JP5522615B2 - 貴金属イオン捕集剤として有用なポリマー - Google Patents
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Description
(1)貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する架橋基によりキトサン分子間を架橋せしめた構造を有するポリマー。
(2)キトサンを構成するグルコサミン(繰り返し単位)として式(I):
前記架橋基を形成するR1、R2又はR3は、それぞれ独立に、同一又は異なるキトサン分子を構成する他のグルコサミンのR1、R2又はR3と一緒になって貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する架橋基を形成しており、
前記架橋基の少なくとも1つは、異なるキトサン分子間に形成された架橋基である)
で表されるグルコサミン誘導体(繰り返し単位)を含有する、(1)記載のポリマー。
(4)前記配位基が硫黄原子又は窒素原子を含む配位基である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリマー。
(5)前記架橋基が式(II):
m又はnは、それぞれ独立に、1以上の整数であり、
*印は結合位置を示す)
で表される部分構造を含む、(4)記載のポリマー。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載のポリマーを含有する貴金属イオン捕集剤。
(8)酸性溶液中で吸着剤として(7)記載の貴金属イオン捕集剤を使用することを特徴とする貴金属イオン回収法。
キトサンが溶解した第一水溶液を水相とするO/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液および/または2)当該第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、前記第一水溶液からなる水相中のキトサンを濃縮するキトサン濃縮工程を含み、必要に応じて、前記濃縮工程後の前記第一水溶液中のキトサンを不溶化する不溶化工程を更に含む、キトサン微粒子調製工程、ならびに
前記キトサン微粒子調製工程により得られたキトサン微粒子に対して、当該微粒子中のキトサンを構成するグルコサミンのアミノ基、6位炭素上の水酸基、及び/又は3位炭素上の水酸基を反応性基に変換し、当該変換後のキトサンに、当該反応性基に結合可能な官能基を少なくとも2つ有し、かつ貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する化合物を反応させてキトサン分子間を架橋させる処理を施す架橋工程、
を含む、前記方法。
(11)前記配位基が硫黄原子又は窒素原子を含む配位基である(9)又は(10)記載の方法。
(12)前記架橋基が式(II):
m又はnは、それぞれ独立に、1以上の整数であり、
*印は結合位置を示す)
で表される部分構造を含む、(11)記載の方法。
(14)(13)記載の微粒子を含有する貴金属イオン捕集剤。
(15)酸性溶液中で吸着剤として(14)記載の貴金属イオン捕集剤を使用することを特徴とする貴金属イオン回収法。
(16)(14)記載の貴金属イオン捕集剤が充填されたカラムに、貴金属イオンを含む酸性溶液を通過させることを特徴とする(15)記載の貴金属イオン回収法。
本発明のポリマーの原料となるキトサンの分子量等は特に限定されない。
原料となるキトサンの形状は特に限定されず、粉末形状であっても球状の微粒子形状であってもよい。球状のキトサン微粒子は、例えば特開2004−2582号公報に記載された技術により製造され得る。
本発明のポリマーは、キトサン分子間が貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する架橋基により架橋されていることを特徴とする。
本発明はまた上記ポリマーの製造方法に関する。この方法は、キトサンを構成するグルコサミンのアミノ基、6位炭素上の水酸基、及び/又は3位炭素上の水酸基を反応性基に変換し、当該変換後のキトサンに、当該反応性基に結合可能な官能基を少なくとも2つ有し、かつ貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する化合物を反応させてキトサン分子間を架橋させることを特徴とする。グルコサミンの3位炭素上の水酸基はアミノ基及び6位炭素上の水酸基と比較して反応性が低いことから、本発明のポリマーの製造においては、主としてグルコサミンのアミノ基及び/又は6位炭素上の水酸基が反応性基に変換されて架橋基の結合の基点となる。
本発明のポリマーは種々の形状を取ることができ、例えば粉末形状であっても球状の微粒子形状であってもよい。キトサン微粒子を原料とした場合には、製造された本発明のポリマーもまた微粒子の形状となり得る。また、原料キトサンの形状に関わりなく、製造された本発明のポリマーを、例えば特開2004−2582号公報に記載された技術により微粒子に加工することもできる。
本発明のポリマーは貴金属イオン捕集剤として使用することができる。本発明のポリマーは、例えば、貴金属イオンが微量含有されためっき廃液や電子部品・電子機器、あるいは廃触媒などの廃棄物から貴金属を選択的に捕集する目的で使用することができる。
本発明はまた、上記ポリマーを含有する微粒子の製造方法、及び当該方法により製造された微粒子に関する。本発明のこの実施形態により提供される微粒子は、粒子内に貫通孔を有する超多孔性の微粒子である。
キトサンが溶解した第一水溶液を水相とするO/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液および/または2)当該第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、前記第一水溶液からなる水相中のキトサンを濃縮するキトサン濃縮工程を含み、必要に応じて、前記濃縮工程後の前記第一水溶液中のキトサンを不溶化する不溶化工程を更に含む、キトサン微粒子調製工程、ならびに
前記キトサン微粒子調製工程により得られたキトサン微粒子に対して、当該微粒子中のキトサンを構成するグルコサミンのアミノ基、6位炭素上の水酸基、及び/又は3位炭素上の水酸基を反応性基に変換し、当該変換後のキトサンに、当該反応性基に結合可能な官能基を少なくとも2つ有し、かつ貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する化合物を反応させてキトサン分子間を架橋させる処理を施す架橋工程、
を含むことを特徴とする。本発明の微粒子の製造方法は特開2004−2582号に記載の微粒子の製造方法を改変したものである。
(1)O/W/Oエマルションの水相及び油相
a)水相
上記O/W/Oエマルションにおける水相としては、キトサンを含む水溶液(第一水溶液)を使用する。
油相は、O/W/Oエマルションの内油相及び外油相を構成する。
本発明では、上記の水相及び油相を用いてO/W/Oエマルションを調製できる。
本発明方法では、上記O/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液及び/又は2)その第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、第一水溶液と第二水溶液との浸透圧差を利用して、当該第一水溶液からなる水相中のキトサンを脱水濃縮する。脱水濃縮により第一水溶液中でキトサンの微粒子が形成される。微粒子が形成されない場合には、後述する不溶化工程を更に行い微粒子を形成させることができる。
前述の濃縮工程においてキトサン微粒子が形成されない場合には、上記の濃縮工程で得られた混合物に、さらにキトサンを不溶化(ないしは固化)し得る物質(不溶化物質)を添加してキトサンの微粒子を形成させる。
本発明のキトサン微粒子調整工程では、上記の濃縮工程又は不溶化処理で得られた混合物をキトサン微粒子としてそのまま使用することができるが、必要に応じて油相を取り除いて洗浄した後に回収しても良い。これにより、固化したキトサンの粒子を回収できる。油相の除去方法、洗浄方法等は、微粒子の特性に影響を及ぼさない限り、公知の方法に従って行えば良い。例えば、不溶化が終了した混合エマルションをろ過等により固液分離し、得られた固形分をアルコールで洗浄した後に乾燥すれば、キトサン微粒子を固化粒子として回収することができる。また、必要に応じて、微粒子内部の空洞を形成している油相を取り除く工程を実施しても良い。例えば、液中乾燥法、凍結乾燥法等によって上記油相を除去することができる。
前記キトサン微粒子調製工程により得られたキトサン微粒子に対して、当該微粒子を構成するキトサン分子間を、貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する架橋基により架橋する処理を施す。架橋は、本明細書に記載の上記「ポリマーの製造方法」に記載の手順に沿って行うことができる。
本発明により製造された、貴金属イオンに配位可能な配位基を含有する架橋基によりキトサン分子間を架橋せしめた構造を有するポリマーを含有する微粒子は、SEM写真や細孔分布および粒度分布の結果からも明らかなように、細孔径が2−6μmの貫通孔を有した超多孔性の微粒子である。また、空隙率は70−80%以上と大きく、平均粒径は150μm程度の真球状体である。
キトサン微粒子1g(6.2mmol)を三口フラスコ中で蒸留水:DMF=1:9混合溶液100mlに分散させ、35%ホルムアルデヒド5.3g(62mmol)を滴下し窒素雰囲気下60℃で24時間過熱攪拌を行った。反応終了後、ろ過を行いエタノールで洗浄した。
キトサン微粒子1g(6.2mmol)を三口フラスコ中でDMF15mlおよびエピクロロヒドリン25mlの混合溶液に分散させ、3 mol dm-3水酸化ナトリウム溶液25mlを加え60℃で2時間過熱攪拌を行った。反応終了後、ろ過を行いエタノールで何度も洗浄した。
キトサン微粒子10g(62mmol)を蒸留水500gに分散させ、酢酸10gを加えてキトサンを溶解させた。キトサン酢酸溶液を50℃で攪拌させながら、ベンズアルデヒド63g(620mmol)を滴下した。ゲル状となったキトサンをアセトンで洗浄し、50℃で減圧乾燥した。
上記で調製したEDTC及びEDTSCによるパラジウム(II)及び金(III)の吸着率を、種々の塩酸濃度条件下で測定した。比較のために上記で調製した架橋キトサンについても同様に吸着率の測定を行った。
吸着率(Adsorption)%=(Co−Ce)/Co×100
Co:金属初濃度[m mol dm-3]
Ce:金属平衡濃度[m mol dm-3]
結果を図3(EDTC及び架橋キトサン)及び図4(EDTSC及び架橋キトサン)に示す。架橋キトサンによるPd(II)およびAu(III)の吸着率は塩酸濃度の増加に従って急激に減少した。一方、EDTCおよびEDTSCについては、架橋キトサンのような急激な減少は見られず、高塩酸濃度領域においても高い吸着率を示した。
上記で調製したEDTC及びEDTSCによる各種金属イオンの吸着率を、種々の塩酸濃度条件下で測定した。
吸着率(Adsorption)%=(Co−Ce)/Co×100
Co:金属初濃度[m mol dm-3]
Ce:金属平衡濃度[m mol dm-3]
EDTCの吸着結果を図5、EDTSCの吸着結果を図6にそれぞれ示す。
実験はすべてバッチ法により行った。パラジウムイオンの塩化物塩を0.1 mol dm-3塩酸溶液に溶解し、パラジウムイオンの初濃度を1 m mol dm-3とした。溶液10mlに対して樹脂0.05gを加え、30℃恒温槽中で24時間振とうした。振とう後ろ過を行い、得られた樹脂に対して15mlの各種脱離溶液をそれぞれ加え、再び30℃恒温槽中で24時間振とうした。平衡前後の金属イオンおよび脱離後の脱離溶液中金属イオンの定量は、原子吸光光度計を用いて測定した。吸着特性を評価するにあたり、脱離率(%)は次の式により定義した。
脱離率(desorption)%=(Cd×0.015)/((Co−Ce)×0.010)×100
Co:金属初濃度[m mol dm-3]
Ce:金属平衡濃度[m mol dm-3]
Cd:脱離溶液中金属濃度[m mol dm-3]
結果を表1に示す。
1.1 超多孔性キトサン微粒子(OWOC)の調製
キトサン水溶液を水相とするO/W/Oエマルションから調製された超多孔性キトサン微粒子(OWOC)の調製スキームを図7に示す。キトサン16.4 gを蒸留水250 mlに分散させ、アジピン酸8.1 gおよびTween60 5.4 gを加えて6 wt%キトサン水溶液を調製した。キトサン水溶液にヘキサン50 mlを加え、ホモジナイザーを用いて17500 rpm、10分間撹拌し、キトサンO/Wエマルションを調製した。ウォータージャケット付きセパラブルフラスコ中で2 wt%テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(TGCR)ヘキサン溶液500 mlにキトサンO/Wエマルションを攪拌しながらゆっくりと加え、20℃、250 rpmで2時間撹拌を行いキトサンO/W/Oエマルションを調製した。一方、2 wt%TGCRヘキサン溶液250 mlに15 wt%塩化ナトリウム水溶液230 mlを乳化させた高濃度塩化ナトリウムW/Oエマルションを調製した。調製した塩化ナトリウムW/Oエマルションを撹拌しているキトサンO/W/Oエマルションへゆっくりと加え、20℃、250 rpmで約12時間程度撹拌を行った。ここで、高濃度塩化ナトリウムW/OエマルションとキトサンO/W/Oエマルションとの浸透圧差を駆動力とした水の油相移動により、キトサンO/W/Oエマルション内のキトサンが濃縮される。ろ過を行い、エタノールを用いて洗浄し、その後乾燥させてOWOCを得た。
スペーサーを介した1,2-エタンジチオール固定化キトサン(EDTSC)の合成スキームは図2に示す通りである。OWOC 7.7 g(47.9 mmol)を三口フラスコ中でDMF50 mlおよびエピクロロヒドリン100 mlの混合溶液に分散させ、3 mol dm-3水酸化ナトリウム溶液100 mlを加え、60℃で2時間加熱攪拌を行った。反応後、ろ過を行い、エタノールを用いて洗浄した。得られた中間体を三口フラスコ中でDMF100 mlに分散させ、1,2-エタンジチオール45.1 g(479.0 mmol)およびトリエチルアミン14.5 g(143.7 mmol)を加え、窒素雰囲気下常温で48時間攪拌を行った。反応後、ろ過を行い、エタノール、蒸留水、塩酸溶液および水酸化ナトリウム溶液を用いて洗浄した。乾燥させてEDTSCを得た。
2.1 吸着平衡実験
吸着実験はすべてバッチ法により行った。各金属イオンの塩化物塩を各種塩酸溶液に溶解し、各金属イオンの初濃度を1 mmol dm-3とした。30 mlサンプル管に各溶液15 mlに対してキトサン誘導体0.05 gを加え、30℃恒温槽中で24時間振とうした。平衡後の塩酸濃度は中和滴定により求めた。平衡前後の金属イオン濃度は、ICP発光分析装置(SHIMADZU ICPS=7000)を用いて測定した。なお、吸着特性を評価するにあたり、吸着率%および吸着量qeを次の式により定義した。
吸着率(Adsorption)%={(Cinit−Ce)/Cinit}×100
吸着量qe=(Cinit−Ce)×15/1000/w
Cinit:初期金属イオン濃度[mmol dm-3]
Ce:平衡金属イオン濃度[mmol dm-3]
w:樹脂量[g]
303 K恒温槽中で200 mlトールビーカーにEDTSC 0.1 gを加え、各種塩酸溶液2 mlを添加して吸着剤に塩酸溶液を含浸させた。パラジウム(II)の塩化物塩を各種塩酸溶液に溶解し、パラジウム(II)イオンの初濃度を0.25 mmol dm-3とした。パラジウム(II)溶液100 mlの温度を303 Kとした後、トールビーカーへ加えて攪拌翼を用いて一定の回転数で攪拌した。パラジウム(II)溶液を加えた時間を反応開始(t=0)とし、一定時間ごとに溶液1 mlを採取した。この際、この反応実験は濃度一定条件を保った状態で行っているため、採取した量だけ初濃度のパラジウム(II)溶液を添加していった。EDTSCによるパラジウム(II)の吸着量は物質収支により求めた(Cinit-Ct [mmol dm-3])。なお、吸着速度を評価するため、擬一次速度式により初速度の擬一次速度定数k1を導出した。擬一次速度式を以下に示す。
ln(Ct/Cinit)=−k1t
Ct:時間tでの金属イオン濃度[mmol dm-3]
Cinit:初期金属イオン濃度[mmol dm-3]
t:時間[sec]
カラムジャケット付ガラスカラム(内径 0.3 cm、長さ10 cm)にEDTSC 約0.05 gを充填した。パラジウム(II)の塩化物塩を0.1 mol dm-3塩酸溶液に溶解し、パラジウム(II)イオンの初濃度を0.1 mmol dm-3とした。デュアルポンプ(FLOM KP-12)を用いて一定温度、一定流速でパラジウム(II)溶液を送液し、流出する溶液を単時間ごとにフラクションコレクター(EYELA DC-1200)を用いて採取した。
以下に上記実験の結果と、得られた結果に関する考察を示す。本明細書および図面において使用する記号は次表に示す意味を有する。
EDTSCのSEM写真を図8に示す。表面および断面写真からEDTSCは大きな貫通孔を有する超多孔性キトサン微粒子であることが確認された。O/W/Oエマルション中の内油相滴の合一によって滴径の大きな内油相が形成され、これによって大きな貫通孔が形成されると考えられる。水銀ポロシメータ(SHIMADZU micromeritics PORE SIZER 9320)を用いてEDTSCの細孔構造の解析を行った。EDTSCの細孔分布を図9に示す。細孔分布より、EDTSCは直径2〜6 μmの均一な大きな孔を有することが分かった。この直径は断面のSEM写真から測定した値とほぼ一致することから、得られた細孔分布は信頼性が高いと考えられる。この大きな孔の効果により吸着速度の増大が考えられ、パーフュージョンクロマトグラフィー用の吸着剤としての利用が期待できる。パソコン顕微鏡専用カメラ(カートン光学株式会社 XP9507)を装備した光学顕微鏡(OLYMPUS)を用いて、EDTSCの粒度分布の測定を行った。粒度分布を図10に示す。EDTSCは多分散であり、平均粒子直径は142.8 μmであった。
EDTSCによる塩酸溶液からの各金属イオンの吸着結果を図11に示すEDTSCは全塩酸濃度領域において貴金属であるパラジウム(II)、金(III)および白金(IV)に対して高い吸着率を示した。一方、ベースメタルである銅(II)、ニッケル(II)、カドミウム(II)、鉄(III)、コバルト(II)および亜鉛(II)は、EDTSCにより全塩酸濃度領域においてほとんど吸着されなかった。これらの結果から、EDTSCは多量のベースメタルを含む溶液から貴金属イオンの選択的吸着分離が可能であると考えられる。
各温度におけるEDTSCによるパラジウム(II)の吸着等温線の測定を行った。その結果を図12に示す。結果より、すべての吸着等温線をそれぞれLangmuirの式に基づいてプロットし、得られた直線よりパラジウム(II)の飽和吸着量(qm)およびLangmuir定数(KL)をそれぞれ求めた。結果を表3に示す。すべての温度において飽和吸着量およびLangmuir定数ともにほぼ等しい値となった。EDTSCによるパラジウム(II)の飽和吸着量は2.4 mol kg-1であり、Langmuir定数は温度の増加に伴ってわずかな減少が確認された。
初めに水素イオン濃度を一定にしたときの吸着速度に及ぼす塩化物イオン濃度の影響について検討した。図13に擬一次速度定数に及ぼす塩化物イオン濃度の影響を示す。低塩化物イオン濃度領域において、擬一次速度定数に対する塩化物イオンの影響はほとんど見られなかった。しかしながら、高塩化物イオン濃度領域においては、塩化物イオン濃度の増加に伴って擬一次速度定数は減少した。その減少から傾き-1の直線が得られた。
各空間速度における吸着破過曲線を図16にそれぞれ示す。QS= 111 hour-1の場合、ベッド体積に対して約1800倍と非常に多量なパラジウム(II)溶液の処理が可能であった。通常、固定相吸着における空間速度は0.5-10 hour-1程度で行われることが多い。これと比較するとEDTSCは非常に迅速なクロマト分離が可能であることが分かる。QS = 111 hour-1における総交換容量qmを図上積分により求めた結果、qm = 1.68 mol kg-1であった。これは、上述したように従来の10-100倍の空間速度で吸着および濃縮が十分に行われていることを示している。
超多孔性キトサン誘導体EDTSCは貴金属であるパラジウム(II)、金(III)および白金(IV)の選択的吸着分離が可能であることが示された。EDTSCによるパラジウム(II)の吸着速度は、大きな孔の効果によって粒子内拡散抵抗が減少し、迅速な吸着速度を示すことが明らかとなった。従来の多孔性吸着剤の律速段階とは異なったことにより、パーフュージョンクロマトグラフィー用の吸着剤として利用できることが示された。EDTSC充填カラムはその吸着速度の速さにより、非常に迅速かつ高選択的なパラジウム(II)のクロマト分離が可能であり、また吸着分離したパラジウム(II)を非常に高濃度に濃縮して回収できることが明らかとなった。
Claims (9)
- 貴金属イオンに配位可能な硫黄原子を含む配位基を含有する架橋基によりキトサン分子間を架橋せしめた構造を有するポリマーであって、キトサンを構成するグルコサミンとして式(I):
(式中、R1、R2又はR3は、それぞれ独立に、貴金属イオンに配位可能な硫黄原子を含む配位基を含有する架橋基を形成しているか、或いは水素であり、ただしR1、R2及びR3が同時に水素であることはなく、
前記架橋基を形成するR1、R2又はR3は、それぞれ独立に、同一又は異なるキトサン分子を構成する他のグルコサミンのR1、R2又はR3と一緒になって貴金属イオンに配位可能な硫黄原子を含む配位基を含有する架橋基を形成しており、
前記架橋基の少なくとも1つは、異なるキトサン分子間に形成された架橋基である)
で表されるグルコサミン誘導体を含有し、前記架橋基が式(III)又は(IV):
(式中、*印は式(I)のR 1 が結合する窒素原子、R 2 が結合する酸素原子又はR 3 が結合する酸素原子への結合位置を示す)
で表される架橋基である、前記ポリマー。 - 請求項1記載のポリマーの製造方法であって、キトサンを構成するグルコサミンのアミノ基、6位炭素上の水酸基、及び/又は3位炭素上の水酸基を反応性基に変換し、当該変換後のキトサンに、当該反応性基に結合可能な官能基を少なくとも2つ有し、かつ貴金属イオンに配位可能な硫黄原子を含む配位基を含有する化合物を反応させてキトサン分子間を架橋させて、前記式(I)で表されるグルコサミン誘導体を含有するポリマーを得ることを特徴とする前記方法。
- 請求項1記載のポリマーを含有する貴金属イオン捕集剤。
- 酸性溶液中で吸着剤として請求項3記載の貴金属イオン捕集剤を使用することを特徴とする貴金属イオン回収法。
- 請求項1記載のポリマーを含有する微粒子の製造方法であって、
キトサンが溶解した第一水溶液を水相とするO/W/Oエマルションと、1)当該第一水溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二水溶液および/または2)当該第二水溶液を水相とするW/Oエマルションとを混合することにより、前記第一水溶液からなる水相中のキトサンを濃縮するキトサン濃縮工程を含み、必要に応じて、前記濃縮工程後の前記第一水溶液中のキトサンを不溶化する不溶化工程を更に含む、キトサン微粒子調製工程、ならびに
前記キトサン微粒子調製工程により得られたキトサン微粒子に対して、当該微粒子中のキトサンを構成するグルコサミンのアミノ基、6位炭素上の水酸基、及び/又は3位炭素上の水酸基を反応性基に変換し、当該変換後のキトサンに、当該反応性基に結合可能な官能基を少なくとも2つ有し、かつ貴金属イオンに配位可能な硫黄原子を含む配位基を含有する化合物を反応させてキトサン分子間を架橋させて、前記式(I)で表されるグルコサミン誘導体を含有するポリマーを得る処理を施す架橋工程、
を含む、前記方法。 - 請求項5記載の方法により製造された、請求項1記載のポリマーを含有する微粒子。
- 請求項6記載の微粒子を含有する貴金属イオン捕集剤。
- 酸性溶液中で吸着剤として請求項7記載の貴金属イオン捕集剤を使用することを特徴とする貴金属イオン回収法。
- 請求項7記載の貴金属イオン捕集剤が充填されたカラムに、貴金属イオンを含む酸性溶液を通過させることを特徴とする請求項8記載の貴金属イオン回収法。
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