JP7198817B2 - 丸編地 - Google Patents
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Description
本発明は、1×1リブジャカード編組織を基本組織とし、非弾性繊維糸と弾性繊維糸によりプレーティング編成された丸編地に関する。
従来から弾性糸が用いられた丸編地が知られている。例えば、リブ編(フライス編)において、綿糸又は化合繊混紡糸と、被覆弾性糸とが交互に並ぶように編成する交編を行うことにより、保湿性、吸湿性、及び適度なフィット性を持たせた丸編地が知られている。
また、丸編地全体を綿糸又は化合繊混紡糸により編成しつつ、一部において弾性糸をプレーティング編成することにより、衛生面で優れ、また着用者の動きへの追従性等に優れた薄地のシングルニットとしての丸編地が得られることが知られている。このような丸編地は、カジュアルウェアやスポーツウェアに広く用いられている。
ところで、丸編地は、その組織の構造上、弾性糸が用いられていなくても、ウエル方向(タテ方向、すなわち円筒状の軸方向)よりもコース方向(ヨコ方向、すなわち円筒状の周方向)の伸縮性が大きくなる。このような丸編地の一部の編成コースに弾性糸が用いられていれば、本来伸縮性に優れたコース方向の伸縮性がさらに高まる。しかし、そのような丸編地は、ウエル方向の伸縮性があまり高まらないため、ウエル方向とコース方向との伸度のバランスが良くない。
これに対し、特許文献1~3に開示されているように、ウエル方向及びコース方向の伸縮性を高めようとする試みがなされている。これらの文献の丸編地では、一部のループに弾性糸が用いられ、そのループがウエル方向へ連続している。そのため、弾性糸が給糸されたコース同士の間で伸縮性が生じることによりウエル方向への伸縮性も高くなっており、全体としてウエル方向、コース方向、及び斜め方向の3方向へ伸縮性が高くなっている。
しかし、ウエル方向とコース方向との伸度のバランスについては、従来から知られている丸編地では十分ではなく、まだ改善の余地があった。また、丸編地に編み柄(すなわち編成時に形成される柄)を形成することも求められていた。
そこで本発明は、ウエル方向とコース方向との伸度のバランスが良く、さらに編み柄を有する丸編地及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の丸編地は、1×1リブジャカード編組織を基本組織とする丸編地において、非弾性繊維糸及び弾性繊維糸がそれぞれフルセットで給糸されてプレーティング編成された丸編地であり、ニットループが全組織のうちの10~90%を占め、タック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方が含まれて、場所による組織の違いが編地表面に編み柄を形成し、14.7N/2.54cmの荷重条件下におけるウエル方向及びコース方向の伸度がそれぞれ100~280%であり、14.7N/2.54cmの荷重条件下における伸度比すなわち(ウエル方向の伸度)÷(コース方向の伸度)が0.5~2.0であることを特徴とする。
また、上記の丸編地において、仕上がりの編密度が105コース/2.54cm以上かつ48ウエル/2.54cm以上であることが望ましい。
また、上記の丸編地において、弾性繊維糸の繊度が11~110dtex、非弾性繊維糸の繊度が11~110dtexであり、弾性繊維糸の繊度:非弾性繊維糸の繊度が、1:0.3~1:4.5であることが望ましい。
また、本発明の丸編地の製造方法は、1×1リブジャカード編組織を基本組織として編成する丸編地の製造方法において、非弾性繊維糸及び弾性繊維糸をそれぞれフルセットで給糸してプレーティング編成を行うとともに、全組織のうちの10~90%をニットループとし、タック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方を形成して、場所による組織の違いにより編地表面に編み柄を形成し、前記の非弾性繊維糸及び弾性繊維糸のそれぞれの給糸において、供給される糸のテンションを監視しながらそのテンションが一定に保たれるよう給糸量を調整することを特徴とする。
本発明の丸編地は、弾性繊維糸がフルセットで給糸されプレーティング編成されたものであり、また上記の伸度及び伸度比を有するため、ウエル方向及びコース方向の伸度が高くしかも両方向への伸度のバランスが良い。
さらに、本発明の丸編地では、ニットループに加えて、タック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方が含まれるため、組織の違いによる様々な編み柄を形成することが可能である。ニットループの比率が高い部分では表面が一様なのに対して、ニットループの比率が低い部分では透け感が生じて表面に変化が生じる。そのため、ニットループの比率が場所により任意に変化することにより、丸編地が、表面に変化のある意匠的に優れたものとなる。
また、本願発明の丸編地では、ニットループが全組織のうちの10~90%を占め、他をタック及びウエルトによる特徴的な部分が占めるため、丸編地が安定している上、編み柄の自由度が高い。
また、本願発明の丸編地では、ニットループが全組織のうちの10~90%を占め、他をタック及びウエルトによる特徴的な部分が占めるため、丸編地が安定している上、編み柄の自由度が高い。
また、本発明の丸編地の製造方法によれば、非弾性繊維糸及び弾性繊維糸をそれぞれフルセットで給糸してプレーティング編成を行うため、ウエル方向とコース方向との伸度のバランスが良い丸編地を製造することができる。さらに、ニットループに加えて、タック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方を形成することにより、組織の違いによる様々な編み柄を有する丸編地を製造することができる。そして、非弾性繊維糸及び弾性繊維糸のそれぞれの給糸において、供給される糸のテンションを監視しながらそのテンションが一定に保たれるよう給糸量を調整するため、ニットループ、タック及びウエルトを自在に形成することができる。
本発明の実施形態について説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
以下の説明において、数値範囲について「下限値~上限値」と表現するが、下限値及び上限値は当然ながらその数値範囲に含まれる。また以下の説明において、「A及びB」、「Aのみ」、「Bのみ」の3つを一括して「A及び/又はB」と表現する場合がある。
また、タック編みにより形成された部分を「タック」と表現し、ウエルト編みにより形成された部分を「ウエルト」と表現する。また、ニットループ、タック及びウエルトの総称を「組織」とする。すなわち、「組織」という表現には、ニットループ、タック及びウエルトが含まれる。ただし、「1×1リブ編組織」、「1×1リブジャカード編組織」、「基本組織」、「地組織」等と表現するときは、その「組織」は、ニットループ、タック及びウエルトの組み合わせからなる広範囲に及ぶ編み組織のことを意味する。
また、タック編みにより形成された部分を「タック」と表現し、ウエルト編みにより形成された部分を「ウエルト」と表現する。また、ニットループ、タック及びウエルトの総称を「組織」とする。すなわち、「組織」という表現には、ニットループ、タック及びウエルトが含まれる。ただし、「1×1リブ編組織」、「1×1リブジャカード編組織」、「基本組織」、「地組織」等と表現するときは、その「組織」は、ニットループ、タック及びウエルトの組み合わせからなる広範囲に及ぶ編み組織のことを意味する。
まず実施形態の丸編地の構造について説明する。
実施形態の丸編地は1×1リブジャカード編組織を基本組織とする丸編地であり、ダブルニットの一種である。1×1リブジャカード編組織は、1×1リブ編組織における組織の一部がニットループ以外の組織(具体的にはタック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方)となった組織であり、ジャカード編成により実現することができる。
1×1リブジャカード編組織は表裏の2層の地組織からなる。表裏の2層の地組織はそれぞれの地組織の糸同士が絡まって連結されており、2層の地組織を連結する連結糸は使用されていない。連結糸が使用されていないため、丸編地の伸度が損なわれにくく、また編成が容易であり、また2層の地組織がずれる等の問題も生じにくい。
実施形態の丸編地は非弾性繊維糸及び弾性繊維糸がそれぞれフルセットで給糸されてプレーティング編成(添え糸編みとも言う)されたものである。従って、実施形態の丸編地では、表裏の2層の地組織の全ての組織が非弾性繊維糸と弾性繊維糸とからなる。そのため、弾性繊維糸がウエル方向及びコース方向に連続して連なることになり、丸編地の両方向への伸度が高くなる。
実施形態の丸編地の編み組織にはニットループが含まれている。また、ニットループの他に、タック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方が含まれている。すなわち、編み組織がニットループとタックとを有する場合と、ニットループとウエルトとを有する場合と、ニットループとタックとウエルトとを有する場合とがある。これら全てのニットループ、タック、及びウエルトは、非弾性繊維糸と弾性繊維糸とからなる。
図1に実施形態の丸編地における1×1リブ編組織を示す。この図では全ての組織がニットループである。また図示されているように全ての組織が非弾性繊維糸4と弾性繊維糸5とからなる。また図2にタックを、図3にウエルトを示す。図2及び図3において、図の中央付近の組織がそれぞれタック又はウエルトになっている。
そして、実施形態の丸編地では、場所による組織の違いが編地表面に編み柄を形成する。すなわち、タックやウエルトの位置では、ニットループの位置と比較して、編地が透けたり編地表面が凹部となったりする。そのため、ニットループの部分と、タック及び/又はウエルトの部分とが組み合わさると、タック及び/又はウエルトの部分が透けた部分(透光部)又は凹部となり、透光部や凹部により編地表面に編み柄が形成される。この編み柄は膨らみ感や透け感を伴う意匠的に優れたものである。
図4に一例としての丸編地1を示す。この丸編地1では、ニットループからなる厚地部分2の中に、複数のタック及び/又はウエルトが集合した薄地部分3が規則的に形成されている。これらの薄地部分3が編地表面における編み柄となっている。
また、一例としては、丸編地の一方の面(例えば生地裏の面すなわち編成時のダイヤル側の面)では全ての組織がニットループで構成され、他方の面(例えば生地表の面すなわち編成時のシリンダ側の面)ではニットループの他にタック及び/又はウエルトが形成されている。
また、一例としては、丸編地の一方の面(例えば生地裏の面すなわち編成時のダイヤル側の面)では全ての組織がニットループで構成され、他方の面(例えば生地表の面すなわち編成時のシリンダ側の面)ではニットループの他にタック及び/又はウエルトが形成されている。
なお、丸編地の編成においては、インターロック組織やリブ(フライス)組織といった基本組織を編成しつつ、その編成中にコンピュータやメカニカルな機構を用いてセミジャカード編成やフルジャカード編成を行って組織を変化させることができる。このような編成が行われると、丸編地に、所定の編み柄がタテ方向やヨコ方向に繰り返されることとなる。この繰り返しの基本となる範囲を「有効柄範囲」とする。従って、「有効柄範囲」がタテ方向やヨコ方向に繰り返されて、丸編地全体となる。
ちなみに、図4においては、1つの薄地部分3とその周囲の厚地部分2とで1つの有効柄範囲が形成されており、この有効柄範囲がタテ方向及びヨコ方向に繰り返されて丸編地1の全体となっている。
ちなみに、図4においては、1つの薄地部分3とその周囲の厚地部分2とで1つの有効柄範囲が形成されており、この有効柄範囲がタテ方向及びヨコ方向に繰り返されて丸編地1の全体となっている。
実施形態の丸編地において、ニットループが全組織のうちの10~90%を占める。すなわち、ニットループの数が、ニットループの数とタックの数とウエルトの数を足した全組織数に対して10~90%である。そして残りをタック及び/又はウエルトが占める。このことを別の方法で表現すれば、(ニットループの数):(タック及び/又はウエルトの数)が9:1~1:9ということになる。なお、この割合は1つの有効柄範囲における割合である。
ニットループが全組織のうちの10~90%を占めることにより、丸編地が安定したものとなり、また、編み柄の自由度が高まる。
また、ニットループが全組織のうちの20%以上、さらには35%以上を占めることが、より好ましい。
また、実施形態の丸編地では、仕上がりの編密度が105コース/2.54cm以上かつ48ウエル/2.54cm以上であることが望ましい。丸編地の仕上がりの編密度は、その丸編地を縫製して出来た衣類等の編密度と等しい。ただし、縫製時の負荷等が原因で、縫製後の衣類等の編密度が丸編地の仕上がりの編密度と部分的に若干異なることがある。
実施形態の丸編地は、このような編密度となると、ウエル方向及びコース方向に十分な伸度を有するものとなる。そしてその丸編地から出来た衣類は着心地の良いものとなる。
次に実施形態の丸編地に使用される糸について説明する。まず弾性繊維糸について説明する。
実施形態の丸編地に使用される弾性繊維糸の繊度は11~110dtex(デシテックス)である。弾性繊維糸の繊度がこの範囲内であると、丸編地にランが発生しにくく、また丸編地がウエル方向及びコース方向に十分な伸度を有するものとなる。また弾性繊維糸の繊度が110dtex以下であると丸編地に「目返り」と呼ばれる現象(すなわち、弾性繊維糸が、非弾性繊維糸よりもループの外周側に出て編地表面に現れ、丸編地の外観が損なわれる現象。良品では非弾性繊維糸が弾性繊維糸よりもループの外周側に出て編地表面に現れる。)が発生しにくい。
より望ましい弾性繊維糸の繊度は15~33dtexである。弾性繊維糸の繊度がこの範囲内であれば、さらにラン及び目返りが発生しにくく、また丸編地がウエル方向及びコース方向に十分な伸度を有するものとなる。
また、弾性繊維糸の破断伸度が400%~1200%であると、伸縮性に優れるので望ましい。なお破断伸度はJIS-L-1013-1998の伸び率標準試験の方法で測定される破断強度である。更に、弾性繊維糸は、プレセット時の温度である195℃付近の温度で伸縮性が損なわれないものであることが望ましい。
弾性繊維糸は具体的にはポリウレタン系弾性繊維糸である。ポリウレタン系弾性繊維糸としてはポリエーテル系ウレタン弾性糸が好ましいが、ポリエーテルエステル系弾性糸等でも良い。
ポリウレタン系弾性繊維糸としては例えば乾式紡糸又は溶融紡糸したものが使用できる。また、ポリウレタン系弾性繊維糸のポリマーや紡糸方法には限定されない。
次に実施形態の丸編地に使用される非弾性繊維糸について説明する。
実施形態の丸編地に使用される非弾性繊維糸の繊度は11~110dtexである。非弾性繊維糸の繊度がこの範囲内であると、丸編地にランが発生しにくく、また丸編地がウエル方向及びコース方向に十分な伸度を有するものとなる。また繊度が11dtex以上であると丸編地に目返りが発生しにくい。
より望ましい非弾性繊維糸の繊度は17~33dtexである。非弾性繊維糸の繊度がこの範囲内であれば、さらにラン及び目返りが発生しにくく、また丸編地がウエル方向及びコース方向に十分な伸度を有するものとなる。
実施形態の丸編地に使用される非弾性繊維糸は、フィラメント糸及び紡績糸のいずれであっても良い。フィラメント糸としては、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、アセテート繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維等の化合繊等からなるものが望ましく、繊維の形態としては、加工の施されていない原糸、仮撚加工糸、先染糸等のいずれであってもよく、これらの複合糸であっても良い。紡績糸としては、木綿、羊毛、麻等の天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、アセテート繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維等の化合繊からなる短繊維を用いたものが望ましく、これらは単独及び混紡されたもののいずれであっても良い。
また、実施形態の丸編地に使用される非弾性繊維糸として、少なくとも2種類の光沢及び/又は繊度の異なる非弾性糸が用いられることが好ましい。非弾性繊維糸として2種類の繊度の異なる非弾性糸が用いられる場合は、その繊度比が1:0.5~1:4であることが好ましい。
また、実施形態の丸編地に使用される糸に関して、弾性繊維糸の繊度:非弾性繊維糸の繊度が、1:0.3~1:4.5である。より望ましい比率としては、弾性繊維糸の繊度:非弾性繊維糸の繊度が、1:0.5~1:1.5である。また、より望ましい形態としては、弾性繊維糸の繊度が11~110dtexで非弾性繊維糸の繊度が11~110dtexであるという条件下で、弾性繊維糸の繊度:非弾性繊維糸の繊度が、1:0.3~1:4.5(又は1:0.5~1:1.5)である。
また、実施形態の丸編地に使用される糸の総繊度(すなわち非弾性繊維糸の繊度と弾性繊維糸の繊度とを足した繊度)は、22~310dtexが望ましく、22~122dtexがより望ましい。
次に、実施形態の丸編地における上記以外の特徴について説明する。
実施形態の丸編地は、14.7N/2.54cmの荷重条件下におけるウエル方向及びコース方向の伸度がそれぞれ100~280%であり、14.7N/2.54cmの荷重条件下における伸度比すなわち(ウエル方向の伸度)÷(コース方向の伸度)が0.5~2.0である。
伸度が100%以上であることにより、この丸編地を用いた衣類が身体にフィットし、また突っ張り感を感じさせず、従って着心地の良いものとなる。また伸度が100%以上であることにより、丸編地を用いた衣類を着脱するときに余分な力が必要なくなる。また、伸度が280%以下であることにより、弾性繊維糸の伸縮疲労が抑えられて耐久性が維持され、また生地の強度が確保される。また伸度比が0.5~2.0であることにより、丸編地を用いた衣類が着心地等に優れたものとなる。
14.7N/2.54cmの荷重条件下におけるウエル方向及びコース方向の伸度のより望ましい範囲は、それぞれ120~250%である。また、14.7N/2.54cmの荷重条件下における伸度比のより望ましい範囲は、0.8~1.2である。伸度又は伸度比がこれらの範囲内であれば、丸編地を用いた衣類の着心地が良い等の効果がさらに大きなものとなる。
ここで、本発明における伸度とは、JIS-L-1096の伸び率試験B法(定荷重法)に準拠して幅2.54cmの試験片について測定したときの伸度のことである。また、14.7N/2.54cmという荷重条件は、平均的な人が衣類を着用して日常生活上の動作をしたときに衣類に負荷される荷重の条件を再現したものである。なお、14.7N/2.54cmとは、幅2.54cmの試験片に14.7Nの荷重を負荷することを意味する。
また、実施形態の丸編地は、22.1N/2.54cmの荷重条件下におけるウエル方向及びコース方向の伸度がそれぞれ120~300%であり、22.1N/2.54cmの荷重条件下における伸度比すなわち(ウエル方向の伸度)÷(コース方向の伸度)が0.5~2.0であることが望ましい。22.1N/2.54cmの荷重条件下におけるウエル方向及びコース方向の伸度のより望ましい範囲は、それぞれ140~270%である。また、22.1N/2.54cmの荷重条件下における伸度比のより望ましい範囲は、0.8~1.2である。
ここで、22.1N/2.54cmという荷重条件は、平均的な人が衣類を最大限引っ張るような動作をしたときに衣類に負荷される荷重の条件を再現したものである。なお、22.1N/2.54cmとは、幅2.54cmの試験片に22.1Nの荷重を負荷することを意味する。
次に、実施形態の丸編地の製造装置及び製造方法の一例について説明する。
実施形態の丸編地の製造装置は、編目位置毎にニットループ、タック及びウエルトの変化を付けるジャカード編成が可能で、かつ高密度の編成が可能な丸編機と、組織の種類毎に給糸量を変化させることができる電気制御式給糸装置との組み合わせによって実現される。
丸編機は、シリンダ側とダイヤル側の二列の針床を有する丸編機(いわゆるダブルニット丸編機)のうち、シリンダ側の編針とダイヤル側の編針との位置が編針列の半ピッチ分ずれているもの(いわゆる「リブ出会い」となっているもの)である。また丸編機は、ジャカード編成を行うための電気制御式選針機構を有する。また、丸編機のゲージ数は、高密度編成を可能とするために32~40ゲージが望ましく、36~40ゲージがさらに望ましい。
ここで、ニットループ、タック及びウエルトを形成するために必要とされる給糸量はそれぞれ異なる。そこで、ニットループ、タック及びウエルトの変化を付けるジャカード編成を行うために、給糸装置として、組織毎に適切な糸量を供給できるものが用いられる。
具体的には、給糸装置は、丸編機に向かって供給される糸のテンションを監視する監視装置(例えばロードセル)を有する。さらに、給糸装置は、監視装置が検出する糸のテンションに基づき給糸量を調整して、糸のテンションを一定に保つように制御する制御装置を有する。糸のテンションを一定に保つように制御することにより、組織が変化しても、その組織に適した糸量を安定して供給することができる。このような給糸装置は、非弾性繊維糸及び弾性繊維糸の両方の給糸に用いられる。
このような丸編機の製造装置を用いて上記の実施形態の丸編地が編成される。このとき、非弾性繊維糸及び弾性繊維糸がそれぞれフルセットで給糸されて引き揃えられたうえ、プレーティング編成される。また、丸編地の表裏の2層の地組織は、丸編機のダイヤル側とシリンダ側の二列の針床でそれぞれ編成される。このときジャカード編成が行われ、ニットループの他にタック及び/又はウエルトが形成される。一例としては、ダイヤル側の編針は全ての編目位置でニットループを編成し、シリンダ側の編針は、規則的に制御されて、所定の編目位置でニットループを編成し、別の所定の編目位置でタック及び/又はウエルトを編成する。
ここで、透け感を有する丸編地を編成する方法の一例としては、奇数フィーダと偶数フィーダから給糸される糸の繊度比率を高くする(例えば、一方のフィーダから給糸される糸の繊度に対する、他方のフィーダから給糸される糸の繊度の比率を、40%以下又は140%以上とする)。そして、丸編地全体を繊度の大きな糸で編成しつつ、透光部としたい部分を繊度の小さな糸で編成することで、部分的に透光部が形成された透け感のある丸編地を得ることができる。
また、透け感を有する丸編地を編成する方法の別の一例としては、表現したいデザインに合わせてタック、ウエルト、及びニットループを規則的に組み合わせることにより、タック特有の透け感を利用した全体としても透け感のある丸編地を得ることができる。これらの例を実現するために、上記の電気制御式選針機構を有する丸編機と電気制御式給糸装置とを使用することが重要である。
この編成中、前記の給糸装置が、給糸される非弾性繊維糸及び弾性繊維糸のテンションを監視しながらそのテンションが一定に保たれるよう給糸量を調整する。それにより各組織に適した給糸が行われる。
完成した生機に対し、例えば開反、精練、プレセット(乾熱セット)、染色、樹脂加工等の仕上げ、乾燥、ファイナルセットを行う。これらの工程を経て完成した丸編地の編密度が、上記の仕上がりの編密度である。
完成した丸編地は、裁断や縫製等の工程を経て衣類等の製品となる。衣類としては、例えばインナーウェア、カジュアルウェア、及びスポーツウェアが挙げられる。衣類の全体がこの丸編地から構成されていても良いし、衣類の一部のみにこの丸編地が用いられていても良い。
次に実施例及び比較例について説明する。
下記の実施例及び比較例の丸編地の評価を行った。評価項目及び評価方法は次の(1)~(3)の通りである。
(1)伸度の評価
ウエル方向の伸度の試験片としてタテ方向(ウエル方向)に16cmでヨコ方向(コース方向)に2.54cmの試験片を3枚用意し、また、コース方向の伸度の試験片としてタテ方向に2.54cmでヨコ方向に16cmの試験片を3枚用意した。測定には定速伸長型引張試験機(オートグラフ、(株)島津製作所製、AG-500D)を用いた。試験片つかみ部が歯形形状のチャック治具を用い、上部つかみ長2.5cm、下部つかみ長3.5cm、チャック間隔10cm、試験片把持圧490kPaとした。そして、引張速度を30cm/分とし、14.7N荷重時の伸度を測定した。測定後、3枚の試験片の伸度の平均値を算出した。
ウエル方向の伸度の試験片としてタテ方向(ウエル方向)に16cmでヨコ方向(コース方向)に2.54cmの試験片を3枚用意し、また、コース方向の伸度の試験片としてタテ方向に2.54cmでヨコ方向に16cmの試験片を3枚用意した。測定には定速伸長型引張試験機(オートグラフ、(株)島津製作所製、AG-500D)を用いた。試験片つかみ部が歯形形状のチャック治具を用い、上部つかみ長2.5cm、下部つかみ長3.5cm、チャック間隔10cm、試験片把持圧490kPaとした。そして、引張速度を30cm/分とし、14.7N荷重時の伸度を測定した。測定後、3枚の試験片の伸度の平均値を算出した。
(2)伸度比
上記伸長率の測定結果に基づき次の式にて算出した。
伸度比=(ウエル方向の伸度)÷(コース方向の伸度)
上記伸長率の測定結果に基づき次の式にて算出した。
伸度比=(ウエル方向の伸度)÷(コース方向の伸度)
(3)ランの評価
丸編地の編み終わり端よりタテ方向に切れ目を入れ、切れ目近傍の編み目を爪でしごき、ランの発生の有無を目視で評価した。評価結果を次のように〇×で示す。
○:切れ目端よりランの発生無し
×:切れ目端よりランの発生あり
丸編地の編み終わり端よりタテ方向に切れ目を入れ、切れ目近傍の編み目を爪でしごき、ランの発生の有無を目視で評価した。評価結果を次のように〇×で示す。
○:切れ目端よりランの発生無し
×:切れ目端よりランの発生あり
(4)編み柄の評価
ニットループ、タック、及びウエルトの違いに基づく編み柄の有無を評価した。
ニットループ、タック、及びウエルトの違いに基づく編み柄の有無を評価した。
(5)編み品位の評価
目視で編み品位(主に目返りの有無)を評価した。評価結果を次のように〇×で示す。
○:編み品位が良好
×:編み品位が良好でない
目視で編み品位(主に目返りの有無)を評価した。評価結果を次のように〇×で示す。
○:編み品位が良好
×:編み品位が良好でない
(実施例1)
編機として(株)福原精機製作所製のダブルニット丸編機M-LEC7BSD(38インチ径、36ゲージ)を用いた。また給糸装置としてイタリアLGL社製のE-COMPACT ATTIVOとSPINIを用いた。この給糸装置を用いて、22dtex20fのナイロンフィラメント糸と22dtexのポリウレタン糸(旭化成せんい(株)製 ロイカ(登録商標)C805)とを同じフィーダからダイヤル及びシリンダ両面の針に同時に給糸し、編地の両側の表面にナイロンフィラメント糸が現れてその内側にポリウレタン糸が配置されるようにして、1×1リブジャカード編組織を基本組織とする丸編地(ダブルニット)を編成した。なおナイロンフィラメント糸及びポリウレタン糸はフルセットで給糸した。またニットループを全組織のうちの50%とした。
編機として(株)福原精機製作所製のダブルニット丸編機M-LEC7BSD(38インチ径、36ゲージ)を用いた。また給糸装置としてイタリアLGL社製のE-COMPACT ATTIVOとSPINIを用いた。この給糸装置を用いて、22dtex20fのナイロンフィラメント糸と22dtexのポリウレタン糸(旭化成せんい(株)製 ロイカ(登録商標)C805)とを同じフィーダからダイヤル及びシリンダ両面の針に同時に給糸し、編地の両側の表面にナイロンフィラメント糸が現れてその内側にポリウレタン糸が配置されるようにして、1×1リブジャカード編組織を基本組織とする丸編地(ダブルニット)を編成した。なおナイロンフィラメント糸及びポリウレタン糸はフルセットで給糸した。またニットループを全組織のうちの50%とした。
編成された丸編地を精練し、その後、ベンゼンスルホン酸ソーダ4.0重量%、不揮発性酸として酒石酸1.0重量%、キレート剤としてEDTA0.1重量%の水溶液を作製し、その常温処理液に5秒浸漬した後、温度195℃にて1分間、乾熱セットした。その後染料としてAminyl Yellow FD-3RL(住友化学工業(株)製)0.3%o.w.f.(on weight fabric)、Aminyl RedFD-GL(住友化学工業(株)製)0.3%o.w.f.、Aminyl BlueFD-GL(住友化学工業(株)製)0.3%o.w.f.を用い、液流染色機により100℃で通常処方で染色を行った。その後ファイナルセットを行い、仕上げ密度が130コース/2.54cm、73ウエル/2.54cmの丸編地を得た。
(実施例2)
ニットループの割合を26%とした。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
ニットループの割合を26%とした。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
(実施例3)
ニットループの割合を80%とした。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
ニットループの割合を80%とした。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
(比較例1)
実施例1における1×1リブ編みをインターロック編み(1×1リブ編みを二重に重ねる編成で、スムース編みとも呼ばれるもの)に変更した。ニットループの割合は100%であった。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
実施例1における1×1リブ編みをインターロック編み(1×1リブ編みを二重に重ねる編成で、スムース編みとも呼ばれるもの)に変更した。ニットループの割合は100%であった。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
(比較例2)
ナイロンフィラメント糸とポリウレタン糸によるプレーティング編成を行うのではなく、22dtexのポリウレタン糸に77dtex36fのナイロンフィラメント糸をカバリングしたカバリング糸のみを用いて編成を行った。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
ナイロンフィラメント糸とポリウレタン糸によるプレーティング編成を行うのではなく、22dtexのポリウレタン糸に77dtex36fのナイロンフィラメント糸をカバリングしたカバリング糸のみを用いて編成を行った。その他については実施例1のときと同様に編成及び加工した。
以上の実施例及び比較例の評価結果を表1及び表2に示す。なお表1及び表2における「1×1リブ編み」、「ポリウレタン糸がフルセット」及び「プレーティング編成」の項目における〇はその項目の記載事項を行ったことを意味し、×は行わなかったことを意味する。
1…丸編地、2…厚地部分、3…薄地部分、4…非弾性繊維糸、5…弾性繊維糸
Claims (6)
- 1×1リブジャカード編組織を基本組織とする丸編地において、
非弾性繊維糸及び弾性繊維糸がそれぞれフルセットで給糸されてプレーティング編成された丸編地であり、
ニットループが全組織のうちの10~90%を占め、タック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方が含まれて、場所による組織の違いが編地表面に編み柄を形成し、
14.7N/2.54cmの荷重条件下におけるウエル方向及びコース方向の伸度がそれぞれ100~280%であり、
14.7N/2.54cmの荷重条件下における伸度比すなわち(ウエル方向の伸度)÷(コース方向の伸度)が0.5~2.0であることを特徴とする丸編地。 - 仕上がりの編密度が105コース/2.54cm以上かつ48ウエル/2.54cm以上である、請求項1に記載の丸編地。
- 弾性繊維糸の繊度が11~110dtex、非弾性繊維糸の繊度が11~110dtexであり、
弾性繊維糸の繊度:非弾性繊維糸の繊度が、1:0.3~1:4.5である、
請求項1又は2に記載の丸編地。 - 前記非弾性繊維糸として少なくとも2種類の非弾性糸が用いられた、請求項1~3のいずれか1項に記載の丸編地。
- 前記非弾性繊維糸として繊度の異なる2種類の非弾性糸が用いられ、その繊度比が1:0.5~1:4である、請求項4に記載の丸編地。
- 1×1リブジャカード編組織を基本組織として編成する丸編地の製造方法において、
非弾性繊維糸及び弾性繊維糸をそれぞれフルセットで給糸してプレーティング編成を行うとともに、
全組織のうちの10~90%をニットループとし、タック及びウエルトのうち少なくともいずれか一方を形成して、場所による組織の違いにより編地表面に編み柄を形成し、
前記の非弾性繊維糸及び弾性繊維糸のそれぞれの給糸において、供給される糸のテンションを監視しながらそのテンションが一定に保たれるよう給糸量を調整することを特徴とする丸編地の製造方法。
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