスフェノール類の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2-メチルビスフェノールA、2,6-ジメチルビスフェノールA及び2,2’-ジエチルビスフェノールFが挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ビスフェノール類のAO付加物を構成するAOとして低温定着性の観点から好ましいのはEO及び/又はPOである。
また、AOの平均付加モル数は、好ましくは2~30モル、より好ましくは2~10モル、更に好ましくは2~5モルである。
ビスフェノール類のAO付加物の内、低温定着性の観点から好ましいのは、ビスフェノールAのEO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~4、より好ましくは2~3)及び/又はPO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~4、より好ましくは2~3)である。
3価以上の飽和ポリオール(x3)としては、炭素数3~36の3価以上の脂肪族多価アルコール(x31)、糖類及びその誘導体(x32)、脂肪族多価アルコールのAO付加物(平均付加モル数は好ましくは1~30)(x33)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)(x34)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)(x35)等が挙げられる。
炭素数3~36の3価以上の脂肪族多価アルコール(x31)としては、アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物が挙げられ、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
糖類及びその誘導体(x32)としては、例えばショ糖及びメチルグルコシド等が挙げられる。
3価以上の飽和ポリオール(x3)の内、光沢性の観点から、炭素数3~36の3価以上の脂肪族多価アルコール(x31)及びノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)(x35)が好ましい。
飽和アルコール成分(x)の内、低温定着性及び光沢性の観点から好ましいのは、炭素数2~36のアルキレングリコール(x21)、ビスフェノール類のAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)、炭素数3~36の3価以上の脂肪族多価アルコール(x31)及びノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)(x35)である。
飽和アルコール成分(x)として、低温定着性及び光沢性の観点からより好ましいのは、炭素数2~10のアルキレングリコール、ビスフェノール類のAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~5)、炭素数3~36の3~8価の脂肪族多価アルコール及びノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~30)であり、更に好ましいのは、炭素数2~6のアルキレングリコール、ビスフェノールAのAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~5)及び炭素数3~36の3価の脂肪族多価アルコールであり、特に好ましいのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのAO付加物(平均付加モル数は好ましくは2~3)及びトリメチロールプロパンである。
不飽和カルボン酸成分(y)としては、不飽和モノカルボン酸(y1)、不飽和ジカルボン酸(y2)、3価以上の不飽和ポリカルボン酸(y3)及びこれらの酸の無水物や低級アルキルエステル等が挙げられる。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
不飽和モノカルボン酸(y1)としては、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸が含まれ、例えばアクリル酸、メタクリル酸、プロピオル酸、2-ブテン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3-ブテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、4-ペンテン酸、2-エチル-2-ブテン酸、10-ウンデセン酸、2,4-ヘキサジエン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸及びネルボン酸等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸(y2)としては、炭素数4~50のアルケンジカルボン酸が含まれ、例えばドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、グルタコン酸等が挙げられる。
3価以上の不飽和ポリカルボン酸(y3)としては、炭素数6~50の3価以上のアルケンポリカルボン酸(具体的には、アコニット酸、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸及び4-ペンテン-1,2,4-トリカルボン酸等のアルケントリカルボン酸;1-ペンテン-1,1,4,4-テトラカルボン酸、4-ペンテン-1,2,3,4-テトラカルボン酸及び3-ヘキセン-1,1,6,6-テトラカルボン酸等のアルケンテトラカルボン酸等)が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸成分(y)の内、低温定着性及び耐熱保存性の両立の観点から、好ましいのは炭素数3~10の不飽和モノカルボン酸及び炭素数4~18のアルケンジカルボン酸であり、より好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸及びフマル酸であり、更に好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも同様に好ましい。
飽和カルボン酸成分(w)としては、例えば、芳香族カルボン酸及び脂肪族カルボン酸等が挙げられる。飽和カルボン酸成分(w)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族カルボン酸としては、例えば、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、炭素数9~20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸以外の炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸及び吉草酸等)、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数6~36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)等が挙げられる。
また、飽和カルボン酸成分(w)としては、これらのカルボン酸の無水物、低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよいし、これらのカルボン酸と併用してもよい。
これらの飽和カルボン酸成分(w)の内、耐熱保存性の観点から好ましいのは、炭素数2~50の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸及び炭素数9~20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸であり、より好ましくは、アジピン酸、アルキルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの併用であり、更に好ましいのは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
ポリエステル(A1)を構成する炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸の合計重量割合はポリエステル(A1)の構成成分の合計重量を基準として3~30重量%であることが光沢性と離型剤の分散性の観点から好ましく、より好ましくは5~20重量%である。
ポリエステル(A1)を構成する炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸と飽和アルコール成分(x)及び不飽和アルコール成分(z)と不飽和カルボン酸成分(y)及び飽和カルボン酸成分(w)との合計の仕込み比率は、水酸基とカルボキシル基のモル比([OH]/[COOH])として、好ましくは1/2~2/1、より好ましくは1/1.3~1.5/1、さらに好ましくは1/1.2~1.4/1である。ポリエステル(A1)がポリエステル(A11)である場合には、不飽和カルボン酸成分(y)と不飽和アルコール成分(z)のいずれか一方又は両方を含んでいればよい。
本発明におけるポリエステル(A11)の製造法は、炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び/又は炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸を必須構成成分とする以外に、特に限定されないが、前述のように1種類以上の不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和アルコール成分(z)を含む構成成分を重縮合する方法が好ましい。
本発明において、ポリエステル(A11)を含むポリエステル(A1)等は、公知のポリエステルと同様にして製造することができる。
例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、より好ましくは160~250℃、さらに好ましくは170~235℃で構成成分を反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2~40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
また、ポリエステル重合安定性を得る目的で、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-イソプロピルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン-4-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール及びヒンダードフェノール化合物等が挙げられ、低温定着性の観点から好ましくは2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-イソプロピルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンである。
本発明において、ポリエステル(A1)のガラス転移温度(TgA1)は、-30~52℃であることが好ましい。
TgA1が52℃以下であると低温定着性が良好になり、-30℃以上であると耐熱保存性が良好になる。ポリエステル(A1)のガラス転移温度(TgA1)は、より好ましくは-30~42℃であり、さらに好ましくは12~42℃である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
本発明において、ポリエステル(A1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるピークトップ分子量Mpは2,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは3,000~20,000であり、さらに好ましくは6,000~15,000である。
ポリエステル(A1)のピークトップ分子量Mpが2,000~30,000であると、光沢性と低温定着性が良好になる。
ここでピークトップ分子量Mpの算出方法について説明する。
まず、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン試料を用いて検量線を作製する。
次に、GPCにより試料を分離し、各保持時間における分離された試料のカウント数を測定する。
次に、上記検量線の対数値と得られたカウント数とから試料の分子量分布のチャートを作成する。分子量分布のチャート中のピーク最大値がピークトップ分子量Mpである。
なお、分子量分布のチャート中の、複数のピークがある場合は、それらのピークの中の最大値がピークトップ分子量Mpとする。なお、GPC測定の測定条件は、以下のとおりである。
本発明において、ポリエステル等の樹脂のピークトップ分子量Mp、数平均分子量(以下、Mnと略称することがある。)、重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある。)は、GPCを用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) : HLC-8120[東ソー(株)製]
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定は、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
ポリエステル(A1)の酸価は、低温定着性の観点から好ましくは0~30mgKOH/gであり、より好ましくは0~25mgKOH/gであり、さらに好ましくは0~10mgKOH/gであり、特に好ましくは、1~4mgKOH/gである。
ポリエステル(A1)の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
ポリエステル(A1)が炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)である場合において、ポリエステル(A11)中の炭素-炭素二重結合の含有量は、特に制限されないが、ポリエステル(A11)の重量に基づいて0.1~1.2ミリモル/gであることが好ましく、より好ましくは0.1~0.9ミリモル/gである。
炭素-炭素二重結合の含有量がポリエステル(A11)の重量に基づいて0.1~1.2ミリモル/gである場合、好適に架橋反応が起こり、トナーの耐熱保存性及び光沢性が良好になる。
ポリエステル(A11)中の炭素-炭素二重結合の含有量の測定方法は、特に制限されず、H-NMR、13C-NMR及び臭素価試験方法(JIS K2605)等により測定できる。実施例における炭素-炭素二重結合の含有量は以下の方法で測定した。
<サンプル調整>
13C-NMRチューブにサンプルを100mg、内部標準物質としてトリメチルシリルプロパンスルホン酸ナトリウムを10mg、緩和試薬としてCr(AcAc)を10mgはかりとり、重水素化溶媒(重ピリジン)を0.45ml加えて樹脂を溶解させる。
<測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:24000回
<解析及び計算>
例えば炭素-炭素二重結合がマレイン酸及びフマル酸等の不飽和カルボン酸成分(z)であれば不飽和カルボン酸成分(z)由来の二重結合のカーボンのピーク(164.6ppm)の面積比と内部標準物質のカーボンのピーク(0ppm)の面積比から二重結合の含有量(mmol/g)を算出する。
ポリエステル樹脂(A)の製造法は、好ましいものとして以下の方法が挙げられる。
まず、炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び/又は炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸と飽和カルボン酸成分(w)及び/又は飽和アルコール成分(x)とを構成成分として縮合反応させて、さらに、不飽和カルボン酸成分(y)と不飽和アルコール成分(z)の少なくともどちらかを縮合反応させて、分子内に炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)を得る。次に、ポリエステル(A11)にラジカル反応開始剤(c)を作用させて、ラジカル反応開始剤(c)から発生するラジカルを利用して、ポリエステル(A11)中の不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和アルコール成分(z)に起因する炭素-炭素二重結合同士を架橋反応により結合させる。これによりポリエステル樹脂(A)を製造することができる。この方法は、架橋反応を短時間で均一にできる点で好ましい方法である。
ポリエステル(A11)の架橋反応のために用いるラジカル反応開始剤(c)としては、特に制限されず、無機過酸化物(c1)、有機過酸化物(c2)及びアゾ化合物(c3)等が挙げられる。また、これらのラジカル反応開始剤を併用してもかまわない。
無機過酸化物(c1)としては、特に限定されないが、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
有機過酸化物(c2)としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン、ジ-t-へキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシへキシン-3、アセチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、オクタニノルパーオキシド、デカノリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、m-トルイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及びt-ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
アゾ化合物(c3)としては、特に制限されないが、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
これらの中でも開始剤効率が高く、シアン化合物等の副生成物を生成しないことから、有機過酸化物(c2)が好ましい。
更に、架橋反応が効率よく進行し、使用量が少なくて済むことから、水素引抜き能の高い反応開始剤がより好ましく、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及びジ-t-へキシルパーオキシド等の水素引抜き能の高いラジカル反応開始剤が更に好ましい。
ラジカル反応開始剤(c)の使用量は、特に制限されないが、ポリエステル(A11)を得るための重合反応に用いた不飽和カルボン酸成分(y)及び不飽和アルコール成分(z)の合計重量に基づいて、0.1~50重量%が好ましい。
ラジカル反応開始剤の使用量が、0.1重量%以上の場合に架橋反応が進行し易くなる傾向にあり、50重量%以下の場合に、臭気が良好となる傾向にある。この使用量は、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
上記種類のラジカル反応開始剤(c)及び上記の使用量でラジカル重合した場合、好適にポリエステル(A11)中の炭素-炭素二重結合同士の架橋反応が起こり、トナーの低温定着性と耐熱保存性が良好になることから好ましい。
本発明のトナーバインダーは、結晶性ビニル樹脂(B)を必須成分として含む。結晶性ビニル樹脂(B)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明における「結晶性」とは下記に記載の示差走査熱量測定(DSC測定ともいう)において、DSC曲線が吸熱ピークのピークトップ温度を有することを意味する。
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)の測定方法を記載する。
示差走査熱量計{例えば「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定する。結晶性ビニル樹脂(B)を20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)とする。
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)は、単量体(a)を必須構成単量体とする重合物であり、単量体(a)はアルキル基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであることが低温定着性及び耐熱保存性の観点から好ましい。単量体(a)の炭素数は、アルキル基の炭素数と(メタ)アクリル酸エステルを構成する炭素数(3又は4)の合計である。アルキル基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレート(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
(a)としては直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18~36)を有する(メタ)アクリレート[オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンエイコサニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、モンタニル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート及びドトリアコンチル(メタ)アクリレート等]、分岐のアルキル基(アルキル基の炭素数18~36)を有する(メタ)アクリレート[2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等]、直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18~36)を有するカルボン酸[ステアリン酸、ベヘン酸等]と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等]とのエステル、及び分岐のアルキル基(アルキル基の炭素数18~36)を有するカルボン酸と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとのエステル等が挙げられる。
これらの内、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましいのは直鎖のアルキル基(炭素数18~36)を有する(メタ)アクリレートであり、より好ましいのは直鎖のアルキル基(炭素数18~30)を有する(メタ)アクリレートであり、更に好ましいのはオクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート及びトリアコンチル(メタ)アクリレートであり、特に好ましいのはオクタデシルアクリレート、エイコシルアクリレート、ベヘニルアクリレート及びリグノセリルアクリレートである。
ビニル樹脂(B)はトナーの耐ホットオフセット性、耐熱保存性、粉砕性及び帯電安定性の観点から構成単量体とし上記単量体(a)以外に、単量体(b)を構成単量体として含有してもよい。単量体(b)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(b)としては、スチレン系モノマー(b1)、(メタ)アクリル系モノマーのうち単量体(a)を除く(メタ)アクリル系モノマー(b2)及びビニルエステルモノマー(b3)並びにニトリル基、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基及びビューレット基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体(b4)等が好ましく、より好ましくはスチレン系モノマー(b1)、(メタ)アクリル系モノマーのうち単量体(a)を除く(メタ)アクリル系モノマー(b2)並びにニトリル基、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基及びビューレット基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体(b4)である。
スチレン系モノマー(b1)としては、スチレン、アルキル基の炭素数が1~3のアルキルスチレン(例えばα-メチルスチレン及びp-メチルスチレン等)などが挙げられる。
これらのうち好ましくはスチレンである。
(メタ)アクリル系モノマー(b2)としては、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が1~17のアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレート等]、アルキル基の炭素数が4~20のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びエチル-2-(ヒドロキシメチル)アクリレート]、炭素数が4~20のアミノアルキル基含有(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数8~20の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
これらのうち好ましくはアクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート及びそれらの2種以上の混合物である。
なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
ビニルエステルモノマー(b3)としては、炭素数3~15の脂肪族ビニルエステル[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酢酸イソプロペニル等]及び炭素数9~15の芳香族ビニルエステル[メチル-4-ビニルベンゾエート等]等が挙げられる。
ニトリル基、ウレタン基、ウレア基、アミド基、イミド基、アロファネート基及びビューレット基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体(b4)としては、ニトリル基を有する炭素数6以下の単量体(b41)[(メタ)アクリロニトリル等]、ウレタン基を有する単量体(b42)[2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]、ウレア基を有する単量体(b43)、アミド基を有する単量体(b44)、イミド基を有する単量体(b45)、アロファネート基を有する単量体(b46)及びビューレット基を有する単量体(d47)等が挙げられる。
本明細書において「(メタ)アクリロニトリル」という語は、「アクリロニトリル」及び/又は「メタクリロニトリル」を意味する。
これらの単量体(b4)のうち好ましくは、ニトリル基を有する炭素数6以下の単量体(b41)である。
ビニル樹脂(B)は構成単量体として上記単量体(a)及び単量体(b)以外のその他の単量体を含有してもよく、例えばジビニルベンゼン及びアルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられる。
結晶性ビニル樹脂(B)は、結晶性の観点から、前記結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体中の前記単量体(a)の重量割合が前記結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体の合計重量を基準として、30~99重量%であることが好ましい。30重量%以上であると低温定着性が良好となり、99重量%以下であると耐熱保存性が良好になる。さらに低温定着性及び耐熱保存性の点から、好ましくは40~90重量%であり、より好ましくは40~80重量%である。
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は低温定着性及び耐熱保存性の観点から、50~90℃であることが好ましい。Tmが50℃以上であると耐熱保存性が良好となり、90℃以下であると低温定着性が良好となる。
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、より好ましくは52~89℃である。
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体の種類や構成比率、重量平均分子量などで調整することができる。
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)は、アルキル基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレート(a)、必要に応じて用いる単量体(b)を含有する単量体組成物を公知の方法(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合及びリビングカチオン重合等)で重合することで製造できる。例えば、上記単量体を溶媒(トルエン等)中でラジカル反応開始剤(c)とともに反応させる溶液重合法(特開平5-117330号公報等)により製造することができる。
また、ラジカル反応開始剤は上記記載のラジカル反応開始剤(c)を用いてもよい。また、ラジカル反応開始剤(c)として好ましいものも上記記載と同様である。
本発明の方法により得られるトナーバインダーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の結晶性ビニル樹脂(B)の重合時に使用した化合物及びその残渣を含んでいてもよい。
本発明のトナーバインダーは、非線形ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)以外のトナーバインダー用樹脂として公知であるその他の樹脂(特開平06-194876号公報に記載の重合体等)を含有しても良い。その他の樹脂は1種類の樹脂でもよく、2種類以上の樹脂の混合物であってもよい。
本発明において、非線形ポリエステル樹脂(A)の含有割合は、低温定着性、耐熱保存性、光沢性及び離型剤の分散性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として30~70重量%であることが好ましく、より好ましくは40~60重量%である。
本発明において、結晶性ビニル樹脂(B)の含有割合は、低温定着性、耐熱保存性及び光沢性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として30~70重量%であることが好ましく、より好ましくは40~60重量%である。
本発明のトナーバインダーのガラス転移温度(Tg)は、低温定着性と耐熱保存性の観点から、10~80℃であることが好ましく、さらに好ましくは10~40℃である。
Tgが80℃以下であると低温定着性が良好になり、10℃以上であると耐熱保存性が良好になる。
なお、トナーバインダーのガラス転移温度(Tg)は、ポリエステル(A1)のガラス転移温度と同様に、例えばTA Instruments(株)製、DSCQ20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
本発明のトナーバインダーは、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)を50~90℃の範囲に少なくとも1個有する。
なお、トナーバインダーの吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での吸熱ピークのピークトップ温度である。
上記吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)に由来する吸熱ピークのピークトップ温度であることが好ましい。一態様において、本発明のトナーバインダーは、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が、好ましくは51~88℃である。吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が上記範囲にあると、トナーバインダーの低温定着性及び耐熱保存性のバランスがより良好になる。これはトナーバインダーを用いたトナーを熱定着する際に(Tm)を示す温度で結晶性ビニル樹脂(B)がシャープメルト化してトナーバインダーが低粘度化するためであり、またトナーを保管する際に結晶性ビニル樹脂(B)の溶融によるトナー粒子同士の融着を防ぎ、保管安定性を満足するためである。
トナーバインダーの吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)を構成するアルキル基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレート(a)の炭素数を調整すること及び結晶性ビニル樹脂(B)を構成する(a)の重量比率を調整すること等により上記の範囲に調整することができる。一般的には(a)の炭素数を増やす、(a)の重量比率を増やす、結晶性ビニル樹脂(B)の重量平均分子量を増やすことにより吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が上がる。また、結晶性ビニル樹脂(B)の含有量が少ない場合は、ポリエステル(A1)と結晶性ビニル樹脂(B)との溶解度パラメーターの差を大きくすることで吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が下がりにくくなる。
本発明のトナーバインダーは、トナーバインダー中の有機溶剤の含有量が10ppm以上2000ppm以下であることが低温定着性、耐熱保存性及び光沢性の観点から好ましく、30ppm以上100ppm以下であることがより好ましい。
有機溶剤の含有量を制御する方法としては、例えば、ポリエステル(A1)、結晶性ビニル樹脂(B)及びトナーバインダーを製造する際の(1)有機溶剤使用量の制御、(2)開始剤量の制御(開始剤分解物の制御)、(3)(1)及び(2)で使用した有機溶剤及び開始剤分解残渣の脱溶剤による制御、(4)トナーバインダーを製造する際のポリエステル(A1)と結晶性ビニル樹脂(B)の重量比等が挙げられる。
例えば、トナーバインダーを製造する際の結晶性ビニル樹脂(B)の重量比を増やすことで有機溶剤の含有量が増加する。また、トナーバインダーを製造する際の脱溶剤の減圧度を下げたり、脱溶剤時間を増やすことで有機溶剤の含有量が減少する。
有機溶剤の含有量(ppm)は、例えばガスクロマトグラフ分析やガスクロマトグラフ質量分析等の下記条件で測定することができる。
実施例におけるトナーバインダー中の有機溶剤の含有量は、以下の条件で測定した。
[ガスクロマトグラフ分析測定条件]
ガスクロマトグラフ :Agilent 6890N
質量分析装置 :Agilent 5973 inert
カラム :ZB-WAX(液相:(14%-シアノプロピル-フェニル)メチルポリシロキサン) 0.25mm×30m df=1.0μm
カラム温度 :70℃→300℃(10℃/分)
インジェクション温度:200℃
スプリット比 :50:1
注入量 :1μL
ヘリウム流量 :1mL/分
検出器 :MSD
トナーバインダーの製造方法について説明する。
トナーバインダーは非線形ポリエステル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有していれば特に限定されず、例えば上記非線形ポリエステル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)や添加剤を混合する場合の混合方法は一般的に行われる公知の方法でよく、混合方法としては、粉体混合、溶融混合及び溶剤混合等が挙げられる。また、非線形ポリエステル樹脂(A)、結晶性ビニル樹脂(B)及び必要により用いる添加剤は、トナーを製造する時に同時に混合してもよい。この方法の中では、均一に混合し、溶剤除去の必要のない溶融混合が好ましい。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、二軸押出機、二軸混練機、スタティックミキサー、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等が挙げられる。
溶剤混合の方法としては、上記非線形ポリエステル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を溶剤(酢酸エチル、THF及びアセトン等)に溶解し、均一化させた後、脱溶剤及び粉砕する方法や、上記非線形ポリエステル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を溶剤(酢酸エチル、THF及びアセトン等)に溶解し、水中に分散させた後、造粒及び脱溶剤する方法、並びに結晶性ビニル樹脂(B)とポリエステル(A11)とを溶融混合しながらポリエステル(A11)を架橋する方法などがある。
なかでも結晶性ビニル樹脂(B)とポリエステル(A11)とを溶融混合しながらポリエステル(A11)を架橋する方法が好ましく、この溶融混合を行うための具体的方法としてはポリエステル(A11)と(B)との混合物を連続式混合装置に一定速度で注入し、同時にラジカル反応開始剤(c)も一定速度で注入し、100~200℃の温度で混練搬送しながら反応を行わせるなどの方法がある。また、溶融混合する方法がこれら具体的に例示された方法に限られるわけではなく、例えば反応容器中に原料を仕込み、溶液状態となる温度に加熱し、混合するような方法など適宜の方法で行うことができることはもちろんである。
本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、必要により着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等を含有してもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料及び顔料等のすべてを使用することができる。例えば、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、着色剤は、これらは単独であってもよく、2種以上が混合されたものであってもよい。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは3~10重量部である。着色剤として磁性粉を用いる場合は、好ましくは20~150重量部、より好ましくは40~120重量部である。
離型剤としては、定試験力押出形細管式レオメータフローテスタによるフロー軟化点〔T1/2〕が50~170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、エステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩及びこれらの混合物等が挙げられる。
フロー軟化点〔T1/2〕の測定方法を記載する。
定試験力押出形細管式レオメータフローテスタ{たとえば、(株)島津製作所製、CFT-500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をフロー軟化点〔T1/2〕とする。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-ドデセン、1-オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及びそれをさらに熱減成して得られるものを含む]、(例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体)、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル等]等との共重合体等が挙げられる。
マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のHi-Mic-2095、Hi-Mic-1090、Hi-Mic-1080、Hi-Mic-1070、Hi-Mic-2065、Hi-Mic-1045、Hi-Mic-2045等が挙げられる。
パラフィンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のParaffin WAX-155、Paraffin WAX-150、Paraffin WAX-145、Paraffin WAX-140、Paraffin WAX-135、HNP-3、HNP-5、HNP-9、HNP-10、HNP-11、HNP-12、HNP-51等が挙げられる。
フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社製のSasolwax C80、日本精蝋(株)製のFT-0070等が挙げられる。
カルナバワックスとしては、株式会社加藤洋行社製の精製カルナウバワックス 特製1号等が挙げられる。
エステルワックスとしては、脂肪酸エステルワックス(例えば、日油社製のニッサンエレクトールWEP-2、WEP-3、WEP-4、WEP-5及びWEP-8等)等が挙げられる。
高級アルコール類としては、炭素数30~50の脂肪族アルコールなどであり、例えばトリアコンタノールが挙げられる。脂肪酸類としては、炭素数30~50の脂肪酸などであり、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、三菱ケミカル株式会社製のダイヤミッドY、ダイヤミッド200等が挙げられる。
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。
トナー中のトナーバインダーの含有量は、トナーの重量に基づき、好ましくは30~97重量%、より好ましくは40~95重量%、さらに好ましくは45~92重量%である。
着色剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0.05~60重量%、より好ましくは0.1~55重量%、さらに好ましくは0.5~50重量%である。
離型剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
荷電制御剤の含有量はトナーの重量に基づき、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~7.5重量%である。
流動化剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0~10重量%、より好ましくは0~5重量%、さらに好ましくは0.1~4重量%である。
また、添加剤(着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等)の含有量の合計量はトナー重量に基づき、好ましくは3~70重量%、より好ましくは4~58重量%、さらに好ましくは5~50重量%である。
本発明のトナーバインダーを含有するトナーの製造方法は特に限定されず、混練粉砕法、乳化転相法、乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法及び乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分をヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等で乾式ブレンドした後、二軸混練機、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等の連続式混合装置で溶融混練し、その後ミル機等粗粉砕し、最終的に気流式微粉砕機等を用いて微粒化して、さらにエルボージェット等の分級機で粒度分布を調整することにより、トナー粒子[好ましくは体積平均粒径(D50)が5~20μmの粒子]とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、トナー粒子(トナー)の体積平均粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)]を用いて測定することができる。
具体的には、電解水溶液であるISOTON-II(ベックマン・コールター社製)100~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1~5mL加える。さらに測定試料を2~20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパチャーとして50μmアパチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナー粒子の体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)を求める。
本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。キャリア粒子を用いる場合、トナーとキャリア粒子との重量比は、1/99~99/1が好ましい。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
なお、本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、及びポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法及びフラッシュ定着方法等が適用できる。
本発明のトナーバインダーを用いて作製したトナーは、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。さらに詳しくは、特にフルカラー用に好適な静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、「部」は重量部を示す。
<製造例1>[ポリエステル(A1-1)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた加圧反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物396部、1,2-プロパンジオール164部、テレフタル酸363部、ベヘン酸124部、無水トリメリット酸41部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて30分均一化し、227℃、0.45MPaで加圧エステル化を5時間行い、酸価が10mgKOH/gとなったことを確認した。その後、4kPa以下で減圧エステル化を行い、1,2-プロパンジオール22部を回収し、酸価が1mgKOH/g、Mwが6600であることを確認後、180℃に冷却し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸34部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で15時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1-1)を得た。
<製造例2>[ポリエステル(A1-2)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた加圧反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物165部、1,2-プロパンジオール269部、テレフタル酸468部、ベヘン酸161部、無水トリメリット酸52部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて30分均一化し、227℃、0.45MPaで加圧エステル化を5時間行い、酸価が10mgKOH/gとなったことを確認した。その後、4kPa以下で減圧エステル化を行い、1,2-プロパンジオール21部を回収した時、酸価が1mgKOH/g、Mwが6700であることを確認後、180℃に冷却し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸33部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で24時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1-2)を得た。
<製造例3>[ポリエステル(A1-3)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO3モル付加物718部、トリメチロールプロパン10部、テレフタル酸201部、アジピン酸69部、ステアリン酸51部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて、230℃、4kPa以下で減圧エステル化を行い、酸価が1mgKOH/gになるまで減圧エステル化を行った。その後、180℃に冷却し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸16部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で16時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1-3)を得た。
<製造例4>[ポリエステル(A1-4)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた加圧反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物360部、1,2-プロパンジオール149部、テレフタル酸306部、ベヘン酸200部、無水トリメリット酸56部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて30分均一化し、227℃、0.45MPaで加圧エステル化を5時間行い、酸価が10mgKOH/gとなったことを確認した。その後、4kPa以下で減圧エステル化を行い、1,2-プロパンジオール11部を回収し、酸価が1mgKOH/g、Mwが6500であることを確認後、180℃に冷却し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸36部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で20時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1-4)を得た。
<製造例5>[ポリエステル(A1-5)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた加圧反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物407部、1,2-プロパンジオール168部、テレフタル酸282部、ベヘン酸127部、無水トリメリット酸42部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて30分均一化し、227℃、0.45MPaで加圧エステル化を5時間行い、酸価が10mgKOH/gとなったことを確認した。その後、4kPa以下で減圧エステル化を行い、1,2-プロパンジオール22部を回収し、酸価が1mgKOH/g、Mwが6600であることを確認後、180℃に冷却し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸98部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で15時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1-5)を得た。
<製造例6>[ポリエステル(A1-6)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた加圧反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物425部、1,2-プロパンジオール176部、ベヘニルアルコール63部、テレフタル酸421部、無水トリメリット酸44部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて30分均一化し、227℃、0.45MPaで加圧エステル化を5時間行い、酸価が10mgKOH/gとなったことを確認した。その後、4kPa以下で減圧エステル化を行い、1,2-プロパンジオール43部を回収し、酸価が1mgKOH/g、Mwが6600であることを確認後、180℃に冷却し、4-tert-ブチルカテコール1部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸14部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で24時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1-6)を得た。
<製造例7>[ポリエステル(A1-7)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた加圧反応容器に、ネオペンチルグリコール251部、1,2-プロパンジオール334部、テレフタル酸633部、ベヘン酸31部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて30分均一化し、227℃、0.45MPaで加圧エステル化を5時間行い、酸価が10mgKOH/gとなったことを確認した。その後、4kPa以下で減圧エステル化を行い、1,2-プロパンジオール161部を回収し、酸価が1mgKOH/g、Mwが2500であることを確認後、180℃に冷却し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール2部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸68部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で15時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1-7)を得た。
<比較製造例1>[ポリエステル(A1’-1)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、ビスフェノールA・EO2モル付加物730部、トリメチロールプロパン12部、テレフタル酸151部、アジピン酸162部を投入し、撹拌して均一化した。その後、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2部を入れて、230℃、4kPa以下で減圧エステル化を行い、酸価が1mgKOH/gになるまで減圧エステル化を行った。その後、180℃に冷却し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1部を投入し、30分均一化した。その後、フマル酸20部を投入し、180℃で2時間常圧エステル化した後、4kPa以下で8時間減圧エステル化を行い、反応容器から取出し、ポリエステル(A1’-1)を得た。
ポリエステル(A1-1)~(A1-7)、(A1’-1)の組成及び物性値を表1に示す。
<製造例8>[結晶性ビニル樹脂(B-1)の製造]
オートクレーブにキシレン112.5部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート450.0部、スチレン75.0部、メチルアクリレート69.0部、アクリロニトリル112.5部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート6.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート37.5部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン130.0部の混合溶液を50℃に温調し、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7.5部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が97%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを2.4部投入し、反応率を97%以上まで反応させた。170℃で4時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-1)を得た。
<製造例9>[結晶性ビニル樹脂(B-2)の製造]
オートクレーブにキシレン140.0部、ベヘニルアクリレート260.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温し、170℃で2時間保持した。スチレン233.4部、メチルアクリレート156.7部、ジ-t-ブチルパーオキシド2.6部、及びキシレン203.0部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、1.5時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7.0部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が97%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを0.3部投入し、反応率を97%以上まで反応させた。170℃で4時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-2)を得た。
<製造例10>[結晶性ビニル樹脂(B-3)の製造]
オートクレーブにキシレン137.5部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート450.0部、スチレン225.0部、アクリロニトリル75.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.5部、及びキシレン100.0部の混合溶液を50℃に温調し、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン12.5部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が97%未満であったため、さらにジ-t-ブチルパーオキシドを1.7部投入し、反応率を97%以上まで反応させた。170℃で4時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-3)を得た。
<製造例11>[トリアコンチルアクリレートの合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、1-トリアコンタノール50部、トルエン50部、アクリル酸12部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30mL/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を40kPaに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、トリアコンチルアクリレートを得た。
<製造例12>[結晶性ビニル樹脂(B-4)の製造]
オートクレーブにキシレン125.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。トリアコンチルアクリレート375.2部、スチレン162.8部、メチルメタクリレート100.2部、ブチルアクリレート96.8部、アクリル酸15.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド3.0部、及びキシレン117.5部の混合溶液を50℃に温調し、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7.5部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が97%以上であったため、170℃で4時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-4)を得た。
<製造例13>[結晶性ビニル樹脂(B-5)の製造]
オートクレーブにキシレン150.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ステアリルアクリレート600.0部、スチレン65.3部、メチルメタクリレート75.0部、アクリル酸9.7部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン92.5部の混合溶液を50℃に温調し、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7.5部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が97%以上であったため、170℃で4時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-5)を得た。
<製造例14>[4-ヒドロキシブチルアクリレートとステアリン酸のエステルの合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、トルエン50部、4-ヒドロキシブチルアクリレート38部、ステアリン酸61部、ハイドロキノン0.1部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸1部を加え、30分撹拌した後、空気を30mL/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を40kPaに調整し、生成する水と過剰の4-ヒドロキシブチルアクリレートを除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液15部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.1部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、4-ヒドロキシブチルアクリレートとステアリン酸のエステルを得た。
<製造例15>[結晶性ビニル樹脂(B-6)の製造]
オートクレーブにキシレン150.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。4-ヒドロキシブチルアクリレートとステアリン酸のエステル600.0部、スチレン65.3部、メチルメタクリレート75.0部、アクリル酸9.7部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン92.5部の混合溶液を50℃に温調し、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン7.5部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が97%以上であったため、170℃で4時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-6)を得た。
<比較製造例2>[結晶性ビニル樹脂(B’-1)の製造]
オートクレーブにキシレン137.5部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート375.0部、スチレン231.8部、ブチルアクリレート112.5部、アクリル酸30.8部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.5部、及びキシレン100.0部の混合溶液を50℃に温調し、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン12.5部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が97%以上であったため、170℃で4時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B’-1)を得た。
結晶性ビニル樹脂(B-1)~(B-6)、(B’-1)の組成及び物性値を表2に示す。
<実施例1>[トナーバインダー(C-1)の製造]
オートクレーブにトルエン12.4部、ポリエステル(A1-1)40部、結晶性ビニル樹脂(B-1)60部を仕込み、窒素で置換した後、密閉状態で70℃まで昇温させ、70℃より撹拌させながら115℃まで昇温した。115℃で1時間保持した後、ラジカル反応開始剤(c-1)としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.6部とトルエン2.7部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を115℃にコントロールしながら、15分かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインを2.7部のトルエンで洗浄した。更に同温度で40分保持した後、110℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、ポリエステル(A1-1)が炭素-炭素結合により架橋された非線形ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B-1)を含有するトナーバインダー(C-1)を得た。
<実施例2~7>[トナーバインダー(C-2)~(C-7)の製造]
表3に記載した原料の配合部数とする以外は、実施例1と同様に架橋反応と有機溶剤の除去を行い、実施例2~7に係るトナーバインダー(C-2)~(C-7)を得た。
<実施例8>[トナーバインダー(C-8)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、窒素導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、ポリエステル(A1-7)40部、結晶性ビニル樹脂(B-1)60部を仕込み、窒素フローしながら115℃まで昇温した。115℃で1時間保持した後、窒素フローを止め、ラジカル反応開始剤(c-1)としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.6部を、反応槽内温度を115℃にコントロールしながら、15分かけて常圧下で滴下し、更に同温度で40分保持した。その後110℃で1時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、ポリエステル(A1-7)が炭素-炭素結合により架橋された非線形ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B-1)を含有するトナーバインダー(C-8)を得た。
<実施例9>[トナーバインダー(C-9)の製造]
表3に記載した原料の配合部数とする以外は、実施例1と同様に架橋反応と有機溶剤の除去を行い、実施例9に係るトナーバインダー(C-9)を得た。
<比較例1~2>[トナーバインダー(C’-1)~(C’-2)の製造]
表3に記載した原料の配合部数とする以外は、実施例1と同様に架橋反応と有機溶剤の除去を行い、比較例1~2に係るトナーバインダー(C’-1)~(C’-2)を得た。
各実施例及び比較例で得られたトナーバインダーの配合部数及び物性値を表3に示す。
<実施例10> [トナー(T-1)の製造]
実施例1に係るトナーバインダー(C-1)85部に対して、顔料のカーボンブラック[三菱ケミカル(株)製、MA-100]8部、離型剤のフィッシャー・トロプッシュワックス[日本精蝋(株)製、FT-0070]4部、荷電制御剤[保土谷化学工業(株)製、T-77]2部を加え下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製、FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製、PCM-30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[(株)栗本鐵工所製、KJ-25]を用いて微粉砕した後、エルボージェット分級機[(株)マツボー製、EJ-L-3(LABO)型]で分級し、体積平均粒径D50が7μmのトナー粒子を得た。
ついで、トナー粒子100部に流動化剤として疎水性シリカ[日本アエロジル(株)製、アエロジルR972]1部をサンプルミルにて混合して、実施例10に係るトナー(T-1)を得た。
<実施例11~18> [トナー(T-2)~(T-9)の製造]
表4に記載した原料の配合部数で、実施例10と同様にトナーを製造し、実施例11~18に係るトナー(T-2)~(T-9)を得た。
<比較例3~4> [トナー(T’-1)~(T’-2)の製造]
表4に記載した原料の配合部数で、実施例10と同様にトナーを製造し、比較例3~4に係るトナー(T’-1)~(T’-2)を得た。
各実施例及び比較例で得られたトナーの配合部数及び評価結果を表4に示す。
[評価方法]
以下に、得られたトナー(T-1)~(T-9)及び(T’-1)~(T’-2)の低温定着性、耐熱保存性、光沢性及び離型剤の分散性の評価方法を、判定基準を含めて説明する。
<低温定着性>
トナーを紙面上に1.00mg/cmとなるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90~180℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味し、この評価条件では、MFTは一般には120℃以下であることが好ましい。
<耐熱保存性>
トナー1gとアエロジルR8200(エボニックジャパン(株)製)0.013gをシェイカーで1時間混合し、混合物を密閉容器に入れ、温度45℃、湿度80%の雰囲気で48時間静置し、パウダーテスターで凝集性を測定し、保存安定性を評価した。
下記方法により求められる凝集性試験の数値が低いほど、保存安定性に優れることを意味する。この評価条件では、5%以下であることが好ましい。
装置: POWDER TESTER model PT-X(ホソカワミクロン製)
篩の目開き: 355μm、250μm、150μm
振動幅: 1mm
振動時間: 30秒
操作方法: パウダーテスターの振動台に、篩を上段355μm、中段250μm、下段150μmの順でセットし、上段の篩にトナーを1g乗せ、1mmの振動幅で30秒間振動させて、各篩上に残存したトナーの重量を測定。
凝集性: 測定に使用したトナー重量と篩後の残存トナー重量から算出。
凝集性(%)=(U/N+M/N×3/5+L/N×1/5)×100
U:上段の重量、M:中段の重量、L:下段の重量、N:サンプルの重量(1g)
<光沢性>
上記低温定着性に記載した方法と同じ方法で、トナーを紙面上に載せ、トナーの定着を行った。次に、トナーが定着した紙面の下に白色の厚紙を敷き、光沢度計(株式会社堀場製作所製、「IG-331」)を用いて、入射角度60度にて、印字画像の光沢度を、コールドオフセットの発生温度(MFT)以上の温度からホットオフセットが発生した温度まで、5℃ごとに測定し、その範囲において最も高い光沢度(最大光沢度)をトナーの光沢性の指標とした。例えば、100℃では10、105℃では15、110℃では20、115℃では18であれば、110℃の20が最も高い値なので20を採用する。
光沢度が高いほど、光沢性に優れることを意味する。この評価条件では、20以上が好ましい。
<離型剤の分散性>
実施例及び比較例で得られたトナーを約100nmの厚みに超薄切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率3,000倍で観察し、トナー中の離型剤の個数平均分散径を画像処理装置(株式会社キーエンス社製、VHX-700F)を用いて画像解析(任意の10個を直径計測し、平均値を算出)することにより計算し、以下の判定基準で評価した。この評価条件では、○以上が好ましい。
[判定基準]
◎:1.0μm未満
○:1.0μm以上2.0μm未満
△:2.0μm以上3.0μm未満
×:3.0μm以上
表4の評価結果から明らかなように、実施例10~18に係るトナー(T-1)~(T-9)はいずれもすべての性能評価において優れた結果が得られた。一方、比較例3~4に係るトナー(T’-1)~(T’-2)は、いくつかの性能項目が不良であった。
本発明のトナーバインダーは、離型剤の分散性、低温定着性、耐熱保存性及び光沢性に優れ、電子写真、静電記録や静電印刷等に用いる、静電荷像現像用トナーバインダーとして好適に使用できる。
さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。

Claims (6)

  1. 非線形ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)とを含有するトナーバインダーであって、前記非線形ポリエステル樹脂(A)はポリエステル(A1)が炭素-炭素結合により架橋された樹脂であり、前記ポリエステル(A1)は炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び/又は炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸を必須構成成分とする重縮合体であり、前記ポリエステル(A1)を構成する炭素数14~30の鎖状炭化水素基を有する1価のアルコール及び炭素数13~30の鎖状炭化水素基を有する1価のカルボン酸の合計重量割合がポリエステル(A1)の構成成分の合計重量を基準として3~30重量%であり、前記ポリエステル(A1)の酸価が1~4mgKOH/gであり、トナーバインダーが吸熱ピークトップ温度(Tm)を50~90℃の範囲に少なくとも1個有することを特徴とするトナーバインダー。
    但し、(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での吸熱ピークのピークトップ温度である。
  2. 前記架橋反応前の樹脂であるポリエステル(A1)が、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)である請求項1に記載のトナーバインダー。
  3. 前記炭素-炭素二重結合を有するポリエステル(A11)中の二重結合量が(A11)の重量に基づいて0.1~1.2ミリモル/gである請求項2に記載のトナーバインダー。
  4. 前記架橋反応前の樹脂であるポリエステル(A1)のガラス転移温度(TgA1)が-30~52℃である請求項1に記載のトナーバインダー。
  5. トナーバインダー中の有機溶剤の含有量が10ppm以上2000ppm以下である請求項1に記載のトナーバインダー。
  6. 前記結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(a)を必須構成単量体とする重合物であり、単量体(a)が、アルキル基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであり、(B)を構成する単量体中の(a)の重量割合が、(B)を構成する単量体の合計重量を基準として30~99重量%である請求項1に記載のトナーバインダー。
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