JP2019214671A - 振動減衰性樹脂組成物および振動減衰性樹脂組成物の塗工方法 - Google Patents

振動減衰性樹脂組成物および振動減衰性樹脂組成物の塗工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量で塗工作業が容易であり、かつ振動減衰性能の安定した、振動減衰性樹脂組成物およびその塗工方法を提供すること。【解決手段】溶媒可溶性または溶媒分散性示しかつ架橋可能な合成樹脂の溶液にセルロースナノファイバー及び分散剤を添加して、セルロースナノファイバーを均一に安定分散させた分散液を作製し、該分散液を塗工液として基材に塗工した後に架橋処理して、樹脂及びセルロースナノファイバーのネットワーク構造を形成することで、高い振動減衰特性が得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、物体に繰り返し外力が作用した際に発生する振動を吸収、減衰、あるいは軽減させるための振動減衰性樹脂組成物、及びその塗工方法に関するものである。
物体に比較的短い周期で繰返し応力が付加されると、振動が生じる。振動の発生要因は、物体に取り付けられた機器類の回転運動や往復運動、該物体が気体や液体などの流体中にあればその流体自体の脈動による振動や流体外部からの振動伝播、あるいは物体に作用する人をはじめとする生物からの外部振動など様々である。
このような振動は、物体を構成する自動車や鉄道車両、船舶、航空機、家電機器、産業用機器、あるいは建造物などにおいて問題となりやすく、振動減衰材料を使用して振動を低減し、これら機器類、建造物における安全性、静粛性を高め、機器類や建造物の長寿命化を図ることが試みられている。
従来は、振動減衰材料として振動吸収性や吸音性を有する板状成形体、シート状成形体が多用され、機器類や建造物の振動伝播箇所や振動発生箇所に振動減衰材料を密接させることで、振動を吸収、減衰、低減させていた。
しかしながら、設置すべき機器類や建造物の形状や設置条件などにより、振動減衰材料を密接させる形態に制限を受け、振動減衰効果が十分に発揮されないなどの問題があった。
これらの問題に対応するため、塗布タイプの振動減衰材料や制振材料が開発されてきた。塗布タイプの振動減衰材料は、塗装基材の振動により塗工膜が振動・伸縮することで塗工膜の内部摩擦が生じ、振動エネルギーを熱エネルギーに変換、放散することで振動減衰効果を得ている。
特許文献1には、ガラス転移温度が−50℃〜5℃のアクリル酸エステル共重合体、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるエマルジョンに、炭酸カルシウムと転炉スラグ粉末の双方またはいずれか一方からなる無機充填剤のほか、ヘクトライト系とポリカルボン酸系の双方又はいずれか一方からなる増粘剤と、ポリオキシアルキレン系とポリカルボン酸系の双方又はいずれか一方からなる分散剤からなる分散剤を含有してなる、スプレー塗装用の水系制振塗料が開示されている。
特許文献2には、塗工膜を形成する水系分散媒に分散した水系樹脂分散液に制振性を高めるためのマイカを添加し、さらに炭酸カルシウムと、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン及びフライアシュバルーンから選ばれる少なくとも一種の無機中空粒子、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包する熱膨張性マイクロカプセル、及びアクリル系樹脂粒子を含有する制振塗料組成物が開示されている。
特許文献3には、水系熱可塑性樹脂エマルジョンに芳香族炭化水素類、複素芳香族化合物類、有機酸類及びそれらの変性物からなる群から選択された少なくとも1種からなる可塑剤、及びポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系、不飽和カルボン酸(共)重合体系、セルロース誘導体系、ポリエーテルウレタン変性物系からなる群から選択された少なくとも1種からなる高分子系増粘剤を含む、振動減衰性樹脂組成物が開示されている。
特許文献4は、ウレタンプレポリマーと硬化剤、微細化セルロースを含有する発泡ウレタン組成物を用いる自動車ショックアブソーバ用バンプクッションが開示されている。ポリオールにセルロース粉を添加し、機械的せん断力を付加する事によりポリオール中に分散したセルロース粉由来のナノセルロース(CNF)を得ており、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含む主剤と、前記微細化セルロースを含むポリオール及び水を含む硬化剤とを含有する発泡ウレタン組成物を用いて得られることを特徴とするバンプクッションが開示されている。
特許文献5には、TEMPO酸化セルロースの水分散液および水溶性ポリマーなどの添加物からなる組成物を用いた音響機器振動板が開示されている。該振動板はTEMPO酸化セルロースを添加することで弾性率が高くなって剛性が向上し、より高音側の周波数領域が再生可能になるとしている。
特許文献6には、パルプ繊維の空隙部に多孔質セラミクスを包埋させ、樹脂バインダーとともに混抄する電気音響用振動板の製造方法が開示されている。該振動板は、多孔質セラミクス粒がパルプ繊維の空隙部に緻密に存在することで、振動板のヤング率が向上すると共に、該振動板の振動により生じた摩擦が振動板内部に蓄積され、該振動板自体の内部損失が向上するとしている。多孔質セラミクスの効果により振動板の密度が低下し、内部を伝播する音速が高くなって、該振動板を使用するスピーカの高音特性が向上するとともに、パルプ繊維と多孔質セラミクス粒が接触して生じる摩擦発熱によって内部損失を高くすることができる。
特許第3209499号 特許第555万8734号 WO2014/126159 WO2014/057740 特許第5975458号 特開平5-236590
特許文献1では、塗工膜の振動減衰効果を高めるために、充填剤として比重の高い転炉スラグを多量に添加している。比重の高い充填材を添加すると、塗料そのものの重量が増加し、塗料の保存中に充填材が沈降しやすくなる。沈降を防ぐためにヘクトライトといった微小鉱物とポリカルボン酸からなる分散剤を用いた増粘剤を添加している。増粘剤を添加すると、塗料粘度が高くなり塗装の作業性が悪くなる。また、塗料の粘度を高くしただけでは、貯蔵が長時間にわたると充填材が徐々に沈降する。高温雰囲気では塗料の粘度が低下し、さらに充填材が沈降しやすくなる。沈降した充填材は凝集体を形成し、該凝集体を再分散させるための手間が必要、あるいは困難となる。
特許文献2では、常温付近にガラス転移温度を有するアクリル樹脂粒子を水系分散媒に分散させた水系樹脂組成物からなる塗工膜の制振性を高めるために、マイカ及び炭酸カルシウムを添加し、さらに軽量化のために、無機中空粒子と熱膨張性マイクロカプセルを添加した例が開示されている。該無機中空粒子は、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーンが例示されているが、このような無機中空粒子は外力を受けると破壊されやすい。特に、塗料を攪拌したり、スプレー法、またはバーコート法により塗装したりする際に生じるせん断作用により無機中空粒子が破壊されると中空構造が保持されず、制振性能が低下したり、軽量性が損なわれたりする可能性がある。
特許文献3は、ポリマーの水系エマルションに、可塑剤及び高分子系増粘剤を含む振動減衰性樹脂組成物が記されている。可塑剤はあらかじめポリマー中に含まれているものであるか、水系エマルジョンであることが好ましく、その構造は芳香族炭化水素類、複素芳香族化合物類、有機酸類、及びこれらの変性物からなる群から選択された少なくとも1種である。その分子構造としては、前記可塑剤の重量平均分子量1000に対して水酸基などの極性基が1個以上の割合で有し、さらに重量平均分子量が160〜1000であることが好ましく、前記の特徴を有する可塑剤は、ブリードアウトや加熱乾燥時の揮発が防止でき、振動減衰性能をさらに高めることができるとされている。
ただし、本発明では可塑剤を塗工膜の基材ポリマーに添加しているので、塗工膜の強度や硬さなどの機械的特性が低下が避けられないという問題がある。
特許文献4に開示されているバンプクッションは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含む主剤と、微細化セルロースを含むポリオール及び水を含む硬化剤とを含有する発泡ウレタン組成物を用いている。実施例では、セルロース粉をポリオール中で長時間混練することで、平均粒子径37μmからを平均粒子径3.5〜4.8μmまで微細化している。混練後の微細化セルロースには、100nmより細かく解れているセルロースナノファイバーが存在するものの、上記条件ではナノレベルにまで微細化したものはごく一部であり、セルロース粉が充分に解繊しているとは云えず、セルロースナノファイバーの補強効果としては充分に発揮されない。
特許文献5には、TEMPO酸化セルロースを、液状の分散媒に分散させた分散液を所定形状に成形して振動板を作製しており、該分散液の内容として
(a)TEMPO酸化セルロース以外の、パルプやセルロースの少なくとも一方
(b)紙の一般的な薬材として、耐水性を付与するためのサイズ剤や紙力剤の少なくとも一方
(c)所定の物性を得るための前記分散媒に可溶なポリマー
(d)強化剤としての粒子または繊維状のフィラー
(e)所定の物性を得るための粘土鉱物
(f)繊維間で結合させるための、カルボキシル基との相互作用性を有する陽イオンであり、好ましくは2価以上の正電荷又は2以上の配意数を有するイオン
といった添加物の少なくともいずれか一以上若しくは全てを添加して振動板を作製する電気音響変換器用振動板の製造方法が示されている。当該製造方法による振動板は高弾性率で、良好な音質を得ることができるとしている。ただし、TEMPO酸化セルロースは繊維径が4nmとされており、比表面積が大きいことから分散液の増粘効果が著しく、したがっ分散液を塗工可能な粘度範囲に調製するにはTEMPO酸化セルロースの分散液への添加量はごくわずかとなり、TEMPO酸化セルロースの高弾性率化に対する寄与はごく小さいものと考えられる。
特許文献6に開示されている電気音響用振動板は、天然繊維、合成繊維、もしくはこれらの混抄物からなるパルプ繊維間にセラミクス粒を包埋し、バインダー樹脂とともに成形してヤング率を向上させ、振動板自体の内部損失を向上させることで、該振動板を用いたスピーカの高音特性が向上するとしている。しかしながら、振動板の内部損失と制振効果にの関係については触れられていない。
本発明は、下記の[1]〜[6]により構成される。
[1]組成物全体の中で少なくとも一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂を主成分とし、前記合成樹脂に対する添加量が10重量%未満のセルロースナノファイバーを含む振動減衰性樹脂組成物であって、
前記架橋構造を形成可能な合成樹脂は、前記振動減衰性樹脂組成物に架橋剤を含む事によって前記合成樹脂の架橋構造を形成可能とした、または、前記合成樹脂が自己架橋性樹脂であることによって前記合成樹脂の架橋構造を形成可能とした事を特徴とする振動減衰性樹脂組成物。
[2] 前記架橋構造を形成可能な合成樹脂が、未架橋状態で溶媒可溶性または溶媒分散性である、[1]に記載の振動減衰性樹脂組成物。
[3] 前記溶媒が、水または水系溶媒である[2]に記載の振動減衰性樹脂組成物。
[4] 水溶性分散剤をさらに含み、セルロースナノファイバーに前記水溶性分散剤がイオン結合している、[2]〜[3]に記載の振動減衰性樹脂組成物。
[5]前記組成物の塗工膜の、架橋後の測定温度30℃における損失係数が0.1以上であり、かつ架橋後の該塗工膜の比重が1.0〜1.5である、請求項1〜4に記載の振動減衰性樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]に記載の振動減衰性樹脂組成物の主成分である、前記架橋構造を形成可能な合成樹脂が未架橋状態の前記組成物を水に分散させた水分散体を塗布して第一塗工膜を形成する工程、前記第一塗工膜を乾燥して第二塗工膜を形成する工程、及び前記第二塗工膜を架橋して第三塗工膜を形成する工程を含む、[1]〜[5]に記載の振動減衰性樹脂組成物の塗工方法。
本発明は、上記のようなこれまでの制振性塗料、制振材料の問題がなく、汎用的なスプレーや刷毛塗りによる塗布が可能で、軽量で、振動減衰能力の高い塗工膜を得ることができる。
本発明による振動減衰性樹脂組成物は、組成物全体の中で少なくとも一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂を主成分とし、該合成樹脂をセルロースナノファイバー及び高分子分散剤とともに均一分散させ架橋したものである。該組成物の水分散液を未架橋状態で振動を発生する機器や建造物に塗布し、架橋処理することで、塗工膜内部に3次元架橋構造を形成せしめ、振動減衰能が発現する。前記組成物水分散体を塗布し、乾燥し、および架橋処理により第三塗工膜を密着させた機器あるいは建造物は、付加される振動が低減し、振動による故障や破損などの不具合の発生が抑えられ、低騒音化し、機器や建造物の長寿命化につながる。
前記架橋処理により、少なくとも一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂間、セルロースナノファイバー間、前記合成樹脂とセルロースナノファイバーとの間の少なくともひとつに、架橋剤または自己架橋性に由来する架橋構造が形成される。本発明による振動減衰性樹脂組成物からなる第三塗工膜が振動すると、樹脂の架橋による架橋点だけでなく、該合成樹脂中に均一分散しているセルロースナノファイバーのネットワーク構造の架橋点、またはセルロースナノファイバーと該合成樹脂と間の架橋点に摩擦が生じ、塗工膜に付加される振動エネルギーが摩擦により熱エネルギーに変換されて放散し、振動が低減、減衰する効果を生じる。
前記振動減衰性樹脂組成物からなる塗工膜に作用する振動エネルギーが、架橋点の摩擦により熱エネルギーとなり放散する効果は、該塗工膜の内部損失(tanδ)として計測できる。塗工膜を一般産業機器や建造物に塗布する場合、形成させた塗工膜の内部損失は、対象機器や建造物の使用温度領域である常温付近にピークを有するのが好ましい。
塗工膜の内部損失のピーク温度は、該架橋性樹脂又は架橋剤の分子構造、架橋密度(架橋点間距離)、およびセルロースナノファイバーの種類(セルロースナノファイバーの平均径及び長さ、架橋点間距離)によって変化し、架橋性樹脂由来のピーク及びセルロースナノファイバー由来のピークとあわせて2つ以上存在する場合がある。
[セルロースナノファイバー]
本発明のセルロースナノファイバーは、その幅(繊維径)が2〜100nm、繊維長は100nm〜5μmのものが好ましく使用できる。セルロースナノファイバーからなるネットワークは振動減衰能を有する。これは、後述する架橋処理により、一部が架橋可能な樹脂とセルロースナノファイバー、セルロースナノファイバー同士の3次元架橋構造におけるゆるやかな架橋点におけるそれぞれの摩擦がもたらす内部損失効果を利用することで振動減衰作用を示すものと発明者らは推測している。
セルロースナノファイバーとしては、木質パルプまたは竹繊維を物理的に解繊することで作製した未変性のセルロースナノファイバー、または酢酸菌を培養して作製するするバクテリアセルロースいずれかを用いることが好ましく、分散媒体としては水系媒体または水が好ましい。
セルロースナノファイバーとしては、木質パルプまたは竹繊維を物理的に解繊して作製する、表面の水酸基が変性されていない未変性セルロースナノファイバー、又はバクテリアセルロースが好適に使用できる。
未変性セルロースナノファイバー(以下、未変性セルロースナノファイバーをCNFと呼ぶ)は、後述する高分子量化した分散剤(以下高分子分散剤と呼ぶ)により、水系媒体または水中で均一分散させるのが好ましい。
CNFは、所定量の高分子分散剤及び水系溶媒を添加し、機械的に解繊処理することで、CNFに存在する水酸基に由来する水素結合またはCNF同士の絡み合いがほどけて小さくなり、同時に高分子分散剤がCNFにイオン結合し、該分散剤の静電反発力及び分散剤分子の体積排除効果により、液体媒体中に均一分散させることができる。
本発明のCNFは、その分散性などの観点から、水分散液の形態で少なくとも一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂と複合化することが好ましい。水分散液におけるCNFの含有量は特に限定されないが、好ましくは水分散液全量の0.001〜20重量%であり、より好ましくは水分散液全量の0.1〜10重量%である。
本発明の振動減衰性樹脂組成物におけるCNFの配合量は特に限定されないが、本発明の振動減衰性樹脂組成物水分散体からなる塗工膜の塗工性、強度、剛性、耐衝撃性、及び振動減衰能等のバランスを考慮すると、好ましくは、前記合成樹脂100重量部に対して0.1重量部〜10重量部の範囲であり、より好ましくは0.1重量部〜5重量部の範囲である。CNFの配合量が0.1重量部未満では、本発明の積層体の補強層としての強度、剛性ならびに耐衝撃性が不十分になる傾向がある。一方、CNFの配合量が10重量部以上になると、本発明の振動減衰性樹脂組成物水分散体が著しく増粘し、その塗工性、取扱い性等が大きく低下する傾向がある。
[高分子分散剤]
本発明における高分子分散剤は水溶性分散剤であり、好ましくはCNFの表面に存在する水酸基などの官能基にイオン結合可能で、その静電反発力または/および体積排除効果によってCNFの分散性及び分散安定性を高め得るような分散剤である。該分散剤としては、前述のように水溶性であれば特に限定されないが、陰イオン性分散剤を好ましく使用できる。陰イオン性分散剤としては、例えば、リン酸基、−COOH基、−SOH基、これらの金属エステル基、及びイミダゾリン基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体などが挙げられる。陰イオン性分散剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
陰イオン性分散剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸とその塩、ポリメタクリル酸とその塩、ポリアクリル酸共重合体とその塩、ポリイタコン酸とその塩、オレフィン由来モノマーおよび不飽和カルボン酸(塩)由来モノマーを含む共重合体(例えば特開2015−196790号公報など)、ポリマレイン酸共重合体とその塩、ポリスチレンスルホン酸とその塩、スルホン酸基結合ポリエステルなどのカルボン酸系陰イオン性分散剤、アルキルイミダゾリン系化合物(例えば特開2015−934号公報、特開2014−118521号公報など)などの複素環系陰イオン性分散剤、酸価とアミン価とを有する陰イオン性分散剤(例えば得開2010−186124号公報など)、ピロリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ホスホン酸、これらの塩などのリン酸系陰イオン分散剤、スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リグニンスルホン酸、これらの塩などのスルホン酸系陰イオン分散剤、オルトケイ酸、メタケイ酸、フミン酸、タンニン酸、ドデシル硫酸、これらの塩などのその他の陰イオン性分散剤などが挙げられる。これらの中でも、リン酸、ポリリン酸、リン酸塩、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体塩などが好ましい。
また、陰イオン性分散剤として、アクリル酸やメタクリル酸と、他の単量体を共重合させた共重合体を用いることもできる。他の単量体としては、例えば、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸およびそれらの塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸およびそれらの塩等が挙げられる。
本発明では市販の陰イオン性分散剤を用いてもよく、市販品の具体例としては、アロンA−6114(商品名、カルボン酸系分散剤、東亜合成(株)製)、アロンA−6012(商品名、スルホン酸系分散剤、東亜合成(株)製)、デモールNL(商品名、スルホン酸系分散剤、花王(株)製)、SD−10(商品名、ポリアクリル酸系分散剤、東亜合成(株)製)などが挙げられる。
また、本発明に用いる分散剤として、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体を用いてもよい。(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体は、本発明により得られるナノファイバー複合体中の各成分の分散安定性、特にナノファイバーの分散安定性を高め得るとともに、例えば、生体適合性を有し、本発明の振動減衰性樹脂組成物を医療用途、食品用途などに用いる場合の分散剤として好適に使用できる。
本発明の分散剤として、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体の市販品を用いてもよく、市販品の具体例としては、例えば、リピジュアHM、リピジュアBL(いずれも商品名、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、リピジュアPMB(商品名、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチルコポリマー)、リピジュアNR(商品名、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマー)などが挙げられる。これらはいずれも日油(株)製である。
[一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂]
本発明に用いられる少なくとも一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂とは、架橋性基及び架橋性構造から選ばれる少なくとも1種を有し、例えば架橋剤と反応して架橋構造を形成し得る合成樹脂であり、好ましくは、架橋性基及び架橋性構造から選ばれる少なくとも1種を有し、未架橋状態で水溶性又は水分散性を有する合成樹脂である。ここで架橋性基としては特に限定されないが、例えば、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エーテル基(例えばフルオロエチレンエーテル基など)、ヒドロシリル基などが挙げられる。該合成樹脂は、架橋性基の1種又は2種以上を有することができる。これらの架橋性基は、該合成樹脂の主鎖骨格に側鎖の少なくとも一部として結合してもよく、主鎖骨格の末端に結合してもよい。
架橋部位の構造としては特に限定されないが、例えば、ピロリドン構造、シロキサン構造、オキセタン構造などが挙げられる。該架橋性樹脂は、架橋性部の構造の1種又は2種以上を有することができる。これらの架橋性構造は、該合成樹脂の主鎖骨格の一部を形成していてもよく、該合成樹脂の主鎖骨格の側鎖及び/又は末端に結合していてもよい。
また、該合成樹脂は、水溶性又は水分散性を示すために、親水性基を有していてもよい。親水性基としては特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、エーテル基などが挙げられる。親水性基は、該合成樹脂の主鎖骨格に側鎖の一部として結合してもよく、また、主鎖骨格の末端に結合してもよい。これらの親水性基の中でも、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル基などを有する該合成樹脂は、水分散性又は水溶性を有する樹脂となる。
前述の、未架橋状態で水溶解性または水分散性を有し、少なくとも一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂(以下、架橋性樹脂と呼ぶ)の中でも、機械的強度が高く、高い振動減衰性を有する合成樹脂としては、ビニルアルコールと、酢酸ビニル、ビニルブチラール、アクリル酸、メタアクリル酸、及びエチレンよりなる群から選ばれる少なくとも一種のエチレン性二重結合含有化合物との共重合体並びにこれらの誘導体、あるいは水もしくはアルコールに可溶性の変性ポリアミド樹脂、架橋型共重合ポリアミドのいずれか1種であることがより好ましく、CNFの架橋性樹脂への分散性等の観点から、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、変性ポリアミド樹脂等がさらに好ましい。
上記以外の架橋性樹脂としては、水溶性または水分散性のポリウレタン、水溶性または水分散性のエポキシ樹脂、または、水溶性または水分散性のフッ素樹脂などが好適に使用できる。
[架橋剤]
本発明で使用する架橋剤は、主に架橋性樹脂が有する架橋性基、架橋構造や、CNFがその表面に有する官能基と架橋反応を起こすものである。該架橋反応の結果、架橋性樹脂間、CNF間、架橋性樹脂とCNFとの間の少なくとも1つに、架橋剤に由来する架橋構造が形成され、得られる本発明の振動減衰性樹脂組成物の強度や振動減衰特性が向上する。
架橋剤としては、架橋性樹脂が有する架橋性や架橋構造、CNFが表面に有する官能基などとの反応性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、多官能性モノマー、多官能性樹脂、有機過酸化物、重合開始剤などが挙げられる。これらの架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
多官能性モノマーとしては、多官能アクリル系モノマー、多官能アリル系モノマー、およびこれらの混合モノマー等が挙げられる。
多官能アクリル系モノマーの具体例としては、例えば、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも、皮膚刺激性が低いという観点からは、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリル酸エステル)を好ましく使用できる。多官能アクリル系モノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
多官能アリル系モノマーとしては、例えば、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(DA−MGIC)、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネートなどが挙げられる。多官能アリル系モノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる
多官能性モノマーは、必要に応じて重合開始剤と併用することができ、また、酸触媒、安定剤等を併用することができる。重合開始剤、触媒、安定剤等の本発明の振動減衰性樹脂組成物への添加時期は特に限定されないが、例えば、CNF、架橋性樹脂、分散剤、水系溶媒と同時に混合される。
多官能性モノマーの配合量は特に限定されないが、架橋性樹脂の固形分重量に対して、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。多官能性モノマーの配合量が0.01重量%未満の場合は、本発明樹脂組成物の機械的特性、熱的特性が顕著に向上しない傾向がある。多官能性モノマーの配合量が10重量%を上回る場合には、本発明樹脂組成物の伸びや衝撃強さなどの機械的特性に悪影響を及ぼす傾向がある。
多官能性樹脂(多官能性ポリマー)の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性エポキシ樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などの放射線硬化性樹脂などが好ましい。なお、多官能性樹脂は架橋性樹脂よりも相対的に分子量の低いものである。多官能性樹脂の分子量は、重量平均分子量として1000未満が好ましい。多官能性樹脂は、架橋性樹脂と同様に、水酸基やカルボキシル基などの親水性基で変性された自己乳化性のもの、乳化剤により分散媒中に分散可能な強制乳化型のものが好ましい。これらの樹脂を架橋剤として用いる場合、架橋性樹脂とは樹脂種の異なるものを用いるのが好ましい。多官能性樹脂の配合量は、架橋性樹脂の固形分重量に対して好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%である。
有機過酸化物は、例えば、加熱によりフリーラジカルを発生し、これにより、架橋性樹脂同士間、CNF同士間、架橋性樹脂とCNF間の少なくとも一部を架橋する。なお、有機過酸化物は重合開始剤の範疇にも入るものであるが、本明細書では重合開始剤とは別個に記載する。有機過酸化物の具体例としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。有機過酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。有機過酸化物の配合量は、架橋性樹脂及びCNFの合計固形分量に対して好ましくは0.0001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。
重合開始剤は、例えば、加熱又は電離放射線照射によりフリーラジカルを発生し、これにより、架橋性樹脂同士間、CNF同士の間、架橋性樹脂とCNFとの間の少なくとも一部を架橋する。重合開始剤の具体例としては、例えば、アゾ化合物、過硫酸塩などが挙げられる。また、重合開始剤は水溶性のものでも、非水溶性のものでもよい。
重合開始剤の具体例としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの疎水性アゾ化合物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などの水溶性アゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩名とが挙げられる。重合開始剤の配合量は、架橋性樹脂及びCNFの合計固形分量に対して、好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%程度である。
なお、本発明では架橋剤と共に、酸触媒を用いてもよい。酸触媒は、例えば、架橋性樹脂の架橋性基および/または架橋構造と架橋剤の求核性反応基との反応を促進させるために用いられる。酸触媒の具体例としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸等の有機酸、塩酸、硫酸、スルホン酸等の無機酸、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アルミニウムなどのルイス酸が挙げられる。酸触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸触媒の配合量は、架橋性樹脂の固形分量100重量部に対して好ましくは0.1〜8重量部である。酸触媒の配合量が0.1重量部未満では、架橋度が低くなりすぎる可能性があり、8重量部を超えるとCNF複合体中での相溶性が低下する可能性がある。
[水系溶媒]
本発明で用いるナノファイバーとしては、木質由来パルプまたは竹繊維を物理解繊したCNFが好ましく、分散媒となる液状媒体としては水系媒体が好ましい。
水系溶媒は、水、水溶性溶媒、水と水溶性溶媒との混合溶媒などを含む。水溶性溶媒としては、前述の水溶性溶媒と同じものをいずれも使用でき、水溶性溶媒としては、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール)、グリセリン、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトアミドなどが好ましい。これらの水溶性溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい水系溶媒は、水、水と水溶性溶媒との混合溶媒などであり、特別な廃液処理設備が不要で環境汚染をしにくい水が特に好ましい。
また水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、長期保存におけるカビまたはバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
[その他の添加剤]
また、本発明の振動減衰性樹脂組成物の好ましい特性を損なわない範囲で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、ヒンダードフェノール、リン酸エステルや亜リン酸エステルなどの酸化防止剤、耐熱安定剤、トリアジン系化合物などの耐候性付与剤等の安定剤、ガラス繊維等の繊維状充填材、顔料、染料等の着色剤、滑剤、揆水剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤、消泡剤、金属石鹸、有機シラン、防腐剤などを配合することができる。これらの添加剤は、上記した各成分と共に同時に一段で混合してもよく、また、得られた本発明の振動減衰性樹脂組成物水分散体に添加及び混合してもよい。
これらの添加剤の中でも、消泡剤が好ましく、代表的なものにシリコーン系消泡剤が挙げられ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等が例示できる。
上記消泡剤の割合は、例えば、樹脂固形分100質量部に対して、1質量部以下(0〜1質量部)の範囲で使用でき、好ましくは0.001〜0.8質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部、更に好ましくは0.01〜0.4質量部、特に好ましくは0.05〜0.3質量部であってもよい。
本発明の振動減衰性樹脂組成物は、主成分である、一部が架橋構造を形成可能な合成樹脂が未架橋状態で、水分散性または水溶解性を示す。該組成物の水分散体は、例えば、混合工程を含み、混合工程の前に実施される予備混合工程、混合工程の後に実施される塗布工程、乾燥工程、架橋工程等を含む塗工方法により塗工することができる。この製造方法によれば、CNFが未架橋状態の架橋性樹脂中にほぼ均一に分散した振動減衰性樹脂組成物の水分散体、該樹脂組成物の固形分からなる未架橋の第二塗工膜、該樹脂組成物の固形分の少なくとも一部を架橋させた第三塗工膜などが得られる。各工程の詳細は次の通りである。
[予備混合工程]
予備混合工程では、溶媒と、CNF、未架橋状態で溶媒可溶性または溶媒分散性を示し、架橋可能な合成樹脂、分散剤を、ロッキングミル、ヘンシェルミキサー、インラインミキサー、プロペラ式攪拌機、二軸ニーダー等の混合装置によって予備的に混合する。また、架橋剤を同時に混合しても良い。予備混合工程を経る事により、溶媒内でCNFや、溶媒可溶性または溶媒分散性を示しかつ架橋可能な合成樹脂等が均一に混合され、後の工程である混合分散工程の効率が高くなる。
[混合分散工程]
混合分散工程では、CNF、未架橋状態で溶媒可溶性または溶媒分散性を示し一部が架橋可能な合成樹脂、分散剤、架橋剤等の添加剤を溶媒内で機械的に攪拌する事で混合分散させる。混合分散工程を経る事で、CNF、及び未架橋状態で溶媒可溶性または溶媒分散性を示し一部が架橋可能な合成樹脂、分散剤、架橋剤が溶媒内に分散する。特に分散剤がCNFの溶媒への分散性を向上させる。ここで、例えば、高圧ホモジナイザー、水中カウンターコリジョン、高速回転分散機、ビーズレス分散機、高速撹拌型メディアレス分散機等を用いて、機械的解繊処理を同時に行うと、CNFの凝集が解け、分散剤と効率よく結合して、さらにCNFの分散効率が向上し、望ましい。特にCNFの分散性が高く、不純物の混入が少ないという理由から、高速撹拌型メディアレス分散機が好ましい。
高速攪拌型メディアレス分散機とは、分散メディア(例えば、ビーズ、サンド(砂)、ボール等)を用いず、せん断力を利用して分散処理を行う分散機である。高速攪拌型メディアレス分散機は市販品を使用できる。該市販品としては、例えば、DR−PILOT2000、ULTRA−TURRAXシリーズ、Dispax―Reactorシリーズ(いずれも商品名、IKA社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.パイプラインホモミクサー(いずれも商品名、プライミクス(株)製)、ハイ・シアー・ミキサー(商品名、シルバーソン社製)、マイルダー、キャビトロン(いずれも商品名、大平洋機工(株)製)、クレアミックス(商品名、エムテクニック(株)製)、ホモミキサー、パイプラインミキサー(商品名、みずほ工業(株)製)、ジェットペースタ(商品名、日本スピンドル製造(株)製)、アペックスディスパーザー ZERO(商品名、(株)広島メタル&マシナリー製)等が挙げられる。
ここで、高速撹拌型メディアレス分散機を用いる場合、せん断速度は、900,000[1/sec]を超えることが好ましい。せん断速度が900,000[1/sec]以下である場合には、CNFのさらなる解繊、および合成樹脂への分散が共に不十分になる傾向がある。また、せん断部クリアランスは、せん断速度、上記各成分の混合液の粘度などに応じて適宜設定されるが、CNFを最大限細径化し、また、CNFの合成樹脂中への分散性の一層の向上を図る観点から、100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上が更に好ましい。また、上記各成分の混合液の粘度が高くても、分散機の回転数を適正範囲に保持しつつ高分散性を確保する観点から、クリアランスは、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.2mm以下がさらに好ましい。また、ロータの回転周速は、せん断速度に応じて適宜設定されるが、CNFの細径化径や、合成樹脂中への分散性の一層の向上等を図る観点から、18m/sec以上が好ましく、20m/sec以上がより好ましい。なお、回転周速とは、ロータの最先端部分の周速である。
また、CNF及び分散剤を含む水系溶媒を、前記メディアレス分散機等を用いて攪拌混合し、凍結乾燥等の乾燥処理を行った後に粉砕処理する事で、CNF及び分散剤からなる組成物の粉体が得られる。このCNF及び分散剤からなる組成物の粉体を、未架橋状態で溶媒可溶性または溶媒分散性を示し一部が架橋可能な合成樹脂を含む溶媒に添加した後、混合分散工程を行う事もできる。
[濃度調整工程]
濃度調整工程では、CNF、未架橋状態で溶媒可溶性または溶媒分散性を示す架橋性樹脂、分散剤、架橋剤等の添加剤を溶媒内で混合分散させた分散液を容器に注ぎ入れ、乾燥させ濃度調整する。乾燥手段としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などの公知の方法を採用することができる。これらのうち、分散剤による静電反発または/および体積排除効果によりもたらされた水分散体におけるCNFの分散状態を保持したまま水分除去が可能であることから、凍結乾燥が特に望ましい。ここで濃度調整は、溶媒の一部を揮発させ前記樹脂組成物の水分散体の固形分濃度や粘度を調整する方法でもよく、精製水などの水系溶媒を加える方法であっても良い。
[成形工程]
乾燥工程で得られた振動減衰性樹脂組成物は、硬化処理や溶融成形により、所望の形状に成形できる。硬化処理は、乾燥工程で得られた濃縮液を、塗工膜状等の所望の形状に成形した後、乾燥や架橋する事により行う。また、溶融成形としては、固形物等の射出成形、圧縮成形等が挙げられる。ここで、CNFは200℃以上の温度で熱劣化が始まるため、過度な加熱を行わずに成形可能な架橋処理が成形工程として特に好ましい。以下に、基材等に前記樹脂組成物の水分散体を塗布して第一塗工膜を形成する塗布工程、前記第一塗工膜を乾燥して第二塗工膜を形成する乾燥工程、及び前記第二塗工膜を架橋処理して第三塗工膜を形成する架橋工程について記載する。なお、前記樹脂組成物の溶融成形を行う場合、CNFの熱劣化が始まる温度以下で溶融成形可能な樹脂を選択する事が、CNFを熱劣化させないため、望ましい。
[塗布工程]
塗布工程は、例えば、未架橋状態の前記振動減衰性樹脂組成物水分散体を基材表面に塗布して、水を含む前記樹脂組成物からなる第一塗工膜を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、スピンコーター法、バーコーター法、スプレーコート法、刷毛、ヘラ、ブラシやローラーによる塗布、ディッピング法、電着塗装法などが挙げられる。
[乾燥工程]
乾燥工程では、前記第一塗工膜を加熱乾燥または自然乾燥などの手段により、水分を除去し塗工膜状成形品である第二塗工膜を得る。
[架橋工程]
架橋工程では、未架橋状態の前記第二塗工膜を後述する化学的架橋処理または物理的架橋処理により塗工膜内部に3次元架橋構造を形成させ、第三塗工膜を作製する。前記第三塗工膜は、架橋処理により、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐傷つき性、ガスバリア性、自己修復性などが未架橋である第二塗工膜よりも向上する。
架橋処理の方法としては特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に含まれる架橋剤を利用した化学的架橋法および物理的架橋法が好ましい。
化学的架橋法の具体例としては、例えば、加熱による架橋などが挙げられる。加熱条件は、振動減衰性樹脂組成物の成分組成、固形分濃度、架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)および架橋剤の種類や配合量、設定される架橋度合い、得られる振動減衰性樹脂組成物の架橋体に設定される各物性の値などに応じて適宜選択されるが、通常は約30℃以上の温度に加熱することで架橋が形成される。架橋に要する時間を短くして工程全体としての省力化を図り、また架橋後の本発明樹脂組成物の各物性をさらに向上させる観点から、加熱条件は、好ましくは30℃〜220℃の温度下で1分以上、より好ましくは80℃〜180℃の温度で1〜30分である。
物理的架橋の具体例としては、例えば、電離放射線の照射による架橋などが挙げられる。電離放射線の照射による架橋は、制御が容易であるという利点がある。電離放射線としては特に限定されないが、電子線、γ線、X線、荷電粒子線、紫外線、中性子線等が挙げられる。これらの中でも、電離放射線発生装置の入手が容易であること、架橋反応制御の容易さ、安全性等の観点から、紫外線、γ線、電子線などが好ましい。
電離放射線の照射線量は、本発明樹脂組成物の成分組成、固形分濃度、架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)および架橋剤の種類や配合量、設定される架橋度合い、得られる樹脂組成の架橋体に設定される各物性の値などに応じて適宜選択できるが、好ましくは10kGy〜1000kGy、より好ましくは10〜50kGyである。照射線量が10kGy未満では、最終的に得られる成形品の架橋度が不足し、成形品の物性が低下する傾向がある。一方、照射線量が1000kGyを超えると、成形品の着色が大きくなるとともに、架橋構造が形成される領域以外での分子鎖の切断などが増大することにより、成形品の物性が低下する傾向がある。
架橋の度合いは、架橋度として通常20〜98%、好ましくは60〜98%である。架橋度が20%未満では、最終的に得られる成形品の剛性、耐クリープ性、耐摩耗性などの機械的強度や耐熱性のさらなる向上を得られない場合がある。また、架橋度が98%を超えると、架橋構造が形成される領域以外での分子鎖の切断などが増大することにより、成形品の物性が低下する場合がある。架橋度は、例えばゲル分率(%)として求められる。
[その他の成形工程]
前記樹脂組成物の水分散体は、上記の成形工程以外にも、溶液キャスト(流延)法のほか、圧縮成形法、RTM成形法、射出成形法等によって本件発明の樹脂組成物を成形できる。
本発明の振動減衰性樹脂組成物を塗布し、架橋処理にて樹脂同士、CNF同士、および樹脂とCNF間の架橋構造を形成させることにより、樹脂の架橋構造の有する振動減衰性能に加えて、樹脂内でネットワーク構造を有するCNFが振動を受けた際に、CNFの接触点での摩擦により熱エネルギーが発生し放散することで振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、振動減衰作用を生じるものと推定される。
一般に、樹脂材料の振動減衰特性はベース樹脂固有の粘弾性特性に基づくことから、その振動減衰特性はベース樹脂の減衰(tanδ)が最も大きくなるガラス転移温度付近にピークを有するが、本発明の振動減衰性樹脂組成物による塗工膜はCNFによるネットワーク構造に由来する振動減衰特性が付加されるため、振動減衰特性の温度依存性が小さくなり、幅広い温度領域で安定した振動減衰特性を発揮することができる。
また、本発明による振動減衰性樹脂組成物を塗布して得られる塗工膜は、比重が小さく軽量であり、長期間にわたって塗工膜の硬さや強度等の機械的特性が安定している。また、準備工程を含む塗布工程後に架橋することで、摩擦や衝撃などの外力を受けても振動減衰性樹脂組成物に添加されているCNFが破損せず、該CNFが塗工膜から離脱せずに塗工膜表面またな塗工膜内部にとどまっているので、当該樹脂組成物からなる塗工膜は長期にわたり安定した振動減衰性能を発揮することができる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。実施例中で用いた各成分、装置の詳細は下記のとおりである。
[架橋性樹脂]
未架橋状態で水溶性又は水分散性を有する一部が架橋可能な合成樹脂として、下記のものを用いた。
ポリビニルブチラール樹脂 エスレック KW−1 (商品名、積水化学工業(株)製、水溶性樹脂)
アクリル樹脂 ボンコート CG−5010EF (商品名、DIC(株)製、水系エマルジョン)
フェノール樹脂 スミライトレジン PR−50781 (商品名、住友ベークライト(株)製、自己架橋性液状レゾール樹脂)
ウレタン樹脂 スーパーフレックス 150 (商品名、第一工業製薬(株)製、水系エマルジョン)
[セルロースナノファイバー]
CNF(商品名、BiNFi−s BMa−10010、(株)スギノマシン製、未変性セルロースナノファイバー)は、固形分5重量%の水分散液を用いた。
[分散剤]
CNFの分散剤として、アロン A‐6012 (商品名、東亞合成(株)製、水溶性アクリルスルホン酸系共重合体)を使用した。
[高速撹拌型メディアレス分散機]
高速撹拌型メディアレス分散機として、アペックスディスパーザーZERO(商品名、(株)広島メタル&マシナリー製)を用いた。
[架橋剤]
未架橋状態で水溶性又は水分散性を有する一部が架橋可能な合成樹脂の架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成(株)製)、および両末端ポリイソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS−02、日清紡ケミカル(株)製)を用いた。
(実施例1)
以下、水溶液又は水分散液の形態で用いた成分の配合量を固形分量で示すが、これらはもちろん水を含んでいる。
未架橋状態で水溶性又は水分散性を有する一部が架橋可能な合成樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂(エスレック KW−01、積水化学工業(株)製、固形分20重量%の水溶液、表1では「PVB樹脂」と表記する。)を用いた。この溶液の固形分に対し、架橋剤として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC、日本化成(株)製)を3重量%、CNFを固形分換算で0.1重量%、分散剤をCNFの固形分に対し4重量%加え、実験用卓上攪拌機で予備混合し、予備混合物を調製した。
得られた予備混合物500mlを高速回転型メディアレス分散機(アペックスディスパーザー ZERO)により、せん断部クリアランス1mm、ロータの回転周速45m/sに設定し、10分間の解繊処理を5回行ない、本発明の振動減衰性樹脂組成物の水分散体(1)を塗工液として製造した。
得られた当該樹脂組成物の水分散体(1)の塗工液の外観は白濁液状を呈し、CNFやPVB樹脂の分散ムラや凝集は目視観察では認められず、また、24時間以上静置した後でもCNFの沈殿は観察されず、安定した水分散体であった。
上記水分散体(1)の粘度を、B型粘度計を用いて常温(25℃)において回転数6rpmにて測定した。塗布に適した粘度として1000〜10000mPa・sの範囲にあるものを「○」、粘度が1000mPa・s以下ではあるが、塗布は可能であるものを「△」、粘度が低く塗布に適さないものを「×」として判定した。結果を表1に示す。
当該樹脂組成物の水分散体(1)を塗工液とし、バーコーター(塗工機3、井元製作所(株)製)にて、PETフィルム(事務用OHPフィルム、コクヨ(株)製、0.1mm厚さ)に対し、膜厚0.1mmとして塗布し第一塗工膜(1)を得た。前記第一塗工膜(1)を風乾し、第二塗工膜(1)を形成した後、真空乾燥炉(AV0−310N、アズワン(株)製)を用いて、実験用乾燥炉を用いて常圧にて80℃×15分加熱することで化学的架橋処理を行って第三塗工膜(1)を得た。該第三塗工膜(1)が塗布された塗工フィルムを用いて、目視にて前記塗工液におけるCNFの分散性を次のように評価した。前記第三塗工膜(1)に凝集体は見られず、均一であるものを「○」、CNFあるいは樹脂の凝集体が見られるものを「×」とし、結果を表1に示す。
また、アルミ板(材質:A5052、100×100×1mm)の片面に、上記バーコーターを用いて前記水分散体(1)からなる塗工液を塗布後に風乾して、膜厚0.1mmの第一塗工膜(1)を得た。風乾後の第二塗工膜(1)の上面にさらに同じ塗工液を同一条件で塗布した。この操作を10回繰り返して膜厚1mmの水分散体(1)の固形分からなる第二塗工膜(1)を作製し、上記と同様に80℃×15分の架橋処理を行って形成した第三塗工膜(1)が塗工された前記アルミ板用いて、振動減衰試験を行った。
上記樹脂組成物の水分散体(1)からなる塗工液をアルミ板に塗布した振動減衰特性測定用塗工膜(厚さ1mm)から、凡そ10mm角の塗工膜切片を切り出し塗工膜を剥離して、比重測定用試料とした。比重は、電子比重計EW−300SG (商品名、アルファミラージュ(株)製)を用いて、水中置換法により求めた。
さらに、該第三塗工膜(1)の架橋処理後の架橋度をゲル分率から求めた。前記厚み1mmの塗工膜切片を減圧乾燥炉で70℃で12時間乾燥後に重量を秤量し、初期乾燥重量(g)を求めた。初期乾燥重量を秤量した試料を常温で24時間精製水に浸漬して溶解させた後に、定量ろ紙でろ取して得た溶解残渣を60℃ で2時間乾燥した後に秤量し、不溶解分重量(g)を求めた。グル分率は下記の式により算出した。結果を表1に示す。
ゲル分率(%)=[(不溶解分重量)/(初期乾燥重量)]×100
振動減衰試験は、マシンバイスに第三塗工膜(1)を塗工したアルミ板サンプルの端部を挟み込んで測定する片持ちはり法を採用し、インパルスハンマーで打撃してサンプルを加振するインパルス加振試験にて行った。加振により生じた振動波形から、FETアナライザー(マルチチャンネルデータアナライザー DS−2100、小野測器(株)製)を用いて演算処理し、周波数応答波形から半値幅法(ハーフパワー法)によって損失係数を求めた。測定温度を室温及び60℃(測定用サンプルを60℃の熱風炉中で1時間保持後取出し、測定冶具に取付け、取り出し後30秒以内に打撃して測定)で測定した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、CNFの添加量を1重量%とした以外は実施例1と同様に操作し、振動減衰性樹脂組成物の水分散体(2)を調製し、塗工液とした。実施例1と同様に該塗工液の分散性を評価した。さらにPETフィルム及びアルミ板に該塗工膜を塗工し、前記架橋処理により第三塗工膜(2)を作製し、比重、分散性、ゲル分率、損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、CNFの添加量を5重量%とした以外は実施例1と同様に操作して振動減衰性樹脂組成物の水分散体(3)を作製し塗工液とし、第三塗工膜(3)を作製後、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4〜6)
実施例1〜3において、架橋性の水溶性又は水分散性を有する樹脂を、PVB樹脂に代えてアクリル樹脂(固形分45重量%の水溶液に精製水を添加し20重量%に調整)とした以外は同様に操作して振動減衰性樹脂組成物の水分散体(4)、(5)、(6)を作製し、それぞれ塗工液とした後、第三塗工膜(4)、(5)、(6)を作製して、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7〜9)
実施例1〜3において、水架橋性の水溶性又は水分散性を有する樹脂を、PVB樹脂に代えてフェノール樹脂(固形分64重量%の水溶液に精製水を添加し20重量%に調整)とし、かつ架橋剤を加えない以外は同様に操作して振動減衰性樹脂組成物の水分散体(7)、(8)、(9)を作製し、それぞれ塗工液とした後、、第三塗工膜(7)、(8)、(9)を作製して、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例10〜12)
実施例1〜3において、水架橋性の水溶性又は水分散性を有する樹脂を、PVB樹脂に代えてウレタン樹脂(固形分30重量%の水溶液に精製水を添加し20重量%に調整)とし、架橋剤をカルボジイミドとした以外は同様に操作して振動減衰性樹脂組成物の水分散体(10)、(11)、(12)を作製し、それぞれ塗工液とした後、、第三塗工膜(10)、(11)、(12)を作製して、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、CNFおよび分散剤を添加しない以外は、実施例1と同様に操作し、振動減衰性樹脂組成物の水分散体(13)を調製しそれぞれ塗工液とした後、該分散液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、前記架橋処理後に、、第三塗工膜(13)を作製して、該塗工膜の比重、粘度、ゲル分率、分散性および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、架橋性の水溶性又は水分散性を有する樹脂をPVB樹脂からアクリル樹脂(固形分45重量%の水溶液に精製水を添加し20重量%に調整)に代え、CNFおよび分散剤を添加しない以外は、実施例1と同様に操作し、減衰性樹脂組成物の水分散体(14)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該分散液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(14)を作製して、塗工膜の比重、粘度、ゲル分率、分散性および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、架橋性の水溶性又は水分散性を有する樹脂をPVB樹脂からフェノール樹脂(固形分64重量%の水溶液に精製水を添加し20重量%に調整)に代え、CNF、分散剤、及び架橋剤を添加しない以外は、実施例1と同様に操作し、減衰性樹脂組成物の水分散体(15)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該分散液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(15)を作製して、塗塗工膜の比重、粘度、ゲル分率、分散性および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1において、架橋性の水溶性又は水分散性を有する樹脂をPVB樹脂からウレタン樹脂(固形分30重量%の水溶液に精製水を添加し20重量%に調整)に代え、CNFおよび分散剤を添加せず、架橋剤をカルボジライトとした以外は、実施例1と同様に操作し、減衰性樹脂組成物の水分散体(16)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(16)を作製して、塗工膜の比重、粘度、ゲル分率、分散性および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例1において、CNF、分散剤、および架橋剤を添加しない以外は、実施例1と同様に操作し、減衰性樹脂組成物の水分散体(17)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布した後は風乾のみを行い、第二塗工膜(17)を作製して、塗工膜の比重、粘度、ゲル分率、分散性および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例6)
実施例3において、CNF、分散剤、および架橋剤を添加しない以外は、実施例1と同様に操作し、減衰性樹脂組成物の水分散体(18)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布した後は風乾のみを行い、第二塗工膜(18)を作製して、塗工膜の比重、粘度、ゲル分率、分散性および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例1において、CNFの添加量を10重量%とした以外は実施例1と同様に操作し、減衰性塗装用樹脂組成物の水分散体(19)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該分散体を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(19)を作製して、塗工膜の比重、ゲル分率、分散性、および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例8)
実施例6において、CNFの添加量を10重量%とした以外は実施例6と同様に操作し、減衰性樹脂組成物の水分散体(20)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(20)を作製して、塗工膜の比重、ゲル分率、分散性、および損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例9)
実施例9において、CNFの添加量を10重量%とした以外は実施例9と同様に操作し、樹脂組成物の水分散体(21)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(21)を作製して、該塗工膜の比重、ゲル分率、分散性、損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例10)
実施例12において、CNFの添加量を10重量%とした以外は実施例12と同様に操作し、減衰性樹脂組成物の水分散体(22)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いてPETフィルム及びアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(22)を作製して、該塗工膜の比重、ゲル分率、分散性、損失係数を評価した。結果を表1に示す。
(比較例11)
実施例3において、さらに添加剤としてCNF以外に転炉スラグ粉末(商品名、てんろ石灰、ミネックス(株)製)をPVB樹脂固形分に対して200重量部添加した以外は、実施例13と同様に操作し、樹脂組成物の水分散体(23)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いて同様にアルミ板に膜厚1mmの塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(23)の比重、および損失係数を評価した。
(比較例12)
実施例3において、さらに添加剤としてCNF以外に中空ガラスビーズ(商品名、ガラスバルーン Q−CEL5020、ポッターズバロティーニ(株)製)をPVB樹脂固形分に対して5重量部添加した以外は、実施例13と同様に操作し、全水性樹脂組成物の水分散体(24)を調製し、それぞれ塗工液とした後、該塗工液を用いて同様にアルミ板に塗工膜を塗布し、架橋処理後、第三塗工膜(24)の比重、および損失係数を評価した。
Figure 2019214671
表1より、架橋性の水溶性又は水分散性を有する樹脂にセルロースナノファイバーおよび高分子分散剤を添加した樹脂組成物を塗布し、架橋処理することで、低比重かつ損失係数が高くなり、優れた振動減衰性能が得られることがわかる。セルロースナノファイバー添加量が多すぎると、セルロースナノファイバーの運動性が制限され、振動減衰性能が却って低下すると考える。
比較例11においては、第三塗工膜(23)の25℃での損失係数は0.2と高いものの、比重が1.74と高く、軽量性の塗工膜としてはふさわしくない。また、比較例12では、第三塗工膜(24)の30℃における損失係数は0.2と高いものの、繰り返し負荷(塗工膜を3ポンド両口ハンマーを用いて10回衝撃を与える)後の損失係数は0.7となり、衝撃などの外力に弱いことがわかった。一方、同様の衝撃を実施例3による塗工膜に与えると、25℃における損失係数は0.35とほとんど変わらなかった。

Claims (6)

  1. 組成物全体の中で少なくとも一部において架橋構造を形成可能な合成樹脂を主成分とし、前記合成樹脂に対する添加量が10重量%未満のセルロースナノファイバーを含む振動減衰性樹脂組成物であって、
    前記架橋構造を形成可能な合成樹脂は、前記振動減衰性樹脂組成物に架橋剤を含む事によって前記合成樹脂の架橋構造を形成可能とした、または、前記合成樹脂が自己架橋性樹脂であることによって前記合成樹脂の架橋構造を形成可能とした事を特徴とする振動減衰性樹脂組成物。
  2. 前記架橋構造を形成可能な合成樹脂が、未架橋状態で溶媒可溶性または溶媒分散性である、請求項1に記載の振動減衰性樹脂組成物。
  3. 前記溶媒が、水または水系溶媒である請求項1〜2に記載の振動減衰性樹脂組成物。
  4. 水溶性分散剤をさらに含み、セルロースナノファイバーに前記水溶性分散剤がイオン結合している、請求項1〜3に記載の振動減衰性樹脂組成物水分散体。
  5. 前記組成物の塗工膜の、架橋後の測定温度30℃における損失係数が0.1以上であり、かつ架橋後の該塗工膜の比重が1.0〜1.5である、請求項1〜4に記載の振動減衰性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5に記載の振動減衰性樹脂組成物の主成分である、前記架橋構造を形成可能な合成樹脂が未架橋状態の前記組成物を水に分散させた水分散体を塗布して第一塗工膜を形成する工程、第一塗工膜を乾燥して第二塗工膜を形成する工程、及び第二塗工膜を架橋して第三塗工膜を形成する工程を含む、請求項1〜5に記載の振動減衰性樹脂組成物の塗工方法。
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