JP7120011B2 - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂組成物およびその製造方法に関する。
従来、セルロースナノファイバーを含む樹脂組成物が多々提案されている。
しかしながら、セルロースナノファイバーを樹脂に複合化した従来の樹脂組成物では、セルロースナノファイバーの樹脂中での分散性が低いことがある。特に、樹脂が疎水性の比較的高い樹脂である場合には、セルロースナノファイバーが高親水性であることから、その樹脂中での分散性が低くなりやすい。
セルロースナノファイバーの樹脂中での分散性を高めるために、例えば、重合性化合物とセルロースナノファイバーとを溶剤に分散させた分散液中で、重合性化合物を重合させた樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1では、セルロースナノファイバーの存在下で重合性化合物を重合させるために、反応制御が複雑になりがちであり、コストも高くなる。
また、セルロースナノファイバーの分散性を向上させる分散剤として、樹脂親和性セグメントとセルロース親和性セグメントとを有し、かつブロック共重合体構造またはグラジエント共重合体構造を有する共重合体が提案されている(特許文献2)。該分散剤は特殊なリビングラジカル重合法で合成することが必要である。また、該分散剤を用いてセルロースナノファイバーを有機溶剤中で解繊及び分散させ、得られた分散液を樹脂の有機溶剤溶液中に分散させることが必要である。これら一連の操作及びその後処理は非常に煩雑であり、精密な制御を要するという問題がある。
また、セルロースナノファイバーと、水溶性含窒素樹脂と、反応性を有する有機化合物とを混合し、セルロースナノファイバーと水溶性含窒素樹脂との間に架橋構造を形成することにより、得られる樹脂組成物の機械特性を向上させる試みがある(特許文献3)。しかしながら、この技術では、セルロースナノファイバーの微細化および均一な分散は考慮されていないことから、セルロースナノファイバーによる補強効果が不十分になり易いという問題がある。
セルロースナノファイバーを樹脂中に微細かつ均一に分散させるために、セルロースナノファイバーと高分子分散剤との併用や、セルロースナノファイバー中の水酸基を疎水性基で変性することにより、熱可塑性樹脂に対する分散性を高めた疎水変性セルロースナノファイバーの使用が提案されている(特許文献4)。また、セルロースナノファイバーのSP値(solubility parameter)に近いSP値を有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の使用が考えられる。しかしながら、これらの方法で得られる樹脂組成物も、剛性、耐クリープ性、耐摩耗性などの機械特性が充分とはいえない場合もある。
また、従来技術では、セルロースナノファイバーと混合する樹脂には、変性などの処理は施されていない。前述したように、セルロースナノファイバーと樹脂との間には、セルロースナノファイバーが樹脂に分散し難いという問題がある。
また、セルロースナノファイバーと熱可塑性樹脂との混合物を、二軸押出機などで複数回溶融混練し、セルロースナノファイバーの微細化と、セルロースナノファイバーの熱可塑性樹脂中への均一な分散を得ようとする試みがなされている。しかしながら、溶融混練の回数が少ないと、セルロースナノファイバーの樹脂中での分散が不十分になる。また、セルロースナノファイバーの樹脂中での分散を高めるために複数回の溶融混練を行なうと、二軸押出機の混練スクリュのせん断作用によってセルロースナノファイバーの切断や熱劣化を生じ、十分な機械特性を有する樹脂組成物(溶融混練物)が得られないことがある。
特開2014-105217号公報 特開2014-162880号公報 特開2015-160870号公報 特許第5150792号公報
本発明の目的は、セルロースナノファイバーを含み、機械特性やその他の特性が向上した成形体を与え得る樹脂組成物及びその製造方法を提供することである。
本発明は、好ましい実施形態として、下記〔1〕~〔13〕の樹脂組成物、および下記〔14〕~〔15〕の樹脂組成物の製造方法を提供する。
〔1〕樹脂成分とセルロースナノファイバーとを含み、樹脂成分が、未変性水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲にある熱可塑性樹脂、ならびに水溶性およびアルコール溶解性から選ばれた少なくとも1種の溶剤溶解性を有する熱可塑性樹脂の変性樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種である、樹脂組成物。
〔2〕未変性水溶性樹脂が、エチレン性二重結合含有化合物由来の構成単位および環状エチレン系化合物由来の構成単位から選ばれた少なくとも1種の構成単位を含む未変性水溶性樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、ならびに水溶性バイオマス由来樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記〔1〕の樹脂組成物。
〔3〕水分散性樹脂が、水分散性に変性された熱可塑性樹脂であり、水分散性に変性される前の熱可塑性樹脂が熱可塑性バイオマス由来樹脂である、上記〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕水分散性樹脂が、水分散性に変性された、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂から選ばれた少なくとも1種であり、水分散性に変性される前の熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂以外の含窒素熱硬化性樹脂、熱硬化性バイオマス由来樹脂およびポリシロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、水分散性に変性される前の光硬化性樹脂が、光重合性樹脂および光架橋性樹脂よりなる群から選ばれけた少なくとも1種である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかの樹脂組成物。
〔5〕溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲である熱可塑性樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン1010、ナイロン9T、ナイロン6/66、ナイロン66/610、およびナイロン6/11よりなる群から選ばれた少なくとも1種のポリアミド樹脂である、上記〔1〕~〔4〕いずれかの樹脂組成物。
〔6〕水溶性およびアルコール溶解性から選ばれた少なくとも1種の溶剤溶解性を有する変性樹脂が、溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲である熱可塑性樹脂の、ポリエチレングリコール、N-メチロールメチル、およびカルボジイミドよりなる群から選ばれた少なくとも1種による変性物である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかの樹脂組成物。
〔7〕セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバー及び疎水変性セルロースナノファイバーよりなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかの樹脂組成物。
〔8〕疎水変性セルロースナノファイバーが、疎水性基を有するセルロースナノファイバーであり、疎水性基が、エーテル結合及びエステル結合から選ばれた少なくとも1つの結合により、セルロース由来の水酸基中の酸素原子に結合する、上記〔1〕~〔7〕のいずれかの樹脂組成物。
〔9〕分散剤をさらに含み、セルロースナノファイバーの少なくとも一部が、分散剤とイオン結合する、上記〔1〕~〔8〕のいずれかの樹脂組成物。
〔10〕分散剤が、リン原子に結合する-OH基、-COOH基、-SOH基、およびこれらの金属塩基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、イミダゾリン基を有する化合物、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単独重合体、ならびにアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン由来の構成単位とそれに共重合可能な他の単量体由来の構成単位とを含む共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記〔9〕の樹脂組成物。
〔11〕架橋成分をさらに含む、上記〔1〕~〔10〕のいずれかの樹脂組成物。
〔12〕架橋成分を介して結合した架橋構造を有し、架橋構造が、セルロースナノファイバー間の架橋構造、セルロースナノファイバーと樹脂成分との間の架橋構造、および樹脂成分間の架橋構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記〔11〕の樹脂組成物。
〔13〕下記式で表わされる架橋度(ゲル分率、%)が20~98%である、上記〔11〕または〔12〕の樹脂組成物。
ゲル分率=[不溶解分重量(g)/初期乾燥重量(g)]×100
〔式中、初期乾燥重量は、樹脂組成物を100℃で2時間乾燥させて得られた乾燥物の重量である。不溶解分重量は、乾燥物を常温下メタノール中に24時間浸漬した液から、定量ろ紙により分取した残渣を100℃で2時間乾燥させた後の重量である。〕
〔14〕上記〔11〕~〔13〕のいずれかの樹脂組成物の製造方法であって、
セルロースナノファイバーと分散剤との混合により、セルロースナノファイバーの予備分散体を得る工程と、
予備分散体、樹脂成分、および架橋成分を溶剤中で撹拌および混合して樹脂組成物を得る工程と、
樹脂組成物を乾燥させて乾燥体またはその成形体を得る工程と、
乾燥体または成形体に架橋処理をする工程と、
を含む、樹脂組成物の製造方法。
〔15〕第3工程の架橋処理が、加熱による化学的架橋または紫外線、電子線及びγ線よりなる群から選ばれた少なくとも1種の電離放射線の照射による物理的架橋である、上記〔14〕の製造方法。
本発明によれば、セルロースナノファイバーを含み、機械特性やその他の特性が向上した成形体を与え得る樹脂組成物が提供される。
実施例1R及び比較例1Z11、1Z12の樹脂組成物を合わせガラスの接着剤として用いた場合の、耐貫通性試験の結果を示す図面である。
本実施形態の樹脂組成物の成形体の機械特性には、強度、剛性、耐クリープ性、耐摩耗性などがある。また、本実施形態の樹脂組成物の成形体の他の特性には、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、吸水性、保水性、塗膜の自己修復性、ガスバリア性などがある。
本実施形態の樹脂組成物では、セルロースナノファイバー(好ましくは親水性の高い未変性のセルロースナノファイバー)を特定の樹脂成分の強化繊維または補強材として使用する。ここで、樹脂成分は、未変性水溶性樹脂(以下単に「水溶性樹脂」ともいう)、水分散性樹脂、溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲にある熱可塑性樹脂、水溶性およびアルコール溶解性から選ばれた少なくとも1種の溶剤溶解性を有する前記熱差可塑性樹脂の変性樹脂(以下単に「変性熱可塑性樹脂」ともいう)よりなる群から選ばれた少なくとも1種である。
すなわち、樹脂成分は、前記4種の樹脂のそれぞれ単独使用でも良く、水溶性樹脂と水分散性樹脂との組み合わせ、水溶性樹脂と特定SP値の熱可塑性樹脂との組み合わせ、水溶性樹脂と変性熱可塑性樹脂との組み合わせ、水分散性樹脂と特定SP値の熱可塑性樹脂との組み合わせ、水分散性樹脂と変性熱可塑性樹脂との組み合わせ、水溶性樹脂と水分散性樹脂と特定SP値の熱可塑性樹脂との組み合わせ、水溶性樹脂と水分散性樹脂と変性熱可塑性樹脂との組み合わせ、水溶性樹脂と特定SP値の熱可塑性樹脂と変性熱可塑性樹脂との組み合わせ、水分散性樹脂と特定SP値の熱可塑性樹脂と変性熱可塑性樹脂との組み合わせ、水溶性樹脂と水分散性樹脂と特定SP値の熱可塑性樹脂と変性熱可塑性樹脂との組み合わせのいずれであってもよい。
本実施形態では、セルロースナノファイバーと特定の分散剤と水などの分散媒とを混合してセルロースナノファイバーの予備分散体(以下単に「予備分散体」ともいう)を調製し、これに樹脂成分および架橋成分を添加混合することが好ましい。予備分散体中では、少なくとも一部のセルロースナノファイバーの表面にイオン結合により分散剤が吸着する。そして、該表面に分散剤が存在することで、セルロースナノファイバー表面に存在する水酸基がブロックされ、そのイオン反発力でセルロースナノファイバーの分散が均一かつ安定なものとなる。ここで、セルロースナノファイバーに吸着させる好ましい分散剤としては、P-OH基(リン原子に結合した水酸基)、-COOH基、-SOH基、およびこれらの金属塩基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、イミダゾリン基を有する化合物、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単独重合体、ならびにアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン由来の構成単位とそれに共重合可能な他の単量体由来の構成単位とを含む共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
このように、本実施形態の樹脂組成物では、セルロースナノファイバー(好ましくは未変性セルロースナノファイバー)と分散剤とを用い、比較的簡易な方法で樹脂成分への分散に適した予備分散体を作製できる。したがって、本実施形態の樹脂組成物を低コストで得ることができる。
セルロースナノファイバーの予備分散体では、セルロースナノファイバー表面のセルロース由来の水酸基に同種の分散剤がイオン結合することから、一および他の分散剤間にイオン反発力が生じ、その反発力によってセルロースナノファイバーの分散性が非常に高まる。したがって、予備分散体に使用する分散剤としては、アニオン性、カチオン性などのイオン性を有するものを用いる形態がある。また、2種以上の分散剤を用いる場合は、同じイオン性を持つ分散剤を用いる形態がある。一方で、セルロースナノファイバー表面のセルロース由来の水酸基にイオン結合したイオン性を有する分散剤は、樹脂成分との親和性を有することが本発明者らの研究により判明している。したがって、セルロースナノファイバーの予備分散体を樹脂成分に添加する場合には、セルロースナノファイバーが凝集することなく高分散すると共に、セルロースナノファイバー表面と樹脂成分(特に水や親水性溶剤に溶解および/または分散した樹脂成分)との界面接着が強くなり、樹脂組成物としての強度、剛性、耐熱性、耐摩耗性などに代表される特性の補強効果が高くなる。さらに、樹脂成分を物理的または化学的に架橋することにより、強度や剛性などの機械特性のほか、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、吸水性、保水性、自己修復性などを向上させることができる。
また、本実施形態では、セルロースナノファイバーとして、未変性セルロースナノファイバー(以下「未変性CNF」ともいう)、および疎水変性セルロースナノファイバー(以下「疎水変性CNF」ともいう)を使用できる。疎水変性CNFは、セルロースナノファイバー由来の水酸基を疎水性基に置換することにより、未変性CNFを化学変性(疎水変性)したものである。疎水変性CNFを樹脂成分に添加および混合しても、強度や剛性などの機械特性、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、耐候性などを向上させることができる。なお、疎水性CNFを用いかつ樹脂成分などを架橋させた場合には、その補強効果が一層向上する。
本実施形態の樹脂組成物は、必須成分として、水溶性樹脂、水分散性樹脂、上記特定のSP値を有する熱可塑性樹脂、および変性熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂成分と、セルロースナノファイバーと、を含み、任意成分として分散剤、架橋成分などを含む。本実施形態の樹脂組成物の中でも、上記樹脂成分、セルロースナノファイバーおよび分散剤を含む形態が好ましく、上記樹脂成分、セルロースナノファイバー、分散剤および架橋成分を含む形態がより好ましい。各成分の具体的構成は次の通りである。
<樹脂成分>
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として、前述のように、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲にある熱可塑性樹脂、および変性熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種を使用する。これらの樹脂成分の詳細は次の通りである。
<水溶性樹脂>
水溶性樹脂は、親水性官能基などにより変性されることなく、それ自体が水溶性を有する高分子化合物、すなわち未変性の水溶性高分子化合物である。本明細書において、水溶性とは、水、親水性溶剤又は水と親水性溶剤との混合溶剤に溶解することを意味する。
親水性溶媒としては、例えば、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、多価アルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、グリコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類,エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類および多価アルコールアラルキルエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム等のラクタム類、1,3-ジメチルイミダゾリジノンアセトン、N-メチルー2-ピロリドン、m-ブチロラクトン、グリセリンのポリオキシアルキレン付加物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトアミドなどである。親水性溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。水には、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などを使用できる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いれば、長期保存での微生物の発生を防止できる。後述する水分散性樹脂の分散にも親水性溶剤および/または水が用いられ、上述の親水性溶剤および水を使用できる。
なお水溶性樹脂として後述する樹脂の中にも、構成単位の種類や含有量の違い、重合方法などにより難水溶性又は非水溶性のものもある。このような樹脂は、乳化剤、界面活性剤などとの組み合わせ、樹脂骨格中および/または樹脂骨格末端への親水性官能基などの導入(以下単に「親水性官能基の導入」ともいう)などにより、水、親水性溶媒又は水と親水性溶媒との混合溶媒に分散して、水性エマルジョン(強制乳化型水性エマルジョンや自己乳化型水性エマルジョン等)や水性スラリーを形成することもある。本明細書では、このような樹脂を水分散性樹脂とも呼ぶ。水分散性樹脂の詳細は、後述する。
水溶性樹脂としては水に溶解可能な高分子化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレン性二重結合含有化合物由来の構成単位及び/又は環状エチレン系化合物由来の構成単位を含む水溶性樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、バイオマス由来水溶性樹脂、ポリエステル系水溶性樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
エチレン性二重結合含有化合物由来の構成単位及び/又は環状エチレン系化合物由来の構成単位を含む水溶性樹脂としては、例えば、水溶性ビニル樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、及び(メタ)アクリル酸系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種を好ましく使用できる。
水溶性ビニル樹脂は、その分子骨格内に親水性のビニルアルコール構成単位(ビニルアルコール由来の構成単位)を有し、水、アルコール、又は水とアルコールとの混合溶剤に可溶で、活性水素化合物によって架橋させることができる。水溶性ビニル樹脂としては、エチレン性二重結合含有化合物由来の構成単位として、少なくともビニルアルコール由来の構成単位、すなわちビニルアルコール構造を主骨格に含むものが好ましい。また、水溶性ビニル樹脂を架橋させる活性水素化合物の例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート、ブロックイソシアネート、アミノ基含有樹脂(メラミン樹脂、ポリエチレンイミン)、カルボキシル基含有樹脂(ポリエステル樹脂、アクリル樹脂)、多価金属化合物(炭酸アンモニウム、ジルコニウム)、グリオキザール、N-メチロール化合物、ホウ酸エステル、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
水溶性ビニル樹脂としては、各種の重合度、けん化度を有するポリビニルアルコールをはじめ、部分ケン化ポリビニルアルコールの他、ビニルアルコール由来の構成単位と、重合体の水溶性を阻害しない程度の少量の共重合成分由来の構成単位とを含有する水溶性共重合体及びそのケン化物などが挙げられる。該共重合成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、インブチレン、アリルエステル、イソプロペニルエステル、ビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等のビニルエステル化合物が挙げられる。該共重合体の製造において、該共重合成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
水溶性ビニル樹脂としては、例えば、エチレン性二重結合含有化合物由来の構成単位を含む水溶性樹脂が挙げられる。その具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(PVA、PVOH)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)などが挙げられ、これらの水溶性を損なうことなく、変性して用いてもよい。
ポリビニルアルコール樹脂は酢酸ビニルをラジカル重合し、得られたポリ酢酸ビニルをケン化することで製造される。分子骨格中に多数の水酸基を有していることから、親水性が高くそのまま水溶液とすることができる。ポリビニルアルコール樹脂は、水溶性が高く、接着性、製膜性が高く、化学的に安定な性質を示す。この特性を生かして、接着剤、紙、繊維、フィルム、エマルジョン乳化剤、バインダー樹脂などに多用されている。またポリビニルアルコール樹脂は架橋反応性が高く、熱処理や紫外線処理により自己架橋させることもできる。
ポリビニルアルコールの重合度、ケン化度は特に制限はないが、重合度が200~5000または500~3000の範囲で、ケン化度が70~100モル%または80~100モル%の範囲である。ポリビニルアルコールの市販品としては、ポバール((株)クラレ)、ゴーセネックス(日本合成化学工業(株))、J-ポバール(日本酢ビ・ポバール(株))などが挙げられる。
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、例えば、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体を加水分解することにより得られる。EVOHは、ポリビニルアルコールと同程度のハイガスバリア性や耐油性、透明性を有するとともに、主にエチレン由来の構成単位に起因する耐湿性や耐候性、耐薬品性に優れる。また、EVOHは、機械的強度が高く、すぐれた溶融押出加工性等を併せ持っている。市販品としては、エバール((株)クラレ)、ソアノール(日本合成化学工業(株))などが挙げられる。
ポリビニルブチラール樹脂(PVB)は、ポリビニルアルコール樹脂を水性媒体中にて
酸性条件下および酸性触媒の存在下でアルデヒドを用いてアセタール化することにより製造される。酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸などの無機塩が挙げられる。アルデヒド類としては、公知のアルデヒド類からを適宜選択でき、例えば、鎖状アルデヒド類、脂環式アルデヒド類及び芳香族アルデヒド類よりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。アルデヒドの炭素数は1~20または2~4である。その具体例としては、例えば、ベンズアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソノナンアルデヒド、ヒドロキシアルデヒド、これらのアルデヒドの誘導体(例えば、各種置換基を有する誘導体)などが挙げられる。アルデヒド類は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記アセタール化反応ではポリビニルアルコール樹脂に存在する水酸基がアルデヒドと反応するが、すべての水酸基が反応するのではなく、ポリビニルアルコール樹脂由来の水酸基ならびにポリビニルアルコール樹脂の合成に由来する酢酸ビニル基も残存している。したがって、ポリビニルブチラール樹脂は、ビニルアルコール、酢酸ビニルならびにビニルブチラールからなるターポリマーとなる。特にビニルアルコールの水酸基により、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのさまざまな樹脂との反応が期待される。市販品としては、エスレックBK(積水化学工業(株))、TROSIFOL((株)クラレ)などが挙げられる。。
ポリビニルブチラール樹脂は、透明であり、ガラスやセラミックスなどの無機材料との接着性が高い。ポリビニルブチラール樹脂にセルロースナノファイバーの予備分散体を固形分重量で1~10重量%添加した樹脂組成物は、例えば、合わせガラスの貼り合わせ用接着剤として使用できる。セルロースナノファイバーの予備分散体を添加しない場合に比べ、透明性を維持したまま、接着層の接着強度や剛性、耐衝撃性、遮熱性、遮音性、制振性が向上する。さらに該樹脂組成物を架橋処理すると、透明性を維持したまま接着層の強度や剛性、耐衝撃性がさらに向上し、自動車等の交通車両用窓ガラス、携帯端末の液晶表示ガラス、建物等の窓ガラスなどの用途に使用できる。さらに、セルロースナノファイバーは、後述するように熱膨張率が非常に小さいことから、ポリビニルブチラール樹脂に複合化すると、該樹脂の架橋による収縮量が少なくなり、架橋処理後のひずみが小さく、耐衝撃性が向上する。
ポリエチレンオキシド樹脂およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体は、環状エチレン系化合物由来の構成単位を含む水溶性樹脂であり、例えば、三員環の構造を持つ環状エーテルであるエチレンオキシドの開環重合又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの開環重合により製造される。親水性であるエチレンオキシドと疎水性であるプロピレンオキシドとを共重合させる場合、得られる共重合体の水溶性の観点から、エチレンオキシドの使用量は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの各使用量の合計の70重量%以上である。
ポリエチレンオキシド樹脂は、ポリエチレングリコールとほぼ同じ構造を有し、分子量数万以上であり、熱可塑性および水溶性を有する。ポリエチレンオキシドは例えば全固体リチウムイオン二次電池の絶縁材および電解質として用いられる。ポリエチレンオキシド樹脂は、環状エチレン系化合物由来の構成単位として、少なくともエチレンオキシド由来の構成単位、すなわちエタン構造を主骨格に含む。環状エチレン系化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレン部分が炭素数2~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である化合物が挙げられる。環状エチレン系化合物は1種を単独で又は2種以上を併用できる。市販品としては、PEO(住友精化(株))、アルコックス(明成化学工業(株))などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸系樹脂は、アクリル酸系樹脂及びメタアクリル酸系樹脂を含む。該樹脂は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種を主なモノマー成分とし、必要に応じてこれらに共重合可能な任意の共重合用モノマー成分を含む周知の単独重合体又は共重合体である。アクリル酸系樹脂には、水溶性のものと、水分散性のものがある。水分散型のものは一般的に分子量が水溶性のものより大きく、高い皮膜強度が得られるとともに、乾燥後の皮膜は水に不溶である。水分散型アクリル酸系樹脂に、セルロースナノファイバーまたはその予備分散体を配合した樹脂組成物は、乾燥後の強度、剛性、耐衝撃性などの機械特性が、セルロースナノファイバー無添加の樹脂組成物に比べて向上する。
(メタ)アクリル酸系樹脂を、エポキシ基、ウレタン基等の反応性官能基で変性してもよい。変性タイプの(メタ)アクリル酸系樹脂は、例えば、アクリル-ウレタン系エマルジョン等の水分散型のものである。変性タイプのアクリル酸系樹脂は種々の特性を有するものが市販され、本実施形態の樹脂組成物の用途などに応じて適宜選択される。市販品としては、例えば、ボンコートシリーズ(DIC(株)製)、ポリゾールシリーズ(昭和電工(株)製)などが挙げられる。
ビニルピロリドン樹脂は、N-ビニルピロリドン由来の構成単位を主成分とする水溶性樹脂であり、種々の有機溶剤や樹脂と相溶するうえ、接着性、成膜性、錯形成能、生体適合性が高い。ビニルピロリドン樹脂は非イオン性であり、人体に無害なので、医薬品、食品、化粧品などの賦形剤や結合剤、インクジェット紙などのコーティング材に用いられている。ビニルピロリドン樹脂には、例えば、N-ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)、N-ビニルピロリドンとこれに共重合可能な化合物との共重合体、ポリビニルポリピロリドンなどがある。
ポリビニルポリピロリドンは、ポリビニルピロリドンのピロリドン部分が架橋された構造を有し、水に不溶な樹脂である。したがって、本実施形態の樹脂組成物においてポリビニルポリピロリドンを樹脂成分として用いる場合には、前述と同様の親水性官能基の導入または乳化剤の併用により、水および/または親水性溶剤に分散させた、自己乳化型エマルジョンまたは強制乳化型エマルジョンの形態にする。また、ポリビニルピロリドンが架橋性を有することから、例えば、セルロースナノファイバーの予備分散体をN-ビニル-2-ピロリドンに含浸して溶媒置換後、これを、重合開始剤(AIBN、アゾビスイソブチロニトリルなど)および架橋成分(エチレングリコールジメタクリレートなど)を含むN-ビニル-2-ピロリドンに浸漬して紫外線を照射することにより、本実施形態の樹脂組成物からなる架橋体(成形体)が得られる。
ビニルピロリドン樹脂は、例えば、水性媒体中にてラジカル重合開始剤の存在下にN-ビニルピロリドン又はN-ビニルピロリドンとこれに共重合可能な化合物とを重合させることにより水溶液などの形態で得られる。ここで、反応熱の制御の観点から、モノマー化合物であるN-ビニルピロリドンの水性媒体中での濃度は例えば30重量%以下である。ラジカル重合開始剤としては、水性媒体中で使用可能なものを使用でき、例えば、水溶性ペルオキシド化合物、過酸化水素などが挙げられる。水溶性ペルオキシド化合物は、水溶性のペルオキシド及びヒドロゲンペルオキシドを含み、その具体例としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ペルオキソジ硫酸及びそれらの塩、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ペルカーボネート、ペルオキソエステルなどが挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤の中でも、過酸化水素は、ビニルピロリドン樹脂の分子量の調整に有効である。ビニルピロリドン樹脂の分子量は過酸化水素濃度に依存し、過酸化水素濃度が高いビニルピロリドン樹脂の分子量が低くなり、過酸化水素濃度が低いとビニルピロリドン樹脂の分子量が高くなる。したがって、ビニルピロリドン樹脂の設計に応じて、水性媒体中での過酸化水素濃度が適宜選択される。ビニルピロリドン樹脂の水溶液をそのまま用いてもよく、また、スプレー乾燥や凍結乾燥などの公知の方法で固体化して用いてもよい。。
N-ビニルピロリドンとこれに共重合可能な化合物(以下「共重合成分」ともいう)との共重合体において、共重合体成分としては、重合性二重結合を有し、N-ビニルピロリドンと共重合可能な化合物を特に限定なく使用でき、例えば、酢酸ビニル、無水マレイン酸、ビニルアルコール、スチレン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α-オレフィンなどが挙げられる。共重合成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの共重合成分の中でも、水溶性の高いビニルアルコール共重合体を得る観点からは、(メタ)アクリレートが好ましく、ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートがさらに好ましい。ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記した各水溶性樹脂は、架橋性官能基を有する形態をも含む。架橋性官能基としては、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ピロリドン基、シロキサン基、オキセタン基、ニトリル基、フルオロエチレンエーテル基などが挙げられる。架橋性官能基を有する水溶性樹脂を含む本実施形態の樹脂組成物は、その成形体の機械特性が一層向上する。なお、架橋性官能基の導入が好ましい水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドンなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールや、ポリビニルピロリドンなどの、樹脂骨格中に多くの水酸基を有する水溶性樹脂は、活性水素化合物との併用により架橋し、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の機械特性や他の特性が一層向上する。活性水素化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ基含有樹脂(メラミン樹脂、ポリエチレンイミン)、カルボキシ基含有樹脂(ポリエステル樹脂、アクリル樹脂)などの樹脂類、イソシアネート、ブロックイソシアネート、多価金属化合物(塩化アルミニウム、塩化カルシウムなど)、グリオキザール、N-メチロール化合物、ホウ酸エステル、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。なお、樹脂類を用いる場合は、前述の方法で自己乳化型エマルジョンまたは強制乳化型エマルジョンの形態で用いてもよい。
<水分散性樹脂>
水分散性樹脂は、水溶性が低いかまたは水溶性を有しないものの、水、水と親水性溶剤との混合溶剤などに分散可能な高分子化合物である。水分散性樹脂には、自己乳化型水分散性樹脂、強制乳化型水分散性樹脂などがある。自己乳化型水分散性樹脂(以下「自己乳化型樹脂」ともいう)は、樹脂骨格中に親水性官能基由来の構成単位を含むかまたは樹脂骨格の側鎖および樹脂骨格末端から選ばれる少なくとも1つに親水性官能基を有し、該親水性官能基の作用により水や水と親水性溶剤との混合溶剤に分散可能な樹脂である。また、別形態の自己乳化型樹脂は、当該樹脂を低分子量化、コロイダルディスパージョン化などの方法で水に分散可能にした樹脂である。また、強制乳化型水分散性樹脂(以下「強制乳化型樹脂」ともいう)は、乳化剤や界面活性剤の作用により水や水と親水性溶剤との混合溶剤に分散可能な樹脂である。以下、水と親水性溶剤との混合溶剤を水性溶剤ともいう。ここで、水および親水性溶剤は、水溶性樹脂の溶解に用いられる水および親水性溶剤と同じものである。
樹脂骨格中に親水性官能基を有する自己乳化型樹脂とは、非イオン性、アニオン性、カチオン性の親水官能基を有する重合可能な化合物由来の構成単位を含むものである。以下、重合可能な化合物を、重合性化合物ともいう。該構成単位は、1種の親水性官能基を有する重合性化合物由来でもよく、2種以上の親水性官能基を有する重合性化合物由来でもよく、異なる親水性官能基を有する2以上の重合性化合物由来でもよい。親水性官能基としては、例えば、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ピロリドン基、シロキサン基、オキセタン基、ニトリル基、フルオロエチレンエーテル基、スルホン基、エーテル基などが挙げられる。なお、これらの親水性官能基は、架橋性を有しており、架橋性官能基としても作用することがある。架橋性官能基は架橋構造を形成し、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の機械特性やその他の特性を一層向上させる。
樹脂骨格の側鎖および/または末端に親水性官能基を有する自己乳化型樹脂とは、化学反応などにより、樹脂骨格の側鎖および/または末端に1種または2種以上の親水性官能基を置換したものである。ここで、親水性官能基は、自己乳化型樹脂における親水性官能基と同じものであり、同様に架橋性官能基としても作用する。
なお、上記架橋性官能基を有し得る熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ポリシロキサン樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体が挙げられる。これらの樹脂のうち、水溶性のものは架橋性官能基を置換することにより、架橋性水溶性樹脂となり、水溶性でないものは自己乳化型への変性又は強制乳化により水分散性とし、さらに架橋性官能基を置換することにより架橋性水分散性樹脂となる。
水分散性樹脂としては、例えば、水分散性エポキシ樹脂、水分散性フェノール樹脂、水分散性ウレタン樹脂、水分散性含窒素熱硬化性樹脂、水分散性ポリシロキサン樹脂、水分散性バイオマス由来樹脂、水分散性光重合性樹脂、水分散性光架橋性樹脂などが挙げられる。
[水分散性エポキシ樹脂]
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として水分散性エポキシ樹脂を用いる。エポキシ樹脂は、構成単位が1以上のエポキシ基を有するので、自己乳化型樹脂および強制乳化型樹脂となり得る。さらに、エポキシ樹脂にエポキシ基以外の親水来官能基を導入することにより、水中、水と親水性溶剤との混合溶剤中でのエポキシ樹脂の分散性がさらに向上する。親水性官能基の導入方法としては、例えば、エポキシ樹脂に多塩基酸や酸無水物をエステル反応させてカルボキシル基を導入する方法、チオール(-SH)またはフェノール(-OH)を付加する非加水分解反応によるカルボキシル基を導入する方法、カルボキシル基含有アクリル樹脂でエポキシ樹脂を変性する方法(アクリル樹脂をエポキシ樹脂に付加させるエステル化法、アクリルモノマーをエポキシ樹脂にグラフトするグラフト法)などが挙げられる。

水分散性エポキシ樹脂の具体例としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。ここで、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルのSP値は11.4(cal/cm1/2、ポリエチレングリコールエーテルのSP値は10.5(cal/cm1/2、ポリプロピレングリコールのSP値は9.3(cal/cm1/2であって、何れもセルロースナノファイバーのSP値15.4(cal/cm1/2に対して-6.0~+6.0cal/cm1/2の範囲にある。
架橋性を有する水分散性エポキシ樹脂は、エポキシ基を1分子中に2個以上持つポリエポキシ化合物であれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型等の二官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、3官能型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の多官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;TGDDM、TGIC、ヒダントイン型、TETRAD-D型、アミノフェノール型、アニリン型、トルイジン型等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;脂環型エポキシ樹脂;東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル-ブタジエンゴムまたはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂が挙げられる。中でも、ビスフェノールA型が好ましい。これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい(特開2001-139770号公報)。
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂成分として水分散性エポキシ樹脂を用いる場合、水分散性エポキシ樹脂は、例えば、水または水と親水性溶剤との混合溶剤に分散させたエマルジョンやスラリーなどの分散液の形態で用いられる。該分散液における水分散性エポキシ樹脂の含有量は、例えば、0.1~50重量%または1.0~30重量%である。
[水分散性フェノール樹脂]
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として水分散性フェノール樹脂を用いる。水分散性フェノール樹脂を含む本実施形態の樹脂組成物には、水分散性フェノール樹脂をセルロースナノファイバーの予備分散体および架橋成分と混合し、セルロースナノファイバーを水分散性フェノール樹脂中に均一分散させ、次いで脱溶剤する形態が含まれる。脱溶剤後に、水分散性フェノール樹脂がレゾール型である場合は化学架橋、水分散性フェノール樹脂がノボラック型の場合は物理架橋または化学架橋により架橋させることが好ましい。
水分散性フェノール樹脂は、フェノール樹脂を、低分子量化、コロイダルディスパージョン化、前述のエマルジョン化などの方法により、水分散化したものである。フェノール樹脂は、例えば、フェノール類の少なくとも1種とホルムアルデヒド類の少なくとも1種とを塩基触媒(多くは水酸化ナトリウム)の存在下で反応(重縮合)させて製造される。低分子量化による水分散性フェノール樹脂は、粘度調整、濃度調整などの作業が容易で、基材に対する含浸性も良好である。フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂では、分子量を低くし、メチロール基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボキシル基などの親水性官能基を多く付加したり、またはこれらの親水性官能基をアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩とする事により比較的容易に水分散性樹脂とすることが可能である。低分子量化による水分散性硬化性樹脂は、前述の他の水分散化の方法に比べて、無機物のフィラーや顔料の沈降防止性、分散性が良い。
フェノール樹脂の、フェノール類(P)とアルデヒド類(A)の反応モル比(A/P)は2.0~4.5である。A/Pが2.0未満では未反応のフェノール量が増加し臭気が問題となり、前述の水分散化後の水分散性が不十分になる。また、A/Pが4.5を超えると未反応のホルムアルデヒド量が増加し臭気が問題となる。フェノール類としては、フェノール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、エチルフェノール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、クミルフェノール、ビスフェノールAなどか挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどか挙げられる。
フェノール樹脂の水分散化には、メチロール基、水酸基などの親水性のある官能基が必要であり、又、フェノラートと呼ばれる金属塩によって水溶性が保たれる。水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属触媒を用いてフェノール樹脂を製造した場合、分子量を大きくしてもフェノラートを形成することによって水分散性を保ちやすく、水溶性フェノール樹脂の硬化速度が速くなる。
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類の少なくとも1種とアルデヒド類の少なくとも1種とを酸性触媒の存在下で反応させて合成する。フェノール類としては、例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラフェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシンなどが挙げられる。
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレインやこれらの混合物、これらのアルデヒドの発生源となる物質、あるいは、これらのアルデヒドの溶液などが挙げられる。
酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸などの無機酸、蓚酸、p-トルエンスルホン酸、有機ホスホン酸などの有機酸が挙げられる。これらの中でも、有機ホスホン酸が好ましい。
上記有機ホスホン酸は、ホスホン酸基(-PO(OH))を含む有機化合物である。
有機ホスホン酸としては、アミノポリホスホン酸類であるエチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、β-アミノエチルホスホン酸N,N-ジ酢酸、アミノメチルホスホン酸N,N-ジ酢酸や、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、アミノトリスメチレンホスホン酸や、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸が好ましい。
本工程で用いられるフェノール類とアルデヒド類との反応モル比は、酸性触媒が有機ホスホン酸である場合は、フェノール類(P)に対するアルデヒド類(F1)のモル比(F1/P)が、例えば0.1~0.85または0.3~0.8である。前記範囲内からの選択より、未反応モノマーの含有量が少ないノボラック型フェノール樹脂が効率的に得られる。モル比が上記下限値より小さいと、未反応フェノール類の含有量が多くなる傾向があり、これをレゾール化したときにも未反応フェノール類の含有量が少ないものを得ることが難しいことがある。一方、モル比が上記上限値を超えると、ノボラック型フェノール樹脂をレゾール化する工程において、高粘度化または反応条件によってはゲル化することがある。また、酸性触媒として有機ホスホン酸以外のものを用いる場合は、モル比(F1/P)は、例えば、0.05~0.8または0.1~0.7の範囲である。
酸性触媒の添加量は、有機ホスホン酸を用いる場合は、フェノール類1モルに対して、例えば、0.001~3.0モルまたは0.01~2.0モルである。添加量が前記上限値を超えても、未反応モノマーの残存量の低減化効果は変わらない。また上記下限値未満では、有機ホスホン酸を用いる効果が小さい。また、有機ホスホン酸以外のものを用いる場合は、フェノール類1モルに対して、例えば、0.001~0.1モルまたは0.005~0.05モルである。
反応温度は、有機ホスホン酸を用いる場合は、例えば40~240℃または80~140℃である。反応温度が40℃より低いと、反応の進行が遅く、未反応モノマーの残存量を十分に低下させるのに時間を要する。また、240℃より高温では有機ホスホン酸が加水分解し易い。また、有機ホスホン酸以外のものを用いる場合は、温度管理の容易な還流条件で反応すればよい。反応時間は、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜選択される。
上記で得られるノボラック型フェノール樹脂の水溶性高分子化合物を用いたエマルジョン化には、ノボラック型フェノール樹脂の合成反応の途中で水溶性高分子化合物を添加し、更に合成反応を続けることにより、フェノール樹脂のエマルジョンを得る方法、合成終了後のノボラック型フェノール樹脂と水溶性高分子化合物とを均一に混合し、フェノール樹脂のエマルジョンを得る方法などが挙げられる。ここで、水溶性高分子化合物は、例えば、水溶液、粉末などの形態で使用する。また、レゾール型フェノール樹脂エマルジョンを得る際には、上記水溶性高分子化合物のほか、必要に応じて分散助剤を併用できる。
水溶性高分子化合物としては、一般的に保護コロイドと呼ばれるものが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリルアマイド類、澱粉、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。ポリアクリルアマイド類には、ポリアクリルアマイド、ポリメタアクリルアマイド、ポリアクリルアマイド及びポリメタアクリルアマイドの部分加水分解物、アクリルアマイドとアクリル酸ないしメタクリル酸の共重合物、ビニル系ポリビニルアマイド共重合物、カチオン化ポリアクリルアマイド、両性のポリアクリルアマイド、スルホメチレン化ポリアクリルアマイド、ウレタン化ポリビニルアルコールなどによって代表される分子中に酸アマイド基を含有するもの、メチロール化ポリアクリルアマイドなどの上記酸アマイド類のメチロール化合物などがある。
レゾール型フェノール樹脂エマルジョンにおいて、水溶性高分子化合物の添加量は、レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して、例えば1~50重量部または3~40重量部である。これにより、安定性と取り扱い性に優れたものとなる。上記下限値未満であると、フェノール樹脂をエマルジョン化するのが難しくなることがある。また、上記上限値を超えると、フェノール樹脂エマルジョンの粘度が高くなり、セルロースナノファイバーの分散性が低下することがある。
フェノール樹脂エマルジョンは、水溶性高分子化合物のほか、分散助剤を含み得る。分散助剤は、界面活性剤、キレート剤、保護コロイドなどである。より具体的には、アニオン型、カチオン型、非イオン型、両性イオン型の界面活性剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル部分加水分解物、澱粉類、トラガカントゴム、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレン無水マレイン酸共重合物、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールなどの保護コロイド物質などである。分散助剤は、アルカリ性触媒の種類、レゾール型フェノール樹脂エマルジョンの用途などによって適宜選択され、添加量は少量でよい。
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として、水分散性フェノール樹脂の変性体を使用できる。変性体としては、例えば、フェノール樹脂と他の樹脂成分との共重合体、水分散性フェノール樹脂と他の樹脂成分との混合物などが挙げられる。該共重合体は水分散性であることが必要であるが、非水溶性又は難水溶性である場合は、該共重合体を水分散性に変性した水分散性変性体である。ここで、樹脂成分としては、フェノール樹脂と共重合可能及び/又は水溶性変性が可能な樹脂であり、例えば、化学構造式:-CO-O-で表わされる構成単位を主鎖骨格中に含む樹脂(Y)及び主鎖骨格中の原子にカルボキシ基が置換した樹脂(Z)よりなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。なお、ここでの共重合可能とは、フェノール樹脂とブロック重合可能な樹脂、及びフェノール樹脂のモノマー成分と当該樹脂のモノマー成分との共存下にて共重合可能な樹脂を包含するものとする。このような樹脂(Y)(Z)の具体例としては、例えば、ポリエステル樹脂が挙げられ。その中でもアルキド樹脂が好ましい。
例えば、レゾール型フェノール樹脂とポリエステル樹脂との共重合体を合成する場合、フェノールとアルデヒドを、重量比で1:1.05~2.00の割合で混合し、さらにアジピン酸、マレイン酸等の脂肪族二塩基酸と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエーテル基含有グリコール類の単独または複合物から合成されるポリエステルを、重量比でフェノール1に対して6程度仕込み、トリエチルアミン、トリメチルアミンのような第三アミンを用いると、フェノール樹脂とポリエステルの共重合体が得られ、水溶性を示す。
レゾール型フェノール樹脂は、自己架橋性で加熱によりそのまま架橋が可能であるが、ノボラック型フェノール樹脂は、下記の架橋(助)剤により架橋させることができる。
[水分散性ウレタン樹脂]
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂成分の1つとして、水分散性ウレタン樹脂を用いる。水分散性ウレタン樹脂は、例えば、水および/または親水性溶剤に分散させたエマルジョン、スラリー等の形態で用いられる。水分散性ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂を水分散化したものである。水分散性のウレタン樹脂には、強制乳化可能なウレタン樹脂、及び自己乳化性ウレタン樹脂などがある。これらは混合して用いてもよい。ウレタン樹脂は、公知の方法に従って、例えば、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させることにより得られる。ジイソシアネート化合物およびジオール化合物としてはこの分野で常用されるものをいずれも使用できる。
ウレタン樹脂としては、ジオール化合物としてポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどを用いて得られるポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが好ましい。
ジイソシアネート化合物は一般に疎水性であるため、ジオール化合物の数平均分子量を調節する事により、ポリウレタン骨格の親水持続性、耐擦傷性等の特性を制御できる。ジオール化合物の数平均分子量が小さい場合、ジイソシネート化合物の比率が相対的に高くなるためポリウレタン骨格は疎水性となる傾向にある。芳香族ジイソシアネート又は水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルニルジイソシアネート等の脂肪族複環式ジイソシアネート等の硬質のジイソシアネート化合物を使用することにより、水分散性ウレタン樹脂を樹脂成分とする本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の耐擦傷性が一層向上する。一方、ジオール化合物の数平均分子量が大きい場合にはジイソシアネート化合物の比率が相対的に低くなるため、ポリウレタン骨格はジオール成分の性質が強く反映されて高親水性となる。低分子ジオール成分は既述のジオール化合物及びその他の化合物から一種以上を使用できる。又、高分子ジオールであるポリオール化合物の数平均分子量は反応性の観点から例えば10000以下であり、得られたウレタン樹脂は水分散性を示す。
水分散性ウレタン樹脂には、ブロックイソシアネート基を利用した比較的低分子量~中分子量域の熱反応型ウレタン樹脂のエマルジョン、直鎖状構造を主体とする比較的高分子量域のウレタン樹脂のエマルジョンなどが挙げられる。なお、ウレタン樹脂は直鎖状であることが好ましいが、上記した各原料化合物に加えて、3官能以上の活性水素化合物や3官能以上の有機ポリイソシアネート化合物などを用い、少量の3次元網目構造を有するウレタン樹脂を直鎖状ウレタン樹脂に混入してもよい。
これらのエマルジョン中のウレタン樹脂は、そのウレタン樹脂骨格中にアニオン性、カチオン性、非イオン性等の親水性基を導入してウレタン樹脂に自己乳化性(分散性)を付与した後、得られた自己乳化性ウレタン樹脂を水中に分散させたもの、又は、強制乳化可能な疎水性のウレタン樹脂に乳化剤を添加して強制的に水に分散させたものである。
水分散性ウレタン樹脂のエマルジョンは特に制限されず、界面活性剤、乳化剤などの乳化剤を用いない自己乳化性ウレタン樹脂のエマルジョン、及び乳化剤により強制的に乳化させた強制乳化可能なウレタン樹脂のエマルジョンのいずれをも好ましく使用できるが、例えば、乳化剤による成膜阻害や接着阻害、或いは経時的なブリードアウトによる、物性低下の可能性をより少なくする観点から、自己乳化性ウレタン樹脂のエマルジョンを更に好ましく使用できる。
これら界面活性剤(乳化剤)を用いない自己乳化性ウレタン樹脂は、例えば、公知の方法に従って、アニオン性やカチオン性の置換基をウレタン骨格中に導入することにより得られる。アニオン性やカチオン性置換基含有化合物としては公知のものを特に限定なく使用できるが、アニオン性のカルボキシ基を含有するカルボン酸トリエチルアミン塩が一般的である。
水分散性ウレタン樹脂のエマルジョンは、ウレタン樹脂が直径数十~数百nmの粒子として水中に安定して分散している。一般的に水分散性ウレタン樹脂のエマルジョンに用いられるポリイソシアネートは、着色防止の観点から脂肪族イソシアネートが使用されることが多く、ポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系の3種類がある。
水分散性ウレタン樹脂は、ウレタン骨格とブロックイソシアネートを重付加反応させることにより、熱による自己架橋型の水分散性ウレタン樹脂を得ることができる。これは、水分散性ウレタンプレポリマーのイソシアネート基をブロック化し、熱反応性を付与する。ブロック化剤として、例えばフェノール、ブチルフェノール、クロロフェノール、又はフェニルフェノール類、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシム又はアセトオキシム等オキシム類、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等イミダゾール類又は酸性亜硫酸ソーダ等が挙げられ、これらの化合物は安全性、反応性等の点から、特にブロック剤として好ましい。
ブロックイソシアネートを有する水分散性ウレタンプレポリマーとブロック化剤を、触媒例えば第三級アミン、ソディウムメチラートなどの金属塩類の存在下又は不存在下、約30~100℃で反応させることで得られる。水分散性ウレタンプレポリマーとブロック化剤の反応割合は、ブロック化剤が水分散性ウレタンプレポリマーの分子末端イソシアネート基すなわち遊離イソシアネート基に対して等モル量から1.5倍量となるような割合である。
また、本樹脂形態の樹脂組成物において、自己架橋性の水分散性ウレタン樹脂でないものは、上記と同じ架橋性官能基の導入および/または後述する架橋成分との併用などにより、種々の架橋構造を形成できる。。
[水分散性含窒素熱硬化性樹脂]
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として水分散性含窒素熱硬化性樹脂を用いる。水分散性含窒素熱硬化性樹脂は、硬度、耐衝撃性、耐溶剤性などに優れた熱硬化樹脂であり、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂などの架橋成分や、コーティング材料、電子材料等にも使用できる。水分散性含窒素熱硬化性樹脂としては、樹脂骨格(主鎖)末端に結合したアミノ基、樹脂骨格(主鎖)の側鎖として結合したアミノ基、樹脂骨格(主鎖)中に存在し、式-NH-で表わされるアミノ基含有化合物又はイミノ基含有化合物由来の構成単位、及び主鎖中に存在し、式-N(CH)-で表わされる構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種を有するものである。
水分散性に変性する前の含窒素熱硬化性樹脂としては、アミノ樹脂、およびエチレンイミン樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。なお、変性前の含窒素熱硬化性樹脂は、ウレタン樹脂を含まない。アミノ樹脂は、アミノ基含有化合物とアルデヒド化合物との付加縮合反応物であり、エチレンイミン樹脂は、エチレンイミンの重合体である。アミノ樹脂、およびエチレンイミン樹脂は、水、水と親水性溶剤との混合溶剤などに分散して水性エマルジョンや水性スラリーを形成する水分散性樹脂である。ここで、水および親水性溶剤はそれぞれ上述のものと同じである。水分散性含窒素熱硬化性樹脂は、架橋性官能基を有していてもよい。架橋性官能基は上述のものと同じである。
アミノ樹脂としては、アミノ基含有化合物とアルデヒド化合物との付加縮合反応物又は縮合反応物であって、主鎖の末端に結合したアミノ基、主鎖の側鎖として結合したアミノ基、主鎖中に存在し、式-NH-で表わされるアミノ基含有化合物又はイミノ基含有化合物由来の構造、及び主鎖中に存在し、式-N(CH)-で表わされる構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。ここで、好ましいアミノ基含有化合物としては、メラミン、尿素、グアナミン、ベンゾグアナミン及びアニリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。また。好ましいアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びグリオキザールよりなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。このような(B1)アミノ樹脂の具体例としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリオキザール樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、メラミン樹脂が好適である。
アミノ樹脂の1種であるメラミン樹脂としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂が挙げられる。該アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、上記部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂をアルコールによって部分的もしくは完全にエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-もしくはi-プロピルアルコール、n-もしくはi-ブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノールなどが挙げられる。なかでも上記部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、メチルアルコールで部分的もしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールで部分的もしくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルアルコール及びブチルアルコールで部分的もしくは完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂などのアルキルエーテル化メラミン樹脂が特に好ましい。メラミン樹脂としては、また、イミノ基が併存しているものも使用することができる。メラミン樹脂は疎水性又は親水性のいずれのタイプのものであってもよい。メラミン樹脂の重量平均分子量は、1000~5000、1200~4000または2000~3000の範囲である。
また、アミノ樹脂としては、上述のように、メチロール化メラミン樹脂もしくはメチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を低級アルコールによってエーテル化した、低級アルキルエーテル化メラミン樹脂又は低級アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。前記エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブチルアルコールが好ましく、これらのアルコールは、単独で又は2種以上を混合して、前記エーテル化に使用することができる。
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ポリエチレンイミン、メチル化メラミン樹脂、メチル化尿素(ユリア)樹脂、メチル化ベンゾクアナミン樹脂、メチル化グリオキザール樹脂などが挙げられる。これらのアミノ樹脂は、他の水溶性樹脂の硬化剤(架橋成分)として用いられる例が多い。また、これらのアミノ樹脂は、メチロール基、イミノ基、メトキシ基などの反応性基と共に、活性水素官能基を有する各種の樹脂の硬化に役立ち、樹脂の改質にも用いられる。なお、部分的にメチロール化、またはメトキシメチル化された水溶性メラミン樹脂は貯蔵中に縮合が進み不安定であるが、完全にメトキシメチル化されたヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(HMM)はきわめて安定である。
メラミン樹脂の市販品には、例えば、ユーバン20SE、同225(いずれも三井東圧(株)製)、スーパーベッカミンJ820-60、同L-117-60、同L-109-65、同47-508-60、同L-118-60、同G821-60(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)等のブチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル300、同303、同325、同327、同350、同730、同736、同738(いずれも三井サイテック(株)製)、メラン522、同523(いずれも日立化成(株)製)、ニカラックMS001、同MX430、同MX650(いずれも三和ケミカル(株)製)、スミマールM-55、同M-100、同M-40S(いずれも住友化学(株)製)、レジミン740、同747(いずれもモンサント社製)等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル232、同266、同XV-514、同1130(いずれも三井サイテック(株)製)、ニカラックMX500、同MX600、同MS95(いずれも三和ケミカル(株)製)、レジミン753、同755(いずれもモンサント社製)、スミマールM-66B(住友化学(株)製)等のメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂などがある。
ベンゾグアナミン樹脂には、テトラキス(メトキシメチル)ベンゾグアナミン(TMB)樹脂、テトラキス(エトキシメチル)ベンゾグアナミン(TEB)樹脂などがある。ベンゾグアナミン樹脂の市販品には、サイメル1123(メチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1123-10(メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1128(ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、マイコート102(メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)(いずれも三井サイテック(株)製)などがある。
グリオキザール樹脂は、尿素又はその誘導体とグリオキザールを反応させ、次いで、該反応混合物にホルムアルデヒドを反応させる方法、尿素又はその誘導体とグリオキザールとホルムアルデヒドを反応させる方法、及び、これらの方法で得た樹脂を更にアルコールと反応させる方法等で製造される。グリオキザール樹脂の代表例として、炭素数2以上の脂肪族飽和アルデヒド類と尿素との反応生成物などが挙げられる(特公昭42-15635号公報)。また、グリオキザールと尿素との付加反応によりグリオキザールモノウレイン(4,5-ジヒドロキシイミダシリン-2-オン)を合成する際に、アルデヒド(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒドなど)、メラミン、グアナミン等を重縮合できる。得られる縮合物を公知の方法でメチルエーテル化したもの、例えば、グリオキザールモノウレインのメチロール化物及びメトキシ化メチロール化物も。グリオキザール樹脂の一種である。グリオキザール樹脂の市販品にはベッカミン(大日本インキ化学工業(株)製)などがある。
エチレンイミン樹脂は、エチレンイミン単独重合体及びエチレンイミン由来の構成単位を主構成単位としかつエチレンイミンに共重合可能な化合物由来の構成単位の少なくとも1種を含んでいるエチレンイミン共重合体から選ばれる少なくとも1種である。その用途には、例えば、紙加工剤、接着剤、粘着剤、塗料、インキ、繊維処理剤、凝集分離剤、食品包装用フィルム、化粧品、トイレタリー、分散剤などがある。
エチレンイミン樹脂は、例えば、エチレンイミンを重合開始剤の存在下に重合させて得られる。高重合度のエチレンイミン樹脂を得るためには、水性媒体中でエチレンイミンを重合させればよい。より具体的には、水性溶液中でポリハロアルカン重合開始剤の存在下、55~85℃の温度範囲でエチレンイミンを重合させることにより、エチレンイミン樹脂の水溶液が得られる(特公昭43-8828号公報)。また、重合反応温度の制御により、刺激臭の少ない高純度のエチレンイミン樹脂が得られる。
エチレンイミン樹脂の重合開始剤としては、例えば、水溶性ラジカル生成化合物、例えば過酸化水素、過酸化二値酸塩又は過酸化水素と過酸化二値酸塩の混合物が用いられる。過酸化二値酸塩の適例は、リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの過酸化二値酸塩である。過酸化水素と過酸化二値酸塩の混合物の場合は、任意の比率で、好ましくは過酸化水素対過酸化二値酸塩の重量比3:1ないし1:3で用いられる。過酸化水素と過酸化二硫酸ナトリウムの混合物は、好ましくは1:1の重量比で用いられる。前記の水溶性重合開始剤は、場合により還元剤例えば硫酸鉄(n)、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、トリエタノールアミン又はアスコルビン酸と組合わせて、いわゆるレドックス開始剤の形で使用できる。
適当な水溶性有機過酸化物の例は、アセチルアセトンパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、三級ブチルヒドロパーオキシド及びクモールヒドロパーオキシドである。水溶性有機過酸化物は、前記の還元剤と共に使用することもできる。他の水溶性重合開始剤は、アゾ開始剤例えば2.2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′-アゾビス-(N、N’-ジメチレン)-イソブチルアミジンニ塩酸塩、2-カルバモイルアゾ-イソブチロニトリル又ハ4.4’-アゾビス=(4-シアノバレリアン酸)である。重合は水不溶性重合開始剤、例えばジベンゾイルパーオキシド、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジラウリルパーオキシド又はアゾジイソブチロニトリルを用いて開始することもできる。
重合開始剤は重合に用いられる単量体の合計に対し、0.1~10重量%好ましくは0.5~7重量%の量で用いられる。重合開始剤は単量体と一緒に又はそれと別個に、水溶液の形で連続的に又は間欠的に重合する混合物に添加される。
エチレンイミン樹脂としては、ホモポリマーだけでなく、エチレンイミンと尿素との共重合体、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物等の水溶性ポリイミン化合物も好ましく使用できる。エチレンイミン樹脂は1種を単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。
樹脂成分として水分散性含窒素熱硬化性樹脂を用いる本実施形態の樹脂組成物において、水分散性含窒素熱硬化性樹脂は水分散液または水と親水性溶剤との混合溶剤への分散液(エマルジョンやスラリー)の形態で用いられる。水分散性含窒素熱硬化性樹脂の樹脂組成物における含有量は例えば樹脂組成物の全固形分量の0.1~50重量%または1.0~30重量%である。
[水分散性光重合性樹脂および水分散性光架橋性樹脂]
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として水分散性光重合性樹脂および水分散性光架橋性樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いる。光重合性樹脂および水分散性光架橋性樹脂とは、光及び/又は電離放射線の照射により硬化又は重合、硬化する樹脂であり、その用途にはスクリーン印刷の製版、各種レジスト、コーティング・塗料、3Dプリンタなどのラピッドプロトタイピングなどがある。水分散性光重合性樹脂および水分散性光架橋性樹脂は、例えば、強制乳化型エマルジョン、自己乳化型エマルジョン、水性スラリーなどの形態で用いられる。これにより。水溶性の高いセルロースナノファイバーが凝集することなく、均一に分散する。硬化反応のエネルギー源である光として、可視光線などの光、紫外線(UV)、電子線(EB)、γ線、X線などの電離放射線が用いられる。なお、光重合性樹脂は、重合成分としてモノマーやオリゴマーを含む場合があるが、これらも光及び/又は電離放射線の照射により重合してポリマーを形成する。したがって、本明細書では、モノマー及びオリゴマーから選ばれる少なくとも1種を主成分とするものであっても、便宜上光重合性樹脂と呼ぶ。
光重合性樹脂としては、水や親水性溶媒への分散化が可能でありかつ光照射下で重合するものであれば樹脂種には制限がなく、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクレレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、オキセタン樹脂,エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、メラミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ポリシロキサン、オキセタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体などが挙げられる。なお、これらの樹脂は、自己架橋性樹脂でもある。
光重合性樹脂は、例えば、重合性モノマー、重合性オリゴマー及び重合性ポリマーよりなる群から選ばれた少なくとも1種、光重合開始剤などを含み、更に必要に応じて増感剤やその他の添加剤などを含む水性エマルジョン(水性スラリーをも含む)の形態で用いられる。光重合開始剤も水または水性溶剤に溶解又は分散可能なものが好ましい。光架橋性樹脂は、好ましくは、水性溶液又は水性エマルジョン(水性スラリーをも含む)の形態で用いられる。光重合性樹脂および/または光架橋性樹脂水性エマルジョンと、セルロースナノファイバーとを混合して本実施形態の樹脂組成物を調製し、これをコーティング等の手法で成形し、脱溶媒後に光及び/又は電離放射線を照射することにより、所望の形状を有する成形体(硬化体)とすることができる。
光重合性樹脂は、上述のように、重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも1種の重合成分を主成分として、光重合開始剤を含み、場合によってさらに増感剤ならびにその他の添加剤を含むものである。光重合性樹脂は、光重合開始剤の反応機構別にラジカル重合型光重合性樹脂、カチオン重合型光重合性樹脂、アニオン重合型光重合性樹脂等があり、コストなどの点から、重合成分としてアクリレートモノマーを含む、ラジカル重合型光重合性樹脂が主流である。
ラジカル重合型光重合性樹脂は、光重合開始剤としてラジカル重合型光重合開始剤を含む。ラジカル重合型の光重合開始剤は、光(主に紫外線)を吸収して励起状態となり、開裂あるいは水素引き抜きを生じることでラジカルが発生し、重合を開始させる化合物である。ラジカル重合型光重合性樹脂は、さらに熱重合禁止剤などを含むことができる。カチオン重合型光重合性樹脂は、光重合開始剤としてカチオン重合型光重合開始剤を含む。カチオン重合型光重合開始剤は、光によりカチオン(酸)を発生させ、それによって重合を開始させる化合物である。アニオン重合型光重合性樹脂は、光重合開始剤としてアニオン重合型光重合開始剤を含む。アニオン重合型光重合開始剤は、光によりアニオン(塩基)を発生させ、それによって重合を開始させる化合物である。これらの中でも、ラジカル重合型光重合性樹脂、カチオン重合型光重合性樹脂が好ましく、ラジカル重合型光重合性樹脂がより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ラジカル重合型光重合性樹脂に含まれる重合性モノマーには、この分野で常用される化合物をいずれも使用でき、例えば、多価グリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物と、分子構造内にエチレン性二重結合と活性水素を有する化合物(例えばエチレン性不飽和二重結合及びアミン等に由来する活性水素を有する不飽和カルボン酸化合物や不飽和アルコール化合物等)との付加反応物である、多価アクリレート、メタアクリレート、グリシジルアクリレートや、、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタンなどが挙げられる。これらの中でも、水溶性でありかつ紫外線の照射によりラジカル重合する(メタ)アクリレート系モノマーを好ましく使用できる。このような(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)メタアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メチロールアクリルアミド、ジメチルアクリルアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジアクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
水溶性の光重合開始剤は、従来公知の光重合開始剤が全て使用できる。具体例としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。光重合開始剤はの使用量は、例えば光重合性樹脂の全固形分中の0.01~10重量%の範囲である。水溶性ラジカル重合型光重合開始剤としては、入手容易性の観点から、4‘-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、N-[2-ヒドロキシー3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテンー2-イルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアミニウム・クロリド、(4-ベンゾイルベンジル)ジメチル[2-(アクリロイルオキシ)エチル]アミニウム・ブロマイド、4(ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウムなどのα-ヒドロキシアセトフェノン類が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
熱重合禁止剤は、例えば、光重合性樹脂の硬化層の熱安定性を向上させる。熱重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などが挙げられる。熱重合禁止剤の使用量は、例えば光重合性樹脂の全固形分中の0.001~5重量%である。
カチオン光重合開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などが挙げられる。カチオン重合開始剤に光及び/又は電離放射線を照射するとブレンステッド酸やルイス酸等の酸が発生し、発生した酸が触媒となってエポキシやオキセタンなどがカチオン重合する。カチオン重合はラジカル重合に比べて重合速度は遅いが、光(紫外線)の照射が終わっても、経時又は加熱により重合反応が進行する。
光重合性樹脂がカチオン重合型である場合、重合成分としてはカチオン重合性ポリマー及びカチオン重合性モノマーを好ましく使用できる。このような重合成分に光及び/又は電離放射線を照射することにより、重合成分の硬化又は重合及び硬化が起こり、不溶化する。カチオン重合性ポリマーとしては、カチオン重合性樹脂の水性エマルジョンを好ましく使用できる。
カチオン重合性樹脂としては、半合成高分子及び合成高分子のいずれも用いることができる(「水溶性高分子の開発技術」、シーエムシー(1999)参照)。天然高分子としては、キチン、キトサン、カゼイン、コラーゲン、卵白、デンプン、カラーギナン、キサンタンガム、デキストラン、プルラン等が挙げられる。半合成高分子としては、ジアルデヒドデンプン、デンプン部分加水分解物、ヒドロキシエチルスターチ、シクロデキストリン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、等が挙げられる。合成高分子としては、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、水溶性を損なわない程度にアセタール化されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよび共重合体、ポリアクリルアミドおよび共重合体、N-イソプロピルアクリルアミドおよび共重合体、アクリルアミドおよび共重合体、N,N-ジメチルアクリルアミドおよび共重合体、ポリ(N-アセチルビニルアミン)、ポリエチレングリコール、等が挙げられる。
本発明における好適なカチオン重合性モノマーとしては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基、プロペニルエーテル基および環状オルソエステル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種のカチオン重合性基を有する化合物を用いることができる。不溶化を効果的に引き起こすために、これらのカチオン重合性基を2つ以上有する化合物が特に好ましい。カチオン性重合性基を有する化合物の中でも、単官能性エポキシ化合物、2つ以上のグリシジルエポキシ基を有する化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、プロペニルエーテル化合物などがより好ましい。
単官能性エポキシ化合物としては、例えば、ナガセケムテックス株式会社カタログ記載のデナコールシリーズであるEX-111、EX-121、EX-141、EX-145、EX-146、EX-171、EX-192、EX-111、EX-147、共栄社化学株式会社カタログ記載のエポライトシリーズであるM-1230、EHDG-L、100MFが挙げられる。これらを反応性希釈剤として用いれば、高粘度あるいは固形のエポキシ樹脂を用いることができる。たとえば、東都化成株式会社カタログ記載のBPF型エポキシ樹脂、BPA型エポキシ樹脂、BPF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)カタログ記載のエピコート基本固形タイプ、エピコートビスF固形タイプ、ダイセル化学工業株式会社カタログ記載のEHPE脂環式固形エポキシ樹脂、などを用いることができる。
2つ以上のグリシジル型エポキシ基を有する化合物としては、たとえば、ナガセケムテックス株式会社カタログ記載のデナコールシリーズであるEX-611、EX-612、EX-614、EX-614B、EX-614、EX-622、EX-512、EX-521、EX-411、EX-421、EX-313、EX-314、EX-321、EX-201、EX-211、EX-212、EX-252、EX-810、EX-811、EX-850、EX-851、EX-821、EX-830、EX-832、EX-841、EX-861、EX-911、EX-941、EX-920、EX-721、EX-221、EM-150、EM-101、EM-103、東都化成株式会社カタログ記載のYD-115、YD-115G、YD-115CA、YD-118T、YD-127、共栄社化学株式会社カタログ記載のエポライトシリーズである40E、100E、200E、400E、70P、200P、400P、1500NP、1600、80MF、100MF、4000、3002、1500、などが挙げられる。さらには、脂環式エポキシモノマーとしては、ダイセル化学工業株式会社カタログ記載のセロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000、エポリードGT300、エポリードGT400、エポリードD-100ET、エポリードD-100OT、エポリードD-100DT、エポリードD-100ST、エポリードD-200HD、エポリードD-200E、エポリードD-204P、エポリードD-210P、エポリードD-210P、エポリードPB3600、エポリードPB4700などが挙げられる。
オキセタン化合物としては、J.V.Crivello and H.Sasaki,J.M.S.Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993)あるいはJ.H.Sasaki and V.Crivello,J.M.S.Pure Appl.Chem.,A30(2&3),915(1993)に記載の化合物が挙げられる。たとえば、東亞合成株式会社のOXT-101、OXT-121、OXT-211、OXT-221、OXT-212、OXT-611、宇部興産株式会社ETERNALCOLL-OXA、OXBP、OXTP、オキセタンメタクリレートなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物を上記のエポキシ化合物と混合して用いることができる。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ブタンジオールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
プロペニルエーテル化合物としては、例えば、グリセリントリプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールトリプロペニルエーテルなどが挙げられる。
本実施形態で好適に用いられる光重合開始剤としては、カチオン重合開始能を有する強酸とともにラジカル種を発生するオニウム塩型カチオン光重合開始剤が好ましい。オニウム塩型カチオン光重合開始剤としては、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、フェロセニウムなどのオニウムカチオンの各種の塩を示すことができる。
オニウム塩型カチオン光重合開始剤の具体例としては、例えば、フェニルジアゾニウム、p-メトキシジアゾニウム、α-ナフチルジアゾニウム、ビフェニルジアゾニウム、ジフェニルアミン-4-ジアゾニウム、3-メトキシジフェニルアミン-4-ジアゾニウム、2,5-ジエトキシ-4-メトキシベンゾイルアミドフェニルジアゾニウム、2,5-ジプロポキシ-4-(4-トリル)チオフェニルジアゾニウム、4-メトキシジフェニルアミン-4-ジアゾニウム、4-ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物、1-メトキシキノリニウム、1-エトキシイソキノリニウム、1-フェナシルピリジニウム、1-ベンジル-4-ベンゾイルピリジニウム、1-ベンジルキノリニウム、N-置換ベンゾチアゾリウム(特開平5-140143号公報参照)等が挙げられる。
カチオン光重合開始剤としては、前述のオニウム塩型カチオン光重合開始剤の他に、芳香族多環化合物、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、ポリメチン色素化合物、メロシアニン化合物、クマリン化合物、チオピリリウム化合物、ピリリウム化合物、p-ジアルキルアミノスチリル化合物、チオキサンテン化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの多くは、大河、平嶋、松岡、北尾編集、「色素ハンドブック」(講談社)、社団法人色材協会編集、「色材工学ハンドブック」、朝倉書店(1989年発行)、林原生物化学研究所感光色素研究所「Dye Catalogue」などに掲載されている。
芳香族多環化合物としては、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピセン、コロネン、ヘキサセン、オバレン等の炭化水素からなる基本骨格を有するものが挙げられる。また、酸素原子、窒素原子、イオウ原子を構成原子とするベンゾフラン、ジベンゾフラン、インドール、カルバゾール、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、等の芳香族複素5員環多環化合物も挙げることができる。芳香族複素6員環多環化合物の基本骨格としては、α-ベンゾピロン、β-ベンゾピロン、α-チアベンゾピロン、β-チアベンゾピロン、フラボン、キサントン、チオキサントン、フェノキサジン、フェノチアジン、などが挙げられる。さらに、これらの基本骨格は、少なくとも一つのアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基などの電子供与性基で置換されていてもよい。置換された芳香族多環化合物からなる増感剤を例示すれば、1-メトキシナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、1,8-ジメチルナフタレン、9,10-ジメチルフェナントレン、9-メチルアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、1,8-ジメチル-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、1-メチルピレン等が挙げられる。多環複素環化合物の置換体としては、N-メチルカルバゾール、N-エチルカルバゾール、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、等が挙げられる。
ポルフィリン化合物としては、テトラフェニルポルフィン、オクタエチルポルフィン、メソポルフィリン、プロトポルフィリン、ヘマトポルフィリン、クロリン、テトラベンゾポルフィン、フェニル置換テトラベンゾポルフィン等の基本骨格からなる化合物及びこれらのマグネシウム錯体、亜鉛錯体、さらには、クロロフィルが挙げられる。
フタロシアニン化合物としては、ナフトシアニン化合物をも含むものであって、それらの基本骨格に少なくとも一つのアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ハロゲン基等の置換基が導入されていてもよい。さらに、中心金属として、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウムが好ましい。
ポリメチン色素化合物は、窒素原子、酸素原子、イオウ原子などを含む複素環がポリメチンによって連結された構造を持つシアニン系あるいはメロシアニン系などを用いることができる。たとえば、大河原信、北尾悌次郎、平岡恒亮、松岡賢編、「色素ハンドブック」、講談社サイエンティフィク(1986年)、382~417ページに記載の色素化合物が挙げられる。具体的には、キノリン環からなるシアニン系、インドール環からなるインドシアニン系、ベンゾチアゾール環からなるチオシアニン系、イミノシクロヘキサジエン環からなるポリメチン系のほかに、ベンゾオキサゾール系、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系などを例示することができる。
クマリン化合物としては、大河原信、北尾悌次郎、平岡恒亮、松岡賢編、「色素ハンドブック」、講談社サイエンティフィク(1986年)、432~438ページに記載のモノクマリン化合物および3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジブチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジオクチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾイミダゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、10-(2-ベンゾチアゾリル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-〔1〕ベンゾピラノ〔6,7,8-ij〕キノリジン-11-オン、3,3-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3,3-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)などが挙げられる。
p-ジアルキルアミノスチリル化合物としては、4-ジエチルアミノベンジリデンアセトフェノン、4-ジエチルアミノベンジリデン(p-メトキシ)アセトフェノン、4-ジエチルアミノベンジリデンマロンジニトリル、4-ジメチルアミノベンジリデンアセト酢酸エチルエステル、4-ジメチルアミノベンジリデンマロン酸ジエチルエステル、4-ジメチルアミノベンジリデン-α-シアノアセトフェノン、2,6-ビス(4-ジメチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、4-ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、4-ジメチルアミノシンナミリデンマロンジニトリル、4-ジメチルアミノシンナミリデンシアノ酢酸エチルエステル、4-ジメチルアミノシンナミリデンマロン酸ジエチルエステル、4-ジメチルアミノシンナミリデン-α-シアノアセトフェノン、4-ジメチルアミノシンナミリデン-ビス(4-ジメチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、などが挙げられる。
光架橋性樹脂としては、光及び/又は電離放射線の照射により硬化、好ましくは架橋及び硬化するものであれば、公知の光架橋性樹脂を特に限定なく使用できるが、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクレレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、オキセタン樹脂, エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、メラミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ポリシロキサン、オキセタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体等が挙げられる。これらの光架橋性樹脂は、光重合開始剤及び後述する架橋成分より選ばれる少なくとも1種との併用により、その光架橋性が一層向上し、強度、剛性、耐熱性、耐クリープ性、耐摩耗性などの機械特性や、柔軟性、耐薬品性、耐候性、自己修復性に優れた架橋された樹脂組成物が得られる。光重合開始剤としては光重合性樹脂に含まれるものの中から適宜選択して使用できる。本実施形態では光架橋性樹脂は例えば水性エマルジョンの形態で用いられる。したがって、光架橋性樹脂の水性エマルジョンには、光重合開始剤及び架橋成分から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれていることが好ましい。
光架橋性樹脂としては、前記の中でも、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂などがより好ましい。さらに、これらの光架橋性樹脂と共に、光及び/又は電離放射線の照射により架橋反応を生じる架橋成分を使用することで、その光架橋性がさらに向上し、機械特性等に優れた成形体または硬化体を得ることができる。以下、好ましい光架橋性樹脂についてさらに詳しく説明する。
ここでは、光架橋性樹脂としてのエポキシ樹脂について説明する。プレポリマー末端にエポキシ基を一つ以上有する樹脂がエポキシ樹脂であり、それを水溶化又は水分散化した水溶性エポキシ樹脂は以下の方法により作製できる。該方法としては、例えば、エポキシ樹脂に、多塩基酸や酸無水物をエステル反応させてカルボキシル基を導入する方法、チオール(-SH)またはフェノール性水酸基(-OH)を付加反応させる非加水分解によるカルボキシル基を導入する方法、カルボキシル基含有アクリル樹脂によるエポキシ樹脂を変性する方法等が挙げられる。エポキシ樹脂を変性する方法として、より具体的には、アクリル樹脂をエポキシ樹脂に付加させるエステル化法、アクリルモノマーをエポキシ樹脂にグラフト重合するグラフト法がある。
エポキシ樹脂としては公知のものを使用できるが、例えば、エポキシ基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物の1種又は2種以上を重合及び/又は架橋させたポリマーを使用できる。エポキシ基含有化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ基含有化合物は、1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ここでは、光架橋性樹脂としてのウレタン樹脂について説明する。ウレタン樹脂としては、特に制限はなく、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応して得られるウレタン樹脂が好ましく、該ウレタン樹脂を水溶性化又は水分散性化したウレタン樹脂がより好ましい。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)等が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の複素環式エーテルを(共)重合させて得られるジオール化合物が挙げられる。ジオール化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ-3-メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールや、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などのカルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオール化合物が挙げられる。これらの中では、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールのうち1種以上が好ましい。
ウレタン樹脂としては、望ましくは、ジオール化合物としてポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等のジオールを用いて得られるポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂が挙げられる
ウレタン樹脂の形態も特に限定されない。代表的には、エマルジョンタイプ、例えば、強制乳化可能なウレタン樹脂のエマルジョン、自己乳化性ウレタン樹脂のエマルジョンなどが挙げられる。特に、上記のウレタン樹脂用原料化合物のうちカルボキシ基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオールを用い、更に必要に応じて低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加することにより得られる、酸性基(中でもカルボキシ基)を導入した自己乳化性ウレタン樹脂などが好ましい。
ウレタン樹脂はプレポリマー法によって合成してもよく、その際、低分子量のポリヒドロキシ化合物を使用してもよい。低分子量のポリヒドロキシ化合物としては、上記のポリエステルジオールの原料として挙げたグリコール及びアルキレンオキシド低モル付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、そのアルキレンオキシド低モル付加物などが挙げられる。
ウレタンプレポリマーは、ジメチロールアルカン酸に由来する酸基を中和した後または中和しながら水延長またはジ若しくはトリアミン延長することが出来る。アミン延長の際に使用するポリアミンとしては、通常ジアミン又はトリアミンが挙げられる。また、その具体例としてはヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等が挙げられる。上記の中和の際に使用する塩基としては、例えば、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アンモニア、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
イソシアネート基含有化合物は一般に疎水性であるためジオール成分の数平均分子量を調節する事によりポリウレタン骨格の親水持続性、耐擦傷性等の必要とする特性を制御することができる。ジオール成分の数平均分子量が小さい場合にはイソシネート基含有化合物の比率が相対的に高くなるためポリウレタン骨格は疎水性となる傾向にある。芳香族ジイソシアネート又は水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルニルジイソシアネート等の脂肪族複環式イソシアネート等の硬質のジイソシアネートを使用することにより耐擦傷性に優れた皮膜を形成することができる。一方、ジオール成分の数平均分子量が大きい場合にはイソシアネート基含有化合物の比率が相対的に低くなるためポリウレタン骨格の親水性はジオール成分の性質が強く反映され、高親水性となる。ここで使用する低分子ジオール成分は既述のジオール類及びその他の化合物から一種以上を使用する事ができる。又、高分子ジオールであるポリオール類の数平均分子量は10000以下であることが反応性の点で好ましく、さらに水溶性を示す。
水分散性ウレタン樹脂には、ブロックイソシアネート基を利用した比較的低分子量~中分子量域の熱反応型ウレタン樹脂のエマルジョン、直鎖状構造を主体とする比較的高分子量域のウレタン樹脂のエマルジョンなどが挙げられる。
これらのエマルジョン中のウレタン樹脂は、そのウレタン樹脂骨格中にアニオン性、カチオン性、非イオン性等の親水性基を導入してウレタン樹脂に自己乳化性(分散性)を付与した後、得られた自己乳化性ウレタン樹脂を水中に分散させたもの、又は、強制乳化可能な疎水性のウレタン樹脂に乳化剤を添加して強制的に水に分散させたものである。
ここでは光架橋性樹脂としてのアクリル系樹脂について説明する。市販のアクリル系樹脂には、水分散性アクリルエマルジョンと水溶性樹脂がある。エマルジョンタイプは一般的に分子量が水溶性のものより大きく樹脂が作る皮膜強度を高めやすいメリットがある。ここでの水溶性樹脂とは、後述する中和を行った後の前記水溶性アクリル樹脂が、25℃の水に2質量%を超えて溶解すればよく、25℃の水に5%以上溶解することが好ましく、10%以上溶解することが更に好ましい。
また、水分散性アクリル樹脂はガラス転移温度(Tg)が、30℃以上、100℃以下である。Tgが30℃以上では耐擦性が高く、またブロッキングも発生しない。また、Tgが100℃以下では耐擦性が良好である。これは、乾燥後の皮膜が室温下で脆くならずに柔軟性を保っているため,と考えられる。なお、該水溶性アクリル樹脂のTgは共重合されるモノマーの種類と組成比で調整できる。前記水溶性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2万以上、8万以下である。重量平均分子量が2万以上であれば耐擦性が良好であり、更に好ましい該水溶性アクリル樹脂の重量平均分子量は2万5千以上、7万以下である。前記水溶性アクリル樹脂の重量平均分子量は重合時のモノマー濃度や開始剤の量などの反応条件で調整することができ、例えば、モノマー濃度を高くすることにより重量平均分子量を大きくしたり、開始剤の量を増やすことにより重量平均分子量を小さくすることができる。
前記水溶性アクリル樹脂を構成する共重合させるモノマーとして、少なくともメタクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、及び酸モノマーを含むことが、好ましい。
ここでは、光架橋性樹脂としてのポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のジオールをエステル化し、重縮合してポリエステル樹脂を製造するに際して、遅くともその重縮合時にリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種のリン酸化合物と 一般式HO-(-CH-)-OH(式中、nは2~6の整数である)で示される化合物のエステル化物をモノマー全量に対して10重量%以下添加して合成されたポリエステル樹脂を含むものである。
ポリエステル樹脂として、上記ポリエステル樹脂20~90重量%と、炭素数14~28の脂肪酸と1~4価のアルコールとのエステル、酸化ポリエチレンワックス、酸化ワツクス、及び融点50~100℃の天然ワックスよりなる群から選ばれた少なくとも1種の融点50~100℃のワックスを非イオン活性剤及び/又はアニオン活性剤で乳化したワックスエマルジヨン80~10重量%と、を含む樹脂組成物を用いてもよい。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族、脂環族又は芳香族酸を使用できる。ジカルボン酸としては、シユウ酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタール酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フまタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、1,4-ナフタール酸、ジフエニン酸、ジグリコール酸、チオジプロピオン酸、及び2,5-ナフタレンジカルボン酸などである。なお、本発明におけるジカルボン酸成分には、上述の酸に対応する酸無水物、エステル、及び酸クロライドなどが含まれる。
ジオール成分としては、脂肪族、脂環族又は芳香族ジオールを使用できる。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4,-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、4,4′-チオジフエノール、4,4′-メチレンジフエノール、4,4′-(2-ノルボルニリデン)ジフエノール、4,4′-ジヒドロキシビフエノール、o-,m-,p-ジヒドロキシベンゼン、4,4′-イソプロピリデンジフエノール、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジクロロフエノール)、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどである。
水分散性ポリエステル樹脂の製造には、生成重縮合物を水溶性にするために芳香族核に結合した-SOM基(式中、Mは水素又は金属イオンである)を含有するジカルボン酸(その誘導体を含む)又はジオール(その誘導体を含む)その他の二官能性単量体を併用することができる。そのような芳香族核の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ジフエニル、オキシジフエニル、スルホニルジフエニル、メチレンジフエニル等が挙げられる。上記のスルホネート塩基の金属イオンは、Na、K、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Fe2+、およびFe3+などである。
さらに、生成重縮合物を水溶性にするために少なくとも1種の水酸化アルカリ金属、アンモニア水、アルカノールアミンで中和することができる。そのような中和剤としての水酸化アルカリ金属には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが、またアルカノールアミンとしてはモノ-、ジ-又はトリ-エタノールアミン、モノ-、ジ-又はトリ-プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、モルホリンなどが使用される。
ここでは、光架橋性樹脂としてのオキセタン樹脂について説明する。オキセタン樹脂は、カチオン硬化性官能基として4員環環状エーテルであるオキセタン環を有し、カチオン硬化型材料は、光潜在性重合開始剤または熱潜在性重合開始剤により重合する。主なオキセタン樹脂としては、7-エチル-7-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルへきしるオキセタン、キシレンビスオキセタン、3-エチル-3(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタンが挙げられる。
オキセタン樹脂は、例えば、ジシクロペンタジエンとフェノールとの重付加反応物であるフェノール樹脂と、3-アルキル-3-クロロメチルオキセタンまたは3-クロロメチルオキセタンとをアルカリ存在下で反応させることにより得られる。本反応では必要であれば溶剤や相間移動触媒を用いても良い。他のオキセタン化合物としては、3-クロロメチルオキセタン、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン、3-クロロメチル-3-エチルオキセタン、-クロロメチル-3-プロピルオキセタンなどが挙げられる。本実施形態では、3-アルキル-3-クロロメチルオキセタンが好ましく、更に3-クロロメチル-3-メチルオキセタン、または3-クロロメチル-3-エチルオキセタンが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物においてオキセタン樹脂を樹脂成分として用いる場合、前述の方法と同様に、オキセタン樹脂骨格への親水性官能基の導入による自己乳化型への変性および/または乳化剤や界面活性剤などの併用による強制乳化により、オキセタン樹脂を水および/または親水性溶剤に分散させたエマルジョンの形態で使用できる。
[水分散性バイオマス樹脂]
本実施形態の樹脂組成物では、バイオマス由来樹脂を樹脂成分として用いる。バイオマス由来樹脂は、バイオマスプラスチックとも呼ばれ、原料として再生可能な生物由来の有機化合物から、化学的・生物学的に合成された化合物を原料とする樹脂をいう。原料としては、トウモロコシやサトウキビなどの食物原料、食物廃棄物、家畜排泄物、建築廃材、古紙などの廃棄物、農作物非食用部、林地残材などの未利用バイオマス資源、さらには海洋植物や遺伝子組み換え植物などのバイオマス専用植物などを用いて、さまざまな樹脂が合成されている。なお、バイオマス由来樹脂には、水溶性のものと水分散性のものや、熱可塑性のものと熱硬化性のものとがあるが、ここで一括して説明する。
バイオマス由来樹脂は、生物由来の、酢酸セルロース、ポリ乳酸(PLA)、ナイロン11、ナイロン4、ポリトリメチレンテレフタレート(バイオPTT)、ポリブチレンサクシネート(バイオPBS)、ポリヒドロアルカン酸(PHA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレンフラノエート、イソソルバイトジオールポリカーボネート共重合体、バイオポリプロピレン、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレートなどの原料を用いて種々のものが作製されている。大別すると、バイオマス由来樹脂としては、バイオマス由来のものでありかつ水溶性又は水分散性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、バイオマス自体を由来とする樹脂、バイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂、微生物による合成物質由来の樹脂などが挙げられる。なお、バイオマス由来樹脂の中でも、難水溶性または非水溶性のものもある。そのようなバイオマス由来樹脂には、前述のように、親水性官能基の導入または乳化剤などの使用により、自己乳化型または強制乳化型の水分散性樹脂に変性して使用できる。また、バイオマス由来樹脂に架橋性官能基を導入して自己架橋性にしてもよい。
バイオマス自体を由来とする樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、でんぷん樹脂、ゼラチン樹脂、ウルシオール樹脂、及びそれらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。バイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリトリメチレンテレフタレート、バイオマス由来ポリオール、バイオマス由来ポリアミド、バイオマス由来ポリグリコール酸樹脂、バイオマス由来ポリエチレン、バイオマス由来ポリエチレンテレフタレート、バイオマス由来ポリカーボネート、バイオマス由来ナイロン11、バイオマス由来ナイロン610、バイオマス由来ナイロン1010、バイオマス由来ナイロン1012、それらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。微生物による合成物質由来の樹脂としては、ポリヒドロキシアルカエートが挙げられる。
バイオマス自体を由来とする樹脂であるセルロース樹脂は、例えば、前処理活性化工程と、酢化工程と、熟成工程と、後処理工程と、を含む方法により製造できる。前処理活性化工程では、α-セルロース含有量の比較的高いセルロース原料を、離解及び解砕後、酢酸又は少量の酸性触媒を含んだ酢酸を散布混合し、活性化セルロースを得る。酢化工程では、前工程で得られた活性化セルロースを、無水酢酸、酢酸及び酸性触媒(例えば硫酸)よりなる混酸で処理して、1次酢酸セルロースを得る。熟成工程では、前工程で得られた1次酢酸セルロースを加水分解して所望の酢酸化度の2次酢酸セルロースを得る。後処理工程では、前工程で得られた2次酢酸セルロースを反応溶液から沈澱分離、精製、安定化、乾燥することにより、セルロース樹脂を酢酸セルロース(アセチロイド)として得る。また、アニオン系セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、CMC)ならびにノニオン系セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、HEC)、あるいは硝化セルロース(セルロイド)を強制乳化したものを、セルロース樹脂として好ましく使用することができる。
でんぷん樹脂は、トウモロコシなどの穀物由来のでんぷんを変性することによって得られた樹脂であり、例えばヒドロキシプロピル化でんぷん、ヒドロキシエチルでんぷんなどが挙げられる。でんぷん樹脂は水溶性を示すので、そのまま水溶液として容易にセルロースナノファイバーまたはその予備分散体と混合して、加工することができる。
市販品として、コーンポールCP(でんぷん脂肪酸エステル、日本コーンスターチ(株))、マタービー(化学変性、日本合成化学工業(株))、プラコーン(化学変性、日本食品化工(株)。でんぷんにアクリル酸をグラフトした、サンウェット(三洋化成工業(株))、WAS(日澱化学(株))などが挙げられる。
ゼラチン樹脂は、動物の骨や皮から得られるコラーゲン由来のもので、ゲル化能が高く、アルカリ処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを用いてもよく、またゼラチン加水分解物も用いることができ、少なくとも1個の遊離のアミノ基を持っていればよく、にかわも同様である。ゼラチン樹脂としては、にかわ系水性接着剤(新田ゼラチン(株))が好ましく使用できる。ゼラチン樹脂は、例えば、特許2699260号に記載の方法などの公知の方法に従って製造できる。
ウルシオール樹脂は、ウルシ科の植物の樹液の主成分で、炭素原子数15個の不飽和の側鎖のついた二価フェノールで,側鎖の構造により5種のものがある。水にはほぼ不溶であるが、アルコールには可溶である。したがって、上記した親水性官能基の導入により、自己乳化型エマルジョンとしたり、また、乳化剤により強制乳化型エマルジョンとすることができる。また、ウルシオール樹脂はアルコール可溶であるから、アルコール溶液とすることでセルロースナノファイバーまたはその予備分散体と混合することができる。バイオマス自体を由来とする樹脂には、上記樹脂のほか、これらの誘導体も含まれる。
バイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリトリメチレンテレフタレート、バイオマス由来ポリオール、バイオマス由来ポリアミド、バイオマス由来ポリグリコール酸樹脂、バイオマス由来ポリエチレン、バイオマス由来ポリエチレンテレフタレート、バイオマス由来ポリカーボネート、バイオマス由来ナイロン6、バイオマス由来ナイロン10、バイオマス由来ナイロン11、バイオマス由来ナイロン610、バイオマス由来ナイロン612、バイオマス由来ナイロン1010、バイオマス由来ナイロン1012、これらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂のうちのいくつかは、例えば、石油由来の重合性モノマー(芳香族カルボン酸、ジオールなど)と、植物由来の重合性モノマー(乳酸、イソソルバイド、コハク酸など)を重合させて作製する。
ポリ乳酸は、例えば、トウモロコシを原料にして、発酵により乳酸を作製する工程と、前工程で得られた乳酸を加熱脱水重合することにより低分子量のポリ乳酸オリゴマーを得る工程と、前工程で得られたポリ乳酸オリゴマーをさらに減圧下加熱分解することにより、乳酸の環状二量体であるラクチドが得る工程と、前工程で得られたラクチドを金属塩触媒存在下で重合することでポリ乳酸を得る工程と、を含む製造方法により製造できる。
ポリブチレンサクシネートは、1,4ブタンジオールとコハク酸を縮合して得られ、複数の種類のジオールをコハク酸を共重合させることもできる。1、4-ブタンジオール、コハク酸共に、糖(グルコース)を発酵させることで製造することができる。
これらのバイオマス由来樹脂は、バイオマス原料から作られる、モノマーなどの低分子量化合物から重合するのが好ましい。古くから、エタノール、酢酸、乳酸などは発酵法により生産されている。また、発酵法により生産されたバイオエタノールを脱水するとバイオエチレンが得られ、また、バイオエチレンから既存の合成法でバイオエチレングリコールが作られている。
バイオマス樹脂の原料モノマーとしてバイオマス資源から製造されているものは、エチレン、エタノール、エチレングリコール、乳酸、エピクロルヒドリン、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、3‐ヒドロキシプロピオン酸、アクリル酸、n-ブタノール、iso-ブタノール、ブタジエン、コハク酸、1,4-ブタンジオール、イソプレン、イタコン酸、アジピン酸、ソルビトール、イソソルバイト、5-ヒドロキシメチルフルフラール、フランジカルボン酸、p-キシレン、セバシン酸が挙げられる。
バイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂は、上記のバイオマス由来の重合性モノマーを原料とし、例えば乳化重合などの公知の方法で重合することで得ることができる。
該乳化重合に用いられる乳化剤としては、従来公知の乳化重合用界面活性剤、すなわち、陰イオン反応性界面活性剤又は非イオン反応性界面活性剤が用いられる。陰イオン反応性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩又はポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩等が用いられる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。この中でも、反応性乳化剤を使用すると、水性樹脂エマルジョン中に遊離した乳化剤が残存しないため、水溶性樹脂又は水分散性樹脂の使用にあたって悪影響を及ぼす恐れが少なくなる。陰イオン反応性界面活性剤の市販品としては、例えば、アクアロンKH-05、KH-10(いずれも第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSR-10、SR-20(いずれも(株)アデカ製、ラテムルPD-104(花王(株)製)等が挙げられる。非イオン反応性界面活性剤の市販品としては、例えば、アデカリアソープER-10、ER-20(いずれも旭電化工業(株)製)、ラテムルPD-420、PD-430(いずれも花王(株)製)等が挙げられる。
上記した乳化剤の存在下で、上記した重合性単量体を乳化重合することによって、重合体粒子を得る。乳化剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して1~10質量部程度が好ましい。乳化重合する際に、乳化剤と共に、エマルジョンの性能を損なわない範囲でカチオン系界面活性剤やポリビニルアルコール等の保護コロイドを添加してもよい。また、乳化重合する際に、イソプロパノールやメルカプタン類等の重合調節剤、金属塩、有機酸又は可塑剤等を適宜添加してもよい。
乳化重合に用いられる重合開始剤としては、たとえば、水溶性ラジカル重合触媒、油溶性ラジカル重合触媒又はレドックス重合触媒の中から適宜選択して使用できる。水溶性ラジカル重合触媒の例としては、過硫酸カリウム(KPS)や過硫酸アンモニウム(APS)等の過硫酸塩が挙げられる。油溶性ラジカル重合触媒としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイドなどの過硫酸物等が挙げられる。レドックス重合触媒としては、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド又は過硫酸塩等の酸化剤と、グルコース、デキストロース、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート又は亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤との組み合わせが挙げられる。重合開始剤の使用量は、使用する重合性モノマーに対して0.01~0.5重量%程度が好ましい。
バイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂の市販品としては、ポリ乳酸ではレイシア(三井化学(株))、Ingeo(Nature-Works社)、ポリブチレンサクシネート樹脂ではビオノーレ(昭和高分子(株))、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT、旭化成(株))、バイオマス由来ポリオール(DuPont社)、バイオマス由来ポリアミド(リルサン、アルケマ(株))、バイオマス由来ポリグリコール酸樹脂(PDA、(株)クレハ)が挙げられる。
微生物による合成物質由来の樹脂としては、微生物がエネルギー貯蔵物質として合成するポリエステルであるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が挙げられ、市販の当該樹脂として、ANIOLEX((株)カネカ)および、mirel(Telles社製)がある。
PHAを生産する微生物としては、PHA類生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(以下、「PHB」と略称する。)生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)などの天然微生物が知られており、これらの微生物ではPHBが菌体内に蓄積される。
微生物から樹脂成分を取り出す方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、特開2012-115145号公報に記載の方法が挙げられる。
PHAを水媒体に乳化分散させる方法としては、PHAと界面活性剤からなる分散液を、乳化機に投入して強撹拌を行いPHAを乳化させることが挙げられる。乳化機は、油脂と水を均一に乳化させることができる装置であれば特に限定されないが、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波破砕機、乳化分散機、ビーズミル等が挙げられる。この工程で使用する界面活性剤としては、陰イオン界面活性化剤、陽イオン界面活性化剤、両性界面活性化剤、非イオン界面活性化剤が挙げられる。
バイオマス由来樹脂を水溶液または水分散液(自己乳化型エマルジョン、強制乳化型エマルジョン、水性スラリー)とすることにより、セルロースナノファイバーの水分散体または予備分散体との混合が容易になり、セルロースナノファイバーがバイオマス由来樹脂中に均一に分散して複合化した本実施形態の樹脂組成物が得られる。
[水分散性ポリシロキサン]
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として水分散性ポリシロキサンを用いる。水分散性ポリシロキサンはポリシロキサンを前述の方法(親水性官能基を用いた自己乳化型樹脂への変性、乳化剤、界面活性剤などを用いた強制乳化など)により水分散性化したものである。ポリシロキサンは、ポリシロキサン構造単位を含み、該構造単位は直鎖状または分岐鎖状のものが好ましく、直鎖状または分岐鎖状の一部に環状構造を含んでいてもよい。該構造単位中の珪素原子に結合可能な2つの原子又は官能基は同一でも異なってもよい。該官能基は、珪素原子と共有結合可能な1価の官能基である。該官能基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基などの炭素数1~4のアルキル基、フェニル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基などアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、アミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基、メルカプト基、アミド基、水素原子、塩素原子などハロゲン原子等が挙げられる。これらの官能基には、他の官能基がさらに置換していてもよい。これらの中でも、炭素数1~4のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基などが好ましい。
ポリシロキサンは、例えば、ポリシロキサンのポリオキシアルキレン(エチレン、プロピレン)変性、またはアクリル変性により得られる。例えば、ポリオキシエチレン変性ポリジメチルシロキサン(PEOS)は、白金触媒存在下でのビニル基を有するポリオキシエチレンとSiH基を有するポリジメチルシロキサンとの反応により得られる。また、後述する変性ポリシロキサン(II)の1つである、アクリル樹脂とポリシロキサンとの結合体は、カルボキシル基とアルコキシシリル基を併せ持つアクリル樹脂のアルコキシシリル基と、ポリシロキサンが有するアルコキシシリル基とを心酔性有機溶剤中で共加水分解縮合することにより作製できる。
自己分散型ポリシロキサンのエマルジョンは、例えば、(a)アルキル部分の炭素数が1~10の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体50~99.5重量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5~15重量%、および(c)これらに共重合可能な他の単量体0~49.5重量%(ただし(a)+(b)+(c)=100重量%)を、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤などの存在下で乳化重合し、得られた共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)とアルコキシシラン化合物0.1~500重量部とを縮合することにより水性エマルジョンが製造できる。
ここで、単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸i-アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸i-ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチルなどが好ましい。単量体(a)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。単量体(a)の使用量は、得られるエマルジョンに耐水性、耐候性および密着性を与える観点から、全単量体の50~99.5重量%、70~99重量%または80~98重量%の範囲である。50重量%未満では耐水性、耐構成、密着性が不十分になることがあり、一方、99.5重量%を超えるとエマルジョンの安定性や、密着性などが不十分になることがある。
単量体(b)としては、例えば、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸である。単量体(b)は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。単量体(b)の使用量は、得られるエマルジョンの重合安定性と耐水性のバランスを高水準に保つ観点から、全単量体の0.5~15重量%または0.5~10重量%の範囲である。0.5重量%未満では得られるエマルジョンの重合安定性および密着性が不十分になることがある。一方、15重量%を超えると耐水性が不十分になることがある。
単量体(c)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどのエチレン系不飽和カルボン酸のアルキルアミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;エチレン系不飽和ジカルボン酸の酸無水物、モノアルキルエステル、モノアミド類;アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ブチルアミノエチルアクリレートなどのエチレン系不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル;アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのエチレン系不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミド;(メタ)アクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和脂肪族グリシジルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン、アクリロニトリル、α-メチルスチレンなどが好ましい。単量体(c)は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
単量体(c)の使用量は、全単量体の0~49.5重量%または0~30重量%の範囲である。使用量が49.5重量%を超えると、造膜性の低下に起因して、耐水性、密着性が低下することや、膜を形成した場合に、成膜後の変色、膜の収縮などが起こることがある。
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、コハク酸、ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。に優化剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。乳化剤の使用量は、単量体(a)~(c)の合計量の、0.2~4重量%または0.5~3重量%の範囲である。乳化剤の使用量が0.2重量%未満では、凝固物が発生するなど重合安定性が悪くなることがある。一方、乳化剤の使用量が4重量%を超えると、得られるエマルジョンから形成された膜の耐候性、耐水性が低下することがある。
連鎖移動剤としては、α-メチルスチレンダイマー、好ましくは2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン成分を60重量%以上含むα-メイルスチレンダイマー、ターピノーレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、ジペンテン四塩化炭素、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサドデシルメルカプタン、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、9,10-ジヒドロアントラセン、1,4-ジヒドロアントラセン、1,4-シクロヘキサジエン、1,4-シクロペンタジエン、2,5-ジヒドロフラン、キサンテン、3-フェニル-1-ペンテンなどをが挙げられる。連鎖移動剤の使用量は単量体(a)~(c)の合計量の、例えば0~15重量%の範囲である。
重合開始剤には無機系開始剤および有機系開始剤があり、無機系開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、過酸化水素などが挙げられ、有機系開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベシゾイルパーオキサイドなどの無機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤などが挙げられる。重合開始剤の使用量は、例えば、0.03~2重量%または0.05~1重量%である。
なお、乳化重合を促進させるために、例えばピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコース、ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシレート、L-アスコルビン酸およびその塩、亜硫酸水素ナトリウムの還元剤、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどのキレート剤を併用することもできる。乳化重合に際しては、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤などのほかに、必要に応じて各種電解質、pH調整剤などを併用し、単量体(a)~(c)の合計量100重量部に対して、水80~300重量部と乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤などを前記範囲内の量で使用し、重合温度10~90℃または40~80℃、重合時間6~40時間の重合条件化で乳化重合される。
こうして得られるポリシロキサンの具体例としては、例えば、ポリ(ジメチルジメトキシシラン)、ポリ(ジメチルジメトキシシラン/γ-メタクリロキシトリメトキシシラン)、ポリ(ジメチルジメトキシシラン/ビニルトリメトキシシラン)、ポリ(ジメチルジメトキシシラン/2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン)、ポリ(ジメチルジメトキシシラン/3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、ポリ(ジメチルジメトキシシラン/ジフェニル/ジメトキシシラン/γ-メタクリロキシトリメトキシシラン)、これらの加水分解縮合物等が挙げられる。ポリシロキサンとしては種々のものが市販されているので、その中から樹脂組成物の設計に適合するものを選択して使用できる。
本実施形態の樹脂組成物において用いられる水分散化前のポリシロキサンの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算重量平均分子量として、例えば、30000~1000000程度または50000~300000程度の範囲である。
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分である水分散性ポリシロキサンの原料になるポリシロキサンとして、変性ポリシロキサンを使用してもよい。変性ポリシロキサンを水分散性化したものが水分散性変性ポリシロキサンとなる。変性ポリシロキサンとしては特に限定されないが例えば、側鎖、一方の末端および他方の末端から選ばれる少なくとも1種の結合箇所に官能基を結合させた変性ポリシロキサン(I)が挙げられる。ここで、官能基としては、例えば、モノアミン基、ジアミン基、ポリエーテル基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アラルキル基、カルビノール基、メルカプト基、カルポキシル基、水素原子、アクリル基、メタクリル基、フェノール基、水酸基、カルボン酸無水物基、ジオール基、メトキシ基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基などが挙げられる。これらの官能基は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、ポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)にシロキサン構造単位を含まない重合体を結合させることにより、変性ポリシロキサン(II)が得られる。変性ポリシロキサン(II)は、例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体の形態となる。ここで、シロキサン構造単位を含まない重合体としては、特に制限されるものではなく、エチレン性二重結合由来の構成単位を含む各種のアクリル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマーなどが挙げられる。このうち、耐久性の観点からアクリル系ポリマーは特に好ましい。また、シロキサン構造単位を含まない重合体は、単独重合体、同族重合体および共重合体のいずれであってもよい。また。シロキサン構造単位を含まない重合体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
変性ポリシロキサン(II)において、ポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)と、シロキサン構造単位を含まない重合体と、の割合は特に限定されないが、例えば、ポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)の割合を変性ポリシロキサン(II)全量の15~85重量%または20~80重量%の範囲である。ポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)の割合が15重量%未満では、得られる樹脂組成物の湿熱環境下での接着性が劣る場合があり、85質量%を超えると得られる樹脂組成物の分散安定性が不十分になる場合がある。
以下、シロキサン構造単位を含まない重合体について、さらに詳しく説明する。
アクリル系ポリマーを構成するモノマーとしてアクリル酸のエステル(例:エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等)又はメタクリル酸のエステル(例:メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等)から成るポリマーが挙げられる。さらに、モノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。アクリル系ポリマーはこれらのモノマーの1種以上を重合したポリマーでホモポリマーでもコポリマーでもよい。
アクリルポリマーの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2-ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/2-ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸/γ-メタクリロキシトリメトキシシラン共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/グリシジルメタクリレート/アクリル酸共重合体等が挙げられる。
ポリウレタン系ポリマーとしては、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネートとジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのポリオールからなるポリウレタン系ポリマーを好ましく使用できる。ポリウレタン系ポリマーの作成方法には特に制限はなく公知の合成方法を使用できる。
ポリウレタン系ポリマーの具体例としては、例えば、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコールから得られるウレタン、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコール/ネオペンチルグリコールから得られるウレタン、ヘキサメチレンジイソシアネートとジエチレングリコールから得られるウレタン等が挙げられる。
ポリエステル系ポリマーとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、スルホイソフタル酸などのポリカルボン酸とポリウレタンのところで述べたポリオールからなるポリエステル系ポリマーを好ましく使用できる。ポリエステル系ポリマーの作成方法には特に制限はなく公知の合成方法を使用できる。ポリエステル系ポリマーの具体例としては、例えば、テレフタル酸/イソフタル酸とジエチレングリコールから得られるポリエステル、テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸とジエチレングリコールから得られるポリエステル、アジピン酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸とジエチレングリコールから得られるポリエステル等がある。
シロキサン構造単位を含まない重合体の分子量は特に限定されないが、GPC法によるポリスチレン換算重量平均分子量として、3000~1000000程度または5000~300000程度の範囲である。
ポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)(以下「前者のポリマー」ともいう)と、シロキサン構造単位を含まない重合体(以下「後者のポリマー」ともいう)と、を反応させる方法としては、特に制限はなく、例えば、別々に合成した前者および後者のポリマーを化学結合させる方法、前者のポリマーに後者のポリマーをグラフト重合する方法、後者のポリマーに前者のポリマーをグラフト重合する方法等が挙げられる。グラフト重合させる方法は、変性ポリシロキサン(II)の合成が容易であることから好ましい。グラフト重合では、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルなどの公知の重合開始剤を用いることが好ましい。
より具体的には、ポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)にアクリルポリマーを共重合する方法として、例えば、γ-メタクリロキシトリメチルシラン等を含むポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)を合成し、これとアクリルモノマーをラジカル重合する方法がある。また、アクリルポリマーにポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)を共重合させる方法として、水系媒体中にて、γ-メタクリロキシトリメチルシランを含むアクリルポリマーと、アルコキシシラン化合物とを混合し、同時に加水分解反応と縮重合反応と進行させるる方法がある。なお、ポリシロキサンまたは変性ポリシロキサン(I)とアクリル系ポリマーとを反応させる場合の重合方法としては、乳化重合、塊状重合などの公知の重合方法を利用できるが、合成のしやすさや水系のポリマー分散物が得られる点から乳化重合が好ましい。
本実施形態で使用できる変性ポリシロキサン(II)の市販品としては。例えば、セラネートWSA1060、1070(いずれも商品名、DIC(株)製)、ポリデュレックスH7620、H7630、H7650(いずれも商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
[3Dプリンタ用樹脂]
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂成分として3Dプリンタ用樹脂を使用する。3Dプリンタとは、コンピュータ上で作成した3次元形状データを基にして、その断面形状を積層していくことで立体物を作製する装置である。
前記3Dプリンタ用原料樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、メラミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリシロキサン、オキセタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、上記した本実施態の樹脂成分と重複するものである。そして、これらの樹脂の中には、水溶性のものおよび非水溶性のものがあり、また、架橋性のものおよび非架橋性のものがある。したがって、前述したのと同様の方法で、水不溶性のものは親水性官能基の導入または乳化剤、界面活性剤などによる強制乳化を行なって水分散性とし、また、非架橋性のものは前記と同様の架橋性官能基の導入により架橋性としてもよい。
例えば、ポリエステル樹脂は、水不溶性樹脂である。ポリエステル樹脂を本実施形態の樹脂組成物において樹脂成分として用いるには、ポリエステル樹脂骨格中に存在するカルボキシ基をアミンで中和する方法、ポリエステル樹脂のモノマー化合物とスルホン酸金属塩部分を有する重合性化合物とを共重合する方法などにより、ポリエステル樹脂を自己乳化型とし、水および/または親水性溶剤に分散させたエマルジョンとして用いる。自己乳化型のポリエステル樹脂は、そのエマルジョン中にフリーの乳化剤が少ないことなどから、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の耐熱性、耐水性などを向上させることがある。また、後者の方法は、得られるポリエステル樹脂を高分子量化でき、ポリエステル樹脂自体の特性を損なうことなく、スルホン酸金属塩の高い親水性により、水や水性溶剤に対して高分散化が可能である。
3Dプリンタ用樹脂としては、架橋性水溶性樹脂、非架橋性水溶性樹脂、架橋性水分散性樹脂、非架橋性水分散性樹脂などを使用できる。また、ここで例示した各種合成樹脂は、3Dプリント用以外の用途の本実施形態里樹脂組成物において、自己乳化型または強制乳化型エマルジョンの形態で樹脂成分として使用できる。
<所定SP値の熱可塑性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂成分として、SP値が14~9.5(cal/cm1/2の熱可塑性樹脂を用いる。溶解度パラメータ(Solubility Parameter、SP値)は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義された値であり、2成分系溶液の溶解度の目安となる。正則溶液論では溶媒-溶液間に作用する力は分子間のみと仮定されるので溶解パラメータは分子間力を表す尺度として使用される。実際の溶液は正則溶液とは限らないのが、2つの成分のSP値の差が小さいほど溶解度が大となることが経験的に知られている。
SP値は、分子凝集エネルギーの平方根で表される値であり、本明細書において、Fedors法によって計算される溶解度パラメータ〔単位:(cal/cm1/2〕を用いている。SP値は、次式で表される値である。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2
式中、ΔHはモル蒸発熱[cal]を表し、Vはモル体積[cm]を表す。また、ΔH、Vとしては各々、「R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1967)」に記載の、原子団のモル蒸発熱(△ei)の合計ΣΔei(=ΔH)、モル体積(△vi)の合計ΣΔvi(V)を用いることができ、(ΣΔei/ΣΔvi)1/2から求められる。
セルロースナノファイバーを構成するセルロースのSP値がほぼ15.6(cal/cm1/2であることから、上記SP値の範囲を有する熱可塑性樹脂を用いることにより、セルロースナノファイバーの該熱可塑性樹脂に対する分散性が向上し、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の機械特性やその他の特性が顕著に高まる。
本実施形態の樹脂組成物では、熱可塑性樹脂の中から上記範囲のSP値を有するものを選択して使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂などが好ましい。例えば、ナイロン66のSP値は13,6(cal/cm1/2)、ポリビニルアルコールのSP値は12,6(cal/cm1/2)、ポリ乳酸のSP値は11.4(cal/cm1/2)である。
上記した熱可塑性樹脂の中でも、ポリアミド樹脂の多くは上記範囲のSP値を有することから、ポリアミド樹脂がより好ましい。上記範囲のSP値を有するポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン1010、ナイロン9T、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロン6/11などが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
なお、このような所定のSP値を有する熱可塑性樹脂でも、水不溶性または難水溶性である場合は、例えば、前述の親水性官能基の導入または乳化剤や界面活性剤の併用などにより、水および/または親水性溶剤に分散させ、自己乳化型エマルジョンまたは強制乳化型エマルジョンとしてもよい。
<変性熱可塑性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂成分として変性熱可塑性樹脂を用いる。ここで、変性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂のうち、樹脂中の繰り返し構造単位または樹脂骨格の側鎖若しくは末端を変性することにより、水溶性、水分散性およびアルコール溶解性よりなる群から選ばれた少なくとも1つの特性が付与された、いわゆる変性体である。ここで、変性前の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
変性熱可塑性樹脂の原料になる熱可塑性樹脂は、セルロースの溶解度パラメータ(SP値)に近い範囲、すなわちSP値が例えば18~9.5(cal/cm1/2または14~9.5(cal/cm1/2のものが好ましく用いられる。このように、セルロースナノファイバーと、変性前のSP値がセルロースナノファイバーに近い熱可塑性樹脂の変性体と、を組み合わせて使用すると、両者の均一分散性が向上する。SP値は、前述のように、ヒルデブラントによって導入された正則溶液論により定義された値である。
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂成分として用いる変性熱可塑性樹脂の変性前の熱可塑性樹脂としては、SP値から、特にポリアミド樹脂が好ましく、その具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン1010、ナイロン9T、ナイロン6/66、ナイロン66/610、およびナイロン6/11の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物においては、セルロースナノファイバーは、耐熱性が充分ではない場合があるので、変性前の熱可塑性樹脂としては、融点の比較的低い、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂のほか、ポリアミド樹脂のうち、ナイロン6などが特に好適に用いられる場合もある。
以下、本実施形態の変性熱可塑性樹脂として、変性ポリアミド樹脂を例にとり、詳述する。
変性熱可塑性樹脂のうち、好ましい一例としては、上記のように、水溶性および/またはアルコール溶解性の変性ポリアミド樹脂が挙げられる。ここでの水溶性とは、水に溶解および/または水に分散する性質である。例えばフィルム状に成形したポリアミド樹脂を水または温水に浸漬し、ブラシ等で擦過したときに、ポリアミド樹脂が全面溶出するか、または一部溶出することにより、あるいはポリアミド樹脂が膨潤離散し水中に分散することによりフィルムが減量あるいは崩壊するものをいう。
水溶性ポリアミド樹脂としては特に限定されないが、例えば、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムなどを共重合した、スルホン酸基またはスルホネ-ト基を含有するポリアミド(特開昭48-72250号公報)、分子中にエ-テル結合を持つジカルボン酸、ジアミン、または環状アミドのうちいずれか1種を共重合した、エ-テル結合を有するポリアミド(特開昭49-43465号公報)、N,N´-ジ(γ-アミノプロピル)ピペラジン等を共重合した、塩基性窒素を含有するポリアミド(特開昭50-7605号公報)、これらのポリアミドをアクリル酸等で四級化したポリアミド、分子量150~1500のポリエ-テルセグメントを含有する共重合ポリアミド(特開昭55-74537号公報)、α-(N,N´-ジアルキルアミノ)-ε-カプロラクタムの開環重合またはα-(N,N´-ジアルキルアミノ)-ε-カプロラクタムとε-カプロラクタムの開環共重合したポリアミドなどが挙げられる。
これらの水溶性ポリアミドのうちでは、分子量150~1500のポリエ-テルセグメントを含有する共重合ポリアミド、より具体的には末端にアミノ基を有し、かつポリエ-テルセグメント部分の分子量が150~1500であるポリオキシエチレンと脂肪族ジカルボン酸またはジアミンとから成る構成単位を30~70重量%含有するところの共重合ポリアミドが好ましい。これらの水溶性ポリアミドは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
アルコール溶解性ポリアミドとしては、二塩基性脂肪酸とジアミン、ω-アミノ酸、ラクタムまたはこれらの誘導体とから合成された、線状ポリアミドのホモポリマ-、コポリマー、ブロックポリマーなどが挙げられる。線状ポリアミドの主鎖に含まれる炭素原子、または窒素原子上に置換基を有するポリアミド、また主鎖にC-Cおよび-C-N-CO-結合以外の結合を含むポリアミドなども使用できる。それらの具体例として、例えば。ナイロン3、4、5、6、8、11、12、13、66、610、6/10、13/13、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からのポリアミド、トリメチルヘキサメチレンジアミン、あるいはイソホロンジアミンとアジピン酸からのポリアミド、ε-カプロラクタム/アジピン酸/ヘキサメチレンジアミン/4,4´-ジアミノジシクロヘキシルメタン共重合ポリアミド、ε-カプロラクタム/アジピン酸/ヘキサメチレンジアミン/2,4,4´-トリメチルヘキサメチレンジアミン共重合ポリアミド、ε-カプロラクタム/アジピン酸/ヘキサメチレンジアミン/イソホロンジアミン共重合ポリアミド、あるいはこれらの成分を含むポリアミド、それらのN-メチロール、N-アルコキシメチル誘導体などが挙げられる。アルコール可溶性ポリアミド樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
水溶性および/またはアルコール溶解性の変性ポリアミド樹脂の市販品としては、AQナイロン(東レ(株)製)、ファインレジン(鉛市(株)製)、トレジン(ナガセケムテックス(株)製)lなどが挙げられる。
変性熱可塑性樹脂の形態は、水やアルコールの分散媒に溶解した溶液系でも、またこれらの分散媒に分散した分散系でも、さらにはペレットや粉末状の形態であってもよい。すなわち、主に水溶液、アルコール溶液などの形態で用いられ、水性エマルジョンの形態で用いられることもある。特に、変性熱可塑性樹脂が溶液系または分散系の形態をとる場合には、これらの形態に用いられる分散媒は、セルロースナノファイバーに用いられる分散媒と同様であり、また溶液(分散体)における固形分の濃度も、成分と同様である。変性熱可塑性樹脂が溶液(または分散体)である場合に、この溶液(または分散体)を乾燥して、粉末状とする手段も、後述するセルロースナノファイバーまたは本実施形態の樹脂組成物の乾燥方法と同じである。
<セルロースナノファイバー>
本実施形態の樹脂組成物に用いられるセルロースナノファイバーは、繊維径の上限値が例えば100nm以下、80nm以下、60nm以下、40nm以下または10nm以下であり、繊維径の下限値が例えば0nmを超え、0.1nm以上、0.5nm以上、1nm以上、4nm以上または3nm以上である。複数の上限値のいずれか1つと、複数の下限値のいずれか1つとを組み合わせて、繊維径範囲とすることができる。なお、本実施形態の樹脂組成物中では、複数のセルロースナノファイバーが十分にほどけて。その繊維径が4~10nmとなることもある。セルロースナノファイバーの繊維長は、10~1000μmまたは100~500μmであり、アスペクト比は(繊維長/繊維径)は1000~15000または2000~10000である。
本明細書において、セルロースナノファイバーの繊維径および繊維長は、電子顕微鏡写真から無作為に抽出した20本のセルロースナノファイバーについて測定した繊維径および繊維長の算術平均値である。
セルロースナノファイバーは、繊維径がナノオーダーと非常に小さいことから、これを低濃度で水に分散させた場合、水中にセルロースナノファイバーが分散していることは肉眼では認められず、透明な溶液または透明な分散液になる。また、セルロースナノファイバーを高濃度で水に分散させると、不透明な分散液となる。ここで、分散液は、エマルジョン、スラリー、ゲル、ペーストなどの種々の形態を含む。
セルロースナノファイバーの伸びきり鎖結晶は、弾性率、強度がそれぞれ140GPaおよび3GPaに達し、アラミド繊維などの代表的な高強度繊維に等しく、ガラス繊維よりも高弾性であることが知られている。しかも、その線熱膨張係数は1.0×10-7/℃と石英ガラスに匹敵する小ささである。本実施形態のセルロースナノファイバーの水分散液は、セルロースナノファイバーの分散性に優れているので、樹脂成分と複合化した場合に、有用な補強繊維として機能する。
セルロースナノファイバーとしては、未変性CNFおよび疎水変性CNFよりなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。セルロースナノファイバーの使用形態には、未変性CNFを単独使用する形態、疎水変性CNFを単独使用する形態、未変性CNFと疎水変性CNFとを併用する形態が挙げられる。これら3種の形態は、いずれも、全ての樹脂成分と組み合わせることができる。未変性CNFとは、より具体的には、その分子鎖末端又はその分子鎖中のセルロース由来の水酸基が変性されずにそのまま残っているものである。疎水変性CNFとは、より具体的には、その分子鎖末端又はその分子鎖中のセルロース由来の水酸基に結合する水素原子の少なくとも一部を疎水性基で置換することにより化学変性(疎水変性)したものである。疎水性基は、セルロース由来の水酸基から水素原子を除いた酸素原子に、該酸素原子を含んで構成されるエーテル結合またはエステル結合により結合している。
未変性CNFは、前述のようにセルロース由来の水酸基を多く有しているので、好ましくは水分散体の形態で用いられる。未変性CNFを用いる場合、未変性CNFの樹脂成分への分散性を向上させるために、分散剤を併用してもよい。分散剤の併用により、樹脂成分への安定な均一分散性を確保することができる。
未変性CNFの原料としては、例えば、セルロースを含むセルロース含有原料、セルロースなどを用いることができる。以下、これらをセルロース原料ともいう。セルロース原料の形状としては、特に限定されないが、例えば、繊維状、粒状などが挙げられる。セルロース原料は元々繊維状であることが多い。また、粒状のセルロース原料は、例えば、セルロース原料に例えば機械粉砕などの粉砕処理を施すことにより得ることができる。これらの中でも、機械的せん断の容易さ、化学的処理における溶剤の浸透促進の観点から、粒状のセルロース原料が好ましい。
セルロース含有原料には、例えば、パルプなどがある。また、セルロースとしては、リグニンやヘミセルロースを除去したミクロフィブリル化セルロースが好ましい。また、市販のセルロースを使用してもよい。ミクロフィブリル化セルロースをメディアレス分散機で処理すると、ミクロフィブリル化セルロースの繊維の長さを保ったまま、該セルロース表面に存在する水酸基に由来する水素結合がほどけて細くなる。また、処理条件を変えることで、繊維の切断や、分子量を低下させることも可能である。
未変性CNFは、例えば、セルロース原料(好ましくはセルロース原料の水分散体)に解繊処理を施すことにより得ることができる。解繊処理には、化学的処理、機械的せん断処理(機械的解繊処理)などが挙げられる。化学的処理には、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)法、銅アンモニア溶液法、イオン液体法等が挙げられる。これらの中でも、簡便に解繊度や結晶化度を制御できる、高分子量の未変性CNFが得られやすい、未変性CNFに与えるダメージが少なく、高耐熱性のものが得られる等の利点があることから、イオン液体法が好ましい。また、機械的解繊処理については後述する。
イオン液体法は、イオン液体を含有する溶液(以下「処理液」ともいう)を使用する方法である。セルロース原料を処理液に接触させることにより、セルロース原料を解繊することができる。具体的には、例えば、撹拌下に処理液にセルロース原料を添加すると、セルロース原料が膨潤および分散して未変性CNFが得られる。このときの処理液中のイオン液体の種類や濃度、撹拌条件、処理時間などを調節することで、未変性CNFの解繊度、結晶化度等を調節できる。解繊度が高いほど、処理液中に含まれる未変性CNFの凝集塊の最小太さが小さくなる。処理液中からの未変性CNFの回収には、例えば、濾過、遠心分離などの方法を利用できる。
なお、後述するように、セルロース原料に機械的解繊処理を施すことによっても、未変性CNFが得られる。
疎水変性CNFは、セルロースナノファイバー間の水素結合による強い密着が抑制され、樹脂成分中での分散性に優れている。疎水変性CNFでは、表面の水酸基が疎水性基に置換されることにより、未変性CNFに比べて水酸基が減少していることや。水酸基に結合した疎水性基の体積効果などが、セミロースナノファイバー間の密着抑制の一因になっている。また、疎水変性CNFは、未変性CNFに比べて耐熱性に優れることから、これを含有する樹脂成形体の耐熱性も向上する。なお、疎水変性CNFを、未変性CNFと同様に、陰イオン性分散剤と共に分散体としてもよい。
疎水変性CNFにおける変性率(セルロースナノファイバー中の全体の水酸基のうち、疎水性基により置換された割合)は、特に限定されるものではなく、100%、0.01%~50%または10%~35%である(成型加工、vol.26(6)、p232、2016)。変性率は、元素分析により得られた炭素、水素、酸素の元素割合から算出できる。
疎水変性CNFは、例えば、未変性CNF中のセルロース由来の水酸基を疎水性基で変性することにより得られる。例えば、イオン液体法によりセルロース原料に解繊処理を施し、未変性CNFが存在する処理液中で疎水変性(化学変性)を実施することにより、疎水変性CFNが得られる。疎水変性CNFは、例えば、濾過、遠心分離などにより処理液中から容易に回収できる。セルロース由来の水酸基の変性は、例えばエーテル化、エステル化などにより実施できる。エーテル化に用いられるエーテル化剤、およびエステル化に用いられるエステル化剤の使用量は、例えば、処理液中に存在する未変性CNFの全水酸基のうち、疎水変性される水酸基の割合などに応じて選択される。
エーテル化には、例えば、アルキルエーテル化、シリルエーテル化、ベンジルブロマイドなどがある。
アルキルエーテル化では、アルキルエーテル化剤により疎水性基としてアルキル基が導入される。アルキルエーテル化剤としては、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化アルキル;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸ジアルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の硫酸ジアルキル;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド等が好ましい。
シリルエーテル化では、シリルエーテル化剤により疎水性基としてシリル基が導入される。シリルエーテル化剤としては、n-ブトキシトリメチルシラン、tert-ブトキシトリメチルシラン、sec-ブトキシトリメチルシラン、イソブトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、オクチルジメチルエトキシシラン又はシクロヘキシルオキシトリメチルシラン等のアルコキシシラン;ブトキシポリジメチルシロキサン等のアルコキシシロキサン;ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン等のジシラザン;トリメチルシリルクロライド、ジフェニルブチルクロライド等のシリルハライド;tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート等のシリルトリフルオロメタンスルホネート;などが挙げられる。これらの中でも、ケイ素原子に結合したアルキル基を有するアルキルシリルエーテル化剤が好ましい。
エステル化では、エステル化剤により疎水性基として、アセチル基等のアシル基が導入される。エステル化剤としては、ヘテロ原子を含んでも良いカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物が挙げられ、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体が好ましく、酢酸、無水酢酸、無水酪酸がより好ましい。
エーテル化、エステル化の中でも、アルキルエーテル化、アルキルシリルエーテル化、アルキルエステル化が、疎水変性CNFの樹脂、特に疎水性樹脂への分散性を向上させるために好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物では、疎水変性CNFとして、未変性セルロースCNF中のセルロース由来水酸基の一部を、式(1):-O-CO-X(式中Xは脂環式炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有する基を示す。)で表される疎水性基で変性したもの(特開2014-148629号公報、請求項1、段落[0038]~[0234]など)、カチオン性セルロースナノファイバーのカチオン基をアニオン性添加剤で中和した変性セルロースナノファイバー(特許第5150792号公報、段落[0016]~[0038]など)などを使用できる。
<分散剤>
本実施形態の樹脂組成物では、セルロースナノファイバー(未変性CNF、疎水変性CNF、または未変性CNFと疎水変性CNFとの組み合わせ)に対して、分散剤を併用する形態が好ましい。未変性CNFと分散剤とを併用する形態がより好ましい。本実施形態の樹脂組成物を作製する際に、樹脂成分、セルロースナノファイバー、分散剤、架橋成分などを一度に混合してもよいが、セルロースナノファイバーおよび分散剤を混合して予備分散体を作製し、得られた予備分散体と、樹脂成分、架橋成分などを混合して樹脂組成物を得ることが好ましい。
本実施形態で使用する分散剤は、水溶性を有する分散剤であり、好ましくはセルロースナノファイバーが表面に有するセルロース由来水酸基などの官能基とイオン結合可能な分散剤であり、より好ましくはセルロースナノファイバーが表面に有する水酸基などの官能基とイオン結合可能でありかつ静電反発力により本実施形態の樹脂組成物中でのセルロースナノファイバーの分散安定性を高め得るような分散剤である。本実施形態では前記のような分散剤を用いることにより、一および他のセルロースナノファイバー間にイオン性の反発力が生じ、セルロースナノファイバーの凝集を抑制しつつ、その水又は親水性溶剤中での分散性を高めると共に、該分散剤が水溶性、水分散性又はアルコール溶解性樹脂成分とが高い親和性を示すことを見出した。その結果、樹脂組成物中での樹脂成分とセルロースナノファイバーの均一分散だけでなく、樹脂成分とセルロースナノファイバーとの界面における接着性の顕著な向上という予想外の効果が得られた。この効果の反映により、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体は、機械特性およびその他の特性に優れたものとなる。
該分散剤としては、前述のように水溶性であれば特に限定されないが、陰イオン性分散剤を好ましく使用できる。陰イオン性分散剤としては、例えば、リン酸基(P-OH基)、-COOH基、-SOH基、これらの金属エステル基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、イミダゾリン基を有する化合物、ならびにアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単独重合体、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン由来の構成単位と、それに共重合可能な他の単量体由来の構成単位とを含むアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体などが挙げられる。陰イオン性分散剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
陰イオン性分散剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸系共重合体、ポリイタコン酸、オレフィン由来モノマーおよび不飽和カルボン酸(塩)由来モノマーを含む共重合体(特開2015-196790号公報)、ポリマレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリンスルホン酸、スルホン酸基結合ポリエステル、これらの塩などのカルボン酸系陰イオン性分散剤、アルキルイミダゾリン系化合物(特開2015-934号公報、特開2014-118521号公報)などの複素環系陰イオン性分散剤、酸価とアミン価とを有する陰イオン性分散剤(得開2010-186124号公報)、ピロリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ホスホン酸、これらの塩などのリン酸系陰イオン分散剤、スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リグニンスルホン酸、これらの塩などのスルホン酸系陰イオン分散剤、オルトケイ酸、メタケイ酸、フミン酸、タンニン酸、ドデシル硫酸、これらの塩などのその他の陰イオン性分散剤などが挙げられる。これらの中でも、リン酸、ポリリン酸、リン酸塩、ポリリン酸塩、ポリアニリンスルホン酸、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸系共重合体、これらの塩などが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸系共重合体において、(メタ)アクリル酸重合体以外の単量体としては、例えば、α-ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸とその塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸とその塩などが挙げられる。
上記した陰イオン性分散剤の塩を構成するカチオンとしては特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、マグネシウム、アンモニウム基などが挙げられる。水に対する溶解性の点からナトリウム、カリウム、アンモニウム基などがより好ましく、カリウムが最も好ましい。
本発明では市販の陰イオン性分散剤を用いてもよく、市販品の具体例としては、アロンA-6114(商品名、カルボン酸系分散剤、東亜合成(株)製)、アロンA-6012(商品名、スルホン酸系分散剤、東亜合成(株)製)、デモールNL(商品名、スルホン酸系分散剤、花王(株)製)、SD-10(商品名、ポリアクリル酸系分散剤、東亜合成(株)製)などが挙げられる。
また、本実施形態の樹脂組成物に用いられる陰イオン性分散剤として、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体を用いてもよい。(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体は、本実施形態の樹脂組成物中の各成分の分散安定性、特にセルロースナノファイバーの分散安定性を高めことができ、また、生体適合性を有し、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体を医療用途、食品用途などに用いる場合の分散剤として好適に使用できる。
ここで、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとは、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを包含する。これらは、常法に従って製造される。例えば、2-ブロモエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて2-メタクリロイルオキシエチル-2′-ブロモエチルリン酸を得、更にこれをトリメチルアミンとメタノール溶液中で反応させて得ることができる。
(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体には市販品がある。市販品としては、例えば、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである、「リピジュアHM」(日本油脂(株)製)、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチルコポリマーである、「リピジュアPMB」(日本油脂(株)製)、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマーである、「リピジュアNR」(日本油脂(株)製)等が好ましく例示できる。
他の陰イオン性分散剤として、多点末端型分散剤を使用でき、その具体例として末端にカルボキシ基が結合した分散剤(国際公開第2015/125870号公報)が挙げられる。
セルロースナノファイバー(未変性CNFまたは疎水変性CNFまたは未変性CNFと疎水変性CNFとの組み合わせ)と、陰イオン性分散剤との併用形態としては、例えば、セルロースナノファイバーと陰イオン性分散剤とを分散媒に溶解および/または分散させた第1形態の予備分散体、セルロースナノファイバーと陰イオン性分散剤と後述するpH調整剤とを分散媒に溶解および/または分散させた第2形態の予備分散体などが挙げられる。pH調整剤としては、例えば、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリが挙げられる。pH調整剤を用いて予備分散液のpHを弱アルカリに調整する事で、セルロースナノファイバーの分散性がさらに向上する。
予備分散体に用いられる分散媒としては、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなど)、グリセリン、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトアミドなどが挙げられ、分散媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい分散媒は、水、含水溶媒が挙げられ、特別な廃液処理設備が不要で環境汚染をしにくい水が特に好ましい。
予備分散体におけるセルロースナノファイバーの含有量は特に限定されないが、例えば、セルロースナノファイバー(未変性CNFまたは疎水変性CNFまたは未変性CNFと疎水変性CNFとの組み合わせ)を予備分散体全量の0.1~10重量%、0.5~5.0重量%または1.0~3.0重量%である。分散剤(または陰イオン性分散剤)の含有量は特に限定されないが、例えば、セルロースナノファイバーの固形分重量100重量部に対して0.1~100重量部、1~50重量部、1~25重量部、3~25重量部、5~25重量部または5~20重量部である。分散媒の含有量は、予備分散体中に沈降などが生じない範囲から適宜選択すればよいが、例えば、予備分散体全量の50~99.8重量%、60~99.5重量%または70~99重量%である。予備分散体におけるセルロースナノファイバー、分散剤、および分散媒の含有量は、上記した各成分の複数の数値範囲の中からいずれかを選択し、組み合わせて設定できる。
予備分散体は、例えば、セルロースナノファイバー、陰イオン性分散剤、および分散媒を混合することにより調製できる。また、セルロース原料、陰イオン性分散剤、および分散媒を含む混合物に機械的解繊を1~複数回施すことにより、セルロース原料のナノファイバー化(未変性CNF)と、予備分散体の調製とを同時に行なってもよい。予備分散体において、セルロースナノファイバーの少なくとも一部が、陰イオン性分散剤とイオン結合していることがある。この、セルロースナノファイバーと陰イオン性分散剤とのイオン結合体は、この予備分散体を用いて調製した本実施形態の樹脂組成物中にもそのまま残存していることもある。なお、セルロース原料から未変性CNFを作製する際に、セルロース原料に機械的解繊処理を施してもよい。機械的解繊処理を施すためには、例えば、機械的解繊手段が用いられる。
機械的解繊手段としては、グラインダー、混練機、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、水中カウンターコリジョン、高速回転分散機、ビーズレス分散機、メディアレス分散機、高速撹拌型メディアレス分散機などが挙げられる。これらの中でも、不純物の混入が少なく、純度の高いセルロースナノファイバーを含む予備分散体を得るという観点から、メディアレス分散機、高速撹拌型メディアレス分散機が好ましく、高速撹拌型メディアレス分散機がより好ましい。
メディアレス分散機は、分散メディア(例えば、ビーズ、サンド(砂)、ボール等)を実質的に用いずに、せん断力を利用して分散処理を行う。メディアレス分散機としては、特に限定はされないが、例えば、DR-PILOT2000、ULTRA-TURRAXシリーズ、Dispax―Reactorシリーズ(いずれも商品名、IKA社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.パイプラインホモミクサー(いずれも商品名、プライミクス(株)製)、ハイ・シアー・ミキサー(商品名、シルバーソン社製)、マイルダー、キャビトロン(いずれも商品名、大平洋機工(株)製)、 クレアミックス(商品名、エムテクニック(株)製)、エムテクニック株式会社製、ホモミキサー、パイプラインミキサー(商品名、みずほ工業(株)製)、ジェットペースタ(日本スピンドル製造(株)製)、アペックスディスパーザー ZERO(商品名、株)広島メタル&マシナリー製)等が挙げられる。
これらメディアレス分散機の中でも、ロータとステータとを備える高速撹拌型分散機が好ましい。具体例としては、アペックスディスパーザーZERO(商品名、(株)広島メタル&マシナリー製)が挙げられる。この分散機は、ステータと、ステータの内部で回転するロータと、を備える。ロータの回転下に、ステータとロータの隙間(せん断部クリアランス)に被処理液を供給することで、混合液にせん断力を付与できる。また、ローラとステータとが多段階に設置されたメディアレス分散機を用いてもよい。また、処理を均一に行う観点から、分散機の中を混合液が循環するインライン循環式のメディアレス分散機がより好ましい。
メディアレス分散機におけるせん断速度は、900000[1/sec]を超える。せん断速度が900000[1/sec]以下である場合には、セルロース原料が十分に解繊されないことがある。せん断速度は、例えば、2000000[1/sec]以下、1500000[1/sec]以下、または1200000[1/sec]以下である。
メディアレス分散機のせん断部クリアランスの下限は、せん断速度に応じて適宜設定されるが、できるだけ小さな径のセルロースナノファイバーを得る観点から、10μm以上、15μm以上、または20μm以上である。また、メディアレス分散機の回転速度を適切な数値に保つ観点から、当該クリアランスの上限は、100μm以下、50μm以下、または40μm以下である。
メディアレス分散機の回転周速の下限は、上記剪断速度に応じて適宜設定されるが、できるだけ小さな径のセルロースナノファイバーを得る観点から、18m/s以上、20m/s以上、または23m/s以上である。また、最適な径のセルロースナノファイバーを得る観点から、当該回転周速の上限は、50m/s以下、40m/s以下、または35m/s以下である。回転周速は、ロータの最先端部分の周速である。
メディアレス分散機内部の該分散液の温度は、例えば10~80℃、10~60℃、または20~40℃の範囲である。分散液の温度は、分散液の粘度と密接に関係する。メディアレス分散機は、セルロース原料を解繊してセルロースナノファイバーを得る工程、およびセルロースナノファイバーの予備分散体を得る工程の他に、本実施形態の樹脂組成物を得る工程でも用いられることがある。樹脂組成物の製造工程では、分散液の温度が80℃を超えると、樹脂成分の一部の架橋が進み、分散液の粘度が上昇し、セルロースナノファイバーの分散が不十分になることがある。メディアレス分散機の内部の温度は、例えば、ステータに温度調節用のジャケットを取り付ることにより制御できる。また、分散液のpHは、分散液中でのセルロースナノファイバーの分散安定性の観点から、例えば、当該セルロースナノファイバー単体の分散液のpH値±3.0の範囲に保持する。
機械的解繊処理(好ましくはメディアレス分散機による解繊処理、より好ましくは高速撹拌型メディアレス分散機による解繊処理)により得られる予備分散体中には、表面の少なくとも一部に陰イオン性分散剤がイオン結合したセルロースナノファイバーが含まれる。また、予備分散体中のセルロースナノファイバーの平均繊維径は10~100nm程度、10~40nm程度、または15~25nm程度である。また、予備分散体のゼータ電位は、例えば、-20~-50mV、または-30~-40mVである。-20mV未満では、セルロースナノファイバーの分散が不均一になって沈降が生じ易い。-50mVを超えると、セルロールナノファイバーの切断し、ネットワーク構造の形成が不十分になるため。沈降が生じ易い。
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂成分が水不溶性又は難水溶性かつ水溶性に変性可能な樹脂であり、該樹脂を水溶性または水分散性またはアルコール溶解性に変性して用いる場合、変性前の樹脂成分が所定のSP値を有することにより、予備分散体におけるセルロースナノファイバーの樹脂成分に対する均一分散性が一層向上する。このため、前述したように、セルロースナノファイバー(SP値14~9.5(cal/cm1/2)に近いSP値を有する樹脂を変性して用いることが好ましい。
<架橋成分>
本実施形態の樹脂組成物には、樹脂成分、セルロースナノファイバーおよび架橋成分を含み、分散剤(または陰イオン性分散剤)を含みまたは含まない形態がある。この形態の樹脂組成物に架橋処理を施すことにより、架橋成分を介した1または複数の架橋構造が形成される。該架橋構造としては、例えば、セルロースナノファイバー間の架橋構造(一のセルロースナノファイバー内での架橋構造、一のセルロースナノファイバーと他のセルロースナノファイバーとの間の架橋構造など)、樹脂成分間の架橋構造(一の樹脂成分内での架橋構造、一の樹脂成分と他の樹脂成分との間での架橋構造など)、セルロースナノファイバーと樹脂成分との間の架橋構造などが挙げられる。
架橋成分としては特に限定されないが、公知の樹脂架橋成分および樹脂架橋助剤を使用することが好ましい。架橋成分の具体例としては、例えば、多官能性モノマー、多官能性樹脂、架橋成分(架橋助剤)、有機過酸化物、重合開始剤などが挙げられる。架橋成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。

多官能性モノマーとしては、多官能アクリル系モノマー、多官能アリル系モノマー、およびこれらの混合モノマー等が挙げられる。
多官能アクリル系モノマーの具体例としては、例えば、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(イソシアヌル酸のトリアクリル酸エステル)、これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、低皮膚刺激性の観点から、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが好ましい。
また、多官能アリル系モノマーの具体例としては、例えば、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(DA-MGIC)、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネート、これらの混合物などが挙げられる。
必要に応じて、多官能性モノマーと、重合開始剤、触媒、安定剤などの少なくとも1種とを併用できる。これらの重合開始剤、触媒、安定剤などは、架橋成分または樹脂成分と混合してもよい。
多官能性モノマーの使用量は、樹脂成分の固形分重量100重量部に対して、0.01~10重量部または0.1~5重量部である。多官能モノマーの含有量が0.01重量%未満では、樹脂成分の機械特性、熱的特性の向上効果が得られないことがある。多官能モノマーの含有量が10重量部を超えると、伸びや衝撃強さなどの機械特性に悪影響を及ぼすことがある。多官能モノマーは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
多官能性樹脂(多官能性ポリマー)の具体例としては、多官能であれば特に限定されないが、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、メラミン樹脂や、カルボジイミド化合物が好ましい。多官能性樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。多官能性樹脂の使用量は、樹脂成分の固形分重量100重量部に対して、3~20重量部または5~15重量部である。
有機過酸化物は、例えば、加熱によりフリーラジカルを発生させ、上述の架橋構造を形成する。その具体例としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。なお、過酸化ベンゾイルおよびt-ブチルヒドロパーオキサイドは、後述する重合開始剤として使用できるものである。有機過酸化物は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。有機過酸化物の使用量は、樹脂成分とセルロースナノファイバーとの合計量(固形分重量)100重量部に対し、0.0001~10重量部、0.01~5重量部、または0.1~3重量部である。
重合開始剤は、例えば、加熱または電離放射線照射により遊離ラジカルを発生し、前述の架橋構造を形成する。重合開始剤は、アゾ化合物、過硫酸塩、有機過酸化物から選択され、水溶性および疎水性を問わず使用できる。
重合開始剤の具体例としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの疎水性アゾ化合物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などの水溶性アゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩などが挙げられる。重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。重合開始剤の使用量は、樹脂成分とセルロースナノファイバーとの合計量(固形分重量)100重量部に対し、0.0001~5重量部、0.01~3重量部または0.1~1重量部である。
酸触媒は、例えば、樹脂成分中の官能基と架橋成分中の求核性反応基とを反応させる。酸触媒の具体例としては、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酢酸などの有機酸、塩酸、硫酸、スルホン酸などの無機酸が挙げられる。酸触媒は、グルタルアルデヒドやテレフタルアルデヒドなどと併用することが好ましい。酸触媒の使用量は、例えば、樹脂成分の全固形分重量100重量部に対して0.1~8.0重量部である。酸触媒の使用量が0.1重量部未満では、架橋度が低くなることがあり、8.0重量部を超えると相溶性が悪化することがある。
架橋成分は、固形分のまま各成分に添加および/または混合してもよいが、水、水溶性溶媒、水と水溶性溶媒との混合溶媒などに溶解した溶液の形態で用いてもよい。水溶性溶媒としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1~4の直鎖または分岐鎖状の低級アルコールが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、安定剤、消泡剤、他の添加剤などを含んでいてもよい。
<安定剤>
本実施形態の樹脂組成物には、還元剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候性付与剤などの安定剤を配合してもよい。還元剤および/または酸化防止剤としては、例えば、1分子中にヒンダードフェノール基を2個以上有するヒンダードフェノール系化合物(例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル -4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ヒンダードアミン系化合物(例えば、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート)、チオエーテル系化合物(例えば、ジ(トリデシル)-3,3'-チオジプロピオネート)、リン酸エステル、亜リン酸エステル、亜硝酸ナトリウム、L-アスコルビン酸などが挙げられる。耐候性付与剤としては、トリアジン系化合物などが挙げられる。安定剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。本実施形態の樹脂組成物における、安定剤の使用量は、樹脂成分とセルロースナノファイバーとの合計量(全固形分重量)または樹脂成分とセルロースナノファイバーと分散剤との合計量(全固形分重量)100重量部に対して0.1~10重量部または0.2~5重量部である。安定剤、特に還元剤および/または酸化防止剤の使用により、例えば、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の着色を防止できる。
<消泡剤>
本実施形態の樹脂組成物には、消泡剤を配合してもよい。消泡剤としては非イオン系界面活性剤、シリコーン系消泡剤、アクリル酸エステル系消泡剤、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合体などが挙げられる。水溶性または親水性溶媒に溶解可能な消泡剤が好ましい。消泡剤の添加により、セルロースナノファイバーの分散時の起泡が抑制され、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の製造過程での脱泡作業が不要となり、成形体の品質が向上する。消泡剤の市販品としては、非イオン系のサーフィノール465、サーフィノールDF75(いずれも商品名、日信化学工業(株)製)、アデカノールLG(商品名、(株)アデカ製)が挙げられる。
<他の添加剤>
また、本発明の樹脂組成物は、上記以外の添加剤を含んでいてもよい。この形態の樹脂組成物は、樹脂成分、セルロースナノファイバー(未変性CNFまたは疎水変性CNFまたは未変性CNFと疎水変性CNFとの組み合わせ)、分散剤(または陰イオン性分散剤)、および他の添加剤を含む。他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤;ヒンダードアミンなどの光安定剤;可塑剤;帯電防止剤;難燃剤;加硫剤(加硫促進剤、加硫促進助剤、活性剤、加硫遅延剤);滑剤:離型剤;界面活性剤:消泡剤;レベリング剤;ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉末、タルク、マイカ、シリカなどの無機充填剤、有機充填材;顔料、染料などの着色剤;滑剤;揆水剤;アンチブロッキング剤;柔軟性改良剤;金属石鹸;有機シラン;有機金属化合物;不飽和結合を有する樹脂;防腐剤:などが挙げられる。他の添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
好ましい他の添加剤としては、界面活性剤が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物において、他の添加剤として界面活性剤を数10~100ppm配合すると、本実施形態の樹脂組成物からなるコーティング膜などの成形体の濡れ性、浸透性、レベリング性などが向上し、コーティング膜表面が一層滑らかになる。界面活性剤の中でも、フッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例としては、市販品として、サーフロンS-231(AGCセイミケミカル(株)製)、などが挙げられる。
また、本実施形態の樹脂組成物において、他の添加剤として酸化防止剤を配合すると、例えば、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の耐久性が向上し、その機械特性が長期間にわたって高水準に維持される。
本実施形態の樹脂組成物には、樹脂成分とセルロースナノファイバーとを含む第1実施形態、樹脂成分とセルロースナノファイバーと分散剤とを含む第2実施形態、樹脂成分とセルロースナノファイバーと分散剤と架橋成分とを含む第3実施形態、樹脂成分とセルロースナノファイバーと架橋成分とを含む第4実施形態、樹脂成分とセルロースナノファイバーと安定剤、消泡剤および他の添加剤から選ばれる少なくとも1種とを含む第5実施形態、樹脂成分とセルロースナノファイバーと分散剤と安定剤、消泡剤および他の添加剤から選ばれる少なくとも1種とを含む第6実施形態、樹脂成分とセルロースナノファイバーと分散剤と架橋成分と安定剤、消泡剤および他の添加剤から選ばれる少なくとも1種とを含む第7実施形態、樹脂成分とセルロースナノファイバーと架橋成分と安定剤、消泡剤および他の添加剤から選ばれる少なくとも1種とを含む第8実施形態などがある。
第1~第8実施形態のいずれにおいても、当該形態に含まれる成分に応じて、上述した水溶性樹脂、水分散性樹脂および変性熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂成分と;未変性CNFおよび/または疎水変性CNFと;分散剤または陰イオン性分散剤またはリン原子に結合する-OH基、-COOH基、-SOH基、これらの金属塩基、及びイミダゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物、若しくはアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体である陰イオン性分散剤またはリン酸、ポリリン酸、リン酸塩、ポリリン酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸系共重合体、カルボン酸系分散剤、スルホン酸系分散剤、およびこれらの塩(カリウム塩、ナトリウム塩またはアンモニウム塩)、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤と多官能性モノマー(または多官能アクリル系モノマーまたは多官能アリル系モノマーまたはこれらの混合物)、多官能性樹脂(またはメラミン樹脂またはカルボジイミド化合物)、有機過酸化物、重合開始剤、および酸触媒よりなる群から選ばれた少なくとも1種の架橋成分と;上述の他の添加剤と;をそれぞれ組み合わせて使用できる。
第1~第8実施形態においても、当該形態に含まれる成分に応じて、樹脂成分の含有量を当該実施形態の樹脂組成物全量(固形分重量)の70~99.5重量%、85~99.4995重量%、85~98.999重量%または85~98.9重量%のいずれかの範囲から選択し、かつ、セルロースナノファイバーの含有量を当該実施形態の樹脂組成物全量(固形分重量)の0.5~30重量%、0.5~20重量%または1~10重量%の範囲から選択し、かつ分散剤の含有量を当該樹脂組成物全量の0.0005~10重量%または0.001~5重量%の範囲から選択し、かつ多官能モノマーの使用量を樹脂成分の固形分重量100重量部に対して0.01~10重量部または0.1~5重量部の範囲から選択し、多官能性樹脂の使用量を樹脂成分の固形分重量100重量部に対して3~20重量部または5~15重量部の範囲から選択し、有機過酸化物の使用量を樹脂成分とセルロースナノファイバーとの合計量(固形分重量)100重量部に対して0.0001~10重量部または0.01~5重量部または0.1~3重量部の範囲から選択し、重合開始剤の使用量を樹脂成分とセルロースナノファイバーとの合計量(固形分重量)100重量部に対して0.0001~5重量部または0.01~3重量部または0.1~1重量部の範囲から選択し、或いは。酸触媒の使用量を樹脂成分の固形分重量100重量部に対して0.1~8重量部とする。
上述の第1~第8実施形態の樹脂組成物において、樹脂成分の含有量が70重量%未満では、得られる樹脂組成物の成形性が低下し、また、該樹脂組成物を溶融混練しても樹脂成分とセルロースナノファイバーとが複合化した材料が得られないことがあり、99.5重量%を超えると、樹脂成分単体とほとんど変わらない物性の樹脂組成物が得られることがある。セルロースナノファイバーの含有量が0.5重量%未満では、得られる樹脂組成物における強度や寸法安定性の向上が不十分になることがあり、20重量%を超えると、高粘度の樹脂組成物が得られ、その成形性が不十分になることがある。また、セルロースナノファイバーの分散性が低下し、均一分散しにくくなり、凝集物が発生することがある。分散剤の含有量が0.0005重量%未満では、未変性CNFを用いた場合に、未変性CNFの分散性が低下し、未変性CNFが樹脂成分中に均一に分散しないことがあり、10重量%を超えると、樹脂成分中に分散剤のみが溶解または分散し、得られた樹脂組成物の機械特性などが低下することがある。
本実施形態の樹脂組成物、例えば第1~第8実施形態の樹脂組成物は、例えば、溶剤の存在下または非存在下に当該実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分を混合することにより得ることができる。溶剤の存在下に各成分を混合したものを湿式樹脂組成物とし、溶剤の非存在下に各成分を混合したもの、並びに湿式樹脂組成物を乾燥および粉砕したものを乾式樹脂組成物とする。
本実施形態の樹脂組成物、例えば第1~第8実施形態の湿式樹脂組成物の製造方法としては、例えば、第1形態の製造方法。第2形態の製造方法などがある。
第1形態の製造方法は、混合工程を含み、さらに必要に応じて、混合工程に続く乾燥工程、粉砕工程を含む。
混合工程では、例えば、当該実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分と、分散媒と、を混合することにより、湿式樹脂組成物を製造する。分散媒としては特に限定されないが、例えば、水、水と水溶性溶剤との混合溶剤、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましい。これの中でも、排水処理の容易さ、環境負荷の抑制、作業員の安全性などの観点から、水、水と水溶性用剤との混合溶剤などが好ましく、水がより好ましい。ここで、水溶性溶剤とは特に限定されないが、例えば、アルコール類などが挙げられる。各成分の混合に先立ち、樹脂成分は水溶液または水分散液とすることが好ましい。また、セルロースナノファイバーと分散剤とを含む実施形態の樹脂組成物の混合では、これらを溶剤と共に混合し、予備分散体とすることが好ましい。予備分散体を用いる場合、予備分散体と他の成分とを一度に混合してもよく、予備分散体に他の成分を一つずつ添加混合してもよく。予備分散体に複数の他の成分を添加混合し、さらに残りの他の成分を添加混合してもよい。
各成分と溶剤または予備分散体との混合には一般的な混合機が用いられる。該混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサなどのバッチ式ミキサ、インラインミキサ、二軸ニーダー、高せん断ミキサー、可搬式ポータブルミキサ、メディアレス分散機などが挙げられる。
乾燥工程では、混合工程で得られた湿式樹脂組成物を乾燥することにより。湿式樹脂組成部から分散媒を除去し、固形状の樹脂組成物(以下「乾燥品」ともいう)が得られる。固形状の樹脂組成物の形態は特に限定されず、例えば、立体状、膜状、シート状、粉末状または粒状などが挙げられる。この固形状の形態は、例えば、湿式樹脂組成物の乾燥方法(分散媒の除去方法)を適宜選択することによって調整できる。例えば、湿式樹脂組成物をキャスト(流延)して乾燥させることで膜状やシート状に成形できる。湿式樹脂組成物を噴霧乾燥することで、粉末状や粒状に成形できる。湿式樹脂組成物を任意の形状の型に流し込んで乾燥することで、立体状に成形できる。本実施形態では、各種形状の固形状樹脂組成物をそのまま各種用途に用いることもできる。
湿式樹脂組成物の乾燥方法(分散媒の除去方法)としては、湿式樹脂組成物に含まれる分散媒の種類に応じて適宜選択できるが、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥(減圧乾燥)、凍結乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。噴霧乾燥によれば、例えば、湿式樹脂組成物をノズルから噴出させて微細な液滴とし、該液滴を対流空気中で加熱乾燥する。自然乾燥や加熱乾燥によれば、例えば、乾燥効率の観点から、湿式樹脂組成物をスピンコートまたはバーコートなどにより膜状またはフィルム状に成形し、得られた成形体を乾燥させる。
凍結乾燥によれば、湿式樹脂組成物を凍結し、凍結状態のまま減圧して分散媒を昇華させることによって乾燥する。凍結乾燥における湿式樹脂組成物の凍結方法は特に限定されないが、例えば、湿式樹脂組成物を冷媒中で凍結させる冷媒法、湿式樹脂組成物を低温雰囲気下で凍結させる低温雰囲気法、湿式樹脂組成物を減圧下で凍結させる減圧法などがある。これらの中でも冷媒法が好ましい。湿式樹脂組成物の凍結温度は、該樹脂組成物中に含まれる分散媒の凝固点以下であり、例えば-50℃以下または-80℃以下である。また。凍結乾燥では、凍結した湿式樹脂組成物中の分散媒を減圧下で昇華させることから、減圧時の圧力は、例えば、100Pa以下または10Pa以下である。圧力が100Paを超えると、凍結した湿式樹脂組成物中の分散媒が融解することがある。
乾燥手段としては、得られる乾燥品の品質の劣化が少なく、また乾燥体が、微細なカットファイバー状の形態となり、その後の加工工程等での取扱いが簡便かつ容易である点から、凍結乾燥が好ましい。
乾燥工程に続く粉砕工程は、必要に応じて実施される。粉砕工程では、乾燥工程で得られた樹脂組成物の乾燥品を粉砕し、粉末状の乾式樹脂組成物を得る。粉砕は、例えば、高速回転式混合機を用いて実施される。高速回転式混合機は、高速回転が可能なブレードを持ち、ブレードの高速回転により生ずる衝撃やせん断力で粉砕および混合を行なうものである。高速回転式混合機としては特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサ、スピードミキサ、カッターミキサなどが挙げられる。これらの中でも、鋭いカッター状のブレードを有するカッターミキサが好ましい。高速回転式混合機による粉砕は、ブレードの回転数および/または周速度の制御下に実施される。例えば、回転数を2000rpm以上または周速度50m/秒以上、或いは回転数3000~20000rpmまたは周速度70~115m/秒とする。
粉砕により得られる、溶剤を含まない粉末状の乾式樹脂組成物は、例えば、20℃以下の温度下でサイクロンやバグフィルタなどで回収される。脱溶媒された粉末状の樹脂組成物を得ることができる。なお、粉砕は、得られる粉末状の乾式樹脂組成物の平均粒径がが50μm以下になるように行なうことが好ましい。
第2形態の製造方法は、第1~第8実施形態の乾式樹脂組成物を得る方法であり、予備乾燥工程と、混合工程または混練工程と、を含む。
予備乾燥工程では、得ようとする当該実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分をそれぞれ乾燥させる、予備乾燥工程は、必要に応じて行なわれる任意の工程である。しかし、次工程で均一な混合物または混練物を得るといった観点から、予備乾燥を行なうことが好ましい。予備乾燥工程における乾燥は、例えば、熱風乾燥、減圧乾燥などで行なう。乾燥温度は80~100℃に設定され、各成分の水分量が0.1%以下になるように乾燥を行なう。当該実施形態の樹脂組成物がセルロースナノファイバーおよび分散剤を含む場合は、予備分散体を作製した後に、これを乾燥させてもよい。予備乾燥工程に続いて、混合工程または混練工程が実施される。
混合工程では、得ようとする当該実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分を混合する。ここで、各成分は予備乾燥されたものでもよく、予備乾燥されていないものでもよい。ペーストミキサ、ターブラーミキサ、スーパーミキサ、スーパーフロータ、ヘンシェルミキサなどの一般的な混合機を用いて各成分を混合することにより、粉状の乾式樹脂組成物が得られる。
混練工程では、得ようとする当該実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分を溶融混練する。ここで、各成分は予備乾燥されたものでもよく、予備乾燥されていないものでもよい。また、混合工程で得られた粉状の乾式樹脂組成物を溶融混練してもよい。また、樹脂成分とセルロースナノファイバーとを予め混合または溶融混練した混合物またはペレットと、それ以外の成分とを溶融混練してもよい。また、第1形態の製造方法で得られる乾燥品と、第1形態の製造方法で得られる粉状の乾式樹脂組成物を溶融混練してもよい。なお、セルロースナノファイバーは吸水性が高く、また、樹脂成分の中にも吸水性の高いものがある。したがって、混練工程で、成分から揮発する水分やその他の揮発分を除去するため、ベントの開放や、脱気設備下での溶融混練を行なってもよい。
溶融混練装置としては一般的なものを使用でき、例えば、単軸押出機、二軸混練押出機、ニーダ、バンバリーミキサ、往復式混練機(BUSS KNEADERなど)、ロール混練機などが挙げられる。これらの中でも、生産性や作業の簡便性などの観点から、単軸押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサ、往復式混練機が好ましい。また、各成分が均一に分散し、かつ、粗大凝集物の含有量が少ない当該実施形態の樹脂組成物を得る観点から、溶融混練装置内部の密閉性が高いものが好ましい。
溶融混練温度は、当該実施形態の樹脂成分に含まれる樹脂成分が円滑に溶融する温度とすればよいが、例えば100~240℃の範囲から選択される。この範囲の温度下で溶融混練を行なうことにより、セルロースナノファイバーの熱による繊維の断裂、酸化劣化、変性などが顕著に抑制され、また、不快な臭気の発生が抑制され、高い機械特性を有する変色のない当該実施形態の樹脂組成物が得られる。
混練工程では、得られる溶融混練物をペレット化してもよい。ペレット化にはペレタイザが用いられるが、塊状の溶融混練物を粉砕してペレット化してもよい。粉砕には、ハンマーミル、カッターミル、ピンミルなどの、回転刃と固定刃を備え、回転刃が高速で回転して粉砕する方式のプラスチック用粉砕機が用いられる。特に、回転式粉砕機の材料出口に一定メッシュのスクリーンを備え、粉砕物の最大粒度を所望レベル以下にそろえることができるものが好ましい。この粉砕機は、上記乾燥品の粉砕にも使用できる。
混練工程で得られるペレット状の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と同様の成形方法により、所望形状の成形物に成形できる。
なお、下記のように、樹脂成分およびセルロースナノファイバーを主成分とし、分散剤、架橋成分、安定剤、消泡剤およびその他の成分から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。本発明の樹脂組成物の場合は、通常の溶融押出機を通してペレット化してから押出成形、射出成形、トランスファー成形、溶融紡糸などの溶融成形をすることができる。勿論、ペレット化せずに高速回転混合機で粉砕及び混合された樹脂組成物を直接成形原料とするかあるいは成形機ホッパーで粉末組成物の食い込みをよくするためコンパクターで粉末組成物を固めて溶融成形することもできる。また、本発明の組成物をさらに造粒して粉末成形やコーティング用材料としても使用できる。
第1~第8の実施形態の樹脂組成物では、上記成形工程と同時または成形工程の後に、
架橋工程を実施してもよい。架橋工程は、当該実施形態の樹脂組成物が成分として架橋因子を含んでいる場合に好ましく実施される。架橋因子としては、架橋性基を有する水溶性樹脂、架橋性基を有する水分散性樹脂、架橋性基を有する変性熱可塑性樹脂、架橋性基を有する分散剤、および架橋成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種である。また、架橋工程を、第1、第2形態の製造方法でのいずれかの工程と同時またはいずれかの工程の後に実施してもよい。特に、第1形態の製造方法において、乾燥工程と同時または乾燥工程の後に架橋工程を実施することが好ましい。
<架橋工程>
架橋工程では、樹脂成分由来の架橋性基、分散剤由来の架橋性基や架橋成分を介して、または架橋成分の作用により、架橋構造が形成される。架橋構造としては、一のセルローナノファイバー内での架橋構造、一のセルロースナノファイバーと他のセルロースナノファイバー間の架橋構造、一の樹脂成分内での架橋構造、一の樹脂成分と他の樹脂成分間での架橋構造、セルロースナノファイバーと樹脂成分との間での架橋構造などが挙げられる。第1~第8の実施形態の樹脂組成物中に架橋構造を形成することにより、最終的に得られる成形品の機械特性や耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐傷つき性、吸水性、保水性、自己修復性などの他の特性が共に顕著に向上する。
架橋方法としては、加熱による化学的架橋方法、電離放射線(電子線や他の放射線)を照射する物理的架橋方法などが挙げられる。これらの中でも、制御の容易さの観点から、物理的架橋法が好ましい。電離放射線としては、電子線、γ線、X線、荷電粒子線、紫外線、中性子線などが挙げられる。これらの中でも、電離放射線を執政させる装置の入手しやすさ、制御の容易さ、安全性等の観点から、紫外線、電子線が好ましい。
架橋の程度は、加熱処理、電離放射線処理においても成形体の目的とする機械特性や、他の特性に応じて適宜設定される。
化学架橋法の加熱形態としては、例えば、第1~第8実施形態の樹脂組成物を注型成形や圧縮成形などで成形する際に、金型内で高温状態(120~150℃程度)に保持する形態(熱硬化性樹脂の成形と同様のやり方)、形成方法は限定されず、第1~第8実施形態の樹脂組成物の成形品を金型から取り出した後に熱風炉等でポストキュアする方法、第1~第8実施形態の樹脂組成物を固体表面にコーティングして熱風炉等でポストキュアする方法、第1~第8実施形態の樹脂組成物をハイドロゲル化し、そのままポストキュアする方法が挙げられる。化学架橋法における加熱条件は特に限定されず、例えば、約30℃以上で長時間、約30℃~約220℃で約10分以上、約100℃~約180℃で約5~約40分、または約125℃~約140℃で約1~約20分である。50℃以下の場合は、48時間以上かかる場合もある。また、化学架橋を行なう際に、酸触媒と、他の架橋成分とを共存させてもよい。
物理的架橋法における、所望の架橋度を得るための電離放射線の照射量は、第1~第8実施形態の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の種類や組成などにより適宜選択できるが、例えば、10~1000kGy、または10~50kGyの範囲から選択される。照射量を前記範囲から選択することにより、十分な架橋度を有し、機械特性(特に高温時の機械特性)や耐熱性が高く、変色のない成形品が得られる。
本明細書では、架橋の程度を示す指標として、架橋度(ゲル分率、%)を用いる。架橋度は、下記式から求められる。
ゲル分率=[不溶解分重量(g)/初期乾燥重量(g)]×100
〔式中、初期乾燥重量は、樹脂組成物を100℃で2時間乾燥させて得られた乾燥物の重量である。不溶解分重量は、乾燥物を常温下メタノール中に24時間浸漬した液から、定量ろ紙により分取した溶解残渣を100℃で2時間乾燥させた後の重量である。〕
第1~第8実施形態の樹脂組成物において、架橋度は、例えば、20~98%または60~98%の範囲から選択される。架橋度を前記範囲内とすることにより、機械特性が高く、耐熱性、耐クリープ性、耐摩耗性などの他の特性に優れた成形品が得られる。架橋度は、例えば、第1~第8実施形態の樹脂組成物における上述の架橋因子の種類や含有量の選択、化学的架橋法における加熱条件の選択、物理的架橋法における電離放射線の照射量の選択などにより調整できる。
第1~第8実施形態の樹脂組成物を、その形態や、含まれる樹脂成分の種類などに応じて、適切な成形方法で成形することにより、所望の形状を有する成形品が得られる。その形態とは、湿式、乾式、乾燥品、ペレットなどがある。樹脂成分の種類には、水溶性樹脂、水分散性に変性された熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂、変性により水溶性および/またはアルコール溶解性を付与された熱可塑性樹脂などがある。より具体的には、第1~第8実施形態の湿式の樹脂組成物を用いる場合には。例えば、樹脂コーティング法を利用して成形体が得られる。樹脂コーティング法には、例えば、スピンコータ、バーコータ、スプレーコート、ブラシやローラーによる塗布、ディッピング、溶液キャスト法などがある。また、湿式樹脂組成物を綿帆布やガラス繊維織物、炭素繊維織物などに含浸させてプリプレグを作製し、得られたプリプレグプレスやオートクレーブにより加圧加熱する成形法が挙げられる。第1~第8実施形態の樹脂組成物が乾燥品(脱溶媒後)である場合は、平面プレス法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法などにより成形可能である。第1~第8実施形態の樹脂組成物が樹脂成分として電離放射線などの照射により硬化する樹脂を含む場合は、電離放射線を用いた方法により成形品を製造することができる。マテリアルジェッティング方式、バインダージェッティング方式、光造形方式の3Dプリンティングも利用できる。
第1形態の製造方法から成形、架橋までの流れの一例をより具体的に示せば次の通りである。セルロースナノファイバーの分散剤による予備分散体、樹脂成分の水溶性溶媒溶液、および、架橋成分の水溶液またはアルコール溶液、および他の添加剤を撹拌下に混合する。得られた第7形態の湿式樹脂組成物を、スピンコート、ディップコート、スプレーコートなどのコーティング法や、キャスティングなどにより成膜し、乾燥して溶剤を除去して膜状の乾燥品を得る。この膜状の乾燥品を、加熱による化学架橋、電離放射線照射による物理架橋により、架橋構造を有する膜状の成形品とする。また、得られた第7形態の湿式樹脂組成物を乾燥し、圧縮成形、射出成形、押出し成形などにより成形し、得られた成形品を加熱による化学架橋、電離放射線照射による物理架橋により、架橋構造を有する膜状の成形品とする。
また、本実施形態の樹脂組成物の別形態の製造方法として、樹脂成分の水溶液又は水分散液、セルロースナノファイバーの予備分散体、および必要に応じて架橋剤、安定剤、消泡剤、その他の添加剤の少なくとも1種を予備混合する混合工程と、得られた予備混合物にメディアレス分散機により機械的せん断処理を施す分散工程と、を含む方法が挙げられる。この製造方法でも、セルロースナノファイバーが樹脂中にほぼ均一に分散した。本実施形態の樹脂組成物を容易に得ることができる。
第1~第8実施形態の樹脂組成物は、機械特性や、耐クリープ性、耐摩耗性、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、耐候性などに優れることから、例えば、一般機械部品向けの耐候性、耐摩耗性、耐傷つき性コーティング、あるいは電子機器等向の接着剤、光学部品用コーティングや接着剤、船舶、車両用コーティング、生体適合性の必要な分野を含む医療用、介護・福祉用部材、押出成形によるチューブ、電線被覆、フィルム、さらに小型の機械部品あるいはマテリアルジェッティング方式、バインダージェッティングもしくは光造形方式の3Dプリンタ用材料などに好適に使用することができるて、生体適合性の必要な分野を含む医療用、介護・福祉用部材、押出成形によるチューブ、電線被覆、フィルム、さらに小型の機械部品などに好ましく使用することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、実施例中における測定項目は下記のとおりである。
[繊維径]
実施例および比較例で得られた微小繊維について50,000倍の電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM)写真を撮影し、撮影した写真上において、写真を横切る任意の位置に2本の線を引き、線と交差する全ての繊維径をカウントして平均繊維径(n=20以上)を算出した。線の引き方は、線と交差する繊維の数が20以上となれば、特に限定されない。さらに、繊維径の測定値から、繊維径分布の標準偏差および最大繊維径を求めた。なお、最大繊維径が1μmを超える微小繊維の場合には、5,000倍のSEM写真を用いて算出した。
[ゼータ電位測定法]
以下の順序でサンプル調製およびゼータ電位の測定を行った。
サンプルを充分攪拌したのち、ディスポーザブルガラス試験管を用いて、蒸留水で希釈しセルロースナノファイバー濃度を0.01重量%に調整する。次いで、30分超音波処理後、下記のゼータ電位測定に供した。使用機器および測定条件は以下のとおりである。
測定機器:ゼータ電位、粒径測定システム(大塚電子(株)製)
測定条件:ゼータ電位用 標準セルSOP
測定温度:25.0℃
ゼータ電位換算式:Smolchowskiの式
溶媒:水(溶媒の屈折率・粘度・誘電率のパラメータは、大塚電子(株)製ELSZソフトの値をそのまま適用)
システム適合性:Latex262nm標準溶液(0.001%)で規格値の範囲を超えない。
[嵩密度]
JIS K7365に記載のシリンダーならびに漏斗を用いて2回測定し、算術平均値を嵩密度とした。
[ゲル分率]
本発明により得られた組成物を乾燥(100℃×2時間)後秤量し、初期乾燥重量(g)とした。これを水に常温で24時間浸漬し後、溶解残渣を定量ろ紙で濾過し、100×2時間乾燥後秤量し、不溶解分重量(g)とした。下記の計算式にて架橋度(ゲル分率、%)を求めた。
架橋度(ゲル分率)=[(不溶解分重量)/(初期乾燥重量)]×100
[鉛筆硬度]
本発明により得られた組成物を、スピンコーターで親水化処理したガラス基板上に厚さ5μm厚にコーティングした後に架橋(物理架橋、あるいは化学架橋)させたコーティング膜に対して、鉛筆硬度試験機(オールグッド(株)製)を用いて、JIS K5600に準じて測定した。
測定用鉛筆には、三菱鉛筆Hi-uni(硬さ10H~10B)を使用した。
[耐擦傷性]
スピンコートによるコーティング膜の架橋処理後、簡易試験装置を用いて当該コーティング膜の表面をスチールウール#0000(日本スチールウール(株)製)で加重400g、接触面積10×10mm、移動距離130mm、毎秒約100mmの条件で押し当て、10往復させた。試験後に以下の基準で目視評価した。
◎:キズが全くない。
○:細かなキズが数本ある。
△:細かなキズは多数ある。
×:明らかなキズがあり摩耗粉が生じている。
[耐貫通性]
鋼球が合わせガラスに当たったあとで、上側のガラス板にはひびが入るものの、鋼球がガラス試料を貫通しないものを◎、ガラス板が2枚ともにひびが入るが、鋼球は貫通しないものを○、鋼球がガラス板2枚とも貫通するものを×として評価した。
[ガラス破片飛散性]
鋼球が合わせガラスに当たったあとで、上側のガラスにひびが入るがガラス片の飛散がないものを◎、ガラス板2枚ともひびが入るが、ガラス片は飛散せず原形をとどめているものを○、ガラス板が2枚ともばらばらになるものを×と評価した。
(合成例1)<セルロースナノファイバー分散体の調製>
メディアレス分散機として、(株)広島メタル&マシナリー製の商品名:K―2(商品名が「アペックスディスパーサーZERO」に変更された)を用い、分散媒としての精製水、セルロースナノファイバーおよび分散剤を分散したスラリー状物を当該メディアレス分散機に投入して回転周速30m/sで循環させ、せん断によりセルロースの分散を促進させて、分散が安定した未変性セルロースナノファイバーを得た。
すなわち、上記の装置を用いて、未変性セルロースナノファイバー(BiNFi-s、(株)スギノマシン製)を0.1重量%、分散剤としてアクリルスルホン酸系分散剤(アロン A-6012、東亞合成(株)製)を未変性セルロースナノファイバーの固形分換算で5重量%添加した水分散液について5回メディアレス分散処理を繰り返し、未変性セルロースナノファイバー分散体Xを調製した。以下において、未変性セルロースナノファイバーを未変性CNFと呼ぶことがある。
得られた水分散体Xの外観は白濁液状で、未変性セルロースナノファイバーの分散ムラや凝集は見られず、また、この水分散体Xを24時間以上静置しても未変性セルロースナノファイバーの沈殿は見られず、安定したスラリーであった。また、該分散体Xのゼータ電位-39.67mVであった。該水分散体Xに含まれる、未変性セルロースナノファイバーは平均繊維径は20~50nmであった。
ここで、セルロースナノファイバー分散体を作製する際に、上記分散剤を添加せずに同一条件で作製すると、得られた分散体Yはゼータ電位が-12.8mVであり、静置後しばらくして沈殿が始まり、12時間後には加えたセルロースナノファイバーが液量の1/2程度にまで沈殿するものであった。
(実施例1A)<物理架橋>
構造に-OH基を有する水溶性ビニル樹脂として、ポリビニルアルコール樹脂(ポバール PVA-205、(株)クラレ製、表1~3では「PVA」と表記する)を用いた。この樹脂ペレットを水に溶解し、固形分濃度12.5重量%の水溶液を得た。この溶液の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC)、日本化成(株)製)を5重量%、セルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体組成物(樹脂組成物)の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後の添加成分の沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマにより親水化処理したガラス基板上にスピンコーターにて厚さ5μmのコーティング膜を700rpm×10秒の条件で形成し、自然乾燥による脱溶媒後に物理架橋としてγ線を30kGy照射して架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1A)
架橋成分(TAIC)を用いない以外は実施例1Bと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1B)
架橋成分(TAIC)を用いない以外は実施例1Aと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1C)
分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例1Bと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1D)
疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を用いない以外は比較例1Cと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例1E)
未変性CNFを用いない以外は実施例1Aと同様にして、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例1Cおよび比較例1F~1J)<化学架橋>
実施例1Aおよび比較例1A~1Eにおいて、架橋成分としてTAICに代えて両末端イソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)を5重量%を添加し、かつ架橋処理を物理架橋から150℃で1時間加熱する化学架橋に変更(実施例1C、比較例1F1J)する以外は、それぞれ実施例1A、および比較例1A~1Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例1Eおよび比較例1K~1O)
実施例1A、および比較例1A~1Eにおいて、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂に代えてポリビニルブチラール樹脂(エスレック KW-01、積水化学工業(株)製、固形分20重量%の水溶液、表1~3では「PVB」と表記する。)とする以外は、実施例1Aおよび比較例1A~1Eと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例1Gおよび比較例1P~1T)
実施例1Cおよび比較例1F~1Jにおいて、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂に代えてポリビニルブチラール樹脂(エスレック KW-01、積水化学工業(株)製、固形分20重量%の水溶液、表1~3では「PVB」と表記する。)とする以外は、実施例1Cおよび比較例1F~1Jと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表
2に示す。
(実施例1Iおよび比較例1U~1Y)
実施例1A、および比較例1A~1Eにおいて、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂に代えてポリエチレンオキシド樹脂(アルコックス CPA-2H、明成化学工業(株)製)の粉体を用いた固形分12.5重量%の水溶液、表1~3では「PEO」と表記する)とし、架橋成分としてTAICのほか、水溶性ラジカル重合開始剤(V-50,2,2-アゾビス(2-アミジンプロパン)二塩酸塩、和光純薬工業(株)製)を1重量%を加える以外は、実施例1Aおよび比較例1A~1Eと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
(実施例1Kおよび比較例1Z1~1Z5)
実施例1Cおよび比較例1F~1Jにおいて、ポリビニルアルコール樹脂に代えてポリエチレンオキシド樹脂(アルコックス CPA-2H、明成化学工業(株)製、表1~3では「PEO」と表記する。)の粉体を用いて固形分12.5重量%の水溶液)、架橋成分を両末端イソシアネート型ポリカルボジイミドから水溶性ラジカル重合開始剤(V-50,2,2-アゾビス(2-アミジンプロパン)二塩酸塩、和光純薬工業(株)製)とする以外は、実施例1Kおよび比較例1F~1Jと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
(実施例1M、および比較例1Z6~1Z10)
実施例1C及び比較例1F~1Jにおいて、ポリビニルアルコール樹脂に代えてアクリル-ウレタン樹脂系エマルジョン(ボンコート CG-5010EF、DIC(株)製、固形分45重量%、表2では「A-U」と表記する。)とする以外は、実施例1および比較例1F~1Jと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
(実施例1O~1Q)
実施例1において、未変性セルロースナノファイバーの添加量を1重量%から3重量%(実施例1O)、5重量%(実施例1P)、および10重量%(実施例1Q)にそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表3に示す。
(実施例1R)
実施例1Gにおいて、未変性セルロースナノファイバーの添加量を3重量%とし、架橋成分を多官能エポキシモノマー(TG-G、四国化成工業(株)製)とした以外は、実施例1Gと同様に操作して分散体組成物を得て、セルロースナノファイバー分散性、ならびにセルロースナノファイバー分散安定性、ゲル化の有無、ゲル分率を測定した。
実施例1Rで得られた架橋処理前の分散体組成物を、スライドガラス(75mm×50mm×1mm)の片面に、バーコーターを用いて200μm厚さに塗布し、乾燥炉内で50℃で30分間予備乾燥してから、別の未塗装のガラスを、塗布膜に気泡が入らないようにして重ね合わせた後、同じ乾燥炉を用いて加熱による架橋処理(80℃×30分)を行うことで、合わせガラス試料を作製した。得られた合わせガラス試料を平面の台に水平に固定し、JIS B1501に規定されている質量20gの鋼球(φ17)を該合わせガラス試料から、1000mmの高さから自由落下させて、鋼球が該合わせガラス試料に当たった際の耐貫通性およびガラス破片飛散性を目視判定した。結果を表4、及び図1に示す。
(比較例1Z11、1Z12)
実施例1Rにおいて、未変性セルロースナノファイバー及び分散剤を添加しない以外は実施例1Rと同様にして作製した分散体組成物(比較例1Z11)、ポリビニルブチラール樹脂のみを用いる以外は実施例1Rと同様にして作製した分散体組成物(比較例1Z12)を用い、実施例1Rと同様にして合わせガラスを作製し、架橋処理を施した。得られた合わせガラス試料について実施例18と同様の評価を実施した。結果を表4、及び図1に示す。
図1の実施例1Rでは、下側のガラス板に多少の割れが生じているが、上側ガラスの鋼球が当たった箇所では鋼球の貫通は起こらず、ガラス板の割れもほとんどなかった。比較例1Z11では、鋼球が上側のガラス板を貫通し、上側のガラス板の鋼球が当たった箇所を中心にして放射状にガラス板が割れ、下側のガラス板にも割れが生じた。また、比較例1Z12では、鋼球が2枚のガラス板を貫通することにより、2枚のガラス板が砕け散った。
(実施例1S)
実施例1Aにおいて、セルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で5重量%とし、架橋成分としてTAICに代えて両末端イソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)を5重量%を添加し、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物のCNF分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無(CNF沈降性)を目視観察した。
この分散体組成物を、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、自然乾燥で溶媒を除去した。次いで、脱溶媒後のコーティング膜にクロムマスクを介して紫外線を1000(mJ/cm)照射し、コーティング膜の硬化体を形成した。この硬化体を温水で洗浄して現像し、パターニング生成の有無を目視判定した。パターン全体が明確に視認できるものを「◎」、パターンの形成が部分的に視認できるものを「○」、パターンの輪郭が不明瞭であるものを「△」、及びパターンの形成が全く視認できないものを「×」と判定した。結果を表5に示す。
(比較例1Z13)
実施例1Pにおいて、未変性セルロースナノファイバーを添加しない以外は、実施例1Pと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表5に示す。
Figure 0007120011000001
Figure 0007120011000002
Figure 0007120011000003
Figure 0007120011000004
Figure 0007120011000005
表1~2より、実施例1A、1C、1E1G、1I、1K、1M、1Nならびに比較例1A~1Z10において、水溶性ビニル樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、および水分散性ポリカルボン酸系樹脂について、それぞれの樹脂系について、化学架橋の場合と物理架橋において、コーティング皮膜に与える効果を比較し、さらにそれぞれの樹脂での架橋成分の添加の有無、ならびにセルロースナノファイバーの添加の有無が、架橋の有無、ならびにコーティング膜の物性(鉛筆硬度)耐擦傷性について調べ、さらに、紫外線照射時のクロムマスクによるパターニング生成の有無により3次元架橋の有無から、マテリアルジェッティング方式、バインダージェッティング方式または光造形方式などの3Dプリンタ用樹脂としての適合性を判断した。
実施例1A、1C、1E1G、1I、1K、1M、1Nから、水溶性樹脂にセルロースナノファイバーの予備分散体を添加すると、その分散性は良好でかつ分散安定性が高いことがわかった。さらにこれらを物理架橋または化学架橋によると、ゲル分率が90%以上であり、十分に架橋が進んでおり、比較例1A~1D、比較例1F~1I、比較例1K~1N、比較例1P~1S、比較例1U~1X、比較例1Z1~1Z4、比較例1Z6~1ZQのように架橋成分を添加しないと、架橋が生じず、コーティング膜としての特性値は低くなる。
さらに、未変性セルロースナノファイバーの添加量が1~10重量%であれば(実施例1O~1Q)、コーティング膜の特性(鉛筆硬度、耐擦傷性)は、セルロースナノファイバーを添加しないもの(比較例1E、1J、1O、1T、1Y、1Z5、1Z10)または樹脂成分を架橋しないもの(比較例1D、1I、1N、1S、1X、1Z4、1Z9)に比べ充分に高かった。特にセルロースナノファイバーの添加量が5重量%で十分な効果が得られていた(表3)。
水溶性ビニル樹脂のうち、ポリビニルブチラール樹脂の合わせガラスの中間層としてのガラス板への接着性、ならびに耐衝撃性を調べた。ポリビニルブチラール樹脂にセルロースナノファイバーを3重量%添加し、さらに架橋させたものは鋼球の衝撃を受けても鋼球は貫通せず、ガラスの割れが多少生じたが、鋼球が当たった瞬間のガラスの飛散はなかった。また、セルロースナノファイバーを添加せずに架橋したものまたはポリビニルブチラール樹脂のみで架橋処理のないものは、耐貫通性およびガラス破片飛散性が低くなった。以上の結果から、セルロースナノファイバーの添加により、あわせガラスの耐衝撃性が高くなることがわかった(表4、図1)。
実施例1Aのうち、分散剤をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL,日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は実施例1Aと同様にして樹脂組成物(分散体組成物)を作製し、実施例1Aと同様の評価を行った。その結果、セルロースナノファイバーの分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例1Aと同等であり、架橋およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
実施例1Sおよび比較例1Z13において、水溶性ビニル樹脂の、マテリアルジェッティング方式、バインダージェッティング方式または光造形方式の3Dプリンタ用途への応用の適否を調べた。水溶性ビニル樹脂(ポリビニルアルコール樹脂)であっても、紫外線照射により光重合させるとパターニングは可能で、3Dプリンタによる造形用材料として使用できると可能性があると判断される(表5)。
これは、実施例1Kにおいて、水溶性樹脂をポリビニルアルコール樹脂からポリエチレンオキシド樹脂に代えた分散体組成物においても、紫外線照射でクロムマスクによって、同様にパターニングが生成した。この結果から、ポリエチレンオキシド樹脂をベースとする本実施形態の樹脂組成物を3Dプリンタ用材料に利用できると判断された。また、ポリビニルアルコール樹脂にセルロースナノファイバーを添加しない場合は(比較例1E)、ゲル化が生じるものの、コーティング膜としての特性が低かった。実施例と比較例1Eとの対比から、セルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
また、実施例1Aと比較例1Bのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム、10%塩酸溶液、トルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。実施例1Aのコーティング膜には変化がなかったが、比較例1Bのコーティング膜は外観が白濁し、成分の溶出が認められた。
実施例1Aと比較例1Eの各コーティング膜について、サンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で耐侯性試験を行なった。試験開始後50時間後に両サンプルを目視観察すると、いずれも退色が認められたが、実施例1Aのコーティング膜よりも大きく退色した比較例1Eのコーティング膜には、膜の欠損も認められた。以上より、本発明によるコーティング膜の耐薬品性ならびに耐侯性の向上が確認できた。
(実施例2A)<化学架橋>
ビニルピロリドン樹脂として、ポリビニルピロリドン(K-85N、(株)日本触媒製、白色粉末、表中では「PVP」と表記する。)を使用した。精製水を用いて固形分濃度20重量%の水溶液を調製し、架橋成分として水分散性メラミン樹脂(ニカラック MX-035、(株)三和ケミカル製)を5重量%および酸触媒(p-トルエンスルホン酸アミド、キシダ化学(株)製)を1重量%添加し、合成例1で得られたセルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上に、バーコーターにより、100×200mmのサイズで厚さ5μmのコーティング膜を形成し(速度3m/分)、自然乾燥による脱溶媒後に、170℃で20分加熱することで化学架橋して架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。
また、上記の脱溶媒後のコーティング膜にクロムマスクを介して紫外線を1000(mJ/cm)照射し、コーティング膜の硬化体を形成した。この硬化体を温水で洗浄して現像し、パターニング生成の有無を目視判定した。パターン全体が明確に視認できるものを「◎」、パターンの形成が部分的に視認できるものを「○」、パターンの輪郭が不明瞭であるものを「△」、及びパターンの形成が全く視認できないものを「×」と判定した。結果を表6に示す。
(比較例2A)
実施例2Bにおいて、架橋成分を加えない以外は実施例2Bと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表6に示す。
(比較例2B)
実施例2Aにおいて、架橋成分を加えない以外は、実施例2Aと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表6に示す。
(比較例2C)
実施例2Bにおいて、分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例2Bと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。
(比較例2D)
比較例2Cにおいて、疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を添加しない以外は比較例2Cと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。
(比較例2E)
実施例2Aにおいて、未変性CNFを用いない以外は実施例2Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。
(実施例2Cおよび比較例2F~2J)<物理架橋>
実施例2Aおよび比較例2A~2Eにおいて、架橋成分として水分散性メラミン樹脂に代えて多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC、日本化成(株)製)を5重量%添加し、かつ架橋処理を化学架橋から、紫外線を1000(mJ/cm2)照射する物理架橋に代えた以外は、それぞれ実施例2Aおよび比較例2A~2Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表6に示す。
(比較例2K~2O)
実施例2A、2B、比較例2C、2D、2Eにおいて、架橋成分ならびに酸触媒を加えず、さらに架橋処理を行わない他は、実施例2A、2B、比較例2C、2D、2Eと同様に操作し同様の評価を行った。結果を表6に示す。
<セルロースナノファイバー分散体X添加量の効果>
(実施例2E~2G)
実施例2Aにおいて、未変性セルロースナノファイバー分散体Xの添加量を3重量%(実施例2E)、5重量%(実施例2F)、10重量%(実施例2G)とした以外は、実施例1と同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後にゲル化の有無を判定するとともにゲル分率を求め、さらにコーティング膜の鉛筆硬度と耐擦傷性ならびに架橋によるパターニング生成の有無を評価した。結果を表6に示す。
Figure 0007120011000006
以下の評価は、樹脂組成物からコーティング膜を形成した場合の、該コーティング膜の鉛筆硬度や耐擦傷性に関するものであり、樹脂組成物全般の特性を評価するものではない。
表6より、実施例2A、2C、2E~2Gおよび比較例2A~2Oにおいて、ポリビニルピロリドン樹脂について、物理架橋の場合と化学架橋の場合を比較し、さらに架橋成分の添加の有無、ならびにセルロースナノファイバーの添加の有無、分散剤添加の有無、架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度)、耐擦傷性、およびクロムマスクによるパターン生成の有無に与える影響について調べた。
表6から、ビニルピロリドン樹脂、セルロースナノファイバーの予備分散体および架橋成分を混合した分散体組成物では、セルロースナノファイバーの分散性は良好でかつ分散安定性が高いことがわかった。さらに該分散体組成物を物理架橋または化学架橋した宇都のゲル分率が90%以上であり、架橋が十分に進んでいた(実施例2A、2C、2E~2G)。
また、セルロースナノファイバーの30重量%を未変性セルロースナノファイバーで置換した予備分散体を用いても(実施例2F)、未変性セルロースナノファイバーの予備分散体を用いた分散体組成物(実施例2A、2C、2E)と同等の鉛筆硬度ならびに耐擦傷性が得られた。
一方、ビニルピロリドン樹脂に架橋成分を添加しないと、ゲルが生じず(架橋が生じず)、コーティング膜の特性が低くなった(比較例2A~2D、比較例2F~2I、及び比較例2K~2O)。また、ビニルピロリドン樹脂に酸触媒を添加して自己架橋させたコーティング膜は、実施例2Aと同等の鉛筆硬度および耐擦傷性を有していた(実施例2E~2G)。
ビニルピロリドン樹脂にセルロースナノファイバーを添加しない場合は、架橋処理を行っても、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性が低くなり(比較例2E、2J、2O)、セルロースナノファイバーの添加による、コーティング膜の機械特性の向上を確認できた。セルロースナノファイバーの分散体組成物への添加量が1~10重量%であれば、コーティング膜の特性は、セルロースナノファイバーを添加しないものまたは、樹脂成分を架橋しないものに比べて有意な高く、5重量%で十分な効果が得られた(実施例2E~2G)。
また、実施例2A、2C、2Eにおいて、クロムマスクによるパターニングが明確に確認できた。しかしながら、セルロースナノファイバー添加量の多い実施例2F、2G、ならびに分散剤を添加しない比較例2E、2Jはパターンの明瞭性が少し損なわれた。さらに架橋成分のない比較例2A~2D、2F~2Iおよび2K~2Oではパターンの生成が見られなかった。このことから、ビニルピロリドン樹脂にセルロースナノファイバーを1~3重量%添加すると明瞭なパターンが生成し、また、架橋工程も明瞭なパターンの生成に有効であることがわかった。
実施例2Aにおいて、分散剤(アロン A-6012)をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に代える以外は実施例2Aと同様にして分散剤組成物を調製し、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、実施例2Aと同様の評価を行った。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例2Aと同等であり、上記分散剤の添加でも架橋およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
また、実施例2Aと比較例2Aのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム、10%塩酸溶液、トルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。その結果、実施例2Aに変化は見られなかったが、比較例2Aでは外観に曇りが生じ、さらに成分の溶出が認めらた。
耐侯性試験として、実施例2Aと比較例2Aをサンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で試験した。試験開始後50時間後に両サンプルを目視観察すると、いずれも退色が認められたが、実施例2Aはその程度はわずかで、比較例2Bはより強く退色しており、一部は塗膜の欠損が認められた。
以上より、本コーティング膜の耐薬品性および耐侯性の向上を確認できた。
(実施例3A)<物理架橋>
構造にエポキシ基を有する水分散性エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂エマルジョン(アデカレジン EM-0427WC、(株)アデカ製、固形分50重量%)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC)、日本化成(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後の添加成分の沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマにより親水化処理したガラス基板上にスピンコーターにて厚さ5μmのコーティング膜を700rpm×10秒の条件で形成し、自然乾燥による脱溶媒後に物理架橋としてγ線を30kGy照射して架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。
(比較例3A)
架橋成分(TAIC)を加えない以外は実施例3Bと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。
(比較例3B)
架橋成分(TAIC)を用いない以外は実施例3Aと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。
(比較例3C)
分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例3Bと同様に操作して、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。
(比較例3D)
疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を添加しない以外は比較例3Cと同様にして、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。
(比較例3E)
未変性CNFを用いない以外は実施例3Aと同様にして、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。
(実施例3C及び比較例3F~3J)<化学架橋>
実施例3A、および比較例3A~3Eにおいて、架橋成分としてTAICに代えて酸アミン錯体(三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、和光純薬(株)製)5重量%を添加し(実施例3C、比較例3J)、かつ架橋処理を物理架橋から150℃で1時間加熱する化学架橋に変更する以外は(実施例3C、比較例3F~3J)、それぞれ実施例3A、および比較例3A~3Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。
(実施例3E~3G)
実施例3Aにおいて、未変性セルロースナノファイバーの添加量を1重量%から3重量%(実施例3E)、5重量%(実施例3F)又は10重量%(実施例3F)に変更する以外は、実施例3Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。
(実施例3H)
3Dプリンタ用樹脂及び光重合性樹脂として知られるエポキシ樹脂エマルジョン(アデカレジン EM-0427WC、(株)アデカ製、固形分50重量%)を用い、重合開始剤としてトリアリールスルホニウム塩(試薬1級)を樹脂固形分換算で1重量%、および架橋成分として多官能エポキシモノマー(TG-G、四国化成工業(株)製)を5重量%、ならびに前記セルロースナノファイバー分散体Xを5重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物のCNF分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無(CNF沈降性)を目視観察した。この分散体組成物を用いて、実施例3Aと同条件でスピンコートし、物理架橋として紫外線を1000(mJ/cm)照射し、クロムマスクによるパターニング生成により3次元架橋の有無を判定した。
(比較例3K、3L)
分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例Hと同様に操作し(比較例3J)、分散性エポキシ樹脂及び未変性セルロースナノファイバーを用いない以外は比較例3Jと同様に操作し(比較例3K)、それぞれ分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表7、8に示す。
Figure 0007120011000007
Figure 0007120011000008
表7より、実施例3A、3C、3E~3Hおよび比較例3A~3Jでは、水分散性エポキシ樹脂を樹脂成分として含む分散体組成物(樹脂組成物)について、セルロースナノファイバー添加の有無、架橋成分添加の有無、および架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度、耐擦傷性)に与える影響を調べた。また、各分散体組成物の3Dプリンタ用樹脂および光重合性樹脂としての適合性を判断した
実施例3A、3C、3E~3Gから、水分散性エポキシ樹脂は、予備分散体を撹拌下に添加すると、その分散性は良好でかつ分散安定性が高いことがわかった。さらに得られた分散体組成物を物理架橋または化学架橋すると、ゲル分率が90%以上になり、架橋が十分に進むことがわかった。比較例3A~3D、比較例3F~3Iのように架橋成分を添加しないと、架橋が生じず、コーティング膜の特性は低くなった。
さらに、セルロースナノファイバーを1~10重量%を添加したコーティング膜の特性は、セルロースナノファイバーを添加しないものまたは樹脂成分を架橋しないものに比べ充分に高く、5重量%の添加で十分な効果が得られた。
実施例3Aにおいて、分散剤をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピデュアBL,日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は実施例3Aと同様にして分散体組成物をを作製し、実施例3Aと同様に評価したところ、セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例3Aと同等であった。その結果、架橋の効果およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
実施例3Hおよび比較例3K,3Lにおいて、水分散性エポキシ樹脂の3Dプリンタ用途への応用可能性を調べた。水分散性エポキシ樹脂を含む分散体組成物を紫外線照射により光重合させると、パターニングが可能で、3Dプリンタ用途に十分使用できることがわかった。また、比較例3K、3Lから、分散剤を添加しない場合、およびセルロースナノファイバーを添加しない場合でも、架橋は生じるもののゲル分率が低く、架橋が十分に進んでいなかった。このことから、セルロースナノファイバーと樹脂成分との間の架橋構造、および/またはセルロースナノファイバー同士の架橋構造が生じていると考えられる。
また、実施例3Aと比較例3Bのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム、10%塩酸溶液、トルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。その結果、実施例3Aのコーティング膜に変化は見られなかったが、比較例3Bのコーティング膜は外観が白濁し、成分の溶出が認めらた。
耐侯性試験として、実施例3Aおよび比較例3Eの各コーティング膜の対候性を、サンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で評価した。評価開始後50時間後に各コーティング膜を目視観察すると、比較例3Eのコーティング膜は、実施例3Aのコーティング膜よりも大きく退色し、一部に塗膜の欠損を有していた。以上より、本実施形態によるコーティング膜の耐薬品性および耐侯性の向上が確認できた
<ノボラックエマルジョン/物理架橋>
(実施例4A)
水分散性フェノール樹脂として、ノボラック型フェノール樹脂水分散エマルジョン(WSR-SP82、小西化学工業(株)製、固形分30重量%、表9では「ノボラックエマルジョン」とする)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC))、日本化成(株)製)を5重量%、合成例1で得られたセルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、自然乾燥による脱溶媒後に、物理架橋としてγ線を30kGy照射し架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。結果を表9に示す。
(比較例4A)
架橋成分を加えない以外は実施例4Aと同様に操作して、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表9に示す。
(比較例4B)
実施例4Aにおいて、分散体Xに代えて合成例1で得られた分散体Yを用い、さらに架橋成分を加えない以外は、実施例4Aと同様の操作を行い、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表9に示す。
(比較例4C)
未変性CNFを用いない以外は実施例4Aと同様にして、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表9に示す。
(実施例4C、及び比較例4D~4F)<化学架橋>
実施例4A及び比較例4A~4Cにおいて、架橋成分としてTAICに代えて両末端ポリイソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)を5重量%添加し(実施例4C、比較例4F)、かつ架橋処理を物理架橋から150℃で1時間加熱する化学架橋に変更(実施例4C、及び比較例4D~4F)した以外は、それぞれ実施例4A、比較例4A~4Cと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表9に示す。
<水分散性レゾール/化学架橋>
(実施例4E、及び比較例4~4I)
実施例4C、及び比較例4~4Fにおいて、ノボラック型フェノール樹脂水分散エマルジョンに代えて、水分散性レゾール樹脂(PR-50781、DIC(株)製、自己架橋性樹脂、固形分64重量%)水溶液を用い、かつ架橋成分を加えない以外は、それぞれ実施例4C、及び比較例4~4Fと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表9に示す。
<アルキド変性フェノール樹脂/物理架橋>
(実施例4G及び比較例4J~4L)
実施例4A及び比較例4A~4Cにおいて、ノボラック型フェノール樹脂水分散エマルジョンに代えて、上記水分散性レゾール樹脂と、水分散性アルキド樹脂(ハリディップ WS-730-60、ハリマ化成(株)製、固形分65重量%)とを固形分重量比で1:1で卓上攪拌機を用いて30分攪拌したアルキド樹脂混合物を用いた以外は、それぞれ実施例4A及び比較例4A~4Cと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表9に示す。
(実施例4I及び比較例4M~4O)<化学架橋>
実施例4G及び比較例4J~4Lにおいて、架橋成分としてTAICに代えて両末端ポリイソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)を5重量%添加し、かつ架橋処理を物理架橋から150℃で1時間加熱する化学架橋に変更した以外は、それぞれ実施例4G及び比較例4J~4Lと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表9に示す。
(実施例4K~4M)
未変性セルロースナノファイバー分散体Xの添加量を3重量%(実施例4K)、5重量%(実施例4L)、10重量%(実施例4M〉とした以外は、実施例4Cと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表9に示す。
<紫外線照射による架橋(物理架橋)>
(実施例4N)
水分散性フェノール樹脂として、ノボラック型フェノール樹脂水分散エマルジョン(WSR-SP82、小西化学工業(株)製、固形分30重量%)を用い、重合開始剤としてトリアリールスルホニウム塩(試薬1級)を樹脂固形分換算で1重量%、および架橋成分として多官能エポキシモノマー(TG-G、四国化成工業(株)製)を5重量%、および前記セルロースナノファイバー分散体Xを5重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物のCNF分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無(CNF沈降性)を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、自然乾燥による脱溶媒後に、物理架橋として紫外線を1、000(mJ/cm)照射し架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。結果を表10に示す。
(比較例4P、4Q)
分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例4Nと同様に操作し(比較例4P)、未変性セルロースナノファイバーを用いない以外は比較例4Pと同様に操作し(比較例4Q)、それぞれ分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表10に示す。
(実施例4O~4Q)
水分散性レゾール樹脂(自己架橋タイプ)水溶液の固形分に対し、未変性セルロースナノファイバーを固形分換算で1重量%、アクリルスルホン系分散剤を未変性セルロースナノファイバーの固形分に対して5重量%、還元剤(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル -4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、アデカスタブAO-60、(株)ADEKA社製)を水分散性レゾール樹脂水溶液の固形分に対して0.5重量%、及び消泡剤(サーフィノール465、日信化学工業(株)製)を0.5重量%添加し、前記メディアレス分散機で分散体組成物を調製した直後のセルロースナノファイバーの分散性を目視評価すると共に、分散体組成物の起泡の有無を目視判定した。得られた分散体組成物を用いて、実施例4Cと同様にガラス板上にコーティング膜を形成した後、化学架橋を行い、そのまま架橋処理温度である150℃で48時間保持後のコーティング膜の色の変化(黄変)の有無を目視判定した。(実施例4O)。
また、実施例4Oにおいて、消泡剤を加えないものを実施例4P、還元剤を加えないものを実施例4Qとし、これら以外は実施例4Pと同様に操作して、評価した。結果を表11に示す。
なお、表11では色の変化、起泡共にまったく認められないものを○、色の変化、起泡が僅かに認められるものを△、色の変化、起泡が明確に認められるものを×として判定した。
Figure 0007120011000009
Figure 0007120011000010
Figure 0007120011000011
表9、表10に示すように、実施例4A、4C、4E、4G、および比較例4A~4Oの、各種水分散性フェノール樹脂を含む分散体組成物について、架橋成分の添加の有無、セルロースナノファイバー添加の有無、架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度、耐擦傷性)に与える影響を調べた。
表9から、水分散性フェノール樹脂にセルロースナノファイバー予備分散体および架橋成分を添加すると、セルロースナノファイバーの分散性は良好でかつ分散安定性が高いことがわかった。さらに物理架橋または化学架橋を行なうと、ゲル分率が90%以上となり、架橋が十分に進んでいることが確認できた(実施例4A、4C、4E、4G、および比較例4C、4F、4I、4L、4O)。
較例4A、4B、4D、4E、4J、4K、4M、4Nのように架橋成分を添加しないと、架橋が生じず、コーティング膜の特性は低くなる。ただし、水分散性フェノール樹脂が水分散性レゾール樹脂である場合は(実施例4E、及び比較例4~4I)、該樹脂が自己架橋性であることから、架橋成分を加えずとも化学架橋により架橋が生じ、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性が高くなった。
また、水分散性フェノール樹脂を用いかつセルロースナノファイバーを添加しない場合は(比較例4C、4F、4I、4L、4O)、架橋処理を行っても、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性は低くなった。このことから、水分散性フェノール樹脂へのセルロースナノファイバーの添加による、コーティング膜の機械特性の向上を確認できた。
さらに実施例4K~4Mから、セルロースナノファイバーを1~10重量%添加すれば、コーティング膜の特性は、セルロースナノファイバーを添加しないものまたは樹脂成分を架橋しないものに比べ十分に高く、特に5重量%で十分な効果が得られた。
実施例4Aにおいて、分散剤をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピデュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は実施例4Aと同様にして、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、実施例4Aと同様に評価した。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例4Aと同等であった。上記2種の分散剤を用いても、架橋による効果およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
表10の実施例4Nおよび比較例4P、4Qにおいて、重合開始剤と架橋成分を用いて水溶性フェノール樹脂の光架橋の有無を調べた。実施例4Nによれば、紫外線照射により水分散性フェノール樹脂の光重合を実施でき。また、比較例4N、4Oによれば、分散剤またはセルロースナノファイバーを添加しない場合でも、架橋は生じるもののゲル分率が低く、架橋が十分に進んでいなかった。このことは、セルロースナノファイバーと樹脂成分間の架橋、および/またはセルロースナノファイバー同士の架橋が生じていることを示唆している。
表11から、水分散性レゾール樹脂、未変性セルロースナノファイバー、分散剤、還元剤、消泡剤を、メディアレス分散機で一段で分散処理することにより、セルロースナノファイバーの分散性は実施例4A、4C、4E、4G、4I、4K~4Nと同じく良好であった。また、分散処理直後に分散体組成物には起泡がなく、コーティング膜を架橋して高温で長時間保持してもコーティング膜の色は変化しなかった。したがって、還元剤、消泡剤の添加により、コーティング時の作業性が向上するとともに、コーティング膜の外観上の劣化が抑制された。
また、実施例4Aと比較例4Aのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム、10%塩酸溶液、トルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。その結果、実施例4Aに変化は見られなかったが、比較例4Aでは外観に曇りが生じ、さらに成分の溶出が認めらた。
実施例4Aと比較例4Aの各コーティング膜の対候性を、サンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で評価した。評価開始後50時間後に各コーティング膜を目視観察すると、比較例4Aのコーティング膜は大きく退色し、一部に欠損が認められた。実施例4Aのコーティング膜の退色はわずかであった。以上より、本実施形態による、コーティング膜の耐薬品性および耐侯性の向上を確認できた。
<水分散性ウレタン樹脂>
(実施例5A)
水分散性ウレタン樹脂として、自己乳化性ウレタン樹脂の水分散エマルジョン(スーパーフレックス820、第一工業製薬(株)製、固形分30重量%、表1では「自己乳化性ウレタン樹脂」とする)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として両末端ポリイソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)を5重量%添加し、合成例1で得られたセルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、自然乾燥による脱溶媒後に、150℃で1時間加熱することで化学架橋して架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。結果を表12に示す。
(比較例5A)
実施例5Bにおいて、架橋成分を加えない以外は実施例5Bと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表12に示す。
(比較例5B)
実施例5Aにおいて、架橋成分を加えない以外は、実施例5Aと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表12に示す。
(比較例5C)
実施例5Bにおいて、分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例2と同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表12に示す。
(比較例5D)
比較例5Cにおいて、疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を添加しない以外は比較例3と同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表12に示す。
(比較例5E)
実施例5Aにおいて、未変性CNFを用いない以外は実施例5Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表12に示す。
(実施例5C及び比較例5F~5J)
実施例5A及び比較例5A~5Eにおいて、架橋成分としてカルボジライトに代えてTAIC(トリアリルイソシアヌレート)を用い、かつ架橋処理を化学架橋から、γ線を30kGy照射する物理架橋に代えた以外は、それぞれ実施例5A及び比較例5A~5Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表12に示す。
<自己架橋型水分散性ウレタン樹脂>
(実施例5E及び比較例5K~5O)
実施例5A及び比較例5A~5Eにおいて、自己乳化型ウレタン樹脂の水分散エマルジョンに代えて、自己架橋型水分散性ウレタン樹脂の水分散エマルジョン(エラストロン MF-25K、第一工業製薬(株)製、固形分25重量%、表12では「自己架橋型ウレタン樹脂」とする)を用いた。自己架橋型ウレタン樹脂の水分散エマルジョンのpHを炭酸水素ナトリウムを用いて、6.0に調整後、硬化触媒として有機スズ系触媒(CAT-21,第一工業製薬(株)製)を該エマルジョンの固形分重量に対して3%添加した以外は、それぞれ実施例5A及び比較例5A~5Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表12に示す。
<セルロースナノファイバー分散体X添加量の効果>
(実施例5G~5I)
実施例5Aにおいて、未変性セルロースナノファイバー分散体Xの添加量を3重量%(実施例5G)、5重量%(実施例5H)、10重量%(実施例5I)とした以外は、実施例5Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表12に示す。
Figure 0007120011000012
<紫外線照射による架橋(物理架橋)>
(実施例5J)
水分散性ウレタン樹脂として、自己乳化性ウレタン樹脂の水分散エマルジョン(スーパーフレックス820、第一工業製薬(株)製、固形分30重量%)を用い、重合開始剤としてトリアリールスルホニウム塩(試薬1級)を樹脂固形分換算で1重量%、および架橋成分(架橋助剤)として多官能エポキシモノマー(TG-G、四国化成工業(株)製)を5重量%、および前記セルロースナノファイバー分散体Xを5重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物のCNF分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無(CNF沈降性)を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、自然乾燥による脱溶媒後に、物理架橋として紫外線を1、000(mJ/cm)照射し架橋させ、クロムマスクによるパターニング生成により3次元架橋の有無を判定した。さらに、この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。結果を表13に示す。
(比較例5P、5Q)
実施例4Jにおいて、分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例4Jと同様に操作し(比較例5P)、比較例5Pにおいて、未変性セルロースナノファイバーを用いない以外は比較例5Pと同様に操作し(比較例5Q)、それぞれ分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表13に示す。
Figure 0007120011000013
以下の評価は、樹脂組成物からコーティング膜を形成した場合の、該コーティング膜の鉛筆硬度や耐擦傷性に関し、樹脂組成物全般の特性を評価するものではない。
表12、表13に示すように、実施例5A、5C、5E~5J及び比較例5A~5Qの、各水分散性ウレタン樹脂を含む分散体組成物について、架橋成分添加の有無、セルロースナノファイバー添加の有無、架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度、耐擦傷性)に与える影響を調べた。
一方、比較例5A~5Iのように、自己乳化型水分散性ウレタン樹脂に架橋成分を添加しないと、ゲルが生じず(架橋が生じず)、コーティング膜の特性は低くなった。また、比較例5K~5Nのように、水分散性ウレタン樹脂が自己架橋性であっても、硬化触媒を添加しないと、架橋が生じず、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性が低くなった。
また、比較例5B、5C、5G、5H、5L、5Mの、架橋を生じていない分散体組成物では、未変性セルロースナノファイバーおよび疎水変性セルロースナノファイバーのいずれを用いても、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性は、架橋が生じた分散体組成物かになるコーティング膜よりも低くなった。
また、水分散性ウレタン樹脂を用いかつセルロースナノファイバーを用いない場合は、架橋処理を行っても、コーティング膜は鉛筆硬度および耐擦傷性が低くなった(比較例5E、5J、5O)。このことから、水分散性ウレタン樹脂へのセルロースナノファイバーの添加による、コーティング膜の機械特性の向上を確認できた。
さらに表12から、セルロースナノファイバーを1~10重量%添加する、コーティング膜の特性は、セルロースナノファイバーを添加しないものまたは樹脂成分を架橋しないものに比べ十分に高くなった。特に5重量%の添加で十分な効果が得られた。
実施例5Aにおいて、分散剤(アロン A-6012)をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は実施例5Aと同様にして、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成、架橋処理および架橋後のコーティング膜の評価を行った。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例5Aと同等であった。上記2種の分散剤を用いても、架橋による効果およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
表13の、実施例5Jおよび比較例5P、5Qにおいて、重合開始剤と架橋成分を用いて水分散性ウレタン樹脂の光架橋の有無を調べた。実施例5Jによれば、水分散性ウレタン樹脂の紫外線照射による光重合を実施できた。また、比較例5P、5Qによれば、分散剤またはセルロースナノファイバーを添加しない場合でも架橋は生じるものの、ゲル分率はやや低く、架橋度が小さい。このことから、セルロースナノファイバーと樹脂成分間の架橋構造、またはセルロースナノファイバー同士の架橋構造が生じていると考えられる。また、実施例5Jにおいて、クロムマスクによるパターニングの生成から、当該分散体組成物がフォトレジスト材料として使用できることがわかった。
また、実施例5Aと比較例5Aのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム、10%塩酸溶液、トルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。その結果、実施例5Aに変化は見られなかったが、比較例5Aでは外観に曇りが生じ、さらに成分の溶出が認めらた。
実施例5Aと比較例5Aの各コーティング膜の耐候性を、サンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で評価した。評価開始後50時間後に各コーティング膜を目視観察すると、比較例5Aのコーティング膜は大きく退色し、一部が欠損していた。実施例5Aのコーティング膜は、僅かに退色しただけであった。以上より、本実施形態によるコーティング膜の耐薬品性および耐侯性の向上を確認できた。
<カチオン重合による光重合性樹脂(アクリレート樹脂)及びその硬化体の生成>
(実施例6A)
アクリレートモノマーとして、2-ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)製)の固形分40重量%の水溶液を調製した。このモノマーに対し、光重合開始剤としてα-ヒドロキシアセトフェノン(1-[4-(ヒドロキシエトキシ)-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン-1-オン、水溶性、IRGACURE2959、BASF社製)を1重量%添加し、合成例1で得られたセルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた水性分散体組成物の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
上記で得られた水性分散体組成物を、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成した。得られたスピンコート膜を、自然乾燥による脱溶媒後に、紫外線を1000(mJ/cm)照射し、コーティング膜の硬化体を形成した。このコーティング膜硬化体に水を滴下して溶解性の有無から重合の有無を目視判定した。さらにこのコーティング膜硬化体の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。結果を表14に示す。
(比較例6A)
実施例6Bにおいて、重合開始剤を加えない以外は実施例6Bと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および重合処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表14に示す。
(比較例6B)
実施例6Aにおいて、重合開始剤を加えない以外は、実施例6Aと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および重合処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表14に示す。
(比較例6C)
実施例6Bにおいて、分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例6Bと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び重合処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表14に示す。
(比較例6D)
比較例6Cにおいて、疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を添加しない以外は比較例6Cと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び重合処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表14に示す。
(比較例6E)
実施例6Aにおいて、未変性CNFを用いない以外は実施例6Aと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成及び重合処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表14に示す。
<光架橋性樹脂(エポキシ樹脂)の光重合開始剤による架橋>
(実施例6C及び比較例6F~6J)
実施例6A及び比較例6A~6Eにおいて、(B)樹脂成分をエポキシ樹脂(アデカレジン EM-0427WC、(株)アデカ製、固形分50重量%の水溶液)とし、光重合開始剤としてはIRGACURE2959に代えて芳香族ヨードニウム塩〔ヨードニウム(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロフォスフェート:プロピレンカーボネート=3:1(重量比)の混合物、TRUGACURE250、BASF社製)を用いた以外は、それぞれ実施例6A及び比較例6A~6Eと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表14に示す。
<カチオン重合による光重合性樹脂(オキセタン樹脂)及びその硬化体の生成>
(実施例6E及び比較例6K~6O)
実施例6C及び比較例6F~6Jにおいて、樹脂成分をオキセタンモノマー(3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、OXT-101、東亜合成(株)製、水溶性)の固形分40重量%の水溶液を調製した以外は、それぞれ実施例6C及び比較例6F~6Jと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および重合処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表14に示す。
<光架橋性樹脂(ビニルエーテルポリマー)の光重合開始剤による架橋>
(実施例6G及び比較例6P~6T)
実施例6C及び比較例6F~6Jにおいて、(B)樹脂成分を水溶性ビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテル、試薬、和光純薬工業(株)製、固型分50重量%の水溶液)とした以外は、それぞれ実施例6C及び比較例6F~6Jと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および重合処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表14に示す。
<セルロースナノファイバー分散体X添加量の効果>
(実施例6I~6K)
実施例1において、未変性セルロースナノファイバー分散体Xの添加量を3重量%(実施例6I)、5重量%(実施例6J)、10重量%(実施例6K)とした以外は、実施例6Aと同様に操作し、水性分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および重合処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表14に示す。
<パターニング生成について(物理架橋)>
(実施例6L、比較例6U,6V)
アクリレートモノマーとして、2-ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)製)を用いた。このモノマーに対し、光重合開始剤としてα-ヒドロキシアセトフェノン(1-[4-(ヒドロキシエトキシ)-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン-1-オン、IRGACURE2959、BASF社製)を1重量%、および架橋成分としてポリエチレングリコールジアクリレート(NKエステル、A-400、新中村化学工業(株)製)を5重量%添加し、合成例1で得られたセルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物を、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、自然乾燥で溶媒を除去した。次いで、脱溶媒後のコーティング膜にクロムマスクを介して紫外線を1000(mJ/cm)照射し、コーティング膜の硬化体を形成した。この硬化体を温水で洗浄して現像し、パターニング生成の有無を目視判定した。パターン全体が明確に視認できるものを「◎」、パターンの形成が部分的に視認できるものを「○」、パターンの輪郭が不明瞭であるものを「△」、及びパターンの形成が全く視認できないものを「×」と判定した。結果を表15に示す。
Figure 0007120011000014
Figure 0007120011000015
以下の評価は、樹脂組成物からコーティング膜を形成した場合の、該コーティング膜の鉛筆硬度や耐擦傷性に関し、樹脂組成物全般の特性を評価するものではない。
表14、表15に示すように、実施例6A、6C、6E、6G、6I~6L及び比較例6A~6Vの、光重合性樹脂を含む分散体組成物について、紫外線照射によるラジカル重合またはカチオン重合、光重合開始剤添加の有無、架橋成分添加の有無、セルロースナノファイバー添加の有無、分散剤添加の有無、セルロースナノファイバーの添加量、架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度及び耐擦傷性)に与える影響を調べた。
表14から、モノマー。オリゴマー、樹脂といった水分散性光重合性樹脂の種類に関係なく、セルロースナノファイバーの予備分散体および光重合開始剤を添加した分散体組成物では、セルロースナノファイバーの分散性は良好でかつ分散安定性が高いことがわかった。さらに、各分散体組成物に紫外線を照射すると、ラジカル重合またはカチオン重合が進行することがわかった(実施例6A、6C、6E、)。
較例6A~6D、6F~6Iのように、光重合性樹脂に光重合開始剤を添加しないと、重合が生じず、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性が低くなった。
また、比較例6B、6C、6G、6H、6L、6M、6Q、6Rのように、重合していない分散体組成物では、未変性セルロースナノファイバーおよび/または疎水変性セルロースナノファイバーを添加しても、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性は、重合した分散体組成物からなるコーティング膜よりも低くなった。
また、光重合性樹脂を用いかつセルロースナノファイバーを添加しない場合は、架橋処理を行っても、各コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性が低くなった(比較例6E、6J、6O、6T)。このことから、光重合性樹脂へのセルロースナノファイバーの添加による、コーティング膜の機械特性の向上を確認できた。
さらに表14から、セルロースナノファイバーを1~10重量%添加すると、コーティング膜の特性が、セルロースナノファイバーを添加しないものまたは樹脂成分を架橋しないものに比べ十分に高くなった。特に5重量%の添加で十分な効果が得られた(実施例6I、6J、6K)。
実施例6Aにおいて、分散剤(アロン A-6012)をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は、実施例6Aと同様にして、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成、重合処理の実施、および重合後のコーティング膜の評価を行った。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、重合の有無、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例6Aと同等であった。したがって、上記2種の分散剤を用いても、重合による効果およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
表15の、実施例6K、および比較例6U、6Vにおいて、重合開始剤と架橋成分を用いて光重合性樹脂の架橋の有無を調べた。実施例6Kによれば、紫外線照射による光重合性樹脂の光重合を実施できた。比較例6U、6Vによれば、分散剤またはセルロースナノファイバーを添加しない場合でも光重合は起こるものの、ゲル分率はやや低く、架橋度が小さくなった。このことは、セルロースナノファイバーと樹脂成分間の架橋またはセルロースナノファイバー同士の架橋の生成を示唆する。また、実施例6Lにおける、クロムマスクによるパターニングの生成から、その分散体組成物をフォトレジスト材料として使用できること、さらにはマテリアルジェッティング方式やバインダージェッティング方式、光造形方式などの3Dプリンタ用材料として有望であることがわかった。
また、実施例6Aと比較例6Aのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム、10%塩酸溶液、トルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。その結果、実施例6Aに変化は見られなかったが、比較例6Aでは外観に曇りが生じ、さらに成分の溶出が認められた。
実施例6Aと比較例6Bの各コーティング膜の耐候性を、サンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で評価した。試験開始後50時間後に各コーティング膜を目視観察すると、比較例6Bのコーティング膜は大きく退色し、一部欠損していた。実施例6Aのコーティング膜はわずかな退色がみられるだけであった。以上より、本実施形態による、コーティング膜の耐薬品性および耐侯性の向上が確認できた。
以下に、水分散性含窒素熱硬化性樹脂の測定試料作製および特性値を測定した実施例を示す。なお、水分散性含窒素熱硬化性樹脂の架橋成分は、水に可溶であるものを前提として選定した。また、文中の重量%はすべて固形分換算とした。以下の実施例では、水分散性含窒素熱硬化性樹脂のうち、アミノ樹脂、エチレンイミン樹脂を分けて示す。
(実施例7A)
水分散性アミノ樹脂として、メチル化メラミン樹脂(ニカラック MX-035、(株)三和ケミカル製、固形分70重量%、表1では「MM樹脂」と表記する。)を使用した。精製水を用いて固形分濃度20重量%の水溶液を調製し、(D)架橋成分としてポリビニルアルコール樹脂(ポバール PVA-205、(株)クラレ製、以下「PVA」と表記する。)を5重量%および酸触媒(p-トルエンスルホン酸アミド、キシダ化学(株)製)を1重量%添加し、合成例1で得られたセルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上に、バーコーターにより、100×200mmのサイズで厚さ5μmのコーティング膜を形成し(速度3m/分)、自然乾燥による脱溶媒後に、170℃で20分加熱することで化学架橋して架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。
また、上記の脱溶媒後のコーティング膜にクロムマスクを介して紫外線を1000(mJ/cm)照射し、コーティング膜の硬化体を形成した。この硬化体を温水で洗浄して現像し、パターニング生成の有無を目視判定した。パターン全体が明確に視認できるものを「◎」、パターンの形成が部分的に視認できるものを「○」、パターンの輪郭が不明瞭であるものを「△」、及びパターンの形成が全く視認できないものを「×」と判定した。結果を表16に示す。
(比較例7A)
実施例7Bにおいて、架橋成分を加えない以外は実施例7Bと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表16に示す。
(比較例7B)
実施例7Aにおいて、架橋成分を加えない以外は、実施例7Aと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表16に示す。
(比較例7C)
実施例7Bにおいて、分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例7Bと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表16に示す。
(比較例7D)
比較例7Cにおいて、疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を添加しない以外は比較例7Cと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表16に示す。
(比較例7E)
実施例7Aにおいて、未変性CNFを用いない以外は実施例7Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表16に示す。
(実施例7Cおよび比較例7F~7J)
実施例7Aおよび比較例7A~7Eにおいて、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC、日本化成(株)製)を5重量%添加し、かつ架橋処理を化学架橋から、紫外線を1000(mJ/cm2)照射する物理架橋に代えた以外は、それぞれ実施例7Aおよび比較例7A~7Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表16に示す。
(実施例7Eおよび比較例7K~7O)
実施例7Aおよび比較例7A~7Eにおいて、アミノ樹脂として、メチル化メラミン樹脂に代えてアルキル化尿素樹脂(ニカラック MX-270、(株)三和ケミカル製、表1では「尿素樹脂」と表記する。)を用いる以外は、それぞれ実施例7Aおよび比較例7A~7Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表16に示す。
(実施例7Gおよび比較例7P~7T)
実施例7Aおよび比較例7A~7Eにおいて、アミノ樹脂として、メチル化メラミン樹脂に代えてグリオキザール樹脂(ニカラック BL-60、(株)三和ケミカル製、表1では「GO樹脂」と表記する。)を用いる以外は、それぞれ実施例7Aおよび比較例7A~7Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表16に示す。
(実施例7Iおよび比較例7U~7Y)
実施例7Aおよび比較例7A~7Eにおいて、アミノ樹脂として、メチル化メラミン樹脂に代えてメチル化ベンゾグアナミン樹脂(ベッカミン NS-11、DIC(株)製、表16では「BG樹脂」と表記する。)を用いる以外は、それぞれ実施例7Aおよび比較例7A~7Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表17に示す。
(実施例7Kおよび比較例7Z1~7Z5)
実施例7Aおよび比較例7A~7Eにおいて、メチル化メラミン樹脂に代えてエチレンイミン樹脂(ポリエチレンイミン 7000、純正化学(株)製、表1では「EI樹脂」と表記する。)を用いる以外は、それぞれ実施例7Aおよび比較例7A~7Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表17に示す。
<セルロースナノファイバー分散体X添加量の効果>
(実施例7M~7O)
実施例7Aにおいて、未変性セルロースナノファイバー分散体Xの添加量を3重量%(実施例7M)、5重量%(実施例7N)、10重量%(実施例7O)とした以外は、実施例1と同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後にゲル化の有無を判定するとともにゲル分率を求め、さらにコーティング膜の鉛筆硬度と耐擦傷性および架橋によるパターニング生成の有無を評価した。結果を表17に示す。
Figure 0007120011000016
Figure 0007120011000017
表16に示すように、実施例7A、7C、7E、7G、7I、7K、7M~7Oおよび比較例7A~7Z5の、水分散性含窒素樹脂を含む分散体組成物について、架橋成分添加の有無、セルロースナノファイバー添加の有無、分散剤添加の有無、架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度、耐擦傷性)、およびクロムマスクによるパターニング生成に与える影響を調べた。
表16から、アミノ樹脂またはエチレンイミン樹脂を含み、セルロースナノファイバー
の予備分散体および架橋成分を添加した分散縦組成物で、セルロースナノファイバーの分散性は良好でかつ分散安定性が高いことがわかった。さらに各分散体組成物を物理架橋または化学架橋すると、ゲル分率が90%以上になり、架橋が十分に進んでいることが確認できた(実施例7A、7C、7E、7G、7I、。アミノ樹脂を含む分散体組成物(比較例7A~7D、比較例7F~7I、比較例7K~7N、比較例7P~7S、比較例7U~7X)、またはエチレンイミン樹脂を含む分散体組成物(比較例7Z1~7Z4)に架橋成分を添加しないと、ゲルが生じず(架橋が生じず)、コーティング膜の特性は低くなった。
また、比較例7A~7D、比較例7F~7I、比較例7K~7N、比較例7P~7S、比較例7U~7X、及び比較例7Z1~7Z4のように、架橋を生じていない分散縦組成物では、未変性セルロースナノファイバーまたは疎水変性セルロースナノファイバーを添加しても、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性は、架橋が生じた分散体組成物からなるコーティング膜よりも低くなった。
また、アミノ樹脂またはエチレンイミン樹脂を用い、かつセルロースナノファイバーを添加しない場合は、架橋処理後のコーティング膜は、鉛筆硬度および耐擦傷性が低くなった(比較例7E、7J、7O、7T、7Y、7Z5)。このことから、アミノ樹脂またはエチレンイミン樹脂へのセルロースナノファイバーの添加による、コーティング膜の機械特性の向上を確認できた。
さらに実施例7M~7Oから、セルロースナノファイバーを1~10重量%添加すると、コーティング膜の鉛筆硬度、および耐擦傷性は、セルロースナノファイバーを添加しないものまたは樹脂成分を架橋しないものに比べ十分に高くなった。特に5重量%の添加でほぼ飽和値に達しており、セルロースナノファイバーの添加量としては5重量%であれば十分な効果が得られた。また、各分散体組成物においてパターニングの生成を確認した。
また、実施例7A、7C、7E、7G、7I、7K、7Mにおいて、クロムマスクによるパターニングが明確に確認できた。しかしながら、セルロースナノファイバー添加量の多い実施例7N、7O、および分散剤を添加しない比較例7E、7J、7O、7T、7Y、7Z5ではパターンの明瞭性が少し損なわれた。さらに架橋成分を含まない比較例7A~7D、7F~7I、7K~7N、7P~7S、7U~7X、および7Z1~7Z5ではパターンの生成が見られなかった。このことから、アミノ樹脂またはエチレンイミン樹脂にセルロースナノファイバーを添加すると明瞭なパターンが生成すること、架橋によりパターンがさらに明瞭化すること、およびセルロースナノファイバーを1~3重量%添加すると明瞭なパターンが生成することがわかった。
実施例7Aにおいて、分散剤(アロン A-6012)をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は、実施例7Aと同様にして、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成、架橋処理、および架橋処理後の評価を行った。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例7Aと同等であった。したがって、上記2種の分散剤を用いても、架橋による効果およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
また、実施例7Aおよび比較例7Aのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム、10%塩酸溶液、トルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。その結果、実施例7Aに変化は見られなかったが、比較例7Aでは外観に曇りが生じ、さらに成分の溶出が認めらた。また、実施例7Aおよび比較例7Aの各コーティング膜の耐候性を、サンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で評価した。評価開始後50時間後に各コーティング膜を目視観察すると、比較例7Aのコーティング膜は大きく退色し、一部が欠損していた。実施例7Aのコーティング膜はわずかに退色するのみであった。以上より、本実施形態によるコーティング膜の耐薬品性および耐侯性の向上を確認できた。
以下に、水溶性バイオマス由来樹脂の測定試料作製および特性値を測定した実施例を示す。なお、水溶性バイオマス由来樹脂の架橋成分は、水に可溶であるものを前提として選定した。また、文中の重量%はすべて固形分換算とした。
(実施例8A)
水溶性バイオマス由来樹脂として、水溶性でんぷん樹脂(コーンポールL‐1、日本コーンスターチ(株)、以下「ST樹脂」とも呼ぶ。)のペレットを用い、このペレットを平均粒径50μmの粉体に粉砕した。
メディアレス分散機として、(株)広島メタル&マシナリー製のK―2(アペックスディスパーサーZERO)を用いて、(A)セルロースナノファイバーとして未変性セルロースナノファイバー(BiNFi-s、(株)スギノマシン製)を1重量%、分散剤としてアクリルスルホン酸系分散剤(アロン A-6012、東亞合成(株)製)を未変性セルロースナノファイバーの固形分換算で5重量%、およびバイオマス自体を由来とする樹脂として、でんぷん樹脂(コーンポールL‐1、日本コーンスターチ(株))を20重量%、および架橋成分としてポリビニルアルコール樹脂(ポバール PVA-205、(株)クラレ製、以下「PVA」と表記することがある。)を5重量%、および酸触媒(p-トルエンスルホン酸アミド、キシダ化学(株)製)を1重量%添加し、残分を精製水とした混合溶液を、前記メディアレス分散機に投入し、5回メディアレス分散処理を繰り返し、未変性セルロースナノファイバー及びでんぷん樹脂が分散した分散体組成物を調製した。
得られた分散体組成物の分散性(CNF分散性)を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無(CNF沈降安定性)を目視観察した。分散性(CNF分散性)については、全体に白濁し、白色性の濃淡を生じていないものを「○」と評価し、部分的にでも白色性の濃淡を生じているものを「×」と評価した。また、CNF沈降安定性については、24時間静置後も(A)セルロースナノファイバーの沈降が生じないものを「○」と評価し、24時間静置後に僅かでも(A)セルロースナノファイバーの沈降が生じるものを「×」と評価した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上に、バーコーターにより、100×200mmのサイズで厚さ5μmのコーティング膜を形成し(速度3m/分)、自然乾燥による脱溶媒後に、170℃で20分加熱することで化学架橋して架橋させた。この樹脂架橋体からなるコーティング膜の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。
また、上記と同様にして脱溶媒まで行なった後のコーティング膜にクロムマスクを介して紫外線を1000(mJ/cm)照射し、コーティング膜の樹脂架橋体である硬化体を形成した。この硬化体を温水で洗浄して現像し、パターニング生成の有無を目視判定した。パターン全体が明確に視認できるものを「◎」、パターンの形成が部分的に視認できるものを「○」、パターンの輪郭が不明瞭であるものを「△」、及びパターンの形成が全く視認できないものを「×」と判定した。結果を表18に示す。
(比較例8A)
実施例8Bにおいて、架橋成分を加えない以外は実施例8Bと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表18に示す。
(比較例8B)
実施例8Aにおいて、架橋成分を加えない以外は、実施例8Aと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表18に示す。
(比較例8C)
実施例8Bにおいて、分散剤を添加せずにさらに未変性セルロースナノファイバーのうち30重量%を、疎水変性セルロースナノファイバーに置き換える以外は実施例8Bと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表18に示す。
(比較例8D)
比較例8Cにおいて、疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を添加しない以外は比較例8Cと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表18に示す。
(比較例8E)
実施例8Aにおいて、未変性セルロースナノファイバーを用いない以外は実施例8Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表18に示す。
(実施例8Cおよび比較例8F~8J)
実施例8Aおよび比較例8A~8Eにおいて、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC、日本化成(株)製)を5重量%添加し、かつ架橋処理を化学架橋から、紫外線(1,000mJ/cm2)を照射する物理架橋に代えた以外は、それぞれ実施例8Aおよび比較例8A~8Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表18に示す。
(実施例8Eおよび比較例8K~8O)
水溶性バイオマス由来樹脂として、バイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂であるポリ乳酸樹脂(Ingeo Biopolymer 3001D、Nature Works社製、以下「PL樹脂」とも呼ぶ。)を用いて、以下の手順でポリ乳酸樹脂の水分散液を調製した。
ポリ乳酸樹脂のペレットを冷凍粉砕した平均粒径60μmの粉体とした樹脂20重量%、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.4重量%を精製水に添加して、ホモジナイザー(ウルトラタラックス T25、IKA社製)にて、2,000rpmで10分間攪拌、混合してポリ乳酸樹脂の水分散液を得た。
実施例8Aおよび比較例8A~8Eにおいて、水溶性バイオマス由来樹脂として、水溶性でんぷん樹脂に代えて、バイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂である前記ポリ乳酸樹脂水分散液を用いる以外は、それぞれ実施例8Aおよび比較例8A~8Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表18に示す。
(実施例8Gおよび比較例8P~8T)
実施例8Eおよび比較例8K~8Oにおいて、水溶性バイオマス由来樹脂として、ポリ乳酸樹脂分散液を用い、架橋成分としてPVAに代えて多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC、日本化成(株)製)を5重量%添加し、かつ架橋処理を化学架橋から、紫外線(1000mJ/cm)を照射する物理架橋に代えた以外は、それぞれ実施例8Eおよび比較例8K~8Oと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表18に示す。
<(A1)未変性セルロースナノファイバー添加量の効果>
(実施例8I~8K)
実施例8Aにおいて、未変性セルロースナノファイバーの添加量を3重量%(実施例8I)、5重量%(実施例8J)、10重量%(実施例8K)とした以外は、実施例8Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後にゲル化の有無を判定するとともにゲル分率を求め、さらにコーティング膜の鉛筆硬度と耐擦傷性および架橋によるパターニング生成の有無を評価した。結果を表18に示す。
Figure 0007120011000018
以下の評価は、実施例で得られた樹脂組成物(分散体組成物)からなるコーティング膜の鉛筆硬度や耐擦傷性に関し、本実施形態の樹脂組成物全般の特性を評価するものではない。
表18に示す、実施例8A、8C、8E、8G、8I~8Kおよび比較例8A~8Tの、水溶性バイオマス由来樹脂を含む分散体組成物について、架橋成分添加の有無、セルロースナノファイバー添加の有無、分散剤添加の有無、架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度、耐擦傷性およびクロムマスクによるパターニング生成に与える影響を調べた。
表18から、バイオマス自体を由来とする樹脂およびバイオマス由来の重合性モノマーからなる樹脂は、セルロースナノファイバー、分散剤、および架橋成分を同時に投入し、ビーズレスミル分散機で混合する場合には、セルロースナノファイバーの分散性が良好でかつ分散安定性が高い分散体組成物が得られることがわかった。さらに各分散体組成物を物理架橋または化学架橋すると、ゲル分率が90%以上であり、架橋が十分に進んでいることを確認できた(実施例8A~8K)。
んぷん樹脂(比較例8A~8D、比較例8F~8I)またはポリ乳酸樹脂(比較例8K~9N、比較例8P~8S)を含む分散体組成物は、架橋成分を添加しないとゲルが生じず(架橋が生じず)、コーティング膜の所定の特性が得られない。
また、比較例8A~8D、比較例8F~8I、比較例8K~8N、比較例8P~8Sから、未架橋でありかつ未変性セルロースナノファイバーまたは疎水変性セルロースナノファイバーを含む分散体組成物からなるコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性は、架橋を生じた分散体組成物からなるコーティング膜よりも低くなった。
また、でんぷん樹脂またはポリ乳酸樹脂を含みかつセルロースナノファイバーを含まない分散体組成物は、架橋処理を行っても、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性が低かった(比較例8E、8J、8O、8T)。このことから、バイオマス由来樹脂へのセルロースナノファイバーの添加による、コーティング膜の機械特性の向上を確認できた。
さらに実施例8I~8Kから、セルロースナノファイバーを1~10重量%添加すると、コーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性は、未変性セルロースナノファイバーを添加しないものおよび樹脂成分を架橋しないものに比べ十分に高いことがわかった。特に5重量%の添加で十分な効果が得られた。また、実施例8I~8Kではパターニングの生成が確認された。
また、実施例8A、8C、8E、8G、8Iでは、クロムマスクによるパターニングが明確に確認できた。未変性セルロースナノファイバー添加量の多い実施例8J、8Kでは、パターンの明瞭性がやや損なわれたが、実用上十分な範囲であった。また、セルロースナノファイバーを添加しない比較例8E、8J、8O、8Tではパターンの明瞭性が比較的大きく損なわれた。さらに架橋成分を含まない比較例8A~8D、8F~8I、8K~8N、8P~8Sではパターンが生成しなかった。このことから、バイオマス由来樹脂にセルロースナノファイバーの添加、例えば1~3重量%の添加により明瞭なパターンが生成すること、および架橋処理によりパターンが一層明瞭化することがわかった。
実施例8Aにおいて、分散剤(アロン A-6012)をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は実施例8Aと同様にして、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成、架橋処理、および架橋後のコーティング膜の評価を行った。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例8Aと同等であった。したがって、上記2種の分散剤を用いても、架橋による効果およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
以下に、水分散性ポリシロキサンの測定試料作製および特性値を測定した実施例を示す。なお、水分散性ポリシロキサンの架橋成分は、水に可溶であるものを前提として選定した。また、文中の重量%はすべて固形分換算とした。
(実施例9A)
水分散性ポリシロキサン(水分性変性ポリシロキサン(II))として、アクリル変性シリコーン樹脂(セラネート WSA-1070、DIC(株)固形分40重量%、を使用した。精製水を用いて固形分濃度20重量%の水溶液を調製し、(D)架橋成分としてカルボジイミド化合物(カルボジライト V-02-L2、日清紡ケミカル(株)製、固形分40重量%の水溶液、以下「カルボジイミド」と表記)を固形分換算で10重量%添加し、合成例1で得られたセルロースナノファイバー分散体Xを固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。得られた分散体組成物の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上に、バーコーターにより、100×200mmのサイズで厚さ5μmのコーティング膜を形成し(速度3m/分)、自然乾燥による脱溶媒後に、170℃で20分加熱することで化学架橋して架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度および耐擦傷性を測定した。結果を表19に示す。
(比較例9A)
実施例9Bにおいて、架橋成分を加えない以外は実施例9Bと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表19に示す。
(比較例9B)
実施例9Aにおいて、架橋成分を加えない以外は、実施例0Aと同様に操作し、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表19に示す。
(比較例9C)
実施例9Bにおいて、分散体Xに代えて分散体Yを用いる以外は実施例9Bと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。結果を表19に示す。
(比較例9D)
比較例9Cにおいて、疎水変性セルロースナノファイバー(疎水変性CNF)を添加しない以外は比較例9Cと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表19に示す。
(比較例9E)
実施例9Aにおいて、未変性CNFを用いず分散剤も用いない以外は実施例9Aと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行なった。結果を表19に示す。
(実施例9Cおよび比較例9F~9J)
実施例9Aおよび比較例9A~9Eにおいて、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート、TAIC、日本化成(株)製)を5重量%添加し、かつ架橋処理を化学架橋から、紫外線を1000(mJ/cm)照射する物理架橋に代えた以外は、それぞれ実施例9Aおよび比較例9A~9Eと同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後に同様の評価を行った。結果を表19に示す。
また、実施例9Cおよび比較例9F~9Jのコーティング膜にクロムマスクを介して紫外線を1000(mJ/cm)照射し、コーティング膜の硬化体を形成した。この硬化体を温水で洗浄して現像し、パターニング生成の有無を目視判定した。パターン全体が明確に視認できるものを「◎」、パターンの形成が部分的に視認できるものを「○」、パターンの輪郭が不明瞭であるものを「△」、及びパターンの形成が全く視認できないものを「×」と判定した。結果を表19に示す。
<セルロースナノファイバー分散体X添加量の効果>
(実施例9E~9G)
実施例1において、未変性セルロースナノファイバー分散体Xの添加量を固形分換算で3重量%(実施例9E)、5重量%(実施例9F)、10重量%(実施例9G)とした以外は、実施例1と同様に操作し、分散体組成物の調製、コーティング膜の形成および架橋処理を行い、その後にゲル化の有無を判定するとともにゲル分率を求め、さらにコーティング膜の鉛筆硬度と耐擦傷性および架橋によるパターニング生成の有無を評価した。結果を表19に示す。
なお。下記表19では、アクリル変性シリコーン樹脂(セラネート WSA-1070)を「AMPS樹脂」と表記する。また、カルボジイミドを「CBDI」と表記する。
Figure 0007120011000019
以下の評価は、分散体組成物からなるコーティング膜の鉛筆硬度や耐擦傷性に関し、分散体組成物(樹脂組成物)全般の特性を評価するものではない。
表19に示すように、実施例9Aおよび比較例9A~9Jの、水分散性変性ポリシロキサンを含む分散体組成物について、架橋成分添加の有無、セルロースナノファイバー添加の有無、分散剤添加の有無、架橋の有無が、コーティング膜の物性(鉛筆硬度、耐擦傷性)に及ぼす影響、および紫外線架橋の場合に、セルロースナノファイバー添加の有無がクロムマスクによるパターニング生成に及ぼす影響を調べた。
表19から、水分散性変性ポリシロキサンである変性ポリシロキサン樹脂、セルロースナノファイバーの予備分散体および架橋成分を含む分散体組成物で、セルロースナノファイバーの分散性は良好でかつ分散安定性が高いことがわかった。さらに各分散体組成物を物理架橋または化学架橋すると、ゲル分率が90%以上であり、架橋が十分に進んでいることを確認できた(実施例9A)。
実施例9E~9Gから、セルロースナノファイバーを1~10重量%添加したコーティング膜の鉛筆硬度、および耐擦傷性は、セルロースナノファイバーを添加しないものまたは樹脂成分を架橋しないものに比べ十分に高いことがわかった。特に5重量%の添加で十分な効果が得られた。また、いずれの分散体組成物もパターニングの生成を確認した。
実施例9Cでは、紫外線架橋後にクロムマスクによるパターニングが明確に確認できた。架橋成分を含まない比較例9F~9Iではパターンの生成が見られず、セルロースナノファイバーを含まない比較例9Jでは、紫外線架橋後にパターニングの明瞭性がやや損なわれた。このことから、水分散性変性ポリシロキサンへのセルロースナノファイバーの添加により明瞭なパターンが生成すること、および該パターンの一層の明瞭化には紫外線照射による架橋処理が有効であること、がわかった。
実施例9Aにおいて、分散剤(アロン A-6012)をメタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は、実施例9Aと同様にして、分散剤組成物の調製、コーティング膜の形成、架橋処理、および架橋後のコーティング膜の評価を行なった。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、ゲル化の有無、ゲル分率、鉛筆硬度、耐擦傷性は、実施例9Aと同等であった。この結果から、上記2種の分散剤を用いても、架橋による効果およびセルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
実施例9Aおよび比較例9Aのコーティング膜上に10%水酸化ナトリウム水溶液、10%塩酸水溶液、およびトルエンをそれぞれ精密シリンジにて0.05ml滴下し、室温で24時間放置後に精製水で洗浄し、コーティング膜の状態を観察した。その結果、実施例9Aに変化は見られなかったが、比較例9Aでは外観に曇りが生じ、さらに成分の溶出が認めらた。
実施例9Aおよび比較例9Aのコーティング膜の耐候性を、サンシャインウエザーメーターにて、63℃、降雨時間12分/60分の条件で評価した。評価開始後50時間後に各コーティング膜を目視観察すると、比較例9Aのコーティング膜は大きく退色し、一部が欠損していた。実施例9Aのコーティング膜は、僅かに退色したのみであった。以上より、本実施形態によるコーティング膜の耐薬品性および耐侯性の向上を確認できた。
さらに、実施例9A、9C、9E~9G、比較例9A~9Jと同じ組成で、セルロースナノファイバー、水分散性ポリシロキサン、分散剤、架橋成分を、メディアレス分散機(商品名:アペックスディスパーザー ZERO、(株)広島メタル&マシナリー製)を用いて、一段で混合した分散体組成物を調製し、コーティング膜の形成および架橋処理を行ない、その後に同様の評価を行った。セルロースナノファイバー分散性、沈降安定性、架橋処理によるゲル化(硬化)、ゲル分率、コーティング膜の鉛筆硬度、耐擦傷性、及びパターニング生成は、表19に示す実施例9A、9C、9E~9G、比較例9A~9Jと同等どあった。この結果から、上記の一段で混合する方法でも、セルロースナノファイバー分散性および沈降安定性の高い水分散性ポリシロキサン樹脂組成物が得られ、該樹脂組成物からなるコーティング膜の特性が実施例9A、9C、9E~9Gのコーティング膜と同等であることがわかった。
(実施例10A~10B、比較例10A~10D)
メディアレス分散機として、(株)広島メタル&マシナリー製のK―2(アペックスディスパーサーZERO)を用い、分散媒としての精製水、セルロースナノファイバーの原料であるセルロースおよび分散剤を分散したスラリー状物を当該メディアレス分散機に投入して回転周速30m/sで循環させ、せん断によりセルロースの分散を促進させて、分散が安定したセルロースナノファイバーを得た。
上記の装置を用いて、セルロースナノファイバー原料(BiNFi-s、スギノマシン製)を0.1重量%、分散剤としてアクリルスルホン酸系分散剤(アロン A-6012、東亞合成(株)製)をセルロースナノファイバーの固形分換算で10重量%添加した水分散液について5回メディアレス分散処理を繰り返し、セルロースナノファイバー分散体を調製した。得られた分散体のゼータ電位は-39.67mVおよび粉末の嵩密度は119g/L、繊維径は20~50nmであった。得られた分散体を凍結乾燥用容器に収容し、-80℃で凍結した後、凍結乾燥機(東京理化機械(株)製、FD-1)で凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を粉砕機で粉砕し、粉末状のセルロースナノファイバーを得た。実施例、比較例で用いた各種の分散剤の種類は、前掲したとおりである。
上記の粉末状のセルロースナノファイバーを、ナイロン11樹脂(アルケマ(株)製、リルサンHT CMNO、溶解度パラメーター 10.2(cal/cm1/2)に対して0.45重量%、架橋成分としてTAIC(トリアリルイソシアネート、日本化成(株)製)を9重量%、酸化防止剤としてイルガノックス1035(BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.6重量%になるように配合し、2軸の混練押出装置((株)プラスチック工学研究所社製「BT―30」、L/D=30)にてセルロースナノファイバーと樹脂を複合化した後、射出成形にて試験片を成形した。その後、化学架橋の場合は、150℃で1時間保持し、物理架橋の場合はガンマ線を30kGy照射した。
その後、各試験片を島津オートグラフ(AGX-Plus、(株)島津製作所製)にて機械特性を評価した。また、成形物の動的粘弾性をRheogel E-4000((株)ユービーエム製)をもちいて、引張モードで荷重50gにて正弦波振幅を与え、-100~250℃、昇温速度2℃/分にて測定した。また、成形物のゲル分率(架橋度)を、メタノールを用いて常温で24時間抽出した際の残渣物を100℃で2時間乾燥して重量を測定し、抽出前後の重量比から求めた。結果を表20に示す。
(実施例10C~10D、比較例10E~10H)
実施例10A~10B、比較例10A~10Dにおいて、樹脂成分としてナイロン11樹脂をナイロン6/66樹脂(アミラン CM6041XF、東レ(株)製、溶解度パラメーター 11.6(cal/cm1/2)とした以外は同様に操作して、得られた成形体の引張強さ、引張弾性率、引張破断伸び及びtanδピークを測定すると共に、ゲル分率(架橋度)を求めた。結果を表20に示す。分散体のゼータ電位は-40.24mVおよび粉末の嵩密度は118 g/L、繊維径は20~50nm以下であった。
(実施例10E~10F、比較例10I~10L)
実施例10A~10B、比較例10A~10Dにおいて、樹脂成分としてナイロン11樹脂に代えてナイロン6/12樹脂(アミラン CM6541X3、東レ(株)製、溶解度パラメーター11.6(cal/cm1/2)に、架橋成分としてTAICに代え、混練温度を50℃下げ、架橋温度を125℃とした以外は同様に操作して、引張強さ、引張弾性率、引張破断伸び及びtanδピークを測定すると共に、ゲル分率(架橋度)を求めた。結果を表20に示す。得られた分散体のゼータ電位は-40.24mVおよび粉末の嵩密度は118g/L、繊維径は20~50nmであった。
(実施例10G~10H、比較例10M~10P)
実施例10A~10B、比較例10A~10Dにおいて、セルロースナノファイバーとして上記未変性セルロースナノファイバー粉体(分散剤を含む)に代えて、疎水変性セルロースナノファイバー(T-NP101、星光PMC(株)製)に代えた以外は同様に操作して、引張強さ、引張弾性率、引張破断伸び及びtanδピークを測定すると共に、ゲル分率(架橋度)を求めた。結果を表20に示す。得られた分散体のゼータ電位は-38.56mVおよび粉末の嵩密度125 g/L、繊維径は20~50nmであった。
Figure 0007120011000020
表20から、樹脂成分として未変性のポリアミド樹脂を用いると、機械特性(引張強さ及び引張弾性率)、耐熱性(tanδピーク温度)が架橋処理およびCNF(セルロースナノファイバー)の添加により、それぞれ高くなっていることが分かる。これは未変性セルロースナノファイバー、又は疎水変性セルロースナノファイバー共に同様である。
実施例10A、比較例10Bにおいて、分散剤をアクリルスルホン酸系分散剤(アロン A-6012、東亞合成(株)製)から、メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は実施例10A、比較例10Aと同様にして分散体を得、評価を行った。未変性セルロースナノファイバーの分散性、沈降安定性、ゲル分率、耐衝撃性はそれぞれ実施例10A、比較例10Aと同等の結果であり、いずれも架橋の効果および未変性セルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
(比較例10Q~10R)
実施例10Aにおいて、樹脂成分を、ポリエチレン(溶解度パラメーター7.9(cal/cm1/2)(比較例10Q)またはポリアクリロニトリル(溶解度パラメーター14.8(cal/cm1/2)(比較例10R)に変更し、かつ分散剤の添加量を1重量%とする以外は実施例10Aと同様にして分散体を作製した。この分散体を熱プレスして得られたフィルムを目視評価すると、いずれも、セルロースナノファイバーの凝集体が確認された。
(実施例11A~11D、比較例11A~11F)
メディアレス分散機として、(株)広島メタル&マシナリー製のK―2(アペックスディスパーサーZERO)を用い、分散媒としての精製水、セルロースナノファイバーの原料であるセルロースおよび分散剤を分散したスラリー状物を当該メディアレス分散機に投入して回転周速30m/sで循環させ、せん断によりセルロースの分散を促進させて、分散が安定したセルロースナノファイバーを得た。
すなわち、上記の装置を用いて、セルロースナノファイバー原料(BiNFi-s、スギノマシン製)を0.1重量%、分散剤としてアクリルスルホン酸系分散剤(アロン A-6012、東亞合成(株)製)をセルロースナノファイバーの固形分換算で10重量%添加した水分散液について5回メディアレス分散処理を繰り返し、セルロースナノファイバー分散体を調製した。その後、凍結乾燥用の容器に移して-80℃にて凍結した後、凍結乾燥機(東京理化機械(株)製、FD-1)用いて凍結乾燥した。凍結乾燥後に粉砕機を用いて粉末状のセルロースナノファイバーを得た粉体物の嵩密度はJIS K7365に準拠して測定した。得られた分散体のゼータ電位は-39.67mVおよび粉末の嵩密度は119g/L、繊維径は20~50nmであった。
測定サンプルの調製は、液体系(メタノール溶液)および固相系の2通りとし、それぞれ多官能性モノマーを使用した化学架橋(熱架橋)および物理架橋(γ線照射)を行った。
<液体系>
PEG変性ナイロン樹脂(AQナイロン A-90、東レ(株)製)のメタノール溶液(濃度20重量%)および架橋成分として多官能性エポキシ樹脂(TG-G、四国化成工業(株)製)のメタノール溶液(濃度20重量%)を調製し、PEG変性ナイロン樹脂の固形分に対して、前記粉末状セルロースナノファイバーを固形分で0.45重量%添加し、ロッキングミルで1時間混合した後、80℃で3時間以上保持して脱溶媒を行った。得られた固形の組成物を、150℃に加熱した金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して圧力20MPaで圧縮成形し、厚さ0.5mmのシート状組成物を得た。
<固相系>
また、上記AQナイロンペレットに、架橋成分としてジクミルパーオキサイド(パークミルD、日油(株)製)を12重量%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%、および酸化防止剤としてイルガノックス1035(BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.3重量%配合し、さらに前記粉末状セルロースナノファイバーを固形分で0.45重量%添加し、8インチ2本ロールを用いてロール温度150℃、ロールギャップ0.5mm、回転数50rpmの条件で5~10分混練して組成物を得た。これを上記と同じ金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して150℃の熱プレスで圧力20MPaにて圧縮し、厚さ0.5mmのシート状成形体を得た。
<架橋処理>
上記の操作で得たシート状組成物に対し、150℃で1時間保持の化学的架橋またはγ線照射 30kGyの物理的架橋を行なった。架橋後のシートを、マイクロダンベル状打抜き型で打抜いて、平行部寸法が5×12mmであるマイクロダンベル引張り試験片を得た。その後、各試験片の機械特性を島津オートグラフ(AGX-Plus、(株)島津製作所製)で評価した。
また、各試験片の動的粘弾性をRheogel E-4000((株)ユービーエム製)をもちいて、引張モードで荷重50gにて正弦波振幅を与え、-100~250℃、昇温速度2℃/分にて測定した。また、各試験片のゲル分率を、メタノールを用いて常温で24時間抽出した際の残渣物を100℃で2時間乾燥して重量を測定し、抽出前後の重量比から求めた。結果を表21に示す。
(実施例11E~11H、比較例11G~11L>
実施例11A~11D、比較例11A~11Fにおいて、樹脂成分をメトキシメチル化ナイロン樹脂(ファインレジン FR‐101、(株)鉛市製)とし、架橋成分としてクエン酸(試薬1級)を9重量%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%添加した(固体系、液体系とも)以外は同様に操作して、成形体の引張強さ、引張弾性率、破断伸びひずみ、tanδピーク、およびゲル分率を求めた。結果を表21に示す。
(実施例11I~11L、比較例11M~11R)
実施例11A~11D、比較例11A~11Fにおいて、樹脂成分をカルボジイミド変性ナイロン樹脂(アミラン CM8000、東レ(株)製)とし、架橋成分としてクエン酸(試薬1級)を9%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%添加した(固体系、液体系とも)以外は同様に操作して、成形体の引張強さ、引張弾性率、破断伸びひずみ、tanδピーク、およびゲル分率を求めた。結果を表21に示す。
Figure 0007120011000021
表21から、変性ポリアミドの種類に関係なく、架橋処理の実施、およびセルロースナノファイバーの添加により、コーティング膜の機械特性が大幅に向上した。樹脂などの高分子化合物の破断時ひずみは、繊維などの充填材の添加や架橋により低下するが、本実施形態ではかえって上昇する現象が見られた。これは、樹脂組成物の機械特性は試験規格の常温(25℃)で測定し、この測定温度が各樹脂組成物のtanδピーク温度(ガラス転移温度)より高い温度であることから、樹脂組成物のゴム領域で機械特性を測定したことになるためと考えられる。さらに、ガラス転移温度より低いガラス状領域では、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体は、一層高い機械特性を示す、極低温での応用に適していると考えられる。
実施例11A、比較例11Aにおいて、分散剤をアクリルスルホン酸系分散剤(アロン A-6012、東亞合成(株)製)から、メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体(リピジュアBL、日油(株)製)またはアクリルカルボン酸共重合体(アロン A-6114、東亞合成(株)製)に変更する以外は、それぞれ実施例11Aおよび比較例11Aと同様にして、分散体組成物の作製、および評価した。未変性セルロースナノファイバーの分散性、沈降安定性、ゲル分率、耐衝撃性はそれぞれ実施例11Aおよび比較例11Aと同等であった。この結果から、架橋による効果および未変性セルロースナノファイバーの添加効果を確認できた。
(実施例12A~12I、12M~12、比較例12A~12L)
粉末状セルロースナノファイバーの調製
メディアレス分散機として、(株)広島メタル&マシナリー製のK-2(アペックスディスパーサーZERO)を用い、分散媒としての精製水、セルロースナノファイバおよび分散剤を分散したスラリー状物を当該メディアレス分散機に投入して回転周速30m/sで循環させ、せん断によりセルロースの分散を促進させて、分散が安定したセルロースナノファイバーを得た。
上記の装置を用いて、セルロースナノファイバー原料(BiNFi-s、(株)スギノマシン製)を0.1重量%、分散剤として、分散剤A:アクリルスルホン酸系共重合体(アロン A-6012、東亞合成(株)製)、分散剤B:メタクロイルオキシエチレンホスホホリルコリン(共)重合体(リピデュアBL(日油(株)製)、分散剤C:アクリルカルボン酸共重合体(A-6114東亞合成(株)製)いずれか1種類を、セルロースナノファイバーの固形分換算で10重量%添加した水分散液について5回メディアレス分散処理を繰り返し、セルロースナノファイバーの予備分散体を調製した。この分散体のゼータ電位は、-38.2~-39.67mVの範囲であった。その後、凍結乾燥用の容器に移して―80℃にて凍結した後、凍結乾燥機(東京理化機械(株)製、FD-1)用いて凍結乾燥した。凍結乾燥後に粉砕機を用いて粉末状のセルロースナノファイバーを得た。粉体物の嵩密度はJIS K7365に準拠して測定した。
上記で得られた予備分散体のゼータ電位および粉末の嵩密度98~120g/L、繊維径20~50nmであった。なお、実施例、比較例で用いた各種の分散剤の種類は、前掲したとおりである。測定サンプルの調製は、液体系(メタノール溶液)および固相系の2通りとして、それぞれ反応性モノマーを使用した化学架橋(熱架橋)および物理架橋(γ線照射)を行なった。実施例12A~12I、12M~12、比較例12A~12Lでは、表22、表23に示す分散剤および架橋成分を用い、架橋方法を用いた。
<固相系による樹脂組成物、樹脂成形品の調製>
(実施例12A~12F)
メトキシメチル化ナイロン樹脂(ファインレジン FR‐101、(株)鉛市製)に、架橋成分としてクエン酸(試薬1級)を9%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%、および酸化防止剤としてイルガノックス1035(BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.3重量%配合し・添加し、さらにメトキシメチル化ナイロン樹脂に対して上記のセルロースナノファイバーの粉体(分散剤別に3種類)を0.5重量%添加し、8インチ2本ロールを用いてロール温度150℃、ロールギャップ0.5mm、回転数50rpmの条件で5~10分混練して組成物を得た。これを上記と同じ金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して150℃の熱プレスで圧力20MPaにて圧縮し、厚さ0.5mmのシート状成形体を得た。
(実施例12G~12I)
PEG変性ナイロン樹脂(AQナイロン A-90、東レ(株)製)に、架橋成分としてジクミルパーオキサイド(パークミルD、日油(株)製)を9重量%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%、および酸化防止剤としてイルガノックス1035(BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.3重量%配合し、さらにPEG変性ナイロン樹脂に対して上記のセルロースナノファイバーの粉体(分散剤別に3種類)を0.5重量%添加し、8インチ2本ロールを用いてロール温度150℃、ロールギャップ0.5mm、回転数50rpmの条件で5~10分混練して組成物を得た。これを上記と同じ金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して150℃の熱プレスで圧力20MPaにて圧縮し、厚さ0.5mmのシート状成形体を得た
(実施例12M~12O)
カルボジイミド変性ナイロン樹脂(アミラン CM8000、東レ(株)製)に架橋成分としてクエン酸(試薬1級)を9%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%、および酸化防止剤としてイルガノックス1035(BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.3重量%配合し・添加し、さらに上記のセルロースナノファイバーの粉体(分散剤別に3種類)をカルボジイミド変性ナイロン樹脂に対して0.5重量%添加し、8インチ2本ロールを用いてロール温度150℃、ロールギャップ0.5mm、回転数50rpmの条件で5~10分混練して組成物を得た。これを金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して150℃の熱プレスで圧力20MPaにて圧縮し、厚さ0.5mmのシート状成形体を得て、下記に記す物理架橋処理した。
(実施例12P~12R)
カルボジイミド変性ナイロン樹脂(アミラン CM8000、東レ(株)製)に架橋成分として多官能性エポキシ樹脂(TG-G、四国化成工業(株)製)を9.5重量%配合・添加して、さらに上記のセルロースナノファイバーの粉体(分散剤別に3種類)を0.5重量%添加し、8インチ2本ロールを用いてロール温度150℃、ロールギャップ0.5mm、回転数50rpmの条件で5~10分混練して組成物を得た。これを金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して150℃の熱プレスで圧力20MPaにて圧縮し、厚さ0.5mmのシート状成形体を得た。
(実施例12S~12U)
PEG変性ナイロン樹脂(AQナイロン A-90、東レ(株)製)とPA11(リルサン BMNO、アルケマ(株)製)を重量比で80:20でブレンドし、および架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%を添加・混合して、上記のセルロースナノファイバー分散体(分散剤別に3種類)を0.5重量%添加し、8インチ2本ロールを用いてロール温度150℃、ロールギャップ0.5mm、回転数50rpmの条件で5~10分混練して組成物を得た。これを金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して150℃の熱プレスで圧力20MPaにて圧縮し、厚さ0.5mmのシート状成形体を得た。
(比較例12A~12
上記3種類の変性ポリアミド樹脂を用い、セルロースナノファイバーを添加しない場合、架橋処理を行わない場合について、同様に試料を調製し試験に供した。
なお、実施例12A~12I、12M~12および比較例12A~12については、組成物を調製する前に、全ての材料を80℃×12時間以上乾燥させたものを上記と同様に圧縮成形したものを用いて試験を行った。
<架橋処理>
上記の操作で得たシート状組成物に以下の架橋処理を行った。
化学架橋 ・・ 150℃、1時間保持
物理架橋 ・・ γ線照射 30kGy
これらの架橋シートを、マイクロダンベル状打抜き型で打抜いて、平行部寸法が5×12mmであるマイクロダンベル引張り試験片を得た。得られた各試験片を島津オートグラフ(AGX-Plus)にて特性を機械評価した。また、成形物の動的粘弾性をRheogel E-4000((株)ユービーエム製)をもちいて、引張モードで荷重50gにて正弦波振幅を与え、-100~250℃、昇温速度2℃minにて測定した。
また、成形物のゲル分率を、メタノールを用いて常温で24時間抽出した際の残渣物を100℃で2時間乾燥して重量を測定し、抽出前後の重量比から求めた。
さらに、上記の操作で得られたそれぞれの組成物を脱溶媒前にSUS板上に、ロールコーターにて厚さ100μm以上のコーティング膜を形成した後、80℃で3時間保持してからそれぞれの架橋処理を行い得た塗膜に対し、φ24鋼球(約500g)を12時間負荷し、除苛後の痕跡の有無を目視判定した。結果を表22、23に示す。
Figure 0007120011000022
Figure 0007120011000023
表22、23から、変性ポリアミド樹脂の各種機械特性、耐熱性に対する架橋の効果、セルロースナノファイバーの添加効果を読み取ることができる。さらに架橋については化学架橋より物理架橋の方が物性向上効果が高く、分散剤としてはアクリルスルホン酸共重合体の効果が高い。
これらの効果は、分散剤にて処理した未変性セルロースナノファイバーであっても、疎水変性セルロースナノファイバーであっても良いことがわかる。さらに、樹脂成分については変性ポリアミド樹脂と未変性ポリアミド樹脂のブレンド体であっても同様の効果が得られ、複合化の手法についても液体系でのプロセスのほうが、固相系でのプロセスより特性の向上効果が高い。
このように、変性ポリアミド樹脂とセルロースナノファイバーおよび架橋成分を液体系で混合することでセルロースナノファイバーの樹脂中での分散性が比較的簡単な手段で向上させることができ、さらに架橋処理することによって、従来にない特徴的な機械特性、耐熱性、耐クリープ性を得ることができ、また、耐薬品性、耐候性、耐摩耗性などの向上も期待できる。
(実施例13A~13U、比較例13A~13M)
測定サンプルの調製は、液体系(メタノール溶液)として、それぞれ反応性モノマーを使用した化学架橋(熱架橋)および物理架橋(γ線照射)を行った。実施例13A~13U、比較例13A~13Mでは、表24、表25に示す分散剤および架橋成分を用い、架橋方法を用いた。
<液体系による樹脂組成物、樹脂成形品の調製>
(実施例13A~13F)
メトキシメチル化ナイロン樹脂(ファインレジン FR‐101、(株)鉛市製)のメタノール溶液(濃度20重量%)、および酸触媒としてクエン酸(試薬1級)を固形分換算で9%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%、および酸化防止剤としてイルガノックス1035(BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.3重量%配合し・添加し、メタノール溶液(濃度20重量%)を調製した。
さらにメトキシメチル化ナイロン樹脂の固形分に対して上記のセルロースナノファイバー水分散体(分散剤別に3種類)をセルロースナノファイバー固形分で0.45重量%になるよう添加し、ロッキングミルで1時間混合した後、80℃で3時間以上保持して脱溶媒を行った。得られた固形の組成物を、150℃に加熱した金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して圧力20MPaで圧縮成形し、厚さ0.5mmのシート状組成物を得た。
(実施例13G~13I)
PEG変性ナイロン樹脂(AQナイロン A-90、東レ(株)製)のメタノール溶液(濃度20重量%)、および架橋成分として多官能性エポキシ樹脂(TG-G、四国化成工業(株)製)のメタノール溶液(濃度20重量%)を調製し固形分換算で9.5%、PEG変性ナイロン樹脂の固形分に対して上記のセルロースナノファイバー水分散体(分散剤別に3種類)をセルロースナノファイバー固形分で0.45重量%になるようそれぞれ添加し、ロッキングミルで1時間混合した後、80℃で3時間以上保持して脱溶媒を行った。得られた固形の組成物を、150℃に加熱した金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して圧力20MPaで圧縮成形し、厚さ0.5mmのシート状組成物を得た。
(実施例13J~13L)
PEG変性ナイロン樹脂(AQナイロン A-90、東レ(株)製)のメタノール溶液(濃度20重量%)、および架橋成分として2-メチルー2-オキサゾリン(試薬、東京化成工業(株)製)のメタノール溶液(濃度20重量%)を調製し固形分換算で9.5%、PEG変性ナイロン樹脂の固形分に対して上記のセルロースナノファイバー水分散体(分散剤別に3種類)をセルロースナノファイバー固形分で0.45重量%になるようそれぞれ添加し、ロッキングミルで1時間混合した後、80℃で3時間以上保持して脱溶媒を行った。得られた固形の組成物を、150℃に加熱した金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して圧力20MPaで圧縮成形し、厚さ0.5mmのシート状組成物を得た。
(実施例13M~13R)
カルボジイミド変性ナイロン樹脂(アミラン CM8000、東レ(株)製)のメタノール溶液(濃度20重量%)、および架橋成分としてクエン酸(試薬1級)を固形分換算で9%、架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%、および酸化防止剤としてイルガノックス1035(BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.3重量%配合し、さらにカルボジイミド変性ナイロン樹脂の固形分に対して上記のセルロースナノファイバーの水分散体(分散剤別に3種類)をセルロースナノファイバー固形分で0.45重量%になるよう添加し、ロッキングミルで1時間混合した後、80℃で3時間以上保持して脱溶媒を行った。得られた固形の組成物を、150℃に加熱した金型(キャビティ寸法:50×100mm)に投入して圧力20MPaで圧縮成形し、厚さ0.5mmのシート状組成物を得た。
(実施例13S~13
PEG変性ナイロン樹脂(AQナイロン A-90、東レ(株)製)とPA11(リルサン BMNO、アルケマ(株)製)を重量比80:20でブレンドしもののメタノール溶液(濃度20重量%)、および架橋助剤としてトリアリルイソシアネート(TAIC、四国化成工業(株)製)を9重量%を添加・混合して、PEG変性ナイロン樹脂の固形分に対して上記のセルロースナノファイバー水分散体(分散剤別に3種類)をセルロースナノファイバー固形分で0.45重量%になるよう添加し、ロッキングミルで1時間混合した後、80℃で3時間以上保持して脱溶媒を行った。
(比較例13A~13L)
上記3種類の変性ポリアミド樹脂のメタノール溶液に対して、セルロースナノファイバーを添加しない場合、架橋処理を行わない場合について、同様に試料を調製し試験に供した
(比較例13M)
クエン酸(酸触媒、試薬1級)を固形分換算で9%、トリアリルイソシアネート(TAIC、架橋助剤、四国化成工業(株)製)を9重量%、およびイルガノックス1035、酸化防止剤、BASF社製)とシーノックス412S(シプロ化成(株)製)を1:2の重量比で混合した混合物を2.3重量%配合し・添加し、メタノール溶液(濃度20重量%)を調製した。さらにメトキシメチル化ナイロン樹脂の固形分に対して、原料のセルロースナノファイバー(BiNFi‐s,(株)スギノマシン製)を固形分で0.45重量%になるよう添加し、実験用プロペラ撹拌機で2時間混合し、樹脂組成物(変性ポリアミド/セルロースナノファイバー水分散体)を得た。
<架橋処理>
上記の操作で得たシート状組成物に以下の架橋処理を行った。
化学架橋 ・・ 150℃、1時間保持
物理架橋 ・・ γ線照射 30kGy
これらの架橋シートを、マイクロダンベル状打抜き型で打抜いて、平行部寸法が5×12mmであるマイクロダンベル引張り試験片を得た。得られた各試験片を島津オートグラフ(AGX-Plus)にて機械特性を評価した。
また、成形体の動的粘弾性をRheogel E-4000((株)ユービーエム製)を用い、引張モードで荷重50gにて正弦波振幅を与え、-100~250℃、昇温速度2℃minにて測定した。
また、成形体のゲル分率を、メタノールを用いて常温で24時間抽出した際の残渣物を100℃で2時間乾燥して重量を測定し、抽出前後の重量比から求めた。
さらに、上記の操作で得られたそれぞれの組成物を脱溶媒前にSUS板上に、ロールコーターにて厚さ100μm以上のコーティング膜を形成した後、80℃で3時間保持してからそれぞれの架橋処理を行い得た塗膜に対し、φ24鋼球(約500g)を12時間負荷し、除苛後の痕跡の有無を目視判定した。
結果を表24、25に示す。
Figure 0007120011000024
Figure 0007120011000025
表24、25の実施例、比較例のデータから、変性ポリアミド樹脂の各種機械特性、耐熱性に対する当該変性ポリアミド樹脂の架橋の効果、CNFの添加効果を読み取ることができる。さらに架橋については化学架橋より物理架橋の方が物性向上効果が高く、分散剤の種類についてはアクリルスルホン酸共重合体の効果が高い。
これらの効果は、分散剤にて処理した未変性セルロースナノファイバーであっても、疎水変性セルロースナノファイバーであっても良いことがわかる。さらに、マトリックス樹脂については変性ポリアミド樹脂と未変性ポリアミド樹脂のブレンド体であっても同様の効果が得られた。
また、複合化の手法については、セルロースナノファイバーの予備分散体を調製せずに、水分散性ポリアミド、分散剤、架橋成分、酸化防止剤を同時に混合したものは、セルロースナノファイバーの分散安定性が悪く、混合後直ちに沈殿・相分離を生じた(比較例13M)。一方、変性ポリアミド樹脂とセルロースナノファイバーと架橋成分を液体系で混合することでセルロースナノファイバーの樹脂中での分散性が比較的簡単な手段で向上させることができ、さらに架橋処理することによって、従来にない特徴的な機械特性、耐熱性、耐クリープ性を得ることができ、また、耐薬品性、耐候性、耐摩耗性などの向上も期待できる。
(実施例14A~14V、比較例14A~14K、14M~14V)
<セルロースナノファイバー分散体の調製>
メディアレス分散機として、(株)広島メタル&マシナリー製のK-2(アペックスディスパーサーZERO)を用い、分散媒としての精製水、セルロースナノファイバーおよび分散剤を分散したスラリー状物を当該メディアレス分散機に投入して回転周速30m/sで循環させ、せん断によりセルロースの分散を促進させて、分散が安定したセルロースナノファイバーを得た。
上記の装置を用いて、セルロースナノファイバー(BiNFi-s、スギノマシン製)を0.1重量%、分散剤としてアクリルスルホン酸系分散剤(アロン A-6012、東亞合成(株)製)をセルロースナノファイバーの固形分換算で5重量%添加した水分散液について5回メディアレス分散処理を繰り返し、セルロースナノファイバー分散体を調製した。
上記にて得られた分散体のゼータ電位、繊維径は以下のとおりであった。
なお、実施例、比較例で用いた各種の分散剤の種類は、前掲したとおりである。
ゼータ電位:-39.67mV、繊維径:20~50nm
測定サンプルの調製は、水溶液とし、得られた水分散体の外観は白濁液体で、セルロースナノファイバーの分散ムラや凝集は見られず、また、この液体を24時間以上静置してもセルロースナノファイバーの沈殿は見られず、安定したスラリーであった。
ここで、セルロースナノファイバー分散体を作製する際に、上記分散剤を添加せずに同一条件で作製すると、ゼータ電位は12.8mVであり、静置後しばらくして沈殿が始まり、12時間後には加えたセルロースナノファイバーが液量の1/2程度にまで沈殿した。
以下に、各樹脂の測定試料作成の実施例を示す。なお、水分散性樹脂の架橋成分は、水に可溶であるものを前提として選定した。
<水分散性エポキシ樹脂>
構造にエポキシ基を有する水分散性エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂エマルジョン(アデカレジン EM-0427WC、(株)アデカ製、固形分50重量%)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後の添加成分の沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマにより親水化処理したガラス基板上にスピンコーター(700rpm×10秒)にて厚5μmのコーティング膜を形成し、脱溶媒後に物理架橋としてγ線を30kGy照射し、マトリックス樹脂成分を架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度を測定した(実施例14A)。
上記原料のうち、架橋成分を酸(三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、和光純薬(株)製)として5重量%添加して攪拌混合してセルロースナノファイバー/樹脂分散体を作製し、酸素プラズマにより親水化処理したガラス基板上に同条件で5μm厚さのコーティング膜を形成し、150℃で1時間加熱処理し化学架橋した。この樹脂架橋体を用いて鉛筆硬度を測定した(実施例14B)。
<水分散性フェノール樹脂>
構造にフェノール性水酸基を有する水分散性フェノール樹脂(WSR-SP82、小西化学工業(株)製、固形分30重量%水溶液)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、物理架橋としてγ線を30kGy照射し架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度を測定した(実施例14C)。
上記原料のうち、架橋成分を両末端イソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)として5重量%添加して攪拌混合し、セルロースナノファイバー/樹脂分散体を作製して、同条件でスピンコートしたものを用いて、架橋条件として150℃で1時間加熱し化学架橋した。この樹脂架橋体を用いて鉛筆硬度を測定した(実施例14D)。
<ポリビニルアルコール>
構造に水酸基を有する樹脂として、ポリビニルアルコール(ポバール PVA-205、(株)クラレ製、ペレット状)から、固形分12.5重量%の樹脂水溶液を作製した。樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(TAIC、日本化成工業(株)製)5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmで1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
このポリビニルアルコール組成物から、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)にて厚さ5μmのコーティング膜を形成し、物理架橋としてγ線を30kGy照射し、マトリックス樹脂成分を架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度を測定した(実施例14E)。
上記ポリビニルアルコール組成物について、架橋成分として多官能エポキシモノマー(TG-G、四国化成工業(株)製)を5重量%添加して攪拌混合し、セルロースナノファイバー/樹脂分散体を作製して、同条件でスピンコートしたものを用いて、架橋条件として150℃で1時間加熱し化学架橋した。この樹脂架橋体を用いて鉛筆硬度を測定した。(実施例14F)。
同様に水酸基を有する樹脂としてポリビニルブチラール(エスレック KW-1、積水化学工業(株)製、固形分20重量%の水溶液)を用いて、架橋成分として上記多官能アリル系モノマーを5重量%、および上記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmで1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。さらに含水状態のまま上記と同条件でγ線照射して物理架橋すると、ハイドロゲル状の組成物を得た(実施例14G)。
さらに本組成物の架橋成分を多官能エポキシモノマー(TG-G、四国化成工業(株)製)として5重量%添加したものを50℃で1時間加熱して化学架橋すると、同様にハイドロゲル状の組成物を得た(実施例14H)。
<水分散性ウレタン樹脂>
骨格にイソシアネート基を有する水分散性ウレタン樹脂として、エラストロン MF25K(第一工業製薬(株)製、固形分25重量%水溶液)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体を用いて、親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)にて厚さ5μmのコーティング膜を形成し、脱溶媒後物理架橋としてγ線を30kGy照射し架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度を測定した(実施例14I)。
上記原料のうち、硬化触媒をエラストロン CAT-21(有機スズ系触媒、第一工業製薬(株)製)とし、同条件でスピンコートしたものを用いて、150℃で1時間加熱し化学架橋した。この樹脂架橋体を用いて鉛筆硬度を測定した(実施例14J)。
<ポリビニルピロリドン樹脂>
骨格にピロリドン基を有するポリビニルピロリドン樹脂として、K-85N((株)日本触媒製、固形分20重量%の水溶液)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。さらに含水状態のまま上記と同条件でγ線照射して物理架橋すると、ハイドロゲル状の組成物を得た(実施例14K)。
前記原料のうち、架橋成分をエラストロン CAT-21(有機スズ系触媒、第一工業製薬(株)製)とし、同条件で攪拌混合して、この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。次いでこれを50℃で1時間加熱し化学架橋し同様にハイドロゲル状の組成物を得た(実施例14L)。
<水分散性メラミン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂>
構造にアミノ基を有する樹脂として、水分散性メラミン樹脂(ニカラック MW-30、(株)三和ケミカル製、固形分98重量%の粘稠液体)、およびポリエチレンイミン(1200、純正化学(株)製、固形分20重量%の水溶液)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物を用いて、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、脱溶媒後物理架橋としてγ線を30kGy照射し、架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度を測定した(実施例14M、14O)。
前記原料のうち、架橋成分をポリビニルアルコール(PVA-205、(株)クラレ製)とし、同条件でスピンコートしたものを用いて、架橋条件として150℃で1時間加熱し化学架橋した。この樹脂架橋体を用いて鉛筆硬度を測定した(実施例14N、14P)。
<水分散性ポリエステル樹脂、水分散性ポリアクリル酸樹脂>
構造にカルボキシル基を有する樹脂として、水分散性ポリエステル樹脂(プラスコート Z-730、互応化学工業(株)製、固形分25重量%の水溶液)、および水分散性ポリアクリル酸樹脂(ビスコメート NP-700、昭和電工(株)製、固形分2重量%の水分散液)を用いた。
前記水分散性ポリエステル樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物を用いて、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、脱溶媒後物理架橋としてγ線を30kGy照射し、架橋させた。この樹脂架橋体の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定し、さらにコーティング膜の鉛筆硬度を測定した(実施例14Q)。
また、上記組成物のうち、架橋成分をオキサゾリン(WS-700、(株)日本触媒製)として、攪拌・混合して分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。さらにこの分散体を用いて同条件でスピンコートしたものを、150℃で1時間加熱し化学架橋した。この樹脂架橋体を用いて鉛筆硬度を測定した(実施例14R)。
ポリアクリル酸樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。さらに含水状態のまま上記と同条件でγ線照射して物理架橋すると、ハイドロゲル状の組成物を得た(実施例14S)。
また、上記組成物のうち、架橋成分を両末端イソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)として、攪拌・混合して分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。次いでこれを50℃で1時間加熱し化学架橋し同様にハイドロゲル状の組成物を得た(実施例14T)。
<水分散性ポリシロキサン複合アクリル樹脂>
骨格にシロキサン基を有するポリシロキサン樹脂として、水性ポリシロキサン複合アクリル樹脂(セラネート WSA-1070、DIC(株)製、固形分40重量%の水溶液)を用いた。この樹脂の固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物を用いて、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、脱溶媒後物理架橋としてγ線を30kGy照射し、架橋させ、コーティング膜の鉛筆硬度を測定した。(実施例14U)
上記ポリシロキサン樹脂に、エポキシ基含有専用架橋成分ウォーターゾールWSA-950(DIC(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。この分散体を用いて、上記と同条件でスピンコートし、架橋条件として150℃で1時間加熱し化学架橋した。この樹脂架橋体を用いて鉛筆硬度を測定した(実施例14V)。
<3Dプリンタ用樹脂、光重合性樹脂>
3Dプリンタ用樹脂、および光重合性樹脂として水分散性オキセタン樹脂(アロンオキセタン OXT-101、東亞合成(株)製)を選定し、重合開始剤としてトリアリールスルホニウム塩(試薬1級)を樹脂固形分換算で1重量%、および架橋成分として多官能エポキシモノマー(TG-G、四国化成工業(株)製)を5重量%、および前記セルロースナノファイバー分散体を1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。この分散体を用いて、上記と同条件でスピンコートし、物理架橋として紫外線を1000(mJ/cm)照射し、クロムマスクによるパターニング生成により3次元架橋の有無を判定した(実施例14W)
<バイオマス由来樹脂>
バイオマス由来樹脂としてひまし油を出発原料とする水分散性PA11(RILSAN BMNO,アルケマ(株)製)を選定し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用二軸混練装置(DSM Xlpore社製、MC15M)にて、バレル温度190℃にて混練した後、射出成形(DSM Xlpore社製、IM12M)にて金型温度60℃で小型ダンベル試験片を成形した。この試験片にγ線を30kGy照射して物理架橋したものを用いて、引張り試験に供した。(実施例14X)。
上記実施例14A~14Vの比較例として、それぞれのサンプル組成からセルロースナノファイバーを添加しないものを調製し測定した。それぞれの樹脂系の調製条件および特性評価方法、およびその条件は上記実施例14A~14V(但し14Lは除く。)と同一である(比較例14A~14K、14M~14V)。
さらに上記実施例14Fのポリビニルアルコール樹脂架橋物/セルロースナノファイバー複合体のうち、上記セルロースナノファイバー分散体を加えずに樹脂のみ架橋させたもの(比較例14W)、および上記セルロースナノファイバー分散体を添加し、樹脂を架橋させないもの(比較例14X)を作製し、同様に鉛筆硬度を測定した。
またさらに実施例14Tのポリアクリル酸樹脂において、セルロースナノファイバーを添加せずに化学架橋処理のみしたもの、およびセルロースナノファイバーを添加し、架橋処理を行わなかったものを調製した(比較例14Y、14Z)。
なお、上記実施例、比較例に記載される鉛筆硬度およびゲル分率は以下のように測定した。結果を表26、表27、表28に示す。
Figure 0007120011000026
Figure 0007120011000027
Figure 0007120011000028
実施例14A~14Vおよび比較例14A~14K、14M~14Vにおいて、各水分散性樹脂について、化学架橋の場合と物理架橋の場合を比較し、さらにそれぞれの樹脂系について架橋成分の添加の有無、およびセルロースナノファイバーの添加の有無が、架橋の有無、およびコーティング膜の物性(鉛筆硬度)について調べた。
いずれの樹脂組成物においても、架橋成分を添加することで、物理架橋・化学架橋ともにゲル化が認められ、3次元架橋していることが確認できた(実施例14A~14F,14I、14J、14M~14R、14T、14U)。さらに、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリル酸樹脂においては、物理架橋、化学架橋いずれにおいてもハイドロゲルの生成が認められ、これはコーティング形態よりもむしろバルク状生成物に由来する、吸水性・保水性の必要な用途に応用できる可能性がある(実施例14G、14H、実施例14K、14Lおよび実施例14S、14T)。実施例に挙げた他の樹脂成分を含む樹脂組成物においては、それぞれの比較例よりもコーティング膜の鉛筆硬度が高く、充分に有望な用途が展開できる余地がある。
同様にポリアクリル樹脂についても、架橋成分として両末端イソシアネート型ポリカルボジイミド(カルボジライト VS-02、日清紡ケミカル(株)製)を添加して化学架橋したものでは、セルロースナノファイバーの有無にかかわらずハイドロゲルを生じたが架橋成分のないものではゲル化(およびハイドロゲル)は生じなかった。
光重合性樹脂であり3Dプリンタ用樹脂への応用が可能な水分散性オキセタン樹脂についても上記の樹脂群と同様、セルロースナノファイバーの分散性、沈降安定性に問題はなく、紫外線照射を用いた物理架橋により、クロムマスクによるパターニングが生じてゲル化(架橋)していることが認められたが、架橋成分とセルロースナノファイバーを添加しないとパターニングが生じなかった(実施例14W、比較例14Z2)。
さらにバイオマス由来樹脂であるPA11にセルロースナノファイバー分散体由来の粉体および架橋成分を加えて物理架橋したものは、これらを加えないものは引っ張り弾性率が高く、セルロースナノファイバーおよび架橋の効果が認められた(実施例14X、比較例14Z3)
<ポリアクリロニトリル樹脂>
構造にニトリル基を有する樹脂として、ポリアクリロニトリル樹脂(試薬1級、シグマアルドリッチジャパン製)を用いた。ポリアクリロニトリル樹脂を、水に溶解し固形分20重量%の水溶液を作製し、固形分に対し、架橋成分として多官能アリル系モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、日本化成工業(株)製)を5重量%、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察した。
この分散体組成物を用いて、酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上にスピンコート(700rpm×10秒)して厚さ5μmのコーティング膜を形成し、脱溶媒後物理架橋としてγ線を30kGy照射し、架橋させ、コーティング膜の鉛筆硬度を測定した。この分散体組成物中での各成分の分散性は良好で、また組成物成分の沈降は認められなかった(実施例14T)。
<4フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体(FEVE交互共重合体)>
4フッ化エチレンとビニルエーテルとの交互共重合体であるFEVE交互共重合体は、水分散性で紫外線により架橋する。FEVE交互共重合体(ルミフロン、旭硝子(株)製)の固形分20重量%の水溶液を作製し、前記セルロースナノファイバー分散体を固形分換算で1重量%加え、実験用攪拌機を用いて300rpmにて1時間攪拌した。この分散体の分散性を目視にて評価した後、24時間静置した後のセルロースナノファイバーの沈降の有無を目視観察するとともに、スピンコートで厚さ5μmのコーティング膜を作製したのち、50℃、12時間乾燥後、物理架橋として紫外線を1000mJ/cm照射したところ、水に溶解しないゲル化物の生成が認められ、その鉛筆硬度は4Hであった。
紫外線照射しない場合はゲル化は生じず、セルロースナノファイバーを添加しない場合(紫外線照射はあり)のコーティング膜の鉛筆硬度はHであった(実施例14Z1、比較例14Z4)。本樹脂組成物においても、前述の樹脂群と同様に架橋による特性向上が認められた。
<エマルジョン樹脂>
樹脂をエマルジョン化することによって水分散化した樹脂については、実施例14A、14B、比較例14A、14Bのエポキシ樹脂で検証した。これによりエマルジョンタイプであっても他の水分散性樹脂と同様に前記セルロースナノファイバー分散体の添加効果およびマトリックス樹脂の架橋処理によりゲル化が生じ、鉛筆硬度が向上していた。

Claims (14)

  1. 樹脂成分と、セルロースナノファイバーと、陰イオン性分散剤と、架橋成分、架橋助剤、有機過酸化物、重合開始剤又は酸触媒とを含み、
    前記樹脂成分が、未変性水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲にある熱可塑性樹脂、ならびに水溶性およびアルコール溶解性から選ばれた少なくとも1種の溶剤溶解性を有する前記熱可塑性樹脂の変性樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
    前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバーであり、
    前記陰イオン性分散剤が、アクリルスルホン酸系分散剤、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体、アクリルカルボン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記架橋成分が、多官能性モノマー、多官能性樹脂から選択される1種または2種以上であり、
    前記樹脂成分由来の架橋性基又は前記架橋成分を介して結合した架橋構造を有し、前記架橋構造が、前記セルロースナノファイバー間の架橋構造、前記セルロースナノファイバーと前記樹脂成分との間の架橋構造、および前記樹脂成分間の架橋構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種である、樹脂組成物。
  2. 前記未変性水溶性樹脂が、エチレン性二重結合含有化合物由来の構成単位および環状エチレン系化合物由来の構成単位から選ばれた少なくとも1種の構成単位を含む未変性水溶性樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、ならびに水溶性バイオマス由来樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記水分散性樹脂が、水分散性に変性された熱可塑性樹脂であり、水分散性に変性される前の前記熱可塑性樹脂が熱可塑性バイオマス由来樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
  4. 前記水分散性樹脂が、水分散性に変性された、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂から選ばれた少なくとも1種であり、水分散性に変性される前の前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、前記ウレタン樹脂以外の含窒素熱硬化性樹脂、熱硬化性バイオマス由来樹脂およびポリシロキサンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、水分散性に変性される前の前記光硬化性樹脂が、光重合性樹脂および光架橋性樹脂よりなる群から選ばれけた少なくとも1種である、請求項1記載の樹脂組成物。
  5. 溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲である前記熱可塑性樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン1010、ナイロン9T、ナイロン6/66、ナイロン66/610、およびナイロン6/11よりなる群から選ばれた少なくとも1種のポリアミド樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
  6. 水溶性およびアルコール溶解性から選ばれた少なくとも1種の溶剤溶解性を有する前記変性樹脂が、溶解度パラメータ14~9.5(cal/cm1/2の範囲である前記熱可塑性樹脂の、ポリエチレングリコール、N-メチロールメチル、およびカルボジイミドよりなる群から選ばれた少なくとも1種による変性物である、請求項1記載の樹脂組成物。
  7. 樹脂成分と、セルロースナノファイバーと、陰イオン性分散剤と、触媒とを含み、
    前記樹脂成分が、ビニルピロリドン樹脂または水分散性に変性された、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂から選ばれた少なくとも1種の水分散性樹脂であり、
    前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバーであり、
    前記陰イオン性分散剤が、アクリルスルホン酸系分散剤、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体、アクリルカルボン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物。
  8. 樹脂成分と、セルロースナノファイバーと、陰イオン性分散剤とを含み、
    前記樹脂成分が、水分散性フェノール樹脂であり、
    前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバーであり、
    前記陰イオン性分散剤が、アクリルスルホン酸系分散剤、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体、アクリルカルボン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記水分散性フェノール樹脂が、自己架橋性でない場合は、架橋成分として、多官能性モノマー、多官能性樹脂から選択される1種または2種以上をさらに含む、樹脂組成物。
  9. 樹脂成分と、セルロースナノファイバーと、陰イオン性分散剤と、触媒とを含み、
    前記樹脂成分が、自己架橋性の水分散性ウレタン樹脂であり、
    前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバーであり、
    前記陰イオン性分散剤が、アクリルスルホン酸系分散剤、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体、アクリルカルボン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物。
  10. 前記セルロースナノファイバーの少なくとも一部が、前記陰イオン性分散剤とイオン結合する、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 前記セルロースナノファイバー間の架橋構造、前記セルロースナノファイバーと前記樹脂成分との間の架橋構造、および前記樹脂成分間の架橋構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の架橋構造を有する架橋体である、請求項7~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12. 下記式で表わされる架橋度(ゲル分率、%)が20~98%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
    ゲル分率=[不溶解分重量(g)/初期乾燥重量(g)]×100
    〔式中、初期乾燥重量は、樹脂組成物を100℃で2時間乾燥させて得られた乾燥物の重量である。不溶解分重量は、前記乾燥物を常温下メタノール中に24時間浸漬した液から、定量ろ紙により分取した残渣を100℃で2時間乾燥させた後の重量である。〕
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
    前記セルロースナノファイバーと前記陰イオン性分散剤との混合により、前記セルロースナノファイバーの予備分散体を得る工程と、
    前記予備分散体、前記樹脂成分、および、多官能性モノマー、多官能性樹脂、架橋助剤、有機過酸化物、重合開始剤及び酸触媒よりなる群から選ばれた少なくとも1種を溶剤中で撹拌および混合して前記樹脂組成物を得る工程と、
    前記樹脂組成物を乾燥させて乾燥体またはその成形体を得る工程と、
    前記乾燥体または成形体に架橋処理をする工程と、
    を含む、樹脂組成物の製造方法。
  14. 前記架橋処理が、加熱による化学的架橋または紫外線、電子線及びγ線よりなる群から選ばれた少なくとも1種の電離放射線の照射による物理的架橋である、請求項13に記載の樹脂組成物の製造方法。
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