JP2016069565A - ブロック共重合体組成物およびフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物を提供する。【解決手段】少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部に対して 芳香族ビニル重合体25〜150重量部、及び脂肪酸アミド0.2〜10重量部を含有するブロック共重合体組成物、及び前記ブロック共重合体組成物を成形してなるフィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体を含有するブロック共重合体組成物に関し、さらに詳しくは、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物に関する。
芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーの中でも、特に弾性に富み、柔軟であることから、紙おむつや生理用品等の衛生用品に用いられる伸縮性フィルムの材料としての利用が、その代表的な用途の1つとなっている。
紙おむつや生理用品等の衛生用品には、装着者の動きに対する追従性やフィット性が求められることから、各部に伸縮性フィルムが用いられている。例えば、紙オムツの一種であるパンツ型オムツ等の衛生用品では、装着者が激しく動いたり、長時間の装着を行なったりしても、ずれを生じさせないことが必要であることから、用いられる伸縮性フィルムには、高い弾性率と小さい永久伸びとを併せ持つことが要求される。
そのため、芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体の弾性率や永久伸びを改良する種々の検討が行われている。
例えば、特許文献1には、50重量%未満のモノビニリデン芳香族含量を有する特定のエラストマーモノビニリデン芳香族−共役ジエンブロックコポリマー65〜92重量部と、50重量%以上のモノビニリデン芳香族含量を有する特定の熱可塑性モノビニリデン芳香族−共役ジエンブロックコポリマー8〜35重量部とからなるエラストマーポリマーブレンド組成物によれば、優れた弾性と応力緩和特性とを示すエラストマー物品が得られることが開示されている。
また、特許文献2には、特定の重量平均分子量を有する、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるジブロック共重合体に、特定の重量平均分子量を有するポリイソプレンを、特定割合で配合して得られる組成物を押出成形することにより、異方性を有し、柔軟性に優れ、紙おむつや生理用品等の衛生用品の部材として好適に用いられる伸縮性フィルムが得られることが開示されている。
また、特許文献3には、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立される、2種類のブロック共重合体を特定の割合で含有するブロック共重合体組成物が記載されている。
しかしながら、これらの文献に記載された技術においても、高い弾性率と小さい永久伸びとの高いレベルでの両立と、フィルム成形性という観点においては、未だ不十分であり、更なる改良が望まれている。
特表2006−528273号公報 特開2008−7654号公報 国際公開第2009/123089号パンフレット
本発明は、かかる従来技術に鑑みてなされたものであり、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ブロック共重合体に対して、芳香族ビニル重合体、脂肪酸アミドをそれぞれ特定の重量比で配合すると、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、(1)、(2)のブロック共重合体組成物、(3)、(4)のフィルムが提供される。
(1)少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部に対して、芳香族ビニル重合体25〜150重量部、及び脂肪酸アミド0.2〜10重量部を含有するブロック共重合体組成物。
(2)前記ブロック共重合体として、下記の式(A)で表されるブロック共重合体A、及び下記の式(B)で表されるブロック共重合体Bからなるブロック共重合体混合物を含有してなる(1)に記載のブロック共重合体組成物。
Figure 2016069565
(式中、Ar1およびArは、それぞれ重量平均分子量が6,000〜20,000の芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Ar2は、重量平均分子量が40,000〜400,000の芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックを表し、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%で重量平均分子量が20,000〜200,000の共役ジエンブロックを表し、Xは単結合またはカップリング剤の残基を表し、nは2以上の整数である。)
(3)前記(1)又は(2)に記載のブロック共重合体組成物を成形してなるフィルム。
(4)膜厚の平均値に対する膜厚の標準偏差の比(標準偏差/平均値)の割合が15%以下であり、破断強度が20MPa以上であり、かつ破断伸びが650%以上である請求項3に記載のフィルム。
本発明によれば、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物、及びこの組成物を成形して得られるフィルムが提供される。
以下、本発明を、1)ブロック共重合体組成物、及び、2)フィルム、に項分けして詳細に説明する。
1)ブロック共重合体組成物
本発明のブロック共重合体組成物は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体と、芳香族ビニル重合体、及び脂肪酸アミドを含有する組成物である。
その配合割合は、前記ブロック共重合体100重量部に対して 芳香族ビニル重合体25〜150重量部、及び脂肪酸アミド0.2〜10重量部である。
(ブロック共重合体)
本発明に用いるブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(I)」ということがある。)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される芳香族ビニル重合体ブロックと、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される共役ジエン重合体ブロックとを、それぞれ少なくとも1つ有してなるものである。ブロック共重合体(I)は、本発明のブロック共重合体組成物の重合体成分として用いられる。
なお、本明細書において、特に説明がない限り、「ブロック共重合体」とは、ピュアブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、及びテーパーブロック構造を有する共重合体のいずれの態様も含む意味である。
(芳香族ビニル重合体ブロック)
ブロック共重合体(I)が有する芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
芳香族ビニル重合体ブロックの形成に用いる芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されない。例えば、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等のアルキル基を置換基として有するスチレン類;2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロロスチレン、2,4−ジブロモスチレン等のハロゲン原子を置換基として有するスチレン類;2−メチル−4,6−ジクロロスチレン等のアルキル基とハロゲン原子を置換基として有するスチレン類;ビニルナフタレン;等が挙げられる。
これらの芳香族ビニル単量体は、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、入手容易性の観点から、スチレン、アルキル基を置換基として有するスチレン類が好ましく、スチレンを用いることが特に好ましい。
芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。
芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)等の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の不飽和カルボン酸エステル単量体;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエン単量体;等が挙げられる。
また、ブロック共重合体(I)が複数の芳香族ビニル重合体ブロックを有する場合においては、複数の芳香族ビニル重合体ブロック同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
ブロック共重合体(I)の全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量も、特に限定されないが、通常、10〜70重量%の範囲で選択され、好ましくは12〜60重量%の範囲で選択される。ブロック共重合体(I)における芳香族ビニル単量体単位の含有量がこのような範囲にあると、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物、及びこの組成物を成形して得られるフィルムが得られやすくなる。なお、本明細書に記載のブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、プロトンNMRを用いて測定することができる。
(共役ジエン重合体ブロック)
ブロック共重合体(I)が有する共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位の含有量は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることが特に好ましい。共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位の含有量がこのような範囲にあると、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物、及びこの組成物を成形して得られるフィルムが得られやすくなる。
共役ジエン重合体ブロックの形成に用いる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されない。例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等を例示することができる。
これらの共役ジエン単量体は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。
共役ジエン重合体ブロックをイソプレン単位で構成することにより、柔軟性に優れ、小さい永久伸びを有するブロック共重合体を得ることができる。
共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸単量体、酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体等が例示される。
また、共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量(共役ジエン重合体ブロック中の全共役ジエン単量体単位において、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合が占める割合)は、特に限定されないが、1〜20モル%であることが好ましく、2〜15モル%であることがより好ましく、3〜10モル%であることが特に好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなるおそれがある。なお、本明細書に記載の共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量は、プロトンNMRを用いて測定することができる。
また、ブロック共重合体(I)が複数の共役ジエン重合体ブロックを有する場合においては、複数の共役ジエン重合体ブロック同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
前記ブロック共重合体(I)は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとをそれぞれ少なくとも1つ有してなるものであれば、それぞれの重合体ブロックの数やそれらの結合形態は特に限定されない。
ブロック共重合体(I)の形態の具体例としては、Arが芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Dが共役ジエン重合体ブロックを表し、Xが単結合またはカップリング剤の残基を表し、nが2以上の整数を表すものとした場合において、Ar−Dとして表される芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、Ar−D−Arまたは(Ar−D)−Xとして表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体、D−Ar−Dまたは(D−Ar)−Xとして表される共役ジエン−芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、Ar−D−Ar−Dとして表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、及びこれらの2種以上を任意の組み合わせで混合してなるブロック共重合体の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの中でも、本発明に特に好ましく用いられるブロック共重合体(I)としては、Ar−D−Arまたは(Ar−D)−Xとして表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を挙げることできる。
ブロック共重合体(I)の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常、50,000〜500,000、好ましくは70,000〜470,000であることが好ましく、90,000〜450,000であることがより好ましい。
また、ブロック共重合体(I)の個々の重合体ブロックの重量平均分子量も特に限定されず、芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量は、通常6,000〜400,000、好ましくは6,000〜370,000である。
また、共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量は、通常20,000〜400,000、好ましくは35,000〜350,000である。共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量がこのような範囲にあると、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物、及びこの組成物を成形して得られるフィルムが得られやすくなる。
ブロック共重合体(I)、及びブロック共重合体(I)を構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布も、特に限定されないが、それぞれ、通常1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。ブロック共重合体(I)、及びブロック共重合体(I)を構成する各重合体ブロックの分子量分布がこのような範囲にあると、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物、及びこの組成物を成形して得られるフィルムが得られやすくなる。
ブロック共重合体(I)のメルトインデックスは、特に限定されないが、ASTM D−1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定される値として、通常1〜1000g/10分であり、3〜700g/10分であることが好ましく、5〜500g/10分であることがより好ましい。この範囲であれば、得られるブロック共重合体組成物の成形性が特に良好となる。
以上述べたような、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体(I)は、常法にしたがって製造することが可能である。
最も一般的な製造法としては、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とをそれぞれ逐次的に重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を挙げることができる。この方法については、後述するブロック共重合体混合物の項の中で詳述する。
また、本発明では、市販のブロック共重合体を用いることも可能である。例えば、「クインタック(登録商標)」(日本ゼオン社製)、「JSR−SIS(登録商標)」(JSR社製)、「Vector(登録商標)」(DEXCO polymers社製)、「アサプレン(登録商標)」・「タフプレン(登録商標)」・「タフテック(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、「セプトン(登録商標)」(クラレ社製)等を使用することができる。
本発明のブロック共重合体組成物においては、ブロック共重合体(I)として、下記の式(A)で表されるブロック共重合体A及び下記の式(B)で表されるブロック共重合体Bからなるブロック共重合体混合物を用いることが好ましい。
このようなブロック共重合体混合物を用いることで、ブロック共重合体組成物に、より高い弾性率とより小さい永久伸びを付与することができる。
Figure 2016069565
前記ブロック共重合体混合物を構成する2種類のブロック共重合体の一方であるブロック共重合体Aは、上記式(A)で表される、互いに異なる重量平均分子量を持つ2つの芳香族ビニル重合体ブロックを有する、芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
上記式(A)において、Ar1は、重量平均分子量が6,000〜20,000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が40,000〜400,000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックである。
また、前記ブロック共重合体混合物を構成する2種のブロック共重合体の他方であるブロック共重合体Bは、上記式(B)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックと、特定のビニル結合含有量と特定の重量平均分子量を有する共役ジエン重合体ブロックと、が結合してなるジブロック体が、2個以上、直接単結合でもしくはカップリング剤の残基を介して結合することにより構成されるブロック共重合体である。
上記式(B)において、Arは、重量平均分子量が6,000〜20,000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%で重量平均分子量が20,000〜200,000の共役ジエン重合体ブロックである。Xは単結合またはカップリング剤の残基を表し、nは2以上の整数である。
ブロック共重合体A及びブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1、Ar2及びAr)は、芳香族ビニル単量体単位により構成される重合体ブロックである。
芳香族ビニル重合体ブロックの芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、前記ブロック共重合体(I)が有する芳香族ビニル重合体ブロックを形成する芳香族ビニル化合物と同様のものが挙げられる。
ブロック共重合体A及びブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1、Ar2及びAr)は、それぞれ、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよい。
芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、前記ブロック共重合体(I)が有する芳香族ビニル重合体ブロックを形成する芳香族ビニル単量体単位以外の単量体と同様のものが挙げられる。
ブロック共重合体A及びブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D及びD)は、共役ジエン単量体単位により構成される重合体ブロックである。
共役ジエン重合体ブロックの共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエンとしては、前記ブロック共重合体(I)が有する共役ジエン重合体ブロックを形成する共役ジエン単量体と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。
共役ジエン重合体ブロックをイソプレン単位で構成することにより、柔軟性に優れ、より低い永久伸びを有するブロック共重合体組成物を得ることができる。
これらの共役ジエン単量体は、各共役ジエン重合体ブロックにおいて、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて、用いることができる。また、各共役ジエン重合体ブロックにおいて、同じ共役ジエン単量体を用いてもよいし、異なる共役ジエン単量体を用いてもよい。更に、共役ジエン重合体ブロックの不飽和結合の一部に対し、水素添加反応を行ってもよい。
ブロック共重合体A及びブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D及びD)は、それぞれ、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、前記ブロック共重合体(I)が有する共役ジエン重合体ブロックを形成する共役ジエン単量体単位以外の単量体と同様のものが挙げられる。
前記ブロック共重合体Aは、上記式(A)で表されるように、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)、特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D)及び比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)が、この順で連なって構成される非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))は、6000〜20,000であり、7000〜18,000であることが好ましい。
Mw(Ar1)がこの範囲を外れると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがある。
また、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量(Mw(Ar2))は、40,000〜400,000であり、42,000〜370,000であることが好ましく、45,000〜350,000であることがより好ましい。Mw(Ar2)が小さすぎると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがあり、Mw(Ar2)が大きすぎるブロック共重合体Aは、製造が困難である場合がある。
ブロック共重合体Aにおいて、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量(Mw(Ar2))と、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))との比(Mw(Ar2)/Mw(Ar1))は、特に限定されないが、通常、2.2〜67であり、2.6〜67であることが好ましく、4〜40であることがより好ましく、4.5〜35であることが特に好ましい。
ブロック共重合体Aをこのように構成することによって、より低い永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量(全共役ジエン単量体単位において、1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合が占める割合)は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなるおそれがある。
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、特に限定されないが、通常、20,000〜200,000であり、30,000〜150,000であることが好ましく、35,000〜100,000であることがより好ましい。
ブロック共重合体Aの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常、40〜90重量%であり、45〜87重量%であることが好ましく、50〜85重量%であることがより好ましい。
また、ブロック共重合体A全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常50,000〜500,000であり、70,000〜470,000であることが好ましく、90,000〜450,000であることがより好ましい。
前記ブロック共重合体混合物を構成するブロック共重合体B は、上記式(B)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D)とが結合してなるジブロック体(Ar−D)が、2個以上、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)側が末端となるように、直接単結合でもしくはカップリング剤(X)の残基を介して結合することにより構成されるブロック共重合体である。なお、カップリング剤の残基を構成するカップリング剤の例としては、後述するものが挙げられる。ジブロック体(Ar−D)が結合する数(すなわち、式(B)におけるn) は、2以上であれば特に限定されず、異なる数でジブロック体が結合したブロック共重合体B が混在していても良い。式(B)におけるnは、2以上の整数であれば特に限定されないが、通常2〜8の整数であり、好ましくは2〜4の整数である。
ブロック共重合体B が1 分子中に2 個以上有する芳香族ビニル重合体ブロック( A r ) の重量平均分子量(Mw(Ar))は、それぞれ、6000 〜 20,000 であり、7000〜 18,000であることが好ましく、8000〜 15,000 であることがより好ましい。Mw(Ar)がこの範囲を外れると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きすぎるものとなるおそれがある。ブロック共重合体Bの1分子中に2個以上存在する芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar))は、上記の範囲内であれば、等しくても、互いに異なるものであっても良いが、実質的に等しいことが好ましい。また、これらの芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量( Mw(Ar))は、ブロック共重合体A の比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1 ))と、実質的に等しいことがより好ましい。
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなるおそれがある。
また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、20,000〜200,000であり、25,000〜150,000であることが好ましく、30,000〜100,000であることがより好ましい。
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))がこの範囲であることにより、より低い永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。
また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))との比(Mw(D)/Mw(D))が、1.1〜10となるものであることが好ましく、1.3〜5となるものであることがより好ましく、1.5〜3となるものであることが特に好ましい。
Mw(D)/Mw(D)の値をこのようにすることで、得られるブロック共重合体組成物が、より高い弾性率を有し、弾性に富んだものとなる。
ブロック共重合体Bの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常、10〜35重量%であり、12〜32重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。
また、ブロック共重合体B全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常、60,000〜800,000であり、80,000〜600,000であることが好ましく、100,000〜400,000であることがより好ましい。
前記ブロック共重合体A及びブロック共重合体B並びにこれらを構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、通常、1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。
前記ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)は、通常、36/64〜85/15であり、38/62〜80/20であることが好ましく、40/60〜75/25であることがより好ましい。このような比で各ブロック共重合体を含有することにより、ブロック共重合体組成物は、高い弾性率と小さい永久伸びとを併せ持つものとなりやすい。この比が小さすぎると、ブロック共重合体組成物の弾性率が不十分となり、この比が大きすぎると、ブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなる傾向がある。
前記ブロック共重合体混合物を得る方法は特に限定されず、従来のブロック共重合体の製法に従って製造することができる。例えば、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとをそれぞれ別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分や各種添加剤を配合した上で、それらを混練や溶液混合等の常法に従って混合することにより、製造することができる。
また、ブロック共重合体混合物は、以下に述べる方法により製造することもできる。すなわち、前記ブロック共重合体混合物は、より具体的には、下記の(1)〜(5)の工程により製造することができる(反応の詳細は、国際公開第2009/123089号パンフレット、特開2012−77158号公報等を参照)。
(1):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する工程(1)。
(2):上記工程(1)で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程(2)。
(3):上記工程(2)で得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量の、2官能性のカップリング剤を添加し、ブロック共重合体Bを形成する工程(3)。
(4):上記工程(3)で得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、ブロック共重合体Aを形成する工程(4)。
(5):上記工程(4)で得られる溶液から、ブロック共重合体混合物を回収する工程(5)。
(1)工程(1)
まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する。
用いる重合開始剤としては、一般的に芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られているものを用いることができる、例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物等が挙げられる。
(2)工程(2)
次に、前記工程(1)で得られた活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する。この共役ジエン単量体の添加により、活性末端から共役ジエン重合体鎖が形成され、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液が得られる。この際に用いる共役ジエン単量体の量は、通常、得られる共役ジエン重合体鎖が、目的とするブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量の半分の重量平均分子量を有するように決定される。
(3)工程(3)
この活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、2官能性のカップリング剤を添加する。
添加されるカップリング剤は、2官能性のものであれば特に限定されず、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等の2官能性ハロゲン化シラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタン等の2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズ等の2官能性ハロゲン化スズ;等が挙げられる。
これらのカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
添加されるカップリング剤の量は、ブロック共重合体混合物を構成するブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの比に応じて決定され、重合体の活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、通常、重合体の活性末端に対して2官能性カップリング剤の官能基が0.15〜0.90モル当量となる範囲であり、0.20〜0.70モル当量となる範囲であることが好ましい。
以上のように、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、2官能性のカップリング剤を添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体のうちの一部の共重合体において、共役ジエン重合体ブロック同士が2官能性のカップリング剤の残基を介して結合され、その結果、ブロック共重合体混合物のブロック共重合体Bが形成される。そして、2官能性のカップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の残り一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
(4)工程(4)
次いで、得られる溶液に芳香族ビニル単量体を添加する。
溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、カップリング剤と反応せずに残っていた活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の末端から、芳香族ビニル重合体鎖が形成される。この芳香族ビニル重合体鎖は、ブロック共重合体混合物を構成する、ブロック共重合体Aの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を構成することとなるものである。
(5)工程(5)
上記工程を経て得られるブロック共重合体A及びブロック共重合体Bを含有する溶液から、目的とするブロック共重合体混合物を回収する。
回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。例えば、反応終了後に、反応液に、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸等の重合停止剤を添加して、得られた溶液に直接乾燥法やスチームストリッピング等の公知の方法を適用することにより、ブロック共重合体混合物を回収することができる。
また、反応終了後に、反応液に前記重合停止剤を添加して、更に必要に応じて、酸化防止剤等の添加剤を添加してから、得られた溶液に直接乾燥法やスチームストリッピング等の公知の方法を適用することにより、ブロック共重合体混合物として回収することもできる。
スチームストリッピング等を適用して、ブロック共重合体混合物をスラリーとして回収する場合は、押出機型スクイザー等の任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、更にそのクラムをバンドドライヤー又はエクスパンション押出乾燥機等の任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。
以上のようにして得られるブロック共重合体混合物は、常法に従い、ペレット形状等に加工してから使用に供してもよい。
(他の重合体)
本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(I)のみを重合体成分として含むものであってよいが、例えば、前記したブロック共重合体A及びブロック共重合体Bの他、それら以外の重合体成分を含むものであってもよい。
本発明のブロック共重合体組成物に含まれ得るブロック共重合体(I)以外の重合体成分としては、ブロック共重合体(I)以外の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体、共役ジエン単独重合体、芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体、及びこれらの分岐型重合体;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂;等が挙げられる。
本発明のブロック共重合体組成物において、これらの重合体の含有量は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体の重量に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
(芳香族ビニル重合体)
本発明に用いる芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を有する高分子である。
本発明においては、通常、下記(α)〜(γ)から選ばれる少なくとも1種の芳香族ビニル重合体が用いられる。
(α)芳香族ビニル単量体の重合体
(β)芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体
(γ)芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の水素添加誘導体
〔(α)芳香族ビニル単量体の重合体〕
芳香族ビニル単量体の重合体の単量体単位としては、例えば、スチレン、p−、m−又はo−メチルスチレン、2,4−、2,5−、3,4−又は3,5−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン;o−、m−又はp−クロロスチレン、o−、m−又はp−ブロモスチレン、o−、m−又はp−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン;o−、m−又はp−クロロメチルスチレン等のハロゲン化置換アルキルスチレン;p−、m−又はo−メトキシスチレン、o−、m−又はp−エトキシスチレン等のポリアルコキシスチレン;o−、m−、又はp−カルボキシメチルスチレン等のカルボキシアルキルスチレン;p−ビニルベンジルプロピルエーテル等のアルキルエーテルスチレン;p−トリメチルシリルスチレン等のアルキルシリルスチレン;さらにはビニルベンジルジメトキシホスファイド等が挙げられ、特に一般的なものとしてスチレンが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上を混合して使用してもよい。
芳香族ビニル重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常、50,000以上、好ましくは80,000以上であり、かつ、通常、500,000以下、好ましくは450,000以下、さらに好ましくは400,000以下である。芳香族ビニル単量体の重合体の重量平均分子量(Mw)が50,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、芳香族ビニル単量体の重合体の重量平均分子量(Mw)が500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下する等の欠点もないため好ましい。
芳香族ビニル単量体の重合体のメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:200℃、5kg)は、通常、0.1g/10分以上、好ましくは1g/10分以上であり、通常、40g/10分以下、好ましくは35g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分以下である。MFRが0.1以上であれば、押出成型時に適度な流動粘度が得られ、生産性を維持又は向上できる。また、MFRが40以下であれば、適度な樹脂の凝集力が得られるため、良好なフィルム強伸度が得られ、フィルムを脆化し難くすることができる。
芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニル単量体と共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。芳香族ビニル単量体と共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族不飽和カルボン酸エステルを挙げることができる。
〔(β)芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体〕
次に芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体について説明する。かかる芳香族ビニル単量体−共役ジエン系ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるジブロック共重合体である。芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体は単独で用いてもよいし、芳香族ビニル単量体の含有率の異なる2種以上の芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体を混合して用いてもよい。さらに、芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体は、共重合可能なモノマーをも重合させたものでもよいし、それらの混合物であってもよい。また、芳香族ビニル単量体の重合体との混合物であってもよい。
芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体で用いられる芳香族ビニル単量体単位としては、(α)芳香族ビニル単量体の重合体で例示したものを挙げることができる。また、共役ジエン単量体単位としては、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、1種のみならず2種以上を含んでいてもよい。共役ジエンを例示すれば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。中でも1,3−ブタジエン、イソプレン、又はこれらの混合物を好適に用いることができる。
上記芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体又は共役ジエンと共重合可能なモノマーとの共重合させたものでもよい。
芳香族ビニル単量体と共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族不飽和カルボン酸エステルを挙げることができる。
本発明において好適に用いられる芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体としては、芳香族ビニル単量体単位がスチレンであり、共役ジエン単量体単位がブタジエンであるスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)が挙げられる。SBRのスチレン含有率は、通常、60重量%以上、好ましくは65重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。またスチレン含有率は、通常、95重量%以下、好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下である。スチレンの含有率が95重量%以下であれば、耐衝撃性の効果が発揮でき、また60重量%以上とすることにより、室温前後の温度でのフィルムの弾性率が保持され、良好な腰の強さが得られる。
芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常、100,000以上、好ましくは150,000以上であり、かつ、通常、500,000以下、好ましくは400,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が100,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下する等の欠点もないため好ましい。
芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:200℃、5kg)は、通常、1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上であり、通常、40g/10分以下、好ましくは35g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分以下である。MFRが1以上であれば、押出成型時に適度な流動粘度が得られ、生産性を維持又は向上できる。また、MFRが40以下であれば、適度な樹脂の凝集力が得られるため、良好なフィルム強伸度が得られ、フィルムを脆化し難くすることができる。
また、本発明では、市販の芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体を用いることも可能である。例えば、「PSJ−GPPS」・「PSJ−HIPS」(PSジャパン社製)、「トーヨースチロールGP」・「トーヨースチロールHI」(東洋スチレン社製)、「ディックスチレン」(DIC社製)等を使用することができる。
〔(γ)芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の水素添加誘導体〕
本発明において、芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の水素添加誘導体は、水素添加される前の共役ジエン単量体単位に基づく不飽和二重結合に対し、水素が添加されたものである。芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体中の全構成単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有率は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。前記含有率が60重量%以上であれば、フィルムの透明性が維持され、また前記含有率が90重量%以下であれば、伸不足に起因する耐キレ性の低下を抑えられ、またポリマー作製上の観点からは水素添加における還元触媒の安全化の効果を確保できるため好ましい。
また、本発明では、市販の芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の水素添加誘導体を用いることも可能である。例えば、「タフテック」(旭化成社製)、「セプトン」(クラレ社製)等を使用することができる。
(脂肪酸アミド)
本発明のブロック共重合体組成物は、上記のブロック共重合体(I)、芳香族ビニル重合体に加えて、脂肪酸アミドを含有してなる。
本発明で用いる脂肪酸アミドは、脂肪族モノアミドであっても、脂肪族ビスアミドであってもよい。
脂肪族モノアミドは、炭化水素基と1個のアミド基(−NHCO)とが結合してなる化合物であれば特に限定されないが、炭素数12以上の高級飽和脂肪酸のモノアミド(すなわち、炭素数12以上の鎖状アルキル基と1個のアミド基(−NHCO)とが結合してなる化合物)が好ましく用いられる。
脂肪酸モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸モノアミド;等が挙げられる。
脂肪酸ビスアミドとしては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルミチン酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールベヘン酸アマイド等の置換アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アマイド等の飽和脂肪酸ビスアマイド;エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アマイド等の不飽和脂肪酸ビスアマイド;が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、本発明においては、互着防止の観点から、脂肪酸モノアミドが好適に用いられる。
本発明のブロック共重合体組成物における脂肪酸アミドの含有量は、ブロック共重合体(I)100重量部に対して、0.2〜10重量部であることが必要であり、0.3〜8重量部であることが好ましく、0.5〜6重量部であることがより好ましい。
脂肪酸アミドの含有量がこの範囲であると、フィルムに成形した場合、膜厚変動が少ないフィルムを得ることができ、かつ、成形性に優れるブロック共重合体組成物が得られるので好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物には、必要に応じポリエチレンワックスを含有していてもよい。ポリエチレンワックスは、エチレン単量体単位を主たる構成単位とするワックスである。本発明で用いられるポリエチレンワックスは、特に限定されるものではないが、140℃における粘度が20〜6,000mPa・sであるものが好ましく用いられる。
ポリエチレンワックスは、一般的に、エチレンの重合又はポリエチレンの分解により製造されるが、本発明では、どちらのポリエチレンワックスを用いてもよい。また、ポリエチレンワックスは市販品を入手可能であり、その具体例としては、「A−C ポリエチレン」(Honeywell社製)、「三井ハイワックス」(三井化学社製)、「サンワックス」(三洋化成工業社製)、「エポレン」(Eastman Chemical社製)を挙げることができる。
本発明のブロック共重合体組成物には、必要に応じ酸化防止剤を添加することができる。その種類は特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等のヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネート等のチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等の亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤の使用量は、特に限定されないが、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部当り、通常10重量部以下であり、好ましくは0.5〜5重量部である。なお、酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明のブロック共重合体組成物には、さらに、必要に応じて、粘着付与樹脂、軟化剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、脂肪酸モノアミド及びポリエチレンワックス以外の滑剤等を添加することができる。
本発明のブロック共重合体組成物を得るにあたり、ブロック共重合体とその他の成分とを混合する方法は特に限定されない。例えば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱等により除去する方法、各成分をスクリュー押出機やニーダー等で溶融混合する方法を挙げることができる。これらの中でも、混合をより効率的に行う観点からは、これらの方法の中でも溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100〜200℃の範囲である。
本発明のブロック共重合体組成物によれば、良好な成形性で、強くて伸縮性に富み、しかも膜厚変動が少ないフィルムを得ることができる。本発明のブロック共重合体組成物のかかる特性は、ブロック共重合体(I)の基本特性と調和して発現される、芳香族ビニル重合体と脂肪酸アミドとの相乗効果によるものと考えられる。
本発明のブロック共重合体組成物の用途は特に限定されない。例えば、フィルム、手袋、エラスティックバンド、コンドーム、OA機器、事務用等の各種ロール、電気電子機器用防振シート、防振ゴム、衝撃吸収シート、衝撃緩衝フィルム・シート、住宅用制振シート、制振ダンパー材等に用いられる成形材料用途、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ゴミ取りローラー等に用いられる粘着剤用途、衛生用品や製本に用いられる接着剤用途、衣料、スポーツ用品等に用いられる弾性繊維用途等の用途に用いることができる。
2)フィルム
本発明の第2は、本発明のブロック共重合体組成物を成形してなるフィルムである。
本発明のフィルムは、本発明のブロック共重合体組成物を成形して得られるものであるので、強くて伸縮性に富み、しかも膜厚変動が少ないものである。
本発明のブロック共重合体組成物をフィルム状に成形する方法は、特に限定されないが、T−ダイを用いた溶融押出成形が特に好適である。T−ダイを用いた溶融押出成形の具体例としては、単軸押出機や二軸押出機等のスクリュー押出機に装着したT−ダイから、温度150〜250℃で溶融したブロック共重合体組成物を押出し、引き取りロールで冷却しながら、巻き取る方法が挙げられる。なお、引き取りロールで冷却する際に、フィルムを延伸しても良い。
本発明のフィルムの厚さは、特に限定されず、用途に応じて調整されるが、紙おむつや生理用品等の衛生用品用のフィルムとする場合には、通常0.01〜5mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.02〜0.2mmである。
本発明のブロック共重合体組成物をフィルムに成形する方法は、特に限定されず、従来公知のフィルム成形法を適用できるが、平滑なフィルムを良好な生産性で得る観点からは、押出成形が好適であり、中でもT−ダイを用いた押出成形が特に好適である。
T−ダイを用いた押出成形の具体例としては、単軸押出機や二軸押出機に装着したT−ダイから、150〜250℃で溶融したブロック共重合体組成物を押出し、引き取りロールで冷却しながら、巻き取る方法が挙げられる。引き取りロールで冷却する際に、フィルムを延伸してもよい。また、フィルムを巻き取る際に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、不織布又は離型紙からなる基材の上にブロック共重合体組成物の溶融物をコーティングしながらフィルム化してもよいし、ブロック共重合体組成物の溶融物をこれらの基材で挟み込むようにしてフィルム化してもよい。そのようにして得られたフィルムは、基材と一体の形態のままで使用しても、基材から剥がして使用してもよい。
本発明のフィルムは、膜厚の均一性に優れる。
本発明のフィルムが膜厚の均一性に優れることは、例えば、試料となるフィルムを成形時の溶融流れ方向に沿って30cmの長さで切り取り、このフィルムの中央部において、溶融流れ方向に沿った2cm間隔毎、15点についてフィルムの厚さを、デジタル測厚器(東洋精機社製、測定精度:0.001mm単位)を用いて測定し、これら測定値から求められる、膜厚の平均値に対する膜厚の標準偏差の比(標準偏差/平均値)の割合が、通常、15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは9%以下であることから確認することができる。
本発明のフィルムは、伸縮性に優れる。
本発明のフィルムの破断強度は、好ましくは20MPa以上、より好ましくは22MPa以上である。フィルムの破断強度は実施例に記載した方法により求めることができる。
本発明のフィルムの破断伸びは、好ましくは650%以上、より好ましくは700%である。フィルムの破断伸びは実施例に記載した方法により求めることができる。
また、本発明のフィルムの永久伸びは、通常、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。フィルムの永久伸びは、実施例に記載した方法により求めることができる。
本発明のフィルムは、その用途に応じて、単層のまま用いることもできるし、他の部材と積層して多層体として使用することもできる。単層のまま用いる場合の具体例としては、紙おむつや生理用品等の衛生用品に用いられる伸縮性フィルム、光学フィルム等を保護するための保護フィルム、容器の収縮包装や熱収縮ラベルとして用いられる熱収縮性フィルムとしての利用を挙げることができる。多層体とする場合の具体例としては、本発明のフィルムをスリット加工した後、これにホットメルト接着剤等を塗布してテープとし、このテープを縮めた状態で不織布、織布、プラスチックフィルム、又はこれらの積層体に接着し、テープの縮みを緩和することにより、伸縮性のギャザー部材を形成する場合を挙げることができる。さらに、その他用途に応じ、公知の方法に従って適宜加工し、例えば、伸縮性シップ用基材、手袋、手術用手袋、指サック、止血バンド、避妊具、ヘッドバンド、ゴーグルバンド、輪ゴム等の伸縮性部材として用いることもできる。
本発明のフィルムは、他の部材と積層して使用することもできる。例えば、本発明のブロック共重合体組成物から得られるフィルムをスリット加工した後、これにホットメルト接着剤等を塗布してテープとし、このテープを縮めた状態で不織布、織布、プラスチックフィルム、又はこれらの積層体に接着し、テープの縮みを緩和することにより、伸縮性のギャザー部材を形成することができる。
更に、その他用途に応じ、公知の方法に従って適宜加工し、例えば、伸縮性湿布用基材、手袋、手術用手袋、指サック、止血バンド、避妊具、ヘッドバンド、ゴーグルバンド、輪ゴム等の伸縮性部材として用いることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
〔ブロック共重合体及びブロック共重合体混合物の重量平均分子量及び分子量分布〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として、数平均分子量及び重量平均分子量を求め、分子量分布はこれらの値から計算して求めた。装置は、東ソー社製HLC8320、カラムは昭和電工社製Shodex KF−404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計及び紫外検出器を用い、分子量の較正は東ソー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
〔ブロック共重合体混合物における各ブロック共重合体の重量比〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
〔ブロック共重合体におけるスチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ−25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
〔ブロック共重合体におけるイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいてイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
〔イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
〔膜厚の均一性(膜厚変動)〕
フィルムを成形時の溶融流れ方向に沿って30cmの長さで切り取り、このフィルムの中央部において、溶融流れ方向に沿った2cm間隔毎、15点についてフィルムの厚さを、デジタル測厚器(東洋精機社製、測定精度:0.001mm単位)を用いて測定し、これら測定値の平均値および標準偏差を得、膜厚の平均値に対する膜厚の標準偏差の比(標準偏差/平均値)の割合を求めた。この値が小さいものほど、フィルムの膜厚の均一性が高いといえ、成形に用いたブロック共重合体組成物の成形性が優れているといえる。
〔フィルムの破断強度〕
伸縮性フィルム(基材を除いたもの)から、幅25mmのフィルムを作製し、これを試料として用いて、成形時の溶融流れ垂直方向に沿って測定した。測定手順は以下の通りである。ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機RTC−1210に試料を無張力でチャック間距離40mmとして固定した。そして、試料が破断するまで500mm/分の速度で延伸し、破断強度を求めた。なお、破断強度の値が低いと、フィルム部材を作製時の際の延伸工程にて、フィルムが破断してしまうおそれがある。
〔フィルムの破断伸び〕
伸縮性フィルム(基材を除いたもの)から、幅25mmのフィルムを作製し、これを試料として用いて、成形時の溶融流れ垂直方向に沿って測定した。測定手順は以下の通りである。ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機RTC−1210に試料を無張力でチャック間距離40mmとして固定した。そして、試料が破断するまで500mm/分の速度で延伸し、破断伸びを求めた。なお、破断伸びの値が低いと、フィルム部材を作製時の際の延伸工程にて、フィルムが破断してしまうおそれがある
〔フィルムの50%引張弾性率〕
伸縮性フィルム(基材を除いたもの)から、幅25mmのフィルムを作製し、これを試料として用いて、成形時の溶融流れ垂直方向に沿って測定した。測定手順は以下の通りである。ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機RTC−1210に試料を無張力でチャック間距離40mmとして固定した。そして、試料を300mm/分の速度で200%まで延伸し、次いで試料を300mm/分の速度で初期のチャック間距離まで戻した。さらに、その試料を同じ速度でもう一度200%まで伸張させた後、再び同じ速度で初期のチャック間距離まで戻した。2回目の初期のチャック間距離に戻す過程における50%伸張時の引張応力を測定し、50%伸張時におけるフィルムの引張弾性率を求めた。なお、引張弾性率が高いものほど高い弾性率を有すると言える。
〔フィルムの永久伸び〕
基材を取除いた伸縮性フィルムについて、ASTM 412に準拠して上記のテンシロン万能試験機を用いて測定した。具体的には、サンプル形状はDieAを使用し、伸張前の標線間距離を40mmとして伸縮性フィルムを伸び率100%で伸張させ、そのままの状態で10分間保持した後、はね返させることなく急に収縮させて、10分間放置後、標線間距離を測定し、下式に基づいて永久伸びを求めた。
永久伸び(%)=(L1−L0)/L0×100
L0 : 伸張前の標線間距離(mm)
L1 : 収縮させて10分間放置後の標線間距離(mm)
〔製造例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)2.3ミリモル、及びスチレン1.55kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム154.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン6.00kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、ジメチルジクロロシラン(2官能性カップリング剤)52.1ミリモルを添加して、2時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Bとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン2.45kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Aとなる非対称なスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール309.4ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、上記測定方法に従ってブロック共重合体Aとブロック共重合体Bを測定した。
以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、製造例1のブロック共重合体混合物を回収した。
(製造例1で得られたブロック共重合体A)
・重量平均分子量:130,000
・分子量分布:1.03
・Ar1の重量平均分子量:10,000
・Ar2の重量平均分子量:74,000
・Dのビニル結合含有量:7
・Dの重量平均分子量:46,000
(製造例1で得られたブロック共重合体B)
・重量平均分子量:118,000
・分子量分布:1.03
・Arの重量平均分子量:10,000
・Dのビニル結合含有量:7
・Dの重量平均分子量:46,000
なお、製造例1で得られたブロック共重合体混合物におけるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(ブロック共重合体A/ブロック共重合体B)は43/57であった。
〔製造例2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」と称する)1.4ミリモル及びスチレン0.89kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム94.9ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、引き続き50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン0.89kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、活性末端を有するスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。次いで、重合停止剤としてメタノール64.1ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体のうちの一部の活性末端を失活させて、ブロック共重合体Bとなるスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を形成させた。この後、さらに引き続き50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.72kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Aとなる、活性末端を有するスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。最後に、重合停止剤としてメタノール64.1ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の活性末端を全て失活させて、重合反応を完了した。得られた反応液の一部を取り出し、上記測定方法に従ってブロック共重合体Aとブロック共重合体Bを測定した。
以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、製造例2のブロック共重合体混合物を回収した。
(製造例2で得られたブロック共重合体A)
・重量平均分子量:184,000
・分子量分布:1.07
・Ar1の重量平均分子量:10,000
・Ar2の重量平均分子量:75,000
・Dのビニル結合含有量:7
・Dの重量平均分子量:99,000
(製造例2で得られたブロック共重合体B)
・重量平均分子量:119,000
・分子量分布:1.07
・Arの重量平均分子量:10,000
・Dのビニル結合含有量:7
・Dの重量平均分子量:49,500
なお、製造例2で得られたブロック共重合体混合物におけるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(ブロック共重合体A/ブロック共重合体B)は42/58であった。
〔実施例1〕
製造例1で得られたブロック共重合体混合物の粉砕物100部と、芳香族ビニル重合体としてポリスチレン(PSジャパン社製「PSJ433」)67部と、脂肪酸モノアミドとして「ダイヤミッド(登録商標)L−200」(日本化成社製)1.7部と、をT−ダイを装着した二軸押出機に投入した。そして、この二軸押出機内において、これらを200℃で加熱溶融、混練することにより、ブロック共重合体組成物を構成し、これを20分間連続してPET製離型フィルムに挟み込むようにして押し出すことにより、平均厚さ0.05mmのフィルム状に成形した。このようにして得られた実施例1のフィルムについて、膜厚測定、破断強度および破断時の伸びを測定し、また、引張弾性率および永久伸びを測定した。これらの結果を表1に示す。なお、フィルムの成形条件の詳細は、以下の通りである。
(フィルムの成形条件)
配合物処理速度 : 5kg/時間
フィルム引き取り速度 : 4m/分
押出機温度 : 投入口100℃、T−ダイ200℃に調整
スクリュー : フルフライト
押出機L/D : 30
T−ダイ : 幅200mm、リップ0.5mm
〔実施例2〜6、比較例1〜4〕
二軸押出機に投入する成分の種類および量を表1に示す通りに変更したこと以外は、それぞれ、実施例1と同様にして、ブロック共重合体組成物を構成し、実施例2〜6および比較例1〜4のフィルムを得た。これらのフィルムにつき、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
Figure 2016069565
表1より、実施例1〜6のブロック共重合体組成物から形成されたフィルムは、比較例1〜4のブロック共重合体組成物から形成されたフィルムと比べ、強くて伸縮性に富み、格段に膜厚変動が少ないことが分かる。

Claims (4)

  1. 少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部に対して、芳香族ビニル重合体25〜150重量部、および脂肪酸アミド0.2〜10重量部を含有するブロック共重合体組成物。
  2. 前記ブロック共重合体として、下記の式(A)で表されるブロック共重合体A、および下記の式(B)で表されるブロック共重合体Bからなるブロック共重合体混合物を含有する請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
    Figure 2016069565
    (式中、Ar1およびArは、それぞれ重量平均分子量が6,000〜20,000の芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Ar2は、重量平均分子量が40,000〜400,000の芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックを表し、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%で重量平均分子量が20,000〜200,000の共役ジエンブロックを表し、Xは単結合またはカップリング剤の残基を表し、nは2以上の整数である。)
  3. 請求項1または2に記載のブロック共重合体組成物を成形してなるフィルム。
  4. 膜厚の平均値に対する膜厚の標準偏差の比(標準偏差/平均値)の割合が15%以下であり、破断強度が20MPa以上であり、かつ破断伸びが650%以上である請求項3に記載のフィルム。
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