JP7184524B2 - 樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フッ素樹脂を主成分としてセルロースナノファイバーを添加した樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法に関する。
フッ素樹脂は耐熱性、耐薬品性、絶縁性、耐候性、非粘着性、すべり特性に優れた樹脂である。例えば、フッ素樹脂は、その分子構造にC-F結合を有することから、きわめて低い誘電率を示し、電子機器の絶縁部材やシール部材、配線基板の表面コーティングに用いられる。また、表面エネルギーが非常に小さく、非粘着性を有するため、例えば複写機やプリンター等における通紙部の剥離部材に用いられる。さらに、極めて低い摩擦係数を有するため、各種機器におけるすべり部材(例えば、軸受け、圧縮機のピストンリングや各種シールなど)に用いられる。フッ素樹脂は、しゅう動により金属などのしゅう動相手部材のしゅう動部に移着膜を形成し、元々摩擦力の小さなフッ素樹脂間でのしゅう動となることから摩擦係数が小さくなることが、学術的に明らかとなっている。
また、フッ素共重合体を水性塗料用組成物に含有させる事で、塗膜表面の自己浄化機能を向上させることができるとともに、塗料の貯蔵安定性を損ないにくい水性塗料が実現できる事が、引用文献1に記載されている。
しかしながら、フッ素樹脂は無充填状態では摩耗が非常に大きく、前記のような機械装置のしゅう動部材に求められる高負荷、あるいは長時間しゅう動する部材としては使用することはできない。このため、ベースのフッ素樹脂に炭素繊維やガラス繊維、グラファイト、二硫化モリブデンなどの無機系充填材を添加して、所望の耐摩耗性を発揮させている。しかしこのような無機系充填剤はその硬さや高次構造により、特にしゅう動相手がアルミニウム合金やプラスチック材料のような軟質材料では、しばしば摩擦面をかえって荒らすこととなり、フッ素樹脂の有する摩擦摩耗特性を損なう点が問題であった。
これらの課題を解決するため、特許文献2にはフッ素樹脂に比表面積が0.6~250m/gの炭素繊維を添加する事で、フッ素樹脂を補強するとともに、フッ素樹脂成形体の耐摩耗性を改善することが記載されている。
ところで、天然セルロース繊維をナノサイズに解繊したセルロースナノファイバーが注目されている。このセルロースナノファイバー(以下、「CNF」という。)は植物材料を原料としているため、環境負荷が低い点で優れているうえ、CNF単体で鉄の5倍の強度で5分の1の軽さである特徴を有することから、近年、CNFが、樹脂組成物に少量添加する事で、樹脂組成物の力学的特性等を向上させることができるとして期待されている。さらに、特許文献3及び4に記載の通り、CNFは組成配合によっては絶縁性や導電性を発現する性質を有する点で、電子機器分野への応用が期待されている。
特許文献5には、フッ素ゴム又はエラストマーに補強材として、修飾CNFを添加した医療機器用樹脂多孔質体が記載されている。また、この修飾CNFは、フッ素原子が結合した炭素原子が2つ以上である化学構造を有する修飾基によりCNFが有する水酸基が修飾されており、これにより樹脂組成物内におけるCNFの分散性を高めている。
さらに、特許文献6には粉末PFAとナノ結晶セルロースを2-プロパノール中に超音波処理によって分散させ、この分散液をPaasheエアブラシを用いてシリコンゴム基材上にスプレーし、被膜を350℃で15~20分間に亘って加熱処理することにより硬化させ、複合フィルムを形成する事が記載されている。
特開2012-77225号公報 特開平5-32842号公報 特開2013-216766号公報 特開2014-220341号公報 特許6108929号公報 特許6061760号公報
特許文献2では、特定比表面積の炭素繊維をフッ素樹脂に添加することで、フッ素樹脂の強度や耐摩耗性を改善しているものの、炭素繊維は繊維系が10μm程度と、しゅう動相手材の表面粗さに対して充分に太く、剛直な短繊維であるため、ベースのフッ素樹脂からしゅう動中に摩耗により脱離することが多く、脱離した炭素繊維がしゅう動界面に介在すると、しゅう動相手金属表面を荒らすこととなり、発生した炭素繊維と金属成分が混在した摩耗粉がしゅう動界面に存在することでさらに摩耗が高くなり、相手部材のしゅう動面の荒れが大きく進行するといった現象が生じやすい問題があった。
特許文献5では、フッ素原子が結合した炭素原子が2つ以上である化学構造を有する修飾基によりCNFの水酸基が修飾されており、これにより樹脂組成物内におけるCNFの分散性を高めているものの、CNFに特殊な修飾基を修飾する必要がある。従って、未変性のCNFをフッ素樹脂に添加する場合や、所望の修飾基を導入したCNFを用いる場合は、特許文献5のような修飾CNFを用いる事が出来ない。さらに特許文献5の修飾CNFは修飾する工程でピリジン等の反応助剤を加えるため、洗浄が不十分な場合、これら反応助剤が不純物として混入する恐れがある。このような不純物は電子機器材料としては、特に望ましくない。
特許文献6では、ナノ結晶セルロースとPFAの組成物が記載されているが、超音波処理によって2-プロパノール中で成分を分散させているのみであり、ナノ結晶セルロースの組成物内分散性が担保されているかは不明である。また、CNFとフッ素樹脂を含む組成物の特性については何ら記載がない。
本発明の目的は、CNFの置換基構造に関わらず、フッ素樹を主成分とする脂組成物内におけるCNFの分散性を確保し、フッ素樹脂に機械強度の向上等の特性を付与する事ができる、CNFとフッ素樹脂を含む組成物を提供することである。
本発明者が鋭意検討を行った結果、溶媒分散性のフッ素樹脂を主成分とし、平均直径が1nm以上100nm以下であり且つアスペクト比が100以上であるセルロースナノファイバー、セルロースナノファイバーを溶媒中で分散させる分散剤と、を含む樹脂組成物を提供することで、前述の課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
(1) 溶媒分散性のフッ素樹脂を主成分とし、平均直径が1nm以上100nm以下であり且つアスペクト比が100以上であるセルロースナノファイバー、セルロースナノファイバーを溶媒中で分散させる分散剤と、を含む樹脂組成物。
(2) 前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバーである事を特徴とする、(1)に記載の樹脂組成物。
(3) 前記溶媒分散性のフッ素樹脂が水系溶媒分散性のフッ素樹脂である事を特徴とする、(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
(4) 前記溶媒分散性のフッ素樹脂が架橋可能な構造を有する架橋性フッ素樹脂である事を特徴とする、(1)~(3)に記載の樹脂組成物。
(5〕 前記セルロースナノファイバー分散剤が、水系溶媒内でセルロースナノファイバーを分散させるアクリルスルホン系分散剤、カルボン酸系分散剤、ホスホリルコリン系分散剤である事を特徴とする、(1)~(4)に記載の樹脂組成物。
(6) 架橋剤を含む事を特徴とする、(1)~(5)に記載の樹脂組成物。
(7) 摩擦面の少なくとも一部が(1)~(6)記載の前記樹脂組成物からなるしゅう動部材。
(8) 非粘着面の少なくとも一部が(1)~(6)記載の前記樹脂組成物からなる非粘着性部材。
(9) (1)~(6)記載の前記樹脂組成物からなるコーティング材料。
(10) 溶媒分散性のフッ素樹脂、平均直径が1nm以上100nm以下であり、且つ、アスペクト比が100以上であるセルロースナノファイバー、セルロースナノファイバーを溶媒中で分散させる分散剤と、を含む樹脂組成物を溶媒内で攪拌混合し、前記セルロースナノファイバーを溶媒内で分散させる事で混合分散体を得る混合分散工程と、
前記混合分散体の溶媒を乾燥させる事で乾燥組成物を得る乾燥工程と、
を含む事を特徴とするフッ素樹脂組成物の製造方法。
(11) 前記混合分散工程において、前記溶媒分散性のフッ素樹脂が水系溶媒内でエマルジョンを形成する事を特徴とする、(10)記載のフッ素樹脂組成物の製造方法。
(12) 前記乾燥組成物を成形加工する成形工程を含む事を特徴とする請求項10又は11記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
[セルロースナノファイバー]
セルロースナノファイバーは、その分子鎖中及び/又は分子鎖末端のセルロース由来の水酸基が変性されている変性CNF、これら水酸基が変性されていない未変性CNFどちらであっても良い。このうち、変性CNFとしては、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNFが用いられる。特に特開2010-242063号に示すように、CNFの水酸基をTEMPO酸化処理する事で分散性を高めた、カルボキシル化CNFが広く用いられる。さらに、特開2017-171698号に示すような疎水化したCNFで補強した樹脂組成物を用いる事もできる。また、未変性CNFとしては、スギノマシン製BiNFi-s(登録商標)、モリマシナリー(株)製セルロースナノファイバーが用いられる。本発明の用いられるCNFは、未変性CNFが特に好適である。この理由として、未変性CNFは化学的な変性を行う事がないため安価であり、水分散液の粘度が低く取り扱いが容易である。さらに化学的変性工程で用いた触媒や反応助剤がCNF分散体に不純物として混入する事がないため、電子機器への適用性が高く、人体適合性にも優れる点が挙げられる。さらに、未変性CNFはCNF由来の水酸基が残存するため、組成物を製造後、又は製造の段階で、この水酸基へ後付けのカップリング処理を行う事も可能である点で好ましい。
本発明のセルロースナノファイバーは、平均直径が1nm以上100nm以下であり且つアスペクト比が100以上である。上記範囲内であればセルロースナノファイバーの繊維径、繊維長は特に限定されないが、適切な補強効果および分散性、成形性を確保するというという理由で、繊維径60nm以下、繊維長が好ましくは100~500μmが好ましい。ここでの繊維径及び繊維長は、電子顕微鏡観察により任意の個数(例えば20本)の未変性セルロースナノファイバーの繊維径及び繊維長を測定し、得られた測定値の算術平均値として求められる。
本発明のCNFの配合量は特に限定されないが、組成物は、その製造工程において、フッ素樹脂とCNFを溶媒内で混合する工程を経るが、この溶媒内におけるCNFの分散性を考慮すると、CNFの添加量は、固形分換算で分散液全量の0.05~10重量%である事が望ましい。また、樹脂組成物100%に対するCNF添加量は、固形分換算で0.1~20重量%である事が望ましい。この理由として、CNF配合量が0.1重量%未満では、本発明の樹脂組成物からなるしゅう動部材の低摩擦性又は低摩耗性が不十分になる傾向がある。一方、CNFの配合量が20重量%以上であると、本発明樹脂組成物が大きく増粘し、その加工性、取扱い性等が著しく低下する傾向がある。その結果、本発明樹脂組成物からなる成形物の形成が困難になる傾向がある。
未変性セルロースナノファイバーの製造に使用するセルロースは、好ましくは水分散体として用いられる。
本発明は、フッ素樹脂にCNFを配合した事で、低摩擦、低摩耗を示す点に特徴がある。すなわち、
本発明による組成物では、金属などのしゅう動相手材とのしゅう動初期にはCNFより軟らかい、該部材のマトリックスである水溶性樹脂が先に摩耗して、CNFがしゅう動界面に残存し、その結果、CNFの端面、又は側面がしゅう動界面にまんべんなく多数存在する状態となる。これらのしゅう動界面に露出しているCNFがしゅう動の荷重を支えながらしゅう動するため、結果として真実接触面が小さくなり、しゅう動部材全体として低摩擦、低摩耗を示す。
CNFの含有量が比較的少ないにも関わらず、良好なしゅう動特性が得られる理由のひとつとして、CNFの繊維径及び分散性が関係するものと推測している。本発明では、CNFの細径化及び分散の安定化は、後述するように例えば高速回転型メディアレス分散機を用いて行われる。このような細径化では、CNFは極限に使い3~10nm程度の繊維径までには粉砕されることはなく、繊維径10~100nmの未変性セルロースナノファイバーを比較的多く含むものとなりやすい。また、この段階で後述する分散剤を加えないと、細経化したCNFが時間と共に再凝集して結果として分散が不均一となりやすく、このためしゅう動部材のしゅう動面に現れる組成がバラつき、そのためにしゅう動特性のバラツキを生じて、良好な低摩擦性、低摩耗性を得られない場合が多くなる。本発明者らは、平均直径が1nm以上100nm以下であり且つアスペクト比が100以上であるCNFがしゅう動部材のしゅう動面に均一分散していることが、これ以外の範囲のCNF、または不均一な分散状態よりもさらに良好なしゅう動特性を発現させることを見出した。
[フッ素樹脂]
本件発明に用いるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFA、ETFE、FEP、PVDF、ECTFE、ポリビニリデンフルオライド(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体が挙げられる。このうち、PTFE、PFA、ETFE、FEP及びPVDFが好ましい。これらは1種でもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。これらは溶媒分散性が低い為、置換基を変性させる処理、溶媒分散性を有する共重合体とする処理等、溶媒分散性を高めるための適切な処理をする必要がある。
前記フッ素樹脂には、前述の各フッ素樹脂を合成する際に、各フッ素樹脂の構成単位となるモノマーと、これと共重合可能な他のモノマーを反応させて得られる共重合体を含む。他のモノマーとしては、例えば、反応性二重結合を有するフッ素原子置換基を有する炭化水素化合物などが挙げられる。他のモノマーに由来する構成単位は、フッ素樹脂中、例えば、0.1~10モル%とすることができる。
未変性のCNFは水系溶媒に分散しているため、前記フッ素樹脂としては、水性のフッ素樹脂である事が望ましい。水性フッ素樹脂としては、フルオロオレフィンに基づく重合単位を必須構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられ、フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの炭素数2~4程度のフルオロオレフィンが好ましく採用され、特にフッ化ビニリデンが好ましい。さらに、水系溶媒に用いられるフッ素樹脂といては、特許第5594143号、特許第3416314号に記載の、水性フッ素樹脂塗料に用いられるフッ素樹脂も挙げられる。
フッ素樹脂は市販品を使用することができる。例えば、旭硝子株式会社製のルミフロンFE4400、AGCコーテック株式会社製のボンフロン HBC-SR、JSR株式会社製のSIFCLEAR F102、ダイキン工業株式会社製のネオフロンEFEPが挙げられる。特に水系のエマルジョンである旭硝子株式会社製ルミフロン FE4400、AGCコーテック株式会社製ボンフロン
HBC-SR、JSR株式会社製 SIFCLEAR F102(フッ化ビニリデン‐シリコーン‐アクリル共重合体)等が好ましい。これらのうち、架橋剤が既に配合されているAGCコーテック株式会社製ボンフロンHBC-SR、JSR(株)製SIFCLEAR F102が特に好ましい。尚、上記の水性フッ素樹脂は、架橋剤の添加により架橋構造を形成することができ、耐水性や強度等を向上させることが可能という点でも、好適に使用することができる。また、本発明のフッ素樹脂組成物を溶融成形する場合、ダイキン工業株式会社製のネオフロンEFEPのように、CNFが熱劣化する温度(200℃)以下の融点のフッ素樹脂を選択すると、CNFが熱劣化しないため、特に望ましい。
[分散剤]
本件発明に用いる分散剤は、CNFを溶媒中で分散させる分散剤であれば何でも良いが、CNFが一般に水分散性である事より、特に水系溶媒に分散させる分散剤が好ましい。具体的には、水溶性分散剤であり、好ましくは未変性セルロースナノファイバーが表面に有する水酸基などの官能基とイオン結合可能な水溶性分散剤であり、より好ましくは未変性セルロースナノファイバーが表面に有する水酸基などの官能基とイオン結合可能でありかつ静電反発力などにより本発明の樹脂組成物中での未変性セルロースナノファイバーの分散性及び分散安定性を高め得るような分散剤である。該分散剤としては、前述のように水溶性であれば特に限定されないが、陰イオン性分散剤を好ましく使用できる。陰イオン性分散剤としては、例えば、リン酸基、-COOH基、-SOH基、これらの金属エステル基、及びイミダゾリン基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体などが挙げられる。陰イオン性分散剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
陰イオン性分散剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸とその塩、ポリメタクリル酸とその塩、ポリアクリル酸共重合体とその塩、ポリイタコン酸とその塩、オレフィン由来モノマーおよび不飽和カルボン酸(塩)由来モノマーを含む共重合体、ポリマレイン酸共重合体とその塩、ポリスチレンスルホン酸とその塩、スルホン酸基結合ポリエステルなどのカルボン酸系陰イオン性分散剤、アルキルイミダゾリン系化合物などの複素環系陰イオン性分散剤、、酸価とアミン価とを有する陰イオン性分散剤、ピロリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ホスホン酸、これらの塩などのリン酸系陰イオン分散剤、スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リグニンスルホン酸、これらの塩などのスルホン酸系陰イオン分散剤、オルトケイ酸、メタケイ酸、フミン酸、タンニン酸、ドデシル硫酸、これらの塩などのその他の陰イオン性分散剤などが挙げられる。これらの中でも、リン酸、ポリリン酸、リン酸塩、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体塩などが好ましい。
また、陰イオン性分散剤として、アクリル酸やメタクリル酸と、他の単量体を共重合させた共重合体を用いることもできる。他の単量体としては、例えば、α-ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸およびそれらの塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸およびそれらの塩等が挙げられる。
上記した陰イオン性分散剤の塩を構成するカチオンとしては特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、マグネシウム、アンモニウム基などが挙げられる。水に対する溶解性の点からナトリウム、カリウム、アンモニウム基などがより好ましく、カリウムが最も好ましい。
本発明では市販の陰イオン性分散剤を用いてもよく、市販品の具体例としては、アロンA-6114(商品名、カルボン酸系分散剤、東亜合成(株)製)、アロンA-6012(商品名、スルホン酸系分散剤、東亜合成(株)製)、デモールNL(商品名、スルホン酸系分散剤、花王(株)製)、SD-10(商品名、ポリアクリル酸系分散剤、東亜合成(株)製)などが挙げられる。
また、本発明に用いられる陰イオン性分散剤として、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体を用いてもよい。(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体は、本発明により得られるナノファイバー複合体中の各成分の分散安定性、特にナノファイバーの分散安定性を高め得るとともに、例えば、生体適合性を有し、本発明のナノセルロース複合体を医療用途、食品用途などに用いる場合の分散剤として好適に使用できる。ここで、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとは、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを包含する。これらは、常法に従って製造される。例えば、2-ブロモエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて2-メタクリロイルオキシエチル-2′-ブロモエチルリン酸を得、更にこれをトリメチルアミンとメタノール溶液中で反応させて得ることができる。
本発明では(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体の市販品を用いてもよく、市販品の具体例としては、例えば、リピジュアHM、リピジュアBL(いずれも商品名、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、リピジュアPMB(商品名、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチルコポリマー)、リピジュアNR(商品名、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマー)などが挙げられる。これらはいずれも日油(株)製である。
[架橋剤]
本発明の組成物は、架橋剤を含む事ができる。これにより、本発明に係る組成物に加熱処理や放射線処理等の架橋処理を施す事で、フッ素樹脂とCNF組成物の架橋体が得られる。これにより、非粘着部材やしゅう動部材を形成する事が出来る。特にフッ素樹脂が架橋性樹脂である場合、CNF同士間、架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)間、CNFと架橋性樹脂との間のいずれかに架橋構造が導入される。これらのことにより、本発明の樹脂組成物は、耐水性が発現し、機械的強度、剛性が向上することとあいまって、しゅう動特性に優れる組成物とすることができるだけでなく、耐候性、耐熱性、柔軟性、耐薬品性、自己修復性に優れたものになる。
架橋剤としては、架橋性樹脂が有する架橋性や架橋構造、ナノセルロースが表面に有する官能基などとの反応性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、多官能性モノマー、多官能性樹脂、有機過酸化物、重合開始剤などが挙げられる。これらの架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
多官能性モノマーとしては、多官能アクリル系モノマー、多官能アリル系モノマー、ポリイソシアヌレートおよびこれらの混合モノマー等が挙げられる。
多官能アクリル系モノマーの具体例としては、例えば、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも、皮膚刺激性が低いという観点からは、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリル酸エステル)を好ましく使用できる。多官能アクリル系モノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
多官能アリル系モノマーとしては、例えば、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(DA-MGIC)、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネートなどが挙げられる。多官能アリル系モノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる
また、ポリイソシアヌレートとしてはトルエンジイソシアヌレート(TDMI)、ヘキサメチレンジイソシアヌレート(HMDI)などが好適に使用される。
多官能性モノマーは、必要に応じて重合開始剤と併用することができ、また、酸触媒、安定剤等を併用することができる。重合開始剤、触媒、安定剤等の本発明樹脂組成物への添加時期は特に限定されないが、例えば、未変性セルロースナノファイバー、架橋性樹脂、分散剤、水系溶媒と同時に混合される。
多官能性モノマーの配合量は特に限定されないが、架橋性樹脂の固形分重量に対して、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%である。多官能性モノマーの配合量が0.01重量%未満の場合は、本発明樹脂組成物の機械的特性、熱的特性が顕著に向上しない傾向がある。多官能性モノマーの配合量が10重量%を上回る場合には、本発明樹脂組成物の伸びや衝撃強さなどの機械的特性に悪影響を及ぼす傾向がある。
多官能性樹脂(多官能性ポリマー)の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性エポキシ樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などの放射線硬化性樹脂などが好ましい。なお、多官能性樹脂は架橋性樹脂よりも相対的に分子量の低いものである。多官能性樹脂の分子量は、重量平均分子量として1000未満が好ましい。多官能性樹脂は、架橋性樹脂と同様に、水酸基やカルボキシル基などの親水性基で変性された自己乳化性のもの、乳化剤により分散媒中に分散可能な強制乳化型のものが好ましい。これらの樹脂を架橋剤として用いる場合、架橋性樹脂とは樹脂種の異なるものを用いるのが好ましい。多官能性樹脂の配合量は、架橋性樹脂の固形分重量に対して好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%である。
有機過酸化物は、例えば、加熱によりフリーラジカルを発生し、これにより、架橋性樹脂同士間、未変性セルロースナノファイバー同士間、架橋性樹脂と未変性セルロースナノファイバーとの間の少なくとも一部を架橋する。なお、有機過酸化物は重合開始剤の範疇にも入るものであるが、本明細書では重合開始剤とは別個に記載する。有機過酸化物の具体例としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。有機過酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。有機過酸化物の配合量は、架橋性樹脂及び未変性セルロースナノファイバーの合計固形分量に対して好ましくは0.0001~10重量%、より好ましくは0.01~5重量%、さらに好ましくは0.1~3重量%である。
重合開始剤は、例えば、加熱又は電離放射線照射によりフリーラジカルを発生し、これにより、架橋性樹脂同士間、未変性セルロースナノファイバー同士間、架橋性樹脂と未変性セルロースナノファイバーとの間の少なくとも一部を架橋する。重合開始剤の具体例としては、例えば、アゾ化合物、過硫酸塩などが挙げられる。また、重合開始剤は水溶性のものでも、非水溶性のものでもよい。
重合開始剤の具体例としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの疎水性アゾ化合物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などの水溶性アゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩名とが挙げられる。重合開始剤の配合量は、架橋性樹脂及びナノファイバーの合計固形分量に対して、好ましくは0.0001~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、さらに好ましくは0.1~1重量%程度である。
なお、本発明では架橋剤と共に、酸触媒を用いてもよい。酸触媒は、例えば、架橋性性樹脂の架橋性基および/または架橋構造と架橋剤の求核性反応基との反応を促進させるために用いられる。酸触媒の具体例としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸等の有機酸、塩酸、硫酸、スルホン酸等の無機酸、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アルミニウムなどのルイス酸が挙げられる。酸触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸触媒の配合量は、架橋性樹脂の固形分量100重量部に対して好ましくは0.1~8重量部である。酸触媒の配合量が0.1重量部未満では、架橋度が低くなりすぎる恐れがあり、8重量部を超えるとナノファイバー複合体中での相溶性が悪化する恐れがある。
特に、本件発明においては、架橋速度をコントロールしやすいという理由で、ポリイソシアヌレートを用いる事が望ましい。
[溶媒]
本件発明において親水性CNFを用いる場合、CNFの分散性を向上させるため、水系溶媒を用いる事が好ましい。ここで水系溶媒は、水、水溶性溶媒、水と水溶性溶媒との混合溶媒などを含む。水溶性溶媒としては、前述の水溶性溶媒と同じものをいずれも使用でき、水溶性溶媒としては、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール)、グリセリン、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトアミドなどが好ましい。これらの水溶性溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい水系溶媒は、水、水と水溶性溶媒との混合溶媒などであり、特別な廃液処理設備が不要で環境汚染をしにくい水が特に好ましい。
本件発明において疎水性CNFを用いる場合、CNFの分散性を向上させるため、疎水系溶媒を用いる事が好ましい。疎水性溶媒としては、乾燥性能を考慮すると、揮発性溶媒が好ましい。このような疎水性溶媒としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン類、ハイドロフルオロカーボン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル等の有機溶媒が挙げられる。
[アルカリ剤]
また、本発明の樹脂組成物にアルカリ剤を配合し、そのpHを弱アルカリに調整することにより、未変性セルロースナノファイバーの分散性及び分散安定性をさらに向上させても良い。アルカリ剤としては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。アルカリ剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[その他の添加剤]
また、本発明では、得られる本発明樹脂組成物の好ましい特性を損なわない範囲で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末などの固体潤滑剤、ヒンダードフェノール、リン酸エステルや亜リン酸エステルなどの酸化防止剤、耐熱安定剤、トリアジン系化合物などの耐候性付与剤等の安定剤、染料等の着色剤、揆水剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤などを配合することができる。これらの添加剤は、上記した各成分と共に同時に一段で混合してもよく、また、得られた本発明の樹脂組成物に添加及び混合してもよい。
これらの添加剤の中でも、酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが挙げられる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤の配合量は、未変性セルロースナノファイバー及び架橋性樹脂の合計固形分量又は未変性セルロースナノファイバー、架橋性樹脂及び分散剤の合計固形分量に対し、通常0.1~10重量%。好ましくは0.2~5重量%である。
[製造工程]
本発明の樹脂組成物は、フッ素樹脂、CNF及び分散剤溶媒内で攪拌混合し、CNFを溶媒内で分散させる事で混合分散体を得る混合分散工程と、溶媒を乾燥させる事で乾燥組成物を得る乾燥工程と得られる。さらに、この乾燥組成物を成形加工する成形工程を得る事で、フッ素樹脂成形品が得られる。さらに、混合分散工程の前に、CNFを溶媒内に予備分散させる予備分散工程を設ける事ができる。
[予備混合工程]
予備混合工程では、溶媒に、CNF、フッ素樹脂、分散剤を、ロッキングミル、ヘンシェルミキサー、インラインミキサー、二軸ニーダー等の混合装置によって予備的に混合する。また、架橋剤を同時に混合しても良い。予備混合工程を経る事により、溶媒内でCNFやフッ素樹脂等が均一に混合され、後の工程である混合分散工程の効率が良くなる。
[混合分散工程]
混合分散工程では、CNF、フッ素樹脂、分散剤、架橋剤等の添加剤を溶媒内で機械的に攪拌する事で混合分散させる。混合分散工程を経る事で、CNF及びフッ素樹脂が溶媒内に分散する。特に分散剤がCNFの溶媒への分散性を向上させる。ここで混合分散は、例えば、高圧ホモジナイザー、水中カウンターコリジョン、高速回転分散機、ビーズレス分散機、高速撹拌型メディアレス分散機等を用いて、機械的解繊処理を同時に行うと、CNFの凝集が解け、分散剤と効率よく結合して、さらにCNFの分散効率が向上するため、望ましい。特にCNFの分散性が高く、不純物の混入が少ないという理由から、高速撹拌型メディアレス分散機が好ましい。
高速攪拌型メディアレス分散機とは、分散メディア(例えば、ビーズ、サンド(砂)、ボール等)を用いず、せん断力を利用して分散処理を行う分散機である。高速攪拌型メディアレス分散機は市販品を使用できる。該市販品としては、例えば、DR-PILOT2000、ULTRA-TURRAXシリーズ、Dispax―Reactorシリーズ(いずれも商品名、IKA社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.パイプラインホモミクサー(いずれも商品名、プライミクス(株)製)、ハイ・シアー・ミキサー(商品名、シルバーソン社製)、マイルダー、キャビトロン(いずれも商品名、大平洋機工(株)製)、クレアミックス(商品名、エムテクニック(株)製)、ホモミキサー、パイプラインミキサー(商品名、みずほ工業(株)製)、ジェットペースタ(商品名、日本スピンドル製造(株)製)、アペックスディスパーザー ZERO(商品名、(株)広島メタル&マシナリー製)等が挙げられる。
ここで、高速撹拌型メディアレス分散機を用いる場合、せん断速度は、900,000[1/sec]を超えることが好ましい。せん断速度が900,000[1/sec]以下である場合には、未変性セルロースナノファイバーのさらなる解繊、および合成樹脂への分散が共に不十分になる傾向がある。また、せん断部クリアランスは、せん断速度、上記各成分の混合液の粘度などに応じて適宜設定されるが、未変性セルロースナノファイバーを最大限細径化し、また、未変性セルロースナノファイバーの合成樹脂中への分散性の一層の向上を図る観点から、100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上が更に好ましい。また、上記各成分の混合液の粘度が高くても、分散機の回転数を適正範囲に保持しつつ高分散性を確保する観点から、クリアランスは、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.2mm以下がさらに好ましい。また、ロータの回転周速は、せん断速度に応じて適宜設定されるが、未変性セルロースナノファイバーの最大限の細径化径や、合成樹脂中への分散性の一層の向上等を図る観点から、18m/sec以上が好ましく、20m/sec以上がより好ましい。また、しゅう動特性の観点から最適な10~100nmという繊維径を得るためには、回転周速は、60m/sec以下が好ましく、50m/s以下がより好ましく、45m/sec以下がさらに好ましい。回転周速は、ロータの最先端部分の周速である。
また、CNF及び分散剤を含む溶媒を、前記メディアレス分散機等を用いて攪拌混合し、凍結乾燥等の乾燥処理を行った後に粉砕処理する事で、CNF及び分散剤からなる組成物の粉体が得られる。このCNF及び分散剤からなる組成物の粉体を、フッ素樹脂を含む溶媒に添加した後、混合分散工程を行う事もできる。
[乾燥工程]
乾燥工程では、CNF、フッ素樹脂、分散剤、架橋剤等の添加剤を溶媒内で混合分散させた分散液容器に注ぎこみ、乾燥させる。これにより、本件発明の樹脂組成物が得られる。乾燥手段としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などの公知の方法を採用することができる。これらのうち、分散剤による静電反発によりもたらされた水分散体におけるCNFの分散状態を保持したまま水分除去が可能であることから、凍結乾燥が特に望ましい。ここで、乾燥には溶媒をほぼ全て揮発させ、樹脂組成物の固形物やスラリーを得る方法の他、溶媒の一部を乾燥させる事で分散液の濃縮液としても良い。
[成形工程]
乾燥工程で得られた樹脂組成物は、硬化処理や溶融成形により、所望の形状に成形できる。硬化処理は、乾燥工程で得られたスラリーや濃縮液を、塗膜状等の所望の形状に成形した後、架橋や乾燥する事で行うより行う。また、溶融成形としては、固形物等を射出成形、押出成形が挙げられる。ここで、CNFは200℃以上熱劣化が始まるため、過度な加熱を行わずに硬化及び成形可能な架橋処理が成形工程として特に好ましい。以下に、基材等に塗膜を形成するコーティング工程及び架橋処理する架橋工程について記載する。尚、溶融成形を行う場合、CNFの熱劣化が始まる温度以下で溶融成形可能な樹脂を選択する事が、CNFが熱劣化しないため、望ましい。
[コーティング処理]
コーティグ工程は、例えば、樹脂組成物又はその架橋体の溶液又は分散液を基材表面に塗布し、加熱乾燥することにより、塗膜状成形品が得られる。ここで、塗布方法としては特に限定されず、例えば、スピンコーター法、バーコーター法、スプレーコート法、刷毛、ヘラ、ブラシやローラーによる塗布、ディッピング法、電着塗装法などが挙げられる。
[架橋工程]
架橋工程では、混合工程で得られた本発明の樹脂組成物の溶液又は分散液に対して架橋処理を施す。このとき、樹脂組成物が架橋性樹脂及び架橋剤を含む場合、又は樹脂組成物が自己架橋性樹脂及び必要に応じて架橋剤を含む場合は、少なくとも一部の未変性セルロースナノファイバー間、少なくとも一部の未変性セルロースナノファイバーと少なくとも一部の架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)との間、および少なくとも一部の架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)間の1又は2以上に架橋剤及び/又は自己架橋性樹脂による架橋構造が形成された架橋体を含む本発明の樹脂組成物の架橋体の溶液又は分散液が得られる。これを後述する成形工程に従って成形することにより、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐傷つき性、吸水性、保水性、ガスバリア性、自己修復性などが一層向上した、架橋構造を含む成形品が得られる。また本発明では、水系溶媒を分散媒として用いているので、本発明の樹脂組成物の溶液又は分散液にそのまま架橋処理を施しても、安全性が高いという利点がある。
架橋処理の方法としては特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に含まれる架橋剤を利用した化学的架橋法および物理的架橋法が好ましい。
化学的架橋法の具体例としては、例えば、加熱による架橋などが挙げられる。加熱条件は、樹脂組成物の成分組成、固形分濃度、架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)および架橋剤の種類や配合量、設定される架橋度合い、得られる樹脂組成物の架橋体に設定される各物性の値などに応じて適宜選択されるが、通常は約30℃以上の温度下での長時間加熱により架橋が形成される。架橋に要する時間を短くして工程全体としての省力化を図り、また架橋後の本発明樹脂組成物の各物性をさらに向上させる観点から、加熱条件は、好ましくは30℃~220℃の温度下で1分以上、より好ましくは100℃~180℃の温度下で1~40分、さらに好ましくは125℃~140℃で1~20分(好ましくは5~10分)である。
物理的架橋の具体例としては、例えば、電離放射線の照射による架橋などが挙げられる。電離放射線の照射による架橋は、制御が容易であるという利点がある。電離放射線としては特に限定されないが、電子線、γ線、X線、荷電粒子線、紫外線、中性子線等が挙げられる。これらの中でも、電離放射線を発生させる装置の入手容易性、架橋反応の制御の容易性、安全性等の観点から、紫外線、γ線、電子線などが好ましい。
電離放射線の照射線量は、本発明樹脂組成物の成分組成、固形分濃度、架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)および架橋剤の種類や配合量、設定される架橋度合い、得られる樹脂組成物り架橋体に設定される各物性の値などに応じて適宜選択できるが、好ましくは10kGy~1000kGy、より好ましくは10~50kGyである。照射線量が10kGy未満では、最終的に得られる成形品の架橋度が不足し、成形品の物性が低下する傾向がある。一方、照射線量が1000kGyを超えると、成形品の着色が大きくなるとともに、架橋構造が形成される領域以外での分子鎖の切断などが増大することにより、成形品の物性が低下する傾向がある。
架橋の度合いは、架橋度として通常20~98%、好ましくは60~98%である。架橋度が20%未満では、最終的に得られる成形品の剛性、耐クリープ性、耐摩耗性などの機械的強度や耐熱性のさらなる向上を得られない場合がある。また、架橋度が98%を超えると、架橋構造が形成される領域以外での分子鎖の切断などが増大することにより、成形品の物性が低下する場合がある。
[その他の成形工程]
上記の成形工程以外にも、溶液キャスト(流延)法のほか、異形押出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等によって本件発明の樹脂組成物を成形できる
尚、成形工程では、成形と架橋とが同時に実施されることがある。例えば、注型や圧縮成形などの金型内で樹脂組成物又はその架橋体の溶液又は分散液を高温状態(120~150℃程度)に保持する成形形態、得られた成形品を金型から取り出した後に熱風炉等でポストキュアする成形形態、基材表面に樹脂組成物又はその架橋体の溶液又は分散液の塗膜を形成し、これを熱風炉等でポストキュアする成形形態、樹脂組成物又はその架橋体の溶液又は分散液をハイドロゲル化した固形物をそのままポストキュアする成形形態などでは、成形と化学的架橋とが同時に行なわれる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお実施例中で用いた各成分、装置、およびゼータ電位、CNFの分散性、鉛筆硬さ、耐擦傷性、摩擦試験における摩擦力、摩耗速度の測定方法は下記のとおりである。
[水系フッ素樹脂]
水系フッ素樹脂として、以下の3種類の水系フッ素樹脂エマルジョンを用いた。
(A-1)ルミフロン FE4400 (商品名、旭硝子(株)製、固形分50%)
(A-2)ボンフロン HBC-SR (商品名、AGCコーテック(株)製、固形分37%)
(A-3)SIFCLEAR F102 (商品名、JSR(株)製、固形分47%)
[未変性CNF]
(B)未変性CNF(商品名:BiNFi-s、(株)スギノマシン製、固形分10重量%の水分散体)を用いた。
[分散剤]
(C)アクリルスルホン酸系分散剤(商品名:アロン A-6012、水溶性、東亞合成(株)製)を用いた。
[架橋剤]
(D)水系フッ素樹脂(A-1)の架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI、デュラネート WL70-100、旭化成(株)製、水溶性液体)を用いた。(A-2)、(A-3)については、架橋剤が製造者によりすでに配合済されており、新たに添加しなかった。
[高速撹拌型メディアレス分散機]
ビーズを使わずにスラリーの分散・乳化・混合を行うことのできるアペックスディスパーザーZERO(商品名、(株)広島メタル&マシナリー製)を用い、CNFの化機械的解繊処理を図るとともに、CNF/水性フッ素樹脂水分散液を調整した。
CNF/水性フッ素樹脂水分散液は、CNF、水系フッ素樹脂、分散剤、架橋剤を、すべて固形分換算で計量後、プロペラ式卓上型攪拌機にて予備混合後、アペックスディスパーザーZEROに投入し、内部ステータに対するロータの回転週速を30m/sec、せん断部のクリアランスを1mmとして、10分間の処理を5回行うことで、CNFの解繊処理と同時に混合処理して水分散液(E)を調製した。
[塗工処理]
得られた水分散液を、バーコーター(塗工機3、(株)井元製作所製)を用いて、塗布速度20mm/secにて基材に塗布し、その後架橋処理として、小型電気炉にて150℃×1時間加熱処理を行い、塗工膜(F)を得た。
塗布基材には、PETフィルム(OHPフィルムPPC用、コクヨ(株)製、0.1mm厚)を用い、塗工および風乾後前記架橋処理にて塗工膜(F-1)を得た。塗工膜の厚さは50~100μmとした。
また、下記のピンディスク試験用試料として、SUS304製ディスク(φ90×φ20×7t、表面粗さRa=0.2μm)を用いて同様に塗布し、風乾後、その後架橋処理を行って塗工膜(F-2)を得た。塗工膜の厚さは50~100μmとした。
[ゼータ電位測定]
実施例および比較例で得られたナノファイバー複合体1mlをディスポーザブルガラス試験管に入れ、精製水で希釈し、CNF濃度を0.01重量%に調整する。次いで、30分超音波処理後、下記のゼータ電位測定に供した。使用機器および測定条件は以下のとおりである。
測定機器:ゼータ電位、粒径測定システム(大塚電子(株)製)
測定条件:ゼータ電位用 標準セルSOP
測定温度:25.0℃
ゼータ電位換算式:Smolchowskiの式
溶媒:水(屈折率=1.33、粘度=0.89cP、誘電率=78.3F/mとした)
システム適合性:Latex262nm標準溶液(0.001%)で規格値の範囲を超えない。
[摩擦摩耗特性]
塗工膜のしゅう動特性は、ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、SUS304製ディスク面に塗工した(F)CNF/水系フッ素樹脂塗工膜に対して、S45C製半球状(φ9)ピンをしゅう動させて、生じる摩擦力及び塗工膜の摩耗速度を調べた。
摩耗速度は、試験開始後に塗工膜が半球状ピンがしゅう動して摩耗し、下地のSUS304が露出する点を摩耗寿命とし、試験開始後に露出した時間で摩耗高さを除することで求めた。摩耗寿命時間は、ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機の測定データから、摩耗進行が停止し、かつ摩擦力が高くなり始める点を求めることで判定した。
摩擦力は、ディスク上の塗工膜と半球状鋼製ピン試料が下記の条件でしゅう動する際に発生する摩擦力の値をそのまま用いた。
また、試験後の鋼製ピンのしゅう動部を目視観察し、表面の色の変化および金属摩耗粉の発生の有無から、その荒れの有無を判定した。色の変化としては、金属が削れて光沢が現れたり、濃い色の摩耗粉が現れたりすると、鋼製ピン表面が荒れたものとして判定した。
<試験条件>
試験装置 :ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機(商品名:オートピンディスク、スターライト工業(株)製)
相手ディスク :SUS304
(φ90×φ20×7t、Ra=0.2μm)
しゅう動円直径 : 55 mm
試験荷重 : 0.2kgf
試験速度 : 0.2 m/sec
試験温度 : 常温
試験時間 : 90min
<実施例1>
水系フッ素樹脂(A-1)を用い、(B)CNFを水系フッ素樹脂に対して1重量%、(C)分散剤を(B)に対して4重量%、(D)架橋剤を(A-1)に対して10重量%添加し、プロペラ式卓上型攪拌機にて予備混合後、アペックスディスパーザーZEROに投入し、CNFの解繊処理と混合処理を同時に行い、水分散液(E-1)を得た。
該水分散液をPETフィルム(OHPフィルムPPC用、コクヨ(株)製、0.1mm厚)およびSUS304製ディスクにバーコーターを用いて塗工し、乾燥後、小型定温電気炉にて150℃×1時間加熱保持することで架橋処理を行った。
塗工したPETフィルムを用いて、CNFの分散性を肉眼で以下の基準でランク付けして評価した。
<分散性評価基準>
1:CNFが直径1mm以上の凝集体となり斑になっている。
2:CNFの凝集体は直径1mm以下である。
3:わずかにCNFの凝集体が見られる。
4:凝集体はほとんど見られない。
5:凝集体は見られず、均一な塗工膜である。
また塗工膜の鉛筆硬度をJIS
K5600-5-4に従って測定した。
耐擦傷性は、塗工膜の表面に縦横10mmのスチールウール♯0000(日本スチールウール(株)製)を密着させ、400gの荷重下に移動距離130mm、移動速度約100mm/秒で、該スチールウールをコーティング膜の長手方向に10回往復移動させた。その後、コーティング膜表面の状態を目視観察し、以下の基準に基づいて耐擦傷性を評価した。
◎:擦り傷が全くない。
○:傷の幅が非常に小さくかつ寸法が10mm以下と短い擦り傷が数本ある。
△:傷の幅は非常に小さいものの、寸法が10mmを超えるような擦り傷が10本を超えて多数存在する。
×:傷の幅が大きく、明確であり、表面には摩耗粉が散らばっている。
さらにSUS304製ディスク上の塗工膜に対する半球状鋼性ピンの摩擦力及び塗工膜の摩耗速度を、ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて測定した。
<実施例2>
実施例1において、(B)CNFの添加量を3重量%とした以外は、実施例1と同様に操作し、水分散液(E-2)を調製した。該塗工液のゼータ電位を測定するとともに、該水分散液をPETフィルム、およびSUS304ディスクに塗工し、実施例1と同一条件で架橋処理後、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<実施例3>
実施例1において、(B)CNFの添加量を5重量%とした以外は、実施例1と同様に操作し、水分散液(E-3)を調製し、該塗工液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンディスク試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<実施例4>
実施例1において、(B)CNFの添加量を10重量%とした以外は、実施例1と同様に操作し、水分散液(E-4)を調製し、該塗工液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<実施例5>
実施例2において、水性フッ素樹脂(A-1)の代わりに、水性フッ素樹脂(A-2)を使用した以外は、実施例2と同様に操作し、水分散液(E-5)を調製し、該水分散液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<実施例6>
実施例2において、水系フッ素樹脂(A-1)の代わりに、水性フッ素樹脂(A-3)を使用した以外は、実施例2と同様に操作し、水分散液(E-6)を調製し、該水分散液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<比較例1>
実施例1において、CNFを加えずさらに(C)分散剤を加えなかった以外は、実施例1と同様に操作し、水分散液(E-7)を調製し、該水分散液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<比較例2>
実施例1において、CNF添加量を15重量%とした以外は、実施例1と同様に操作し、水分散液(E-8)を調製し、該水分散液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<比較例3>
実施例2において、(C)分散剤を添加しなかった以外は、実施例2と同様に操作し、水分散液(E-9)を調製し、該水分散液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<比較例4>
実施例2において、(B)CNFの代わりに、(F)ミルドガラス繊維(EFH30-01,セントラル硝子(株)製、平均繊維長30μm)を5重量%添加し、さらに(C)分散剤を添加せず、また水分散液の攪拌・分散をプロペラ式卓上攪拌装置を用いて300rpm×30分攪拌した以外は、実施例2と同様に操作し、水分散液(E-10)を調製し、該水分散液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
<比較例5>
実施例2において、(B)CNFの代わりに、(G)ピッチ系炭素繊維のミルドファイバー(商品名:ダイヤリード K6371M、三菱ケミカル(株)製、平均繊維長:50μm)を用い、さらに(C)分散剤を添加せず、また水分散液の攪拌・分散をプロペラ式卓上攪拌装置を用いて300rpm×30分攪拌した以外は、実施例2と同様に操作し、水分散液(E-11)を調製し、該水分散液のゼータ電位を測定するとともに、塗工膜の分散性、鉛筆硬度、耐擦傷性及びピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦力及び摩耗速度を測定した。
Figure 0007184524000001
<実施例の効果>
表1から、(A)水系フッ素樹脂に(B)CNFおよび(C)分散剤を添加し、メディアレス分散装置で(B)CNFを水系フッ素樹脂中で分散させた水分散液は、架橋処理することで塗工膜の鉛筆硬度、耐擦傷性、塗工膜の摩擦寿命が大きく向上するとともに、摩擦力が低下した。(実施例1~4)。
また、これの水分散液はいずれもゼータ電位が‐30mV以下と低く、またPETフィルムの塗工面を目視で評価すると、いずれもCNFの分散性は良好であった。
特に、未変性CNFの添加量を多くすると、添加量に応じて鉛筆硬度が高くなり、摩耗速度が小さくなる。摩擦力は、(A-1)水系フッ素樹脂ではCNF添加量に応じて鉛筆硬度が高くなり、摩擦力が低下しているが、水系フッ素樹脂を(A-1)から(A-2)あるいは(A-3)に代えると、CNF分散性がやや低下するとともに、鉛筆硬度が低下し摩耗速度が大きくなっている。これは水系フッ素樹脂中のフッ素樹脂の共重合成分の違いにより、フッ素樹脂の分子構造が柔軟になって、摩擦における凝着成分が大きくなったためと考えられる。
実施例1、および実施例2において、分散剤を(C-1)アクリルスルホン酸系分散剤(商品名:アロン A-6012、東亞合成(株)製、水溶性)から、(C-2)カルボン酸系分散剤(商品名:アロン A-6114、東亞合成(株)製、水溶性)、あるいは(C-3)ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(リピジュア BL-405、(株)日油製、水溶性)とした以外は実施例1、実施例2とそれぞれ同様に操作して、同様に評価したところ、それぞれ実施例1、実施例2と同様の結果を得た。
実施例1~5の組成の一部を変更した材料では、高いゼータ電位、分散性の低下、摩擦摩耗特性の低下が見られる。
さらに、CNFを他の一般的に用いられる強化繊維であるガラス繊維あるいは炭素繊維に置き換えると、ピンディスク試験において相手ピン試料の表面に荒れが生じ、摩擦摩耗用とではふさわしくない。

Claims (11)

  1. 水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に分散可能なフッ素樹脂を主成分とし、
    前記フッ素樹脂が、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンから選ばれる一種以上の炭素数2~4のフルオロオレフィンに基づく重合単位を必須成分とするフルオロオレフィン系共重合体であり、
    該フルオロオレフィン系共重合体が、 フルオロオレフィンに基づく繰返し単位と、カルボキシ基および/又は水酸基を含む繰返し単位からなる、フルオロオレフィン共重合体の水系エマルジョンであり、
    前記フルオロオレフィン系共重合体と、平均直径が1nm以上100nm以下であり且つアスペクト比が100以上であるセルロースナノファイバー、前記セルロースナノファイバーを前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒中で分散させる分散剤と、を含む樹脂組成物。
  2. 前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバーである事を特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に分散可能なフッ素樹脂が架橋可能な構造を有する架橋性フッ素樹脂である事を特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記セルロースナノファイバーを前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒中で分散させる分散剤が、該水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒内でセルロースナノファイバーを分散させるアクリルスルホン系分散剤、カルボン酸系分散剤、ホスホリルコリン系分散剤である事を特徴とする、請求項1~3いずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 架橋剤を含む事を特徴とする、請求項1~4いずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 摩擦面の少なくとも一部が請求項1~5いずれかに記載の前記樹脂組成物からなるしゅう動部材。
  7. 非粘着面の少なくとも一部が請求項1~5いずれかに記載の前記樹脂組成物からなる非粘着性部材。
  8. 請求項1~5いずれかに記載の樹脂組成物からなるコーティング材料。
  9. 水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に分散可能なフッ素樹脂が、
    フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンから選ばれる一種以上の炭素数2~4のフルオロオレフィンに基づく重合単位を必須成分とするフルオロオレフィン系共重合体であり、
    該フルオロオレフィン系共重合体が、 フルオロオレフィンに基づく繰返し単位と、カルボキシ基および/又は水酸基を含む繰返し単位からなる、フルオロオレフィン系共重合体の水系エマルジョンであり、
    前記フッ素樹脂と、平均直径が1nm以上100nm以下であり、且つ、アスペクト比が100以上であるセルロースナノファイバー、セルロースナノファイバーを前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒中で分散させる分散剤と、を含む樹脂組成物を前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒内で攪拌混合し、前記セルロースナノファイバーを前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒内で分散させる事で混合分散体を得る混合分散工程と、
    前記混合分散体の溶媒を乾燥させる事で乾燥組成物を得る乾燥工程と、
    を含む事を特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  10. 前記混合分散工程において、前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に分散可能なフッ素樹脂が、前記水、または水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒内でエマルジョンを形成する事を特徴とする、請求項9に記載の樹脂組成物の製造方法。
  11. 前記乾燥組成物を成形加工する成形工程を含む事を特徴とする請求項又は10に記載の樹脂成形品の製造方法。
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