JP7199871B2 - 多孔質セルロース粒子とその製造方法、および洗浄用化粧料 - Google Patents

多孔質セルロース粒子とその製造方法、および洗浄用化粧料 Download PDF

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Description

本発明は、洗浄用化粧料にスクラブ剤として含まれる多孔質セルロース粒子、およびその製造方法に関し、特に、高い真球度の多孔質セルロース粒子に関する。
洗浄用化粧料には、物理的作用により古い角質層を剥ぎ落とすスクラブ剤が含まれている。スクラブ剤として、石油由来の合成高分子(プラスチック粒子)が利用されている。プラスチック粒子は、自然環境中で分解されず、更に、殺虫剤などの化学物質を吸着し易い。そのため、様々な環境問題が起こっている。例えば、水環境に流出したプラスチック製品が蓄積され、海洋や湖沼の生態系に大きな害を与えている。
近年、マイクロプラスチックと呼ばれる長さが5mm以下からナノレベルまでの微細なプラスチックが大きな問題となっている。マイクロプラスチックに該当するものとして、化粧用品などに含まれる微粒子、加工前のプラスチック樹脂の小さな塊、大きな製品が海中で浮遊するうちに微細化した物、などが挙げられている。プラスチックに関する問題は国連環境計画等でも指摘されており、各国、各業界団体がプラスチックに対する規制を検討している。そこで、自然環境中で微生物などにより水と二酸化炭素に分解され、自然界の炭素サイクルに組み込まれる生分解性プラスチックが注目されている。
また、自然派化粧品やオーガニック化粧品に関心が高まっており、化粧品の自然・オーガニック指数表示に関するガイドライン(ISO16128)が制定されている。このガイドラインによれば、製品中の原料を、自然原料、自然由来原料、非自然原料に分類し、各原料の含有量に基づいて指数が定められる。今後、このガイドラインに沿って算出された指数が商品に表示されるため、自然由来原料、特に、自然原料を化粧料に用いることが多くなると予想されている。
このような背景から、良好な生分解性を持つ、植物由来のセルロース粒子が注目されている。セルロース粒子の製造方法には、以下の方法が知られている。セルロースが溶解したチオシアン酸カルシウム溶液を用いて球状の再生セルロース粒子を造粒する(例えば、特許文献1を参照)。セルロースが溶解した銅アンモニア溶液を用いて、球状の再生セルロース粒子を造粒する(例えば、特許文献2を参照)。これらのセルロース粒子は、意図的な化学修飾を行うプロセスにより得られたII型の結晶形セルロースを用いて作製されている。このような再生セルロース粒子は、前述のガイドラインでは自然由来原料に分類される。一方、意図的な化学修飾を行わないプロセスにより得られるI型の結晶形セルロースを用いてセルロース粒子を形成すること、このセルロース粒子をスクラブ剤に適用することも知られている(例えば、特許文献3を参照)。
特開平10-195103号公報 特開平11-171901号公報 特開2017-88873号公報
セルロース粒子をプラスチックビーズの代替として洗浄用化粧料に用いるために、以下の2点がセルロース粒子に求められている。
(1)自然原料とみなされるために、意図的な化学修飾を行わないプロセスによって得られるI型の結晶形セルロースで形成されること。
(2)高い真球度や良好な流動性を備え、洗浄用化粧料の感触特性を向上させること。
前述のガイドラインによれば、特許文献1、2に記載の再生セルロース粒子は自然原料としてみなされなかった。また、特許文献3に記載のセルロース粒子は真球度が0.1~0.7であり、洗浄用化粧料に良好な感触特性を与えることができなかった。
そこで、本発明の目的は、意図的な化学修飾を行わないプロセスによって得られるI型の結晶形セルロースを用いて、スクラブ剤に適した多孔質セルロース粒子を実現することにある。このような多孔質セルロース粒子が配合された洗浄用化粧料は、環境問題を引き起こす懸念が少なく、さらに、良好なスクラブ効果やプラスチックビーズと同等の感触特性を得ることができる。
本発明による多孔質セルロース粒子は結晶性セルロースが集合した粒子であって、多孔質セルロース粒子の平均粒子径が50~1000μm、比表面積が25~1000m/g、真球度が0.85以上である。ここで、結晶性セルロースは、グルコース分子を構成単位としたI型の結晶形を持っている。
また、細孔容積PVを、0.2~5.0ml/gの範囲とした。さらに、平均細孔径PDを、2~200nmの範囲とした。また、平均粒子径dが1nm~1μmの結晶性セルロースを用いることとした。
さらに、多孔質セルロース粒子の水分散液を超音波分散機により60分間分散させたとき、分散後の平均粒子径dと、分散前の平均粒子径dの比(d/d)は、0.95~1.05の範囲にある。
本発明の多孔質セルロース粒子の製造方法は、I型の結晶形である結晶性セルロースの分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、乳化液滴を含む乳化液を調製する乳化工程と、乳化液滴を脱水処理する脱水工程と、脱水工程で得られた非水系溶媒分散体を固液分離して多孔質セルロース粒子を得る工程と、を備えている。このとき、乳化工程では、乳化液滴の平均径が200~5000μmになるように乳化条件を設定する。
本発明による多孔質セルロース粒子は、「グルコース分子を構成単位としたI型の結晶形」を持つ結晶性セルロース(以後、単に「I型の結晶性セルロース」と称す)が集って形成されている。多孔質セルロース粒子は、平均粒子径(d)が50~1000μm、真球度が0.85以上、比表面積が25~1000m/gである。このような粒子は、洗浄用化粧料のスクラブ剤に適している。平均粒子径が1000μmより大きい粒子を化粧料に用いると、皮膚の損傷、角質層への線状痕等の微細な傷が生じることがある。平均粒子径が50μm未満では、スクラブ効果が得られにくい。なお、平均粒子径は、特に100~750μmが好ましい。ここでは、レーザー回折法により平均粒子径を求めた。
また、粒子の比表面積が25m/g未満では、水系環境に流出した際に十分な速度で生分解できない。一方、比表面積が1000m/gを超える場合、粒子が脆くなり、肌に塗布した際に崩壊しやすく、スクラブ剤の機能を果たさない。なお、比表面積は40~500m/g、特に50~500m/gが好ましい。
また、真球度が0.85未満の粒子を洗浄用化粧料に配合した場合には、良好な転がり性が得られず、ヒリヒリ感が増大する。ここで、真球度は走査型電子顕微鏡の写真から画像解析法により求めた。
さらに、多孔質セルロース粒子の粒子変動係数(CV)は、50%以下が好ましい。粒子変動係数が50%を超えると、均一な転がり性が得られない。なお、粒子変動係数は、40%以下が好ましく、特に30%以下が好ましい。粒子変動係数は、小さいほど好適であるものの、3%未満の狭小分布の粒子を得ることは工業的に困難である。
ここで、多孔質セルロース粒子中のI型の結晶性セルロースの含有量は、50%以上が望ましい。II~IV型など、他の結晶形のセルロースを含んでいても良い。I型の結晶性セルロースの含有量は、好ましくは、75%以上、更に好ましくは90%以上である。含有量が多いほど前述のガイドラインによる自然指数が高くなる。なお、セルロースの結晶形は、赤外分光法にて同定することができ、I型の結晶形は、3365~3370cm-1に強い吸収が認められる。その他にも、固体13C-NMR法によるケミカルシフトの違いや、X線回折法による回折角により同定することもできる。また、結晶形は、Iα、Iβの何れであっても良く、混合物であっても良い。
さらに、細孔容積(PV)は0.2~5.0ml/g、平均細孔径(PD)は2~200nmが好ましい。細孔容積が0.2ml/g未満の粒子は、弾性が低いため、ソフトな感触特性が得られにくい。一方、5.0ml/gを超える粒子では強度が脆いため、肌に塗布した際に崩壊するおそれがある。なお、細孔容積は0.2~2.0ml/gが、特に好ましい。また、平均細孔径が2nm未満の場合、感触特性に大きな影響はないものの、生分解性が低下しやすい。一方、200nmを超えると、粒子の強度が脆くなりやすい。
化粧料の製造工程で多孔質セルロース粒子が崩壊すると、当初想定していた機能が得られないおそれがある。そのため、製造工程中に平均粒子径が変化しないことが望ましい。そこで、多孔質セルロース粒子を蒸留水に分散させ、この分散液に、超音波分散機を用いて60分間超音波を印加した。分散試験後の平均粒子径dと試験前の平均粒子径dの比(d/d)は、0.95~1.05が好ましい。d/dが0.95未満ということは、粒子の強度が低いことを表している。すなわち、製造工程における機械的負荷によって、粒子が崩壊し、スクラブ効果が得られないおそれがある。一方、d/dが1.05を超えるということは、水中で結晶性セルロースが膨潤することを表している。そのために、製造工程後に化粧料が増粘しやすく、品質安定性を担保できない。さらに、感触特性も変化するおそれがある。なお、平均粒子径の比(d/d)は、0.97~1.03が特に好ましい。
また、多孔質セルロース粒子は、外殻の内部に空洞が形成された中空構造でもよい。このような中空粒子は同径の中実粒子より軽いため、同じ重量の粒子を添加した場合、粒子数は中実粒子の場合より多くなる。ここで、外殻は多孔質であり、窒素ガスが通過できる程度の多孔性を持つことが好ましい。さらに、外殻の厚さTと多孔質セルロース粒子の外径ODの比(T/OD)は、0.02~0.45の範囲が好ましい。この比(T/OD)が0.45を超えると、中実粒子と実質的に同等になってしまう。一方、この比が、0.02未満であると、粒子が崩壊しやすい。比(T/OD)は、0.04~0.30の範囲が特に好ましい。
多孔質セルロース粒子を形成するI型の結晶性セルロースは、平均粒子径dが1nm~1μmであることが好ましい。微細な粒子で形成された多孔質セルロース粒子は、良好な生分解性を発揮する。平均粒子径dは、特に0.1~0.5μmの範囲が好ましい。その他、電子顕微鏡写真で計測される太さが1~500nm、長さが1μm以上のセルロースナノファイバーや、太さが10~50nm、長さが100~500nmのセルロースナノクリスタルも結晶性セルロースとして好適である。
I型の結晶を持つ結晶性セルロースは、植物繊維を蒸解して得られるセルロース繊維や市販のセルロース粉末(旭化成社製セオラス(登録商標)PH-101等)をウォータージェット法などの機械処理やTEMPO酸化法などの化学処理により解繊して得ることができる。あるいは、市販の水分散体、例えば、旭化成社製セオラスRC、第一工業製薬社製レオクリスタ(登録商標)、スギノマシーン社製BiNFi-s(登録商標)、草野作工社製Fibnano等をI型の結晶性セルロースとして用いてもよい。
<多孔質セルロース粒子の製造方法>
次に、多孔質セルロース粒子の製造方法について説明する。まず、I型の結晶性セルロースの分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、乳化させる(乳化工程)。これにより乳化液滴を含む乳化液が得られる。次に、乳化液を脱水処理する(脱水工程)。これにより、乳化液滴中の水が除去される。次に、固液分離して多孔質セルロース粒子を固形物として取り出す(固液分離工程)。この固形物を乾燥して解砕する(乾燥工程)ことにより、多孔質セルロース粒子の粉体が得られる。ここで、多孔質セルロース粒子の真球度は0.85以上である。
以下、各工程を詳細に説明する。
[乳化工程]
まず、I型の結晶性セルロースの分散液を用意する。この分散液の固形分濃度を0.01~5%の範囲に調整して、適切な粘度の分散液とする。固形分濃度が5%を超える場合は、通常、粘度が高くなり、乳化液滴の均一性が損なわれることがある。0.01%未満の固形分濃度では経済性が悪く、特に利点もない。分散液の固形分濃度は、特に0.1~3.0%が好ましい。なお、分散液の溶媒は水が好ましい。
この分散液と非水系溶媒と界面活性剤を混合する。非水系溶液は、乳化のために必要である。非水系溶液は、水と相溶しないものであればよく、一般的な炭化水素溶媒を用いることができる。界面活性剤は、油中水滴型の乳化液滴を形成するために添加される。界面活性剤のHLB値は1~10の範囲が適している。非水系溶媒の極性に応じて、最適なHLB値を選択すればよい。HLB値は特に1~5の範囲が好ましい。また、異なるHLB値の界面活性剤を組み合わせてもよい。
次に、この混合溶液を乳化装置により乳化させる。このとき、平均径が200μm以上5000μm以下の乳化液滴を含んだ乳化液が得られるように、乳化条件を設定する。乳化液滴中には水に分散したI型の結晶性セルロースが存在している。乳化装置には、一般的な高速せん断装置を用いることができる。この他、より微細な乳化液滴が得られる高圧乳化装置、より均一な乳化液滴が得られる膜乳化装置、マイクロチャネル乳化装置などの公知の装置を目的に応じて選択できる。
なお、乳化液滴の平均径は以下のように測定した。乳化液をスライドガラスに滴下し、その上からカバーガラスを被せる。デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-600)により、カバーガラス越しに30倍から2000倍の倍率で撮影し、乳化液滴の写真投影図を得る。この写真投影図から、50個の液滴を任意に選び、付属のソフトウェアにて円相当径を算出する。それら50個の円相当径の平均値を平均径(平均液滴径)とした。
[脱水工程]
次に、乳化工程で得られた乳化液を脱水処理する。常圧または減圧下で加熱することにより、水を蒸発させる。これにより、乳化液滴から水が除去され、粒子径50~1000μmの多孔質セルロース粒子(I型結晶性セルロースの集合体)を含む非水系溶媒分散体が得られる。
例えば、常圧下の加熱脱水法では、冷却管を備えたセパラブルフラスコを加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。また、減圧下の加熱脱水法では、ロータリーエバポレーターや、蒸発缶など用いて減圧加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。後述の固液分離工程で非水系溶媒分散体から多孔質セルロース粒子を固形物として取り出せる程度まで脱水を行うことが好ましい。脱水が不十分だと、固液分離工程で球状粒子としての形態を維持できない。
[固液分離工程]
固液分離工程では、従来公知の濾過、遠心分離などの方法で、脱水工程で得られた非水系溶媒分散体から固形分を分離する。これにより、多孔質セルロース粒子のケーキ状物質を得ることができる。
[乾燥工程]
乾燥工程では、常圧または減圧下での加熱により、固液分離工程で得られたケーキ状物質に含まれる非水系溶媒を蒸発させる。これにより、真球度0.85以上、平均粒子径50~1000μmの多孔質セルロース粒子の乾燥粉体が得られる。
また、乳化工程で得られた乳化液を-50℃~0℃の範囲で冷却してから脱水工程を行ってもよい。すなわち、乳化液滴中の水を凍結させて凍結乳化物とする。凍結乳化物を常温に戻してから脱水工程を行う。凍結温度が-50℃~-10℃の場合には、中実構造の多孔質セルロース粒子を得ることができる。-10℃~0℃の場合には、中空構造の多孔質セルロース粒子が得られる。-10℃~0℃程度の温度では、氷の結晶が徐々に成長する。結晶の成長に伴って、液滴中の結晶性セルロース(一次粒子)が液滴の外周に排斥される。そのため、外殻の内部に空洞が形成される。
また、固液分離工程で得られたケーキ状物質を洗浄してもよい。これにより、界面活性剤を除去できる。多孔質セルロース粒子を乳化物等の液体製剤に配合する場合、界面活性剤が長期安定性を阻害するおそれがある。そのため、多孔質セルロース粒子に含まれる界面活性剤の残留量は500ppm以下が好ましい。界面活性剤を低減させるためには、有機溶媒を用いて洗浄すると良い。
<洗浄用化粧料>
上述の多孔質セルロース粒子と化粧料成分を配合して洗浄用化粧料が得られる。このような洗浄用化粧料によれば、マイルドな角質層のピーリング効果が得られるとともに、皮膚の損傷、角質層への微細な傷を防ぐことができる。
洗浄用化粧料は、ペースト状、液状、ゲル状等の形態であり、具体的には、ボディ用洗浄化粧料、ハンド用洗浄化粧料、フット用洗浄化粧料、フェイス用洗浄化粧料等が挙がられる。このような化粧料は、従来公知の一般的な方法で製造できる。
各種化粧料成分を以下に例示する。非イオン系、カチオン系、アニオン系または両性の各種界面活性剤。アルコール類(イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール)。各種高分子(アラビアガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン酸、グアーガム、アルブミン、プルラン、カルボキシビニルポリマー、セルロース及びその誘導体、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール)。着色料、香料、増粘剤、湿潤剤、防腐剤、感触向上剤、殺菌剤、消炎剤、体質顔料、紫外線吸収剤。さらに、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、Eleventh Edition2006)等に収載されている化粧料成分を配合してもよい。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
[実施例1]
はじめに、I型の結晶性セルロースの分散液を準備する。本実施例では、I型セルロース(旭化成社製セオラスPH-101)50gを純水4950gに懸濁した。この懸濁液をマイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製M-7250-30)に100回通過させて、固形分濃度1%の分散液を調製した。
この分散液と非水溶性溶媒と界面活性剤を混合する。固形分濃度1%の分散液200gを、ヘプタン(関東化学社製)3346gと界面活性剤AO-10V(花王社製)25gの混合溶液中に加えた。乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を使用して、この溶液を回転速度350rpmで5秒間撹拌し、乳化させた。この乳化液に含まれる乳化液滴の平均径は2195μmであった。この乳化液を60℃で24時間加熱した。これにより、乳化液滴が脱水される。さらに、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。その後、ヘプタンで繰り返し洗浄し界面活性剤を除去した。これにより得られたケーキ状物質を、60℃で12時間乾燥した。この乾燥粉体を25mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、多孔質セルロース粒子の粉体を得た。
多孔質セルロース粒子の調製条件を表1に示す。また、多孔質セルロース粒子の粉体の物性を以下の方法で測定した。その結果を表2に示す。
(1)各粒子の平均粒子径(d、d
レーザー回折法を用いて、各粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布からメジアン値を求め、平均粒子径とした。このようにして、多孔質セルロース粒子の平均粒子径d、I型の結晶性セルロースの平均粒子径dを求めた。ここでは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950v2(株式会社堀場製作所製)を用いて粒度分布を測定した。但し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタル等に代表される繊維状のI型結晶性セルロースの平均粒子径dについては、「平均粒子径=6000÷(真密度×比表面積)」の式を用いて等価球換算の平均粒子径を算出した。
(2)超音波分散有無による平均粒子径比
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950v2)で、分散条件を「超音波60分間」に設定し、分散させた後、多孔質セルロース粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布のメジアン値を超音波分散後の平均粒子径dとした。これから超音波分散前後の平均粒子径の比(d/d)を求めた。
(3)多孔質セルロース粒子の真球度
透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H-8000)により、30倍から2000倍の倍率で撮影し、写真投影図を得る。この写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、それぞれの最大径DLと、これに直交する短径DSを測定し、比(DS/DL)を求めた。それらの平均値を真球度とした。
(4)多孔質セルロース粒子の比表面積
多孔質セルロース粒子の粉体を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、105℃の温度で2時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m/g)をBET法にて測定した。多孔質セルロース粒子に配合したI型結晶性セルロースの密度(1.5g/cm)でこれを換算し、単位体積当たりの比表面積を求めた。
(5)多孔質セルロース粒子の細孔容積、細孔径
多孔質セルロース粒子の粉体10gをルツボに取り、105℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次いで、洗浄したセルに0.15g試料を取り、Belsorp miniII(日本ベル社製)を使用して真空脱気しながら試料に窒素ガスを吸着させ、その後、脱着させる。得られた吸着等温線から、BJH法により平均細孔径を算出する。また、「細孔容積(ml/g)=(0.001567×(V-Vc)/W)」という式から細孔容積を算出した。ここで、Vは圧力735mmHgにおける標準状態の吸着量(ml)、Vcは圧力735mmHgにおけるセルブランクの容量(ml)、Wは試料の質量(g)を表す。また、窒素ガスと液体窒素の密度の比を0.001567とした。
[実施例2]
本実施例では、実施例1で得られた固形分濃度1%の分散液100gを純水100gで希釈し、固形分濃度を0.5%とした。この希釈分散液200gを、ヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合溶液中に加え、乳化分散機を使用して350rpmで5秒間撹拌し、乳化させた。このようにして得られた乳化液を、-5℃の恒温槽中で168時間静置して、乳化液滴中の水を凍結させた。その後、常温まで昇温し、解凍した。解凍後、実施例1と同様に濾過、洗浄し、ケーキ状物質を得た。さらに、実施例1と同様に、多孔質セルロース粒子の粉体を調製し、物性を測定した。
本実施例で得られた多孔質セルロース粒子の内部構造を調べた。粉体0.1gをエポキシ樹脂約1g(BUEHLHER製EPO-KWICK)に均一に混合して常温で硬化させた後、FIB加工装置(日立製作所製、FB-2100)を用いて、試料を作製した。透過型電子顕微鏡(日立製作所製、HF-2200)を用いて、加速電圧200kVの条件下で、この試料のSEM像を撮影した。その結果、外殻の内部に空洞が形成された中空構造の粒子であった。このSEM像から、外殻の厚さTと外径ODを計測し、外殻の厚さ比(T/OD)を求めた。
[実施例3]
実施例2と同様に乳化液を調製した。この乳化液を-25℃の冷凍庫中で120時間静置して、乳化液滴中の水を急速に凍結させた。これ以降は実施例2と同様にして、多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
[実施例4]
実施例1で用いたI型セルロース(セオラスPH-101)の代わりに、BiNFi-s WMa-10002(スギノマシン社製)を用いて、固形分濃度1%の分散液を調製した。この分散液200gを、ヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合液中に加えた。これ以降は実施例1と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
[実施例5]
本実施例では、実施例1の乳化条件を以下のように変更した。乳化工程において、スリーワンモーター(新東科学社製BL-600)にPTFE羽根型攪拌棒(アズワン社製 6枚羽根)を取り付けて乳化分散機とした。回転速度を100rpmに、乳化時間を10秒間に、乳化液の加熱時間(脱水時間)を48時間に設定した。これ以外は実施例1と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
[実施例6]
乳化工程における乳化時間を15秒間に、乳化液の加熱時間(脱水時間)を16時間に変更した。これ以外は実施例1と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
[実施例7]
実施例1で用いたI型セルロース(セオラスPH-101)の代わりに第一工業製薬社製I-2SPを用いて、固形分濃度1%の分散液を調製した。これ以降は実施例1と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
[比較例1]
乳化液の脱水条件を40℃で8時間に変更した。これ以外は実施例4と同様に多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
[比較例2]
本比較例では、乳化法を用いずに噴霧乾燥法により結晶性セルロースの集合粒子を作製した。旭化成社製セオラスPH-101 20g、尿素75g、水酸化リチウム23g、蒸留水500gを混合した。この混合液を-25℃の恒温槽内で2時間冷却した。これを常温に昇温し、解凍することによりセルロースが溶解した溶液が得られる。この溶液を噴霧液として、スプレードライヤー(NIRO社製、NIRO-ATMIZER)により噴霧乾燥した。すなわち、入口温度150℃、出口温度が50~55℃に設定した乾燥気流中に、2000rpmで回転しているアトマイザーから2L/hrの流量で噴霧液を供給して噴霧乾燥(造粒)した。これにより得られた乾燥粉体はII型の結晶形を持つセルロースである。これを純水に懸濁し、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。その後、純水で繰り返し洗浄し、ケーキ状物質を得た。このケーキ状物質を100℃で16時間乾燥させた後、25mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、多孔質セルロース粒子の粉体が得られた。この粉体の物性を実施例1と同様に測定した。
[比較例3]
本比較例では、実施例5で用いた固形分濃度1%の分散液の代わりに4%の分散液を用いた。すなわち、I型セルロース(旭化成社製セオラスPH-101)200gを純水4800gに懸濁して、固形分濃度4%の分散液を調製した。さらに、乳化工程を以下のように変更した。分散液と非水溶性溶媒と界面活性剤の混合液を10Lポリエチレン製ボトル(ポリ瓶)に封入し、このポリ瓶を5回手振りすることにより乳化させた。このような乳化工程では、液滴の平均径が大きくなる。また、乾燥粉体をふるいにかけず、多孔質セルロース粒子の粉体を得た。この粉体の物性を実施例1と同様に測定した。
Figure 0007199871000001
Figure 0007199871000002
[洗浄用化粧料の調製と評価]
上述の実施例や比較例で作製した多孔質セルロース粒子の粉体を成分(1)として用いて、表3に示す配合比率(質量%)で、各成分をビーカーに入れ、ホモジナイザーを使用して撹拌した。これにより、均一に混合されたボディ洗浄用化粧料(化粧料A~G、化粧料a~c)が得られる。
Figure 0007199871000003
これらの洗浄用化粧料について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、スクラブ感、ヒリヒリ感のなさ、洗浄後の肌のつや、洗浄後の肌のくすみのなさ、の4つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。その結果を以下の評価点基準Aに基づいて評価した。また、各人がつけた評価点を合計し、以下の評価基準Bに基づいて洗浄用化粧料の使用感を評価した。
評価点基準A
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
評価基準B
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
評価結果を表4に示す。化粧料A~Gは、その使用感が洗浄中、洗浄後においても非常に優れている。しかし、化粧料a~cは、その使用感が良くない。
Figure 0007199871000004

Claims (7)

  1. 結晶性セルロースが集合して形成された多孔質セルロース粒子であって、
    該結晶性セルロースは、グルコース分子を構成単位としたI型の結晶形であり、
    該多孔質セルロース粒子は、平均粒子径(d)が164~1000μm、比表面積が25~1000m/g、真球度が0.85以上、細孔容積(PV)が、0.2~5.0ml/gであることを特徴とする多孔質セルロース粒子。
  2. 前記多孔質セルロース粒子は外殻の内部に空洞が形成された中空構造であり、前記外殻の厚さ(T)と前記多孔質セルロース粒子の外径(OD)との比(T/OD)が0.02~0.45である請求項1に記載の多孔質セルロース粒子。
  3. 平均細孔径(PD)が、2~200nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質セルロース粒子。
  4. 前記多孔質セルロース粒子の水分散液を、超音波分散機を用いて60分間分散させたとき、分散後の平均粒子径dと、分散前の平均粒子径dの比(d/d)が、0.95~1.05の範囲にあることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子。
  5. 粒子変動係数が40%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子。
  6. 平均粒子径(d )が164~1000μm、比表面積が25~1000m /g、真球度が0.85以上、細孔容積(PV)が、0.2~5.0ml/gである多孔質セルロース粒子の製造方法であって、
    I型の結晶形を持つ結晶性セルロースの分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、平均径が200~5000μmの乳化液滴を含む乳化液を調製する乳化工程と、
    前記乳化液滴から水を除去する脱水工程と、
    前記脱水工程で得られた非水系溶媒分散体を固液分離して多孔質セルロース粒子を得る工程と、を備えることを特徴とする多孔質セルロース粒子の製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子が配合された洗浄用化粧料。
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