JP6829276B2 - トナーバインダー - Google Patents
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Description
フルカラー電子写真用には従来、電子写真感光体等の潜像坦持体に色画像情報に基づく潜像を形成し、該潜像を対応する色のトナーにより現像し、次いで該トナー像を転写材上に転写するといった画像形成工程を繰り返した後、転写材上のトナー像を加熱定着して多色画像を得る方法や装置が知られている。
また、最近では用いられる転写材として、表面凹凸の大きい再生紙や、表面が平滑なコート紙など多くの種類の紙が用いられる。これらの転写材の表面性に対応するために、ソフトローラーやベルトローラーなどのニップ幅の広い定着器が好ましく用いられている。しかし、ニップ幅を広くすると、トナーと定着ローラーとの接触面積が増え、定着ローラーに溶融トナーが付着する、いわゆる高温オフセット現象が発生するため、耐ホットオフセット性が要求されるのが前提である。
上記に加えて、多色画像(フルカラー)は写真画像などの再現等から白黒画像(モノクロ)に比べてはるかに高い光沢が必要とされ、得られる画像のトナー層が平滑になるようにする必要がある。
したがって、高い光沢を有しながら耐ホットオフセット性を維持しつつ、低温定着性を発現させる必要があり、広いワーキングレンジで高光沢なトナー画像が要求されるようになってきている。
しかしながら、ガラス転移点を低くし過ぎると、耐ホットオフセット性が低下し、また粉体の凝集(ブロッキング)が起り易くなることからトナーの保存性が低下する。このガラス転移点は、結着樹脂の設計ポイントであり、ガラス転移点を下げる方法では、更に低温定着可能なトナーを得ることはできない。
しかしながら、結晶性樹脂の含有量を増やすと樹脂強度が低下する場合があり、また溶融混練時に結晶性樹脂と結着樹脂の相溶化により結晶性樹脂が非晶化し、その結果、トナーのガラス転移点が低下することで前述と同様の耐ホットオフセット性やトナーの耐熱保存性に課題が生じる。
かかる方法ではトナーの低温定着性及び光沢性は確保できるが、耐ホットオフセット性やトナーの流動性、粉砕する際の粉砕性が低下し、特に耐久性が不充分である。
また、溶融懸濁法や乳化凝集法を用いて得られたシェル層で被覆する方法等も提案されているが(特許文献6)、結晶性樹脂がコアの結着樹脂と相溶化し、短時間では結晶の再析出が不充分なことから定着後の画像強度が未だ不充分である。
しかしながら、この方法は高温でのオフセット現象は防止できても、定着下限温度が不十分であり、未だ高速化、省エネルギー化の要求には充分に答えられていない。
すなわち本発明は、ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)とをそれぞれ含有するトナーバインダーであって、前記ポリエステル樹脂(A)はポリエステル(A1)が炭素−炭素結合により架橋された樹脂であり、前記ポリエステル(A1)と前記結晶性ビニル樹脂(B)との重量比[(A1)/(B)]が49/51〜10/90であり、トナーバインダーが前記結晶性ビニル樹脂(B)由来の吸熱ピークトップ温度(Tm)を40〜100℃の範囲に少なくとも1個有することを特徴とするトナーバインダーである。
但し、(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での前記結晶性ビニル樹脂(B)由来の吸熱ピークのピークトップ温度である。
但し、(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での上記結晶性ビニル樹脂(B)由来の吸熱ピークのピークトップ温度とする。
以下に、本発明のトナーバインダーを順次、説明する。
ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル(A1)を炭素−炭素結合により架橋した構造を有する樹脂である。炭素−炭素結合による架橋は、ポリエステル(A1)分子に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A1)に含まれる他の炭素原子とが直接結合することにより形成される。
ここでいうポリエステル(A1)は特に限定はなく、炭素−炭素結合により架橋した状態となるものであればどのようなポリエステルでもよい。
なかでも架橋構造を形成し易いという観点から、好ましくは炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A11)である。
また、ポリエステル樹脂(A)の炭素−炭素結合による架橋の少なくとも一部は、上記ポリエステル(A11)分子に存在する一の炭素−炭素二重結合を構成していた炭素原子がポリエステル(A11)分子に存在する他の炭素−炭素二重結合を構成していた炭素原子と結合することにより形成された炭素−炭素結合であることが好ましい。
一の炭素−炭素二重結合と他の炭素−炭素二重結合は、同一のポリエステル(A11)分子内に存在していてもよく、別々のポリエステル(A11)分子に存在していてもよい。
ポリエステル樹脂(A)は上記ポリエステル(A11)の炭素−炭素二重結合を反応させる他、加熱等による水素引き抜き反応によってポリエステル(A1)に含まれる炭素原子に結合した水素原子を引き抜いて架橋する方法(水素原子引き抜き反応とも言う)等によっても得ることができる。
なお、ポリエステル樹脂(A)は炭素−炭素結合による架橋を有していればよく、エステル結合による架橋、重付加反応による架橋又はその両方による架橋等も有していてもよい。
さらに、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A11)は、上記必須成分以外に、飽和アルコール成分(x)や、飽和カルボン酸成分(w)を構成成分として含んでいてもよい。
また、ポリエステル(A11)はこれらの各成分を、それぞれ1種類ずつ用いて重縮合したものでもよく、各成分として複数種類を併用して重縮合したものでもよい。
なお、本明細書において、不飽和カルボン酸成分(y)であるか、飽和カルボン酸成分(w)であるかの判断に、芳香環及び複素環の結合は考慮しない。
同様に、不飽和アルコール成分(z)であるか、飽和アルコール成分(x)であるかの判断に芳香環及び複素環の結合は考慮しない。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
これら飽和モノオールのうち画像強度及び耐熱保存性の観点から、好ましいものは炭素数8〜24の直鎖又は分岐アルキルアルコールであり、より好ましくは炭素数8〜24の直鎖アルキルアルコールであり、さらに好ましくはドデシルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコールである。
これらの飽和ジオール(x2)のうち、低温定着性と耐熱保存性の観点から、炭素数2〜36のアルキレングリコール(x21)及び芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物(x26)が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物がさらに好ましい。アルキレンオキサイドにおいて、アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜4であり、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、2,3−、1,3−又はiso−ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン等が好ましい。
[式中、Pは炭素数1〜3のアルキレン基、−SO2−、−O−、−S−、又は直接結合を表し、Arは、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1〜30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物のうち、トナーの定着性、粉砕性及び耐熱保存性の観点から好ましいものは、ビスフェノールAのEO付加物(付加モル数は好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3)及び/又はPO付加物(付加モル数は好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3)である。
さらに好ましくは、炭素数2〜6のアルキレングリコール、ビスフェノールAのAO付加物(付加モル数は好ましくは2〜5)及び炭素数3〜36の3価の脂肪族多価アルコールであり、特に好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールAのAO付加物(付加モル数は好ましくは2〜3)及びトリメチロールプロパンである。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
さらに好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも同様に好ましい。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、炭素数2〜50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等)、炭素数2〜50の脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)等が挙げられる。
また、飽和カルボン酸成分(w)としては、これらのカルボン酸の無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよいし、これらのカルボン酸と併用してもよい。
耐熱保存性及び帯電安定性の観点からより好ましくは、安息香酸、アジピン酸、アルキルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの併用である。さらに好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、より好ましくは160〜250℃、さらに好ましくは170〜235℃で構成成分を反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2〜40時間である。
TgA1が42℃以下であると低温定着性が良好になり、−35℃以上であると耐熱保存性が良好になる。ポリエステル(A1)のガラス転移温度(TgA1)は、より好ましくは−30〜42℃であり、さらに好ましくは−25〜40℃であり、特に好ましくは−25〜37℃である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
ポリエステル(A1)のピークトップ分子量Mpが2,000〜30,000であると、光沢性、低温定着性及び耐ホットオフセット性が好ましくなる。
まず、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン試料を用いて検量線を作製する。
次に、GPCにより試料を分離し、各保持時間における分離された試料のカウント数を測定する。
次に、上記検量線の対数値と得られたカウント数とから試料の分子量分布のチャートを作成する。分子量分布のチャート中のピーク最大値がピークトップ分子量Mpである。
なお、分子量分布のチャート中の、複数のピークがある場合は、それらのピークの中の最大値がピークトップ分子量Mpとする。なお、GPC測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置(一例) : HLC−8120[東ソー(株)製]
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定は、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
ポリエステル(A1)の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
まず、不飽和カルボン酸成分(y)と不飽和アルコール成分(z)の少なくともどちらかと、必要により飽和カルボン酸成分(w)及び/又は飽和アルコール成分(x)とを構成成分として縮合反応させて分子内に炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A11)を得る。次に、ポリエステル(A11)にラジカル反応開始剤(c)を作用させて、ラジカル反応開始剤(c)から発生するラジカルを利用して、ポリエステル(A11)中の不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和アルコール成分(z)に起因する炭素−炭素二重結合同士を架橋反応により結合させる。これによりポリエステル樹脂(A)を製造することができる。この方法は、架橋反応を短時間で均一にできる点で好ましい方法である。
さらに、架橋反応が効率よく進行し、使用量が少なくて済むことから、水素引抜き能の高い反応開始剤がより好ましく、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン及びジ−t−へキシルパーオキシド等の水素引抜き能の高いラジカル反応開始剤がさらに好ましい。
ラジカル反応開始剤の使用量が、0.1重量部以上の場合に架橋反応が進行し易くなる傾向にあり、50重量部以下の場合に、臭気が良好となる傾向にある。この使用量は、30重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることがさらに好ましく、10重量部以下であることが特に好ましい。
炭素−炭素二重結合の含有量がポリエステル(A11)の重量に基づいて0.02〜2.0ミリモル/gである場合、好適に架橋反応が起こり、トナーの耐ホットオフセット性が良好になる。
例えばポリエステル樹脂の原料としてフマル酸(0.1g)及びビスフェノールA・PO2モル付加物(0.9g)を使用した場合は、原料の合計1gに対して炭素−炭素二重結合を1つ含有し分子量が116のフマル酸を0.1g有しているため、
0.1/116×1000=0.86ミリモル/gとなる。
例えばポリエステル樹脂の原料としてフマル酸(0.3g)及びビスフェノールA・PO2モル付加物(0.7g)を使用した場合は、原料の合計1gに対して炭素−炭素二重結合を1つ含有し分子量が116のフマル酸を0.3g有しているため、
0.3/116×1000=2.59ミリモル/gとなる。
ポリエステル(A1)と結晶性ビニル樹脂(B)との合計重量に基づく結晶性ビニル樹脂(B)の重量割合が51重量%未満だと低温定着性が損なわれ、また結晶性ビニル樹脂(B)の重量割合が90重量%より大きいと耐ホットオフセット性、帯電安定性及び画像強度が損なわれる。
[(A1)/(B)]はトナーとした際の低温定着性、耐ホットオフセット性、画像強度、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、好ましくは49/51〜13/87であり、更に好ましくは49/51〜15/85であり、特に好ましくは42/58〜18/82であり、最も好ましくは40/60〜20/80である。
さらに低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性の両立の点から、32〜97重量%がより好ましく、さらに好ましくは35〜95重量%であり、特に好ましくは37〜92重量%であり、最も好ましくは40〜90重量%である。
これらの内、トナーの耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性、粉砕性及び画像強度両立の観点から、好ましくは直鎖のアルキル基(炭素数18〜36)を有する(メタ)アクリレートであり、より好ましくは直鎖のアルキル基(炭素数18〜30)を有する(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは直鎖のアルキル基(炭素数22〜30)を有する(メタ)アクリレートであり、特に好ましいのはベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート及びトリアコンタ(メタ)アクリレートであり、最も好ましくはベヘニルアクリレートである。
単量体(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらのうち好ましくはスチレンである。
これらのうち好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸及びそれらの2種以上の混合物である。
これらのうち好ましくは酢酸ビニルである。
炭素数1〜30のイソシアネートとしては、モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t−ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシナエート、2−エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6−ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート,1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3−シクロペンテンジイソシアネート,1,3−シクロへキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート,水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソソアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2’一ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等が挙げられる。
炭素数1〜26のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール及びエルシルアルコール等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する炭素数1〜30のイソシアネートとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル酸 2−[0−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
なお、本明細書中、イソシアネート基を有する化合物及び構造における炭素数にはイソシアネート基(−NCO)に含まれる炭素数は含まない。
関係式(2):1.1≦|SP(x)−SP(a)|≦8.0
なお、本発明のトナーバインダーにおけるSP値(cal/cm3)0.5は、Robert F Fedorsらの著によるPolymer engineering and science第14巻、151〜154ページに記載されている方法で計算した25℃における値である。
また、トナーにした際の耐熱保存性の観点からは、1.5≦|SP(x)−SP(a)|≦6.0を満たすことがより好ましく、1.7≦|SP(x)−SP(a)|≦4.0を満たすことがさらに好ましい。
|SP(x)−SP(a)|が、1.1(cal/cm3)0.5以上であると、樹脂(B)の融点が適度であり、8.0(cal/cm3)0.5以下であると共重合性が良好であり、樹脂の不均一化が生じてゲル化しやすくなるという問題が生じにくい。|SP(x)−SP(a)|は、結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体モノマーを選定する事で、調整することができる。
なお、(B)はTHF不溶解分を含まないことが低温定着性の観点から好ましい。
結晶性ビニル樹脂(B)のMn及びMwの測定はポリエステル樹脂と同様の方法で測定できる。
また、ラジカル反応開始剤は上記記載のラジカル反応開始剤(c)を用いてもよい。また、ラジカル反応開始剤(c)として好ましいものも上記記載と同様である。
なお、本発明のトナーバインダーには、ポリエステル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)以外の樹脂並びに公知の添加剤(離型剤等)を含んでも良い。
但し、結晶性ビニル樹脂(B)由来の吸熱ピークトップ温度(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の結晶性ビニル樹脂(B)由来の吸熱ピークのトップを示す温度である。
吸熱ピークトップ温度(Tm)はトナーとした際の低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは43〜95℃であり、より好ましくは45〜90℃であり、さらに好ましくは48〜88℃であり、特に好ましくは50〜68℃である。
トナーバインダーの吸熱ピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体(a)の炭素数を調整すること、結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体(a)の重量比率を調整すること、などにより上記の好ましい範囲に調整することができる。一般的には単量体(a)の炭素数を増やす、単量体(a)の重量比率を増やす、結晶性ビニル樹脂(B)の重量平均分子量を増やす、ことにより吸熱ピークトップ温度(Tm)が上がる。また、結晶性ビニル樹脂(B)の含有量が少ない場合は、ポリエステル樹脂(A)との|ΔSP値|を上げることでTmが下がらずに維持できる。
<測定条件>
(1)30℃で10分間保持
(2)10℃/分で150℃まで昇温
(3)150℃で10分間保持
(4)10℃/分で0℃まで冷却
(5)0℃で10分間保持
(6)10℃/分で150℃まで昇温
関係式(1):1.2≦ln(G’Tm−10)/ln(G’Tm+30)≦2.6
但し、計算値は小数点第2桁を四捨五入して求めるものとする。
ln(G’Tm−10)/ln(G’Tm+30)は、ポリエステル(A1)と結晶性ビニル樹脂(B)の重量比、結晶性ビニル樹脂(B)の重量平均分子量、単量体(a)、単量体(b)又は単量体(d)の種類及び量で調整することができる。具体的には、ポリエステル(A1)の重量比を小さくする、結晶性ビニル樹脂(B)の重量平均分子量を減らす、単量体(b)や単量体(d)の極性を下げる、単量体(a)や単量体(b)の量を増やす、単量体(d)の量を減らすことによりln(G’Tm−10)/ln(G’Tm+30)が上がる。
装置 :ARES−24A(レオメトリック社製)
治具 :25mmパラレルプレート
周波数 :1Hz
歪み率 :5%
昇温速度:5℃/min
本発明のトナーバインダー中のTHF不溶解分の含有量(重量%)は、低温定着性、光沢性及び耐ホットオフセット性の観点から、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以下であり、更に好ましくは50重量%以下であり、特に好ましくは0.1〜45重量%であり、最も好ましくは1〜40重量%である。
試料0.5gに50mLのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量をTHF不溶解分の重量とし、試料の重量からTHF不溶解分の重量を引いた重量をTHF可溶分の重量とし、THF不溶解分とTHF可溶分の重量%を算出する。
特にポリエステル(A1)をラジカル反応開始剤(c)を用いて架橋反応させラジカル反応開始剤(c)の分解物が発生する反応を用いた場合でも発生した分解物である有機溶剤含有量を上記範囲にすることにより、臭気、耐ホットオフセット性、粉砕性、画像強度及び流動性に優れたトナーを得ることができる。
一方、連続式混合装置にて原料を反応させながら、同時にベント口から減圧を行うこともできる。また、反応容器中に原料を仕込んで反応させた場合、反応後にそのまま減圧操作にて脱溶剤する方法でも脱溶剤を行うことができる。このとき、上記と同様の項目を調整することで、トナーバインダー中の有機溶剤量を制御できる。
あるいは、トナーバインダーを粉砕したものを脱溶剤の対象となる有機溶剤の種類に応じて温度及び圧力(常圧ないし減圧)が調整された乾燥機に入れることで、トナーバインダー中の有機溶剤量を制御できる。
また、短時間で脱溶剤する方法が、ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)のエステル交換反応が起こりにくく、耐ホットオフセット性と低温定着性が良好なため好ましい。
なお、有機溶剤の含有量(ppm)は、例えばガスクロマトグラフ分析やガスクロマトグラフ質量分析等の下記条件で測定することができる。
実施例及び比較例に係るトナーバインダー中の有機溶剤の含有量は、以下の条件で測定した。
ガスクロマトグラフ :Agilent 6890N
質量分析装置 :Agilent 5973 inert カラム :ZB−WAX(液相(14%−シアノプロピル−フェニル)メチルポリシロキサン)0.25mm×30m df=1.0μm
カラム温度 :70℃→300℃(10℃/分)
インジェクション温度:200℃
スプリット比 :50:1
注入量 :1μL
ヘリウム流量 :1mL/分
検出器 :MSD
これらのうち、耐熱保存性及び臭気の観点から、好ましくは炭素数が2〜10である化合物であり、より好ましくは炭素数が3〜8である化合物であり、さらに好ましくはアセトン、イソプロピルアルコール及びt−ブタノールである。
トナーバインダーはポリエステル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有していれば特に限定されず、例えば上記ポリエステル樹脂(A)及び上記結晶性ビニル樹脂(B)や添加剤を混合する場合の混合方法は一般的に行われる公知の方法でよく、混合方法としては、粉体混合、溶融混合及び溶剤混合等が挙げられる。また、ポリエステル樹脂(A)、結晶性ビニル樹脂(B)及び必要により用いる添加剤は、トナーを製造する時に同時に混合してもよい。この方法の中では、均一に混合し、溶剤除去の必要のない溶融混合が好ましい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、二軸押出機、二軸混練機、スタティックミキサー、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等が挙げられる。
また、溶融混合する方法がこれら具体的に例示された方法に限られるわけではなく、例えば反応容器中に原料を仕込み、溶液状態となる温度に加熱し、混合するような方法など適宜の方法で行うことができることはもちろんである。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは3〜10重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150重量部、より好ましくは40〜120重量部である。
<フロー軟化点(T1/2)の測定方法>
降下式フローテスター[たとえば、(株)島津製作所製、CFT−500D]を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)をフロー軟化点(T1/2)とする。
トナーの組成比を上記の範囲とすることで、耐ホットオフセット性及び帯電安定性が良好なトナーを得ることができる。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、トナー粒子[好ましくは体積平均粒径(D50)が5〜20μmの粒子]とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII[ベックマン・コールター(株)社)]を用いて測定される。
なお、本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物741部、テレフタル酸118部、アジピン酸120部、トリメチロールプロパン13部、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら2時間反応させた。次に、0.5〜2.5kPaの減圧下に5時間反応させた後、180℃まで降温した。重合禁止剤としてtert−ブチルカテコール1部を入れ、さらにフマル酸を86部入れ、0.5〜2.5kPaの減圧下に8時間反応させた後取り出し、ポリエステル(A11−1)を得た。
前記の方法で測定したポリエステル(A11−1)の二重結合量は0.7ミリモル/g、ガラス転移温度(TgA1)は37℃、だった。また、ポリエステル(A11−1)は吸熱ピークトップ温度(Tm)を有していなかった。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、表1に記載したアルコール成分とカルボン酸成分を仕込み、それ以外は製造例1と同様に反応を行い、ポリエステル(A11−2)〜(A11−6)を得た。表1に得られたポリエステル(A11−2)〜(A11−6)のガラス転移温度(TgA1)、ピークトップ分子量、酸価、及び二重結合量を記載した。また、ポリエステル(A11−2)〜(A11−6)は吸熱ピークトップ温度(Tm)を有していなかった。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、表1に記載したアルコール成分とカルボン酸成分を仕込み、それ以外は製造例1と同様に反応を行い、炭素−炭素二重結合を有さないポリエステル(A11’−1)を得た。
オートクレーブにキシレン183部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート[以下においてC22アクリレートと略記、日油(株)製、以下同様]600部、スチレン[出光興産(株)製、以下同様]200部、アクリロニトリル[ナカライテスク(株)製、以下同様]200部、ジ−t−ブチルパーオキシド[パーブチルD、日油(株)製、以下同様]2.0部、及びキシレン133部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン17部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保ち、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が98%未満であったため、さらにジ−t−ブチルパーオキシドを0.5部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。100℃で3時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−1)を得た。
表2に組成及び物性を記した。
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、1−トリアコンタノール50部、トルエン50部、アクリル酸12部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30ml/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を300mmHgに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、トリアコンタアクリレートアクリレートを得た。
<測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:4回
緩和時間:1秒
<サンプル調整>
NMRチューブにサンプルを100mg、重水素化溶媒(例えば重クロロホルム)を0.8ml加え樹脂を溶解させた。
<解析及び計算>
反応前の単量体(a)のプロトンの面積、残存する単量体(a)のプロトンの面積並びに単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積に基づき、下記の式により反応率を算出した。
反応率:[{反応前の単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}−{残存する単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}]/{反応前の単量体(a)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(a)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}×100
例えば単量体(a)がベヘニルアクリレートであれば、二重結合炭素に結合しているプロトン(約6.4ppm)と、鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトン(約0.9ppm)を使用した。
オートクレーブにキシレン183部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。表2に記載した原料をキシレン100部とともにオートクレーブに滴下し、それ以外は製造例7と同様に反応を行い、結晶性ビニル樹脂(B−2)〜(B−11)を得た。
オートクレーブにトルエン150部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。表2に記載した原料及びトルエン325部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをトルエン25部で洗浄した。同温度で1.0時間保った後、1.0時間かけてオートクレーブ内温度を80℃まで昇温した。更に同温度で1.0時間保った後、単量体(a)の反応率を確認した。単量体(a)の反応率が98%未満であったため、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を5.0部投入し、反応率が98%以上まで反応させた。120℃で8時間0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B−12)を得た。
オートクレーブにキシレン183部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。表2に記載した原料をキシレン100部とともにオートクレーブに滴下し、それ以外は製造例5と同様に反応を行い、結晶性ビニル樹脂(B’−1)を得た。(B’−1)は吸熱ピークトップ温度を有していなかった。
ポリエステル(A11−1)32部及び結晶性ビニル樹脂(B−1)68部を混合し、二軸混練機[(株)栗本鐵工所、S5KRCニーダー]に52kg/時で供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)としてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)1.0部を0.52kg/時で供給して160℃で7分間90rpmで混練押出して架橋反応を行い、さらにベント口から10kPaで減圧して有機溶剤の除去を行いながら混合した。混合で得られたものを冷却することにより、ポリエステル(A11−1)が炭素−炭素結合により架橋されたポリエステル樹脂(A)を含有した実施例1に係るトナーバインダー(C−1)を得た。
表3に示した重量部数のポリエステル(A11)、結晶性ビニル樹脂(B)を混合し、二軸混練機に供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)を供給して、実施例1と同様に架橋反応と有機溶剤の除去を行い、ポリエステル(A11−1)〜(A11−6)が炭素−炭素結合により架橋されたポリエステル樹脂(A)を含有した実施例2〜13、15〜19に係るトナーバインダー(C−2)〜(C−13)、(C−15)〜(C−19)を得た。
なお、表3中のラジカル反応開始剤(c)は以下のとおりである。
(c−1):t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート
(c−2):ジ−t−ブチルパーオキシド
ポリエステル(A11−1)30部及び結晶性ビニル樹脂(B−9)70部を混合し、二軸混練機[(株)栗本鐵工所製、S5KRCニーダー]に52kg/時で供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)としてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)1.0部を0.52kg/時で供給して160℃で7分間90rpmで混練押出して架橋反応を行い、さらにベント口から50kPaで減圧して有機溶剤の除去を行いながら混合した。混合で得られたものを冷却することにより、ポリエステル(A11−1)が炭素−炭素結合により架橋されたポリエステル樹脂(A)を含有した実施例14に係るトナーバインダー(C−14)を得た。
表3に示した重量部数のポリエステル(A11)又は(A11’)と、結晶性ビニル樹脂(B)又は(B’)を混合し、実施例1と同様に二軸混練機に供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)を供給して、実施例1と同様に架橋反応を行い、比較例1〜3に係るトナーバインダー(C’−1)〜(C’−3)を得た。なお、(C’−1)について前記の方法でTHF不溶解分を測定した結果、THF不溶解分を含有していなかった。これは、ポリエステル樹脂(A)を含有していないためであると考えられる。また、(C’−2)は結晶性ビニル樹脂(B)を含有していない。(C’−3)は結晶性ビニル樹脂(B)の含有量が少ない。
実施例1に係るトナーバインダー(C−1)85部に対して、顔料のカーボンブラック[三菱ケミカル(株)製、MA−100]8部、離型剤のカルナバワックス4部、荷電制御剤[保土谷化学工業(株)製、T−77]2部を加え下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製、FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製、PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[(株)栗本鐵工所製、KJ−25]を用いて微粉砕した後、エルボージェット分級機[(株)マツボー製、EJ−L−3(LABO)型]で分級し、体積平均粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。
ついで、トナー粒子100部に流動化剤としてコロイダルシリカ[日本アエロジル(株)製、アエロジルR972]1部をサンプルミルにて混合して、実施例20に係るトナー(T−1)を得た。
表4に記載した原料の配合部数で、実施例20と同様にトナーを製造し、実施例21〜38に係るトナー(T−2)〜(T−19)を得た。
表4に記載した原料の配合部数で、実施例20と同様にトナーを製造し、比較例4〜6に係るトナー(T’−1)〜(T’−3)を得た。
以下に、得られたトナー(T−1)〜(T−19)及び(T’−1)〜(T’−3)の低温定着性、耐ホットオフセット性、粉砕性、画像強度、耐熱保存性、帯電安定性、光沢性及び耐久性の測定方法と評価方法を、判定基準を含めて説明する。
トナーを紙面上に1.00mg/cm2となるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90〜230℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味し、この評価条件では、MFTは一般には125℃以下であることが好ましい。
上記低温定着性に記載した方法と同じ方法で、トナーを紙面上に載せ、この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90〜230℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのホットオフセットの有無を目視し、ホットオフセットの発生温度を測定した。
ホットオフセットの発生温度が高いほど、耐ホットオフセット性に優れることを意味する。この評価条件では、180℃以上であることが好ましい。
トナー(T−1)〜(T−19)及び(T’−1)〜(T’−3)に用いたそれぞれのトナーバインダー85部に対して、顔料のカーボンブラック[三菱ケミカル(株)製、MA−100]を8部、離型剤のカルナバワックスを4部、荷電制御剤[保土谷化学工業(株)製、T−77]2部を加え、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、二軸混練機で混練して得た混合物を冷却後に8.6メッシュパス〜30メッシュオンの大きさに粉砕分級したものを粉砕性評価用粒子として用い、この粉砕性評価用粒子を超音速ジェット粉砕機ラボジェット[(株)栗本鐵工所製、KJ−25]により下記の条件で微粉砕した。
粉砕圧:0.64MPa
粉砕時間:15分
セパレ−ター周波数:150Hz
アジャスターリング:15mm
ルーバーの大きさ:中
粉砕性評価用粒子の微粉砕物を分級せずに、体積平均粒径(μm)をコールターカウンター[商品名:マルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)]により測定し、下記の判定基準で粉砕性を評価した。
粒子径が小さいほど、粉砕性に優れることを意味する。この評価条件では、7.0μm以下であることが好ましい。
上記の低温定着性の評価で定着した画像を、JIS K5600−5−4(1999)に準じて、斜め45度に固定した鉛筆の真上から10gの荷重が加わる様にして手かき法によりかけ引っ掻き硬度試験を行い、傷のつかない鉛筆硬度から画像強度を評価した。
鉛筆硬度が高いほど画像強度に優れることを意味する。一般にはHB以上であることが好ましい。
トナー1gとアエロジルR8200(エボニックジャパン(株)製)0.01gをシェイカーで1時間混合する。混合物を密閉容器に入れ、温度40℃、湿度80%の雰囲気で48時間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記判定基準で耐熱保存性を評価した。
○:ブロッキングが全く発生しておらず、耐熱保存性に優れる。
△:一部にブロッキングが発生しているが、耐熱保存性に優れる。
×:全体にブロッキングが発生しており、耐熱保存性が大きく劣る。
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)20gとを50mLのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて50rpmで10分間及び60分間摩擦攪拌し、それぞれの時間での帯電量をブローオフ帯電量測定装置[京セラケミカル(株)製]を用いて測定した。
得られた値を用いて「摩擦時間60分後の帯電量/摩擦時間10分後の帯電量」を計算し、これを帯電安定性指数とした。
本帯電安定性指数が大きいほど帯電安定性に優れることを意味する。この評価条件では0.9以上であると好ましい。
上記低温定着性に記載した方法と同じ方法で、トナーを紙面上に載せ、トナーの定着を行った。次に、トナーが定着した紙面の下に白色の厚紙を敷き、光沢度計(株式会社堀場製作所製、「IG−330」)を用いて、入射角度60度にて、印字画像の光沢度(%)を、コールドオフセットの発生温度(MFT)以上の温度からホットオフセットが発生した温度まで、5℃ごとに測定し、その範囲において最も高い光沢度(最大光沢度)(%)をトナーの光沢性の指標とする。例えば、120℃では10%、125℃では15%、130℃では20%、135℃では18%であれば、130℃の20%が最も高い値なので20%を採用する。
光沢度が高いほど、光沢性に優れることを意味する。この評価条件では、15%以上が好ましい。
トナーを二成分現像剤として、市販モノクロ複写機[シャープ(株)製、AR5030]を用いて連続コピーを行い、以下の基準で耐久性を評価した。
◎:1万枚コピー後も画質に変化なく、カブリの発生もない。
○:1万枚コピー後でカブリが発生している。
△:6千枚コピー後でカブリが発生している。
×:2千枚コピー後でカブリが発生している。
さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。
Claims (5)
- ポリエステル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)とをそれぞれ含有するトナーバインダーであって、前記ポリエステル樹脂(A)はポリエステル(A1)が炭素−炭素結合により架橋された樹脂であり、前記ポリエステル(A1)と前記結晶性ビニル樹脂(B)との重量比[(A1)/(B)]が49/51〜10/90であり、トナーバインダーが前記結晶性ビニル樹脂(B)由来の吸熱ピークトップ温度(Tm)を40〜100℃の範囲に少なくとも1個有することを特徴とするトナーバインダー。
但し、(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定され、トナーバインダーを30℃で10分間保持し、30℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃で10分間保持し、続いて10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃で10分間保持し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程での前記結晶性ビニル樹脂(B)由来の吸熱ピークのピークトップ温度である。 - 前記ポリエステル(A1)が、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A11)である請求項1に記載のトナーバインダー。
- トナーバインダー中の有機溶剤の含有量が50ppm以上2000ppm以下である請求項1または2に記載のトナーバインダー。
- 前記結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(a)を必須構成単量体とする重合物であり、前記単量体(a)が直鎖のアルキル基(炭素数18〜36)を有する(メタ)アクリレート及び/又は炭素数18〜36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、(B)を構成する単量体中の(a)の重量割合が、(B)を構成する単量体の合計重量を基準として30〜99重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナーバインダー。
- トナーバインダーが関係式(1)を満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナーバインダー。
関係式(1):1.2≦ln(G’Tm−10)/ln(G’Tm+30)≦2.6
[関係式(1)において、G’Tm−10は、温度が(Tm−10)℃である時のトナーバインダーの貯蔵弾性率(Pa)であり;G’Tm+30は、温度が(Tm+30)℃である時のトナーバインダーの貯蔵弾性率(Pa)である。]
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