JP7007837B2 - 水中用しゅう動部材組成物および水中用しゅう動部材の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、高分子ゲルはフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂から選ばれた1つの樹脂の多孔質体に含浸後、架橋させて前記樹脂からなる軸受との接着性を向上させている。当該多孔質体の作製方法としては、焼結法、有機溶媒や超臨界流体抽出法、発泡法などを挙げられるが、前記の方法は、いずれも手間がかかり、製造コストアップの要因となる。
〔2〕 前記(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂が(B-1)自己架橋性樹脂である、[1]に記載の水潤滑用しゅう動部材組成物。
〔3〕 (D)架橋成分をさらに含み、前記(D)架橋成分が、前記(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂に反応可能な架橋剤および架橋助剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕に記載の水潤滑用しゅう動部材組成物。
〔4〕 前記(A)未変性セルロースナノファイバー、(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂、および(C)水溶性分散剤、(D) 架橋成分の混合物が、機械的解繊手段により解繊処理かつ分散処理され、(A)未変性セルロースナノファイバーに(C)前記水溶性分散剤が吸着しており、かつ(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂および水系溶媒中に均一分散させたものである、〔1〕~〔3〕に記載の水潤滑用しゅう動部材組成物の製造方法。
〔5〕 〔1〕~〔4〕に記載の水潤滑用しゅう動部材組成物から脱溶媒した後に、化学的架橋あるいは物理架橋された水潤滑用しゅう動部材組成物の製造方法。
〔6〕 〔1〕~〔5〕に記載のしゅう動部材組成物からなるしゅう動部材。
疎水性樹脂にセルロースナノファイバーを分散させるため、セルロースナノファイバーを疎水変性するには複雑な化学反応工程を要し、組成物のコストとしては高いものとなる。
未変性セルロースナノファイバーを含む、水溶性又は水分散性を有する架橋性の合成樹脂架橋体は、水中あるいは水潤滑条件下で優れた低摩耗性、低摩擦性を示すことを見出し、本発明をなすにいたった。
好ましいポリエステル繊維としてはポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBT)などが挙げられ、アラミド繊維としては、ケブラー(商品名、東レ・デュポン(株)製)、コーネックス、テクノーラ、トワロン(いずれも商品名、帝人(株)製)などが挙げられ、セルロース繊維としては、テンセル(商品名、レンチン社製)、フォレッセ(商品名、東レ(株)製〕などを挙げることができる。
また、これら各発泡剤の誘導体や、安定性、分散性などを向上させる処理をした発泡剤なども使用できる。また、樹脂などでカプセル化された発泡剤(マイクロカプセル発泡剤)も使用できる。
上記の発泡剤のなかでは、水系で使用可能な超臨界流体、揮発系発泡剤、脂肪族炭化水素が好ましい。中でも、発泡剤成分が樹脂組成物内に残留せず、しゅう動特性に影響を与えない、超臨界二酸化炭素、又は超臨界窒素から選ばれる、超臨界流体が好ましい。
未変性セルロースナノファイバーは、化学処理(化学的解繊とは異なる)を施さず、その分子鎖中及び/又は分子鎖末端のセルロース由来の水酸基が疎水変性されていない又は水酸基以外の官能基でブロックされていないセルロースナノファイバーであり、本発明では植物由来のパルプ等のセルロース原料を後述する機械的解繊によって解きほぐすことにより得られる繊維状物質である。セルロース原料は、例えば、一のセルロースナノファイバー内にて表面の複数の水酸基が水素結合を形成することにより、また、一のセルロースナノファイバー表面の水酸基と他のセルロースナノファイバー表面の水酸基とが水素結合を形成することにより、凝集体を含んでいることがある。この凝集体は、機械的解繊処理等により、容易に解きほぐすことがてきる。
また、本発明で使用する未変性セルロースナノファイバーは、機械的解繊処理を施すことにより、繊維径10~100nmの範囲の未変性セルロースナノファイバーを含むものになるという特徴がある。
本発明では、架橋性を有する合成樹脂は好ましくは溶液又は分散液の形態で用いられる。合成樹脂が水溶性である場合、合成樹脂の溶液は、合成樹脂を水系溶媒に溶解させた溶液であることが好ましい。水系溶媒とは、水、水に溶解可能な有機溶媒、及び水と水に溶解可能な有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。また、合成樹脂が水分散性である場合、合成樹脂の分散液は、前記と同様の水系溶媒を分散媒として用いる強制乳化型エマルジョン、自己乳化型エマルジョンなどのエマルジョン、スラリーなどであることが好ましい。強制乳化型エマルジョンは、界面活性剤やその他の乳化剤を用いて合成樹脂を水系溶媒に分散させたものである。自己乳化型エマルジョンは、合成樹脂の主鎖骨格に側鎖および/又は末端基として親水性基を導入することにより、合成樹脂を水系溶媒に分散させたものである。水系溶媒の中でも、水、水と水溶性溶媒との混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
所定の機械的強度を兼ね備え、水中で低摩擦、低摩耗特性を発揮する架橋性樹脂としては架橋性合成樹脂が好ましく、未変性セルロースナノファイバーの架橋性樹脂への分散性等の観点から、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂、ポリカルボン酸系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましい。これらのうち、ポリビニルアルコール樹脂及びエチレンビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂は、機械的強度、低摩擦性、低摩耗性等に優れ、未変性セルロースナノファイバー間の隙間に容易に侵入し、セルロースナノファイバーと架橋製樹脂との接着性が高く、セルロースナノファイバーがしゅう動時のせん断力で容易には樹脂相から抜け落ちにくいために摩耗量が低く、耐摩耗性に優れ、かつ真実接触面積が小さくなることで低摩擦特性を発揮する成形体、シート、フィルム等を作製することができる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、両者を任意の割合でブレンドして用いてもよい。
分散剤は水溶性分散剤であり、好ましくは未変性セルロースナノファイバーが表面に有する水酸基などの官能基とイオン結合可能な水溶性分散剤であり、より好ましくは未変性セルロースナノファイバーが表面に有する水酸基などの官能基とイオン結合可能でありかつ静電反発力などにより本発明の樹脂組成物中での未変性セルロースナノファイバーの分散性及び分散安定性を高め得るような分散剤である。該分散剤としては、前述のように水溶性であれば特に限定されないが、陰イオン性分散剤を好ましく使用できる。陰イオン性分散剤としては、例えば、リン酸基、-COOH基、-SO3H基、これらの金属エステル基、及びイミダゾリン基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体などが挙げられる。陰イオン性分散剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の製造方法で使用する架橋剤は、主に架橋性樹脂が有する架橋性基、架橋構造や、ナノセルロースがその表面に有する官能基と架橋反応を起こすものである。該架橋反応の結果、架橋性樹脂間、未変性セルロースナノファイバー間、架橋性樹脂と未変性セルロースナノファイバーとの間の少なくとも1つに、架橋剤に由来する架橋構造が形成され、得られる本発明の樹脂組成物の機械的特性やしゅう動特性が向上する。
また、本発明では、得られる本発明樹脂組成物の好ましい特性を損なわない範囲で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、ヒンダードフェノール、リン酸エステルや亜リン酸エステルなどの酸化防止剤、耐熱安定剤、トリアジン系化合物などの耐候性付与剤等の安定剤、ガラス繊維等の繊維状充填材、ガラスビーズ、金属粉末、シリカ等の粉状充填材、顔料、染料等の着色剤、滑剤、揆水剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤、消泡剤、金属石鹸、有機シラン、有機金属化合物、防腐剤などを配合することができる。これらの添加剤は、上記した各成分と共に同時に一段で混合してもよく、また、得られた本発明の樹脂組成物に添加及び混合してもよい。
予備混合工程では、水系溶媒に、未変性セルロースナノファイバー、水溶性又は水分散性を有する合成樹脂、水溶性分散剤、水溶性又は水分散性を有する合成樹脂に反応可能な架橋成分、及び他の添加剤より成る群から選ばれる少なくとも1種を添加及び混合する。未変性セルロースナノファイバー、合成樹脂、水溶性分散剤、その他添加剤などを水系溶媒に添加する場合は、機械的解繊処理を行うことなく単に混合だけを行なうことにより、予備混合物(ア)が得られる。また、未変性セルロースナノファイバー及び分散剤を水系溶媒に添加及び混合して予備混合物(イ)を得る場合は、機械的解繊処理下に混合を行なってもよく、単なる混合のみを行なってもよい。ここでの混合には、例えば、ホモジナイザー、ロッキングミル、ヘンシェルミキサー、インラインミキサー、二軸ニーダー等の混合装置が用いられる。なお、合成樹脂が自己架橋性を有さない架橋性樹脂である場合は、架橋性樹脂と共に架橋剤を用いることが好ましい。
混合工程では、未変性セルロースナノファイバー、水溶性又は水分散性を有する合成樹脂、水溶性分散剤、水系溶媒、架橋性分、及び必要に応じてその他の添加剤などを機械的解繊処理下に一段で混合する。合成樹脂が自己架橋性を有さない架橋性樹脂である場合は、架橋性樹脂と共に架橋剤を併用することが好ましい。また、混合工程では、予備混合工程で得られた予備混合物(ア)に機械的解繊処理を施してもよく、予備混合物(イ)にさらに合成樹脂、水系溶媒等を添加及び混合する二段混合を行ないつつ、機械的解繊処理を施してもよい。ここで、一段での混合とは、上記した各成分を同一容器に一度に投入して混合することを意味する。混合工程では、合成樹脂は、得られる樹脂組成物の水系溶媒溶液又は水系溶媒分散液(以下これらを「樹脂組成物の溶液又は分散液」という)中での未変性セルロースナノファイバーの分散性などの観点から、溶液又は分散液の形態で用いることが好ましく、水系溶媒溶液又は水系溶媒分散液の形態で用いることがより好ましい。また、ナノファイバー、分散剤、架橋剤、その他の添加剤は、それぞれ別々に水系溶媒に溶解又は分散させた形態で用いてもよい。
架橋工程では、混合工程で得られた本発明の樹脂組成物の溶液又は分散液に対して架橋処理を施す。このとき、樹脂組成物が架橋性樹脂及び架橋剤を含む場合、又は樹脂組成物が自己架橋性樹脂及び必要に応じて架橋剤を含む場合は、少なくとも一部の未変性セルロースナノファイバー間、少なくとも一部の未変性セルロースナノファイバーと少なくとも一部の架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)との間、および少なくとも一部の架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)間の1又は2以上に架橋剤及び/又は自己架橋性樹脂による架橋構造が形成された架橋体を含む本発明の樹脂組成物の架橋体の溶液又は分散液が得られる。これを後述する成形工程に従って成形することにより、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、耐傷つき性、吸水性、保水性、ガスバリア性、自己修復性などが一層向上した、架橋構造を含む成形品が得られる。また本発明では、水系溶媒を分散媒として用いているので、本発明の樹脂組成物の溶液又は分散液にそのまま架橋処理を施しても、安全性が高いという利点がある。
成形工程では、本発明樹脂組成物又はその架橋体の溶液又は分散液を成形する。すなわち、樹脂組成物又はその架橋体の溶液又は分散液から水系溶媒を除去しながら成形することにより成形品が得られる。また、樹脂組成物又はその架橋体の溶液又は分散液から水系溶媒を除去した固形分を成形することにより、成形品が得られる。ここで、成形方法としては、樹脂溶液又は樹脂分散液から成形品を得るための公知の方法を限定なく利用できるが、樹脂組成物又はその架橋体に含まれる架橋性樹脂(又は自己架橋性樹脂)の種類などに応じて成形方法を適宜選択することが好ましい。
セルロースナノファイバーの水分散体を抄紙する方法は、特に限定されず、通常、紙を作るときに用いられる方法でよい。水に対するセルロースナノファイバーの濃度は、抄造性、流動性の点から考えると、0.01~10重量%、好ましくは0.02~5重量%が好ましく、分散剤の濃度はセルロースナノファイバーの固形分に対し、好ましくは0.1~50重量%、さらに好ましくは1~20重量%、より好ましくは5~20重量%含まれる。セルロースナノファイバーの分散体の分散媒の含有量は、好ましくは50~99.9重量%、さらに好ましくは60~99.5重量%、より好ましくは70~99重量%である。
セルロースナノファイバーシートに水溶性樹脂を含浸する方法としては、あらかじめ抄紙法で作製したセルロースナノファイバーシートを、所定のサイズの浅型容器の底面と同形状、同寸法に切り取り、容器の底面に設置して、所定濃度の水溶性樹脂および所定量の架橋剤を配合、溶解、混合した水溶液を、該容器に注ぎこみ、乾燥させる。乾燥手段としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などの公知の方法を採用することができる。
ポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA-250、水溶性及び生分解性を有する、クラレ(株)製)は、10重量%水溶液として用いた。以下「PVA樹脂」と呼ぶことがある。
未変性セルロースナノファイバー(商品名:BiNFi-s、(株)スギノマシン製)5重量%水分散液として用いた。以下、「未変性CNF」と呼ぶことがある。
アクリルスルホン酸系分散剤(商品名:アロン A-6012、水溶性、東亞合成(株)製)をそのまま用いた。
加熱処理による化学架橋には、両末端イソシアネート型ポリカルボジイミド(商品名:カルボジライトVS-02、多官能性樹脂、日清紡ケミカル(株)製)40重量%水溶液として用いた。以下「カルボジライト」と呼ぶことがある。
アペックスディスパーザーZERO(商品名、(株)広島メタル&マシナリー製)を用いた。
実施例および比較例で得られた樹脂組成物の水分散液を電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM)で観察し、電子顕微鏡写真(50000倍)を撮影した。撮影した写真上において、写真を横切る任意の位置に、20本以上のナノファイバーと交差する2本の線を引き、線と交差する全てのナノファイバーり繊維径を測定し、得られた測定値(n=20以上)の算術平均値として平均繊維径(nm)を算出した。なお、繊維径の測定値に基づいて、繊維径分布の標準偏差およびナノファイバーの最大繊維径を求めることもできる。
酸素プラズマで親水化処理したガラス基板上に、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の水分散液を速度3m/sでバーコーター塗布し、自然乾燥し、100mm×200mm×厚さ5μmのコーティング膜を形成した。このコーティング膜を170℃で20分間加熱し、化学架橋を行ない、架橋コーティング膜(コーティング膜の架橋体)を得た。得られた架橋コーティング膜の水への可溶分の有無からゲル化の有無を判定した。
架橋度としてゲル分率を求めた。実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の水系溶媒分散液を、100℃で2時間乾燥した後にその重量を秤量し、初期乾燥重量(g)を求めた。初期乾燥重量を秤量した試料を常温で24時間浸漬し後、溶解残渣を定量ろ紙でろ取し、100℃で2時間乾燥した後に秤量して、不溶解分重量(g)を求めた。ゲル分率は下記の式から算出される。
水潤滑条件でのしゅう動特性は、ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機により、樹脂製ピン試料の金属ディスクに対する摩擦摩耗特性を調べた。試験では、ディクス内外径部上側に壁面を設け、摺動トラック部に精製水を溜めることで、水による流体潤滑条件(水中条件)でのしゅう動特性を測定した。
該試験における相手ディスク材料は、SUS304製ディスクの表面を、#240フラップホイールを用いて研磨することで表面粗さを調整した。ピン試料は、SUS304製の円柱状ピンホルダ(φ5×10L)の端面に、本発明による水中用しゅう動部材組成物の架橋体を接着剤で貼り付け、外径を機械加工で直径5mmに仕上げたものを試験に用いた。し、架橋処理を行なってからしゅう動試験を行なった。しゅう動試験用試料が固体である場合は、φ5サイズに加工した円盤状試料を前記ピンホルダに接着剤で貼付して用いた。試験条件を以下に示す。
試験装置 :ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機(オートピンディスク、スターライト工業(株)製)
相手ディスク:SUS304 (φ70×φ20×7t、Ra=0.3μm)
しゅう動円直径 :50 mm
試験荷重 :1 MPa
試験速度 :0.5 m/sec
試験温度 : 常温
試験時間 : 20hrs
測定項目 : 摩擦係数、 摩耗係数
なお、水潤滑しゅう動特性の評価は、以下の基準として、摩耗粉の状態は目視判定とした。
○ : 摩擦係数が低く、やや摩耗がある (摩耗粉が微量発生)
△ : 摩擦係数はやや高く、やや摩耗する(摩耗粉が微量発生)
× : 摩擦係数はやや高く、摩耗が多い(摩耗粉発生が多い)
水溶性あるいは水分散性を有する合成樹脂として、ポリビニルアルコール樹脂(ポバール PVA-205、(株)クラレ製)を用いた。当該ポリビニルアルコール樹脂20gに、架橋剤としてカルボジライト(VS-02、日清紡ケミカル(株)製)を1g(PVA樹脂に対して5重量%)、未変性セルロースナノファイバー(BiNFi-s、(株)スギノマシン製)を固形分換算で0.2g(ポリビニルアルコール樹脂に対して1重量%)、アクリルスルホン酸系分散剤(アロンA-6012、東亞合成(株)製)を0.01g(未変性CNFに対して5重量%)、および精製水200gを、高速回転型メディアレス分散機(アペックスディスパーサーZERO)に同時に投入し、せん断部クリアランス1mm、ロータの回転周速45m/sに設定して、10分間の解繊処理を5回繰り返した(表1では「一段法」と表記)。これにより、固形分含量10重量%で白濁液状の本発明の樹脂組成物の水分散液(以下単に「水分散液(L)」と呼ぶことがある)を調製した。
また、曲げ試験は、前記の曲げ試験片を測定試料として、JIS K7171に準じてオートグラフ(AGX-Plus、(株)島津製作所製)を用いて、3点曲げ法で行なった。
前述の実施例1において作製した水中用しゅう動部材組成物を用いて、水潤滑条件でのしゅう動試験を行なった。しゅう動試験にはピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を使用した。
しゅう動試験に用いるピン試料は、SUS304製のピンホルダー(φ5×10L)の端面に厚さ1mmになるよう、前記水分散液(A)にディップコートし、80℃×12hr乾燥後、同様に150℃×1hrの加熱処理で化学架橋を行った。この試料を用いて、SUS304ディスク(Ra=0.3μm)のしゅう動面に水を溜め、ピンディスク試験機により水潤滑条件の摩擦摩耗試験を行なった。摩擦摩耗試験の試験条件は前述のとおりとした。試験中は小型定量ポンプによりしゅう動部に水を供給し、一定の水潤滑状態を保持できるようにした。
実施例1と同様に操作して、水分散液(A)を流延して得た試験用素材を機械加工して曲げ試験片を作製し、架橋前に超臨界流体を用いて該曲げ試験片を微細発泡体とした。微細発泡は以下の方法によった。
前記の方法で作製した曲げ試験片を、同寸法のSUS製の板(1t)および金属クリップでクランプしてから、高圧容器に入れ、二酸化炭素を充填し、圧力10MPa、温度90℃で5時間保持した後、二酸化炭素を大気(1.01325×105Pa)中に一気に開放し、試験片を発泡させて発泡体を得た。超臨界流体処理には、日本分光株式会社製の超臨界流体システムを用いた。
得られた発泡体は、目視で微小な気泡が多数見られ、水中置換法で求めた発泡倍率は約1.4であった。
得られた発泡体を、実施例1と同様に操作して、架橋処理を行ない、実施例1と同様の評価を行なった。
実施例1において、ポリビニルアルコールに代えてポリアミド11樹脂(リルサン BMNO、アルケマ(株)製)を用い、また溶媒を精製水からメタノール(試薬1級)として、ポリアミド11樹脂のメタノール溶液(濃度20重量%)とし、また架橋剤をトリアリルイソシアネート(TAIC、日本化成(株)製)、該分散液の乾燥条件としては、60℃×10時間とした以外は実施例1と同様に操作して、ナイロン11樹脂/未変性セルロースナノファイバーのメタノール/水分散液(B)を調製した。
得られたメタノール/水分散液(B)の外観は白濁液状で、未変性セルロースナノファイバーの分散ムラや凝集は見られず、またこのメタノール/水分散液を24時間以上静置しても未変性セルロースナノファイバーの沈殿は見られず、安定したスラリーであった。流延法により作製した板状試験片の架橋処理は、紫外線を1,000mJ/cm2照射して物理架橋処理を行なったのち、実施例1、2と同様の評価を行なった。また、水潤滑しゅう動試験用のピン資料も実施例1と同様の方法で作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
前記未変性セルロースナノファイバーの1重量%水分散液に、アクリルスルホン酸系分散剤(アロンA-6012、東亞合成(株)製)を未変性セルロースナノファイバー固形分に対して5重量%加え、高速回転型メディアレス分散機(アペックスディスパーサーZERO)にて、せん断部クリアランス1mm、ロータの回転周速45m/sの条件で、10分間の解繊処理を5回繰り返してセルロースナノファイバー水分散液を得た。該水分散液を吸引ろ過法により抄紙して、80℃×24hr乾燥して厚さ0,1mmのセルロースナノファイバーシートを作製した。
該物理架橋シートからなるセルロースナノファイバー/ポリビニルブチラール樹脂成形体から、機械加工にて80×10×1tの直方体を作製し、前記曲げ試験を行なった。また、加工残材を用いて実施例1と同様に、水への溶解性、水膨潤性、ゲル分率を評価した。結果を表1に示す。
実施例5において、ポリビニルブチラール樹脂に代えて、水溶性自己架橋性樹脂であるアクリル-ウレタン樹脂エマルジョン(ボンコート CG-5010EF、DIC(株)製)として、かつ架橋剤を加えない以外は、実施例5と同様に操作して、同様の評価を行なった。当該未変性セルロースナノファイバー/アクリルウレタン樹脂シートの樹脂含有量は50重量%であった。結果を表1に示す。
実施例1において、未変性セルロースナノファイバオーの添加量を固形分換算で3重量%、5重量%、10重量%とした以外は同様に操作し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、未変性セルロースナノファイバーを疎水変性セルロースナノファイバー(T-NP101,星光PMC(株)製)に置き換え、分散剤を添加しない以外は実施例1と同様に操作して、分散液の調製、成形体の架橋処理、および試験片の作製を行ない、曲げ特性を測定しない他は同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤を添加せず架橋処理を行なわない以外は、実施例1と同様に操作して、分散液の調製、成形体の架橋処理、および試験片の作製を行ない、比較例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例3において、未変性セルロースナノファイバーを疎水変性セルロースナノファイバー(T-NP101,星光PMC(株)製)に置き換え、分散剤を添加しない以外は実施例3と同様に操作して、分散液の調製、成形体の架橋処理、および試験片の作成を行ない、比較例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
未変性セルロースナノファイバー(BiNFi-s、(株)スギノマシン製)に分散剤(アロンA-6012、東亞合成(株)製)を未変性セルロースナノファイバーの固形分に対し5重量%加えて、高速回転型メディアレス分散機(アペックスディスパーサーZERO)にて、せん断部クリアランス1mm、ロータの回転周速45m/sの条件で、10分間の解繊処理を5回繰り返してセルロースナノファイバー分散液を得た。当該分散液を凍結乾燥して、分散剤を含む未変性セルロースナノファイバーの粉体を得た。
次いで、ポリプロピレン樹脂(プライムポリプロ J106MG、(株)プライムポリマー製)に、該粉体を1重量%添加し、二軸混練押出機(BT―30、(株)プラスチック工学研究所製、L/D=30)にて混練して射出成形用ペレットを作製した。該ペレットを用いて射出成形により、80×10×1.5mmの平板試験片、およびφ5×10Lの円柱状ピン試料を作製した。該ピン試験片を用いて、実施例5~6と同様に操作して、水潤滑条件でのしゅう動試験を行なった。結果を表1に示す。
成形用PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粉末(テフロン(登録商標)7J、三井デュポンフルオロケミカル(株)製)にミルドガラス繊維(EFH30-01、セントラル硝子(株)製)を20重量%添加し、充分に混合後に、室温で圧縮成形によりφ50×25Lの円柱状プリフォームを作製した。該プリフォームを360℃×5hrで焼成し、ガラス繊維入りPTFEの成形体を得た。該成形体を機械加工して、80×10×1.5mmの平板試験片、およびφ5×10Lのしゅう動試験用ピン試料を作製した。該ピン試料を用いて、実施例5~6と同様に操作して、水潤滑条件でのしゅう動試験を行なった。結果を表1に示す。
熱可塑性樹脂であるPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)ベースのすべり軸受材料であるエスベアS2270(スターライト工業(株)製)の射出成形体を用いて、機械加工により80×10×1.5mmの平板試験片、およびφ5×10Lのしゅう動試験用ピン試料を作製し、実施例5~6と同様に操作して、水潤滑条件でのしゅう動試験を行なった。結果を表1に示す。
以下の評価は、材料調製手段あるいは樹脂種の異なる未変性セルロースナノファイバー/水溶性又は水分散性を有する合成樹脂からなる組成物からしゅう動部材を形成した場合の、該しゅう動部材の諸特性を比較したものであり、未変性セルロースナノファイバー/水溶性又は水分散性を有する合成樹脂分散体全般の特性を評価するものではない。
ポリビニルアルコール樹脂(セルロースナノファイバー1重量%)は、曲げ強度、曲げ弾性率ともにはほぼ同レベルの値であった。ポリアミド11では実施例3(CNF1重量%)のほうがやや曲げ強度、曲げ弾性率共に、やや高い数値を示した。ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド11樹脂いずれにおいても、マトリックス樹脂単体の架橋体との比較でセルロースナノファイバーによる補強効果は確認できたが、その程度は少ないと考える。
未変性セルロースナノファイバーは、セルロースユニットあたり3ヶの水酸基を有し、樹脂との架橋反応が可能である。これに対し、 疎水変性セルロールナノファイバーは、セルロースの水酸基が疎水基で変性されており、架橋反応が充分に進まず、未架橋性分を含んでおり、この部分が水に溶出すると考える。
ポリビニルアルコールに未変性セルロースナノファイバー(分散剤を含まない)を添加し、架橋処理を行なわないと、水への溶解性を示し、かつ曲げ強度、曲げ弾性率は低い値を示した(比較例2)。
Claims (5)
- (A)未変性セルロースナノファイバー、および(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂、(C)水溶性分散剤、及び(D)架橋成分を含む、水潤滑用しゅう動部材組成物であって、
前記(A)未変性セルロースナノファイバーは、繊維表面に有する水酸基に、陰イオン性分散剤からなる(C)水溶性分散剤がイオン結合しており、
前記(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリアミド11、ポリビニルブチラール、水溶性ウレタンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(D)架橋成分が、前記(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂に反応可能な架橋剤および架橋助剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、水潤滑用しゅう動部材組成物。
- 前記(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂が、(B-1)自己架橋性樹脂である、請求項1に記載の水潤件用しゅう動部材組成物。
- 前記(A)未変性セルロースナノファイバー、前記(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂、および前記(C)水溶性分散剤、前記(D) 架橋成分の混合物が、機械的解繊手段により解繊処理かつ分散処理され、(A)未変性セルロースナノファイバーと前記(C)水溶性分散剤がイオン結合体を形成しており、かつ前記(A)未変性セルロースナノファイバーを前記(B)水溶性又は水分散性を有する合成樹脂および水系溶媒中に均一分散させたものである、請求項1~2に記載の水潤滑用しゅう動部材組成物の製造方法。
- 請求項3に記載の水潤滑用しゅう動部材組成物の製造方法において、得られた水潤滑用しゅう動部材組成物から脱溶媒した後に成形し、化学的架橋あるいは物理架橋された水潤滑用しゅう動部材組成物の製造方法。
- 請求項1、2に記載の水潤滑用しゅう動部材組成物からなる水潤滑用しゅう動部材。
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