JP3670937B2 - 立体構造編地 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛軟度が異なる部分を有する一体構造の立体構造編地に関する。
【0002】
【従来の技術】
2列針床経編機によって得られる適度な厚みと適度な反発性(クッション性)を有する立体構造編地は、種々の応用分野で利用されている。
応用分野によって求められる性能も種々のものがあり、例えばサポータや膝当或いは下着等ではクッション性の他に部分的に硬い部分と柔らかい部分とが併存する性質も必要となっている。
例えば、下着であるブラジャーについていうと、その体型補正機能の向上や最適な使用感を得るため、そのカップ部素材として一部分を硬く、その他の部分は柔らかくするような併存構造が必要である。
製品にこのような部分的に剛軟度の異なる性能を付与するためには、それぞれの箇所に適合する物性を有する立体構造編地をパーツとして縫い合わせることになる。
【0003】
そのため、この縫製処理による手段を採用した場合には、製造する側にとっては、パーツ数量が増加する問題の他、パーツを目的の形状に裁断する工程やこれらのパーツを縫い合わせる工程が増加し、作業が複雑化して、結果的にコスト高となる。
そして、種類の異なる立体構造編地のパーツを縫い合わせるため、その厚みや特有の物性によってパッカリングや段差が生じたり、見栄えが悪くなるなどの品質上の問題があった。
また使用する側にとっては、縫製箇所の存在により必ずしも満足する使いごごちを期待できないものであった。
【0004】
これらの複雑な縫製処理を極力、回避する手段として、モールド成型による方法が開発されている。
すなわち、特開平11−12809号公報で示されるように、低軟化ポリエステルと高軟化ポリエステルとの交編地をモールド成型して縫製を簡略化し、部分的に剛軟度の異なるカップ部を形成する方法である。
しかし、このモールド成型法においても、縫製処理工程が簡略化されるものの、ポリエステルを、一端、軟化或いは溶融しつつプレス固化する工程を経るため、繊維構造体特有の優れた可撓性が阻害される他、編目が塞がれ通気性が低下し不快感をもたらす。
また編目特有の凹凸が減少し肌に面接触することとなり、べたつきを生じたり表面が硬化し肌触りを悪くするなどの問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような技術的な背景をもとになされたものである。
すなわち、本発明は、部分的に剛軟度が異なり、しかも外見上見栄えが良好な一体構造の立体構造編地を提供することを目的とする。
更には、極力、縫製箇所を少なくすることができる立体構造編地を提供することである。
【0007】
【問題を解決するための手段】
このような技術的背景をもとに鋭意研究を行った結果、立体構造編地において上、下面部の少なくとも一方の外側部の組織が互いに同一のものとし、剛軟度が相異なる部分を一体的に有する編組織を得ることにより、従来の問題点を解決できることを見出し、この知見をもとに本発明を達成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、(1)、内外両側部を有する上面部Tと内外両側部を有する下面部Uとを、連結部Rで連結してなる一体構造の立体構造編地Dであって、所定ラインBLを境に剛軟度が異なる隣接する立体構造帯Hで構成され、それぞれの立体構造帯Hにおいて上、下面部の少なくとも一方の外側部を同一の編成糸で互いに同一の組織で編成すると共に、それぞれの立体構造帯の上面部の内側部と、下面部の内側部と、連結部との少なくとも一方を異なる編成糸で編成した立体構造編地Dに存する。
【0009】
そして、(2)、所定ラインBLが複数であることを特徴とする上記(1)記載の立体構造編地Dに存する。
【0010】
そしてまた、(3)、立体構造編地Dが2列針床経編機で編成されるダブル・ラッシェル地である立体構造編地Dに存する。
【0011】
そしてまた、(4)、隣接する立体構造帯Hの編成組織が互いに同一である立体構造編地Dに存する。
【0012】
そしてまた、(5)、異なる編成糸Kが、異繊度又は/及び異素材又は/及び異形体である上記(1)記載の立体構造編地Dに存する。
【0013】
そしてまた、(6)、異なる編成糸における異繊度の比が1:1.2〜1:5である上記(1)記載の立体構造編地Dに存する。
【0014】
そしてまた、(7)、立体構造帯の剛軟度比がJIS−L−1096A法(45°カンチレバー法)において1:1.3以上である上記(1)記載の立体構造編地Dに存する。
【0015】
そしてまた、(8)、上記(1)〜(7)のいずれか1記載の立体構造編地Dを使用した下着に存する。
【0016】
そしてまた、(9)、上面部Tと下面部Uとを連結部Rで連結してなる、一体構造の立体構造編地Dであって、所定ラインを境に剛軟度が異なる隣接する立体構造帯Hで構成され、しかも、それぞれの立体構造帯Hにおいて上、下面部の少なくとも一方の外側部の
組織が互いに同一である立体構造編地Dを使用した下着に存する。
【0017】
そしてまた、(10)、カップ部と脇部とからなるカップ部を有する衣類において、上記(1)〜(7)のいずれか1記載の立体構造編地Dをカップ部、又は、カップ部と該カップ部と接する脇部の一部とに渡って使用したカップ部を有する衣類に存する。
【0018】
そしてまた、(11)、上面部Tと下面部Uとを連結部Rで連結してなる、一体構造の立体構造編地Dであって、所定ラインを境に剛軟度が異なる隣接する立体構造帯で構成され、それぞれの立体構造帯において上、下面部の少なくとも一方の外側部の組織が互いに同一である立体構造編地を、カップ部、又は、カップ部と該カップ部と接する脇部の一部とに渡って使用したカップ部を有する衣類に存する。
【0019】
ここで、同一の編成糸とは、その繊度、素材、形態がすべて同じ糸であることを言う。
つまり、太さが同じで、素材(例えばポリエステル糸、ナイロン糸等)が同じ、及び、フィラメント数、並びに断面形状が同じの場合を同一とする。
そして、異なる編成糸とは、異繊度、異素材、異形体の内、少なくとも一つが異なる場合を言う。
つまり、太さが異なる、素材が異なる、或いは形態が異なる(例えば、異形断面糸等)場合を言う。
ここに、異素材(例えばポリエステル糸とナイロン糸)を使用した場合は、比重が異なるので同繊度(例えば110デシテックス)であっても、外観的にポリエステル糸が細く見えることがある。
【0020】
本発明においては、具体的には、立体構造編地Dとして2列針床経編機によるダブル・ラッシェル地を採用し、少なくとも、その上面部T、下面部Uの外側部Sの一方を同一編成糸、同組織で編成して、均一で一様な外観と風合いを得て、しかも、その内部においては、異繊度、異素材、異形体の編成糸Kを最適で効果的な組み合わせにより、これを適宜な幅の繰り返しで同時編成して、部分的に剛軟度の異なる一体構造の立体構造編地Dを形成したものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
本発明の立体構造編地の製造に当たっては、図1に側面図で示す2列針床経編機であるダブル・ラッシェル機を使用することが好ましい。
このダブル・ラッシェル機を使用することにより、図2に示す、上面部Tと連結部Rと下面部Uとで構成される立体構造編地Dを得ることができる。
【0022】
すなわち、ビームB1、B2から供給される編成糸K1、K2をガイドL1、L2によりニードルNに案内し、それぞれの組織にて外側部S1と内側部F1とに編成し、均一で一様な上面部Tを得る。
また、ビームB51、52から供給される編成糸K51、52と、ビーム6から供給される編成糸K6とを、それぞれガイドL5、L6により、ニードルNに案内し、それぞれの組織にて内側部F2と外側部S2とに編成して下面部Uを得る。
そして、ビームB31、32から供給される編成糸K31、32と、ビーム4から供給される編成糸K4を、それぞれガイドL3、L4によりニードルNに案内し、同一組織にて編成し、連結部Rを形成しつつ上面部Tと下面部Uとを連結するものである。
【0023】
上記のように、連結部Rを形成するガイドL3には二つのビームB31とB32を用意し、これらにそれぞれ繊度の異なる編成糸K31とK32を準備してこれを編成することで所要幅の剛軟度の異なる編地を得る。
また、下面部UにおいてもガイドL5にはビーム51、52が用意され、これらにそれぞれ繊度の異なる編成糸K51、52を準備して、これを編成することで所要幅の剛軟度の異なる編地を得る。
【0024】
連結部Rで剛軟度の差を得るか、下面部Uで剛軟度の差を得るかは適宜選択可能であるし、両方で剛軟度の差を得る場合は、連結部Rの所要幅の剛軟度の異なる編地の箇所と、下面部Uの所要幅の剛軟度の異なる編地の箇所を一致させることで剛軟度の差は一層強調される。
上記いずれの場合でも、立体構造編地Dは、剛軟度の異なる立体構造帯H1と立体構造帯H2を得ることが可能である。
ここで立体構造帯H1と立体構造帯H2はあくまでも仮想構造体であって、これらは独立したものではなく連続して立体構造編地Dを構成している。
【0025】
さて、立体構造帯H1と立体構造帯H2の比較において立体構造帯H1を立体構造帯H2に比して剛軟度を大ならしめるためには、使用される編成糸K31とK32、或いは編成糸K51とK52の繊度比は、それぞれ、同素材において1:1.2〜1:5の範囲が好ましい。
これ以下の比では剛軟度の差を明確に発現させることが困難であり、また、これ以上では編成上の問題が生ずる。
繊度比が1:1.2〜1:5の範囲であれば、立体構造帯H2と立体構造帯H1の剛軟度の比は1:1.3以上となり、良好な剛軟度の差が得られる。
この剛軟度の比が、1:1.3以下では使用する際の機能性にさほどの差が見られず十分な効果が得られない。
【0026】
また、編成糸Kの繊度は用途に応じて選択すれば良いが、厚みや通気性、剛性の点から20〜300デシテックスとするのが好ましい。
編成糸K31とK32、或いは編成糸K51とK52の使い分けにおいては、その繊度は、太いもので300デシテックスまで、細いもので100デシテックスまでが好ましい。
更に、編成糸Kの素材については、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、その他、炭素繊維、再生繊維、天然繊維等が使用可能で特に限定されるものではない。
【0027】
繊維の形態についても種々の異形断面糸、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸等が採用可能である。
更には、繊維製造時に着色した原着糸、或いは先染糸も使用可能である。
そして、組織についても上面部T、連結部R、下面部Uそれぞれに限定されるものでなく、上、下面部にメッシュ組織等を使用できることは言うまでもない。また、上面部T、下面部U、連結部Rに使用する編成糸Kや組織を多種にすることで、前記した立体構造帯H1、立体構造帯H2にとどまらず、立体構造帯H3,H4と言うように多種の立体構造帯Hを形成することが可能となる。
【0028】
以下、その実施例を示す。
本実施例においては、図2に示すダブル・ラッシェル地である立体構造編地Dを構成する、上面部T、連結部R、下面部Uに関し、その理解を容易にするために、便宜的に、それぞれ基準設定1、基準設定2、基準設定3の基準設定を行い、これらに基づき詳細を説明する。
本発明においては、その範囲内において多様な条件設定が可能であるが、それらは、すべて本基準設定で説明できるものである。
以下、本実施例においては、ダブル・ラッシェル機において8列のビームBと6枚のオサLを準備し、これらを適宜使用して編成する。
【0029】
以下、図1、図2において、
(基準設定1)
ビームB1から供給された編成糸K1はガイドL1によりデンビー組織DB(図3−1に示す)に編成され、外側部S1を形成すると共に、ビームB2から供給された編成糸K2はガイドL2によりコード組織DC(図3−1に示す)に編成されて内側部F1を形成し、これらを併せて上面部Tが形成される。
外側部S1、内側部F1は分離しているものではなく編成上で合体し、上面部Tを形成する。
【0030】
(基準設定2)
次に、ビームB31、B32から供給される編成糸K31、K32は、ガイドL3により、また、ビームB4から供給される編成糸K4はガイドL4により、ニードルNに導かれ、ガイドL3、L4を同じ連結組織C(図3−1に示す)に従い制御することで連結部Rが形成される。
【0031】
(基準設定3)
更に、ビームB51、52から供給された編成糸K51、52は、ガイドL5によりコード組織DCに編成され内側部F2を形成すると共に、ビームB6から供給された編成糸K6は、ガイドL6によりデンビー組織DBに編成され外側部S2を形成し、これらを併せて下面部U が形成される。
内側部F2、外側部S2は分離しているものではなく編成上で合体し、下面部Uを形成する。
【0032】
(実施例1)
図1、図3(A),(B)、及び図6に示すように、上面部Tに関し、基準設定1に基づき説明する。
ガイドL1,2に、ビームB1,B2から供給される同一の編成糸K1,2をそれぞれ通糸し、外側部S1と内側部F1を編成する。
ここではポリエステル加工糸・56デシテックスの編成糸を用いる。
【0033】
ガイドL1,L2には編成糸K1,2がそれぞれ、すべて通糸され(以後、フルセットと言う)、一様な上面部Tが得られる。
外側部S1と内側部F1とは同一の編成糸でも良いし、それぞれ異なる編成糸でもかまわない。
例えば、外側部S1を110デシテックスのナイロン・マルチフィラメント糸で編成し、内側部F1を56デシテックスのポリエステル加工糸で編成すると言ったことが可能である。
【0034】
次に連結部Rに関し、基準設定2に基づき説明する。
ガイドL3にビームB31から供給される編成糸K31としてポリエステル糸・110デシテックスを96本通糸し、次に同ガイドにビームB32から供給される編成糸K32としてポリエステル糸・33デシテックスを148本、通糸する。これを交互に繰り返し通糸する。
また、ガイドL4にはビームB4から供給される編成糸K4としてポリエステル糸・110デシテックスをフルセットで通糸する。
【0035】
このように通糸したガイドL3,L4をそれぞれ同一の連結組織Cにより編成する。
連結組織Cは、本実施例ではチェーンリンク表により0−2/2−4/4−2/2−0で示される。
これは、図3(B)に示すコース方向断面図でわかるように、よこ8の字を順次重ねた形となり、2本の直線部V1,V2と交叉部X1,X2で構成される。
結果的に連結部Rは、編成糸K31と編成糸K4とを合わせた部分と、編成糸K32と編成糸K4とを合わせた部分に形成される。
つまり、前者は総合繊度220デシテックスの連結部R1、後者は総合繊度143デシテックスの連結部R2となり、両者は、その太さの違いにより剛軟度が異なることとなる。
【0036】
次に下面部Uに関し、基準設定3に基づき説明する。
ガイドL5にビームB51から供給される編成糸K51としてポリエステル加工糸・110デシテックスを96本通糸し、次に同ガイドにビームB52から供給される編成糸K52としてポリエステル加工糸・83デシテックスを148本通糸する。
これを交互に繰り返し通糸する。
このように通糸されたガイドL5により内側部F2を形成する。
また、ガイドL6には、ビームB6から供給される編成糸K6としてポリエステル加工糸・83デシテックスをフルセットで通糸し、外側部S2を形成する。
結果的に、下面部Uは、編成糸K51で編成される内側部F21と編成糸K52で編成される内側部F22とで形成される内側部F2と、編成糸K6で編成される外側部S2とで形成される。
【0037】
以上のように、本実施例における立体構造編地D1は、外側部S1と内側部F1とからなる一様な上面部Tと、連結部R1と連結部R2との繰り返しでなる連結部Rと、内側部F21と内側部F22との繰り返しでなる内側部F2と外側部S2とで形成される下面部Uとで形成される。
連結部R1と下面部Uの内側部F21、連結部R2と下面部Uの内側部F22とは対応した位置にあるから、その剛軟度は、それぞれの剛軟度が合成され一層強調されて、結果的に剛軟度の異なる立体構造帯H1と立体構造帯H2が交互に形成され、立体構造編地D1を得る。
【0038】
先述したように、この立体構造帯H1と立体構造帯H2はあくまでも仮想構造体であって、これらは独立したものではなく連続して立体構造編地Dを構成している。
また、立体構造帯H1と立体構造帯H2の境をラインBL(BL1、BL2、・・・)とするが、これも本発明の説明と理解を助けるものであって必ずしも視覚的に捉えられるとは限らない。
また、ダブル・ラッシェル機の編成において、その条件設定により、例えば、立体構造編地Dが一つの立体構造帯H1と、一つの立体構造帯H2で構成される場合は、当然ラインBLは1本のみであることは言うまでもない。
【0039】
(実施例2)
実施例2においては、図1、図4、及び図7に示すように、基準設定1,2,3において、上面部Tには編成糸K1,K2にポリエステル加工糸・56デシテックスを、下面部Uには編成糸K52と編成糸K6とにポりエステル加工糸・83デシテックスをそれぞれ、フルセットで用い、実施例1と同様の組織にて一様な編地を得る。
この場合、ビームB51は使用しない。
【0040】
そして、連結部Rにおいて、ガイドL3にビームB31から供給される編成糸K31としてポリエステル糸・110デシテックスを96本通糸し、次に同ガイドにビームB32から供給される編成糸K32としてポリエステル糸・33デシテックスを148本通糸する。
これを交互に繰り返し通糸する。
【0041】
また、ガイドL4にはビームB4から供給される編成糸K4としてポリエステル糸・33デシテックスをフルセットで通糸する。
このように通糸したガイドL3,L4を前記第1の実施の形態と同様の連結組織Cにて編成する。
この結果、総合繊度143デシテックスの連結部R1と、総合繊度66デシテックスの連結部R2が形成され、両者は、その太さの違いにより剛軟度が異なることとなる。
その結果、連結部R1と連結部R2に対応して、それぞれ剛軟度の異なる立体構造帯H1と立体構造帯H2とが交互に形成された立体構造編地D2を得る。
【0042】
(実施例3)
実施例3においては、図1、図5、及び図8に示すように、基準設定1,2,3において、編成糸K1,K2にポりエステル加工糸・83デシテックスを用いて実施例1,2と同組織の一様な上面部Tを得る。
また、編成糸K31にポりエステル糸・33デシテックス、編成糸K4にも同様にポりエステル糸・33デシテックスをフルセットで用いて、実施例1,2と同様の連結組織Cにより一様な連結部Rを得る。
この場合ビーム31は使用しない。
【0043】
そして、ガイドL5にビームB51から供給される編成糸K51としてポリエステル加工糸・110デシテックスを96本通糸し、次に同ガイドにビームB52から供給される編成糸K52としてポリエステル加工糸・55デシテックス148本通糸し、これを交互に繰り返し通糸する。
このように通糸されたガイドL5により内側部F2を形成する。
また、ガイドL6には、ビームB6から供給される編成糸K6としてポリエステル加工糸・33デシテックスをフルセットで通糸し、外側部S2を編成する。
【0044】
結果的に下面部Uは、編成糸K51で編成される内側部F21と編成糸K52で編成される内側部F22とで形成される内側部F2と、編成糸K6で編成される外側部S2とで形成される。
内側部F21と内側部F22に対応して剛軟度が異なる立体構造帯H1及び立体構造帯H2が繰り返し形成され、立体構造編地D3を得る。
以上の実施例1,2,3における組織図は、各々図3,4,5に示される。
【0045】
次に、上記各実施例1,2,3について、剛軟度に関する試験結果を示す。
(実施例1の試験結果)
実施例1におけるダブル・ラッシェル地をマイヤー製ダブルラッシェル機(RD・ PLM-22G )を用いて作成し、以下の試験結果を得た。
190℃で1分間プレセットした後、130℃にて染色し、乾燥した後、150℃で1分間仕上げセットして、全厚3.4mm、編目密度38コース/吋、24ウエール/吋の立体構造編地D1を得た。
本立体構造編地D1を、JIS−L−1096A法(45°カンチレバー法)に従い剛軟度を計測した。
剛軟度の小なる部分は90mm、大なる部分は130mmであり、その比は1:1.45であった。
【0046】
(実施例2の試験結果)
実施例2におけるダブル・ラッシェル地をマイヤー製ダブルラッシェル機(RD・ PLM-22G )を用いて作成し、以下の試験結果を得た。
190℃で1分間プレセットした後、130℃にて染色し、乾燥した後、150℃で1分間仕上げセットして、全厚3.4mm、編目密度38コース/吋、24ウエール/吋の立体構造編地D2を得た。
本立体構造編地D2を、JIS−L−1096A法(45°カンチレバー法)に従い剛軟度を計測した。
剛軟度の小なる部分は78mm、大なる部分は110mmであり、その比は1:1.41であった。
【0047】
(実施例3の試験結果)
実施例3におけるダブル・ラッシェル地をマイヤー製ダブルラッシェル機(RD・ PLM-22G )を用いて作成し、以下の試験結果を得た。
190℃で1分間プレセットした後、130℃にて染色し、乾燥した後、150℃で1分間仕上げセットして、全厚3.4mm、編目密度38コース/吋、24ウエール/吋の立体構造編地D3を得た。
本立体構造編地D3を、JIS−L−1096A法(45°カンチレバー法)に従い剛軟度を計測した。
剛軟度の小なる部分は70mm、大なる部分は98mmであり、その比は1:1.40であった。
【0048】
以上、本発明に係る立体構造編地D(D1,D2,D3)を実施例1,2,3と、その試験結果1,2,3により説明した。
【0049】
立体構造編地D1は、連結部Rと下面部Uの内側部F2に総合繊度の大なる部分を形成し、結果的に、立体構造帯H1を形成して剛軟度を大ならしめ、剛軟度の小さい部分、つまり立体構造帯H2に比較して1.45倍の剛軟度を得た。
【0050】
立体構造編地D2は、連結部Rに総合繊度の大なる部分を形成し、結果的に、立体構造帯H1を形成して剛軟度を大ならしめ、剛軟度の小さい部分、つまり立体構造帯H2に比較して1.41倍の剛軟度を得た。
【0051】
立体構造編地D3は、下面部Uの内側部F2に総合繊度の大なる部分を形成し、結果的に、立体構造帯H1を形成して剛軟度を大ならしめ、剛軟度の小さい部分、つまり立体構造帯H2に比較して1.40倍の剛軟度を得た。
【0052】
このように、組織が同一であっても、各編成糸の組み合わせによって、自在にその剛軟度の大小が設定できる。
本実施の形態における立体構造編地Dはいずれもその使用目的にかなった良好な結果が得られた。
【0053】
以上述べた立体構造編地は、下着として使用することにより高機能なものが得られるが、次に、立体構造編地Dを下着の一例であるブラジャーに用いた場合について示す。
【0054】
(実施例4)
図9は、その各使用例を示す。
図9(A)において、本立体構造編地Dを、そのラインBLが縦方向で、しかも剛軟度の大なる部分が脇部に、剛軟度の小なる部分がトップ(ブラジャーの最高部)側に位置するように使用する。
従来の縫製処理によれば、このラインBLの箇所が縫製箇所となる。
本実施例におけるブラジャーは脇方向からの押圧力が適宜増強され、造形効果および着用効果が向上する。
なお、剛軟度の区画は、必ずしも図示のものに限定されるものではない(以下同じ)。
【0055】
図9(B)においては、本立体構造編地Dを、そのラインBLがトップ近傍を斜めに通過し、しかも剛軟度の大なる部分がブラジャーの脇、下側に、剛軟度の小なる部分が上側に位置するように使用する。
このように使用することで脇方向と下方の両方向からの押圧力が増強され造形効果および着用効果が得られる。
【0056】
その他、図9(C)、9(D)、9(E)に、本立体構造編地Dのブラジャーにおける各種使用例を示す。
タイプの違いはあるが、立体構造編地DのラインBLを効果的に通過させ、立体構造帯H1と立体構造帯H2の剛軟度の差をすみ分けることにより、いずれも効果的な体型補正機能と、良好な使いごごち、外観を得ることができる。
【0057】
以上、本発明についてその詳細を説明したが、本発明の立体構造編地Dはこれらの実施の形態に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で他の変形、組み合わせが可能であることは言うまでもない。
また、立体構造編地は、ブラジャー等のインナー衣料以外にも、スポーツ衣料を含む衣料関係全般、或いは産業資材、更には医療分野用の繊維製品等の種々の分野に使用することは当然可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明の立体構造編地Dにおいて、その編成糸Kの太さを所定の範囲内で変化させて剛軟度の差を得る手段を講ずる場合には、剛軟度の異なるパーツを縫製により縫い合わせたり、他の部品を組み合わせたりする必要がないので、その厚みや特有の物性によってパッカリングを生じたり、段差が生じたりするなどの仕上がりの問題や外観的に見栄えが悪くなるなどの問題が解消される。
また、パーツの裁断工程や縫製工程が簡略化され、複雑な作業を排除でき、経済的にもコストダウンが図られる他、縫製箇所による肌触りの悪さも解消される。
【0059】
また、モールド成型に見られるような可撓性の低下、通気性の低下、表面の硬化現象も発生しない。
そして、外側部S1,S2をそれぞれにおいて同一、同組織で編成する場合には、表面が均一で一様な外観の立体構造編地Dが得られ、使用する際において、視覚的にも触感的に抵抗、障害がない。
衣料においては、動作時の追随性の向上により着用者に違和感を感じさせず、円滑な動作を行うことができる。
更に、本発明の立体構造編地Dが、ダブルラッシェル地である場合には、その組織、素材の選択が自由で製品の多様化が容易に図られ、機能的にも外観的にも優れた繊維製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、2列針床経編機の側面図である。
【図2】図2は、立体構造編地の構成図を示す図である。
【図3】図3(A)は、実施例1における立体構造編地を示す模式図であり、図3(B)は、実施例1における立体構造編地のコース方向断面拡大図である。
【図4】図4は、実施例2における立体構造編地を示す模式図である。
【図5】図5は、実施例3における立体構造編地を示す模式図である。
【図6】図6は、実施例1の組織図である。
【図7】図7は、実施例2の組織図である。
【図8】図8は、実施例3の組織図である。
【図9】図9は、立体構造編地のブラジャーへの各使用例を示す図である。
【符号の説明】
B(B1〜B6)・・・ビーム
K(K1〜K6)・・・編成糸
L(L1〜L6)・・・ガイド
N・・・ニードル
D(D1、D2、D3)・・・立体構造編地
T・・・上面部
S1・・上面部の外側部
S2・・下面部の外側部
R(R1、R2)・・・連結部
X1,X2・・・連結部の交叉部
V1,V2・・・連結部の直線部
U・・・下面部
F1・・上面部の内側部
F2(F21、F22)・・下面部の内側部
H・・・立体構造帯
H1・・剛軟度の大なる立体構造帯
H2・・剛軟度の小なる立体構造帯
BL(BL1、BL2、・・)・・所定ライン
C・・・連結組織
J・・・ブラジャー
J1・・ストラップ部
J2・・カップ部
J3・・脇部

Claims (11)

  1. 内外両側部を有する上面部と内外両側部を有する下面部とを、連結部で連結してなる一体構造の立体構造編地であって、所定ラインを境に剛軟度が異なる隣接する立体構造帯で構成され、それぞれの立体構造帯において上、下面部の少なくとも一方の外側部を同一の編成糸で互いに同一の組織で編成すると共に、それぞれの立体構造帯の上面部の内側部と、下面部の内側部と、連結部との少なくとも一方を異なる編成糸で編成したことを特徴とする立体構造編地。
  2. 所定ラインが複数であることを特徴とする請求項1記載の立体構造編地。
  3. 立体構造編地が2列針床経編機で編成されるダブル・ラッシェル地であることを特徴とする請求項1記載の立体構造編地。
  4. 隣接する立体構造帯の編成組織が互いに同一であることを特徴とする請求項1記載の立体構造編地。
  5. 異なる編成糸が、異繊度又は/及び異素材又は/及び異形体であることを特徴とする請求項1記載の立体構造編地。
  6. 異なる編成糸における異繊度の比が1:1.2〜1:5であることを特徴とする請求項1記載の立体構造編地。
  7. 立体構造帯の剛軟度比がJIS−L−1096A法(45°カンチレバー法)において1:1.3以上であることを特徴とする請求項1記載の立体構造編地。
  8. 請求項1〜のいずれか1記載の立体構造編地を使用したことを特徴とする下着。
  9. 上面部と下面部とを連結部で連結してなる、一体構造の立体構造編地であって、所定ラインを境に剛軟度が異なる隣接する立体構造帯で構成され、しかも、それぞれの立体構造帯において上、下面部の少なくとも一方の外側部の組織が互いに同一であることを特徴とする立体構造編地を使用したことを特徴とする下着。
  10. カップ部と脇部とからなるカップ部を有する衣類において、請求項1〜7のいずれか1記載の立体構造編地をカップ部、又は、カップ部と該カップ部と接する脇部の一部とに渡って使用したことを特徴とするカップ部を有する衣類。
  11. 上面部と下面部とを連結部で連結してなる、一体構造の立体構造編地であって、所定ラインを境に剛軟度が異なる隣接する立体構造帯で構成され、それぞれの立体構造帯において上、下面部の少なくとも一方の外側部の組織が互いに同一である立体構造編地を、カップ部、又は、カップ部と該カップ部と接する脇部の一部とに渡って使用したことを特徴とするカップ部を有する衣類に存する。
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