JPH07145540A - 丸編地およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】弾性糸を使用した場合でも丸編組織中に充分な
大きさの開孔部が設けられ、レースと同様の意匠効果を
有するレース調の丸編地を提供する。 【構成】（１）１ないし５ループごとに目移し組織が点
在するシングル編地中に、任意な形状のダブル編地が混
在することを特徴とする丸編地、（２）ダブル丸編機を
使用して丸編地を編成するに際し、ダブル丸編機の一方
の針床のみを使用してシングル編地を編成すると同時
に、該シングル編地中の１ないし５ループごとにダブル
丸編機の他方の針床の針に給糸し、その後直ちに該針に
対峙する前記シングル編地用針床の針に目移しを行って
目移し組織を形成させ、かつ該目移し組織が点在するシ
ングル編地中に任意な形状のダブル編地を編成すること
を特徴とする丸編地の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は丸編地およびその製造方
法に関し、さらに詳しくは小寸丸編機により製造される
インナーなどに好適なレース調の丸編地およびその製造
方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来からインナー（内衣）やミドラー
（中衣）に好適な編地の製造方法としては、釜径１２〜
１８インチの小寸丸編機により編地を製造した後、上下
を所定の形状に裁断、縫製を行う方法が知られている。
またスリップなどのインナーでは、胸元や裾部分にレー
スを縫合して高級感を持たせているが、この方法ではレ
ースの部品代や縫合費がかかり、コスト高となる欠点が
あり、しかもレースとの縫合部がごろつき、着用感に劣
る商品となっていた。

【０００３】このような欠点を解消するため、身頃とレ
ース部とを一体化する試みとして、目移し機構を有する
小寸丸編機を使用し、ダブル編地のダイヤル針のループ
をシリンダ針へまたはシリンダ針のループをダイヤル針
へ目移しすることにより得られる開孔部を利用してレー
ス調編地とする方法が提案されている。しかし、この方
法では開孔部が小さく、特に編地にストレッチ性を持た
せるためにＦＴＹ（ポリウレタン弾性糸にナイロン、ポ
リエステルなどの長繊維をカバリングした糸）などの弾
性糸を含有する糸を交編した場合には編成後の編地が収
縮し、小さな開孔部がますます小さくなりレース調とは
いえない編地となる。従って、弾性糸を含有する編地で
は、編地を製造した後にレースを縫合する従来の方法を
採らざるを得なかった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術の問題を解決し、弾性糸を使用した場合でも丸編組織
中に充分な大きさの開孔部が設けられ、レースと同様の
意匠効果を有するレース調の丸編地を提供するものであ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
に鑑み、ダルブの丸編機において目移し組織を編成する
際、天竺組織のループを目移しするには、ダブル丸編機
の一方の針床を１針ずらしてラッキング運動させないと
不可能であることから、天竺組織のループ移動は行わ
ず、天竺組織中に開孔部を設ける方法について鋭意検討
した結果、天竺編成で使用している針床に相対する他の
針床の針に糸を給糸した後、直ちに対峙する前記天竺編
成用の針に目移しする方法により天竺組織中に開孔部が
得られることを見出し、本発明に到達した。

【０００６】すなわち、本願で特許請求される発明は以
下の通りである。 （１）１ないし５ループごとに目移し組織が点在するシ
ングル編地中に、任意な形状のダブル編地が混在するこ
とを特徴とする丸編地。 （２）ダブル丸編機を使用して丸編地を編成するに際
し、ダブル丸編機の一方の針床のみを使用してシングル
編地を編成すると同時に、該シングル編地中の１ないし
５ループごとにダブル丸編機の他方の針床の針に給糸
し、その後直ちに該針に対峙する前記シングル編地用針
床の針に目移しを行って目移し組織を形成させ、かつ該
目移し組織が点在するシングル編地中に任意な形状のダ
ブル編地を編成することを特徴とする丸編地の製造方
法。

【０００７】本発明でいうシングル編地とは、ダブルの
丸編機の一方の針床のみを使用して得られる天竺編地の
ことをいう。この天竺編地ループの１〜５ループごとに
目移し組織が点在する。すなわち、シングル編地中の目
移し組織と目移し組織との間隔はコース方向およびウエ
ール方向ともに１〜５ループであり、目移し組織間には
天竺編のループが残存する。

【０００８】図１は、本発明の目移し組織が点在したシ
ングル編地の一例を示す組織図である。図１において、
Ａ〜Ｄは編み順を示し、１、３、５、７、９、１１は丸
編機のダイヤル針、２、４、６、８、１０、１２はシリ
ンダ針を示し、針の出合いは目移し可能となっている。
まず、編み順Ａでは、全てのダイヤル針に給糸して編目
を作り、天竺組織を編成する。次に編み順Ｂでは、全て
のダイヤル針に編目を作るとともに、シリンダ針に１針
おきに編目を作り、その後直ちに対峙するダイヤル針に
目移しする。すなわち、針２のループは針１に、針６の
ループは針５に、針１０のループは針９にそれぞれ目移
しを行う。編み順Ｃでは、Ａと同様にダイヤル針のみに
天竺組織を編成し、編み順Ｄでは、Ｂと同様にシリンダ
針に１本おきに給糸して直ちに対峙するダイヤル針に目
移しするが、この時のシングル針への給糸は、編み順Ｂ
の針から１針ずらして行う。編み順Ａ〜Ｄを繰返すこと
により、目移し組織と目移し組織との間隔がコース方向
に１ループ、ウエール方向に３ループ開いた状態で目移
し組織が点在したシングル編地が得られる。

【０００９】図２は、本発明の目移し組織が点在したシ
ングル編地の他の組織図である。図２において、編み順
Ａでは全てのダイヤル針に給糸するとともに、シリンダ
針２、６、１０に１本おきに給糸した後、直ちに該シリ
ンダ針２、６、１０のループを対峙するダイヤル針１、
５、９へ目移しする。次に編み順Ｂでもダイヤル針の全
てに給糸するとともに、前記シリンダ針２、６、１０か
ら１針ずらしたシリンダ針４、８、１２に１本おきに給
糸し、直ちに該シリンダ針４、８、１２のループを対峙
するダイヤル針３、７、１１へ目移しする。この編み順
Ａ、Ｂを繰返すことにより、目移し組織と目移し組織の
間隔がコース方向、ウエール方向ともに１ループ開いた
状態で目移し組織が点在する編地が得られる。

【００１０】本発明において、目移し組織が点在するシ
ングル編地では、目移し組織と目移し組織との間隔はコ
ース方向、ウエール方向ともに１〜５ループ以内にする
ことが重要であり、間隔が６ループ以上になるとレース
調の編地が得られない。また目移し組織となるシリンダ
針への給糸は１針ごとには限られず、２〜３針連続して
給糸してもよいが、あまり連続し過ぎると目落ちが生じ
易く、また編地も美しく編み上がらなくなる。

【００１１】本発明の目移し組織の製造には、シリンダ
からダイヤルへ目移しが可能なダブル丸編機が使用され
る。このような編機としては、例えばスイスのＤＵＢＩ
ＥＤ社製、ＴＲＡＮＳＮＩＴが挙げられる。この編機に
よればコンピュータ制御により、任意な柄や目移しが簡
単に行うことができる。また編機のゲージは１２〜２０
ゲージが適切であり、釜径は１０〜２０インチのものが
インナーやミドラーの製造に適している。

【００１２】本発明の丸編地は、上述した目移し組織が
点在するシングル編地中に任意な形状のダブル編地が混
在したものである。ここでダブル編地とは、ダイヤルと
シリンダを使ったダブルの組織からなる編地で、例えば
ゴム、スムース、ポンチローマといった任意な組織が選
定できる。図３には、目移し組織が点在するシングル編
地中にダブルの編地が混在する編地の一例を示した。図
３において、１３は目移し組織が点在するシングル編
地、１４はダブル編地を示す。

【００１３】図４は、本発明の丸編地における目移し組
織を有するシングル編地とダブル編地の接続部の一例を
示す組織図である。図４において、ａ部はダブル組織の
ゴム編部であり、ｂ部は目移し組織部である。編み順Ａ
において、ｂ部ではシリンダ針に一針おきに給糸された
ループが対峙するダイヤル針に目移されて開孔部が形成
される。この操作を編み順Ｂ〜Ｄに示すようにシングル
針への給糸を１針づつずらして同様に行う。この操作に
より編み順Ｂ以降では、目移し組織部（ｂ部）の移動に
従ってダブル編地のａ部の位置も徐々に移動する。この
ようにａ部の位置を移動させることにより任意な形状の
ダブル編地による柄が編成できる。

【００１４】本発明の丸編地に用いられる糸としては、
綿糸、羊毛、麻などのほか、ポリエステル、ナイロン、
アクリル、キュプラ、レーヨンなど任意の糸の使用が可
能であり、また交撚、混紡、交編などにより２種以上の
糸を混合してもよい。また丸編地にストレッチ性を付与
するために弾性糸を編成してもよい。弾性糸としては、
ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポ
リブチレンテレフタレート系などの糸が用いられ、これ
らは単独で用いても、または弾性糸を芯にし、この周り
をナイロン、ポリエステル、アクリル、綿などの非弾性
糸で覆ったＦＴＹ、ＣＳＹ（ポリウレタン弾性糸に綿
糸、アクリル紡績糸などの短繊維をカバリングした糸）
などを用いてもよい。

【００１５】弾性糸を使って丸編地を編成する方法とし
ては、弾性糸と非弾性糸を引き揃えたプレーティングと
いわれる方法、非弾性糸と交互に編成する方法などを採
用することができ、目的とするストレッチ性に合わせて
任意に選択すればよい。例えば、図１の組織図におい
て、編み順Ａ、Ｃのダイヤル針のみに給糸する部分には
ＦＴＹを使用し、Ｂ、Ｄの目移し組織には綿糸を使うな
ど方法、また図４の組織図においては、編み順Ａ、Ｃに
はＦＴＹを、編み順Ｂ、Ｄには綿糸を用いて編成する方
法が挙げられる。図４のダブル編地の部分（ａ部）で表
面にＦＴＹを出したくない場合は、編み順Ａ、Ｃのａ部
でＦＴＹをシリンダ針へ給糸せず、ダイヤル針のみに給
糸するようにすれば、ダブル編地の部分の表面は全て綿
糸で編成される。この場合のダブル編地の組織はＦＴＹ
と綿糸との片袋となる。

【００１６】本発明の丸編地は、通常の染色、仕上げ等
を施すことにより、レース調の丸編地とされるが、小寸
編機での編成時の途中で、例えば全てをゴム編みとする
などの組織変更を行って編成することにより、ゴム編み
の身頃部に連続して編成されたレース調の編地を有す
る、レースの縫合部のない、従来にない新しい商品を得
ることができる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。 実施例１ １４ゲージ、釜径１４インチの目移し機構を有する丸編
機（ＤＵＢＩＥＤ社製、ＴＲＡＮＳＮＩＴ）を使用し、
図５に示す編地を編成してスリップを縫製した。給糸は
８給糸で、給糸口Ｎｏ．１、３、５、７に綿６０１−Ｓ
を用い、給糸口Ｎｏ．２、４、６、８にＣＳＹ ４０／
６０（ポリウレタン４０ｄに、綿糸６０１−Ｓをカバリ
ングした糸）を用いた。目移し組織は図１に示す組織と
し、ＣＳＹを編み順Ａ、Ｃに、綿糸をＢ、Ｄに配置し
た。

【００１８】編成は図５の下方から順に開始した。ま
ず、目移し組織が点在するシングル編地１３中に、花柄
のダブル編地１４が混在したレース調の編地を編成し、
次に身頃部１５では、ＣＳＹが天竺編、綿糸がゴム編の
片袋編みとして編成を続けた後、身頃部１５の中央部か
ら徐々に目移し組織が点在するシングル編地１３に移行
させ、花柄のダブル編地１４が混在したレース調の編地
を編成し、身頃部１５の上下にレース調の編地が一体と
して接続された丸編地を得た。この編地を綿糸、ＣＳＹ
（綿糸）ともほぼ同色に染色し、筒状のまま幅３４cmの
型枠に入れてスチームセットして仕上げた。

【００１９】縫製では、胸元を大きく開けたＶカット状
のデザインとし、カット、縫製によりスリップを製造し
た。得られたスリップは、身体によくフィットしたレー
ス調編地のスリップとなり、身頃とレース調編地が一体
化され、また同じ糸使いであるため、ストレッチ性がほ
ぼ同じで着用時の違和感がなく、さらに脇やレース付け
部の縫合部がないのでごろつかず、着心地が非常によい
ものであった。

【００２０】実施例２ １４ゲージ、釜径１６インチの目移し機構を有する丸編
機（ＤＵＢＩＥＤ社製、ＴＲＡＮＳＮＩＴ）を使用し、
図３に示す編地を編成してボディスーツを縫製した。給
糸は８給糸で、給糸口Ｎｏ．１、３、５、７にナイロン
／綿糸の交絡糸（ナイロン４０ｄ、綿糸８０１−Ｓ）を
使用し、給糸口Ｎｏ．２、４、６、８にＦＴＹ ７０／
４０（ポリウレタン７０ｄに、ナイロン４０ｄをカバリ
ングした糸）を用いた。目移し組織には図２の組織を用
いた。また目移し組織が点在する編地中のダブル編地の
部分は図４に示すゴム編みとし、ナイロン／綿糸とＦＴ
Ｙが交互に表面に出るようにして編成し、レース調の丸
編地を得た。この丸編地を、ナイロン、綿ともほぼ同色
に染色し、筒状のまま幅３６cmの型枠に入れてスチーム
セット仕上げを行った。縫製では、ボディスーツの形状
にカット後、バストカップを縫合し、胸元、襟の始末を
行い製品とした。得られたボディスーツは、レース調の
編地がよく生かされた、美しく、フィット性に優れる製
品であった。

【００２１】

【発明の効果】本発明の丸編地およびその製造方法によ
れば、１〜５ループごとに目移し組織が点在するシング
ル編地中に任意な形状のダブル編地が混在するため、弾
性糸を使用した場合でもレースと同様の意匠効果が得ら
れる。また別組織の身頃部と連続してレース調の編地を
編成することができるため、高価なレースが不用でレー
ス縫合の手間もなく、コトス低減が可能である。さらに
身頃部とレース調編地の縫合部がなく、ストレッチ性を
ほぼ同じくすることができるため、着用時の違和感がな
く、ごろつかず、着心地性に優れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の目移し組織が点在したシングル編地の
一例を示す組織図。

【図２】本発明の目移し組織が点在したシングル編地の
他の例を示す組織図。

【図３】本発明の目移し組織が点在するシングル編地中
にダブル編地が混在した丸編地の一例を示す図。

【図４】本発明の丸編地における目移し組織を有するシ
ングル編地とダブル編地の接続部の一例を示す組織図。

【図５】実施例１で編成した身頃部とレース調の編地が
一体化した丸編地の平面図。

【符号の説明】

１、３、５、７、９、１１…ダイヤル針、２、４、６、
８、１０、１２…シリンダ針、１３…目移し組織が点在
するシングル編地、１４…ダブル編地、１５…身頃部、
Ａ〜Ｄ…編み順、ａ…ダルブ編地のゴム編み部、ｂ…目
移し組織部。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 １ないし５ループごとに目移し組織が点
   在するシングル編地中に、任意な形状のダブル編地が混
   在することを特徴とする丸編地。
2. 【請求項２】 ダブル丸編機を使用して丸編地を編成す
   るに際し、ダブル丸編機の一方の針床のみを使用してシ
   ングル編地を編成すると同時に、該シングル編地中の１
   ないし５ループごとにダブル丸編機の他方の針床の針に
   給糸し、その後直ちに該針に対峙する前記シングル編地
   用針床の針に目移しを行って目移し組織を形成させ、か
   つ該目移し組織が点在するシングル編地中に任意な形状
   のダブル編地を編成することを特徴とする丸編地の製造
   方法。