JP2010179208A - 金属の吸着剤、およびそれを用いた金属の吸着方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、アセチル化キトサンと、該アセチル化キトサンの構成単位上の水酸基に、ラジカル重合性二重結合を有するモノマーをグラフト重合させて形成されたグラフト鎖と、該グラフト鎖の側鎖に導入された金属配位性官能基とを有するアセチル化キトサン誘導体を含む金属吸着剤を提供する。
【選択図】なし
Description
(1)アセチル化キトサンと、該アセチル化キトサンの構成単位上の水酸基に、ラジカル重合性二重結合を有するモノマーをグラフト重合させて形成されたグラフト鎖と、該グラフト鎖の側鎖に導入された金属配位性官能基とを有するアセチル化キトサン誘導体を含む金属吸着剤。
(3)前記アセチル化キトサンが、酸性水溶液中に溶解したキトサンを、アセチル化剤および界面活性剤を含有する有機溶媒相に分散させる工程を含む方法により製造された微粒子状のアセチル化キトサンである、(1)または(2)の金属吸着剤。
(5)ニッケルイオンとコバルトイオンとを含む硝酸アンモニウム溶液に(1)〜(3)のいずれかの金属吸着剤を加え、ニッケルイオンを該金属吸着剤に吸着させる、ニッケルイオンの吸着方法。
(7)アセチル化キトサン微粒子の製造方法であって、酸性水溶液中に溶解したキトサンを、アセチル化剤と界面活性剤とを含有する有機溶媒相に分散させる工程を含む方法。
(8)(7)の方法により製造されたアセチル化キトサン微粒子。
本発明の金属吸着剤は、アセチル化キトサンと、該アセチル化キトサンの構成単位上の水酸基に、ラジカル重合性二重結合を有するモノマーをグラフト重合させて形成されたグラフト鎖と、該グラフト鎖の側鎖に導入された金属配位性官能基とを有するアセチル化キトサン誘導体であり、以下の構造を有すると推定される。
2.1. 貴金属の分離
本発明の吸着剤は塩酸水溶液中において貴金属の吸着率が高くベースメタル(重金属などの他の金属)の吸着率が低いという特徴を有する。この性質を利用して、パラジウム(Pd(II))、白金(Pt(IV))及び金(Au(III))から選ばれる少なくとも一種の貴金属イオンを含む塩酸水溶液に本発明の吸着剤を加え、貴金属イオンを吸着剤に選択的に吸着させることが可能である。本発明の吸着剤により貴金属と分離することができるベースメタルとしては、亜鉛(Zn(II))、ニッケル(Ni(II))、銅(Cu(II))が挙げられる。貴金属を選択的に吸着するためには、Ni(II)存在条件では塩酸濃度は0.01〜3 mol dm-3であることが好ましく、Zn(II)存在条件では塩酸濃度は0.01〜3 mol dm-3であることが好ましく、Cu(II) 存在条件では塩酸濃度は1〜3 mol dm-3であることが好ましい。
本発明の吸着剤は、従来困難とされてきたニッケル(Ni(II))とコバルト(Co(II))との混合溶液からニッケルのみを選択的に吸着し、回収することに利用することができる。具体的にはニッケル(Ni(II))とコバルト(Co(II))とを含む水溶液に硝酸アンモニウムを添加し、pHを1.8〜2.3に調整した溶液に本発明の吸着剤を加えることによりニッケルを高選択的に吸着することができる。未吸着画分のコバルトも別途利用することができる。
本発明の吸着剤に吸着された金属イオンはチオ尿素の存在下で吸着剤から高効率で脱離することができる。好ましくは金属を吸着した吸着剤をチオ尿素水溶液中に15〜45℃の温度で4〜30時間浸透させることにより水溶液中に金属を脱離させることができる。脱離処理後の吸着剤は、必要に応じて洗浄および/または乾燥した後に再び金属の吸着のために使用することができる。
本発明の金属吸着剤は、電子工業、電子材料から排出される廃棄物から貴金属の回収、ニッケル、コバルトの相互分離、などの回収材として利用できる。このように、本発明の金属吸着剤は、環境保全、資源回収等の分野で使用できる。
キチンはキトサンのように酸に溶解せず、その形状制御が難しい原料である。そこで本実験では、キトサンを一度微粒子化し、微粒子にアセチル化を施すことによって結晶化度の低いキチン微粒子の調製を試みた。
実験の結果、半透明の白色微粒子が得られた。図1にSEM写真を示す。SEM写真より、微細な孔が存在すると思われる。また、酢酸溶液に投入しても溶解しなかったので、アセチル化が行われていると思われる。キトサンとアセチル化キトサンのIRスペクトルを図2に示す。図2から見てもアセチル化がうまく進んでいることが見受けられる。
反応活性の高いエポキシ基を含有するグリシジルメタクリレート(GMA)をアセチル化キトサンに導入させて、このエポキシ基に配位子を導入することにした。GMAのグラフト方法は以下のとおりである。
反応の結果、琥珀色だったアセチル化キトサンの色が乳白色になり、それぞれ粒状だった粒子がいくつかの粒子で塊を作った状態になった。恐らくグラフトがうまく進んだからであると思われる。また、生成物をFT-IRを用いて分析を行ったところ、図3のようになった。結果より、750 cm-1にエポキシ基のピークが現れ、環エーテルのピークも900〜1000 cm-1にかけて現れていることから、GMAの導入がうまく行われたことが確認できる。また、導入量はチオ硫酸ナトリウムを用いた定量法でエポキシ基の定量を行うことで導いた。その結果、導入量が17.18 mmol g-1であった。以下にチオ硫酸ナトリウムとエポキシ基の反応を示す。
GMAGACに配位子として、安定な5員環キレートを金属イオンと形成することが期待される2-アミノメチルピリジンの導入を行った。実験方法は以下のとおりである。
反応の結果、乳白色だった粒子が黄色に変色した。このことより2-アミノメチルピリジンの導入が成功したと思われる。また、生成物をFT-IRを用いて分析してみたところ、図4のようなIRスペクトルが得られた。図4より1594 cm-1にピリジン環由来のC=Nのピークが見られ、1156 cm-1にアミノメチルピリジン由来のイミノ基のピークが確認されることからも、導入が行われていることが確認された。また、図5にAMPGACのSEM像を示す。SEM像からも球状を保っていることが分かる。
合成したAMPGACの全窒素量を知るために、塩酸の飽和吸着実験を行った。実験方法は以下に示す通りである。0.01〜0.5 Nに適宜希釈した塩酸溶液15 cm3に吸着材AMPGAC 0.050 gを投入し30℃で24時間、振とう速度120 rpmで振とうした。その後溶液をろ過し、ろ液を水酸化ナトリウム溶液で中和滴定することにより塩酸濃度を求めた。
塩酸の飽和吸着実験の結果を図6に示す。吸着等温線がLangmuir型を示したため、Langmuirの式に吸着量や初濃度、平衡濃度を代入して算出した。Langmuirの吸着式で結果を表したところ、相関関係を表すR2がR2=0.9948となったため、AMPGACの吸着反応は単分子層吸着であることが分かった。
Langmuirの吸着式を以下に示す。
25 mMの金属溶液を各濃度の塩酸溶液で希釈し、1mMの金属溶液に吸着材AMPGAC 0.050 gを加え、30℃の恒温槽を用いて振とう速度120 rpmで24時間振とうした。その後溶液をろ過し、平衡後の塩酸濃度は中和滴定を用いて測定し、吸着平衡前後の金属イオン濃度は原子吸光光度計を用いて分析を行った。
吸着実験の結果を図7に示す。低塩酸濃度領域において、Au(III)、Pt(IV)およびPd(II)に対して高い吸着率を示している。また、Cu(II)以外の重金属がまったく吸着されていないことから、AMPGACが貴金属に高い選択性を持ち、低塩酸濃度領域における貴金属と重金属の分離が可能であることが示唆される。さらに、高塩酸濃度領域において、Pd(II)やAu(III)の吸着率が低下しているのに対してPt(IV)は80%以上の高い吸着率を維持していた。また、ここでもほとんどの重金属が吸着されていないことから、重金属溶液からの貴金属の分離が可能であることが示唆される。これらの結果から、AMPGACが全ての塩酸濃度領域において、Pd(II)やPt(IV)などの貴金属に対して高い吸着選択性を持つということが明らかとなった。
25 mMの金属溶液を1 mol dm3の硝酸アンモニウム水溶液で希釈し、1 Nの硝酸とアンモニア水で適宜pHを調製した、1mMの金属溶液に吸着材AMPGAC 0.050 gを加え、30℃の恒温槽を用いて振とう速度120 rpmで24時間振とうした。その後溶液をろ過し、平衡pHはpHメーターを用いて測定し、吸着平衡前後の金属イオン濃度は原子吸光光度計を用いて分析を行った。
吸着実験の結果を図8に示す。Cu(II)はpH 0.5付近から立ち上がり、pH 2.5付近から吸着率が低下する。吸着率は最大でも90%程度であった。一方Ni(II)はpH 2付近で立ち上がり、pH 2.5付近で最大に達した。pH 6以降の高いpHで急激に吸着率が低下しているのはNi(II)のアンミン錯体が形成されるとともに吸着材との錯形成が出来なくなっているからであると考えられる。Co(II)とZn(II)についてはCu(II)と同じくpH 3.5付近で立ち上がっているが、吸着率が最大でも40 - 50 %程度と低い値を示した。また、Pd(II)についてはpH 1付近の低いpHでは100 %の吸着率を示しているが、高いpHでは吸着しないことが明らかになった。
AMPGACがどの程度のPd(II)を吸着することが出来るのかを知るために、Pd(II)の飽和吸着実験を行った。3 NのHClを用いて、1〜15 mmol dm-3に適宜希釈したPd(II)溶液15 cm3にAMPGACをそれぞれ0.050 gずつ投入し、30℃の恒温槽を用い振とう速度120 rpmで24時間振とうを行った。その後ろ過を行い、吸着平衡前後の金属イオン濃度をICP発光分光光度計を用いて測定し、吸着量を算出した。実験条件を表2に示す。
Pd(II)の吸着等温線を図9に示す。吸着等温線がLangmuir型を示したため、Langmuirの式に吸着量や初濃度、平衡濃度を代入して算出した。Langmuirの吸着式で結果を表したところ、相関関係を表すR2がR2=0.9948となったため、AMPGACの吸着反応は単分子層吸着であることが分かった。
Langmuirの吸着式を以下に示す。
Pd(II)の吸着において吸着平衡に達するのにどの程度の時間を必要とするのかを知るために吸着平衡到達時間を調査した。実験方法は、303 K恒温槽中で200 cm3のトールビーカーにAMPGACを0.05 g量り採り、3 mol dm-3の塩酸溶液2 cm3を添加して吸着材に塩酸溶液を含浸させた。25 mmol dm-3 Pd(II)溶液を3 mol dm-3の塩酸溶液を用いて希釈しPd(II)の初期濃度を3 mmol dm-3とした。調製したPd(II)溶液100 cm3の温度を303 Kとした後、トールビーカーへ加えて攪拌翼を用いて300 rpmで攪拌した。Pd(II)溶液を加えた時間を反応開始(t=0)とし、一定時間ごとに溶液0.5 cm3 を採取した。この際、この反応実験は濃度一定条件を保った状態で行っているため、採取した量だけ初濃度のPd(II)溶液を添加していった。初濃度および採取した溶液中のPd(II)濃度はICP発光分析装置(ICPS=7000)を用いて測定した。
実験結果を図11に示す。図11より、約2時間後にはPd(II)の吸着は吸着平衡に達していると考えられる。以前調製したAMPGC(アセチル化キトサンではなく、キチンに官能基を導入したもの)では吸着平衡に達するのに4時間ほど必要であったが、AMPGACは2時間程度で吸着平衡に達した。これは官能基導入量が増加したためであると考えられる。今後、吸着実験は十分に平衡に達していると考えられる24時間で行うこととする。
実験は以下の方法で行った。まず、Pd(II)の濃度を1 mmol dm-3に固定して、Ni(II)の濃度を10 − 400 mmol dm-3になるように塩化ニッケルを加えた3 Nの塩酸溶液15 cm3を調製した。これに吸着材であるAMPGAC 0.05 gを投入し、30℃の恒温槽を用い、振とう速度120 rpmで24時間振とうを行った。その後ろ過により吸着材と溶液の分離を行い、Pd(II)とNi(II)の初濃度、平衡濃度を原子吸光光度計およびICP発光分析装置を用いて測定した。この際、どちらの金属においても干渉を防ぐためにマトリックスマッチングにより検量線を作成した。
実験結果を図12に示す。図12より、どのNi(II)濃度の溶液からでも選択的にPd(II)のみを吸着していることが分かる。特にPd(II)に対して400倍のNi(II)が存在する溶液からでもPd(II)のみを選択的に吸着したのは実廃液においても有効であると考えられる。Ni(II)濃度が100 mmol dm-3と200 mmol dm-3のときにNi(II)の吸着率が若干ではあるが上昇している。これは希釈の際の誤差であると考えられる。事実、400 mmol dm-3のサンプルでは吸着率が低くなっている。
脱離実験は以下のように行った。各金属イオンの塩化物を0.01 mol dm-3塩酸溶液に溶解し、各金属イオンの初濃度を1 mmol dm-3とした。溶液15 cm-3に対してAMPGACを0.05 g加え、30℃の恒温槽を用いて24時間振とうした。振とう後、ろ過を行い、回収したAMPGACに対して15 dm-3の脱離溶液(1 mol dm-3アンモニア水、1 mol dm-3チオシアン酸アンモニウム、1 mol dm-3チオ尿素水、1 mol dm-3チオ尿素+1 mol dm-3塩酸混合溶液および1 mol dm-3塩酸)を加え、再び30℃の恒温槽を用いて24時間振とうした。平衡前後の金属イオン濃度および脱離後の脱離溶液中の金属イオン濃度は原子吸光光度計、またはICP発光分析装置を用いて測定した。また、脱離溶液中の金属イオン濃度の測定においてチオ尿素による干渉を防ぐためにマトリックスマッチングにより検量線を作成した。なお、脱離率は次の式により定義した。
表4に各金属イオンの脱離率を示す。各金属イオンに対してチオ尿素が高い脱離率を示した。これはチオ尿素の持つ硫黄がそれぞれの金属イオンと親和性が高いことに由来すると考えられる。従って、チオ尿素を用いることによって、AMPGACの再生および吸着した貴金属イオンの回収が可能であることが明らかになった。
現在イオン交換体などの吸着材は、工業的には吸着カラムに詰められて溶液を通液することにより吸着/脱着を行っている。このとき吸着/脱着プロセスは繰り返し同じ樹脂を用いて行われる。そこで、AMPGACが複数回の吸着/脱着プロセスに耐えうるのかを調べるために実験を行った。
図13に各サイクルにおける吸着/脱着率を示す。全てのサイクルにおいて95%以上の吸着/脱着率を示したことから、AMPGACを吸着材として工業的に用いる際に、複数回の吸着/脱着プロセスに十分に耐えうる吸着能を持つことが分かった。
実験は以下の方法で行った。まず、Ni(II)の濃度を1 mmol dm-3に固定して、Co(II)の濃度を1 − 50 mmol dm-3になるように塩化コバルトを加えた1 mol dm-3硝酸アンモニウム溶液15 cm3を調製した。これに吸着材であるAMPGAC 0.05 gを投入し、30℃の恒温槽を用い、振とう速度120 rpmで24時間振とうを行った。その後ろ過により吸着材と溶液の分離を行い、Ni(II)とCo(II)の初濃度、平衡濃度を原子吸光光度計を用いて測定した。この際、どちらの金属においても干渉を防ぐためにマトリックスマッチングにより検量線を作成した。
実験結果を図14に示す。図14より、どのCo(II)濃度の溶液からでも吸着率は50 %前後であるが、選択的にNi(II)のみを吸着していることが分かる。特にNi(II)に対して50倍のCo(II)が存在する溶液からでもNi(II)のみを選択的に吸着したのは実廃液においても有効であると考えられる。
Claims (8)
- アセチル化キトサンと、該アセチル化キトサンの構成単位上の水酸基に、ラジカル重合性二重結合を有するモノマーをグラフト重合させて形成されたグラフト鎖と、該グラフト鎖の側鎖に導入された金属配位性官能基とを有するアセチル化キトサン誘導体を含む金属吸着剤。
- 前記モノマーがグリシジルメタクリレートであり、前記金属吸着性官能基が2-ピリジルメチル基である、請求項1の金属吸着剤。
- 前記アセチル化キトサンが、酸性水溶液中に溶解したキトサンを、アセチル化剤および界面活性剤を含有する有機溶媒相に分散させる工程を含む方法により製造された微粒子状のアセチル化キトサンである、請求項1または2の金属吸着剤。
- パラジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一種の貴金属イオンを含む塩酸溶液に請求項1〜3のいずれかの金属吸着剤を加え、貴金属イオンを該金属吸着剤に吸着させる、貴金属イオンの吸着方法。
- ニッケルイオンとコバルトイオンとを含む硝酸アンモニウム溶液に請求項1〜3のいずれかの金属吸着剤を加え、ニッケルイオンを該金属吸着剤に吸着させる、ニッケルイオンの吸着方法。
- 請求項4または5の方法により前記貴金属イオンまたはニッケルイオンが吸着された請求項1〜3のいずれかの金属吸着剤を得た後、該金属吸着剤をチオ尿素溶液と混合して、前記貴金属イオンまたはニッケルイオンを脱離させることを含む、貴金属イオンまたはニッケルイオンの回収方法。
- アセチル化キトサン微粒子の製造方法であって、酸性水溶液中に溶解したキトサンを、アセチル化剤と界面活性剤とを含有する有機溶媒相に分散させる工程を含む方法。
- 請求項7の方法により製造されたアセチル化キトサン微粒子。
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