JP7204333B2 - トロリ線曲げ装置 - Google Patents

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本発明は、電車線の交流電化区間の隣接区間を互いに電気的に絶縁しつつ接続するセクションインシュレータにトロリ線の端部を組み付けるために、トロリ線の端部を上方へ折り曲げるトロリ線曲げ装置に関するものである。
図7に示すように、セクションインシュレータSは、電車線路の延線方向に隣接して架設された二つのトロリ線T1,T2の隣接端部間を絶縁部材S1で電気的に絶縁しつつ、絶縁部材S1の両端部に固定される接続金具S2で引き留め、絶縁部材S1に沿うスライダS3,S4で給電を途切れさせることなくパンタグラフを摺動させるものである。トロリ線T1,T2の端部はパンタグラフの摺動位置から待避するように斜め上方に折り曲げた状態でセクションインシュレータSの接続金具S2に組み入れられる。
従来、トロリ線を曲げ加工するために、先端部がコ字状に折り返された把手付きの補助工具を二つ用い、一方の先端部をトロリ線の曲げ加工部分に、他方をトロリ線の先端部にそれぞれ引っ掛けて、一方を固定したまま他方の手元側の把手を直交方向上側に押し上げ回してトロリ線の端部を曲げるものがある(特許文献1)。
また、ベース本体の対向する一対の側面の下部間に軸支されてトロリ線を支持する水平の支持部と、同じく両側面の上部間に中間部を軸支され、一端側にトロリ線を押圧する押圧体を、他端縁にギアとを備えた傾動部と、基端部に傾動部のギアに噛み合うギアを備えて側面間に回転可能に軸支されるハンドルとからなるトロリ線の曲げ具がある(特許文献2)。
さらに、油圧ジャッキで昇降可能な摺動部材の前後両側にトロリ線を曲げ加工する一対の押上部材を固定し、押上部材の相互間にトロリ線を曲げ加工する略三角形状の曲げ部材を臨ませて固定し、曲げ部材の突出角部にトロリ線を支持する一対の挟持爪が設けられたトロリ線曲げ工具がある(特許文献3)。
特開2000-280795号公報 特開2012-157897号公報 登録実用新案第3121205号公報
トロリ線の曲げ角度や曲率が正確でないと、セクションインシュレータの接続金具による引き留めが不十分になって、引張強度が不足し所期の性能を発揮できなかったり、接続金具からトロリ線がパンタグラフの通過位置に突出してトロリ線の局部的な摩耗が生じ破断に至るおそれがある。このためトロリ線の曲げ工具は、曲げの角度や曲率に高い精度が要求される。
しかし、上記従来の特許文献1に記載の折り曲げ補助工具は、腕力に頼った曲げ操作になって作業者に過大な労力を強いるし、曲げ角度や曲率の精度が低い。
特許文献2に記載の曲げ具は、ハンドル部の傾動操作に伴いギアの噛み合う傾動部が枢支位置を支点として押圧体がトロリ線を押し上げるように傾動して曲げ下降するが、折り曲げが進むにつれ支点がトロリ線の伸長方向に相対移動して、曲率の最小な適正な曲げ部分から直線部分への移行箇所に曲率の大きな曲げが生じるいわゆる曲げの癖が生じ易い。また、トロリ線の曲げ方向を規制する構造でないため、曲げ方向を誤り易い。
特許文献3に記載の曲げ工具は、曲げ角度や曲率の精度が比較的高いが、異なる角度や曲率に対応した工具や部品の交換が必要となる。
そこで本発明は、上記のような問題点を解決し、作業者に大きな労力を強いることなく、トロリ線をセクションインシュレータに整合する高い精度の角度や曲率で適正な方向に曲げ、またその角度を容易に調整できるトロリ線曲げ装置を提供することを目的としている。
前記課題を解決するため、本発明に係るトロリ線曲げ装置は、垂直の中枠板1aに上下に対向する水平の上枠板1b及び下枠板1cを備えた枠体1と、中枠板1aの上下略中間部の幅方向前後両端部に枢支され、トロリ線Tを長さ方向に間隔を置いて把持可能な一対の把持部材2,2と、上枠板1bに支持され、一対の把持部材2,2の相互間中央部に上方から臨み、先端部を所定長さ残して把持部材2にそれぞれ保持されたトロリ線Tの把持部分の中央部を上方から油圧駆動で押し下げてトロリ線Tの一端部を曲げ加工する押圧部材3とを具備させる。把持部材2は、中枠板1aに水平の回転軸9によりトロリ線Tの曲げに沿って回転可能に枢支され、下端部においてヒンジ部5a,6aにより互いに連結され、上端部同士をねじ留めしてトロリ線Tを挟み込むように相互間を開閉可能な一対の挟持片5,6で構成する。挟持片5,6は、相対向する内側にトロリ線Tを受け入れる水平方向に延びた直線上の受け溝6b,8aにトロリ線Tの両係合溝に対応する係合突条6c,8bをそれぞれ備える。押圧部材3は、上枠板1bに固定され、下方へ進退可能に突出したピストンロッド14aを備えた油圧シリンダ14と、このピストンロッド14aに固定され、下端部に所定形状に曲げ加工する下端に頂部15aを有する略三角形状の曲げ型15とを具備させる。枠体1の下枠板1cには、押圧部材3に上下に対向して押圧部材3によるトロリ線Tの押し下げ位置を規制する高さ変更可能なストッパ4を立設する。
本発明によれば、作業者に大きな力を要することなく、簡単にトロリ線を折り曲げ操作することができ、また曲げ方向を誤ることなく、角度や曲率を高い精度で曲げ加工できるし、角度を容易に変更でき、曲げ部分から直線部分への移行箇所に曲げの癖が残ることがないという効果を有する。
本発明に係るトロリ線曲げ装置の斜視図である。 本発明に係るトロリ線曲げ装置の正面図である。 図1のトロリ線曲げ装置の側面図である。 図1のトロリ線曲げ装置の平面図である。 把持部材の開放状態の斜視図である。 トロリ線を曲げた状態のトロリ線曲げ装置の正面図である。 セクションインシュレータの斜視図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図4において、トロリ線曲げ装置は、前方に開放した筐体1に横方向に対向して組み付けられた一対の把持部材2,2と、筐体1の上部に組み付けられた押圧部材3と、筐体1の下部に組み付けられたストッパ4とを具備する。筐体1は装置の枠体を構成し、垂直の中枠板1aと、中枠板1aの上下端部に結合する水平の上枠板1b及び下枠板1cと、前後(図2の左右方向)に対向してこれらを結合する側板1dとを備える。
一対の把持部材2,2は、筐体1の中枠板1aの前後方向両端部に配置され、トロリ線Tの端部を長さ方向に間隔を置いて固定するものである。把持部材2は、図5に示すように、中枠板1aに回転自在に枢支される一方の挟持片である基体5と、下端部のヒンジ5a,6aで基体5に上下に回転自在に蝶着された他方の挟持片である押さえ蓋6と、基体5と押さえ蓋6との間にトロリ線を挟んで固定するための固定ねじ7とを具備する。基体5は、前側の略円柱状の基部8と、基部8の中心軸上を後方へ延出して中枠板1aに軸受け部10を介して回転自在に支持される回転軸9とを具備する。基部8の中間部には、トロリ線を嵌合させる横方向に直線状に延びた受け溝8aを備える。受け溝8aは、トロリ線Tの片側半部の断面形状にほぼ対応する断面形状を有し、トロリ線Tの係合溝に掛かる係合突条8bを有する。押さえ蓋6は、基部8の外周側面に沿って円弧状に湾曲した上端面を備え、基体5の基部8の前面に重合する略矩形板状をなす。押さえ蓋6の中間部には、受け溝8aに受け入れたトロリ線の残り半部を受け入れる横方向に直線状に連続する受け溝6bを備える。受け溝6bには、トロリ線Tの係合溝に掛かる係合突条6cを有する。一方の把持部材2の基部8の後部には、径方向に水平の取付ボルト12により位置決め片11が固定されている。位置決め片11は、把持部材2に受け入れたトロリ線Tの先端が当接するように基部8の受け溝8aの延長位置に直交方向に横断している。
押圧部材3は、図示しない油圧ポンプにつながり、上枠板1b及びその下面に固着された固定フランジ13の中央部を貫通して固定され、下方へ突出して油圧駆動により進退動させるようにピストンロッド14aが出入り自在に挿入されたシリンダ14と、ピストンロッド14aに結合される曲げ型15と具備する。曲げ型15は横長の略直方形状をなし、トロリ線を所定形状に折り曲げるように両側面から下方へ傾斜し緩やかに中央に収束する頂部15aを有する。
ストッパ4は、把持部材2,2の中間部に臨んで曲げ型15の頂部15aに対向し、筐体1の下枠板1cの中央部に立設されている。ストッパ4は、下枠板1cに軸周り等間隔に差し込まれる複数の固定ボルトで固定される調整ナット16と、調整ナット16上に重合するロックナット17と、ねじ軸部18bが調整ナット16及びロックナット17に螺合し、上端に止め座18aを備えた調整ボルト18とを具備する。調整ボルト4は、調整ナット16に対して回転させることにより止め座18aの上下位置を変更することができ、止め座18aの高さ位置を決定したらロックナット17を締め込んで調整ナット16に圧接することにより回り止めして固定される。従って、調整ボルト18は、止め座18aにより把持部材2,2間のトロリ線に適正な曲げを形成するための曲げ型15の下降位置を位置決めする。
このトロリ線曲げ装置でトロリ線Tを曲げ加工するには、まず把持部材2の基体5の受け溝8aに挿入し、トロリ線Tの先端を位置決め片11に当接させて曲げ箇所を位置決めし、押さえ蓋6を基体5に重合させ、両者でトロリ線Tを挟み込み、固定ねじ7を締め込んで固定する。このとき、係合突条8bをトロリ線Tの係合溝T1に係合させれば、押さえ蓋6と基体5とで挟み込むと、係合突条6cも係合溝T1に係合するので、トロリ線Tの上下方向が適正に配置される。
次いで、ストッパ4のストッパボルト18を回転させると、調整ボルト18が調整ナット16に対して上下するので、止め座18aの高さ位置を変更でき、ロックナット17を締め込んで調整ナット16に圧接させれば、止め座18aが所定の高さに固定される。
このようにトロリ線曲げ装置にトロリ線Tをセットしてから、油圧ポンプを操作して押圧部材3のシリンダ14により曲げ型15を下降させれば、一対の把持部材2,2の中間のトロリ線Tの中央部を押し下げて曲げ型15の下面に沿って押し曲げる。曲げ型15が下降して、トロリ線Tを所定形状に曲げると、図6に示すように、ストッパ4の止め座18aにトロリ線Tが当接して、曲げ型15を停止させる。このとき、トロリ線Tが曲がり始めると、把持部材2,2の押さえ蓋6と基体5との対向する横方向の長さ範囲でトロリ線Tを強固に挟持するので、曲げ型15とトロリ線Tとの間に滑りが生じないし、受け溝8aの長さ範囲でトロリ線の直線部が確保されて、曲りの前後で湾曲することなく曲げ型15に沿った所定の角度及び曲率で曲がりが形成される。止め座18aの高さ位置を変更すれば、曲げの角度を変更でき、部材を変更することなく、セクションインシュレータに応じた異なる曲りを形成できる。
1 筐体
1a 中枠板
1b 上枠板
1c 下枠板
1d 側板
2 把持部材
3 押圧部材
4 ストッパ
5 基体
5a ヒンジ
6 押さえ蓋
6a ヒンジ
6b 受け溝
6c 係合突条
7 固定ねじ
8 基部
9 回転軸
8a 受け溝
8b 係合突条
11 位置決め片
12 取付ボルト
13 固定フランジ
14 シリンダ
14a ピストンロッド
15 曲げ型
15a 頂部
16 調整ナット
17 ロックナット
18 調整ボルト
18a 止め座
18b ねじ軸部
S セクションインシュレータ
S1 絶縁部材
S2 接続金具
S3 スライダ
S4 スライダ
T トロリ線
T1 トロリ線
T2 トロリ線

Claims (4)

  1. 電車線路の延線方向に隣接して架設された二つのトロリ線の隣接端部間を電気的に絶縁しつつ引き留め、給電を途切れさせることなくパンタグラフを摺動させるセクションインシュレータにおいて、当該トロリ線の端部を前記パンタグラフの摺動位置から待避するように斜め上方に折り曲げた状態で把持する接続金具に組み入れるために、当該接続金具の把持部に沿うように曲げ加工するトロリ線曲げ装置であって、
    曲げ加工する概略直線状の前記トロリ線を延線方向に相互間隔を置いて把持する一対の把持部材と、当該一対の把持部材間に支持された前記トロリ線を同一平面に沿って曲げ加工するように前記一対の把持部材間の中央部を前記トロリ線の延線直交方向に往復動自在に設けられた押圧部材とを具備し、
    前記一対の把持部材は、前記トロリ線を保持する受け溝で長さ方向に直線的に挟持する一対の挟持片を具備し、かつ当該挟持片がそれの挟持幅の中央を中心に前記同一平面に沿って回転するように枢支され、
    前記押圧部材は、前記一対の把持部材間の中央に位置する先丸の頂部と、往動側死点において前記頂部から前記一対の把持部材の回転中心に向かってそれぞれ直線的に延びる2辺を有する略三角形状の曲げ型を具備し、
    前記一対の挟持片は、前記トロリ線の直線性を維持し、かつトロリ線の軸周りの回転を阻止してねじれを防止するように、前記受け溝にわたりトロリ線の係合溝に噛み合う係合突条をそれぞれ具備することを特徴とするトロリ線曲げ装置。
  2. 前記押圧部材に対向して配置され、当該押圧部材の往動側死点において、前記曲げ型の頂点との間に前記トロリ線の屈曲部を挟んで当該トロリ線に当接するように設けられたストッパをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のトロリ線曲げ装置。
  3. 前記一対の挟持片は、前記トロリ線を取り込み、取り出しできるように、一辺側においてヒンジ部により互いに開閉自在に連結され、他辺側においてトロリ線を挟持して相互間を閉じるねじ留め部を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のトロリ線曲げ装置。
  4. 一方の前記把持部材は、前記トロリ線の先端を当接させて屈曲位置を規定する位置決め部材を具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のトロリ線曲げ装置。
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