JP7196667B2 - 希土類磁石用焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
R11-x1R2x1(Fe1-y1Coy1)w1-z1Tiz1Cuα1Oβ1(1)、
R1はY又はYとGdであり、YはR1全体の50mol%以上であり、R2はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR2全体の50mol%以上であり、x1、y1、z1、w1、α1、およびβ1は、それぞれ、0.3≦x1≦0.9、0≦y1≦0.4、0.38≦z1≦0.70、7≦w1≦12、0≦α1≦0.70、0.02≦β1≦0.5、および0≦1-x1-2z1/3-0.092α1―8β1/15≦0.05を満足する、ThMn12型結晶構造を有する相を主相とする希土類磁石用焼結体の製造方法であって、原料の溶湯を冷却して、全体の組成が下記の組成式(2)で表され、
R31-x2R4x2(Fe1-y2Coy2)w2-z2Tiz2Cuα2Oβ2 (2)、
R3はY又はYとGdであり、YはR3全体の50mol%以上であり、R4はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR4全体の50mol%以上であり、x2、y2、z2、w2、α2およびβ2はそれぞれ、0.3≦x2≦0.9、0≦y2≦0.4、0.38≦z2≦0.70、9.4≦w2≦12.0、0.44≦α2≦0.70、およびβ2≦0.5を満足する希土類磁石用合金Mを作製する工程と、原料の溶湯を冷却して、全体の組成が下記の組成式(3)で表され、
R51-x3R6x3T3w3Cuα3Oβ3 (3)、
R5はY又はYとGdであり、YはR5全体の50mol%以上であり、R6はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR6全体の50mol%以上であり、T3はFe,Co,Tiからなる群から選択される少なくとも1種であり、x3、w3、α3およびβ3はそれぞれ、0≦x3<0.5、0≦w3≦3、0≦α3≦2、およびβ3≦0.5を満足する希土類磁石用合金Lを作製する工程と、合金Lを全体の重量の1.5%以上10%以下の混合比で混合し、合金Mと合金Lの混合微粉を得る工程と、 上記混合微粉の圧粉体を作製する工程と、前記圧粉体を900℃以上1250℃以下で5分以上50時間以下熱処理して焼結体を得る工程と、を含む希土類磁石用焼結体の製造方法。
本開示の希土類磁石用焼結体は、全体の組成が下記の組成式(1)によって表される。
R11-x1R2x1(Fe1-y1Coy1)w1-z1Tiz1Cuα1Oβ1 (1)
(R1およびR2の種類)
R1はYまたはYとGdであり、YはR1全体の50mol%以上である。R1が別の元素のとき、1-12相以外に安定な相が生成することがある。たとえば、R1がZrの場合、Th6Mn23型の相が生成し、bcc-(Fe,Co,Ti)相も多量生成するため所望の焼結体が得られない。なお、Gdは高価なため、R1はYのみである方が好ましい。また、1-12相の磁気物性値と相安定性から、R2はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR2全体の50mol%以上である。磁気物性値の観点から、R2はSmのみであることがより好ましい。
R1とR2の総量に対するR2の含有量の原子数比率を示すx1(R2置換量x1)の範囲は0.3≦x1≦0.9である。x1-が0.3未満であると1-12相の磁気異方性が低下するため好ましくない。また、x1が0.9より大きいと1-12相の安定性が低下し、bcc-(Fe,Co,Ti)相や2-17相が生成するおそれがあり、好ましくない。
FeとCoの合計に対するCoの原子数比率を示すy1(Co置換量y1)の範囲は0≦y1≦0.4である。1-12相のキュリー温度が低下する恐れを避けるためy1は0.05以上であることがより好ましい。また、y1が0.4より大きいと1-12相の体積磁化および磁気異方性磁界が低下するため好ましくない。
R1とR2の総量に対するTiの含有量の原子数比率を示すz1(Ti含有量z1)の範囲は0.38≦z1≦0.70である。z1が0.38未満であると焼結中に2-17相やbcc-(Fe,Co,Ti)相が安定して生成するため好ましくない。また、z1が0.70より大きいと1-12相の磁気物性が低下するため好ましくない。より高い磁気特性、特にJsを得るためにはTi量は少ない方が好ましい。具体的には、z1の範囲が0.38≦z1≦0.60であることがさらに好ましい。なお、Tiの50mol%以下をタングステン(W)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)といった1-12相の構造を安定化させる元素で置換してもよい。
R1とR2の総量に対するCuの含有量の原子数比率を示すα1の範囲は、0.4≦α1≦0.7である。α1が0.7より大きいと、副相であるR-Cu相の比率が高くなり、主相の比率が低下し、焼結体全体としての磁化が低下するため好ましくない。また、α1が0.4より小さいと、熱処理中の液相量が少なくなるため、溶体化処理時の異相低減や、焼結時の緻密化が進行しにくくなるため好ましくない。
R1とR2の総量に対するFe、Co、Tiの総量の原子数比率を示すw1の範囲は、7≦w1≦12である。w1が12より大きいと、bcc-(Fe、Co、Ti)相が顕著に生成するため好ましくない。またw1が7より小さいと、2-17相のような1-12相よりも希土類含有量が多く磁気特性に悪影響を及ぼす相が顕著に生成するため好ましくない。
R1とR2の総量に対する酸素の含有量の原子数比率を示すβ1は、0.02≦β1≦0.5の範囲が適切である。β1が0.02より小さいと、焼結前の微粉が発火しやすくなり、ハンドリングが困難になるため好ましくない。また、β1が0.5より大きいと、焼結体中の酸化物相の比率が高くなり、1-12相の比率が低下し、磁石全体としての磁化が低下するため好ましくない。
x1、z1、α1、およびβ1は関係式0≦1-x1-2z1/3-0.092α1―8β1/15≦0.05を満たす。焼結体は一般的に微粉を用いるため、通常、原料合金よりも酸素量が高くなる。そのため、原料合金の段階では異相が少ないような合金でも、微粉砕や焼結時に酸素が主相や粒界相(焼結時は液相)中の希土類と反応して酸化物相となり、結果として1-12相が分解してbcc-(Fe、Co、Ti)相が生成する場合がある。筆者らは鋭意研究の結果、R1に含まれているYが特に酸化しやすいこと、および、各相にR1がどのように配分されるかを突き止めた。上記関係式は、z1の値から1-12相として消費されるR1の量を2z1/3、α1の値からR-Cu相として消費されるR1を0.092α1、β1の値からR酸化物相として消費されるR1を8β1/15とそれぞれ記述し、R1の実際の量1-x1からz1、α1、β1から計算したR1の量を差し引いたものの上下限を定めた式である。1-x1-2z1/3-0.092α1―8β1/15がマイナス側で小さくなるほど、1-12相、R-Cu相およびR酸化物相生成に必要なR1が不足していることを意味し、特に0未満であると、bcc-(Fe、Co、Ti)相が多量生成するため好ましくない。逆にプラス側で大きくなるほどR1が余剰になることを意味し、特に0.05より大きいと2-17相のような1-12相よりも希土類含有量の多い相が多量生成するため好ましくない。また、bcc-(Fe、Co、Ti)相や2-17相が焼結体中にどの程度存在するかを調べる簡便な方法として、粉末X線回折測定が挙げられる。各相のピークのうち、ThMn12型結晶構造を有する相(1-12相)は002反射、bcc-(Fe、Co、Ti)相は011反射、Th2Ni17型結晶構造を有する相(2-17相)は023反射に起因するピークが他の相の影響が少なく、なおかつピーク強度が高い。そこで、1-12相の002反射に起因するピークの最大強度をIThMn12、bcc‐(Fe,Co,Ti)相の011反射に起因するピークの最大強度をIbcc‐(Fe,Co,Ti)、2-17相の023反射に起因するピークの最大強度をITh2Ni17としたときに、bcc‐(Fe,Co,Ti)相および2-17相のピークの相対強度はそれぞれ、Ibcc‐(Fe,Co,Ti)/IThMn12およびITh2Ni17/IThMn12と記述できる。焼結体中のbcc‐(Fe,Co,Ti)相および2-17相は極力少ない方が望ましく、bcc‐(Fe,Co,Ti)相の相対強度Ibcc‐(Fe,Co,Ti)/IThMn12が0.75以下であることが望ましい。また、2-17相の相対強度ITh2Ni17/IThMn12が0.7以下であることが望ましい。
本開示の希土類磁石用合金M(以下、単に「合金M」または「原料合金M」と記載する場合がある)は、全体の組成が下記の組成式(2)によって表される。
R31-x2R4x2(Fe1-y2Coy2)w2-z2Tiz2Cuα2Oβ2 (2)
(R3およびR4の種類)
R3はYまたはYとGdであり、YはR3全体の50mol%以上である。R3が別の元素のとき、1-12相以外に安定な相が生成することがある。なお、Gdは高価なため、R3はYのみである方が好ましい。また、1-12相の磁気物性値と相安定性から、R4はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR2全体の50mol%以上である。磁気物性値の観点から、R4はSmのみであることがより好ましい。
R3とR4の総量に対するR4の含有量の原子数比率を示すx2(R4置換量x2)の範囲は0.3≦x2≦0.9である。x2が0.3未満であると1-12相の磁気異方性が低下するため好ましくない。また、x2が0.9より大きいと1-12相の安定性が低下し、bcc-(Fe,Co,Ti)相や2-17相が生成するおそれがあり、好ましくない。
FeとCoの合計に対するCoの原子数比率を示すy2(Co置換量y2)の範囲は0≦y2≦0.4である。1-12相のキュリー温度が低下する恐れを避けるためy2は0.05以上であることがより好ましい。また、y2が0.4より大きいと1-12相の体積磁化および磁気異方性磁界が低下するため好ましくない。
R3とR4の総量に対するTiの含有量の原子数比率を示すz2(Ti含有量z2)の範囲は0.38≦z2≦0.70である。z2が0.38未満であると焼結中に2-17相やbcc-(Fe,Co,Ti)相が安定して生成するため好ましくない。また、z2が0.70より大きいと1-12相の磁気物性が低下するため好ましくない。より高い磁気特性、特にJsを得るためにはTi量は少ない方が好ましい。具体的には、z2の範囲が0.38≦z2≦0.60であることがさらに好ましい。なお、Tiの50mol%以下をW、V、Nb、Ta、Mo、Siといった1-12相の構造を安定化させる元素で置換してもよい。
R3とR4の総量に対するCuの含有量の原子数比率を示すα2の範囲は、0.44≦α2≦0.70である。α2が0.70より大きいと、副相であるR-Cu相の比率が高くなり、主相の比率が低下し、焼結体全体としての磁化が低下するため好ましくない。また、α2が0.44より小さいと合金熱処理時の異相低減や1-12相粒径粗大化が進行しにくくなるため好ましくない。
R3とR4の総量に対するFe、Co、Tiの総量の原子数比率を示すw2の範囲は、9.4≦w2≦12.0である。w2が12.0より大きいと、bcc-(Fe、Co、Ti)相が顕著に生成するため好ましくない。またw2が9.4より小さいと、2-17相のような1-12相よりも希土類含有量が多い相が生成し、合金熱処理時に1-12相の粗大化が進行しにくくなるため好ましくない。
R3とR4の総量に対する酸素の含有量の原子数比率を示すβ2は、β2≦0.5の範囲が適切である。β2が0.5より大きいと、焼結体中の酸化物相の比率が高くなり、1-12相の比率が低下し、磁石全体としての磁化が低下するため好ましくない。
本開示の希土類磁石用合金L(以下、単に「合金L」または「原料合金L」と記載する場合がある)は、全体の組成が下記の組成式(3)によって表される。
R51-x3R6x3T3w3Cuα3Oβ3 (3)
(R5およびR6の種類)
R5はYまたはYとGdであり、YはR5全体の50mol%である。なお、Gdは高価なため、R5はYのみである方が好ましい。また、焼結中は拡散により合金Lに含まれる希土類も一部1-12相形成に使われる。1-12相の磁気物性値と相安定性から、R6はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR6全体の50mol%以上である。磁気物性値の観点から、R6はSmのみであることがより好ましい。
R5とR6の総量に対するR6の含有量の原子数比率を示すx3(R6置換量x3)の範囲は0≦x3<0.5である。焼結中に希土類が酸化物になる反応が進むが、その際R6よりもR5の方が優先的に酸化するため、R5の含有量の原子数比率を多くする必要がある。x3が0.5以上であると、焼結中に1-12相中の希土類の酸化が進行し、1-12相が分解してbcc-(Fe,Co,Ti)相が生成するため好ましくない。
T3は1-12相を構成する元素であるFe,Co,Tiからなる群から選択される少なくとも1種である。また、R5とR6の総量に対するT3の含有量の原子数比率を示すw3(T3含有量w3)の範囲は0≦w3≦3である。T3は合金Lの必須元素ではない。また、w3が3より大きいと合金Lの融点が高くなり、焼結中に全量液相とならず、拡散・反応が進行しにくくなるため好ましくない。なお、T3としてTiの代わりにW、V、Nb、Ta、Mo、Siといった1-12相の構造を安定化させる元素を入れてもよい。
R5とR6の総量に対するCuの含有量の原子数比率を示すα3の範囲は、0≦α3≦2である。Cuは合金Lの必須元素ではない。α3が2より大きいと、副相であるR-Cu相の比率が高くなり、主相の比率が低下し、焼結体全体としての磁化が低下するため好ましくない。
R5とR6の総量に対する酸素の含有量の原子数比率を示すβ3は、β3≦0.5の範囲が適切である。β3が0.5より大きいと、焼結体中の酸化物相の比率が高くなり、1-12相の比率が低下し、磁石全体としての磁化が低下するため好ましくない。
<工程A>合金Mを作製する工程
希土類磁石用焼結体の原料となる合金Mの作製方法としては、金型鋳造法、遠心鋳造法、ストリップキャスト法、液体超急冷法などの公知の方法を採用できる。これらの方法は、合金の溶湯を作製した後、この溶湯を冷却して凝固させる。合金溶湯の凝固時に粗大なbcc-(Fe、Co、Ti)相や2-17相の生成を極力抑えることが望ましい。比較的冷却速度の高い、ストリップキャスト法または液体超急冷法など、回転ロール上に溶湯を供給して凝固させ、薄帯又薄片状の合金を作製する方法を採用することにより、粗大なbcc-(Fe、Co、Ti)相や2-17相の生成を抑制することができる。凝固時の冷却速度が低いと、析出する異相の粒サイズが大きくなる。合金中に含まれる異相の粒サイズが大きくなると、合金の熱処理時や焼結時に異相を消失させにくくなる。合金Mの凝固過程で生成した異相の低減、および1-12相の粗大化を目的として熱処理をおこなってもよい。合金の組成に応じて変わるが、R-Cu相融点が850~900℃である。そのため、熱処理温度は900℃以上1250℃以下が好ましく、1000℃以上1150℃以下がより好ましい。また、熱処理時間は、熱処理温度によるが、5分以上50時間以下が望ましい。時間が短すぎると、異相を消失させるのに十分な反応が起こらない。時間が長すぎると、希土類元素の蒸発および酸化が生じ、かつ操業上の効率も悪い。合金Mに存在する2-17相は極力少ないほうが好ましく、合金断面の面積比率で2-17相が10%以下であることが好ましい。2-17相が10%を超えると1-12相の粒径が細かくなるため好ましくない。さらに、粉砕工程の前に、合金を水素中で熱処理してクラックを導入させてもよい。Cuを含有している場合、合金中のR-Cu相が水素を吸収および放出することができる。本合金によれば、たとえば、250℃から400℃の温度で水素の吸収が生じ、540℃から660℃の間で水素の放出が生じる。そのため、この合金を水素中で400℃以上まで昇温して水素を吸収させた後、真空雰囲気に切り替えて十分に水素を放出させることができる。その場合、真空雰囲気に切り替える温度は700℃以下である。このように本合金に含まれる副相は、少なくとも700℃以下の温度で水素吸収と放出が起こる。なお、700℃を超える温度で水素雰囲気中に本合金をさらすと水素化-不均化反応による主相の分解が起こる可能性がある。水素の吸収と放出を行うことにより、希土類リッチ相(副相)は体積膨張と収縮を起し、主相結晶粒と副相との間にクラックが生じる。これによって、粉砕工程における粉砕効率が高まる。
希土類磁石用焼結体の原料となる合金Lの作製方法としては、金型鋳造法、遠心鋳造法、ストリップキャスト法、液体超急冷法、アトマイズ法などの公知の方法を採用できる。これらの方法は、合金の溶湯を作製した後、この溶湯を冷却して凝固させる。合金は全体にわたって組成が均一になるよう、凝固時に偏析が起こらないようにすることが望ましい。比較的冷却速度の高い、ストリップキャスト法または液体超急冷法など、回転ロール上に溶湯を供給して凝固させ、薄帯又薄片状の合金を作製する方法や、アトマイズ法のように細かい粒子として凝固させる方法を採用することにより、凝固時の偏析を抑制することができる。また、得られた合金Lに対して組織均一化のための熱処理や、水素吸蔵・放出によるクラック導入・合金脆化をおこなってもよい。
工程Aで得られた合金Mと工程Bで得られた合金Lを粉砕・混合して混合微粉を得る。なお、合金Lをアトマイズ法のように微粒子となるように作製した場合、必ずしも合金Lを粉砕する必要はない。粉砕と混合の順番はどちらを先におこなってもよく。合金段階で混合したのちに微粉砕をおこなって混合微粉を得てもよいし、合金Mと合金Lをそれぞれ微粉砕したのちに混合して混合微粉を得てもよい。混合の際の混合比は、合金Lの混合比率が重量%で1.5%以上10%以下となるようにする。合金Lの混合比率が1.5%未満であると、合金Lの効果が十分得られず、焼結中にbcc-(Fe,Co,Ti)相が多量生成することがある。また、合金Lの混合比率が10%より高いと、焼結体中の1-12相比率の低下により磁気特性が低下するため好ましくない。また、合金の粉砕方法としては、ジェットミルやスタンプミル、ボールミルなどの公知の方法を採用できる。粉末の酸化の抑制、および発火や爆発の危険性の低減のために、窒素やアルゴン、ヘリウムといった不活性ガス中で粉砕をおこなう。粉砕後の微粉のハンドリング性の向上のために不活性ガスに少量の空気や酸素を混合してもよい。粉末のハンドリングや成形性を考慮して、混合微粉の粒度は、気流分散法によるレーザー回折法で得られたD50(頻度の累積が50%になるときの粒子の体積基準メジアン径)が1μm以上20μm以下となるようにすることが好ましい。D50が1μm未満であると、発火の危険性が高くなったり、成形時に金型を傷めたりするため好ましくない。また、D50が20μmより大きいと焼結工程において緻密化が進行しにくくなるため好ましくない。
工程Dで得られた混合微粉を成形し、圧粉体を得る。結晶を配向させるために成形時に磁界を印加しながら成形してもよい。
工程Eで得られた圧粉体を熱処理することで焼結体を得る。焼結方法として、真空や不活性ガス雰囲気で高温に保持して固相焼結や液相焼結を進行させる方法や、ホットプレスや熱間等方加圧(HIP)法などのような圧粉体に圧力を付与しながら高温に保持する方法を含む公知の方法を採用することができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、焼結は真空雰囲気中やアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中でおこなうことが好ましい。さらに、高温では特にSmが顕著に蒸発するため、圧粉体を覆う、密閉する、Smを含む物質とともに密閉するなどの方法で、Smの蒸発を抑制することがより好ましい。焼結処理温度は900℃以上1250℃以下である。焼結処理温度が900℃未満であると液相が十分生成しないため緻密化しにくい。また、焼結処理温度が1250℃超であると1-12相が分解するおそれがある。焼結処理温度は1000℃以上1150℃以下がより好ましい。焼結処理時間は、5分以上50時間以下である。焼結処理時間が5分未満であると緻密化が十分進行しないおそれがある。また、焼結処理時間が50時間超であると、リードタイムが長くなり操業上好ましくない。加圧焼結する際の圧力は1000MPa以下が望ましい。また、焼結工程ののちに、磁気特性の向上などを目的とした熱処理や拡散処理を追加でおこなってもよい。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、原料合金Mをストリップキャスト法で作製した。純度が99.9%以上のY、Sm、Fe、Co、Ti、Cuの原料金属を、溶解時の希土類元素の蒸発を加味し、得られる合金組成が最終的に表1に示す組成となるようにねらい値を決定し秤量した。秤量した各金属を混合してシリカ坩堝に投入し、高周波誘導加熱により1500℃まで昇温して原料を溶解した。その後、溶湯を1450℃まで降温させ、タンディッシュで一時的に貯湯した後、周速度1.5m/sで回転している銅製の冷却ロール上に供給して冷却させた。冷却された合金は冷却ロール下部に設置した解砕機で解砕された。
次に、原料合金Lを作製した。原料合金No.L1に関しては、純度が99.9%以上のY、Smの原料金属を、溶解時の希土類元素の蒸発を加味し、得られる合金組成が最終的に表2に示す組成となるようにねらい値を決定し秤量した。秤量した各金属を混合して石英管に投入し、高周波誘導加熱により昇温して原料を溶解した。その後、石英管内で冷却して原料合金を得た。得られた原料合金L1をAr流気雰囲気のグローブボックス内で切削し、切り粉を回収した。得られた切り粉を乳鉢で粉砕し、粉砕粉を425μmメッシュおよび75μmメッシュで篩い分け、75μmメッシュを通った粉を混合用に回収した。また、原料合金No.L2に関しては、純度が99.9%以上のY、Sm、Cuの原料金属を、溶解時の希土類元素の蒸発を加味し、得られる合金組成がねらい値になるように秤量した。秤量した各金属を混合して石英管に投入し、高周波誘導加熱により昇温して原料を溶解した。その後、周速度20m/sで回転している銅製の冷却ロール上に出湯させることで冷却させて急冷合金を作製した。得られた原料合金L2をAr流気雰囲気のグローブボックス内で乳鉢を用いて粉砕し、粉砕粉を425μmメッシュおよび75μmメッシュで篩い分け、75μmメッシュを通った粉を混合用に回収した。原料合金Lの粉砕粉のうち、粒径75~425μmの粉砕粉を用いてICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法にてY・Sm・Cuの成分分析をおこなった。また、粒径425μm以上の粉砕粉を用いて、不活性ガス溶融・熱伝導法にて酸素量の分析をおこなった。合金L1およびL2の組成、x3、w3、α3およびβ3の値を表2に示す。合金L1およびL2はいずれも組成式(3)を満たしていた。
熱処理後合金Mを、Ar流気雰囲気のグローブボックス内で乳鉢を用いて粉砕した。粉砕粉を1mmメッシュで篩い分け、メッシュを通った粉を回収した。回収した粉砕粉にステアリン酸亜鉛を加え、ロッキングミキサーで15分間混合した。このとき、粉砕粉とステアリン酸亜鉛の重量比が100:0.035になるようにステアリン酸亜鉛を添加した。熱処理後合金Mの粉砕粉を日本ニューマチック工業(株)製の気流式ジェットミルPJM-100を用いて微粉砕して微粉を得た。粉砕ガスには窒素ガスを用い、粉砕圧7.5MPaで粉砕した。上記原料合金Mの微粉と、原料合金Lの粉砕粉のうち75μmメッシュを通った粉を混合した。混合は窒素流気雰囲気のグローブボックス内でおこない、表3に示す混合比でミルサーを使用して混合した。また、混合微粉の粒度を気流分散法によるレーザー回折法で測定し、いずれの混合微粉もD50が5μm以上6μm以下の範囲であった。
上記工程で得た混合微粉を、窒素流気雰囲気のグローブボックス内で成形した。成形にはハンドプレスを用い、直径16mm、高さ20mmの円柱形の圧粉体を作製した。成形後、鉄カプセルに圧粉体を充填した。鉄カプセルの材質はS20Cで、内側の直径が16mm、高さが20mmで、厚さは2mmのものを使用した。
圧粉体が充填された鉄カプセルに、真空中で電子ビーム溶接をおこない、カプセルの容器と蓋を溶接することで封止した。封止された試料にHIP処理をおこなった。圧媒ガスにはアルゴンを用い、ガス圧180MPaで処理した。温度は1100℃で、保持時間を3時間とした。
Claims (3)
- 全体の組成が下記の組成式(1)で表され、
R11-x1R2x1(Fe1-y1Coy1)w1-z1Tiz1Cuα1Oβ1 (1)
R1はY又はYとGdであり、YはR1全体の50mol%以上であり、
R2はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR2全体の50mol%以上であり、
x1、y1、z1、w1、α1、およびβ1は、それぞれ、
0.3≦x1≦0.9、
0≦y1≦0.4、
0.38≦z1≦0.70、
7≦w1≦12、
0≦α1≦0.70、
0.02≦β1≦0.5、および
0≦1-x1-2z1/3-0.092α1―8β1/15≦0.05
を満足する、ThMn12型結晶構造を有する相を主相とする希土類磁石用焼結体の製造方法であって、
原料の溶湯を冷却して、全体の組成が下記の組成式(2)で表され、
R31-x2R4x2(Fe1-y2Coy2)w2-z2Tiz2Cuα2Oβ2 (2)
R3はY又はYとGdであり、YはR3全体の50mol%以上であり、
R4はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR4全体の50mol%以上であり、
x2、y2、z2、w2、α2およびβ2はそれぞれ、
0.3≦x2≦0.9、
0≦y2≦0.4、
0.38≦z2≦0.70、
9.4≦w2≦12.0、
0.44≦α2≦0.70、および
β2≦0.5を満足する希土類磁石用合金Mを作製する工程と、
原料の溶湯を冷却して、全体の組成が下記の組成式(3)で表され、
R51-x3R6x3T3w3Cuα3Oβ3 (3)
R5はY又はYとGdであり、YはR5全体の50mol%以上であり、
R6はSm、La、Ce、NdおよびPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、Smを必ず含み、SmはR6全体の50mol%以上であり、
T3はFe,Co,Tiからなる群から選択される少なくとも1種であり、
x3、w3、α3およびβ3はそれぞれ、
0≦x3<0.5、
0≦w3≦3、
0≦α3≦2、および
β3≦0.5を満足する希土類磁石用合金Lを作製する工程と、
合金Lを全体の重量の1.5%以上10%以下の混合比で混合し、合金Mと合金Lの混合微粉を得る工程と、
上記混合微粉の圧粉体を作製する工程と、
前記圧粉体を900℃以上1250℃以下で5分以上50時間以下熱処理して焼結体を得る工程と、を含む希土類磁石用焼結体の製造方法。 - 前記焼結体の粉末X線回折パターンにおいて、前記ThMn12型結晶構造を有する相の002反射に起因するピークの最大強度をIThMn12、bcc-(Fe,Co,Ti)相の011反射に起因するピークの最大強度をIbcc‐(Fe,Co,Ti)としたときに、
Ibcc‐(Fe,Co,Ti)/IThMn12≦0.75
を満足する、請求項1に記載の希土類磁石用焼結体の製造方法。 - 前記焼結体の粉末X線回折パターンにおいて、前記ThMn12型結晶構造を有する相の002反射に起因するピークの最大強度をIThMn12、Th2Ni17型結晶構造を有する相の023反射に起因するピークの最大強度をITh2Ni17としたときに、
ITh2Ni17/IThMn12≦0.7
を満足する、請求項1または2に記載の希土類磁石用焼結体の製造方法。
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