羽根アーム両端の羽根部を確実に掻取摺動させることを可能にしながら、回転軸の構造を簡素化すると共に衛生上の問題を解消するという目的を、羽根アームの回転軸側への支持又は羽根部の少なくとも一方の羽根アームに対する支持を、羽根アームの中間部と各羽根部の先端部を通る線上において、羽根アームの中間部と各羽根部の先端部との間の長さと羽根アームの中間部と撹拌容器の内面との間の長さとを一致可能としたことにより実現した。
羽根アームは、撹拌容器の回転軸側に中間部が支持され中間部を中心に両端部が逆向きに上下するように揺動自在とされ、羽根部は、羽根アームの両端部にそれぞれ支持され、羽根部の少なくとも一方を、羽根アームの回転方向に沿った第一方向に揺動自在に支持する構成としてもよい。
この場合、一対の羽根部をそれぞれ第二方向に沿って揺動自在に支持する一対のジョイント部と、ジョイント部の少なくとも一方を羽根アームの端部に第一方向に揺動自在に支持する支持部とを備えた構成としてもよい。
支持部は、羽根アームの端部に設けられた支持軸部と、揺動自在に支持されるジョイント部に設けられ、支持軸部を挿通する挿通孔と、支持軸部の基端部側に設けられて挿通孔に支持軸部を挿通したジョイント部を突き当てる突当部と、支持軸部の先端部側に設けられた抜止部とを備えた構成としてもよい。
抜止部は、支持軸部の外周に突設されたキーとしてもよい。この場合、挿通孔は、揺動自在に支持されるジョイント部を該ジョイント部に支持された羽根部の第一方向での揺動範囲外の所定の回転位置としたときにキーに一致して支持軸部を挿通孔に挿通可能とするキー溝を有する。
第一方向に揺動自在に支持される羽根部は、ジョイント部に支持される被支持部を有し、被支持部は、ジョイント部を突当部に突き当てた状態で一部が前後規制部間に位置する構成としてもよい。
羽根アームは、一対の羽根部をそれぞれ先端部に支持する第1のアーム及び第2のアームを備え、第1及び第2のアームは、回転軸側に対して先端部を各別に上下させるように揺動自在に支持されてもよい。
[加熱撹拌装置]
図1は、本発明実施例1に係る加熱撹拌装置の要部縦断面図である。
加熱撹拌装置1は、撹拌装置の一例であり、本発明の掻取羽根の構造を適用する縦軸型である。この加熱撹拌装置1は、流動性のある被撹拌物の加熱撹拌等に用いられ、特に、含水粉体やあん等の粉体或いは固体などの流動性の乏しい被撹拌物質、又は塑性流動する物質等の加熱撹拌に好適に用いられる。但し、流動性の良い被撹拌物に適用してもよい。
なお、加熱撹拌装置1により撹拌する被撹拌物は、食材に限らず、薬剤、漢方薬、医薬部外品なども含まれる。撹拌装置としては、加熱を伴わない構造で構成することもできる。
加熱撹拌装置1は、撹拌容器として加熱釜3を備えている。加熱釜3は、実施例の被撹拌物としてあんなどの食材を収容し加熱するものである。
加熱釜3は、鉄、銅、ステンレス、又は銅とステンレスの張り合わせ鋼板等の材質をもって、底面が曲面状又は半円状等に成形されている。加熱釜3は、ガス、電気、又はその底部外周を覆う蒸気室SRに供給される蒸気などの適宜の加熱手段によって加熱可能に構成されている。
加熱釜3の上方には、筐体カバー5によって覆われた駆動機構6が設けられている。駆動機構6は、モータMの回転駆動力を減速する減速機7を備えている。この減速機7の出力軸8に固定されたチェーンスプロケット9に無端チェーン10が掛けられ、無端チェーン10が太陽軸11のチェーンスプロケット13に噛合わされている。
太陽軸11の下端部には太陽歯車15が固定され、遊星軸17の先端部に取付けた遊星歯車19と噛合わされている。
遊星軸17は、太陽軸11に固定されたケース21に回転自在に支持されている。回転軸23は、遊星軸17と軸線を一致させている。この回転軸23は、連結機構24によって取り外し自在に連結されている。回転軸23は、斜め上方から加熱釜3内に向けて傾斜して配設されている。具体的には、遊星軸17及び回転軸23は、鉛直方向に対して所定の傾斜角度を持って配設されている。遊星軸17及び回転軸23の傾斜角度は、好ましくは15~25度とされる。なお、遊星軸17及び回転軸23は、傾斜しなくてもよい。
回転軸23の下端部には、掻取羽根22が取り付けられている。
[掻取羽根の構造]
図2は、図1の加熱撹拌装置1の掻取羽根22を示す正面図である。
図1及び図2のように、掻取羽根22は、羽根アーム29と、一対の羽根部である内羽根部25及び外羽根部27とを備えている。
羽根アーム29は、中間部であるアーム基部31から二股に傾斜して両端部へと延びる第1のアーム33及び第2のアーム35により形成されている。従って、羽根アーム29は、第1、第2のアーム33、35が三角形状の二辺を形成する形態となっている。
なお、第1、第2のアーム33、35は、アーム基部31から端部へ向けて直線状に伸びているが、これに限られるものではなく、例えば途中で屈曲又は湾曲した形状等とすることも可能である。また、羽根アーム29の中間部は、両端部間の中間部分であればよく、端部間の厳密な中間位置を意味するものではない。
アーム基部31には、取付受部側としてのピン挿入孔31aが設けられている。ピン挿入孔31aには、結合ピン30が挿入されている。この結合ピン30は、回転軸23の下端の連結部70にも挿入されている。このため、羽根アーム29は、アーム基部31が回転軸23の連結部70に揺動自在に支持されている。
この支持により、羽根アーム29は、中間部のアーム基部31を中心に両端部が上下するように揺動自在となっている。特に、本実施例の羽根アーム29は、両端部が逆向きに上下するように(シーソーのように)揺動自在となっている。なお、上下とは、アーム基部31に対する内羽根部25及び外羽根部27側を下とすると共に回転軸23側を上とする場合の上下方向でのものを意味する。従って、ここでの上下方向は、鉛直方向を意味するものではない。
かかる羽根アーム29は、回転軸23における軸回り方向の回動が連結部70の形状により規制されている。従って、回転軸23が軸回り方向に回転すると、これに連れて羽根アーム29が旋回動作する。
羽根アーム29の第2のアーム35は、第1のアーム33に比較して長く形成されている。ただし、第1、第2のアーム33、35の長さ設定は自由である。回転軸23の連結部70に対するアーム基部31の結合ピン30回りの揺動は、一定範囲に設定されている。
第1、第2のアーム33、35の先端(羽根アーム29の両端部)には、内羽根部25及び外羽根部27が支持されている。
本実施例では、内羽根部25が羽根アーム29の回転方向の前後である第一方向X(図5参照)に揺動自在に支持されている。なお、本実施例では、内羽根部25のみが羽根アーム29に対して第一方向Xに揺動自在であるが、内羽根部25及び外羽根部27の双方を第一方向Xに揺動自在としてもよい。
かかる内羽根部25の第一方向Xへの揺動自在な支持により、本実施例では、羽根アーム29の中間部であるアーム基部31と各羽根部27,27の先端部である先端縁部43a,67aとを通る線L1,L2上において、羽根アーム29のアーム基部31と各羽根部25,27の先端縁部43a,67aとの間の長さと羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さとを一致可能としている。
具体的には、内羽根部25が第一方向Xへ揺動すると、内羽根部25の先端縁部43aとアーム基部31とを通る線L1上において、内羽根部25の先端縁部43aとアーム基部31との間の長さが変動する。この長さの変動により、内羽根部25の先端縁部43aと羽根アーム29のアーム基部31との間の長さを、同一線L1上の羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さに一致させることができる。
一方、外羽根部27は、内羽根部25の第一方向Xへの揺動に応じ、羽根アーム29が第二方向Yに揺動し、その結果、外羽根部27の先端部67aとアーム基部31とを通る線L2上において、外羽根部27の先端部67aとアーム基部31との間の長さが羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さに一致させることができる。
なお、各羽根部25,27の先端縁部43a,67aと羽根アーム29のアーム基部31との間の長さと羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さとの一致は、各羽根部25,27の先端縁部43a,67aが加熱釜3の内面に無理なく当接する状態をいうが、内羽根部25又は外羽根部27の一方が加熱釜3の内面に当接し、同他方が加熱釜3の内面に近接する状態も含む。また、ここでの当接は、先端縁部43a,67aが少なくとも二点で加熱釜3の内面に当接する状態であればよい。このとき、先端縁部43a,67aのアーム基部31からの長さは、各部で異なるため、線L1,L2が通る先端縁部43a,67aの位置を任意の位置とし、その線L1,L2上でのものとする。
また、本実施例の内羽根部25及び外羽根部27は、羽根アーム29と同方向の第二方向Yに沿って揺動自在に支持されている。このため、各羽根部25,27の先端縁部43a,67aと羽根アーム29のアーム基部31との間の長さと羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さとを、より確実に一致させることが可能である。ただし、内羽根部25及び外羽根部27は、第二方向Yに沿って揺動しない構成とすることも可能である。なお、本実施例では、第二方向Yが羽根アーム29の回転半径方向に一致している。
内羽根部25及び外羽根部27は、それぞれ一対のジョイント部37、39により、羽根アーム29の端部に支持されている。
内羽根部25は、ジョイント部37に第二方向Yに沿って揺動自在に支持され、ジョイント部37が支持部41により羽根アーム29の第1のアーム33の端部に第一方向Xに揺動自在に支持されている。外羽根部27は、ジョイント部39に第二方向Yに沿って揺動自在に支持され、ジョイント部39が羽根アーム29の第2のアーム35の端部に固定されている。
[内羽根部の構造]
図3は、図2の掻取羽根22の内羽根部25を正面側から見た拡大斜視図、図4は、図3の内羽根部25の分解斜視図である。図5は、図2の掻取羽根22の内羽根部25側から見た一部を断面にした側面図である。
内羽根部25は、内羽根部本体43及び第一取付金具45により構成されている。内羽根部25は、相対的に加熱釜3の中央部付近での掻取摺動及び撹拌に適した形状等を有しており、外羽根部27とは区別されている。なお、外羽根部27は、相対的に加熱釜3の外周側(側壁部)での掻取摺動及び撹拌に適した形状等を有している。ただし、内羽根部25を外羽根部27と同一形状にした場合は、そのような内、外の区別はない。
内羽根部本体43は、テフロン(登録商標)等の樹脂製の板状体であり、先端縁部(下縁部)43aが加熱釜3の内面に摺接ないし接触する。
第一取付金具45は、ステンレス等の金属で形成されており、第1の羽根取付板47と第1の羽根押え板49とを備えている。なお、第一取付金具45は、ステンレス以外の金属で形成してもよい。
第1の羽根取付板47は、矩形板で形成されている。第1の羽根取付板47の上縁部47aは、内羽根部本体43の取り付け状態で上縁部43bと面一の平面を形成する。
ただし、上縁部47a、43b相互が連続的な形態をとる限り、必ずしも平面である必要は無く、曲面などで形成することもできる。
要するに、上縁部47a、43b間に段差が形成されること無く、食材の残留を抑制できる形状であればよい。また、内羽根部本体43の背面に対して湾曲した連続形状に形成するなどして、上縁部47aを上縁部43bよりも下方の位置とし、又は逆の関係にすることもできる。さらに、上縁部47a、43b間に段差を許容する形態もあり得る。
第1の羽根取付板47の上縁部47aには、上壁部47bが形成されている。上壁部47bは、内羽根部本体43の取付状態で、内羽根部本体43の上縁部43bを当接させる。
第1の羽根取付板47の上壁部47bには、取付板基部47cが一体に突設されている。取付板基部47cには、支持ピン52を挿通するための挿通孔48が形成されている。この取付板基部47cは、上壁部47bの上面に対して傾斜して設けられている。この傾斜により、内羽根部25のスクイ角αが設定される。
内羽根部25のスクイ角αは、第1のアーム33の正転方向前方に鈍角となる所定の角度、例えば、95度(鉛直方向に対して5度)~160度(鉛直方向に対して70度)、好ましくは115度(鉛直方向に対して25度)~125度(鉛直方向に対して35度)の範囲とされている。
第1の羽根取付板47の下縁部47dは、内羽根部本体43の先端縁部43aと上縁部43bとの中間部に位置している。ここでの中間部も、厳密な中間位置を意味するものではない。この下縁部47dは、本実施例において斜面となっている。斜面は、内羽根部本体43に向かって下降傾斜し、内羽根部本体43の裏面に連続するような形状となっている。この斜面により第1の羽根取付板47の下縁部47dと内羽根部本体43の背面との間に段差が形成されること無く、食材の残留を抑制できる。ただし、下縁部47dは、斜面を有さない形態もあり得る。
第1の羽根取付板47は、板厚の厚み方向に貫通した取付穴51を穴部として有している。取付穴51は、第1の羽根取付板47の下部両側に一対対称に配置されている(図2参照)。取付穴51は、挿入部51a及び嵌合部51bを備えている。
挿入部51aは、ほぼ円形に形成され、押えピン53を挿通させる大きさを備えている。嵌合部51bは、挿入部51aよりも幅狭で挿入部51aに連続して形成されている。嵌合部51bは、内羽根部本体43の先端縁部43aの反対方向の上方へ延びるように形成されている。嵌合部51bの幅は、押えピン53の括れ部53aを嵌合させて抜け止めを行う程度である。嵌合部51bの上端は、押えピン53の括れ部53aの軸径に応じて半円状に形成されている。
取付穴51は、第1の羽根取付板47の背面側で嵌合部51bの外側に第1の羽根取付板47の背面で構成した係止縁部を有している。係止縁部は、嵌合部51bに嵌合する押えピン53の頭部53bを係止可能に対向させ、頭部53bが係合し得る形態である。
内羽根部本体43は、取付穴51に対向し得る一対の貫通穴44を有している。貫通穴44は、押えピン53を挿通させる大きさで形成されている。本実施例の貫通穴44は、第1の羽根取付板47の取付穴51の挿入部51aの径よりも僅かに小さな径に形成されている。なお、貫通穴44の径は、挿入部51aよりも大きく形成してもよい。この場合、貫通穴44の部分に嵌合する押えピン53の根元部の径は、貫通穴44の径に応じて拡大することになる。
第1の羽根押え板49は、内羽根部本体43を羽根取付部である第1の羽根取付板47と共に挟んで取り付けるための羽根押え部材である。
第1の羽根押え板49は、第1の羽根取付板47と同形状に形成されている。内羽根部本体43を第1の羽根押え板49及び第1の羽根取付板47により挟むことができる。ただし、第1の羽根押え板49及び第1の羽根取付板47は、内羽根部本体43を挟むことができればよく、必ずしも同形状である必要はない。
第1の羽根押え板49の上縁部49aは、内羽根部本体43の上縁部43bに達し、形状的に連続している。かかる形状により上縁部49a、43b間に段差が形成されること無く、食材の残留を抑制できる。但し、上縁部49a、43b間に段差が形成される形態もあり得る。
この第1の羽根押え板49の上縁部49aには、押え板基部49bが一体に突設されている。押え板基部49bには、支持ピン52を挿通するための挿通孔50が形成されている。この押え板基部49は、第1の羽根取付板47の取付板基部47cに重ね合わされており、第1の羽根取付板47の取付板基部47cと共に内羽根部25の被支持部25aを構成する。
押え板基部49は、後述するジョイント部37の突当部63への突当方向(第二方向Y)において、第1の羽根取付板47の取付板基部47cよりも小さく形成されている。これにより、内羽根部25の被支持部25aは、突当部63側の部分が第1の羽根取付板47の取付板基部47cのみで構成された薄肉部25aaとなっている。
第1の羽根押え板49の下縁部49cは、第1の羽根取付板47と同様に、内羽根部本体43の前面に向かって傾斜する斜面となっている。下縁部49cの斜面によっても第1の羽根押え板49と内羽根部本体43の前面との間の段差形状が緩和され、食材の残留を抑制できる。但し、下縁部49cは、斜面を有さない形態もあり得る。
第1の羽根押え板49は、押えピン53を一体的に備えている。押えピン53は、内羽根部本体43の貫通穴44及び第1の羽根取付板47の取付穴51に対応して一対備えられている。ただし、押えピン53を単一で構成することもできる。
押えピン53は、先端側に括れ部53aを有している。括れ部53aは、頭部53b及び基部53cを同一の外径に形成し、頭部53b及び基部53c間の軸部53dを頭部53b及び基部53cの外径よりも小径に形成して構成した。
軸部53dの径は、取付孔51の嵌合部51bの幅と同等に形成されている。頭部53b及び基部53cの外径は、内羽根部本体43の貫通穴44とほぼ同径に形成され、押えピン53を貫通穴44に挿通できるようになっている。
押えピン53は、貫通穴44に挿通され、内羽根部本体43から括れ部53aから先が突出する。この括れ部53aから先の突出で、基部53cと軸部53dとの間で基部53cの端面は、内羽根部本体43の背面とほぼ面一となる。但し、基部53cの端面は、内羽根部本体43の背面から多少凹んでもよい。
そして、押えピン53を貫通穴44から取付孔51の挿入部51aに挿通させることで、内羽根部本体43を第1の羽根取付板47と第1の羽根押え板49とで挟むことができる。内羽根部本体43が第1の羽根取付板47に沿って先端縁部43aの反対方向へ相対移動されており、押えピン53の括れ部53aが嵌合部51bに嵌合している。この嵌合により、押えピン53の頭部53bが取付孔51の嵌合部51bの外側で係止縁部に対向している。
つまり、係合部である頭部53bは、穴部である取付穴51に対する押えピン53の相対的な挿通により取付穴51を貫通し押えピン53と取付穴51との挿通の方向に交差する相対移動により取付穴51の係止縁部に対向する。
かかる構成の内羽根部25は、ジョイント部37に支持ピン52により第二方向Yに沿って揺動自在に支持されている。すなわち、内羽根部25は、支持ピン52を中心にして第二方向Yに沿って揺動する構成となっている。
[内羽根部の支持構造]
ジョイント部37は、ステンレス等の金属からなり、ジョイント本体57に第一方向の前後に対向する支持壁部55a,55bを有している。支持壁部55a,55bには、第一方向で貫通する支持孔部55aa,55baが設けられている。
内羽根部25は、被支持部25aをジョイント部37の支持壁部55a,55b間に配置し、支持孔部55aa,55ba及び被支持部25aの挿通孔48,50に支持ピン52を挿通して軸支される。支持ピン52は、頭部52aが支持壁部55aの外面に当接し、レバー部52bが折り曲げ状態で支持壁部55bの外面に対向して、抜け止めがなされている。
ジョイント部37のジョイント本体57は、支持壁部55a,55b間を連結しており、挿通孔57aが第二方向Yにおいて貫通して設けられている。挿通孔57aは、ジョイント部37を羽根アーム29に第一方向Xに揺動自在に支持するための支持部41の一部を構成する。
支持部41は、ジョイント部37の挿通孔57aの他、支持軸部61と、突当部63と、抜止部65とを備える。
支持軸部61は、羽根アーム29の端部、特に第1のアーム33の端部に設けられている。支持軸部61は、第二方向Yに沿って突出している。支持軸部61は、ジョイント部37の挿通孔57aを挿通しジョイント部37を揺動可能とする。つまり、ジョイント部37(内羽根部25)は、支持軸部61を中心にして、第一方向Xに沿って揺動自在な構成となっている。
突当部63は、支持軸部61の基端部側(羽根アーム29側)に設けられている。突当部63は、羽根アーム29に対して径方向に膨出した形状の板状に形成されている。これにより、突当部63は、挿通孔57aに支持軸部61を挿通したジョイント部37を、挿通孔57aと支持軸部61との挿通方向(本実施例では第二方向Y)において突き当てるようになっている。
突当部63には、前後規制部材63a,63bが設けられている。前後規制部材63a,63bは、第一方向Xにおいて対向する二又形状に形成され、内羽根部25の第一方向Xの前後に位置して第一方向Xでの揺動範囲を規制する。
本実施例では、内羽根部25の被支持部25aの薄肉部25aaが前後規制部材63a,63b間に位置している。従って、被支持部25aは、ジョイント部37の突当部63への突き当て状態で一部が前後規制部材63a,63b間に位置する構成となっている。
これにより、突当部63や前後規制部材63a,63bを大型化することなく、内羽根部25の第一方向Xでの揺動範囲を規制できる。なお、前規制部材63aは、薄肉部25aaに対向する内面が、内羽根部25の揺動に合わせて傾斜して設定されている。
抜止部65は、支持軸部61の先端側(反羽根アーム29側)に設けられ、支持軸部61に対するジョイント部37の抜けを防止する。この抜止部65と突当部63との間にジョイント部37が位置決められる。
本実施例の抜止部65は、支持軸部61の外周に突設されたキーである。ただし、抜止部65は、コッターピンや弾性的に出没する係止爪等によって構成することも可能である。
キーである抜止部65に応じ、挿通孔57aには、キー溝57bが形成されている。キー溝57bは、ジョイント部37を内羽根部25の第一方向Xでの揺動範囲β外の所定の回転位置としたときに、キーである抜止部65に一致して支持軸部61を挿通孔57aに挿通可能とする。本実施例では、内羽根部25を支持した通常状態に対して、ジョイント部37を逆さにした状態で抜止部65とキー溝57bとが一致するようになっている。
かかる支持構造により内羽根部25を支持する際には、まず、内羽根部25を分離させた状態のジョイント部37を羽根アーム29側に支持する。具体的には、ジョイント部37を所定の回転位置として挿通孔57aのキー溝57bと支持軸部61の抜止部65を一致させ、その状態で挿通孔57aに支持軸部61を挿通させる。この挿通に応じてジョイント部37が突当部63に突き当たると、ジョイント部37を通常状態の回転位置に戻す。
これにより、ジョイント部37は、支持軸部61に対して抜け止め及び位置決めがなされつつ第一方向Xに揺動自在に支持される。
次いで、ジョイント部37に内羽根部25を支持する。この支持の際には、内羽根部25を予め組み付けておく。
内羽根部25の組付けは、内羽根部本体43の前面に第1の羽根押え板49を合わせ、押えピン53を貫通穴44に挿通させ、内羽根部本体43の背面から押えピン53の括れ部53aを突出させる。
そして、内羽根部本体43の背面に第1の羽根取付板47を合わせ、押えピン53の括れ部53aを第1の羽根取付板47の取付穴51の挿入部51aに挿通させ、頭部53bを挿入部51a外で第1の羽根取付板47の背面に突出させる。
そして、第1の羽根取付板47をスライドさせることにより、押えピン53の括れ部53aを取付孔51の嵌合部51bに嵌合させる。この嵌合により内羽根部本体43を第1の羽根取付板47に対し第1の羽根押え板49で挟む状態を保持し、内羽根部25の組み付けが完了する。
かかる内羽根部25をジョイント部37に支持する際は、内羽根部25の被支持部25aをジョイント部37の支持壁部55a,55b間に挿入する。このとき、被支持部25aの薄肉部25aaが、ジョイント部37に隣接する突当部63に設けられた前後規制部材63a,63b間に位置する。
この状態で、支持壁部55a,55bの支持孔部55aa,55ba及び被支持部25aの挿通孔48,50に支持ピン52を挿通し、内羽根部25をジョイント部37に対して第二方向Yに沿って揺動自在に軸支される。
[外羽根部の構造及び外羽根部の支持構造]
図6は、図2の掻取羽根22の外羽根部27側から見た一部を断面にした側面図である。
外羽根部27は、外羽根部本体67及び第二取付金具69により構成されている。なお、外羽根部27は、内羽根部25と共通する部分については同符号を付して重複した説明を省略し、主に相違部分について説明する。
外羽根部本体67は、内羽根部本体43よりも大きく形状も異なるが、材質等は同一である。このため、第二取付金具69の第2の羽根取付板71及び第2の羽根押え板73が、外羽根部本体67に応じた大きさ及び形状に設定されている。
すなわち、外羽根部本体67は、加熱釜3の底部外周側及び側部間を掻き取るように大きさ及び形状が設定されている。第2の羽根取付板71は、外羽根部本体67の上縁部67bに沿った大きさ及び形状に形成されている。具体的には、第2の羽根取付板71は、第1の羽根取付板47に対し一側に延長され且つ上方に屈曲した大きさ形状となっている。第2の羽根取付板71の延長した部分の端部側に取付穴51が追加して設けられている(図7(B)参照)。
第2の羽根押え板73は、外羽根部本体67を挟んで第2の羽根取付板71に対し対称形状に形成されている。第2の羽根押え板73には、第2の羽根取付板71の端部側に追加して設けられた取付穴51に応じて押えピン53が追加して設けられている(図7(B)参照)。
従って、外羽根部27においては、内羽根部25に比較し追加した取付穴51及び押えピン53での結合が上記同様に行われ、合計3か所での結合となっている。なお、取付穴51及び押えピン53での結合は、さらに追加することもできる。
第2の羽根押え板73及び第2の羽根取付板71は、押え板基部73a及び取付板基部71aをそれぞれ有しており、それら押え板基部73a及び取付板基部71aは、外羽根部27の被支持部25aを構成している。外羽根部27の被支持部25aは、薄肉部を有していないが、その他は、内羽根部本体43の被支持部25aと同一である。
かかる外羽根部27を支持するジョイント部39は、ジョイント本体57が羽根アーム29の第二のアーム35の端部に一体的に固定され、内羽根部25と同様、支持壁部55a,55b間に外羽根部27を第二方向Yに沿って揺動自在に支持している。
[加熱撹拌装置の動作]
図7(A)及び(B)は、図1の加熱撹拌装置1の動作時の要部縦断面図であり、図7(A)は内羽根部25が加熱釜3の中央部に位置する回転状態を示し、図7(B)は外羽根部27が加熱釜3の中央部に位置する回転状態を示す。図8(A)及び(B)は、それぞれ図7(A)及び(B)の内羽根部25の揺動状態を示す側面図である。
調理対象となるあんなどの食材(被撹拌物)を加熱釜3内に投入しておき、ガス、電気、電磁誘導、蒸気等の加熱手段によって加熱釜3を加熱しつつ、駆動制御部からの駆動制御信号(正転指令)に従ってモータMを駆動させる。
モータMの駆動により、減速機7、出力軸8、チェーンスプロケット9、無端チェーン10、チェーンスプロケット13を介してその回転駆動力が太陽軸11に伝達される(図1参照)。
太陽軸11の駆動力は、太陽軸11の太陽歯車15及び回転ケース21に伝達され、太陽歯車15の外周に噛合した遊星歯車19及び遊星軸17が、公転及び自転を繰り返しながら、遊星軸17の下端に連結された回転軸23を正転方向に回転駆動する(図1参照)。
これにより、回転軸23の下端部の羽根アーム29を介して第1、第2の掻取羽根25、27が図8(A)の矢印aの正転方向に公転しながら自転も伴って加熱釜3内を移動し、加熱釜3内の食材を加熱下で掻取撹拌混合する。
かかる正転方向での食材の掻取撹拌混合時は、食材が内外羽根部25、27に沿って上方へ滑りながら移動し、内外羽根部25、27を乗り越える。
このとき、内外羽根部25、27は、羽根アーム29の第二方向Yに沿った揺動及び内羽根部25の第一方向Xに沿った揺動により、羽根アーム29両端の内羽根部25及び外羽根部27に掻取摺動を確実に行わせることができる。
具体的には、加熱釜3の内面に摺動する内外羽根部25,27が、羽根アーム29の第二方向Yに沿った揺動により、加熱釜3の内面の形状に沿って上下動する。同時に、本実施例では、内外羽根部25,27も第二方向Yに沿った揺動をする。
これにより、内外羽根部25,27の先端縁部43a,67aが加熱釜3の内面に追従しつつ押し付けられて掻取摺動を行うことができる。
しかし、かかる揺動のみでは、内外羽根部25,27の一方の位置に応じて他方の位置が定まることから、加熱釜3の内面の形状によっては内外羽根部25,27の先端縁部43a,67aを適切に追従させることが困難な場合がある。
例えば、内外羽根部25,27の一方が加熱釜3の内面から浮いてしまったり、逆に内外羽根部25,27の一方又は双方が過度に加熱釜3の内面に押し付けられるおそれがある。
これに対し、本実施例では、内羽根部25が回転方向である第一方向Xに揺動することにより、内羽根部25の先端縁部43aとアーム基部31とを通る線L1上において、内羽根部25の先端縁部43aとアーム基部31との間の長さを変動させ、羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さに一致させることができる。
一方、外羽根部27は、内羽根部25の第一方向Xへの揺動に応じ、羽根アーム29が第二方向Yに揺動し、その結果、外羽根部27の先端部67aとアーム基部31とを通る線L2上において、外羽根部27の先端部67aとアーム基部31との間の長さが羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さに一致させることができる。
例えば、図7(A)のように内羽根部25が加熱釜3の中央部側に位置する場合は、内羽根部25がスクイ角αを大きくするように揺動して、アーム基部31と加熱釜3の底部内面との間の長さに応じ、アーム基部31と内羽根部25の先端縁部43aとの長さが短くなる。逆に、図7(B)のように内羽根部25が加熱釜3の外周側に位置する場合は、内羽根部25がスクイ角αを小さくするように揺動して、アーム基部31と加熱釜3の側部内面との間の長さに応じ、アーム基部31と内羽根部25の先端縁部43aとの間の長さが長くなる。
このようにして、内羽根部25及び外羽根部27を適切に加熱釜3の内面に追従させることができる。この追従時に、内羽根部25及び外羽根部27と羽根アーム29の重量並びに食材の抵抗によって、内羽根部25及び外羽根部27の先端縁部43a,67aの加熱釜3の内面に対する押し付け力が付与される。
従って、本実施例では、内外羽根部25,27の双方の先端縁部43a,67aを適切に加熱釜3の内面に確実に掻取摺動させることができ、食材の掻取不足や加熱釜3からの反力による内外羽根部25,27及び駆動機構6の損傷を抑制することができる。
一方、駆動制御部からの駆動制御信号(反転指令)に従ってモータMが反転方向に駆動されると、内外掻取羽根25、27が図8(A)の矢印bの反転方向に公転しながら自転も伴って加熱釜3内を移動し、加熱釜3内の食材を加熱下で撹拌混合する。
かかる反転回動時では、スクイ角αによって、正転回動時とは逆に、内外羽根部25,27の反転移動に伴って食材が内外羽根部25,27の先端縁部43a、67a下へ潜り込もうとする。
このときも、羽根アーム29の第二方向Yに沿った揺動と内羽根部25の第一方向での揺動とによって、上記のように内外羽根部25,27の先端縁部43a,67aを加熱釜3の内面に追従させることができる。ただし、内外羽根部25,27の先端縁部43a,67aと加熱釜3の内面との間に食材が入り込み、押し付け力に応じて僅かに浮き上がる。このときの押し付け力は、内羽根部25及び外羽根部27並びに羽根アーム29の重量によって付与される。この結果、正転回動時に加熱釜3の内面に薄く残存した食材の上に水分をより多く含んだ食材が擦り付けられる。この擦り付けにより残存した食材と擦り付けられた食材との間で水分の伝達が行われる。
そして、モータMを再び正転させると、反転時に擦り付けられた食材が、その下の残存食材と共に掻き取られ、加熱釜3への焦げ付きを防止することができる。
なお、内外羽根部25,27の先端縁部43a,67aの加熱釜3の内面への押し付け力は、羽根アーム29並びに内羽根部25及び外羽根部27の重量によって調整可能である。
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の撹拌羽根22は、加熱釜3の回転軸23側にアーム基部31が支持され両端部が上下するように揺動自在な羽根アーム29と、羽根アーム29の両端部に支持された一対の内羽根部25及び外羽根部27とを備える。そして、本実施例の撹拌羽根22では、内羽根部25及び外羽根部27の少なくとも一方(実施例では内羽根部25)を羽根アーム29に対し羽根アーム29の回転方向に沿った第一方向Xに揺動自在に支持し、羽根アーム29のアーム基部31と各羽根部25,27の先端部である先端縁部43a,67aを通る線L1,L2上において、羽根アーム29のアーム基部31と各羽根部25,27の先端縁部43a,67aとの間の長さと羽根アーム29のアーム基部31と加熱釜3の内面との間の長さとを一致可能とした。
従って、本実施例では、羽根アーム29が揺動することで内羽根部25及び外羽根部27が上下動する際に、一対の内羽根部25及び外羽根部27を適切に加熱釜3の内面に追従させ、確実に掻取摺動させることができる。
また、少なくとも一方の羽根部(本実施例では内羽根部25)の羽根アーム29への支持によって、羽根アーム29両端の内羽根部25及び外羽根部27に掻取摺動を確実に行わせるようにしたため、ばねを用いる構造と比較して構造の簡素化を図ることができると共に衛生上の問題を解消できる。
しかも、本実施例では、内外羽根部25,27の双方の先端縁部43a,67aを適切に加熱釜3の内面に追従させることができるので、食材の掻取不足や加熱釜3からの反力による内外羽根部25,27及び駆動機構6の損傷を抑制することができる。
また、内羽根部25及び外羽根部27は、羽根アーム29と同方向の第二方向Yに沿って揺動自在に支持されたため、加熱釜3の内面に対する追従性を向上し、より確実に加熱釜3の内面に対する掻取摺動を行わせることができる。
また、本実施例では、内外羽根部25,27を第二方向Yに揺動自在に支持する一対のジョイント部37,39と、ジョイント部37,39の少なくとも一方(実施例ではジョイント部37)を羽根アーム29の端部に第一方向Xに揺動自在に支持する支持部41とを備えている。
このため、本実施例では、ジョイント部37,39を選択的に羽根アーム29の端部に対して固定し又は第一方向Xに揺動自在にすることにより、第二方向Yに揺動自在な内羽根部25及び外羽根部27の少なくとも一方を容易且つ確実に第一方向に揺動可能な構成とすることが可能となる。
また、支持部41は、羽根アーム29の端部に設けられた支持軸部61と、揺動自在に支持されるジョイント部37に設けられ支持軸部61を挿通する挿通孔57aと、支持軸部61の基端部側に設けられて挿通孔57aに支持軸部61を挿通したジョイント部37を突き当てる突当部63と、支持軸部61の先端部側に設けられた抜止部65とを備えた。
従って、支持部41は、簡素で衛生的な構造とすることができ、組付けも容易である。
抜止部65は、支持軸部61の外周に突設されたキーであり、挿通孔57aは、揺動自在に支持されるジョイント部37を該ジョイント部37に支持された内羽根部25の第一方向Xでの揺動範囲β外の所定の回転位置としたときに抜止部65に一致して支持軸部61を挿通孔57aに挿通可能とするキー溝57bを有する。
従って、簡素且つ衛生的な構造で、確実な抜け止めを行うことができる。
本実施例では、羽根アーム29側に設けられ、第一方向Xに揺動自在な内羽根部25の第一方向Xの前後に位置して揺動範囲を規制する前後規制部材63a,63bを備える。
従って、内羽根部25が揺動範囲β外に揺動することがなく、確実な抜け止めを行うことができる。しかも、内羽根部25の揺動を規制することで、反転時の内羽根部25の加熱釜3に対する浮き上がりを規制して、食材の塗り付けを確実に行うことができる。
また、本実施例では、第一方向Xに揺動自在に支持される内羽根部25は、ジョイント部37に支持される被支持部25aを有し、被支持部25aは、ジョイント部37の突当部63への突き当て状態で一部が前後規制部材63a,63b間に位置する。
従って、被支持部25aの一部を利用して、突当部63や前後規制部材63a,63bを大型化することなく、容易且つ確実に内羽根部25の揺動範囲を規制することができる。