JP7183852B2 - 光学フィルム及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法に関する。
近年、折り曲げ可能なディスプレイが開発されている。このような折り曲げ可能なディスプレイに用いられる基材や表面材などとして、特定の材料を用いたフィルムが開発されている(特許文献1)。
特開2018-028073号公報
折り曲げ可能なディスプレイの中には、長時間折り曲げられた状態に置かれるものもあり、折り曲げ可能なディスプレイに用いられるフィルムも、長時間折り曲げられた状態に置かれうる。
したがって、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合に、変形が抑制されている光学フィルム;かかる光学フィルムの製造方法が求められている。
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、光学フィルムの応力緩和率Rが、所定の値以下である場合に、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1] 引張応力緩和試験において、応力緩和率Rが、少なくとも一の引張方向Dにおいて1.5%以下である光学フィルムであって、
前記引張応力緩和試験が、前記光学フィルムに引張力を与えて、0.5%の引張ひずみを印加し、前記0.5%の引張ひずみを印加した時から300秒後まで前記引張ひずみを保持する試験であり、
前記応力緩和率Rは、下記式(1):
R(%)=(σ-σ300)/σ×100 (1)
から算出され、ここで、σは、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時における前記光学フィルムの引張応力を表し、σ300は、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時から300秒後における前記光学フィルムの引張応力を表す、光学フィルム。
[2] 厚みが60μm以下である、[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記引張方向Dにおける引張弾性率が4000MPa以下である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4] フィルムに引張力を与えて、0.5%以上の引張ひずみを印加し、1分間以上前記引張ひずみを保持する工程(1)、及び
前記フィルムから、前記引張力を除く工程(2)をこの順で含む、光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合に、変形が抑制されている光学フィルム;かかる光学フィルムの製造方法を提供できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の文言は、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する。
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
[1.光学フィルムの概要]
本発明の一実施形態である光学フィルムは、引張応力緩和試験において、応力緩和率Rが、少なくとも一の引張方向Dにおいて1.5%以下である。
[1.1.引張応力緩和試験]
応力緩和率Rを測定するための引張応力緩和試験とは、光学フィルムに引張力を与えて、0.5%の引張ひずみを印加し、前記0.5%の引張ひずみを印加した時から300秒後まで前記引張ひずみを保持する試験である。
通常光学フィルムから、JIS K7127に従ったタイプ1Bのダンベル形状である試験片を打ち抜き、この試験片について引張応力緩和試験を行う。
試験片を打ち抜く際に、試験片の長手方向は、光学フィルムの任意の方向と平行な方向とすることができ、例えば、後述する引張処理における引張方向と平行な方向、後述する引張処理が行われていない場合は、フィルム製造時の搬送方向と平行な方向とすることができる。複数の試験片を、長手方向が光学フィルムにおける種々の方向と平行となるように光学フィルムから打ち抜き、これらの複数の試験片について引張応力緩和試験を行ってもよい。
引張応力緩和試験には、通常、引張試験機を用いる。引張応力緩和試験の温度及び湿度条件は、通常、23℃及び40%RHである。
引張応力緩和試験では、試験片の長手方向の両端部を、それぞれ引張試験機のチャックで固定し、長手方向を引張方向として、引張力を与える。引張速度は、通常20mm/min(ひずみ速度13%/min)である。引張方向におけるひずみ(引張ひずみ)が0.5%に達したときのチャックの間隔を保持して、試験片に0.5%の引張ひずみを印加する。ひずみが0.5%に達した時から300秒後まで、0.5%のひずみを保持し、その間の応力値を測定する。
ひずみが0.5%に達した時の応力値をσとし、ひずみが0.5%に達した時から300秒後における応力値をσ300として、下記式(1)に従って、応力緩和率Rを求める。
R(%)=(σ-σ300)/σ×100 (1)
応力緩和率Rは、通常1.5%以下であり、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.8%以下であり、通常0%以上であり、0.1%以上であってもよい。
応力緩和率Rが、前記範囲に収まることにより、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合における、光学フィルムの変形が抑制されうる。
光学フィルムの変形が抑制されていることは、静的屈曲試験における光学フィルムの耐屈曲性が良好であることで確認できる。具体的には、下記試験により確認できる。まず、光学フィルムを折り曲げて2枚の板の間に挟む。2枚の板の隙間は、4mmとし、フィルムの曲げ半径が2mmとなるようにする。2枚の板の間にフィルムを挟んだ状態で24時間静置した後に、折り曲げられた光学フィルムを広げ、光学フィルムに変形が見られないことを目視にて判定する。光学フィルムに変形が見られない場合、静的屈曲試験における光学フィルムの耐屈曲性が良好であると判断できる。
応力緩和率Rは、通常光学フィルムの少なくとも一の引張方向Dについて前記範囲内に収まる。したがって、光学フィルムのある方向について測定された応力緩和率Rが1.5%を超えていても、光学フィルムの別の方向について測定された応力緩和率Rが1.5%以下であれば、静的屈曲試験における光学フィルムの耐屈曲性を良好にできる。よって、光学フィルムの種々の方向と平行となるように打ち抜かれた、複数の試験片から得られた応力緩和率Rの値が、すべて1.5%以下であってもよく、いずれかが1.5%以下であってもよい。
[1.2.光学フィルムのその他の物性]
光学フィルムは、引張方向Dにおける引張弾性率が、好ましくは4000MPa以下、より好ましくは3500MPa以下、更に好ましくは3000MPa以下であり、通常0MPa以上であり、500MPa以上であってもよい。
引張弾性率は、前記引張応力緩和試験において応力緩和率Rが1.5%以下である光学フィルムの方向(引張方向D)を引張方向とした、引張方向Dにおける引張弾性率である。また、引張弾性率は、例えば、温度23℃、湿度40%RH、引張速度20mm/min(ひずみ速度13%/min)の測定条件で得られうる。
光学フィルムの厚みは、使用される用途に応じて、任意に選択できるが、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下であり、通常0μmより大きく、好ましくは10μm以上である。
[1.3.光学フィルムの材料]
光学フィルムは、通常熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、通常熱可塑性の重合体を含む。熱可塑性の重合体は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。
熱可塑性の重合体の例としては、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン);脂環式構造含有重合体(例、ノルボルネン系重合体);セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース);ポリ塩化ビニル;ポリビニルアルコール;ポリスチレン;ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート);ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;(メタ)アクリル重合体;及び、スチレン/アクリロニトリル共重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂は、熱可塑性の重合体を1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意の比率の組み合わせで含んでいてもよい。
光学フィルムに含まれうる重合体のガラス転移温度Tgは、好ましくは85℃以上であり、好ましくは170℃以下である。
光学フィルムに含まれうる重合体は、結晶性を有していてもよく、非晶性を有していてもよい。結晶性を有する重合体とは、融点Mpを有する重合体を意味する。融点Mpを有することは、示差走査熱量測定(DSC)で観測できる融点を有することで確認できる。
光学フィルムに含まれうる重合体が結晶性を有している場合、重合体の融点Mpは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。重合体の融点Mpが、前記範囲内であることにより、成形性と耐熱性とのバランスに優れた光学フィルムが得られる。
光学フィルムに含まれうる熱可塑性樹脂は、光学フィルムを構成する材料の総重量に対して、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95%重量以上、更に好ましくは98重量%以上であり、通常100重量%以下であり、特に好ましくは、光学フィルムは、熱可塑性樹脂のみからなる。
熱可塑性樹脂は、熱可塑性の重合体以外に、更に任意の成分を含みうる。任意の成分の例としては、酸化防止剤;光安定剤;ワックス;核剤;蛍光増白剤;無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;滑剤;及びフィラーが挙げられる。また、熱可塑性樹脂は、重合体以外の任意成分を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意の比率の組み合わせとして含んでいてもよい。熱可塑性の重合体以外の任意成分の量は、例えば、前記した熱可塑性の重合体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、更に好ましくは、3重量部以下であり、通常0重量部以上であり、0重量部であってもよい。
光学フィルムに含まれる樹脂としては、脂環式構造含有重合体を含む樹脂が好ましい。
光学フィルムに含まれる樹脂において、脂環式構造含有重合体の含有率は、好ましくは80重量%以上100重量%以下、より好ましくは90重量%以上100重量%以下、更に好ましくは95重量%以上100重量%以下である。
脂環式構造含有重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体をいう。脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造の例としては、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、更に好ましくは15個以下である。一つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が前記範囲内にあることで、脂環式構造含有重合体を含む樹脂の機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよく、主鎖及び側鎖の双方に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、少なくとも主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造含有重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、100重量%以下としうる。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択しうる。
脂環式構造含有重合体の例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体及びこれらの水素化物;並びに、ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物及びそのアルコキシシリル基変性物;が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性が良好であるので、ノルボルネン系重合体及びその水素化物、ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物及びそのアルコキシシリル基変性物が好ましい。脂環式構造含有重合体は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。
これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上、更に好ましくは20000以上であり、好ましくは90000以下、より好ましくは85000以下、更に好ましくは80000以下である。ノルボルネン系重合体及びその水素化物の重量平均分子量(Mw)が前記の範囲に収まることにより、光学フィルムの機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下であり、好ましくは1.0以上である。ノルボルネン系重合体及びその水素化物の分子量分布(Mw/Mn)が前記の範囲に収まることにより、光学フィルムの機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」などが挙げられる。
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を含む重合体の水素化物を意味する。芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位とは、芳香族ビニル化合物を重合して得られる構造を有する繰り返し単位を意味する。ただし、当該水素化物及びその構成単位は、その製造方法によっては限定されない。
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物は、ビニル芳香族炭化水素重合体が有する不飽和結合を水素化して得られる重合体である。ここで、水素化されるビニル芳香族炭化水素重合体の不飽和結合には、ビニル芳香族炭化水素重合体の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素-炭素不飽和結合の、いずれも含まれる。
繰り返し単位[I]に対応する芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類;4-クロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4-メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルコキシ基を有するスチレン類;4-フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、吸湿性を低くできることから、スチレン、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的入手のし易さから、スチレンが特に好ましい。
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を含む重合体の水素化物は、特定のブロック共重合体水素化物[H1]であることが好ましい。ブロック共重合体水素化物[H1]は、ブロック共重合体[1]の水素化物である。ブロック共重合体[1]は、ブロック共重合体[1]1分子当たり2個以上の重合体ブロック[A]と、ブロック共重合体[1]1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とからなる重合体ブロックである。重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである。ここで、「主成分」とは、重合体ブロック中で、50重量%以上である成分をいう。
鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して得られる構造を有する繰り返し単位を意味する。
繰り返し単位[II]に対応する鎖状共役ジエン化合物の例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、及び1,3-ペンタジエンが挙げられ、中でも1,3-ブタジエン及びイソプレンが好ましい。鎖状共役ジエン化合物として、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。鎖状共役ジエン化合物は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
ブロック共重合体[1]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもよく、ラジアル型ブロックでもよい。中でも、鎖状型ブロックが、機械的強度に優れ、好ましい。ブロック共重合体[1]が鎖状型ブロックの形態を有する場合、ブロック共重合体[1]の分子鎖の両端が重合体ブロック[A]であることが、光学フィルムのベタツキを所望の低い値に抑えることができるので、好ましい。
ブロック共重合体[1]の特に好ましいブロックの形態は、[A]-[B]-[A]で表されるように、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;[A]-[B]-[A]-[B]-[A]で表されるように、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体;である。特に、[A]-[B]-[A]のトリブロック共重合体であることが、製造が容易であり且つ物性を所望の範囲に容易に収めることができるため、好ましい。
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは100,000以下である。ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)が前記の範囲に収まることにより、光学フィルムの機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物の分子量分布(Mw/Mn)が前記の範囲に収まることにより、光学フィルムの機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
前記ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物のアルコキシシリル基変性物とは、前記のビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物に、アルコキシシリル基を導入して得られる重合体である。以下、ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物のアルコキシシリル基変性物を、単にアルコキシシリル基変性物ともいう。アルコキシシリル基は、前記の水素化物に直接結合していてもよく、例えばアルキレン基などの2価の有機基を介して間接的に結合していてもよい。アルコキシシリル基が導入されたアルコキシシリル基変性物は、ガラス、金属等の無機材料との接着性に特に優れる。そのため、アルコキシシリル基変性物を含む光学フィルムは、通常、前記の無機材料との接着性に優れる。
アルコキシシリル基変性物としては、ブロック共重合体水素化物[H1]のアルコキシシリル基変性物が好ましい。
[1.4.光学フィルムの構成]
光学フィルムは、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。好ましくは、光学フィルムは、単層構造を有する。光学フィルムには、コロナ処理などの表面処理、延伸処理などの、任意の処理が施されていてもよい。
[2.光学フィルムの製造方法]
前記光学フィルムの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは、光学フィルムは、フィルムに引張力を与えて、0.5%以上の引張ひずみを印加し、1分間以上前記引張ひずみを保持する工程(1)、及び前記フィルムから、前記引張力を除く工程(2)をこの順で含む方法により製造される。
[2.1.工程(1)]
工程(1)では、フィルムに引張力を与えて0.5%以上の引張ひずみを印加する。
引張力を与える引張処理を施すフィルム(引張処理前フィルム)は、通常熱可塑性樹脂を含む。フィルムに含まれうる熱可塑性樹脂としては、光学フィルムの材料として前記した熱可塑性樹脂から選択してよい。
工程(1)で用いられる引張処理前フィルムの製造方法には特に限定がなく、例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、及びカレンダー成形法が挙げられる。
引張ひずみとは、フィルムに与えた引張力の方向におけるひずみを意味する。引張ひずみがX%であるとは、引張力を与える前の、引張方向におけるフィルムの寸法を100%とした場合に、引張力を与えた後の引張方向におけるフィルムの寸法が、(100+X)%となっていることを意味する。
工程(1)において印加される引張ひずみは、通常0.5%以上であり、好ましくは0.7%以上、より好ましくは1.0%以上であり、好ましくは3.5%以下、より好ましくは3.0%以下、更に好ましくは2.5%以下である。引張ひずみが前記下限値以上であることにより、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合における変形が抑制された、光学フィルムを製造できる。また、引張ひずみが前記上限値以下であることにより、次の工程(2)において、フィルムから引張力を除いた後に、フィルムにひずみが残存することを抑制できる。ひずみの残存を抑制することで、工程(2)以降の工程で加熱された際の寸法変化を低減することができる。
工程(1)において、保持される所定の引張ひずみに達するまでのひずみ速度は、好ましくは5%/min以上、より好ましくは7%/min以上、更に好ましくは10%/min以上であり、好ましくは35%/min以下、より好ましくは30%/min以下、更に好ましくは25%/min以下である。
工程(1)において、フィルムに与える引張力の方向は、任意である。引張力の方向は、例えば、フィルムの長手方向及び/又は幅方向としてよい。またフィルムが長尺の場合、フィルムの引張力の方向は、例えばフィルムの搬送方向(MD)及び/又は搬送方向と直交する方向(TD)としてよい。
工程(1)において、フィルムの複数方向に、引張力を与えてもよいが、工程(1)において、フィルムのある一の方向にのみ、引張力を与えることが好ましい。
工程(1)において、フィルムに与える引張力は、一定値でなくともよい。通常、引張力は、0.5%以上の引張ひずみを所定時間以上保持できるようにフィルムに与えられる。
工程(1)を行う温度は、フィルムに使用される樹脂のガラス転移温度などに応じて、適宜設定できるが、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
工程(1)を行う湿度は、例えば20%RH以上60%RH以下としうる。
工程(1)において、フィルムに0.5%以上の引張ひずみを印加する装置の例としては、フィルムの延伸に用いられるテンター装置、縦延伸装置が挙げられる。
例えば、フィルムの、引張力を与える方向における両端部を治具により挟持し、治具を引張力の方向に移動させることにより、フィルムに引張ひずみを印加できる。治具は、フィルムの端部の全てを挟持するものであってもよく、複数の治具であってフィルムの端部に沿って互いに間隔を空けて並べられ、フィルムの端部を部分的に挟持するものであってもよい。
工程(1)において、0.5%以上の引張ひずみを印加してその引張ひずみを保持する時間は、通常30秒間以上、好ましくは50秒間以上、より好ましくは1分間以上であり、好ましくは15分間以下、より好ましくは10分間以下である。引張ひずみを保持する時間が、前記下限値以上であることにより、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合における変形が抑制された、光学フィルムを製造できる。
[2.2.工程(2)]
工程(2)は、通常工程(1)に連続して行われる。工程(2)では、フィルムから引張力を除く。フィルムから引張力を除くことにより、引張ひずみの少なくとも一部が解放される。引張力の除去は、例えば、フィルムを挟持する治具からフィルムを解放することによって行われる。フィルムから引張力を除くことにより、前記光学フィルムが得られる。
[2.3.任意の工程]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、前記工程(1)及び(2)以外に、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程の例としては、得られた光学フィルムを巻き取る工程、光学フィルムを切断する工程、光学フィルムにコロナ処理などの表面処理を施す工程、及び光学フィルムに粘着剤を塗布する工程が挙げられる。
[3.光学フィルムの用途]
光学フィルムは、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合における、変形が抑制されている。したがって、光学フィルムを、折り曲げ可能な装置(例えば、折り曲げ可能なディスプレイ)に好適に用いうる。具体的には、折り曲げ可能なディスプレイの保護フィルム、折り曲げ可能なディスプレイに搭載される偏光板の保護フィルム、折り曲げ可能なタッチパネルの基材フィルムなどとして好適に用いうる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(応力緩和率R)
測定対象のフィルムから、JIS K7127に従ったタイプ1Bのダンベル形状である試験片を打ち抜いた。測定対象のフィルムが、引張処理がされているフィルムである場合、試験片の長手方向が引張処理の方向と平行となるように打ち抜いた。測定対象のフィルムが、引張処理がされていないフィルムである場合、試験片の長手方向がフィルム製造時の搬送方向と平行となるように試験片を打ち抜いた。測定装置として、恒温恒湿槽付の引張試験機(インストロン社製「5564型」)を用い、23℃、40%RHの条件で測定を行った。試験片の長手方向の両端部をそれぞれチャックで固定し、長手方向を引張方向として、引張力を加えた。引張速度は20mm/min(ひずみ速度13%/min)とした。引張方向におけるひずみ(引張ひずみ)が0.5%に達したときのチャックの間隔を保持して、試験片に0.5%の引張ひずみを印加した。ひずみが0.5%に達した時の応力値をσとした。ひずみが0.5%に達した時から300秒後まで、0.5%のひずみを保持し、その間の応力値を測定し、300秒後における応力値をσ300として、応力緩和率R(%)を、下記式(1)から算出した。
R(%)=(σ-σ300)/σ×100 (1)
(引張弾性率)
JIS K7127に準拠して、23℃40%RHにおける測定対象のフィルムの引張弾性率を測定した。測定対象のフィルムから、長手方向が、フィルムの搬送方向(MD)と平行となるように、5片の試験片を打ち抜いた。測定装置として、恒温恒湿槽付の引張試験機(インストロン社製「5564型」)を用いた。引張速度は、20mm/min(ひずみ速度13%/min)とし、MDに沿って打ち抜かれた試験片(N=5)の引張弾性率の平均値を、フィルムの引張弾性率とした。
(静的屈曲試験による耐屈曲性の評価)
測定対象のフィルムを、卓上型耐久試験器(ユアサシステム機器株式会社製「DLDMLH-FS」)を用いて、下記に従い静的屈曲試験を行った。
測定対象のフィルムを折り曲げ、2枚の板の間に挟んだ。測定対象のフィルムが引張処理されているフィルムである場合、引張処理における引張方向と直交する方向が折山の方向となるように折り曲げた。測定対象のフィルムが引張処理されていないフィルムである場合、TDの方向が折山の方向となるように折り曲げた。2枚の板の隙間は、4mmとし、フィルムの曲げ半径が2mmとなるようにした。
2枚の板の間にフィルムを挟んだ状態で24時間、23℃40%RHに調整された試験器中に静置した後に、フィルムを試験器から取り出して折り曲げられたフィルムを広げ、目視にて、フィルムに変形があるか否かについて、1回目の判定をした。更に、フィルムを広げてから水平な台に12時間静置した後に、目視にて、フィルムに変形があるか否かについて、2回目の判定をした。
下記の基準により、静的屈曲試験における耐屈曲性を評価した。
良:1回目の判定においてフィルムに変形がない。
不良:1回目の判定においてフィルムに変形があるが、2回目の判定においてフィルムに変形がない。
悪い:1回目及び2回目の両方の判定において、フィルムに変形がある。
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法)
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
(ガラス転移温度Tgおよび融点Mpの測定方法)
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して試料のガラス転移温度Tgおよび融点Mpをそれぞれ求めた。
(重合体の水素添加率の測定方法)
重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMR測定により測定した。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
[製造例1.ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物(樹脂C)の製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液とを濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物(樹脂C)28.5部を得た。この水素化物の水素添加率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点Mpは262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
[製造例2]
(トリブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル変性物(樹脂D)の製造)
国際公開2014/077267号に記載された方法を参考にして、芳香族ビニル化合物としてのスチレン25部、鎖状共役ジエン化合物としてのイソプレン50部、及びスチレン25部をこの順に重合して、[A]-[B]-[A]のブロック構成を有するトリブロック共重合体水素化物(h1)(重量平均分子量Mw=48,200;分子量分布Mw/Mn=1.04;主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素-炭素不飽和結合の水素化率ほぼ100%)を製造した。ここで、重合体ブロック[A]は芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである。さらに、前記国際公開2014/077267号に記載された方法を参考にして、前記のトリブロック共重合体水素化物(h1)100部に、ビニルトリメトキシシラン2部を結合させて、トリブロック共重合体水素化物(h1)のアルコキシシリル変性物(樹脂D ガラス転移温度Tg=120℃)のペレットを製造した。
[実施例1]
(引張処理前フィルムの製造)
脂環式構造含有重合体を含む樹脂である、樹脂A(日本ゼオン社製「ZEONOR」、ガラス転移温度Tg=163℃)を用意した。
樹脂Aを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、前記の樹脂からなる長尺のフィルム(厚み40μm、幅1300mm)を製造した。前記長尺のフィルムの任意の場所から、長手方向がフィルム製造時の搬送方向と平行である、長さ200mm×幅50mmの引張処理前フィルムを切り出した。
(引張処理フィルムの製造)
前記引張処理前フィルムの、長手方向における両端部を、引張試験機(インストロン社製「5564型」)の上下チャックに固定した。チャックの間隔は、150mmに設定した。23℃、40%RHの条件下で、引張速度20mm/min(ひずみ速度13%/min)で、引張方向におけるひずみ(引張ひずみ)が1%となるまでフィルムを引張り、ひずみが1%の状態を1分間保持した。
次いで、フィルムに加えられている引張力を除いて、フィルムのひずみを解放した。フィルムをチャックから取り外して、このフィルムを引張処理フィルムとして、前記方法により応力緩和率R、引張弾性率、及び静的屈曲試験による耐屈曲性を評価した。
[実施例2]
下記事項を変更した以外は実施例1と同様にして、引張処理フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である、樹脂B(日本ゼオン社製「ZEONOR」、ガラス転移温度Tg=126℃)を用いた。
[実施例3]
下記事項を変更した以外は実施例1と同様にして、引張処理フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である、前記製造例1に従い製造した樹脂Cを用いた。
[比較例1]
実施例1の(引張処理前フィルムの製造)で得られた、引張処理前フィルムについて評価した。
[比較例2]
下記事項を変更した以外は実施例1の(引張処理前フィルムの製造)と同様にして、引張処理前フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、前記樹脂Bを用いた。
[比較例3]
下記事項を変更した以外は実施例1の(引張処理前フィルムの製造)と同様にして、引張処理前フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、前記樹脂Cを用いた。
[比較例4]
下記事項を変更した以外は実施例1の(引張処理前フィルムの製造)と同様にして、引張処理前フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、前記製造例2に従い製造した樹脂Dを用いた。
[比較例5]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学株式会社製「ダイアホイル(登録商標) MRV38」、厚み38μm)について、評価した。
実施例及び比較例について、評価結果を下表に示す。
Figure 0007183852000001
Figure 0007183852000002
以上の結果によれば、以下の事項が分かる。
応力緩和率Rが1.5%以下である、実施例1~3に係るフィルムは、静的屈曲試験における耐屈曲性が良好である。
一方、応力緩和率Rが1.5%を超える比較例1~5に係るフィルムは、静的屈曲試験における耐屈曲性の評価が不良であるか、又は悪い。
以上の結果は、応力緩和率Rが少なくとも一の引張方向において1.5%以下である、本発明の光学フィルムが、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合に、変形が抑制されていることを示す。

Claims (4)

  1. 引張応力緩和試験において、応力緩和率Rが、少なくとも一の引張方向Dにおいて1.5%以下である光学フィルムであって、
    前記引張応力緩和試験が、前記光学フィルムに引張力を与えて、0.5%の引張ひずみを印加し、前記0.5%の引張ひずみを印加した時から300秒後まで前記引張ひずみを保持する試験であり、
    前記応力緩和率Rは、下記式(1):
    R(%)=(σ-σ300)/σ×100 (1)
    から算出され、ここで、σは、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時における前記光学フィルムの引張応力を表し、σ300は、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時から300秒後における前記光学フィルムの引張応力を表し、
    前記光学フィルムが、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を含む、光学フィルム。
  2. 厚みが60μm以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記引張方向Dにおける引張弾性率が4000MPa以下である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
  4. 脂環式構造含有重合体を含む樹脂を含むフィルムに引張力を与えて、0.5%以上3.5%以下の引張ひずみを印加し、1分間以上15分間以下前記引張ひずみを保持する工程(1)、及び
    前記フィルムから、前記引張力を除く工程(2)をこの順で含み、
    前記工程(1)は、10℃以上40℃以下で行われる、光学フィルムの製造方法。
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