JP4250740B2 - 天然由来多糖類を含有する微粒子及びその製造方法 - Google Patents

天然由来多糖類を含有する微粒子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、医薬品、化粧品等に利用されているキチン、キトサン等をはじめとする天然由来多糖類の微粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
天然由来多糖類を基剤とするマイクロカプセルは、DDS製剤、生分解性基剤等の様々な用途への応用が期待されている。このマイクロカプセルは、従来より、ノズル滴下法によってカプセル化される方法がよく利用されている。例えば、天然由来多糖類の一つであるキトサンを酢酸水溶液に溶解攪拌させながら、芯液となるカルボキシメチルセルロース水溶液をノズルに通して滴下し、両物質を瞬時に反応させて高分子複合カプセルが生成するという報告例がある(矢吹稔著、「キチン、キトサンの応用」p.167-174、(1990))。ところが、上記のようなノズル滴下法では、粒径がミリオーダーの比較的大きなカプセルしか製造することができない。
【0003】
このため、さらに小さなカプセルを調製するためには、乳化を経由する手法が用いられている。すなわち、ホモミキサーを用いて調製したエマルションから球状粒子を製造できることが知られている。これについては、例えばポリ乳酸マイクロスフィアを生成させた報告がある(Suong-Hyu Hyon著、Yonsei Med J.、6、 p.720-734(2000))。しかし、この方法で調製さるれエマルションが多分散であるため、得られた球状粒子も多分散となり、単分散粒子を得ることは困難である。特に、天然由来多糖類がキトサンである場合、酸に溶解したキトサンは中和反応によって増粘化する際に、W/Oエマルションの状態で増粘が進むと不定形粒子が固着し、いったん固着するとその再分散が困難となる。このため、キトサンのような増粘する物質を用い、実用性のある粒子又はカプセルを製造することはほとんど不可能である。
【0004】
これに対し、多孔質ガラス膜を用いる乳化方法を利用して海草由来多糖類の均一球状粒子の製造方法が提案されている(特許第2607990号)。これは単分散W/Oエマルションから海草由来多糖類の均一粒子を製造する方法である。しかし、多糖類がアルギン酸ナトリウムである場合、反応液のCaCl2濃度をかなり高くしなければ粒子が形成されず、得られた粒子も緻密体であり、多孔質粒子又はマイクロカプセルを製造できない。また、上記方法では、対象となる物質は海草由来の多糖類に限られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来技術では、粒径等を制御しつつ、キトサン、キチン等の天然由来多糖類の微粒子を製造することが困難であり、かかる製造技術の改良が求められているのが現状である。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、粒径等の所望の物性を制御しながら天然由来多糖類の微粒子をより確実に製造することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定のW/Oエマルションを用いて特定の工程を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、天然由来多糖類を含有する微粒子及びその製造方法に係る。
【0009】
1. 天然由来多糖類を含有し、その平均粒径が0.1〜50μmである微粒子。
【0010】
2. 積算体積分布の10%径が50%径の0.5倍以上、積算体積分布の90%径が50%径の1.5倍以下である前記項1記載の微粒子。
【0011】
3. 乾燥時の空隙率が0〜50容積%である前記項1又は2に記載の微粒子。
【0012】
4. 天然由来多糖類がキトサンである前記項1〜3のいずれかに記載の微粒子。
【0013】
5.さらに有機酸を含有する前記項1〜4のいずれかに記載の微粒子。
【0014】
6. 天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を水相とするW/Oエマルション又はO/W/Oエマルションから、天然由来多糖類を含有する微粒子を製造する方法であって、
上記W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液及び/又は2)その第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、当該第一水溶液からなる水相中の天然由来多糖類の濃度を制御する濃度調整工程を有することを特徴とする天然由来多糖類を含有する微粒子の製造方法。
【0015】
7. W/Oエマルションが、多孔質ガラス膜を用いた膜乳化法により得られるエマルションであって、
1)当該多孔質ガラス膜を介して、天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を油相中に分散して得られたエマルション、又は
2)天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を水相とするW/Oエマルションを多孔質ガラス膜に通過させて得られたエマルション
である前記項6記載の製造方法。
【0016】
8. O/W/Oエマルションが、多孔質ガラス膜を用いた膜乳化法により得られたエマルションであって、
当該多孔質ガラス膜を介して、天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を水相とするO/Wエマルションを油相中に分散して得られたエマルション
である前記項6記載の製造方法。
【0017】
9. 第一水溶液が、キトサンが有機酸水溶液に溶解した溶液である前記項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
10. 前記項6〜9のいずれかに記載の濃度調整工程で得られた混合物に、さらに天然由来多糖類を不溶化し得る物質を添加することを特徴とする天然由来多糖類を含有する微粒子の製造方法。
【0019】
11. 天然由来多糖類を不溶化し得る物質を、当該物質の水溶液又はその水溶液を水相とするW/Oエマルションとして添加する前記項10記載の製造方法。
【0020】
12. 天然由来多糖類を不溶化し得る物質の水溶液の浸透圧及び/又は添加量を変化させることにより、得られる微粒子の空隙率を制御する前記項11記載の製造方法。
【0021】
13. 前記項6〜12のいずれかに記載の製造方法により得られる天然由来多糖類を含有する微粒子。
【0022】
【発明の実施の形態】
1.天然由来多糖類を含有する微粒子
本発明の天然由来多糖類を含有する微粒子(以下「本発明微粒子」ともいう。)は、天然由来多糖類を含有し、その平均粒径が0.1〜50μmであることを特徴とする。
【0023】
平均粒径は、通常0.1〜50μm程度であるが、特に0.5〜20μmであることが望ましい。本発明の「平均粒」とは、積算体積分布において、当該分布の50体積%に対応する粒径を上記「平均粒径」とする。例えば、図5に実施例で得られたキトサン粒子の積算体積分布(20)を示す。図5では、縦軸の積算粒子体積が50体積%に対応する粒径が「平均粒径」を示し、この場合の平均粒径は約9μmとなる。
【0024】
また、本発明粒子は、積算体積分布の10体積%に対応する粒径(以下「10%径」という。)が上記50%径の0.5倍以上であり、かつ、当該分布の90体積%に対応する粒径(以下「90%径」という。)が上記50%径の1.5倍以下であることが望ましい。
【0025】
本発明粒子は、空隙を有していても良い。すなわち、本発明粒子は、多孔質構造又はマイクロカプセル構造をもつ粒子であっても良い。多孔質構造の場合は、乾燥時の空隙率が0〜50容積%の範囲であることが好ましい。空隙率は、窒素ガス吸着法により測定することができる。
【0026】
本発明の天然由来多糖類としては、天然界で合成される多糖類(天然多糖類)であれば限定的されない。例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、ジェランガム、キチン、キトサン、カラギーナン等のほか、これらの誘導体も挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。
【0027】
また、本発明粒子は、天然由来多糖類を主成分(基質)とすれば良く、実質的に天然由来多糖類からなる粒子も包含される。本発明の効果を妨げない範囲内で他の成分を含んでいても良い。例えば、油性乳化剤又は水性乳化剤、浸透圧調整剤、有機酸又は無機酸等が挙げられる。これらは、後記に示すようなものを使用することができる。
【0028】
2.本発明粒子の製造方法
本発明粒子の製造方法は、天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を水相とするW/Oエマルション又はO/W/Oエマルションから、天然由来多糖類を含有する微粒子を製造する方法であって、
上記W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液及び/又は2)その第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、当該第一水溶液からなる水相中の天然由来多糖類の濃度を制御する濃度調整工程を有することを特徴とする。図1には、W/Oエマルションを用いた場合の製造フロー図を示す。必要により図1の製造フロー図を使用しながら説明する。
(1)W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションの水相及び油相
a)水相
上記W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションにおける水相としては、天然由来多糖類の水溶液(第一水溶液)を使用する。天然由来多糖類は限定的でなく、前記に示したものを1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
第一水溶液を調製する際の溶媒は、通常は水を使用できるほか、各種の水溶液を溶媒として使用することもできる。天然由来多糖類は、一般的には、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、ゲランガム等の水可溶性の多糖類、キトサン等の酸に溶解し得る多糖類等に分けられる。
【0030】
酸に溶解し得る多糖類は、酸の存在下で水に溶解させれば良い。例えば、酸の水溶液に天然由来多糖類を溶解させたり、あるいは水中に天然由来多糖類を懸濁させた後、酸を滴下しながら溶解させれば良い。
【0031】
酸としては、使用する天然由来多糖類を水に溶解させることができるものであれば限定されず、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、L−アスコルビン酸、アクリル酸、クエン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸のほか、塩酸、ホウ酸等の無機酸が使用できる。本発明では、これらの中では、特に弱酸が好適である。
【0032】
第一水溶液の天然由来多糖類の濃度は特に限定されないが、通常は0.001〜5重量%程度、好ましくは0.1〜2重量%とすれば良い。
【0033】
また、必要に応じて第一水溶液に添加剤を適宜加えても良い。添加剤としては、溶解している天然由来多糖類を不溶化しないものであれば限定されない。例えば、NaCl、ブドウ糖、ラクトース、グリセリン等の浸透圧調整剤、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ゾルビタン系界面活性剤、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系界面活性剤等の水性乳化剤等が挙げられる。浸透圧調整剤の使用量は、所望の浸透圧に応じて適宜決定することができる。水性乳化剤の使用量は限定的でなく、通常は0.01〜10重量%程度とすることができる。
【0034】
b)油相
油相は、W/Oエマルションの場合には連続相(連続油相)(2)、O/W/Oエマルションの場合には内油相及び外油相を構成する。
【0035】
油相の油剤としては、公知のW/Oエマルション等の油相として使用されているものであれば良く、例えば油脂類、石油系油剤、有機溶剤、合成系油剤等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で使用しても良い。特に、粒子回収の際に油剤を除去する必要がある場合には、沸点の低いヘキサン等の石油系油剤のほか、トルエン、ベンゼン等の有機溶剤を使用することが好ましい。
【0036】
また、油相には、必要に応じて乳化剤(油性乳化剤)等の添加剤を加えても良い。油性乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン系界面活性剤、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系界面活性剤等を使用することができる。油性乳化剤の添加量は、使用する油性乳化剤の種類等に応じて適宜設定すれば良いが、通常0.5〜10重量%の範囲にすれば良い。
(2)W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションの調製
本発明では、上記の水相及び油相を用いてW/Oエマルション又はO/W/Oエマルションを調製できる。
【0037】
a)W/Oエマルションの調製
上記第一水溶液を水相(分散水相)として用い、これを油相(連続油相)に分散してW/Oエマルション(4)を調製する。W/Oエマルション中の分散水相の体積比は限定的ではないが、一般には0.1〜70容積%、好ましくは10〜50容積%に設定すれば良い。
【0038】
W/Oエマルションを調製するための乳化(3)の方法は特に限定されず、攪拌法、ホモミキサーによる混合方法、多孔質膜を用いる膜乳化法等が利用できるが、特に多孔質膜を用いる膜乳化法による方法が望ましい。
【0039】
具体的には、1)当該多孔質ガラス膜を介して、天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を油相中に分散して得られたエマルション、又は2)天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を水相とするW/Oエマルションを多孔質ガラス膜に通過させて得られたエマルションを好適に用いることができる。膜乳化法によれば、分散水相の水滴(粒子)の粒径を制御でき、単分散のエマルションを効率良く製造することができる。
【0040】
上記多孔質膜の形状は特に限定されず、本発明粒子の製造条件等に応じて適宜決定すれば良い。例えば、板状(平膜状)、円筒状(パイプ状)等の形状が挙げられる。また、多孔質膜の細孔径も限定的でなく、所望の粒径等に応じて適宜選択すれば良い。本発明では、多孔質膜の相対累積細孔分布曲線において、細孔容積が全体の10%を占める時の細孔径が全体の90%を占める時の細孔径で除した値が実質的に1から1.5までの範囲内にあるミクロ多孔質膜が好ましい。このような膜自体は、公知の方法によって製造することができる。
【0041】
貫通孔(細孔)は、その断面形状が楕円状、長方形(スリット状)、正方形等のいずれであっても良い。また、貫通孔は、膜面に対して垂直に貫通していても良いし、斜めに貫通していても良い。貫通孔どうしが絡み合った状態になっても良い。多孔質膜の材質も限定的でなく、例えば、ガラス、セラミックス、シリコン、樹脂、金属等が挙げられる。
【0042】
本発明方法では、特に多孔質ガラス膜を用いることが望ましい。多孔質ガラス膜としては、例えばガラスのミクロ相分離を利用して製造される多孔質ガラス膜が好適である。具体的には、特許第1504002号に開示されたCaO−B23−SiO2−Al23系多孔質ガラス、特許第1518989号に開示されたCaO−B23−SiO2−Al23−Na2O系多孔質ガラス、CaO−B23−SiO2−Al23−Na2O−MgO系多孔質ガラス等が挙げられる。これらの多孔質ガラス膜としても、その相対累積細孔分布曲線において、細孔容積が全体の10%を占める時の細孔径が全体の90%を占める時の細孔径で除した値が実質的に1から1.5までの範囲内にあるミクロ多孔質ガラス膜が好ましい。
【0043】
膜乳化法では、多孔質ガラス膜表面の界面化学的性質が単分散エマルション調製に際して重要である(特許第2106958号及び特許第2733729号)。例えばW/Oエマルションを調製する場合は、親油性膜であることが好ましい。従って、多孔質ガラス膜の表面が親油性であればそのまま使用することができ、親水性又は疎油性であれば表面改質により膜表面を親油性化した後に使用すれば単分散W/Oエマルションを安定して生成することができる。
【0044】
親油化の処理方法としては、表面改質によって多孔質膜自体の細孔構造が損なわれない限り、特に方法は限定されない。例えば、シランカップリング剤等種々の反応試薬を用いて炭化水素基を導入する方法、有機系コーティング剤を付与する方法等が適用できる。
【0045】
膜乳化法を実施するための装置も限定的でなく、例えば図2に示すような公知の膜乳化装置を使用することができる。天然多糖類含有水相を分散相容器(11)に入れ、これを圧力計(12)でモニターしながらポンプ(13)によって加圧する。一方、分散相容器の先端にはパイプ状多孔質ガラス膜(14)が装着されており、これを連続油相容器(15)の連続油相中に浸漬しておく。この連続油相はマグネッチックスターラー(16)によって回転子(17)を回転運動させて流動させる。水相は多孔質ガラス膜の細孔を透過した後、均一な水相粒子(18)となって油相中に分散されることになり、所定の単分散W/Oエマルションが得られる。
【0046】
b)O/W/Oエマルションの調製
O/W/Oエマルションを調製する場合は、第一水溶液に油剤を添加し、攪拌法、膜乳化法等によりO/Wエマルションを調製する。第一水溶液には適宜水性乳化剤等の添加剤を加え、O/Wエマルション中の油剤の体積割合は0.1〜70容積%、好ましくは10〜50容積%に設定すれば良い。
【0047】
こうして得られたO/Wエマルションを膜乳化法等を用いて連続油相に分散すればO/W/Oエマルションが得られる。特に、多孔質ガラス膜を介して、天然由来多糖類が溶解した第一水溶液を水相とするO/Wエマルションを油相中に分散して得られたエマルションを好適に用いることができる。
【0048】
このときの分散相(O/Wエマルション)の体積割合はO/W/Oエマルション中0.1〜70容積%程度、好ましくは10〜50容積%に設定すれば良い。
【0049】
本発明方法において、O/W/Oエマルションを使用した場合には、粒子内部が空洞である粒子(マイクロカプセル(中空粒子))を得ることもできる。特に、空隙率が0〜95体積%のマイクロカプセルを好適に製造することができる。(3)濃度調整工程
本発明方法では、上記W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液及び/又は2)その第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、当該第一水溶液からなる水相中の天然由来多糖類の濃度を制御する。
【0050】
本発明方法では、上記混合により、上記W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションの天然由来多糖類の水溶液を脱水濃縮することができる。脱水濃縮は、加熱、真空加熱等によっても可能であるが、使用する油剤が低沸点であったり、脱水量を精密にコントロールすることが難しい等の制限があるため、第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液(5)及び/又は第二水溶液を水相(分散相)とするW/Oエマルションを混合することにより、混合エマルション(混合物)(6)の状態において、浸透圧差を駆動力となって低浸透圧の分散水滴から水を奪い、第一水溶液の天然由来多糖類を濃縮する。
【0051】
また、上記濃縮により天然由来多糖類を含有する水相の粘度が高くなるが、後述する不溶化処理により形成した粒子の形状と分散性に多大な影響を及ぼす。すなわち、濃縮率が高く、ゲル化等により高粘度化が進んだ状態になればなるほど水相粒子の変形が少なく、球状に近く、しかも分散性に富む粒子が得られる。なお、上記混合物は、W/Oエマルション又はW/O/Wエマルションあるいは両者が混在した状態であっても良い。
【0052】
第二水溶液は、浸透圧調整剤を水に溶解したものを使用することができる。浸透圧調整剤としては、高い浸透圧を生むことができる物質であれば、その種類に制限はない。例えば、NaCl、CaCl2等の無機塩類、グルコース、蔗糖等の糖類、グリセリン等が挙げられる。
【0053】
第二水溶液の濃度は、第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有するように調整すれば良い。具体的には、所望の濃縮率に基づいて、予め第二水溶液の濃度を設定することができる。
【0054】
ここに、濃縮率ε%は、第一水溶液▲1▼の浸透圧をΠa、水相体積をVa、第二水溶液▲5▼の浸透圧をΠb、水相体積をVbとし、水の移動が進んで両水相の浸透圧が等しくなった時の平衡浸透圧をΠeとすると、次式によって概算することができる。
【0055】
ε[%] = (Πe/Πa)×100
= 100(ΠaVa + ΠbVb)/{Πa(Va + Vb)}
天然由来多糖類は高分子であることから、通常は溶解量も少なく、一般に浸透圧は低い。従って、本発明方法では、これよりも高い浸透圧の第二水溶液を用意すれば良い。
【0056】
一般的には、濃縮率の調整によって、得られる微粒子の空隙率を0〜50体積%の範囲内で制御することができる。すなわち、本発明では、多孔質構造又はマイクロカプセル構造を有する微粒子をつくることができる。
【0057】
本発明では、第二水溶液をそのまま使用するほか、第二水溶液を水相とするW/Oエマルションを単独又は第二水溶液とともに使用することができる。このW/Oエマルションとしては、水相として上記第二水溶液を使用するほかは、前記a)W/Oエマルションの調製と同様にして調製することができる。
(4)不溶化処理
本発明方法は、上記の濃度調整工程で得られた混合物に、さらに天然由来多糖類を不溶化(ないしは固化)し得る物質(不溶化物質)を添加する方法も包含する。不溶化を必要としない場合は、上記混合物をそのまま使用したり、あるいは上記混合物から粒子を回収すれば良い。
【0058】
上記不溶化物質としては、溶解している天然由来多糖類を不溶化させる(析出させる)ようなものであれば限定的でなく、用いる天然由来多糖類(第一水溶液)の種類によって適宜選択することができる。一般的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の無機酸塩(塩化物、炭酸塩等)のほか、アンモニウム塩等の1種又は2種以上を適宜採用すれば良い。
【0059】
上記不溶化物質は、当該物質の水溶液又はその水溶液を水相とするW/Oエマルションの形態で添加することが望ましい。これら水溶液又はW/Oエマルションも、使用する天然由来多糖類(第一水溶液)の種類によって適宜選択することができる。例えば、第一水溶液が弱酸に溶解したキトサンの場合は、NaOH、NaCO3、(NH42CO3等を溶解したアルカリ水溶液;第一水溶液がアルギン酸ナトリウム水溶液の場合はCaCl2、FeCl3等の多価陽イオンを生成する電解質水溶液等を不溶化液として使用できる。
【0060】
上記不溶化物質の添加量又は濃度(水溶液とする場合)は、使用する天然由来多糖類の不溶化できるのに十分な量であれば良い。従って、使用する天然由来多糖類の種類、濃度等に応じて適宜設定することができる。
【0061】
特に、本発明方法では、不溶化物質の水溶液の浸透圧は、目的に応じで適宜変更できる。すなわち、(i)上記平衡浸透圧Πeに等しい浸透圧に設定した場合は、天然由来多糖類の高粘度粒子がそのまま不溶化される。(ii)Πeより高く設定した場合は、高粘度粒子がさらに脱水されながら不溶化することになる。(iii)Πeより低く設定した場合は、水を取り込んで膨潤しながら不溶化する。このように、不溶化液の浸透圧によっても、粒子の粒径、形状、空隙率等を任意的に制御することができる。上記浸透圧は、上記水溶液の濃度等によって適宜変更することができる。同様の制御は、上記水溶液又はW/Oエマルションの添加量を変えることによって実施することができる。
【0062】
また、上記水溶液又はW/Oエマルションを添加しなくても不溶化できる天然由来多糖類も存在する。例えば、カラギーナンの場合ように、溶解と不溶化の境に明確な温度が存在する多糖類では、図1の(1)〜(6)の工程を加温しながら実施し、その後に冷却すれば不溶化した粒子を生成させることができる。
(5)回収
本発明では、上記の濃度調整工程又は不溶化処理で得られた混合物を種々の用途にそのまま使用することができるが、必要に応じて油相を取り除いて洗浄した後に回収しても良い。これにより、固化した天然由来多糖類の粒子を回収(10)できる。油相の除去方法、洗浄方法等は、本発明の粒子特性に影響を及ぼさない限り、公知の方法に従って行えば良い。例えば、天然由来多糖類がキトサンの場合、不溶化が終了した混合エマルション(8)をろ過等により固液分離し、得られた固形分をアルコールで洗浄した後に乾燥すれば、本発明粒子を固化粒子として回収することができる。
【0063】
O/W/Oエマルションを使用した場合も、同じ操作を実施すれば良い。また、必要に応じて、粒子内部の空洞を形成している油相を取り除く工程を実施しても良い。例えば、液中乾燥法、凍結乾燥法等によって上記油相を除去することができる。
【0064】
本発明の特徴の1つは、均一な大きさの粒子を自由に製造できることにある。これは、W/Oエマルション(4)あるいはO/W/Oエマルションの水相粒径あるいはO/W粒径が自由に制御できる膜乳化法の特徴を利用しており、多糖類の水相濃度と浸透圧を精密に調整することで空隙率や粒子の収縮率をコントロールでき、エマルションの粒径分布と同じ形のまま小さい方へシフトした天然由来多糖類の粒子を得ることができる。
【0065】
本発明微粒子は、粒子内部に有用物質を封入し、有用物質のキャリアとして使用することもできる。有用物質の封入方法自体は公知の方法に従えば良い。例えば、予め第一水溶液を調製する際に併せて有用物質を溶解しておけば本発明微粒子に有用物質を封入することができる。有用物質が有機酸である場合、キトサン等を溶解する弱酸として有機酸を用いることにより、これを微粒子に封入することができる。また例えば、微粒子を回収した後に、有用物質が溶解した溶液(水溶液、アルコール溶液等)に投入して粒子内に有用物質を含浸させる方法でも良い。
【0066】
【作用】
混合エマルションでは、第一水溶液の水相(1)と第二水溶液の水相(5)の浸透圧差が駆動力となり、低浸透圧の第一水溶液の水が油相を介して第二水溶液の水相の方へ移動し、脱水されることにより第一水溶液の水相粒子内の粘性は非常に高くなる。その結果、濃縮された天然由来多糖類を含有する水相は、通常の方法では得られなかった高粘性の粒子となる。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)従来は困難とされていたサブミクロンないしはナノオーダーの天然由来多糖類の微粒子を提供することが可能である。しかも、その粒径を比較的自由に調節することができ、天然由来多糖類の単分散粒子も提供することができる。
(2)製造工程が比較的簡易であり、しかも連続的に天然由来多糖類粒子を製造できることから、本発明方法は工業的規模での生産に適している。
(3)緻密な微粒子〜多孔質構造〜マイクロカプセル構造というような種々の構造をもつ微粒子を比較的容易に製造することができる。
【0068】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明の特徴をより明確に示す。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。実施例中の「wt%」は「重量%」、「vol%」は「容積%」をそれぞれ示す。
【0069】
実施例1
天然由来多糖類としてキトサン、油剤としてn−ヘキサン、乳化剤としてテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(以下「TGCR」という)(製品名「CR−310」阪本薬品工業製)、多孔質膜として平均細孔径8.82μmの疎水性多孔質ガラス膜(エス・ピー・ジーテクノ製)、浸透圧調整剤として食塩NaCl、不溶化物質として重炭酸アンモニウム(NH42CO3をそれぞれ用いた。
【0070】
また、膜乳化装置として図2に示すような装置を使用した。この装置は、分散相を収容する上部容器(11)、多孔質ガラス膜(14)、連続油相を収容する下部容器(15)、圧力計(12)、ポンプ(13)、マグネッチックスターラー(16)及び回転子(17)を基本構成とする。ポンプにより上部容器に供給された分散相は、多孔質ガラス膜を介して、下部容器の連続油相中に圧入分散され、水相粒子(18)を形成する。
【0071】
まず、10wt%の酢酸水溶液にキトサンを溶解し、キトサン濃度を2wt%となるように調整し、これを水相として用いた。次に、TGCRをn−ヘキサンに溶解し、TGCR濃度を5wt%にしたものを油相とした。
【0072】
疎水性多孔質ガラス膜を介して水相を油相中に圧入分散し、平均粒径23μm、水相の体積割合33vol%の単分散W/Oエマルション(以下「キトサンエマルション」という。)を調製した。得られたキトサンエマルションの光学顕微鏡による観察結果を図3、レーザー回折/散乱式粒度分布計(製品名「SALD−2000」島津製作所製)で測定した水相粒子の積算粒径分布を図5の(19)にそれぞれ示す。
【0073】
次に、NaCl濃度1.6mol/Lの高浸透圧水溶液と上記油相を同じ体積割合で混合し、ホモミキサー(製品名「ULUTRA-TURRAX」、JANKE & KUNKEL製)を用いて、24000rpmで1分間の高速攪拌を行って高浸透圧のW/Oエマルション(以下「高浸透圧エマルション」という。)を調製した。
【0074】
キトサンエマルションと高浸透圧エマルションを体積比1:2の割合で混合し、翼型攪拌機にて500rpmの回転数で攪拌した。キトサンエマルションの水相から浸透圧差による脱水が終了する3時間後に、今度は、先の混合W/Oエマルションに1.0mol/L濃度の(NH42CO3反応水溶液を等量加え、翼型攪拌機を用いて回転数500rpmで20時間攪拌した。
【0075】
その後、キトサンエマルション、高浸透圧エマルション、反応水溶液が混在する溶液をろ紙を用いて吸引ろ過し、ろ紙上の粒子をエタノールで十分洗浄した。こうして得られたキトサン粒子を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図4に示す。図4によれば、従来の手法では製造できなかった均一な大きさのキトサン粒子であることがわかる。
【0076】
図5(20)にキトサン粒子の積算粒径分布を示す。キトサンエマルション水相粒子の積算粒径分布がそのまま小さい方へシフトしており、キトサン粒子の粒径分布は水相粒子の粒径分布によって決定できることがわかる。すなわち、本発明の製造方法が確かなものであり、特徴ある天然由来多糖類の粒子を生成
できることが判明した。
【0077】
実施例2
浸透圧調整剤含有水相の浸透圧によって粒子の形状、分散性等を制御する本発明の特徴を明らかにするため、以下の実験を実施した。
【0078】
実施例1と同じキトサン含有酢酸水溶液、油相、平均細孔径8.82μmの多孔質ガラス膜を用い、膜乳化により単分散W/Oエマルションを調製した。次に、NaCl濃度0.17mol/Lと0.51mol/Lの高浸透圧水溶液を準備し、そのW/Oエマルションをホモミキサーで調製した。
【0079】
両エマルションを等量混合した後、実施例1と同じ条件で脱水操作、さらに、固化反応を行い、キトサン粒子を回収した。得られた粒子を電子顕微鏡によって観察した結果を図6及び図7にそれぞれ示す。
【0080】
NaCl水溶液の濃度、すなわち、浸透圧が高い場合、図4のように表面が滑らかで球状のキトサン粒子が生成した。一方、浸透圧が低い場合は、図6のように表面の凹凸が著しい粒子になった。図7に示す粒子は、それらの中間の状態であった。また、乾燥状態の空隙率は浸透圧が低いものほど高く、これらを水中に再分散した場合、浸透圧が低いものほどよく膨潤した。
【0081】
浸透圧が高い場合は、分散水相のキトサン濃縮率は高くなり、キトサン分子が密な高粘度状態で固化反応(不溶化反応)が進んだため、空隙率の低い粒子になったと推測される。一方、浸透圧が低い場合は、キトサン分子がルーズな高粘度状態で固化反応が進み、空隙率が大きな粒子になったと考えられる。図6の粒子を水中に再分散すると水和によって大きく膨潤し、表面が滑らかな粒子に変化する。このことから、図6における粒子表面は、大きな空隙が乾燥によって収縮したために著しい凸凹が形成されたと推定される。
【0082】
実施例3
キトサン水溶液の濃度が粒径制御に及ぼす影響を以下の実施例で調べた。
【0083】
キトサンの濃度が 0.5wt%、1wt%、2wt%及び3wt%の4種類の水溶液をそれぞれ準備し、実施例1の手順に従ってキトサン粒子を製造した。ただし、油剤として灯油、油性界面活性剤としてソルビタン・モノオレート (製品名「Span80」和光純薬工業製)をそれぞれ使用した。
【0084】
図8には、キトサン濃度と平均粒径との関係を示す。平均細孔径が8.82μmの多孔質ガラス膜を用いて調製したW/Oエマルションの水相平均粒径を(21)、固化反応後に回収したキトサン粒子の平均粒径を(22)にそれぞれ示す。キトサンの濃度を変化させた場合、その水溶液の粘度は5 〜 100mPa・sの範囲で変化した。それにもかかわらず、(21)のように水相平均粒径は22 〜23μmの範囲で一定である。ところが、これを固化反応させると、濃度が低い場合のキトサン粒子は小さく、濃度が高くなるに従って粒径は大きくなった。キトサン粒子の平均粒径をDp、キトサンの濃度をCm、水相平均粒径をDWとすると、粒子の空隙率が一定であるとして算出される次式に従った。
【0085】
Dp = A×Cml/3×DW
(ただし、Aは実験で求められる定数を示す。)
このことから、生成手順と条件が同一であれば、キトサンの濃度とW/Oエマルションの水相粒径からキトサン粒子の粒径を制御できることがわかる。
【0086】
実施例4
使用した多孔質膜の孔径が天然由来多糖類の粒径制御に及ぼす影響を明らかにした。
【0087】
キトサン水溶液を平均細孔径が2μm、5.5μm、8.82μm及び19.4μmの4種類の多孔質ガラス膜を介して連続油相に圧入分散し単分散W/Oエマルションを調製した。多孔質ガラス膜以外は実施例1と同じ条件にし、キトサン粒子を生成して回収した。
【0088】
図9には、多孔質ガラス膜の孔径とそれにより得られた粒子の平均粒径との関係を示す。得られたW/Oエマルションの水相平均粒径を(23)に示し、キトサン粒子の平均粒径を(24)に示す。両粒径は直線関係で表され、水相粒径が多孔質ガラス膜で決定されれば、キトサン粒子の粒径もほぼ予想できることがわかる。
【0089】
実施例3の式を使って求められるキトサン粒子の空隙率は約90vol%であった。粒径測定に用いたレーザー回折/散乱式粒度分布計は湿式法に基づいており、粒子を水に再分散して粒径を測定する。従って、粒子は水和して膨潤しており、このため空隙率が90vol%になったと考えられる。この粒子の乾燥状態での空隙率を窒素ガス吸着測定装置(製品名「ソープトマッチック1800型」ファイソンズ社製)で測定した。具体的には、真空脱気した試料を液体窒素温度に保持し、窒素ガスを物理吸着させることにより、その窒素ガス吸着量(窒素ガスが液化した液体窒素の体積)から空隙率を求めた。その結果、空隙率は5vol%程度しかなく、膨潤が顕著であることが判明した。さらに、これらの水和膨潤と乾燥収縮は繰り返し起こり、天然由来多糖類の粒子に特有の機能であることも明らかになった。
【0090】
これらの機能を利用し、あらかじめ粒子内に封入した有用成分を水和によって一挙に放出できる新たなタイプのキャリアを調製できることがわかる。
【0091】
実施例5
W/Oエマルションの代わりにO/W/Oエマルションを出発エマルションとし、マイクロカプセルを調製した。
【0092】
天然由来多糖類としてキトサン、油剤にn−ヘキサン、乳化剤としてテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステルTGCR、多孔質膜として平均細孔径8.82μmの疎水性多孔質ガラス膜、浸透圧調整剤にNaCl、不溶化物質に(NH42CO3と苛性ソーダNaOHを用いた。
【0093】
まず、キトサンが2wt%、水性界面活性剤のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(製品名「HCO−60」日光ケミカルズ製) が0.5wt%溶解した酢酸10wt%水溶液を水相とした。これに水相と等量のn−ヘキサンを添加してホモミキサーによりO/Wエマルションを調製した。一方、TGCRをn−ヘキサンに溶解し、濃度5wt%に調整したものを油相とした。次に、疎水性多孔質ガラスを介して上記O/Wエマルションを油相中に圧入分散し、平均粒径23μm、O/W相の体積割合33vol%のO/W/Oエマルションを調製した後、実施例1と同じ手順でマイクロカプセルを調製した。
【0094】
その結果、キトサン粒子の平均粒径は9μm、乾燥状態での空隙率は45vol%であり、実施例1〜4の粒子より空隙率がはるかに大きなマイクロカプセルが得られることがわかる。また、分散した油相の割合を変えることにより、マイクロカプセルの空隙率を制御できることも判明した。なお、不溶化物質を変えても粒径と空隙率に差がなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】天然由来多糖類を基質とする微粒子の製造フロー図である。
【図2】膜乳化装置の概要を示す図である。
【図3】W/Oエマルションの粒子を観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図4】キトサン粒子の粒子を観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図5】水相粒子とキトサン粒子の積算粒径分布を示す図である。
【図6】NaCl濃度0.17mol/Lを浸透圧調整剤水溶液に用いて合成したキトサン粒子の粒子を観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図7】NaCl濃度0.51mol/Lを浸透圧調整剤水溶液に用いて合成したキトサン粒子の粒子を観察した結果を示す図(イメージ図)である。
【図8】W/Oエマルションの水相平均粒径とキトサン粒子の平均粒径とを比較した図である。
【図9】W/Oエマルションの水相平均粒径とキトサン粒子の平均粒径を比較した図である。
【符号の説明】
(1) 天然由来多糖類含有水相
(2) 連続油相
(3) 乳化
(4) W/Oエマルション
(5) 浸透圧調整剤含有水相
(6) 混合エマルション
(7) 反応液(天然多糖類を不溶化し得る溶液)
(8) 混合エマルション
(9) 固化
(10)回収
(11)分散相容器(上部容器)
(12)圧力計
(13)ポンプ
(14)多孔質ガラス膜
(15)連続油相容器(下部容器)
(16)マグネッチックスターラー
(17)回転子
(18)水相粒子
(19)水相粒子の積算粒径分布
(20)キトサン粒子の積算粒径分布
(21)W/Oエマルションの水相平均粒径
(22)キトサン粒子の平均粒径
(23)W/Oエマルションの水相平均粒径
(24)キトサン粒子の平均粒径

Claims (9)

  1. キトサンを含有し、その平均粒径が0.1〜50μmであり、積算体積分布の10%径が50%径の0.5倍以上、積算体積分布の90%径が50%径の1.5倍以下である、微粒子。
  2. 乾燥時の空隙率が0〜50容積%である請求項1に記載の微粒子。
  3. 機酸を含有する請求項1又は2に記載の微粒子。
  4. キトサンが溶解した第一水溶液を水相とするW/Oエマルション又はO/W/Oエマルションから、キトサンを含有する微粒子を製造する方法であって、
    上記W/Oエマルション又はO/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液及び/又は2)その第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、当該第一水溶液からなる水相中のキトサンの濃度を制御する濃度調整工程、及び
    上記濃度調整工程で得られた混合物に、さらにキトサンを不溶化し得る物質を添加する工程
    を有することを特徴とするキトサンを含有する微粒子の製造方法。
  5. W/Oエマルションが、多孔質ガラス膜を用いた膜乳化法により得られるエマルションであって、
    1)当該多孔質ガラス膜を介して、キトサンが溶解した第一水溶液を油相中に分散して得られたエマルション、又は
    2)キトサンが溶解した第一水溶液を水相とするW/Oエマルションを多孔質ガラス膜に通過させて得られたエマルション
    である請求項記載の製造方法。
  6. O/W/Oエマルションが、多孔質ガラス膜を用いた膜乳化法により得られたエマルションであって、
    当該多孔質ガラス膜を介して、キトサンが溶解した第一水溶液を水相とするO/Wエマルションを油相中に分散して得られたエマルション
    である請求項記載の製造方法。
  7. 第一水溶液が、キトサンが有機酸水溶液に溶解した溶液である請求項のいずれかに記載の製造方法。
  8. キトサンを不溶化し得る物質を、当該物質の水溶液又はその水溶液を水相とするW/Oエマルションとして添加する請求項記載の製造方法。
  9. キトサンを不溶化し得る物質の水溶液の浸透圧及び/又は添加量を変化させることにより、得られる微粒子の空隙率を制御する請求項記載の製造方法。
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